高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置
【課題】MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき、当該高精度検出により低損失駆動が可能である高耐圧半導体装置及びそれを備えた電流制御装置を提供する。
【解決手段】P-型基板1の表面に形成されたN型のリサーフ領域5と、P型ベース領域10と、N+型エミッタ/ソース領域14と、ゲート絶縁膜7と、リサーフ領域5内に形成されたN+型ドレイン領域32及びP型コレクタ領域31と、ゲート絶縁膜7上に形成されたゲート電極90と、P型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32に電気接続されたコレクタ/ドレイン電極110と、P型ベース領域10に電気接続されたバックゲート電極62と、N+型エミッタ/ソース領域14に電気接続されたエミッタ/ソース電極61とを備え、P型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32は交互に接触するように配置されている。
【解決手段】P-型基板1の表面に形成されたN型のリサーフ領域5と、P型ベース領域10と、N+型エミッタ/ソース領域14と、ゲート絶縁膜7と、リサーフ領域5内に形成されたN+型ドレイン領域32及びP型コレクタ領域31と、ゲート絶縁膜7上に形成されたゲート電極90と、P型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32に電気接続されたコレクタ/ドレイン電極110と、P型ベース領域10に電気接続されたバックゲート電極62と、N+型エミッタ/ソース領域14に電気接続されたエミッタ/ソース電極61とを備え、P型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32は交互に接触するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置に関し、特にスイッチング電源装置に使用される主電流を繰り返し開閉する高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スタンバイ時における低消費電力性を実現したスイッチング電源装置が強く要求されている。スイッチング電源装置は、例えば、整流平滑回路、トランス及び本体回路で構成されており、本体回路は半導体スイッチング素子を備える。
【0003】
上記構成において、電力損失は主として半導体スイッチング素子で発生する。従って、この半導体スイッチング素子には、バイポーラトランジスタよりもスイッチング損失の小さいMOSFET(Matal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられる。しかし、MOSFETは、導通抵抗が大きいため導通損失が無視できない。従って、MOSFETに大電流が流れるとスイッチング電源装置全体としての損失が大きくなってしまう。
【0004】
そこで、スイッチング損失及び導通損失の両方を総合的に見て、待機モードのような軽負荷時には高周波かつ低電流に有利なMOSFETとして動作し、重負荷時には低周波かつ大電流に有利な導通抵抗の小さいIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として動作する高耐圧半導体装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
図9は、特許文献1に記載された、3つの電極を有する高耐圧半導体装置の一例を示す図である。
【0006】
この高耐圧半導体装置500は、エミッタ/ソース電極521と、ゲート電極522と、コレクタ/ドレイン電極520との、3つの電極を有している。
【0007】
P-型基板501表面部にN型のリサーフ領域505が形成され、同じくP-型基板1内に、リサーフ領域505と隣り合うようにP型ベース領域502が形成され、P型ベース領域502内には、リサーフ領域505とは離隔してN+型エミッタ/ソース領域504と、及びP+型ベースコンタクト領域503が形成される。さらにN+型エミッタ/ソース領域504とリサーフ領域505との間の部分のP型ベース領域502を覆うようにゲート絶縁膜507が形成される。リサーフ領域505内には、P型ベース領域502とは離隔してN+型ドレイン領域562が形成され、同じくリサーフ領域505内には、P型ベース領域502とは離隔してP型コレクタ領域561が形成される。P型コレクタ領域561及びN+型ドレイン領域562は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、P型コレクタ領域561からN+型エミッタ/ソース領域504へと向かう方向に対して垂直な方向において、P型コレクタ領域561の各部分とN+型ドレイン領域562の各部分とが交互に接触するように配置されている。
【0008】
さらに、ゲート絶縁膜507上にはゲート電極522が形成され、そしてP-型基板501上には、P型コレクタ領域561及びN+型ドレイン領域562の両方に電気的に接続されて、コレクタ/ドレイン電極520が配置されている。また、P-型基板501上にはエミッタ/ソース電極521が、P+型ベースコンタクト領域503及びN+型エミッタ/ソース領域504の両方に接続されるように形成されている。このエミッタ/ソース電極521は、P-型基板501裏面に蒸着された金属層523と接続されている。また、リサーフ領域505上にはフィールド絶縁膜509を介して層間膜512が形成されている。
【0009】
図10は、特許文献1に記載された高耐圧半導体装置の等価回路図である。この高耐圧半導体装置500は、等価回路的には図10に示すように、P1、P2、P3の3つの端子からなり、それぞれP1がコレクタ/ドレイン電極520、P2がゲート電極522、P3がエミッタ/ソース電極521に電気的に接続されている。一般的にバックゲートと呼ばれるP-型基板501及びP型ベース領域502の電位は、図10のバックゲート配線524で示される通り、P3に接続される。
【0010】
この高耐圧半導体装置500は、コレクタ/ドレイン電極520とエミッタ/ソース電極521間を正バイアスし、ゲート電極522に正の電圧を印加すると、N+型ドレイン領域562からエミッタ/ソース電極521へと電流が流れ始める(MOSFET動作)。その電流がある程度大きくなり、P型コレクタ領域561周囲のリサーフ領域505の電位が、P型コレクタ領域561よりも約0.6V下がると、P型コレクタ領域561からホールが注入されIGBT動作へと移行する。
【0011】
図11は、高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流との相関を示すグラフである。ここで、MOSFET動作からIGBT動作へと切替るコレクタ/ドレイン電圧をVch、またその時のコレクタ/ドレイン電流をIchとする。図11では、Vchが約2V程度、Ichが約1A程度となる例を示している。このように、高耐圧半導体装置500では、素子に流れるコレクタ/ドレイン電流が比較的小さい時にはMOSFET動作、コレクタ/ドレイン電流が大きくなるとIGBT動作をさせることができ、一素子でMOSFETとIGBTの二種類を使い分けることが可能となる。
【0012】
図12は、特許文献1に記載された高耐圧半導体装置を用いた電流制御装置の一般的な回路構成図である。本図において、P3端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗558を介して共通電極560と接続(接地)されている。また、共通電極560には基準電圧発生回路557が接続されており、センス抵抗558に電流555が流れたときに、センス抵抗558に発生する電圧降下と、基準電圧発生回路557にて生成される基準電圧とを比較する比較回路556が設けられている。比較回路556は基準電圧発生回路557とP3端子の両方に接続されている。
【0013】
図12に記載された回路構成において、高耐圧半導体装置500に流れる電流を検出し制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電流555が流れる。このとき電流555が大きくなるに従ってセンス抵抗558に発生する電圧降下も大きくなる。それが、基準電圧発生回路557にて生成される基準電圧にまで達すると、比較回路556からゲート電圧ON/OFF回路554へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極560と等しくなって、電流555は遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−115871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載された3つの電極を有する高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置では、高耐圧半導体装置500の、MOS動作からIGBT動作へと切替るコレクタ/ドレイン電圧Vchやコレクタ/ドレイン電流Ichを精確に検出できないという問題がある。例えば、図10に記載された高耐圧半導体装置500では、Ich=1Aであるので、センス抵抗558として0.1Ωの抵抗を用いれば、P3端子の電位が0.1VになったときをIch、すなわちMOS動作からIGBT動作への切替りとして検出できる。しかしながらIchには温度特性があり、室温では1Aでも、例えば100℃では0.6A程度に小さくなることがわかっている。従来の方法では、100℃でも、コレクタ/ドレイン電流が1AでIchとして検出してしまい、温度変化に応じたIchを精確に検出できない。また、高耐圧半導体装置500のIchにはバラツキがあり、本来1AのIchがバラツキにより、例えば、0.8Aとなる。しかし上述した従来の方法では、コレクタ/ドレイン電流=1AをIchとして検出してしまう。そのため、高耐圧半導体装置500のMOS動作からIGBT動作へと切替るVchやIchを精確に検出できないという問題がある。
【0016】
次に、MOS動作からIGBT動作への切替りを検出できないことで生じる課題について説明する。図11からわかる通り、Vchが2Vより小さいMOS動作領域においては、P2端子の電圧すなわちゲート電圧Vgが6V以上であれば電流駆動能力は変わらない。一方で、Vchが2Vより大きいIGBT動作領域ではVg=6VとVg=12Vでは、電流駆動能力に大きな差がある。そのためVg=12Vとすることで、Vg=6Vに比べてオン抵抗による損失を小さくできる。また、ドライブ損失に関しては、Vg=6VとすることでVg=12Vに比べて低損失化が可能である。
【0017】
従ってMOS動作からIGBT動作に亘って最適に低損失化するためには、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが必要である。このときMOS動作からIGBT動作への切替りを精確に検出してゲート電圧を切り替えないと、損失低減の最適化が図られない。
【0018】
上記課題に鑑み、本発明は、MOS動作とIGBT動作との切替えが可能な高耐圧半導体装置において、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき、当該高精度検出により低損失駆動が可能である高耐圧半導体装置及びそれを備えた電流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る高耐圧半導体装置は、第1導電型の半導体基板の表面部に形成された第2導電型のリサーフ領域と、前記半導体基板内に前記リサーフ領域と隣り合うように形成された第1導電型のベース領域と、前記ベース領域内に前記リサーフ領域とは離隔して形成された第2導電型のエミッタ/ソース領域と、前記半導体基板上であって、前記エミッタ/ソース領域と前記リサーフ領域との間の部分の前記ベース領域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第2導電型のドレイン領域と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第1導電型のコレクタ領域と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記ベース領域に電気的に接続されたバックゲート電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記エミッタ/ソース領域に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備え、前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、前記コレクタ領域から前記エミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において、前記コレクタ領域の各部分と前記ドレイン領域の各部分とが交互に接触するように配置されていることを特徴とする。
【0020】
従来のゲート電極、コレクタ/ドレイン電極、エミッタ/ソース電極を有する3端子素子では、オン状態で電子電流と正孔電流を別々に検出できないという問題があった。
【0021】
上記構成によれば、バックゲート電極を加えた4端子素子とすることで、オン状態で電子電流と正孔電流を別々に検出することが可能となる。よって、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電流制御装置は、請求項1に記載の高耐圧半導体装置と、前記高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極へ流れ込む第1電流、または、前記コレクタ/ドレイン電流のうち前記バックゲート電極へ流れ込む第2電流のうち少なくとも一方の大きさを検出することにより、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御部とを備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、上記高耐圧半導体装置のエミッタ/ソース電極及びバックゲート電極からそれぞれ発生するオン状態での電子電流と正孔電流のいずれかを検出できるので、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき低損失駆動が可能となる電流制御装置を実現することが可能となる。
【0024】
また、前記バックゲート電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、前記電流制御部は、前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第1抵抗素子と、前記共通電極に対する電位である第1基準電圧を発生する第1基準電圧発生回路と、第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第1基準電圧発生回路に接続され、前記第1抵抗素子の両端子間に発生した第1電圧と前記第1基準電圧とを比較する第1比較回路と、前記第1比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備えてもよい。
【0025】
本態様によれば、エミッタ/ソース電極に電流検出用である第1抵抗素子抵抗が接続され、バックゲート電極は共通電極に接続されるため、電流が流れるオン状態ではバックゲート電極に比べエミッタ/ソース電極の電位が大きくなる。この結果、ベース領域の電位がエミッタ/ソース領域の電位に比べて0.6V程度大きくなることによりベース領域からエミッタ/ソース領域へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップ現象に対する耐性を、従来の構成の場合より大きくできる特長がある。
【0026】
また、第1抵抗素子に流れる電流はエミッタ/ソース電極に流れる電子電流のみである。一方、図12に示した従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は電子電流と正孔電流の和である。従って従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時に電流検出用抵抗に流れる電流を小さくできるので、当該抵抗に発生する損失を低減できるという特長がある。
【0027】
また、前記エミッタ/ソース電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、前記電流制御部は、前記バックゲート電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第2電流を検出するための第2抵抗素子と、前記共通電極に対する電位である第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路と、第1入力端子が前記バックゲート電極に接続され、第2入力端子が前記第2基準電圧発生回路に接続され、前記第2抵抗素子の両端子間に発生した第2電圧と前記第2基準電圧とを比較する第2比較回路と、前記第2比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備えてもよい。
【0028】
本態様によれば、バックゲート電極に電流検出用である第2抵抗素子が接続され、エミッタ/ソース電極は共通電極に接続されるため、高耐圧半導体装置がMOS動作からIGBT動作に切替った後に流れる正孔電流は、バックゲート電極に接続され第2抵抗素子により検出される。従って、図12に示した従来の電流制御装置では不可能であったMOS動作からIGBT動作切替りの精確な検出が、本発明により可能となる。
【0029】
また、第2抵抗素子に流れる電流は、バックゲート電極に流れる正孔電流のみである。一方、図12に示した従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は電子電流と正孔電流の和である。従って従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時に電流検出用抵抗に流れる電流を小さくできるので、抵抗に発生する損失を低減できるという特長がある。
【0030】
また、前記電流制御部は、さらに、前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入された、ラッチアップを防止するためのラッチアップ防止用抵抗素子を備えてもよい。
【0031】
本態様によれば、エミッタ/ソース電極にラッチアップ防止用抵抗を接続しているため、ベース領域からエミッタ/ソース領域へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を大きくすることができる。
【0032】
また、前記電流制御部は、さらに、前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第3抵抗素子と、前記共通電極に対する電位である第3基準電圧を発生する第3基準電圧発生回路と、第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第3基準電圧発生回路に接続され、前記第3抵抗素子の両端子間に発生した第3電圧と前記第3基準電圧とを比較する第3比較回路とを備え、前記電流制御回路は、前記第1及び第3比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御してもよい。
【0033】
本態様によれば、エミッタ/ソース電極とバックゲート電極それぞれに対して電流検出用抵抗と比較回路を設けているため、バックゲート電極のみに第2抵抗素子が接続された電流制御装置と比較して、MOS動作時の電子電流も検出可能とできるという特長がある。また、エミッタ/ソース電極に電流検出用である第3抵抗素子が接続されているため、当該抵抗を接続しない場合と比較して、ベース領域からエミッタ/ソース領域へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を大きくすることができる。
【0034】
また、前記電流制御回路は、前記第2電圧が前記第2基準電圧以上となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記高耐圧半導体装置のゲート電圧値を上げ、前記第2電圧が前記第2基準電圧以下となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記ゲート電圧値を下げるゲート電圧選択回路を備えてもよい。
【0035】
本態様によれば、比較回路からの信号を受け取るゲート電圧選択回路を有する為、高耐圧半導体装置のMOS動作からIGBT動作への切替りを検出し、ゲート電圧選択回路によってゲート電圧を、MOS動作時は例えば6V、IGBT動作へと移行するとゲート電圧を例えば12V、というように切り替えることが可能である。そのため、MOS動作時においてはゲートドライブ損失が、IGBT動作時においてはオン抵抗による損失が、より低減可能となる特長がある。
【発明の効果】
【0036】
本発明の高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置によれば、MOS動作とIGBT動作との切替りが高精度に検出されるので、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の構造斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の等価回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図7】本発明の実施の形態5に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図8】本発明の実施の形態6に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図9】特許文献1に記載された、3つの電極を有する高耐圧半導体装置の一例を示す図である。
【図10】特許文献1に記載された高耐圧半導体装置の等価回路図である。
【図11】高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流との相関を示すグラフである。
【図12】特許文献1に記載された高耐圧半導体装置を用いた電流制御装置の一般的な回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態における高耐圧半導体装置は、P型の半導体基板の表面部に形成されたN型のリサーフ領域と、当該リサーフ領域と隣り合うように形成されたP型のベース領域と、当該ベース領域内にリサーフ領域とは離隔して形成されたN型のエミッタ/ソース領域と、当該エミッタ/ソース領域とリサーフ領域との間の部分のベース領域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、リサーフ領域内にベース領域とは離隔して形成されたN型のドレイン領域及びコレクタ領域と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、コレクタ領域及びドレイン領域の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、ベース領域に電気的に接続されたバックゲート電極と、エミッタ/ソース領域に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備え、コレクタ領域及びドレイン領域は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、コレクタ領域からエミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において、コレクタ領域の各部分とドレイン領域の各部分とが交互に接触するように配置されている。
【0039】
上記構成のように、高耐圧半導体装置を、バックゲート電極を加えた4端子素子とすることで、オン状態で電子電流と正孔電流を別々に検出することが可能となる。よって、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の構造斜視図である。同図に記載された高耐圧半導体装置40は、エミッタ/ソース電極61と、バックゲート電極62と、ゲート電極90と、コレクタ/ドレイン電極110との、4つの電極を有している。
【0041】
P-型基板1の表面部にN型のリサーフ領域5が形成されている。同じくP-型基板1内に、リサーフ領域5と隣り合うように、P型ベース領域10が形成されている。P型ベース領域10内には、リサーフ領域5とは離隔してN+型エミッタ/ソース領域14と、P+型ベースコンタクト領域15とが形成されている。
【0042】
さらに、N+型エミッタ/ソース領域14とリサーフ領域5との間の部分のP型ベース領域10を覆うように、ゲート絶縁膜7が形成されている。
【0043】
リサーフ領域5内には、P型ベース領域10とは離隔してN+型ドレイン領域32が形成され、同じくリサーフ領域5内には、P型ベース領域10とは離隔してP型コレクタ領域31が形成されている。P型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、P型コレクタ領域31からN+型エミッタ/ソース領域14へと向かう方向に対して垂直な方向において、P型コレクタ領域31の各部分とN+型ドレイン領域32の各部分とが交互に接触するように配置されている。
【0044】
さらに、ゲート絶縁膜7上にはゲート電極90が形成されている。
また、P-型基板1上にはP型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32の両方に電気的に接続されて、コレクタ/ドレイン電極110が配置されている。
【0045】
また、P-型基板1上にはエミッタ/ソース電極61が、N+型エミッタ/ソース領域14に接続されるように形成されている。
【0046】
また、P-型基板1上にはバックゲート電極62が、P+型ベースコンタクト領域15に接続されるように形成されている。このバックゲート電極62は、P-型基板1裏面に蒸着された金属層70と電気的に、または後述するセンス抵抗を介して接続されている。
【0047】
また、リサーフ領域5上にはフィールド絶縁膜9を介して層間膜12が形成されている。
【0048】
図2は、本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の等価回路図である。高耐圧半導体装置40は等価回路的には、P1、P2、P3及びP4の4つの端子からなり、それぞれP1がコレクタ/ドレイン電極110、P2がゲート電極90、P3がエミッタ/ソース電極61、P4がバックゲート電極62に電気的に接続されている。
【0049】
高耐圧半導体装置40の動作としては、コレクタ/ドレイン電極110とエミッタ/ソース電極61間を正バイアスし、ゲート電極90に正の電圧を印加すると、N+型ドレイン領域32からエミッタ/ソース電極61へと電流が流れ始める(MOSFET動作)。
【0050】
この電流がある程度大きくなり(図11の例では1A)、P型コレクタ領域31周囲のリサーフ領域5の電位が、P型コレクタ領域31よりも約0.6V下がると、P型コレクタ領域31からホールが注入されIGBT動作へと移行する。IGBT動作へ移行すると、バックゲート電極62へも正孔電流が流れ始める。このときのコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流の相関については、図11に示すグラフの通りであり、MOSFET動作からIGBT動作へと切替るコレクタ/ドレイン電圧をVch、またその時のコレクタ/ドレイン電流をIchとすると、例えばVchは約2V程度、Ichは約1A程度となる。このように高耐圧半導体装置40では、素子に流れるコレクタ/ドレイン電流が比較的小さい時にはMOSFET動作、コレクタ/ドレイン電流が大きくなるとIGBT動作をさせることができ、ひとつの素子でMOSFETとIGBTの二種類を使いわけることができる。
【0051】
次に、上述した本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置40を用いた電流制御装置について説明する。
【0052】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置20は、高耐圧半導体装置40と、比較回路47と、基準電圧発生回路48と、センス抵抗49と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60とを備える。
【0053】
P4端子は少なくとも電流制御装置20で一定の電位を有する共通電極60に接続(接地)されており、P3端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗49を介して共通電極60に接続(接地)されている。
【0054】
基準電圧発生回路48は、共通電極60に対する第1基準電圧を発生する第1基準電圧発生回路である。
【0055】
比較回路47は、第1入力端子がエミッタ/ソース電極61に接続されたP3端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路48に接続された第1比較回路である。比較回路47は、第1抵抗素子であるセンス抵抗49に第1電流である電子電流46が流れたときに、センス抵抗49の両端子間に発生する第1電圧と、基準電圧発生回路48にて生成される第1基準電圧とを比較する。ここで、第1電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極61へ流れ込む電流である。
【0056】
ゲート電圧ON/OFF回路54は、比較回路47で比較された結果により、コレクタ/ドレイン電流を制御する。
【0057】
図3に記載された回路構成で高耐圧半導体装置40に流れる電流を制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電子電流46が流れ始める(MOSFET動作)。その電子電流46がある程度大きく(図11の例では1A)なるとIGBT動作へと移行するが、このとき第2電流である正孔電流45がP4端子へ流れ始める。電子電流46はIGBT動作移行後も、P1端子を流れるコレクタ/ドレイン電流が大きくなるに従って増加する。そのときセンス抵抗49に発生する電圧降下も、電子電流46が大きくなるに従って大きくなる。やがて電子電流46によって発生する第1電圧が、基準電圧発生回路48にて生成される第1基準電圧にまで達すると、比較回路47からゲート電圧ON/OFF回路54へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極60と等しくなって、電子電流46と正孔電流45は共に遮断される。
【0058】
次に、図3に記載された電流制御装置20がもたらす効果について説明する。
図3に記載された回路構成では、P3端子にセンス抵抗49が接続され、P4端子は共通電極60に接続されるため、電流が流れるオン状態ではP4端子に比べてP3端子の電位が高くなる。つまり、図1に記載された高耐圧半導体装置40におけるバックゲート電極62に比べてエミッタ/ソース電極61の電位が高くなる。
【0059】
高耐圧半導体装置40のオン状態では、特に、IGBT動作時には、P型コレクタ領域31からの正孔電流がP型ベース領域10、P+型ベースコンタクト領域15を通ってバックゲート電極62に流れ込む。このとき、P型ベース領域10の抵抗成分により、所謂ラッチアップが発生してしまう。ここで、ラッチアップとは、P型ベース領域10の電位がN+型エミッタ/ソース領域14に比べて0.6V程度大きくなると、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう現象である。
【0060】
しかし、本発明の実施の形態にかかる電流制御装置20の回路構成であれば、バックゲート電極62に比べてエミッタ/ソース電極61の電位を高くできるので、正孔電流がベース抵抗により生じる電圧が、0.6Vまで達しにくい。この結果、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を、図12に記載された従来の電流制御装置の場合よりも大きくできる特長がある。
【0061】
また、センス抵抗49を流れる電流に関して言及すると、高耐圧半導体装置40がIGBT動作であってもセンス抵抗49に流れる電流はP3端子に流れる電子電流46のみである。一方、図12に記載された従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は、電子電流と正孔電流の和である。従って従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時にセンス抵抗に流れる電流を小さくできる。その結果、センス抵抗に発生する損失を従来の構成に比べて低減できる特長がある。
【0062】
なお本実施の形態では、高耐圧半導体装置40として電流が半導体基板に対して横方向に流れる横型デバイスを用いて説明したが、電流が縦方向に流れる縦型デバイスを用いても構わない。
【0063】
また、図3に記載された電流制御装置20において、高耐圧半導体装置40とその他の、例えばセンス抵抗49や基準電圧発生回路48、比較回路47、ゲート電圧ON/OFF回路54は、別チップで構成されていても、同一半導体基板内に形成されていてもどちらでも構わない。
【0064】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置21は、高耐圧半導体装置40と、比較回路52と、基準電圧発生回路51と、センス抵抗50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60とを備える。
【0065】
P3端子は、少なくとも電流制御装置20で一定の電位を有する共通電極60に接続(接地)されており、P4端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗50を介して共通電極60と接続(接地)されている。
【0066】
基準電圧発生回路51は、共通電極60に対する第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路である。
【0067】
比較回路52は、第1入力端子がバックゲート電極62に接続されたP4端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路51に接続された第2比較回路である。比較回路52は、第2抵抗素子であるセンス抵抗50に第2電流である正孔電流45が流れたときに、センス抵抗50の両端子間に発生する第2電圧と、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧とを比較する。ここで、第2電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうちバックゲート電極62へ流れ込む電流である。
【0068】
ゲート電圧ON/OFF回路54は、比較回路52で比較された結果により、コレクタ/ドレイン電流を制御する。
【0069】
図4に記載された回路構成で高耐圧半導体装置40に流れる電流を制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電子電流46が流れ始める(MOSFET動作)。その電子電流46がある程度大きく(図11の例では1A)なるとIGBT動作へと移行するが、このとき正孔電流45がP4端子へ流れ始める。正孔電流45はIGBT動作移行後も、P1端子を流れるコレクタ/ドレイン電流が大きくなるに従って増加する。そのときセンス抵抗50に発生する電圧降下も、正孔電流45が大きくなるに従って大きくなる。やがて正孔電流45によって発生する第2電圧が、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧にまで達すると、比較回路52からゲート電圧ON/OFF回路54へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極60と等しくなって、正孔電流45と電子電流46は共に遮断される。
【0070】
次に図4に記載された電流制御装置21がもたらす効果について説明する。
図4に記載された回路構成では、P4端子にセンス抵抗50が接続され、P3端子は共通電極60に接続されるため、高耐圧半導体装置40がMOS動作からIGBT動作に切替った後に流れる正孔電流45を、P4端子に接続したセンス抵抗50により検出できる。
【0071】
より具体的には、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧を、例えば、0.02〜0.3Vの範囲で可変とし、センス抵抗50を、例えば、0.2Ωとする。そしてMOS動作からIGBT動作への切替りを、第2基準電圧が例えば0.03Vの時として検出する。高耐圧半導体装置40がIGBT動作へ移行しP4端子に正孔電流45が流れ始め、センス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vに達した時、すなわち正孔電流45として0.15A流れた時が、MOSからIGBT動作への切替りとして精確に検出される。逆にセンス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vを下回った時は、IGBT動作からMOS動作への切替りとして検出可能である。
【0072】
以上のように、図12に記載された従来の電流制御装置では不可能であった、MOS動作からIGBT動作切替りの精確な検出が、本実施の形態では可能となる。
【0073】
また、センス抵抗50を流れる電流に関して言及すると、高耐圧半導体装置40がIGBT動作であってもセンス抵抗50に流れる電流はP4端子に流れる正孔電流45のみである。一方、図12に記載された従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は電子電流と正孔電流の和である。従って、本実施の形態に係る電流制御装置21は、従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時にセンス抵抗に流れる電流を小さくできる。その結果、センス抵抗に発生する損失を従来の構成に比べて低減できる特長がある。
【0074】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置22は、高耐圧半導体装置40と、比較回路52と、基準電圧発生回路51と、センス抵抗50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60と、ゲート電圧選択回路53とを備える。
【0075】
本実施の形態に係る電流制御装置22の構成が、実施の形態2に係る電流制御装置21の構成と異なる点は、比較回路52からの信号を受け取るゲート電圧選択回路53が設けられている点である。実施の形態2に係る電流制御装置21と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0076】
ゲート電圧選択回路53は、比較回路52からの信号を受け取って、センス抵抗50に発生する第2電圧が、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧以上のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を上げる。一方で、第2基準電圧以下のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を下げる機能を有する。
【0077】
例えば、高耐圧半導体装置40のMOS動作からIGBT動作への切替りを検出し、ゲート電圧選択回路53によってP2端子へ印加するゲート電圧を、MOS動作時は6V、IGBT動作時は12V、というように切り替えることが可能である。
【0078】
次に、MOS動作時とIGBT動作時のゲート電圧の切り替えについて、さらに詳細に説明する。
【0079】
図11は、高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流との相関を示すグラフである。図11からわかる通り、Vchが2Vより小さいMOS動作領域においては、P2端子の電圧すなわちゲート電圧Vgが6V以上であれば電流駆動能力は変わらない。それゆえMOS動作領域ではVg=6Vとすることで、Vg=12Vの場合と比べてドライブ損失を低減できる。一方で、Vchが2Vより大きいIGBT動作領域では、Vg=6VとVg=12Vとでは、電流駆動能力に大きな差がある。この領域では、Vg=12Vとすることで、Vg=6Vに比べてオン抵抗による損失を小さくできる。
【0080】
以上から、損失低減の最適化のためには、MOS動作とIGBT動作の切替りを精確に検出し、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが必要である。
【0081】
ここで、MOS動作時のドライブ損失に関して以下に具体的に説明する。
【0082】
高耐圧半導体装置40のゲートドライブ損失Pは式1で表わされ、ゲート電圧Vgの2乗に比例して大きくなる。よって、例えば、高耐圧半導体装置40のゲート容量Cを1000pF、駆動周波数foscを100kHzとすると、
P=1/2×C×Vg2×2×fosc (式1)
となる。
【0083】
式1より、Vg=12Vのときはゲートドライブ損失P=14mWである。一方で、Vg=6VとすることでP=4mWとなり、差し引き10mWの損失低減が可能となる。
【0084】
以上より、本発明における電流制御装置22では、MOS動作とIGBT動作の切替りを精確に検出し、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが可能である。よって、実施の形態2で説明した電流制御装置21と比較して、更なる損失の低減が可能である。
【0085】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置23は、高耐圧半導体装置40と、比較回路52と、基準電圧発生回路51と、センス抵抗49及び50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60と、ゲート電圧選択回路53とを備える。
【0086】
本実施の形態に係る電流制御装置23の構成が、実施の形態3に係る電流制御装置22の構成と異なる点は、P3端子がラッチアップ防止用であるセンス抵抗49を介して共通電極に接続(接地)されている点である。実施の形態3に係る電流制御装置22と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0087】
ラッチアップ防止用のセンス抵抗49により、電流が流れるオン状態ではP3端子の電位が共通電極60に対して上昇する。このため、オン状態でのP3端子の電位が、図5に記載された実施の形態3に係る電流制御装置22のP3端子よりも高くなる。つまり本実施の形態では、図1に記載された高耐圧半導体装置40におけるエミッタ/ソース電極61の電位が、実施の形態3のそれと比べて高くなる。
【0088】
この結果、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を、図5に記載された電流制御装置22よりも大きくすることが可能となる。
【0089】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置24は、高耐圧半導体装置40と、比較回路47及び52と、基準電圧発生回路48及び51と、センス抵抗49及び50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60とを備える。
【0090】
P3端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗49を介して共通電極60に接続(接地)されており、P4端子は同じく電流検出用抵抗であるセンス抵抗50を介して共通電極60に接続(接地)されている。
【0091】
基準電圧発生回路48は、共通電極60に対する第3基準電圧を発生する第3基準電圧発生回路である。
【0092】
基準電圧発生回路51は、共通電極60に対する第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路である。
【0093】
比較回路47は、第1入力端子がエミッタ/ソース電極61に接続されたP3端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路48に接続された第3比較回路である。比較回路47は、第3抵抗素子であるセンス抵抗49に第1電流である電子電流46が流れたときに、センス抵抗49の両端子間に発生する第3電圧と、基準電圧発生回路48にて生成される第3基準電圧とを比較する。ここで、第1電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極61へ流れ込む電流である。
【0094】
比較回路52は、第1入力端子がバックゲート電極62に接続されたP4端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路51に接続された第2比較回路である。比較回路52は、第2抵抗素子であるセンス抵抗50に第2電流である正孔電流45が流れたときに、センス抵抗50の両端子間に発生する第2電圧と、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧とを比較する。ここで、第2電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうちバックゲート電極62へ流れ込む電流である。
【0095】
ゲート電圧ON/OFF回路54は、比較回路47で比較された結果により、コレクタ/ドレイン電流を制御する。
【0096】
図7に記載された回路構成で高耐圧半導体装置40に流れる電流を制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電子電流46が流れ始める(MOSFET動作)。その電子電流46がある程度大きく(図11の例では1A)なるとIGBT動作へと移行するが、このとき正孔電流45がP4端子へ流れ始める。電子電流46はIGBT動作移行後も、P1端子を流れるコレクタ/ドレイン電流が大きくなるに従って増加する。そのときセンス抵抗49に発生する電圧降下も、電子電流46が大きくなるに従って大きくなる。それが、基準電圧発生回路48にて生成される第3基準電圧にまで達すると、比較回路47からゲート電圧ON/OFF回路54へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極60と等しくなって、電子電流46と正孔電流45は共に遮断される。
【0097】
さらに、図7に記載された回路構成では、P4端子にセンス抵抗50を接続するため、高耐圧半導体装置40がMOS動作からIGBT動作に切替った後に流れる正孔電流45を、P4端子に接続したセンス抵抗50により検出できる。
【0098】
より具体的には、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧を、例えば、0.03Vで設定とし、センス抵抗50を、例えば、0.2Ωとする。高耐圧半導体装置40がIGBT動作へ移行しP4端子に正孔電流45が流れ始め、センス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vに達した時、すなわち正孔電流45として0.15A流れると、比較回路52から検出信号64が出力される。この検出信号64により、MOSからIGBT動作への切替りが精確に検出される。逆に、センス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vを下回った時は、IGBT動作からMOS動作への切替りとして検出可能である。
【0099】
以上より、図7に記載された実施の形態5に係る電流制御装置24においては、図4に記載された実施の形態2に係る電流制御装置21に比べて、電子電流46をセンス抵抗49で検出できるので、MOS動作領域(図11の1Aまで)のコレクタ/ドレイン電流の制御が可能となる特長がある。すなわち、実施の形態2では、P4端子のみにセンス抵抗50を接続していたため、高耐圧半導体装置40がMOS動作時のコレクタ/ドレイン電流を検出できなかったが、本構成を採用することでMOS動作領域においてもコレクタ/ドレイン電流の制御が可能となる。
【0100】
また、P3端子に接続したセンス抵抗49により、電流が流れるオン状態ではP3端子の電位が共通電極60に対して上昇する。このため、オン状態でのP3端子の電位が、実施の形態2に係る電流制御装置21のP3端子よりも高くなる。つまり本実施の形態では、図1に記載された高耐圧半導体装置40におけるエミッタ/ソース電極61の電位が、実施の形態2のそれと比べて高くなる。
【0101】
この結果、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を、実施の形態2に係る電流制御装置21よりも大きくすることが可能となる。
【0102】
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置25は、高耐圧半導体装置40と、比較回路47及び52と、基準電圧発生回路48及び51と、センス抵抗49及び50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60と、ゲート電圧選択回路53とを備える。
【0103】
本実施の形態に係る電流制御装置25の構成が、実施の形態5に係る電流制御装置24の構成と異なる点は、比較回路52からの信号を受け取るゲート電圧選択回路53が設けられている点である。実施の形態5に係る電流制御装置24と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0104】
このゲート電圧選択回路53は、比較回路52からの信号を受け取って、センス抵抗50の両端子間に発生する第2電圧が、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧以上のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を上げる。一方で、第2基準電圧以下のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を下げる機能を有する。
【0105】
このため、本発明における電流制御装置では、MOS動作とIGBT動作の切替りを精確に検出し、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが可能である。よって、実施の形態5で説明した電流制御装置24と比較して、更なる損失の低減が可能である。
【0106】
以上、本発明の高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置によれば、MOS動作とIGBT動作との切替りが高精度に検出されるので、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【0107】
なお、本発明に係る高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置は、上述した実施の形態に限定されるものではない。実施の形態1〜6における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態1〜6に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置は、特に、スタンバイ時における低消費電力性を実現したスイッチング電源装置に用いられる部品として有用である。
【符号の説明】
【0109】
1、501 P-型基板
5、505 リサーフ領域
7、507 ゲート絶縁膜
9、509 フィールド絶縁膜
10、502 P型ベース領域
12、512 層間膜
14、504 N+型エミッタ/ソース領域
15、503 P+型ベースコンタクト領域
20、21、22、23、24、25 電流制御装置
31、561 P型コレクタ領域
32、562 N+型ドレイン領域
40、500 高耐圧半導体装置
45 正孔電流
46 電子電流
47、52、556 比較回路
48、51、557 基準電圧発生回路
49、50、558 センス抵抗
53 ゲート電圧選択回路
54、554 ゲート電圧ON/OFF回路
60、560 共通電極
61、521 エミッタ/ソース電極
62 バックゲート電極
64 検出信号
70、523 金属層
90、522 ゲート電極
110、520 コレクタ/ドレイン電極
524 バックゲート配線
555 電流
【技術分野】
【0001】
本発明は高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置に関し、特にスイッチング電源装置に使用される主電流を繰り返し開閉する高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スタンバイ時における低消費電力性を実現したスイッチング電源装置が強く要求されている。スイッチング電源装置は、例えば、整流平滑回路、トランス及び本体回路で構成されており、本体回路は半導体スイッチング素子を備える。
【0003】
上記構成において、電力損失は主として半導体スイッチング素子で発生する。従って、この半導体スイッチング素子には、バイポーラトランジスタよりもスイッチング損失の小さいMOSFET(Matal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられる。しかし、MOSFETは、導通抵抗が大きいため導通損失が無視できない。従って、MOSFETに大電流が流れるとスイッチング電源装置全体としての損失が大きくなってしまう。
【0004】
そこで、スイッチング損失及び導通損失の両方を総合的に見て、待機モードのような軽負荷時には高周波かつ低電流に有利なMOSFETとして動作し、重負荷時には低周波かつ大電流に有利な導通抵抗の小さいIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として動作する高耐圧半導体装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
図9は、特許文献1に記載された、3つの電極を有する高耐圧半導体装置の一例を示す図である。
【0006】
この高耐圧半導体装置500は、エミッタ/ソース電極521と、ゲート電極522と、コレクタ/ドレイン電極520との、3つの電極を有している。
【0007】
P-型基板501表面部にN型のリサーフ領域505が形成され、同じくP-型基板1内に、リサーフ領域505と隣り合うようにP型ベース領域502が形成され、P型ベース領域502内には、リサーフ領域505とは離隔してN+型エミッタ/ソース領域504と、及びP+型ベースコンタクト領域503が形成される。さらにN+型エミッタ/ソース領域504とリサーフ領域505との間の部分のP型ベース領域502を覆うようにゲート絶縁膜507が形成される。リサーフ領域505内には、P型ベース領域502とは離隔してN+型ドレイン領域562が形成され、同じくリサーフ領域505内には、P型ベース領域502とは離隔してP型コレクタ領域561が形成される。P型コレクタ領域561及びN+型ドレイン領域562は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、P型コレクタ領域561からN+型エミッタ/ソース領域504へと向かう方向に対して垂直な方向において、P型コレクタ領域561の各部分とN+型ドレイン領域562の各部分とが交互に接触するように配置されている。
【0008】
さらに、ゲート絶縁膜507上にはゲート電極522が形成され、そしてP-型基板501上には、P型コレクタ領域561及びN+型ドレイン領域562の両方に電気的に接続されて、コレクタ/ドレイン電極520が配置されている。また、P-型基板501上にはエミッタ/ソース電極521が、P+型ベースコンタクト領域503及びN+型エミッタ/ソース領域504の両方に接続されるように形成されている。このエミッタ/ソース電極521は、P-型基板501裏面に蒸着された金属層523と接続されている。また、リサーフ領域505上にはフィールド絶縁膜509を介して層間膜512が形成されている。
【0009】
図10は、特許文献1に記載された高耐圧半導体装置の等価回路図である。この高耐圧半導体装置500は、等価回路的には図10に示すように、P1、P2、P3の3つの端子からなり、それぞれP1がコレクタ/ドレイン電極520、P2がゲート電極522、P3がエミッタ/ソース電極521に電気的に接続されている。一般的にバックゲートと呼ばれるP-型基板501及びP型ベース領域502の電位は、図10のバックゲート配線524で示される通り、P3に接続される。
【0010】
この高耐圧半導体装置500は、コレクタ/ドレイン電極520とエミッタ/ソース電極521間を正バイアスし、ゲート電極522に正の電圧を印加すると、N+型ドレイン領域562からエミッタ/ソース電極521へと電流が流れ始める(MOSFET動作)。その電流がある程度大きくなり、P型コレクタ領域561周囲のリサーフ領域505の電位が、P型コレクタ領域561よりも約0.6V下がると、P型コレクタ領域561からホールが注入されIGBT動作へと移行する。
【0011】
図11は、高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流との相関を示すグラフである。ここで、MOSFET動作からIGBT動作へと切替るコレクタ/ドレイン電圧をVch、またその時のコレクタ/ドレイン電流をIchとする。図11では、Vchが約2V程度、Ichが約1A程度となる例を示している。このように、高耐圧半導体装置500では、素子に流れるコレクタ/ドレイン電流が比較的小さい時にはMOSFET動作、コレクタ/ドレイン電流が大きくなるとIGBT動作をさせることができ、一素子でMOSFETとIGBTの二種類を使い分けることが可能となる。
【0012】
図12は、特許文献1に記載された高耐圧半導体装置を用いた電流制御装置の一般的な回路構成図である。本図において、P3端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗558を介して共通電極560と接続(接地)されている。また、共通電極560には基準電圧発生回路557が接続されており、センス抵抗558に電流555が流れたときに、センス抵抗558に発生する電圧降下と、基準電圧発生回路557にて生成される基準電圧とを比較する比較回路556が設けられている。比較回路556は基準電圧発生回路557とP3端子の両方に接続されている。
【0013】
図12に記載された回路構成において、高耐圧半導体装置500に流れる電流を検出し制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電流555が流れる。このとき電流555が大きくなるに従ってセンス抵抗558に発生する電圧降下も大きくなる。それが、基準電圧発生回路557にて生成される基準電圧にまで達すると、比較回路556からゲート電圧ON/OFF回路554へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極560と等しくなって、電流555は遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−115871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載された3つの電極を有する高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置では、高耐圧半導体装置500の、MOS動作からIGBT動作へと切替るコレクタ/ドレイン電圧Vchやコレクタ/ドレイン電流Ichを精確に検出できないという問題がある。例えば、図10に記載された高耐圧半導体装置500では、Ich=1Aであるので、センス抵抗558として0.1Ωの抵抗を用いれば、P3端子の電位が0.1VになったときをIch、すなわちMOS動作からIGBT動作への切替りとして検出できる。しかしながらIchには温度特性があり、室温では1Aでも、例えば100℃では0.6A程度に小さくなることがわかっている。従来の方法では、100℃でも、コレクタ/ドレイン電流が1AでIchとして検出してしまい、温度変化に応じたIchを精確に検出できない。また、高耐圧半導体装置500のIchにはバラツキがあり、本来1AのIchがバラツキにより、例えば、0.8Aとなる。しかし上述した従来の方法では、コレクタ/ドレイン電流=1AをIchとして検出してしまう。そのため、高耐圧半導体装置500のMOS動作からIGBT動作へと切替るVchやIchを精確に検出できないという問題がある。
【0016】
次に、MOS動作からIGBT動作への切替りを検出できないことで生じる課題について説明する。図11からわかる通り、Vchが2Vより小さいMOS動作領域においては、P2端子の電圧すなわちゲート電圧Vgが6V以上であれば電流駆動能力は変わらない。一方で、Vchが2Vより大きいIGBT動作領域ではVg=6VとVg=12Vでは、電流駆動能力に大きな差がある。そのためVg=12Vとすることで、Vg=6Vに比べてオン抵抗による損失を小さくできる。また、ドライブ損失に関しては、Vg=6VとすることでVg=12Vに比べて低損失化が可能である。
【0017】
従ってMOS動作からIGBT動作に亘って最適に低損失化するためには、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが必要である。このときMOS動作からIGBT動作への切替りを精確に検出してゲート電圧を切り替えないと、損失低減の最適化が図られない。
【0018】
上記課題に鑑み、本発明は、MOS動作とIGBT動作との切替えが可能な高耐圧半導体装置において、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき、当該高精度検出により低損失駆動が可能である高耐圧半導体装置及びそれを備えた電流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る高耐圧半導体装置は、第1導電型の半導体基板の表面部に形成された第2導電型のリサーフ領域と、前記半導体基板内に前記リサーフ領域と隣り合うように形成された第1導電型のベース領域と、前記ベース領域内に前記リサーフ領域とは離隔して形成された第2導電型のエミッタ/ソース領域と、前記半導体基板上であって、前記エミッタ/ソース領域と前記リサーフ領域との間の部分の前記ベース領域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第2導電型のドレイン領域と、前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第1導電型のコレクタ領域と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記ベース領域に電気的に接続されたバックゲート電極と、前記半導体基板上に形成され且つ前記エミッタ/ソース領域に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備え、前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、前記コレクタ領域から前記エミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において、前記コレクタ領域の各部分と前記ドレイン領域の各部分とが交互に接触するように配置されていることを特徴とする。
【0020】
従来のゲート電極、コレクタ/ドレイン電極、エミッタ/ソース電極を有する3端子素子では、オン状態で電子電流と正孔電流を別々に検出できないという問題があった。
【0021】
上記構成によれば、バックゲート電極を加えた4端子素子とすることで、オン状態で電子電流と正孔電流を別々に検出することが可能となる。よって、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電流制御装置は、請求項1に記載の高耐圧半導体装置と、前記高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極へ流れ込む第1電流、または、前記コレクタ/ドレイン電流のうち前記バックゲート電極へ流れ込む第2電流のうち少なくとも一方の大きさを検出することにより、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御部とを備えることを特徴とする。
【0023】
これにより、上記高耐圧半導体装置のエミッタ/ソース電極及びバックゲート電極からそれぞれ発生するオン状態での電子電流と正孔電流のいずれかを検出できるので、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき低損失駆動が可能となる電流制御装置を実現することが可能となる。
【0024】
また、前記バックゲート電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、前記電流制御部は、前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第1抵抗素子と、前記共通電極に対する電位である第1基準電圧を発生する第1基準電圧発生回路と、第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第1基準電圧発生回路に接続され、前記第1抵抗素子の両端子間に発生した第1電圧と前記第1基準電圧とを比較する第1比較回路と、前記第1比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備えてもよい。
【0025】
本態様によれば、エミッタ/ソース電極に電流検出用である第1抵抗素子抵抗が接続され、バックゲート電極は共通電極に接続されるため、電流が流れるオン状態ではバックゲート電極に比べエミッタ/ソース電極の電位が大きくなる。この結果、ベース領域の電位がエミッタ/ソース領域の電位に比べて0.6V程度大きくなることによりベース領域からエミッタ/ソース領域へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップ現象に対する耐性を、従来の構成の場合より大きくできる特長がある。
【0026】
また、第1抵抗素子に流れる電流はエミッタ/ソース電極に流れる電子電流のみである。一方、図12に示した従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は電子電流と正孔電流の和である。従って従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時に電流検出用抵抗に流れる電流を小さくできるので、当該抵抗に発生する損失を低減できるという特長がある。
【0027】
また、前記エミッタ/ソース電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、前記電流制御部は、前記バックゲート電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第2電流を検出するための第2抵抗素子と、前記共通電極に対する電位である第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路と、第1入力端子が前記バックゲート電極に接続され、第2入力端子が前記第2基準電圧発生回路に接続され、前記第2抵抗素子の両端子間に発生した第2電圧と前記第2基準電圧とを比較する第2比較回路と、前記第2比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備えてもよい。
【0028】
本態様によれば、バックゲート電極に電流検出用である第2抵抗素子が接続され、エミッタ/ソース電極は共通電極に接続されるため、高耐圧半導体装置がMOS動作からIGBT動作に切替った後に流れる正孔電流は、バックゲート電極に接続され第2抵抗素子により検出される。従って、図12に示した従来の電流制御装置では不可能であったMOS動作からIGBT動作切替りの精確な検出が、本発明により可能となる。
【0029】
また、第2抵抗素子に流れる電流は、バックゲート電極に流れる正孔電流のみである。一方、図12に示した従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は電子電流と正孔電流の和である。従って従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時に電流検出用抵抗に流れる電流を小さくできるので、抵抗に発生する損失を低減できるという特長がある。
【0030】
また、前記電流制御部は、さらに、前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入された、ラッチアップを防止するためのラッチアップ防止用抵抗素子を備えてもよい。
【0031】
本態様によれば、エミッタ/ソース電極にラッチアップ防止用抵抗を接続しているため、ベース領域からエミッタ/ソース領域へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を大きくすることができる。
【0032】
また、前記電流制御部は、さらに、前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第3抵抗素子と、前記共通電極に対する電位である第3基準電圧を発生する第3基準電圧発生回路と、第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第3基準電圧発生回路に接続され、前記第3抵抗素子の両端子間に発生した第3電圧と前記第3基準電圧とを比較する第3比較回路とを備え、前記電流制御回路は、前記第1及び第3比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御してもよい。
【0033】
本態様によれば、エミッタ/ソース電極とバックゲート電極それぞれに対して電流検出用抵抗と比較回路を設けているため、バックゲート電極のみに第2抵抗素子が接続された電流制御装置と比較して、MOS動作時の電子電流も検出可能とできるという特長がある。また、エミッタ/ソース電極に電流検出用である第3抵抗素子が接続されているため、当該抵抗を接続しない場合と比較して、ベース領域からエミッタ/ソース領域へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を大きくすることができる。
【0034】
また、前記電流制御回路は、前記第2電圧が前記第2基準電圧以上となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記高耐圧半導体装置のゲート電圧値を上げ、前記第2電圧が前記第2基準電圧以下となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記ゲート電圧値を下げるゲート電圧選択回路を備えてもよい。
【0035】
本態様によれば、比較回路からの信号を受け取るゲート電圧選択回路を有する為、高耐圧半導体装置のMOS動作からIGBT動作への切替りを検出し、ゲート電圧選択回路によってゲート電圧を、MOS動作時は例えば6V、IGBT動作へと移行するとゲート電圧を例えば12V、というように切り替えることが可能である。そのため、MOS動作時においてはゲートドライブ損失が、IGBT動作時においてはオン抵抗による損失が、より低減可能となる特長がある。
【発明の効果】
【0036】
本発明の高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置によれば、MOS動作とIGBT動作との切替りが高精度に検出されるので、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の構造斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の等価回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図7】本発明の実施の形態5に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図8】本発明の実施の形態6に係る電流制御装置の回路構成図である。
【図9】特許文献1に記載された、3つの電極を有する高耐圧半導体装置の一例を示す図である。
【図10】特許文献1に記載された高耐圧半導体装置の等価回路図である。
【図11】高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流との相関を示すグラフである。
【図12】特許文献1に記載された高耐圧半導体装置を用いた電流制御装置の一般的な回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態における高耐圧半導体装置は、P型の半導体基板の表面部に形成されたN型のリサーフ領域と、当該リサーフ領域と隣り合うように形成されたP型のベース領域と、当該ベース領域内にリサーフ領域とは離隔して形成されたN型のエミッタ/ソース領域と、当該エミッタ/ソース領域とリサーフ領域との間の部分のベース領域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、リサーフ領域内にベース領域とは離隔して形成されたN型のドレイン領域及びコレクタ領域と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、コレクタ領域及びドレイン領域の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、ベース領域に電気的に接続されたバックゲート電極と、エミッタ/ソース領域に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備え、コレクタ領域及びドレイン領域は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、コレクタ領域からエミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において、コレクタ領域の各部分とドレイン領域の各部分とが交互に接触するように配置されている。
【0039】
上記構成のように、高耐圧半導体装置を、バックゲート電極を加えた4端子素子とすることで、オン状態で電子電流と正孔電流を別々に検出することが可能となる。よって、MOS動作とIGBT動作との切替りを高精度に検出でき、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の構造斜視図である。同図に記載された高耐圧半導体装置40は、エミッタ/ソース電極61と、バックゲート電極62と、ゲート電極90と、コレクタ/ドレイン電極110との、4つの電極を有している。
【0041】
P-型基板1の表面部にN型のリサーフ領域5が形成されている。同じくP-型基板1内に、リサーフ領域5と隣り合うように、P型ベース領域10が形成されている。P型ベース領域10内には、リサーフ領域5とは離隔してN+型エミッタ/ソース領域14と、P+型ベースコンタクト領域15とが形成されている。
【0042】
さらに、N+型エミッタ/ソース領域14とリサーフ領域5との間の部分のP型ベース領域10を覆うように、ゲート絶縁膜7が形成されている。
【0043】
リサーフ領域5内には、P型ベース領域10とは離隔してN+型ドレイン領域32が形成され、同じくリサーフ領域5内には、P型ベース領域10とは離隔してP型コレクタ領域31が形成されている。P型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、P型コレクタ領域31からN+型エミッタ/ソース領域14へと向かう方向に対して垂直な方向において、P型コレクタ領域31の各部分とN+型ドレイン領域32の各部分とが交互に接触するように配置されている。
【0044】
さらに、ゲート絶縁膜7上にはゲート電極90が形成されている。
また、P-型基板1上にはP型コレクタ領域31及びN+型ドレイン領域32の両方に電気的に接続されて、コレクタ/ドレイン電極110が配置されている。
【0045】
また、P-型基板1上にはエミッタ/ソース電極61が、N+型エミッタ/ソース領域14に接続されるように形成されている。
【0046】
また、P-型基板1上にはバックゲート電極62が、P+型ベースコンタクト領域15に接続されるように形成されている。このバックゲート電極62は、P-型基板1裏面に蒸着された金属層70と電気的に、または後述するセンス抵抗を介して接続されている。
【0047】
また、リサーフ領域5上にはフィールド絶縁膜9を介して層間膜12が形成されている。
【0048】
図2は、本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置の等価回路図である。高耐圧半導体装置40は等価回路的には、P1、P2、P3及びP4の4つの端子からなり、それぞれP1がコレクタ/ドレイン電極110、P2がゲート電極90、P3がエミッタ/ソース電極61、P4がバックゲート電極62に電気的に接続されている。
【0049】
高耐圧半導体装置40の動作としては、コレクタ/ドレイン電極110とエミッタ/ソース電極61間を正バイアスし、ゲート電極90に正の電圧を印加すると、N+型ドレイン領域32からエミッタ/ソース電極61へと電流が流れ始める(MOSFET動作)。
【0050】
この電流がある程度大きくなり(図11の例では1A)、P型コレクタ領域31周囲のリサーフ領域5の電位が、P型コレクタ領域31よりも約0.6V下がると、P型コレクタ領域31からホールが注入されIGBT動作へと移行する。IGBT動作へ移行すると、バックゲート電極62へも正孔電流が流れ始める。このときのコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流の相関については、図11に示すグラフの通りであり、MOSFET動作からIGBT動作へと切替るコレクタ/ドレイン電圧をVch、またその時のコレクタ/ドレイン電流をIchとすると、例えばVchは約2V程度、Ichは約1A程度となる。このように高耐圧半導体装置40では、素子に流れるコレクタ/ドレイン電流が比較的小さい時にはMOSFET動作、コレクタ/ドレイン電流が大きくなるとIGBT動作をさせることができ、ひとつの素子でMOSFETとIGBTの二種類を使いわけることができる。
【0051】
次に、上述した本発明の実施の形態に係る高耐圧半導体装置40を用いた電流制御装置について説明する。
【0052】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置20は、高耐圧半導体装置40と、比較回路47と、基準電圧発生回路48と、センス抵抗49と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60とを備える。
【0053】
P4端子は少なくとも電流制御装置20で一定の電位を有する共通電極60に接続(接地)されており、P3端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗49を介して共通電極60に接続(接地)されている。
【0054】
基準電圧発生回路48は、共通電極60に対する第1基準電圧を発生する第1基準電圧発生回路である。
【0055】
比較回路47は、第1入力端子がエミッタ/ソース電極61に接続されたP3端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路48に接続された第1比較回路である。比較回路47は、第1抵抗素子であるセンス抵抗49に第1電流である電子電流46が流れたときに、センス抵抗49の両端子間に発生する第1電圧と、基準電圧発生回路48にて生成される第1基準電圧とを比較する。ここで、第1電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極61へ流れ込む電流である。
【0056】
ゲート電圧ON/OFF回路54は、比較回路47で比較された結果により、コレクタ/ドレイン電流を制御する。
【0057】
図3に記載された回路構成で高耐圧半導体装置40に流れる電流を制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電子電流46が流れ始める(MOSFET動作)。その電子電流46がある程度大きく(図11の例では1A)なるとIGBT動作へと移行するが、このとき第2電流である正孔電流45がP4端子へ流れ始める。電子電流46はIGBT動作移行後も、P1端子を流れるコレクタ/ドレイン電流が大きくなるに従って増加する。そのときセンス抵抗49に発生する電圧降下も、電子電流46が大きくなるに従って大きくなる。やがて電子電流46によって発生する第1電圧が、基準電圧発生回路48にて生成される第1基準電圧にまで達すると、比較回路47からゲート電圧ON/OFF回路54へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極60と等しくなって、電子電流46と正孔電流45は共に遮断される。
【0058】
次に、図3に記載された電流制御装置20がもたらす効果について説明する。
図3に記載された回路構成では、P3端子にセンス抵抗49が接続され、P4端子は共通電極60に接続されるため、電流が流れるオン状態ではP4端子に比べてP3端子の電位が高くなる。つまり、図1に記載された高耐圧半導体装置40におけるバックゲート電極62に比べてエミッタ/ソース電極61の電位が高くなる。
【0059】
高耐圧半導体装置40のオン状態では、特に、IGBT動作時には、P型コレクタ領域31からの正孔電流がP型ベース領域10、P+型ベースコンタクト領域15を通ってバックゲート電極62に流れ込む。このとき、P型ベース領域10の抵抗成分により、所謂ラッチアップが発生してしまう。ここで、ラッチアップとは、P型ベース領域10の電位がN+型エミッタ/ソース領域14に比べて0.6V程度大きくなると、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう現象である。
【0060】
しかし、本発明の実施の形態にかかる電流制御装置20の回路構成であれば、バックゲート電極62に比べてエミッタ/ソース電極61の電位を高くできるので、正孔電流がベース抵抗により生じる電圧が、0.6Vまで達しにくい。この結果、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を、図12に記載された従来の電流制御装置の場合よりも大きくできる特長がある。
【0061】
また、センス抵抗49を流れる電流に関して言及すると、高耐圧半導体装置40がIGBT動作であってもセンス抵抗49に流れる電流はP3端子に流れる電子電流46のみである。一方、図12に記載された従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は、電子電流と正孔電流の和である。従って従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時にセンス抵抗に流れる電流を小さくできる。その結果、センス抵抗に発生する損失を従来の構成に比べて低減できる特長がある。
【0062】
なお本実施の形態では、高耐圧半導体装置40として電流が半導体基板に対して横方向に流れる横型デバイスを用いて説明したが、電流が縦方向に流れる縦型デバイスを用いても構わない。
【0063】
また、図3に記載された電流制御装置20において、高耐圧半導体装置40とその他の、例えばセンス抵抗49や基準電圧発生回路48、比較回路47、ゲート電圧ON/OFF回路54は、別チップで構成されていても、同一半導体基板内に形成されていてもどちらでも構わない。
【0064】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置21は、高耐圧半導体装置40と、比較回路52と、基準電圧発生回路51と、センス抵抗50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60とを備える。
【0065】
P3端子は、少なくとも電流制御装置20で一定の電位を有する共通電極60に接続(接地)されており、P4端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗50を介して共通電極60と接続(接地)されている。
【0066】
基準電圧発生回路51は、共通電極60に対する第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路である。
【0067】
比較回路52は、第1入力端子がバックゲート電極62に接続されたP4端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路51に接続された第2比較回路である。比較回路52は、第2抵抗素子であるセンス抵抗50に第2電流である正孔電流45が流れたときに、センス抵抗50の両端子間に発生する第2電圧と、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧とを比較する。ここで、第2電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうちバックゲート電極62へ流れ込む電流である。
【0068】
ゲート電圧ON/OFF回路54は、比較回路52で比較された結果により、コレクタ/ドレイン電流を制御する。
【0069】
図4に記載された回路構成で高耐圧半導体装置40に流れる電流を制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電子電流46が流れ始める(MOSFET動作)。その電子電流46がある程度大きく(図11の例では1A)なるとIGBT動作へと移行するが、このとき正孔電流45がP4端子へ流れ始める。正孔電流45はIGBT動作移行後も、P1端子を流れるコレクタ/ドレイン電流が大きくなるに従って増加する。そのときセンス抵抗50に発生する電圧降下も、正孔電流45が大きくなるに従って大きくなる。やがて正孔電流45によって発生する第2電圧が、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧にまで達すると、比較回路52からゲート電圧ON/OFF回路54へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極60と等しくなって、正孔電流45と電子電流46は共に遮断される。
【0070】
次に図4に記載された電流制御装置21がもたらす効果について説明する。
図4に記載された回路構成では、P4端子にセンス抵抗50が接続され、P3端子は共通電極60に接続されるため、高耐圧半導体装置40がMOS動作からIGBT動作に切替った後に流れる正孔電流45を、P4端子に接続したセンス抵抗50により検出できる。
【0071】
より具体的には、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧を、例えば、0.02〜0.3Vの範囲で可変とし、センス抵抗50を、例えば、0.2Ωとする。そしてMOS動作からIGBT動作への切替りを、第2基準電圧が例えば0.03Vの時として検出する。高耐圧半導体装置40がIGBT動作へ移行しP4端子に正孔電流45が流れ始め、センス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vに達した時、すなわち正孔電流45として0.15A流れた時が、MOSからIGBT動作への切替りとして精確に検出される。逆にセンス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vを下回った時は、IGBT動作からMOS動作への切替りとして検出可能である。
【0072】
以上のように、図12に記載された従来の電流制御装置では不可能であった、MOS動作からIGBT動作切替りの精確な検出が、本実施の形態では可能となる。
【0073】
また、センス抵抗50を流れる電流に関して言及すると、高耐圧半導体装置40がIGBT動作であってもセンス抵抗50に流れる電流はP4端子に流れる正孔電流45のみである。一方、図12に記載された従来の電流制御装置では、センス抵抗558に流れる電流555は電子電流と正孔電流の和である。従って、本実施の形態に係る電流制御装置21は、従来の電流制御装置に比べて、同じ量のコレクタ/ドレイン電流を流した時にセンス抵抗に流れる電流を小さくできる。その結果、センス抵抗に発生する損失を従来の構成に比べて低減できる特長がある。
【0074】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置22は、高耐圧半導体装置40と、比較回路52と、基準電圧発生回路51と、センス抵抗50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60と、ゲート電圧選択回路53とを備える。
【0075】
本実施の形態に係る電流制御装置22の構成が、実施の形態2に係る電流制御装置21の構成と異なる点は、比較回路52からの信号を受け取るゲート電圧選択回路53が設けられている点である。実施の形態2に係る電流制御装置21と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0076】
ゲート電圧選択回路53は、比較回路52からの信号を受け取って、センス抵抗50に発生する第2電圧が、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧以上のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を上げる。一方で、第2基準電圧以下のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を下げる機能を有する。
【0077】
例えば、高耐圧半導体装置40のMOS動作からIGBT動作への切替りを検出し、ゲート電圧選択回路53によってP2端子へ印加するゲート電圧を、MOS動作時は6V、IGBT動作時は12V、というように切り替えることが可能である。
【0078】
次に、MOS動作時とIGBT動作時のゲート電圧の切り替えについて、さらに詳細に説明する。
【0079】
図11は、高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電圧とコレクタ/ドレイン電流との相関を示すグラフである。図11からわかる通り、Vchが2Vより小さいMOS動作領域においては、P2端子の電圧すなわちゲート電圧Vgが6V以上であれば電流駆動能力は変わらない。それゆえMOS動作領域ではVg=6Vとすることで、Vg=12Vの場合と比べてドライブ損失を低減できる。一方で、Vchが2Vより大きいIGBT動作領域では、Vg=6VとVg=12Vとでは、電流駆動能力に大きな差がある。この領域では、Vg=12Vとすることで、Vg=6Vに比べてオン抵抗による損失を小さくできる。
【0080】
以上から、損失低減の最適化のためには、MOS動作とIGBT動作の切替りを精確に検出し、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが必要である。
【0081】
ここで、MOS動作時のドライブ損失に関して以下に具体的に説明する。
【0082】
高耐圧半導体装置40のゲートドライブ損失Pは式1で表わされ、ゲート電圧Vgの2乗に比例して大きくなる。よって、例えば、高耐圧半導体装置40のゲート容量Cを1000pF、駆動周波数foscを100kHzとすると、
P=1/2×C×Vg2×2×fosc (式1)
となる。
【0083】
式1より、Vg=12Vのときはゲートドライブ損失P=14mWである。一方で、Vg=6VとすることでP=4mWとなり、差し引き10mWの損失低減が可能となる。
【0084】
以上より、本発明における電流制御装置22では、MOS動作とIGBT動作の切替りを精確に検出し、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが可能である。よって、実施の形態2で説明した電流制御装置21と比較して、更なる損失の低減が可能である。
【0085】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置23は、高耐圧半導体装置40と、比較回路52と、基準電圧発生回路51と、センス抵抗49及び50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60と、ゲート電圧選択回路53とを備える。
【0086】
本実施の形態に係る電流制御装置23の構成が、実施の形態3に係る電流制御装置22の構成と異なる点は、P3端子がラッチアップ防止用であるセンス抵抗49を介して共通電極に接続(接地)されている点である。実施の形態3に係る電流制御装置22と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0087】
ラッチアップ防止用のセンス抵抗49により、電流が流れるオン状態ではP3端子の電位が共通電極60に対して上昇する。このため、オン状態でのP3端子の電位が、図5に記載された実施の形態3に係る電流制御装置22のP3端子よりも高くなる。つまり本実施の形態では、図1に記載された高耐圧半導体装置40におけるエミッタ/ソース電極61の電位が、実施の形態3のそれと比べて高くなる。
【0088】
この結果、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を、図5に記載された電流制御装置22よりも大きくすることが可能となる。
【0089】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置24は、高耐圧半導体装置40と、比較回路47及び52と、基準電圧発生回路48及び51と、センス抵抗49及び50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60とを備える。
【0090】
P3端子は電流検出用抵抗であるセンス抵抗49を介して共通電極60に接続(接地)されており、P4端子は同じく電流検出用抵抗であるセンス抵抗50を介して共通電極60に接続(接地)されている。
【0091】
基準電圧発生回路48は、共通電極60に対する第3基準電圧を発生する第3基準電圧発生回路である。
【0092】
基準電圧発生回路51は、共通電極60に対する第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路である。
【0093】
比較回路47は、第1入力端子がエミッタ/ソース電極61に接続されたP3端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路48に接続された第3比較回路である。比較回路47は、第3抵抗素子であるセンス抵抗49に第1電流である電子電流46が流れたときに、センス抵抗49の両端子間に発生する第3電圧と、基準電圧発生回路48にて生成される第3基準電圧とを比較する。ここで、第1電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極61へ流れ込む電流である。
【0094】
比較回路52は、第1入力端子がバックゲート電極62に接続されたP4端子に接続され、第2入力端子が基準電圧発生回路51に接続された第2比較回路である。比較回路52は、第2抵抗素子であるセンス抵抗50に第2電流である正孔電流45が流れたときに、センス抵抗50の両端子間に発生する第2電圧と、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧とを比較する。ここで、第2電流とは、高耐圧半導体装置40のコレクタ/ドレイン電流のうちバックゲート電極62へ流れ込む電流である。
【0095】
ゲート電圧ON/OFF回路54は、比較回路47で比較された結果により、コレクタ/ドレイン電流を制御する。
【0096】
図7に記載された回路構成で高耐圧半導体装置40に流れる電流を制御する方法としては、P1端子とP3端子を正バイアスし、P2端子に正の電圧を印加すると、P1端子からP3端子へと電子電流46が流れ始める(MOSFET動作)。その電子電流46がある程度大きく(図11の例では1A)なるとIGBT動作へと移行するが、このとき正孔電流45がP4端子へ流れ始める。電子電流46はIGBT動作移行後も、P1端子を流れるコレクタ/ドレイン電流が大きくなるに従って増加する。そのときセンス抵抗49に発生する電圧降下も、電子電流46が大きくなるに従って大きくなる。それが、基準電圧発生回路48にて生成される第3基準電圧にまで達すると、比較回路47からゲート電圧ON/OFF回路54へと信号が伝播される。すると正バイアスされていたP2端子はターンオフされ、その電圧は共通電極60と等しくなって、電子電流46と正孔電流45は共に遮断される。
【0097】
さらに、図7に記載された回路構成では、P4端子にセンス抵抗50を接続するため、高耐圧半導体装置40がMOS動作からIGBT動作に切替った後に流れる正孔電流45を、P4端子に接続したセンス抵抗50により検出できる。
【0098】
より具体的には、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧を、例えば、0.03Vで設定とし、センス抵抗50を、例えば、0.2Ωとする。高耐圧半導体装置40がIGBT動作へ移行しP4端子に正孔電流45が流れ始め、センス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vに達した時、すなわち正孔電流45として0.15A流れると、比較回路52から検出信号64が出力される。この検出信号64により、MOSからIGBT動作への切替りが精確に検出される。逆に、センス抵抗50に発生する電圧降下が0.03Vを下回った時は、IGBT動作からMOS動作への切替りとして検出可能である。
【0099】
以上より、図7に記載された実施の形態5に係る電流制御装置24においては、図4に記載された実施の形態2に係る電流制御装置21に比べて、電子電流46をセンス抵抗49で検出できるので、MOS動作領域(図11の1Aまで)のコレクタ/ドレイン電流の制御が可能となる特長がある。すなわち、実施の形態2では、P4端子のみにセンス抵抗50を接続していたため、高耐圧半導体装置40がMOS動作時のコレクタ/ドレイン電流を検出できなかったが、本構成を採用することでMOS動作領域においてもコレクタ/ドレイン電流の制御が可能となる。
【0100】
また、P3端子に接続したセンス抵抗49により、電流が流れるオン状態ではP3端子の電位が共通電極60に対して上昇する。このため、オン状態でのP3端子の電位が、実施の形態2に係る電流制御装置21のP3端子よりも高くなる。つまり本実施の形態では、図1に記載された高耐圧半導体装置40におけるエミッタ/ソース電極61の電位が、実施の形態2のそれと比べて高くなる。
【0101】
この結果、P型ベース領域10からN+型エミッタ/ソース領域14へと電流が流れてしまう、所謂ラッチアップに対する耐性を、実施の形態2に係る電流制御装置21よりも大きくすることが可能となる。
【0102】
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6に係る電流制御装置の回路構成図である。同図に記載された電流制御装置25は、高耐圧半導体装置40と、比較回路47及び52と、基準電圧発生回路48及び51と、センス抵抗49及び50と、ゲート電圧ON/OFF回路54と、共通電極60と、ゲート電圧選択回路53とを備える。
【0103】
本実施の形態に係る電流制御装置25の構成が、実施の形態5に係る電流制御装置24の構成と異なる点は、比較回路52からの信号を受け取るゲート電圧選択回路53が設けられている点である。実施の形態5に係る電流制御装置24と同じ点は説明を省略し、以下、異なる点のみ説明する。
【0104】
このゲート電圧選択回路53は、比較回路52からの信号を受け取って、センス抵抗50の両端子間に発生する第2電圧が、基準電圧発生回路51にて生成される第2基準電圧以上のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を上げる。一方で、第2基準電圧以下のときは、P2端子へ印加される高耐圧半導体装置40のゲート電圧値を下げる機能を有する。
【0105】
このため、本発明における電流制御装置では、MOS動作とIGBT動作の切替りを精確に検出し、MOS動作時にはゲート電圧6Vとしてドライブ損失を低減し、IGBT動作時にはゲート電圧を12Vとしてオン抵抗による損失を低減することが可能である。よって、実施の形態5で説明した電流制御装置24と比較して、更なる損失の低減が可能である。
【0106】
以上、本発明の高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置によれば、MOS動作とIGBT動作との切替りが高精度に検出されるので、当該高精度検出により低損失駆動が可能となる。
【0107】
なお、本発明に係る高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置は、上述した実施の形態に限定されるものではない。実施の形態1〜6における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態1〜6に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の高耐圧半導体装置及びそれを用いた電流制御装置は、特に、スタンバイ時における低消費電力性を実現したスイッチング電源装置に用いられる部品として有用である。
【符号の説明】
【0109】
1、501 P-型基板
5、505 リサーフ領域
7、507 ゲート絶縁膜
9、509 フィールド絶縁膜
10、502 P型ベース領域
12、512 層間膜
14、504 N+型エミッタ/ソース領域
15、503 P+型ベースコンタクト領域
20、21、22、23、24、25 電流制御装置
31、561 P型コレクタ領域
32、562 N+型ドレイン領域
40、500 高耐圧半導体装置
45 正孔電流
46 電子電流
47、52、556 比較回路
48、51、557 基準電圧発生回路
49、50、558 センス抵抗
53 ゲート電圧選択回路
54、554 ゲート電圧ON/OFF回路
60、560 共通電極
61、521 エミッタ/ソース電極
62 バックゲート電極
64 検出信号
70、523 金属層
90、522 ゲート電極
110、520 コレクタ/ドレイン電極
524 バックゲート配線
555 電流
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板の表面部に形成された第2導電型のリサーフ領域と、
前記半導体基板内に前記リサーフ領域と隣り合うように形成された第1導電型のベース領域と、
前記ベース領域内に前記リサーフ領域とは離隔して形成された第2導電型のエミッタ/ソース領域と、
前記半導体基板上であって、前記エミッタ/ソース領域と前記リサーフ領域との間の部分の前記ベース領域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、
前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第2導電型のドレイン領域と、
前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第1導電型のコレクタ領域と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板上に形成され且つ前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、
前記半導体基板上に形成され且つ前記ベース領域に電気的に接続されたバックゲート電極と、
前記半導体基板上に形成され且つ前記エミッタ/ソース領域に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備え、
前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、前記コレクタ領域から前記エミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において、前記コレクタ領域の各部分と前記ドレイン領域の各部分とが交互に接触するように配置されている
高耐圧半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高耐圧半導体装置と、
前記高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極へ流れ込む第1電流、または、前記コレクタ/ドレイン電流のうち前記バックゲート電極へ流れ込む第2電流のうち少なくとも一方の大きさを検出することにより、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御部とを備える
電流制御装置。
【請求項3】
前記バックゲート電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、
前記電流制御部は、
前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第1抵抗素子と、
前記共通電極に対する電位である第1基準電圧を発生する第1基準電圧発生回路と、
第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第1基準電圧発生回路に接続され、前記第1抵抗素子の両端子間に発生した第1電圧と前記第1基準電圧とを比較する第1比較回路と、
前記第1比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備える
請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項4】
前記エミッタ/ソース電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、
前記電流制御部は、
前記バックゲート電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第2電流を検出するための第2抵抗素子と、
前記共通電極に対する電位である第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路と、
第1入力端子が前記バックゲート電極に接続され、第2入力端子が前記第2基準電圧発生回路に接続され、前記第2抵抗素子の両端子間に発生した第2電圧と前記第2基準電圧とを比較する第2比較回路と、
前記第2比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備える
請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項5】
前記電流制御部は、さらに、
前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入された、ラッチアップを防止するためのラッチアップ防止用抵抗素子を備える
請求項4に記載の電流制御装置。
【請求項6】
前記電流制御部は、さらに、
前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第3抵抗素子と、
前記共通電極に対する電位である第3基準電圧を発生する第3基準電圧発生回路と、
第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第3基準電圧発生回路に接続され、前記第3抵抗素子の両端子間に発生した第3電圧と前記第3基準電圧とを比較する第3比較回路とを備え、
前記電流制御回路は、前記第1及び第3比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する
請求項4に記載の電流制御装置。
【請求項7】
前記電流制御回路は、
前記第2電圧が前記第2基準電圧以上となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記高耐圧半導体装置のゲート電圧値を上げ、前記第2電圧が前記第2基準電圧以下となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記ゲート電圧値を下げるゲート電圧選択回路を備える
請求項4〜6のうちいずれか1項に記載の電流制御装置。
【請求項1】
第1導電型の半導体基板の表面部に形成された第2導電型のリサーフ領域と、
前記半導体基板内に前記リサーフ領域と隣り合うように形成された第1導電型のベース領域と、
前記ベース領域内に前記リサーフ領域とは離隔して形成された第2導電型のエミッタ/ソース領域と、
前記半導体基板上であって、前記エミッタ/ソース領域と前記リサーフ領域との間の部分の前記ベース領域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と、
前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第2導電型のドレイン領域と、
前記リサーフ領域内に前記ベース領域とは離隔して形成された第1導電型のコレクタ領域と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記半導体基板上に形成され且つ前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域の両方に電気的に接続されたコレクタ/ドレイン電極と、
前記半導体基板上に形成され且つ前記ベース領域に電気的に接続されたバックゲート電極と、
前記半導体基板上に形成され且つ前記エミッタ/ソース領域に電気的に接続されたエミッタ/ソース電極とを備え、
前記コレクタ領域及び前記ドレイン領域は、それぞれ分離した複数の部分から構成され、前記コレクタ領域から前記エミッタ/ソース領域へと向かう方向に対して垂直な方向において、前記コレクタ領域の各部分と前記ドレイン領域の各部分とが交互に接触するように配置されている
高耐圧半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高耐圧半導体装置と、
前記高耐圧半導体装置のコレクタ/ドレイン電流のうち前記エミッタ/ソース電極へ流れ込む第1電流、または、前記コレクタ/ドレイン電流のうち前記バックゲート電極へ流れ込む第2電流のうち少なくとも一方の大きさを検出することにより、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御部とを備える
電流制御装置。
【請求項3】
前記バックゲート電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、
前記電流制御部は、
前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第1抵抗素子と、
前記共通電極に対する電位である第1基準電圧を発生する第1基準電圧発生回路と、
第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第1基準電圧発生回路に接続され、前記第1抵抗素子の両端子間に発生した第1電圧と前記第1基準電圧とを比較する第1比較回路と、
前記第1比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備える
請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項4】
前記エミッタ/ソース電極は、少なくとも前記電流制御部で一定の電位を有する共通電極に接続され、
前記電流制御部は、
前記バックゲート電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第2電流を検出するための第2抵抗素子と、
前記共通電極に対する電位である第2基準電圧を発生する第2基準電圧発生回路と、
第1入力端子が前記バックゲート電極に接続され、第2入力端子が前記第2基準電圧発生回路に接続され、前記第2抵抗素子の両端子間に発生した第2電圧と前記第2基準電圧とを比較する第2比較回路と、
前記第2比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する電流制御回路とを備える
請求項2に記載の電流制御装置。
【請求項5】
前記電流制御部は、さらに、
前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入された、ラッチアップを防止するためのラッチアップ防止用抵抗素子を備える
請求項4に記載の電流制御装置。
【請求項6】
前記電流制御部は、さらに、
前記エミッタ/ソース電極と前記共通電極との間に挿入され、前記共通電極へ流れ込む前記第1電流を検出するための第3抵抗素子と、
前記共通電極に対する電位である第3基準電圧を発生する第3基準電圧発生回路と、
第1入力端子が前記エミッタ/ソース電極に接続され、第2入力端子が前記第3基準電圧発生回路に接続され、前記第3抵抗素子の両端子間に発生した第3電圧と前記第3基準電圧とを比較する第3比較回路とを備え、
前記電流制御回路は、前記第1及び第3比較回路で比較された結果により、前記コレクタ/ドレイン電流を制御する
請求項4に記載の電流制御装置。
【請求項7】
前記電流制御回路は、
前記第2電圧が前記第2基準電圧以上となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記高耐圧半導体装置のゲート電圧値を上げ、前記第2電圧が前記第2基準電圧以下となった場合、前記第2比較回路からの信号を受け取ることにより前記ゲート電圧値を下げるゲート電圧選択回路を備える
請求項4〜6のうちいずれか1項に記載の電流制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−278258(P2010−278258A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129547(P2009−129547)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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