説明

高配向ダイヤモンド膜及びその製造方法並びに高配向ダイヤモンド膜を備えた電子デバイス

【課題】 表面が平坦で且つ表面に非配向結晶が存在せず、従来よりも薄い膜厚で結晶粒径を大きくすることができる高配向ダイヤモンド膜及びその製造方法並びに高配向ダイヤモンド膜を備えた電子デバイスを提供する。
【解決手段】 原料ガスとしてメタン及び水素の混合ガスを使用して、CVD法により、基板3上にダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させてダイヤモンド層1を形成する。次に、原料ガスとしてメタン、水素及び酸素の混合ガスを使用し、プラズマCVD法により、ダイヤモンド層1上にダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させてダイヤモンド層2を形成する。このとき、原料ガスの圧力を133hPa以上とし、原料ガスの組成を([C]−[O])/[CH+H+O]が−0.2×10−2以上で且つ[O]/[C]が1.2以下になるようにし、更に、基板温度を750℃を超え1000℃未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶粒子が高度に配向した高配向ダイヤモンド膜及びその製造方法並びに高配向ダイヤモンド膜を備えた電子デバイスに関し、特に、トランジスタ及びダイオード等の電子デバイスに好適な高配向ダイヤモンド膜及びその製造方法並びに高配向ダイヤモンド膜を備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高配向ダイヤモンド膜は、広義には多結晶膜に分類されるが、結晶粒子の成長方向及び面内方向が共に一方向に配向し、表面は平坦な(001)ファセットが並ぶ特徴的な表面形態をとっている。このため、高配向ダイヤモンド膜は、通常の多結晶膜に比べて表面近傍における結晶欠陥密度が小さく、表面付近でのキャリア移動度は多結晶膜に比べて2桁程度大きくなることが知られており、横方向のキャリア移動を利用する電界効果トランジスタ等の電子デバイス用ダイヤモンド膜として好適であると考えられている。
【0003】
このような高配向ダイヤモンド膜は、例えば、メタンガスを含有する気相中で、シリコン基板に負のバイアス電圧を印加しながらマイクロ波を照射することにより形成することができる(例えば、特許文献1参照)。また、基板にバイアス電圧を印加した後、結晶粒子の配向度を向上させるために、1時間あたり3.9乃至4.5μmの速度でダイヤモンドを[001]優先成長(第1の成長)させ、その後、表面を平坦化するために、1時間あたり2μm以下の速度でダイヤモンドを表面平坦化成長(第2の成長)させて、表面が平坦なヘテロエピタキシャルダイヤモンド膜を得る方法も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−69789号公報
【非特許文献1】B. Dischler、C. Wild編,「Low-Pressure Synthetic Diamond」,1998年,p.153−158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の従来の技術には以下に示す問題点がある。ダイヤモンド膜をトランジスタ等の電子デバイスに応用する場合は、ダイヤモンドの結晶粒径が大きい程優れた特性が得られる。例えば、トランジスタに適用する場合、一般にゲート長は30乃至100μmであるため、高配向ダイヤモンド膜の結晶粒径は最低でも30μm以上にする必要があり、結晶粒径が100μm以上であることがより好ましい。前述の非特許文献1に記載の方法で高配向ダイヤモンド膜を形成すると、第1の成長においては、ダイヤモンドが柱状成長するため粒径が徐々に大きくなるが、その拡大速度が遅いため、結晶粒径を30μm以上にするためには、膜厚を厚くしなければならないという問題点がある。
【0006】
また、ダイヤモンド膜の表面は、平坦であることが望ましいが、非特許文献1に記載の方法は、第2の成長の際に[001]方位の成長速度よりも[111]方位の成長速度の方が速い条件でダイヤモンドを合成しているため、少しでも非配向結晶が突出していると、この非配向結晶が優先的に成長してしまう。非配向結晶が混在している高配向ダイヤモンド膜を研磨により表面を平坦化して電子デバイス用基板として使用した場合、研磨による内部損傷防止及びドーピング用として、その上にエピタキシャル成長膜を成膜すると、非配向結晶の部分で成長セクタが変わってしまう。成長セクタにより不純物の分配係数が異なるため、このエピタキシャル成長膜に不純物をドープすると、非配向結晶の部分とその他の部分とで不純物濃度が異なってしまい、デバイス動作にとっては好ましくない。このため、非特許文献1に記載の方法では、非配向結晶が突出しなくなるまで第1の成長を行わなければならず、例えば厚さが50μm以下の薄膜は形成することができないという問題点がある。
【0007】
なお、非特許文献1には、良好なSiC膜をバッファ層とした場合には、膜厚が5μm以下であっても平滑なダイヤモンド膜を形成することができると記載されているが、その場合でも平均結晶粒径と膜厚との比(平均結晶粒径/膜厚)が1/2以下であるため、平均結晶粒径を30μm以上にするためには、膜厚を厚くしなければならないという問題点は解決されない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、表面が平坦で且つ表面に非配向結晶が存在せず、従来よりも薄い膜厚で結晶粒径を大きくすることができる高配向ダイヤモンド膜及びその製造方法並びに高配向ダイヤモンド膜を備えた電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願第1発明に係る高配向ダイヤモンド膜は、{111}セクタ成長により形成された第1のダイヤモンド層と、前記第1のダイヤモンド層上に{100}セクタ成長により形成され前記第1のダイヤモンド層から遠ざかるに従い結晶粒径が大きくなる第2のダイヤモンド層と、を有し、
前記第2のダイヤモンド層の表面における平均結晶粒径をD(μm)、前記第2のダイヤモンド層と前記第1のダイヤモンド層との界面、又は前記界面が前記第2のダイヤモンド層の表面に平行でない場合は前記第1のダイヤモンド層内における前記界面に最も近く且つ前記第2のダイヤモンド層の表面に平行の断面における前記第1のダイヤモンド層の平均結晶粒径をD(μm)とし、
前記第2のダイヤモンド層の表面から、前記第1のダイヤモンド層と前記第2のダイヤモンド層の界面までの距離をL(μm)としたとき、下記数式1により求められる粒径拡大率M(%)が50%以上であることを特徴とする。
【0010】
【数1】

【0011】
本発明においては、粒径拡大率Mが50%以上と、急激に結晶粒径が拡大しているため、従来よりも薄い膜厚で大粒径の高配向ダイヤモンド膜が得られる。また、{111}セクタ成長により形成された第1のダイヤモンド層上に、{100}セクタ成長により形成された第2のダイヤモンド層を形成しているため、表面が平坦で、表面に非配向結晶が殆ど存在していない。これにより、研磨等による表面平坦化処理は不要になると共に、電子デバイス用途に使用しても電荷の伝導が妨げられず、更に、表面上にダイヤモンドをエピタキシャル成長させた場合でも、不純物濃度の偏りがなく、表面が平坦なダイヤモンドエピタキシャル膜が得られる。
【0012】
また、前記第1のダイヤモンド層における前記第2のダイヤモンド層側の面を含む表層部は、相互に隣接する結晶粒子のオイラー角{α,β,γ}の差{Δα,Δβ,Δγ}が、|Δα|≦1°、|Δβ|≦1°、|Δγ|≦1°となるようにすることができる。これにより、第1のダイヤモンド層上に、表面が平坦で、表面に非配向結晶が殆ど存在していない第2のダイヤモンド層を形成することができる。なお、オイラー角{α,β,γ}は、結晶粒子の結晶方位を表す値である。
【0013】
更に、前記第2のダイヤモンド層の表面における平均結晶粒径は30μm以上であることが好ましく、より好ましくは100μm以上である。これにより、トランジスタに適用した場合の特性を向上させることができる。
【0014】
更にまた、前記第2のダイヤモンド層の表面は、(100)面により形成することができる。これにより、表面を平坦化することができる。
【0015】
本願第2発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、化学気相成長法により基板上にダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させて第1のダイヤモンド層を形成する工程と、炭素原子を含有するガスと酸素ガスとを含む混合原料ガスを使用し、化学気相成長法により前記第1のダイヤモンド層上にダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させて第2のダイヤモンド層を形成する工程と、を有し、
前記第2のダイヤモンド層を形成する工程において、
前記原料ガスのガス圧を133hPa以上とし、
前記原料ガスの組成を炭素原子の量(モル)と酸素原子の量(モル)との差を全ガス分子の量(モル)で割った値が−0.2×10−2以上で
且つ酸素原子の量(モル)と炭素原子の量(モル)との比(O/C)が1.2以下になるようにし、
基板温度を750℃を超え1000℃未満とすることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、第2のダイヤモンド層を形成する際の、気相合成条件を最適化しているため、第2のダイヤモンド層における欠陥を低減することができると共に、平均粒径拡大率を50%以上にすることができる。
【0017】
この高配向ダイヤモンド膜の製造方法においては、前記第2のダイヤモンド層を形成する工程において、前記原料ガスにおける炭素原子の量(モル)と酸素原子の量(モル)との差を全ガス分子の量(モル)で割った値が1.0×10−2以上、又は前記原料ガスにおける酸素原子の量(モル)と炭素原子の量(モル)との比(O/C)が0.5以下である場合に、前記基板温度を750℃を超え900℃以下とすることができる。これにより、第2のダイヤモンド層における欠陥発生を抑制することができる。
【0018】
また、前記第2のダイヤモンド層は、例えばプラズマ気相成長法又は熱フィラメント気相成長法により形成することができる。これにより、第2のダイヤモンド層の表面に存在する非配向結晶を低減することができる。
【0019】
更に、前記第1のダイヤモンド層を形成する工程において、前記基板の表面にダイヤモンド配向核を形成した後に、酸素ガスを含まない混合原料ガスを使用し、化学気相成長法により前記基板上にダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させるようにすることができる。
【0020】
更にまた、前記第2のダイヤモンド層を形成する工程において、徐々に又は段階的に前記酸素ガスの割合を増加させてダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させることにより第2のダイヤモンド層を形成するようにすることができる。これにより、成長速度と粒径拡大とのバランスを保ちながら、効率よく第2のダイヤモンド層を形成することができる。
【0021】
本願第3発明に係る高配向ダイヤモンド膜を備えた電子デバイスは、前述の高配向ダイヤモンド膜を有することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、前述の高配向ダイヤモンド膜を備えているため、従来のダイヤモンド電子デバイスに比べて、性能が向上すると共に低コスト化することができる。
【0023】
この電子デバイスは、例えば、トランジスタとして使用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、粒径拡大率Mを50%以上にして急激に結晶粒径を拡大しているため、従来よりも薄い膜厚で結晶粒径を大きくすることができ、また、{111}セクタ成長により形成された第1のダイヤモンド層上に、{100}セクタ成長により形成された第2のダイヤモンド層を形成しているため、表面が平坦で且つ表面に非配向結晶が存在しない高配向ダイヤモンド膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態に係る高配向ダイヤモンド膜について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1は本実施形態の高配向ダイヤモンド膜を示す模式図である。なお、図1においては、図を見やすくするために非配向結晶にハッチングをかけて示している。図1に示すように、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜は、結晶粒径が略一定である第1のダイヤモンド層1上に、この第1のダイヤモンド層1から遠ざかるに従い結晶粒径が大きくなる部分を含む第2のダイヤモンド層2が形成されている。第2のダイヤモンド層の表面に現れているダイヤモンド結晶は、第1のダイヤモンド層と第2のダイヤモンド層との界面から粒径拡大率50%以上で粒径が拡大されて連続的に成長し、表面に出現したものである。
【0026】
ダイヤモンド層1は、例えば、シリコン、ニッケル、白金、イリジウム、パラジウム、サファイヤ、窒化ガリウム、炭化ケイ素又はチタン酸ストロンチウム等からなる基板3上に、ダイヤモンド結晶を主に{111}セクタ成長させることにより形成されている。このとき、ダイヤモンド層1におけるダイヤモンド層2側の面を含む表層部は、相互に隣接する結晶粒子のオイラー角を夫々{α,β,γ}及び{α,β,γ}とし、これらのオイラー角の差{(α−α),(β−β),(γ−γ)}を{Δα,Δβ,Δγ}としたとき、|Δα|≦1°、|Δβ|≦1°、|Δγ|≦1°であることが好ましい。これにより、ダイヤモンド層1上に、表面が平坦で、表面に非配向結晶が殆ど存在していないダイヤモンド層2を形成することができる。なお、ダイヤモンド層1の表層部とは、ダイヤモンド層1におけるダイヤモンド層2側の表面から厚さ方向に50μmまでの範囲を少なくとも含むものである。
【0027】
一方、ダイヤモンド層2は、ダイヤモンド結晶を主に{100}セクタ成長させることにより形成されており、その表面、即ち、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜の表面は、(100)面により構成された平坦な面になっている。このダイヤモンド層2の表面における粒界部分以外の部分の平均粗さRaは、100nm以下であることが好ましい。なお、本実施形態における平均粗さRaは、JIS規格B0601に規定されている算術平均粗さRaである。また、ダイヤモンド層2は主に配向結晶4により構成されており、その表面には非配向結晶5がほとんど存在していない。そして、このダイヤモンド層2の表面における平均結晶粒径は30μm以上であり、10mm程度とすることもできるが、より好ましくは100μm以上1mm以下である。
【0028】
そして、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜においては、第2のダイヤモンド層2の表面における平均結晶粒径をD(μm)とする。また、第2のダイヤモンド層2と第1のダイヤモンド層1との界面(図1にA−A線で示す)が第2のダイヤモンド層2の表面に平行である場合は、前記界面における第1のダイヤモンド層1の平均結晶粒径をD(μm)とし、前記界面が第2のダイヤモンド層2の表面に平行でない場合は、第1のダイヤモンド層1内における前記界面に最も近く且つ第2のダイヤモンド層2の表面に平行の断面における第1のダイヤモンド層1の平均粒径をD(μm)とする。更に、ダイヤモンド層2の表面と前記界面又は前記断面(A−A線)との間の距離をL(μm)とする。本発明においては、これらのD,D及びLにより、下記数式2に基づいて求まる粒径拡大率M(%)が50%以上である。この粒径拡大率Mは、より大きい方が好ましく、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜においては、製造条件等を調節することにより、粒径拡大率Mを500%程度にすることもできる。粒径拡大率Mは、60%以上500%以下が好ましく、成膜速度とのバランスを考慮すると、より好ましくは、60%以上200%以下である。
【0029】
【数2】

【0030】
次に、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜の製造方法について説明する。図2(a)乃至(e)は本実施形態の高配向ダイヤモンド膜の製造方法をその工程順に示す模式図である。なお、図2(c)乃至(e)においては、図を見やすくするために非配向結晶にハッチングをかけて示している。先ず、図2(a)に示すように、シリコン、ニッケル、白金、イリジウム、パラジウム、サファイヤ、窒化ガリウム、炭化ケイ素又はチタン酸ストロンチウム等からなる基板3を用意し、図2(b)に示すように、メタン及び水素ガスのプラズマに曝した状態で、基板3にバイアス電圧を印加して、基板3の表面にダイヤモンド配向核7を形成する。
【0031】
次に、図2(c)に示すように、原料ガスとしてメタン及び水素の混合ガスを使用し、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、基板3上にダイヤモンドを{111}セクタ成長させる。これにより、非配向結晶の成長が抑制され、非配向結晶5が形成されている部分と配向結晶4が形成されている部分に高低差が生じ、その表層部は相互に隣接する結晶粒子のオイラー角の差{Δα,Δβ,Δγ}が|Δα|≦1°、|Δβ|≦1°、|Δγ|≦1°であるダイヤモンド層1が形成される。ダイヤモンド層1を上述の構成にすることにより、その上に形成されるダイヤモンド層2における結晶粒径の拡大を効果的に行うことができる。
【0032】
また、ダイヤモンド層1の厚さは、特に限定されるものではなく、少なくともダイヤモンド結晶の配向度が充分となる程度の厚さがあればよい。但し、より薄い膜厚で平均結晶粒径が大きい高配向ダイヤモンド膜を得るためには、ダイヤモンド層1の膜厚をできるだけ薄くすることが望ましい。また、ダイヤモンド層1の表面形態も特に限定されるものではなく、例えば、基板3の表面に平行な(100)面が発達した平坦な面でも、又は<100>方位が頂点のピラミッド状でもよい。
【0033】
次に、図2(d)及び(e)に示すように、原料ガスとしてメタン、水素及び酸素の混合ガスを使用し、表面に微小な凹凸が存在する場合に凸部と凹部とで成長速度に差があるCVD法により、ダイヤモンド層1上にダイヤモンドを{100}セクタ成長させ、ダイヤモンド層2を形成する。このようなCVD法としては、例えば、凸部に電界が集中しやすく、ダイヤモンドの成長速度が凹部よりも凸部の方が速いプラズマCVD法が最も好ましい。また、バイアス印加により凸部に電界が集中しやすく、ダイヤモンドの成長速度が凹部よりも凸部の方が速い熱フィラメントCVD法でもよい。
【0034】
このとき、原料ガスの圧力は133hPa以上にする。ダイヤモンド層2を成膜する際は、ガス圧が高い程、結晶粒径の拡大効果が大きい。原料ガスのガス圧は、1013hPaの大気圧近傍とすることもできる。しかし、好ましくは、原料ガスのガス圧は267hPa以下である。図3(a)及び(b)はガス圧を133hPa未満(本発明の範囲外)にしたときのダイヤモンド層2の成膜状態をその工程順に示す模式図である。ガス圧を133hPa未満にすると、原料ガス中の活性分子及び活性原子(以下、これらをまとめて活性種という)の自由行程が長い。このため、活性種は表面の微小な高低差には殆ど影響されずに表面に到達し、図3(a)に示すように、プラズマ6がダイヤモンド層1の表面に形成された凹凸に追従して表面を均等に覆うため、温度差がなくなり、成長速度が均一になる。その結果、図3(b)に示すように、配向結晶4と共に非配向結晶5も成長し、ダイヤモンド膜の表面に非配向結晶5が多く存在するようになると共に表面の平坦性が低下し、更に結晶拡大率も低下する。
【0035】
これに対して、本実施形態のようにガス圧を133hPa以上にした場合は、活性種の自由行程が短い。一般に、プラズマとダイヤモンド膜との間の電極分布は凸部に集中して強くなるという性質があるため、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜の製造方法においては、活性種の自由工程が短いため、図2(d)に示すように、凹部は活性種が到達しにくく、プラズマ6が希薄になり、温度が低くなるため、成長速度が遅くなるが、凸部は活性種が多く到達し、温度が上がって成長速度が速くなる。このため、凹部、即ち、非配向結晶5上には結晶が成長せず、凸部、即ち、配向結晶4上の結晶はより大きく成長する。但し、これだけでは、表面の高低差が大きくなるだけで、表面を平坦化することはできないが、原料ガス中に適切な濃度の酸素が存在することにより、表面の高低差が拡大することを抑制できる。凸部の高さが高くなると、その部分の温度が例えば1000℃を超える等のように高くなりすぎるため、酸素原子が存在しない原料ガスを使用すると、この部分に非ダイヤモンド炭素、微結晶ダイヤモンド及び双晶ダイヤモンド等が成長し始める。一方、酸素には、ダイヤモンド層に発生した欠陥をエッチングする効果があり、温度が高くなる程その効果が大きくなる。このため、本実施形態のように、原料ガスに適切な濃度の酸素原子を添加すると、図2(e)に示すように、ダイヤモンド層における非ダイヤモンド炭素、微結晶ダイヤモンド及び双晶ダイヤモンドの出現を抑制することができるため、ダイヤモンド層の表面の凹凸はある程度の高低差以上には開かず、表面が平坦化される。
【0036】
このとき、下層にあるダイヤモンド層1の形状が重要になってくる。ダイヤモンド層1は、<100>方位の成長速度が最も速くなる条件で合成されているため、各結晶は<100>方位に頂点をもつピラミッド状の形態になっている。しかしながら、各結晶によって、基板とその結晶自体の<100>方位に±5°以内の傾きが生じている。これはシリコンとダイヤモンドとの格子定数の大きさの違いに由来すると思われる。<100>方位の成長速度は一定であると考えられるため、頂が基板表面に対して最も高い結晶は傾きがない結晶である。ダイヤモンド層2の成膜時は、頂が高い結晶程早く成長するため、傾きがない結晶が選択的に残り、粒径が拡大する。更に、傾きがない結晶同士が残った結果、それらの粒界が相互に接触し、スムーズに複数の結晶が一体化(コアレッセンス)しやすくなるため、加速的に粒径が拡大する。
【0037】
更に、ダイヤモンド層2を形成する際の原料ガス組成及び基板温度も、ダイヤモンド層の膜質に影響する。よって、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜の製造方法においては、原料ガスの組成については、炭素原子の量[C](モル)と酸素原子の量[O](モル)との差を全ガス分子の量[CH+H+O](モル)で割った値(([C]−[O])/[CH+H+O])が−0.2×10−2以上で、且つ、酸素原子の量[O](モル)と炭素原子の量[C](モル)との比([O]/[C])が、1.2以下になるようにする。なお、([C]−[O])/[CH+H+O]の好ましい範囲は、0以上0.04以下である。[O]/[C]の好ましい範囲は、0以上1.00以下である。また、基板温度については、750℃を超え1000℃未満とする。但し、原料ガス中の炭素原子の量[C](モル)と酸素原子の量[O](モル)との差を全ガス分子の量[C+H+O](モル)で割った値が1.0×10−2以上、又は酸素原子の量[O](モル)と炭素原子の量[C](モル)との比([O]/[C])が0.5以下である場合は、基板温度の上限値を900℃とする。
【0038】
図4は横軸に([C]−[O])/[CH+H+O]をとり、縦軸に基板温度をとって、原料ガス及び基板温度とダイヤモンド層2の膜質との関係を示す図であり、図5は横軸に[O]/[C]をとり、縦軸に基板温度をとって、原料ガス及び基板温度とダイヤモンド層2の膜質との関係を示す図である。図4及び図5に示すように、([C]−[O])/[CH+H+O]が−0.2×10−2未満又は[O]/[C]が1.2を超えると、{100}セクタ成長途中でダイヤモンドがエッチングされるため、ダイヤモンド層2が形成されなくなる。また、基板温度が750℃以下であると、1時間あたりの成膜速度が0.4μm未満になり製造コストが増加すると共に、{100}セクタ成長途中でダイヤモンドがエッチングされるため、ダイヤモンド層2が形成されなくなる。一方、基板温度が1000℃以上になると、ダイヤモンド層2に双晶又は微結晶が発生し、欠陥が増加するため実用的ではない。更に、([C]−[O])/[CH+H+O]が1.0×10−2以上、又は[O]/[C]が0.5以下である場合は、基板温度を900℃よりも高くすると、ダイヤモンド層2に双晶が発生し、欠陥が増加する。
【0039】
これにより、図1に示すように、{111}セクタ成長により形成され結晶粒径が略一定であるダイヤモンド層1上に、{100}セクタ成長により形成されダイヤモンド層1から遠ざかるに従い結晶粒径が大きくなるダイヤモンド層2が積層されている高配向ダイヤモンド膜が得られる。なお、ダイヤモンド層1及びダイヤモンド層2が夫々{111}セクタ成長及び{100}セクタ成長であることは、カソードルミネッセンススペクトルにより確認することができる。具体的には、カソードルミネッセンススペクトルにおいて、バンドAと呼ばれている420乃至440nmにピークを持つ半値幅が約70nmの発光帯は、{111}セクタ成長では弱く、{100}セクタ成長では強く現れる。このため、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜のカソードルミネッセンススペクトルを測定すると、ダイヤモンド層1ではバンドAは殆ど観測されず、575nmセンタが支配的となる。また、ダイヤモンド層2では、575nmセンタよりもバンドAが強く現れる。これにより、ダイヤモンド層1は{111}セクタ成長であり、ダイヤモンド層2は{100}セクタ成長であることが判別できる。
【0040】
次に、第2のダイヤモンド層2の形成について説明する。{100}セクタ成長の初期段階では、成長速度の観点からは、酸素が少ない方が良い。最初から酸素を多くすると、成長速度が遅くなるためである。しかし、逆に、成長速度が速すぎると、粒径が拡大しにくい。よって、これらのバランスから酸素ガス濃度を調整して、ダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させることにより、第2のダイヤモンド層を形成することもできる。最初は、酸素ガス濃度(O/C)を少なくし、途中から酸素ガス濃度を徐々に又は段階的に増大させることにより、成長速度と粒径拡大とのバランスを保ちながら、効率よく第2のダイヤモンド層を形成することができる。
【0041】
このように、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜の表面は平坦で、非配向結晶が殆ど存在していないため、研磨等による表面平坦化処理は不要である。また、電子デバイス用途に使用しても電荷の伝導が妨げられず、また、表面上にダイヤモンド膜をエピタキシャル成長させても、不純物濃度の偏りがなく、成長後の表面の平坦性を損なわない等の効果がある。更に、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜は、平均結晶粒径が50μm以上と大きく、且つ粒径拡大率Mが50%以上と、急激に結晶粒径が拡大しているため、従来よりも薄い膜厚で大粒径の高配向ダイヤモンド膜が得られる。このため、本実施形態の高配向ダイヤモンド膜は、粒界及び非配向結晶の存在が性能を低下させる原因となり得るトランジスタ及びダイオード等の電子デバイス並びに光透過窓等に好適であり、この高配向ダイヤモンド膜をこれらに適用することにより、性能向上及び製造コストの低下を実現することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0043】
「第1試験」
先ず、本発明の第1試験の結果について説明する。表面が(100)面により構成されているシリコン基板をマイクロ波CVD装置に入れ、メタンが2体積%で水素が98体積%である混合ガスを、圧力が33hPa、流量が300標準cm/分(sccm)の条件で流しながら、基板温度を650℃にして15分間マイクロ波を照射した。このとき、マイクロ波入力パワーは略1kWであったが、基板温度を650℃に維持できるように、マイクロ波の入力パワーを微調整した。また、これと同時に、シリコン基板に、電流量は10mA/cmになるようにして、負のバイアス電圧を印加した。これにより、シリコン基板の表面にダイヤモンド配向核を形成した。
【0044】
次に、マイクロ波CVD装置を使用して、メタンが2体積%で水素が98体積%である混合ガスを原料ガスとし、この原料ガスを、圧力が160hPa、流量が400標準cm/分(sccm)の条件で流しながら、基板温度を800乃至850℃にして、シリコン基板上にダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させて、厚さが2乃至8μm程度のダイヤモンド層を形成した。なお、このダイヤモンド層における結晶粒径は略一定であった。
【0045】
引き続き、メタン、水素及び酸素の混合ガスを原料ガスとし、下記表1に示す条件で、{111}セクタ成長させたダイヤモンド層の上にダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させて実施例1乃至16及び比較例1乃至9のダイヤモンド膜を作製した。このとき、原料ガスの圧力は160hPa、全ガス流量は400標準cm/分(sccm)とした。そして、得られたダイヤモンド膜について、成膜速度、粒径拡大率及び表面状態を調べた。その結果を下記表1に併せて示す。
【0046】
【表1】

【0047】
上記表1に示すように、[O]/[C]が0.5以下であるにもかかわらず基板温度が900℃を超えていた比較例1乃至4のダイヤモンド膜では、表面に双晶が含まれていた。また、基板温度が750℃以下であった比較例5、比較例6及び比較例9のダイヤモンド膜は、{100}セクタ成長途中でダイヤモンドがエッチングされ、{111}セクタ成長させたダイヤモンド層上にダイヤモンド層は形成されなかった。同様に、([C]−[O])/[CH+H+O]が0.2×10−2よりも小さい比較例7及び比較例8のダイヤモンド膜も、{100}セクタ成長途中でダイヤモンドがエッチングされ、{111}セクタ成長させたダイヤモンド層上にダイヤモンド層は形成されなかった。一方、実施例1乃至15のダイヤモンド膜は、粒径拡大率が50%を超えており、平均で70%、高いものでは112%(実施例2)であった。表面に非配向がなく、且つ表面が平坦であった。更に、成膜速度も最低でも0.4μm/時(実施例1)であり、最も早いものでは17.3μm/時(実施例11)であった。
【0048】
なお、比較例10として、ダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させた後、このダイヤモンド層上に原料ガスの圧力を67hPaとし、それ以外の条件は夫々前述の実施例6、実施例7及び実施例8と同じにして、ダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させたところ、いずれも表面は平坦化したが、結晶粒径はほとんど拡大せず、更に表面に非配向結晶が散在し、更に成膜速度も0.3μm/時以下であった。
【0049】
「第2試験」
次に、本発明の第2試験の結果について説明する。前述の第1試験結果と同様の方法及び条件で、シリコン基板上に、ダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させた後、このダイヤモンド層上に上記表1に示す実施例6と同じ条件でダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させ、更にその上に上記表1に示す実施例7と同じ条件でダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させ、その粒径の変化を確認した。図6は本試験の高配向ダイヤモンド膜を示すSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)写真である(倍率350倍)。その結果、図6に示すように、シリコン基板13上に形成された1層目のダイヤモンド層11の粒径r11の平均値は約3μmであったが、2層目のダイヤモンド層12は膜厚が8μmの段階で粒径r12が8μmに拡大し(粒径拡大率約60%)、表面が平坦になった。更に、同じ条件で25μm成膜したが、粒径の拡大は鈍化した。更に、ダイヤモンド層12の上に、条件を変えて3層目のダイヤモンド層を形成したところ、再び粒径が拡大し始め、膜厚が約40μmになるまでの間に平均結晶粒径が35μmになった(粒径拡大率68%)。その後、粒径の拡大は鈍化し、最終的には、平均結晶粒径が35μmで、表面が平坦で且つ表面に非配向結晶が存在しない高配向ダイヤモンド膜が得られた。
【0050】
「第3試験」
次に、本発明の第3試験の結果について説明する。表1に示す実施例8のダイヤモンド膜について、断面観察及びカソードルミネッセンス測定を行った。図7(a)は実施例8のダイヤモンド膜の断面を示すSEM写真(倍率225倍)であり、図7(b)はそのカソードルミネッセンス像(倍率225倍)である。また、図8は横軸に波長をとり、縦軸に強度をとって、実施例8のダイヤモンド膜のカソードルミネッセンススペクトルを示す図である。図7(a)に示すように、実施例8のダイヤモンド膜は、粒径が略一定であるダイヤモンド層21上に、成長するに従い粒径が大きくなっているダイヤモンド層22が形成されていた。なお、図7(a)においては、上層のダイヤモンド層22が更に2層に分かれているように見えるが、これは観察時のチャージアップによるものであり、膜の性質が異なっているわけではない。
【0051】
また、図7(b)に示すカソードルミネッセンス像において、白い部分は波長431nmの発光が起こっている場所である。図7(b)に示すように、上層のダイヤモンド層22では明らかに発光が起こっているが、下層のダイヤモンド層21では殆ど発光していなかった。更に、図8に示すように、上層のダイヤモンド層22は431nmの発光が支配的で、僅かに575nmセンタの発光も見られるが、下層のダイヤモンド層21は431nmの発光がほとんどなく、575nmセンタの発光のみであった。このことからも、下層のダイヤモンド層21は主に{111}セクタ成長であり、上層のダイヤモンド層22は主に{100}セクタ成長であることが確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、トランジスタ及びダイオード等の電子デバイス、並びに光透過窓等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態の高配向ダイヤモンド膜を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)乃至(d)は本発明の実施形態の高配向ダイヤモンド膜の製造方法をその工程順に示す模式図である。
【図3】(a)及び(b)はガス圧を130hPa未満(本発明の範囲外)にしたときのダイヤモンド層2の成膜状態をその工程順に示す模式図である。
【図4】横軸に([C]−[O])/[CH+H+O]をとり、縦軸に基板温度をとって、原料ガス及び基板温度とダイヤモンド層2の膜質との関係を示す図である。
【図5】横軸に[O]/[C]をとり、縦軸に基板温度をとって、原料ガス及び基板温度とダイヤモンド層2の膜質との関係を示す図である。
【図6】本発明の第2実施例の高配向ダイヤモンド膜を示す図面代用写真である(SEM写真:倍率350倍)。
【図7】(a)は本発明の実施例8のダイヤモンド膜の断面を示す図面代用写真であり(SEM写真:倍率225倍)、(b)はそのカソードルミネッセンス像を示す図面代用写真である(倍率225倍)。
【図8】横軸に波長をとり、縦軸に強度をとって、実施例8のダイヤモンド膜のカソードルミネッセンススペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1、2、11、12、21、22;ダイヤモンド層
3;基板
4;配向結晶
5;非配向結晶
6;プラズマ
7;ダイヤモンド配向核
13;シリコン基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
{111}セクタ成長により形成された第1のダイヤモンド層と、前記第1のダイヤモンド層上に{100}セクタ成長により形成され前記第1のダイヤモンド層から遠ざかるに従い結晶粒径が大きくなる第2のダイヤモンド層と、を有し、
前記第2のダイヤモンド層の表面における平均結晶粒径をD(μm)、前記第2のダイヤモンド層と前記第1のダイヤモンド層との界面、又は前記界面が前記第2のダイヤモンド層の表面に平行でない場合は前記第1のダイヤモンド層内における前記界面に最も近く且つ前記第2のダイヤモンド層の表面に平行の断面における前記第1のダイヤモンド層の平均結晶粒径をD(μm)とし、
前記第2のダイヤモンド層の表面から、前記第1のダイヤモンド層と前記第2のダイヤモンド層の界面までの距離をL(μm)としたとき、下記数式により求められる粒径拡大率M(%)が50%以上であることを特徴とする高配向ダイヤモンド膜。

【請求項2】
前記第1のダイヤモンド層における前記第2のダイヤモンド層側の面を含む表層部は、相互に隣接する結晶粒子のオイラー角{α,β,γ}の差{Δα,Δβ,Δγ}が、|Δα|≦1°、|Δβ|≦1°、|Δγ|≦1°であることを特徴とする請求項1に記載の高配向ダイヤモンド膜。
【請求項3】
前記第2のダイヤモンド層の表面における平均結晶粒径が30μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高配向ダイヤモンド膜。
【請求項4】
前記第2のダイヤモンド層の表面における平均結晶粒径が100μm以上であることを特徴とする請求項3に記載の高配向ダイヤモンド膜。
【請求項5】
前記第2のダイヤモンド層の表面は、(100)面により形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高配向ダイヤモンド膜。
【請求項6】
化学気相成長法により基板上にダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させて第1のダイヤモンド層を形成する工程と、炭素原子を含有するガスと酸素ガスとを含む混合原料ガスを使用し、化学気相成長法により前記第1のダイヤモンド層上にダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させて第2のダイヤモンド層を形成する工程と、を有し、
前記第2のダイヤモンド層を形成する工程において、
前記原料ガスのガス圧を133hPa以上とし、
前記原料ガスの組成を炭素原子の量(モル)と酸素原子の量(モル)との差を全ガス分子の量(モル)で割った値が−0.2×10−2以上で
且つ酸素原子の量(モル)と炭素原子の量(モル)との比(O/C)が1.2以下になるようにし、
基板温度を750℃を超え1000℃未満とすることを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項7】
前記第2のダイヤモンド層を形成する工程において、前記原料ガスにおける炭素原子の量(モル)と酸素原子の量(モル)との差を全ガス分子の量(モル)で割った値が1.0×10−2以上、又は前記原料ガスにおける酸素原子の量(モル)と炭素原子の量(モル)との比(O/C)が0.5以下である場合に、前記基板温度を750℃を超え900℃以下とすることを特徴とする請求項6に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項8】
前記第2のダイヤモンド層をプラズマ気相成長法又は熱フィラメント気相成長法により形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項9】
前記第1のダイヤモンド層を形成する工程において、前記基板の表面にダイヤモンド配向核を形成した後に、酸素ガスを含まない混合原料ガスを使用し、化学気相成長法により前記基板上にダイヤモンド結晶を{111}セクタ成長させることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項10】
前記第2のダイヤモンド層を形成する工程において、徐々に又は段階的に前記酸素ガスの割合を増加させてダイヤモンド結晶を{100}セクタ成長させることにより第2のダイヤモンド層を形成することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の高配向ダイヤモンド膜を有することを特徴とする電子デバイス。
【請求項12】
トランジスタとして使用されることを特徴とする請求項11に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−176389(P2006−176389A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261335(P2005−261335)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】