説明

3次元形状測定方法

【課題】小型で簡素な構成により、被測定物の表面と裏面との相対的な位置ずれを測定できる測定用治具を用いた被測定物の3次元形状を測定するための3次元形状測定方法を提供すること。
【解決手段】測定用治具100に平行平面140を保持し、その表面141側と円錐面111の形状測定、及び裏面142側と円錐面112の形状測定を行なう。また、測定用治具100に基準球150を保持し、その表面151側と円錐面111の形状測定、及び裏面152側と円錐面112の形状測定を行なう。この測定結果から、円錐面111、112の位置関係に対応する補正値を算出する。さらに、測定用治具100に非球面レンズ120を保持し、その表面121側と円錐面111の形状測定、及び裏面122側と円錐面112の形状測定を行なう。そして、上記補正値を用いて表面121と裏面122との相対的な位置関係を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物、例えば光学素子の表面と裏面との3次元形状を測定する3次元形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接触式プローブまたは非接触式プローブを走査して、光学素子、例えば非球面レンズの表面と裏面の形状を測定する形状測定方法が提案されている。ここで、2つの代表的なプローブの走査方式がある。なお、被検面内に沿って直交するXY座標を考える。第1番目の走査方式は、被測定物を所定軸の周りのθ方向に回転させながら、プローブをX方向に走査する方式(以下、「Rθ走査方式」という。)である。第2番目の走査方式は、被測定物に対してプローブを相対的にX方向とY方向との2次元面内に走査する方式(以下、「XY走査方式」という。)である。
【0003】
Rθ走査方式を用いて、被測定物の表面と裏面との3次元形状を測定する3次元形状測定方法は、例えば特許文献1に提案されている。図13は、従来技術の3次元形状測定方法で用いられる形状測定機の概略構成を示す。被測定物は、非球面レンズ12である。非球面レンズ12は、θステージ11に支持されている。そして、光プローブ13aが、非球面レンズ12の表面12aに対向して配置されている。また、光プローブ13bが、非球面レンズ12の裏面12bに対向して配置されている。このように、2つの光プローブ13a、13bを用いている。
【0004】
図13に示す3次元形状測定機では、θステージ11の回転軸に対して被測定物の軸が略一致するように、非球面レンズ12をセッティングする。そして、θステージ11により、非球面レンズ12を回転させる。続いて、回転する非球面レンズ12に対して、2つの光プローブ13a及び13bが、θステージ11の回転軸に直交するX方向に走査される。その際、2つの光プローブ13a及び13bは、それぞれ非球面レンズ12の表面12a及び裏面12bのZ方向(θステージ11の回転軸と平行な方向)の形状変化に追従しながら移動する。
【0005】
光プローブ13aの位置座標は、レーザー測長器14aにより測定される。また、光プローブ13bの位置座標は、レーザー測長器14bにより測定される。そして、θステージ11のθ座標、光プローブ13a、13bのX座標及びZ座標に基づいて、非球面レンズ12の表面12a及び裏面12bの形状測定が行われる。従って、非球面レンズ12のセッティングをやり直すことなく1回の測定により、非球面レンズ12の表面12a及び裏面12bの形状測定が可能である。
【0006】
また、非球面レンズ12の軸とθステージ11の回転軸とを略一致させて被測定物を回転させている。このため、被測定物の同一半径上の形状は、略一定の形状となる。このことから、プローブ13a及び13bの位置制御が容易となる。この結果、走査速度を速くできる。このように、Rθ走査方式の3次元形状測定方法は、被測定面が回転対称な形状のときには、XY走査方式の形状測定方法に比べて測定時間の短縮が可能であるという特徴がある。
【0007】
また、XY走査方式を用いて、被測定物の表面と裏面との3次元形状を測定する3次元形状測定方法は、例えば特許文献2に提案されている。図14は、特許文献2に提案されている3次元形状測定機の構成を示す。被測定面であるレンズ21は、レンズ21の表面21aと裏面21bとが露出するように、測定用治具22に支持されている。また、測定用治具22には、3つの位置決め球23の表面と裏面とが露出した状態で固定されている。この測定方法では、レンズ21の被測定面21a上を、測定プローブ24がX方向及びY方向に走査する。これにより、測定プローブ24のXY座標位置でのZ座標を求める。そして、レンズ21aの形状測定を行なう。
【0008】
特許文献2に提案されている測定方法について説明する。まず、レンズ21の表面21aが上を向いた状態にして測定用治具22を定盤上に固定する。そして、測定プローブ24により、3つの位置決め球23の表面、及びレンズ21の表面21aの形状測定を行う。続いて、3つの位置決め球23の表面の測定データから、測定用治具22の基準座標を決定する。そして、測定用治具22の基準座標に対するレンズ21の表面21aのずれを求める。その後、測定用治具22を180度回転(表裏反転)させる。これにより、レンズ21の裏面21bが上を向いた状態にして定盤上に固定する。そして、3つの位置決め球23の裏面、及びレンズ21の裏面21bの形状測定を行う。続いて、3つの位置決め球23の裏面の測定データから、測定用治具22の基準座標を決定する。これにより、測定用治具22の基準座標に対するレンズ21の裏面21bのずれを求める。そして、測定用治具22の基準座標に対するレンズ21の表面21aのずれと裏面21bのずれとから、レンズ21の表面21aと裏面21bの相対的位置ずれを求める。
【0009】
さらに、測定用治具で決定される基準座標に対する非球面レンズの表面形状を測定する別の方法も、例えば特許文献3に提案されている。特許文献3に提案されている方法を図15に基づいて説明する。ここで、非球面レンズ31が被測定物である。この方法では、まず、非球面レンズ31を、測定用治具32に固定する。測定用治具32には、基準部分として、上側平面部分32aとエッジ部分32bとが設けられている。そして、非球面レンズ31の表面31aの形状と、測定用治具32の基準部分の形状をプローブ33で測定する。続いて、非球面レンズ31の表面31aの測定データを、測定用治具32の基準部分から決定される基準座標系に対する形状データに変換する。このようにして、非球面レンズ31の表面31aの形状を求めることができる。
【0010】
【特許文献1】特開2001−324311号公報
【特許文献2】特開2002−71344号公報
【特許文献3】特開2001−56217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図13に示した従来技術では、被測定物のセッティングをやり直すことなく表面および裏面の形状測定が可能である。しかしながら、プローブと、プローブの位置制御を行なう駆動機構と、プローブの位置座標を測定するための測長器とがそれぞれ2つ必要である。このため、装置構成が複雑となり、装置が大きくなってしまうという問題がある。
【0012】
図14に示した従来技術では、測定用治具22を用いることにより、1つのプローブで被測定物の表面および裏面の形状測定が可能である。また、被測定物の表面と裏面の相対位置関係も測定可能である。しかしながら、測定用治具22には、3つの位置決め球23が設けられている。そのため、この測定用治具22を、例えば、図13に示すようなRθ走査方式の形状測定方法に用いると、3つの位置決め球23はθステージ11の回転軸に対して回転対称な形状とはならない。その結果、位置決め球23の形状をRθ走査方式で測定すると、走査速度が非常に遅くなり、測定時間が長くなってしまうという問題がある。
【0013】
図15に示した従来技術では、測定用治具の基準部分により決定される基準座標に対する被測定物の表面の形状を求めることができる。しかしながら、被測定物の裏面の形状は測定できない。このため、被測定物の表面と裏面の相対位置関係が分からないという問題がある。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型で簡素な構成により、被測定物の表面と裏面との相対的な位置ずれを測定できる測定用治具を用いた被測定物の3次元形状を測定するための3次元形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、第1の基準軸に対して少なくとも形状の一部が傾きを持ち、第1の基準軸を中心とした軸対称な形状であって、一方の面に形成された第1の基準面と、第2の基準軸に対して少なくとも形状の一部が傾きを持ち、第2の基準軸を中心とした軸対称な形状であって、他方の面に形成された第2の基準面とを有する測定用治具を用いて被測定物の3次元形状を測定する方法であって、測定用治具に基準物を保持する基準物保持工程と、第1の基準面と基準物の一方の面の3次元形状とを測定する第1の基準物測定工程と、第2の基準面と基準物の他方の面の3次元形状とを測定する第2の基準物測定工程と、第1の基準物測定工程の測定結果と第2の基準物測定工程の測定結果とに基づいて、第1の基準面と第2の基準面との間の相対的位置関係に関する補正値を演算する補正値算出工程と、測定用治具に被測定物を保持する被測定物保持工程と、第1の基準面と被測定物の一方の面の3次元形状とを測定する第1の被測定物測定工程と、第2の基準面と被測定物の他方の面の3次元形状とを測定する第2の被測定物測定工程と、第1の被測定物測定工程の測定結果と第2の被測定物測定工程の測定結果と補正値とに基づいて、被測定物の3次元形状を演算する3次元形状算出工程とを有することを特徴とする3次元形状測定方法を提供できる
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、基準物保持工程は、基準となる平行平面を保持する平行平面保持工程と、基準となる基準球を保持する基準球保持工程とを含み、平行平面保持工程に続いて、第1の基準面と平行平面の一方の面の3次元形状とを測定する第1の平行平面測定工程と、第2の基準面と平行平面の他方の面の3次元形状とを測定する第2の平行平面測定工程と、第1の平行平面測定工程の測定結果と第2の平行平面測定工程の測定結果とに基づいて、第1の基準面と第2の基準面との間の相対的位置関係に関する第1の補正値を演算する第1補正値算出工程と、基準球保持工程に続いて、第1の基準面と基準球の一方の面の3次元形状とを測定する第1の基準球測定工程と、第2の基準面と基準球の他方の面の3次元形状とを測定する第2の基準球測定工程と、第1の基準球測定工程の測定結果と第2の基準球測定工程の測定結果とに基づいて、第1の基準面と第2の基準面との間の相対的位置関係に関する第2の補正値を演算する第2補正値算出工程とをさらに有し、3次元形状算出工程では、第1の被測定物測定工程の測定結果と第2の被測定物測定工程の測定結果と第1の補正値と第2の補正値とに基づいて、被測定物の3次元形状を演算することが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、第1の基準面は、第1の基準軸と略直交する第1の基準平面部と、第1の基準軸に対して所定の角度をなす接平面を有する第1の基準球面部とを備え、第2の基準面は、第2の基準軸と略直交する第2の基準平面部と、第2の基準軸に対して所定の角度をなす接平面を有する第2の基準球面部とを備え、第1の平行平面測定工程において、第1の基準平面部と平行平面の一方の面の3次元形状とを測定し、第2の平行平面測定工程において、第2の基準平面部と平行平面の他方の面の3次元形状とを測定し、第1の基準球測定工程において、第1の基準平面部、第1の基準球面部及び基準球の一方の面の3次元形状とを測定し、第2の基準球測定工程において、第2の基準平面部、第2の基準球面部及び基準球の他方の面の3次元形状とを測定することが望ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、測定用治具に保持される基準物は、平面部と円弧部とからなる軸対称形状、平面部と2次曲線部とからなる軸対称形状、または2次曲線部からなる軸対称形状を有していることが望ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい態様によれば、測定用治具に形成されている基準面は、平面部と円弧部とからなる軸対称形状、平面部と2次曲線部とからなる軸対称形状、または2次曲線部からなる軸対称形状を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明において、測定用治具は、第1の基準面と第2の基準面とを備えている。基準物保持工程において、測定用治具に基準物、例えば、平行平面形状の板部材、球形状の部材を保持する。第1の基準物測定工程において、基準物の表面と、第1の基準面との3次元形状を測定する。第2の基準物測定工程において、基準物の裏面と、第2の基準面との3次元形状を測定する。補正値算出工程において、基準物に対する、第1の基準面と第2の基準面とのずれ量、即ち相対的な位置関係を求めることができる。次に、測定用治具に基準物の代わりに被測定物を保持する。第1の被測定物測定工程において、被測定物の一方の面、例えば表面と、測定用治具の第1の基準面とを測定する。さらに、第2の被測定物測定工程において、被測定物の他方の面、例えば裏面と、測定用治具の第2の基準面とを測定する。第1の基準面と第2の基準面との位置関係は既に補正値として算出されている。そして、第1の被測定物測定工程の測定結果から、被測定面の表面と第1の基準面との位置関係を求めることができる。同様に、第2の被測定物測定工程の測定結果から、被測定面の裏面と第2の基準面との位置関係を求めることができる。そして、3次元形状算出工程により、第1の基準面と第2の基準面とを介して、被測定面の表面の形状と裏面の形状とこれらの相対的な位置関係とを算出できる。この結果、本発明に係る3次元形状測定方法によれば、3次元形状測定装置において、1つのプローブ等を用いるだけで良い。従って、簡素で小型な装置により3次元形状測定を行なうことができるという効果を奏する。また、従来技術で述べた位置決め球を必要としない。このため、例えば、本発明に係る3次元形状測定方法をRθ走査方式により行なうとき、測定用治具をθステージの回転軸に対して回転対称な形状とすることができる。従って、Rθ走査方式で測定するとき、走査速度を速くすることで、測定時間を短縮できるという効果を奏する。さらに、本発明に係る3次元形状測定方法によれば、被測定物の表面と裏面との形状を測定できる。このため、被測定物の表面と裏面の相対位置関係を求めることができるという効果を奏する。このように、本発明によれば、小型で簡素な構成により、被測定物の表面と裏面との相対的な位置ずれを測定できる測定用治具を用いた3次元形状測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る3次元形状測定方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
本実施例に係る3次元形状測定方法に用いる測定用治具について最初に説明する。その後、この測定用治具を用いる3次元形状測定方法について説明する。図1−1は、本実施例に係る3次元形状測定方法に用いる測定用治具100の縦断面構成を示す。また、図1−2は、測定用治具100の正面構成を示す。
【0023】
測定用治具100は、基準軸113に関して回転対称な形状を有する。測定用治具100の中心部には、被測定物を保持するための保持部114が形成されている。被測定物は、非球面レンズ120である。非球面レンズ120は、表面121と裏面122とが共に非球面形状を有する。さらに、測定用治具100は、表面側に第1の開口部115と、裏面側に第2の開口部116とが形成されている。被測定物である非球面レンズ120は、測定用治具100の保持部114に保持され、固定される。保持部114で保持された非球面レンズ120の表面121と裏面122とは、それぞれ第1の開口部115と第2の開口部116とにより露出される。後述するプローブ170は、露出された表面121と裏面122とを接触測定する。
【0024】
測定用治具100の外周部118の表面側には、円錐面111が形成されている。円錐面111は、第1の基準面に対応する。また、外周部118の裏面側には、円錐面112が形成されている。円錐面112は、第2の基準面に対応する。円錐面111と円錐面112とは、共に外周部118の外側部分に位置している。
【0025】
円錐面111と円錐面112は共に、測定用治具100の基準軸113に対して、所定の角度の傾きを有し、基準軸113を中心とした軸対称な形状である。ここで、基準軸113は、測定用治具100の機械加工時における加工機械の回転軸に一致する。円錐面111と円錐面112とは、加工機械から測定用治具100を取り外すことなく加工することが望ましい。測定用治具を製造するとき、取り外すことなく加工すると、加工機械への脱着に起因する製造誤差を低減できる。
【0026】
なお、輪帯形状の保持部114の形状の中心軸、即ち保持部114に固定された非球面レンズ120の形状の中心軸は、基準軸113と厳密に一致させる必要はない。保持部114の形状の中心軸と、基準軸113とは、後述するプローブ170による非球面レンズ120の形状測定時に、被測定物の表面と裏面とが大きく振れない程度に合わせれば良い。
【0027】
測定用治具100に非球面レンズ120を保持する方法としては、ネジや押さえ環等を介して保持部114に固定する方法がある。また、接着や嵌合等で、非球面レンズ120を保持部114に直接固定しても良い。このように、固定する方法は問わないが、非球面レンズ120を保持部114で保持したときに、非球面レンズ120に撓みや歪みが生じないことが望ましい。
【0028】
また、測定用治具100の外周面には、円柱状のシャフト117が形成されている。シャフト117は、測定用治具100を基準軸113を中心にして回転したとき、回転角度の原点を設定するために用いる。測定用治具100は、金属材料、樹脂材料、セラミック、またはガラス等で構成することができる。また、測定用治具100は、異種材料の部品を接着、ビス止め等により組み合わせて固着した構成でも良い。
【0029】
図2は、非球面レンズ120を保持している測定用治具100を3次元形状測定機で測定するときの概略構成を示す。3次元形状測定機は、Rθ走査方式による形状測定を行なう。図2では、3次元形状測定機のうち、プローブ170と、回転支持部132との近傍の構成を示し、その他のデータ処理部等の構成は省略する。エアースピンドル130は、測定用治具100を固定可能な回転部131を有する。また、データ処理部(不図示)は、形状測定データ等の処理を行なう。
【0030】
エアースピンドル130の回転部131は、回転支持部132により回転可能に支持されている。これにより、回転部131は、回転軸133を回転中心として高精度にθ方向に回転する。また、エアースピンドル130は、回転部131をθ方向に回転させるモータ(不図示)とθ方向の回転角度を検出するロータリーエンコーダ(不図示)を有している。
【0031】
一方、プローブ170の先端には、先端球171が設けられている。先端球171は、被測定面、例えば非球面レンズ120の表面と接触する。さらに、3次元形状測定機は、Z軸方向駆動部(不図示)と、X軸方向駆動部(不図示)と、測長器(不図示)とを有している。ここで、Z軸方向駆動部は、先端球171と被測定面との間の接触庄を一定に保つように、プローブ170のZ軸方向、即ち回転軸133と平行な方向の位置制御を行なう。また、X軸方向駆動部は、プローブ170をX軸方向、即ち回転軸133と直交する方向に移動する。そして、測長器は、プローブ170のXZ座標を測定する。なお、後述するY軸は、XZ平面に直交する軸である。
【0032】
そして、被測定面にプローブ170を接触させる。エアースピンドル130は、測定用治具100をθ方向に回転する。X軸方向駆動部は、プローブ170をX軸方向に移動する。プローブ170がX軸方向に移動している間、ロータリーエンコーダは、エアースピンドル130の回転角度(θ)を測定する。同時に、測長器は、プローブ170のXZ座標(x,z)を測定する。このようにして、被測定面の形状測定データ(xs,zs,θs)(s=1,2,3・・・)を取得する。
【0033】
また、3次元形状測定機には、近接センサー160が固定配置されている。近接センサー160は、非接触式センサーである。近接センサー160は、回転部131により回転する測定用治具100に設けたシャフト117がθ方向の所定位置に来たことを検出する。
【0034】
次に、本実施例に係る3次元形状測定方法の手順について説明する。図6は、測定手順の大まかな流れを示すフローチャートである。詳細な手順については、図7−1、図7−2を用いて後述する。図6のステップS601において、測定用治具100に基準となる平行平面140(図4参照)を保持して、後述する3次元形状測定を行う。次に、ステップS602において、測定用治具100から平行平面140を取り外し、基準球150(図5参照)を保持する。次に、基準球150を保持している測定用治具100に対して3次元形状測定を行なう。そして、ステップS603において、測定用治具100から基準球150を取り外し、非球面レンズ120(図2参照)を保持する。次に、非球面レンズ120を保持している測定用治具100に対して3次元形状測定を行なう。そして、ステップS601、S602、S603の各ステップにおいて後述する所定の演算を行なうことで、非球面レンズ120の表面の形状と、裏面の形状と、これらの相対的位置関係とを求めることができる。
【0035】
図7−1、7−2に基づいて、詳細な測定手順について説明する。図7−1のステップS701において、測定用治具100の保持部114に基準となる平行平面140(以下、適宜「基準平行平面」という。)を保持する。基準となる平行平面140は、表面141と裏面142とが共に平面である。そして、表面141と裏面142との間の平行度が極めて高い板状の部材で構成されている。ステップS701は、平行平面保持工程(基準物保持工程)に対応する。
【0036】
ステップS702において、測定用治具100を、エアースピンドル130の回転部131上に固定する。このとき、基準平行平面140の表面141がプローブ170に対向するように、測定用治具100を固定する。ステップS703において、Z軸方向駆動部(不図示)によりプローブ170をZ軸方向に移動させる。さらに、モータ(不図示)は、エアースピンドル130を回転軸133の周りに回転させる。そして、近接センサー160は、測定用治具100のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、平行平面140の表面141に、プローブ170の先端球171を接触させる。そして、先端球171の接触圧が一定となるように制御する。基準平行平面140の表面141にプローブ170を接触させながら、形状測定データ(xa,za,θa)(a=1,2,3・・・)を点列データとして取得する。
【0037】
次に、測定用治具100の円錐面111にプローブ170を接触させる。平行平面140の表面141と同様にして、円錐面111の形状測定データ(xb,zb,θb)(b=1,2,3・・・)を点列データとして取得する。円錐面111は、第1の基準面に対応する。また、ステップS703は、第1の平行平面測定工程(第1の基準物測定工程)に対応する。このように、基準平行平面140の表面141と測定用治具100の円錐面111とを、測定用治具100のセッティングを変えることなく測定している。従って、表面141の形状測定データと円錐面111の形状測定データとは、同一測定座標での測定データとして扱うことができる。
【0038】
ステップS703において、プローブ170のX軸方向の移動は、間欠的に行なうこと、または連続的に行なうことの何れでも良い。間欠的な移動とは、プローブ170の位置を任意の複数個所で固定しながら移動することをいう。これにより、エアースピンドル130の回転軸133を中心とした同心円状の形状測定データを得ることができる。また、プローブ170をX軸方向に連続的に移動しながら測定を行なうと、渦巻き状の形状測定データを得ることができる。このような、同心円状の形状測定データ、渦巻き状の形状測定データ、またはこれらを組み合わせた形状測定データでも良い。
【0039】
ステップS704において、基準平行平面140の裏面142がプローブ170に対向するように、測定用治具100を反転させて、エアースピンドル130の回転部131に固定する。
【0040】
ステップS705において、ステップS703と同様の手順で形状測定を行なう。まず、近接センサー160が測定用治具100のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。基準平行平面140の裏面142にプローブ170の先端球171を接触させる。そして、プローブ170の接触圧を一定に保つ制御を行なう。基準平行平面140の裏面142にプローブ170を接触させながら、形状測定データ(xc,zc,θc)(c=1,2,3・・・)を取得する。続けて、測定用治具100の円錐面112にプローブ170を接触させ、形状測定データ(xd,zd,θd)(d=1,2,3・・・)を取得する。円錐面112は、第2の基準面に対応する。また、ステップS705は、第2の平行平面測定工程(第2の基準物測定工程)に対応する。ステップS703と同様に、裏面142の形状測定データと円錐面112の形状測定データとは、同一測定座標での測定データとして扱うことができる。また、ステップS703、S705では、シャフト117を検出してロータリーエンコーダの回転角度をリセットしている。これにより、測定用治具100の表裏反転に伴うθ方向のセッティング誤差を補正できる。
【0041】
次に、ステップS706において、図5に示すように、測定用治具100の保持部114に、基準球150を固定する。ステップS706は、基準球保持工程(基準物保持工程)に対応する。基準球150は、真球度が極めて高い球形状を有している。基準球150の一方の面を表面151とする。また、表面151とは反対側の他方の面を裏面152とする。
【0042】
ステップS707において、基準球150の表面151がプローブ170に対向するように、測定用治具100をエアースピンドル130の回転部131に固定する。
【0043】
ステップS708において、近接センサー160が測定用治具100のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。基準球150の表面151にプローブ170の先端球171を接触させる。そして、プローブ170の接触圧を一定に保つ制御を行なう。基準球150の表面151にプローブ170を接触させながら、形状測定データ(xe,ze,θe)(e=1,2,3・・・)を取得する。続けて、測定用治具100の第1の基準面である円錐面111にプローブ170を接触させ、形状測定データ(xf,zf,θf)(f=1,2,3・・・)を取得する。ステップS703と同様に、表面151の形状測定データと円錐面111の形状測定データとは、同一測定座標での測定データとして扱うことができる。ステップS708は、第1の基準球測定工程(第1の基準物測定工程)に対応する。
【0044】
ステップS709において、基準球150の裏面152がプローブ170に対向するように、測定用治具100を反転させて、エアースピンドル130の回転部131に固定する。ステップS710において、近接センサー160が測定用治具100のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。基準球150の裏面152にプローブ170の先端球171を接触させる。そして、プローブ170の接触圧を一定に保つ制御を行なう。基準球150の裏面152にプローブ170を接触させながら、形状測定データ(xg,zg,θg)(g=1,2,3・・・)を取得する。続けて、測定用治具100の第2の基準面である円錐面112にプローブ170を接触させ、形状測定データ(xh,zh,θh)(h=1,2,3・・・)を取得する。ステップS703と同様に、裏面152の形状測定データと円錐面112の形状測定データは、同一測定座標での測定データとして扱うことができる。ステップS710は、第2の基準球測定工程(第2の基準物測定工程)に対応する。
【0045】
ステップS711において、ステップS703で取得した基準平行平面140の表面141の形状測定データ(xa,za,θa)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xa,Ya,Za)に変換する。そして、表面141の形状測定データ(Xa,Ya,Za)を座標変換して、基準平行平面140の表面141の形状誤差データ(Xa,Ya,ΔZa)を算出する。
【0046】
形状誤差データを算出する座標変換は、例えば、特開2002−116019号公報で開示されているような方法を用いることができる。すなわち、被測定面の設計式にプローブ170の先端球171の曲率半径を加味した設計形状データと測定形状データとを比較する。そして、最小二乗法やニュートン法等既知の方法を用いて、設計形状データと測定形状データとの間の誤差が最小となるように、測定形状データを座標変換する。なお、座標変換は、X軸とY軸の周りの2つの回転移動、Z軸に沿った並進移動、X軸とY軸に沿った2つの並進移動の順番に座標変換を行うものとする。ここで、被測定面は平面であるので、座標変換のパラメータとしては、Z軸に沿った並進移動と、X軸とY軸の周りの2つの回転移動を用いる。
【0047】
ステップS711では、上述の座標変換の結果から、基準平行平面140の表面141の測定データの座標変換量(Ca,αa,βa)を第1の座標変換量としてメモリ(不図示)に記憶する。以下、全ての測定値、演算値の記憶は、メモリ(不図示)に格納して行なう。
【0048】
ここで、
Caは、基準平行平面140の表面141のZ軸方向の並進移動量、
αaは、基準平行平面140の表面141のX軸周りの回転移動量、
βaは、基準平行平面140の表面141のY軸周りの回転移動量である。
【0049】
ステップS712において、ステップS703で取得した円錐面111の形状測定データ(xb,zb,θb)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xb,Yb,Zb)に変換する。そして、円錐面111の測定データ(Xb,Yb,Zb)を座標変換して、形状誤差データ(Xb,Yb,ΔZb)を算出する。その結果から、円錐面111の座標変換量(Ab,Bb,Cb,αb,βb)を、第2の座標変換量として記憶する。被測定面は円錐面であるので、座標変換のパラメータとしては、X軸とY軸とZ軸とに沿った3つの並進移動と、X軸とY軸の周りの2つの回転移動を用いる。
【0050】
ここで、
Abは、円錐面111の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bbは、円錐面111の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cbは、円錐面111の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αbは、円錐面111の測定データのX軸周りの回転移動量、
βbは、円錐面111の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0051】
ステップS713において、ステップS705で取得した基準平行平面140の裏面142の形状測定データ(xc,zc,θc)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xc,Yc,Zc)に変換する。そして、裏面142の測定データ(Xc,Yc,Zc)を座標変換して、形状誤差データ(Xc,Yc,ΔZc)を算出する。その結果から、基準平行平面140の裏面142の座標変換量(Cc,αc,βc)を、第3の座標変換量として記憶する。
【0052】
ここで、
Ccは、基準平行平面140の裏面142のZ軸方向の並進移動量、
αcは、基準平行平面140の裏面142のX軸周りの回転移動量、
βcは、基準平行平面140の裏面142のY軸周りの回転移動量である。
【0053】
ステップS714において、ステップS705で取得した円錐面112の形状測定データ(xd,zd,θd)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xd,Yd,Zd)に変換する。そして、測定データ(Xd,Yd,Zd)を座標変換して、形状誤差データ(Xd,Yd,ΔZd)を算出する。その結果から、円錐面112の座標変換量(Ad,Bd,Cd,αd,βd)を、第4の座標変換量として記憶する。
【0054】
ここで、
Adは、円錐面112の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bdは、円錐面112の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cdは、円錐面112の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αdは、円錐面112の測定データのX軸周りの回転移動量、
βdは、円錐面112の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0055】
ステップS715において、ステップS708で取得した円錐面111の形状測定データ(xf,zf,θf)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xf,Yf,Zf)に変換する。そして、測定データ(Xf,Yf,Zf)を座標変換して、形状誤差データ(Xf,Yf,ΔZf)を算出する。その結果から、円錐面111の座標変換量(Af,Bf,Cf,αf,βf)を、第5の座標変換量として記憶する。
【0056】
ここで、
Afは、円錐面111の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bfは、円錐面111の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cfは、円錐面111の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αfは、円錐面111の測定データのX軸周りの回転移動量、
βfは、円錐面111の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0057】
ステップS716において、ステップS708で取得した基準球150の表面151の形状測定データ(xe,ze,θe)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xe,Ye,Ze)に変換する。そして、ステップS715で取得した第5の座標変換量の回転移動量である(αf,βf)を回転移動量に用いて、表面151の測定データ(Xe,Ye,Ze)を座標変換して、形状誤差データ(Xe,Ye,ΔZe)を算出する。その結果から、表面151の座標変換量(Ae,Be,Ce,αf,βf)を、第6の座標変換量として記憶する。被測定面は球面であるので、座標変換のパラメータとしては、X軸とY軸とZ軸とに沿った3つの並進移動を用いる。ここでは、回転移動量としてステップS715で取得した第5の座標変換量(αf,βf)を用いて座標変換することで、円錐面111の基準軸113とZ軸が略平行な状態における、表面151の座標変換量(Ae,Be,Ce)を求めている。
【0058】
ここで、
Aeは、基準球150の表面151の測定データのX軸方向の並進移動量、
Beは、基準球150の表面151の測定データのY軸方向の並進移動量、
Ceは、基準球150の表面151の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αfは、円錐面111の測定データと基準球150の表面151の測定データのX軸周りの回転移動量、
βfは、円錐面111の測定データと基準球150の表面151の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0059】
ステップS717において、ステップS710で取得した円錐面112の形状測定データ(xh,zh,θh)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xh,Yh,Zh)に変換する。そして、円錐面112の測定データ(Xh,Yh,Zh)を座標変換して、形状誤差データ(Xh,Yh,ΔZh)を算出する。その結果から、円錐面112の座標変換量(Ah,Bh,Ch,αh,βh)を、第7の座標変換量として記憶する。
【0060】
ここで、
Ahは、円錐面112の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bhは、円錐面112の測定データのY軸方向の並進移動量、
Chは、円錐面112の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αhは、円錐面112の測定データのX軸周りの回転移動量、
βhは、円錐面112の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0061】
ステップS718において、ステップS710で取得した基準球150の裏面152の形状測定データ(xg,zg,θg)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xg,Yg,Zg)に変換する。そして、ステップS717で取得した第7の座標変換量の回転移動量である(αh,βh)を回転移動量に用いて、測定データ(Xg,Yg,Zg)を座標変換して、形状誤差データ(Xg,Yg,ΔZg)を算出する。その結果から、裏面152の座標変換量(Ag,Bg,Cg、αh,βh)を、第8の座標変換量として記憶する。
【0062】
ここで、
Agは、基準球150の裏面152の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bgは、基準球150の裏面152の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cgは、基準球150の裏面152の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αhは、円錐面112の測定データと基準球150の裏面152の測定データのX軸周りの回転移動量、
βhは、円錐面112の測定データと基準球150の裏面152の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0063】
次に、ステップS719における演算について説明する。第1の座標変換量(Ca,αa,βa)と第2の座標変換量(Ab,Bb,Cb,αb,βb)とから、X軸周りの回転移動量とY軸周りの回転移動量との差(αa−αb,βa−βb)を求める。そして、差(αa−αb,βa−βb)を、第9の座標変換量として記憶する。第9の座標変換量は、基準平行平面140の表面141に直交する直線、即ち法線と円錐面111の基準軸との傾きの差分に対応する。
【0064】
図3は、円錐面111、112の基準軸を示す。円錐面111を含む円錐CN1の頂点P1を通り、底面BTに直交する直線AX1が、円錐面111の基準軸となる。同様に、円錐面112を含む円錐CN2の頂点P2を通り、底面BTに直交する直線AX2が、円錐面112の基準軸となる。図3では、簡単のため、円錐CN1の底面BTと、円錐CN2の底面BTとを一致させている。しかしながら、これに限られず、2つの円推CN1、CN2の底面は、それぞれ異なっていても良い。
【0065】
また、第3の座標変換量(Cc,αc,βc)と第4の座標変換量(Ad,Bd,Cd,αd,βd)とから、X軸周りの回転移動量とY軸周りの回転移動量の差(αc−αd,βc−βd)を求める。差(αc−αd,βc−βd)を、第10の座標変換量として記憶する。第10の座標変換量は、基準平行平面140の裏面142に直交する直線(法線)と円錐面112の基準軸との傾きの差に対応する。
【0066】
ここで、表面側(円錐面111側)と裏面側(円錐面112側)とは180度反転した位置関係である。しかし、測定時は表裏面を反転させて測定している。従って、表面側の測定データと裏面側の測定データとを同一の座標系で評価するためには、表裏反転に伴う座標系の向きを考慮する必要がある。このために、Y軸周りの回転移動量の符号を反転する。このように、第10の座標変換量におけるY軸周りの回転移動量の符号を反転させる。反転させた座標を、新たな第10の座標変換量(αc−αd,−βc+βd)として記憶する。
【0067】
第9の座標変換量(αa−αb,βa−βb)と第10の座標変換量(αc−αd,−βc+βd)の差(αa−αb−αc+αd,βa−βb+βc−βd)を求める。そして、差(αa−αb−αc+αd,βa−βb+βc−βd)を、基準面形状誤差の回転移動の座標変換量として記憶する。基準平行平面140は表面141と裏面142の平行度が極めて高い。このため、基準面形状誤差の回転移動の座標変換量は、実質的に円錐面111の基準軸と円錐面112の基準軸との傾きの差に対応する。
【0068】
また、第5の座標変換量(Af,Bf,Cf,αf,βf)と第6の座標変換量(Ae,Be,Ce,αf,βf)から、X軸方向の並進移動量とY軸方向の並進移動量とZ軸方向の並進移動量の差(Af−Ae,Bf−Be,Cf−Ce)を求める。そして、この差分を、第11の座標変換量として記憶する。
【0069】
第7の座標変換量(Ah,Bh,Ch,αh,βh)と第8の座標変換量(Ag,Bg,Cg,αh,βh)から、X軸方向の並進移動量とY軸方向の並進移動量とZ軸方向の並進移動量の差(Ah−Ag,Bh−Bg,Ch−Cg)を求める。そして、この差分を第12の座標変換量として記憶する。
【0070】
ステップS719と同様に、表面側の測定データと裏面側の測定データとを同一の座標系で評価するために、第12の座標変換量の符号を反転させる。具体的には、Y軸方向およびZ軸方向の並進移動量の符号を反転させる。そして、符号を反転させた第12の座標変換量を、新たな第12の座標変換量(Ah−Ag,−Bh+Bg,−Ch+Cg)として記憶する。
【0071】
基準球150は真球度が極めて高い。このため、表面151の曲率中心と裏面152の曲率中心とは、一致しているとみなすことができる。そこで、円錐面111の基準軸AX1と円錐面112の基準軸AX2の相対的な位置関係を、求めることができる。これは、図16−1の状態から、図16−2の状態することである。なお、この位置関係を求めるにあたっては、以下のデータを利用する。すなわち、
基準面形状誤差の回転移動の座標変換量(αa−αb−αc+αd,βa−βb+βc−βd)と、
第11の座標変換量(Af−Ae,Bf−Be,Cf−Ce)と、
第12の座標変換量(Ah−Ag,−Bh+Bg,−Ch+Cg)と、
基準球150の直径の理論値L0である。
【0072】
ここで、円錐面111の基準軸AX1と円錐面112の基準軸AX2との相対的な位置関係は、基準面形状誤差を持たない理想的な状態では図17に示すようになっている。よって、図16−2の状態は、図17の状態において、円錐面112の基準軸AX2を変化させることで求めることができる。そこで、理想的な円錐面112の基準軸AX2を、実際の円錐面112の基準軸AX2の位置に移動させる座標変換量(Ai,Bi,Ci,αi,βi)を算出する。算出した座標変換量を、基準面形状誤差の座標変換量(Ai,Bi,Ci,αi,βi)として、記憶する。
【0073】
ステップS711、S712、S713、S714とステップS719とは、第1補正値算出工程に対応する。また、ステップS715、S716、S717、S718とステップS719とは、第2補正値算出工程に対応する。このように、ステップS701〜S719は、測定用治具100の円錐面111の基準軸と円錐面112の基準軸との不一致による誤差(相対的な位置関係)の補正値を導出する手順に対応する。
【0074】
次に、被測定物の形状を測定する手順を説明する。ステップS720において、図1−1に示すように、測定用治具100の保持部114に、被測定物である非球面レンズ120を固定する。ステップS720は、被測定物保持工程に対応する。また、ステップS721において、非球面レンズ120の表面121がプローブ170に対向するように、測定用治具100をエアースピンドル130の回転部131に固定する。
【0075】
ステップS722において、Z軸方向駆動部(不図示)によりプローブ170をZ軸方向に移動させる。さらに、モータ(不図示)は、エアースピンドル130を回転軸133の周りに回転させる。そして、近接センサー160は、測定用治具100のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、非球面120の表面121に、プローブ170の先端球171を接触させる。そして、先端球171の接触圧が一定となるように制御する。非球面120の表面121にプローブ170を接触させながら、形状測定データ(xj,zj,θj)(j=1,2,3・・・)を点列データとして取得する。
【0076】
次に、測定用治具100の円錐面111にプローブ170を接触させる。非球面120の表面121と同様にして、円錐面111の形状測定データ(xk,zk,θk)(k=1,2,3・・・)を点列データとして取得する。円錐面111は、第1の基準面に対応する。また、ステップS722は、第1の被測定物測定工程に対応する。このように、非球面120の表面121と測定用治具100の円錐面111とを、測定用治具100のセッティングを変えることなく測定している。従って、表面121の形状測定データと円錐面111の形状測定データとは、同一測定座標での測定データとして扱うことができる。
【0077】
ステップS723において、非球面レンズ120の裏面122がプローブ170に対向するように、測定用治具100を反転させて、エアースピンドル130の回転部131に固定する。
【0078】
ステップS724において、Z軸方向駆動部(不図示)によりプローブ170をZ軸方向に移動させる。さらに、モータ(不図示)は、エアースピンドル130を回転軸133の周りに回転させる。そして、近接センサー160は、測定用治具100のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、非球面120の裏面122に、プローブ170の先端球171を接触させる。そして、先端球171の接触圧が一定となるように制御する。非球面120の表面122にプローブ170を接触させながら、形状測定データ(xm,zm,θm)(m=1,2,3・・・)を点列データとして取得する。
【0079】
次に、測定用治具100の円錐面112にプローブ170を接触させる。非球面120の裏面122と同様にして、円錐面112の形状測定データ(xn,zn,θn)(n=1,2,3・・・)を、点列データとして取得する。円錐面112は、第2の基準面に対応する。また、ステップS723は、第2の被測定物測定工程に対応する。このように、非球面120の裏面122と測定用治具100の円錐面112とを、測定用治具100のセッティングを変えることなく測定している。従って、裏面122の形状測定データと円錐面112の形状測定データとは、同一測定座標での測定データとして扱うことができる。
【0080】
ステップS725において、ステップS722で取得した円錐面111の形状測定データ(xk,zk,θk)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xk,Yk,Zk)に変換する。そして、測定データ(Xk,Yk,Zk)を座標変換して、円錐面111の形状誤差データ(Xk,Yk,ΔZk)を算出する。この座標変換の結果から、円錐面111の測定データの座標変換量(Ak,Bk,Ck,αk,βk)を第13の座標変換量として記憶する。
【0081】
ここで、
Akは、円錐面111の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bkは、円錐面111の測定データのY軸方向の並進移動量、
Ckは、円錐面111の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αkは、円錐面111の測定データのX軸周りの回転移動量、
βkは、円錐面111の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0082】
ステップS726において、ステップS724で取得した円錐面112の形状測定データ(xn,Zn,θn)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xn,Yn,Zn)に変換する。そして測定データ(Xn,Yn,Zn)を座標変換して、円錐面112の形状誤差データ(Xn,Yn,ΔZn)を算出する。この座標変換の結果から、円錐面112の測定データの座標変換量(An,Bn,Cn,αn,βn)を第14の座標変換量として記憶する。
【0083】
ここで、
Anは、円錐面112の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bnは、円錐面112の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cnは、円錐面112の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αnは、円錐面112の測定データのX軸周りの回転移動量、
βnは、円錐面112の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0084】
次に、ステップS727において、ステップS725で算出した第13の座標変換量と、ステップS726で算出した第14の座標変換量とを用いて、非球面レンズ120の表面121と裏面122の形状測定データを補正する。ここで、非球面レンズ120の表面121と裏面122の測定データを、同一座標系で評価する必要がある。このため、ステップS726で算出した第14の座標変換量(An,Bn,Cn,αn,βn)について、測定座標系を反転させる。具体的には、Y軸方向およびZ軸方向の並進移動量とY軸周りの回転移動量の符号を反転して、新たな第14の座標変換量(An,−Bn,−Cn,αn,−βn)とする。
【0085】
さらに、ステップS722で取得した非球面レンズ120の表面121の形状測定データ(xj,zj,θj)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xj,Yj,Zj)に変換する。この測定データ(Xj,Yj,Zj)を第13の座標変換量(Ak,Bk,Ck,αk,βk)を用いて座標変換する。座標変換した後のデータを測定データ(Xj´,Yj´,Zj´)とする。また、ステップS724で取得した非球面レンズ120の裏面122の形状測定データ(xm,zm,θm)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xm,Ym,Zm)に変換する。測定データ(Xm,Ym,Zm)を第14の座標変換量(An,−Bn,−Cn,αn,−βn)を用いて座標変換する。座標変換した後のデータを測定データ(Xm´,Ym´,Zm´)とする。これにより、表面121の測定データと裏面122の測定データとを同一座標系のデータとすることができる。
【0086】
ステップS728において、ステップ719で算出した基準面形状誤差の座標変換量(Ai,Bi,Ci,αi,βi)と、ステップS727で算出した非球面レンズ120の表面121の測定データ(Xj´,Yj´,Zj´)と裏面122の測定データ(Xm´,Ym´,Zm´)とから、円錐面111の基準軸と円錐面112の基準軸との不一致を補正した上で、表面121と裏面122との相対位置関係を含めた非球面レンズ120の3次元形状を算出する。
【0087】
表面121と裏面122との相対位置関係を求めるために、表面121の非球面軸と裏面122の非球面軸との相対位置関係とを求める必要がある。非球面軸の相対位置関係は、例えば、以下のようにして求める。裏面122の測定データ(Xm´,Ym´,Zm´)を、基準面形状誤差の座標変換量(Ai,Bi,Ci,αi,βi)を用いて座標変換する。座標変換した後のデータを、新たな裏面122の測定データ(Xm´,Ym´,Zm´)とする。
【0088】
こうして、円錐面111の基準軸と円錐面112の基準軸の不一致を補正した、表面121の測定データ(Xj´,Yj´,Zj´)と裏面122の測定データ(Xm´,Ym´,Zm´)が得られ、表面121と裏面122の相対位置を求めることが出来る。また、被測定面である非球面120の表面121の非球面軸(すなわち、形状の基準軸)と、裏面122の非球面軸の相対位置関係を求める場合には、例えば以下のような演算により求めることが出来る。被測定面である非球面120の表面121の設計形状データと、この非球面の測定データの間の誤差が最小となるように測定データを座標変換して、表面121の形状誤差データ(Xj´,Yj´,ΔZj´)を算出する。同様にして、裏面122の形状誤差データ(Xm´,Ym´,ΔZm´)を算出する。これらの算出には、最小二乗法やニュートン法等既知の方法を使用することができる。
【0089】
この座標変換の結果から、表面121の設計形状データに対する表面121の測定データの座標変換量(Aj,Bj,Cj,αj,βj)が求められる。ここで、
Ajは、表面121の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bjは、表面121の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cjは、表面121の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αjは、表面121の測定データのX軸周りの回転移動量、
βjは、表面121の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0090】
同様にして、裏面122の測定データの座標変換量(Am,Bm,Cm,αm,βm)が求められる。ここで、
Amは、裏面122の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bmは、裏面122の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cmは、裏面122の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αmは、裏面122の測定データのX軸周りの回転移動量、
βmは、裏面122の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0091】
表面121の座標変換量(Aj,Bj,Cj,αj,βj)と裏面122の座標変換量(Am,Bm,Cm,αm,βm)から、表面121の非球面軸に対する裏面122の非球面軸の相対的な位置関係を求めることができる。
【0092】
本実施例によれば、プローブと、プローブの位置制御を行なう駆動機構と、プローブの位置座標を測定するための測長器とを、それぞれ1つ準備すれば良い。このため、装置構成を簡素化し、装置を小型化できる。
【0093】
また、測定用治具100を、本実施例のようにRθ走査方式の形状測定方法に用いたとき、被測定面の形状はエアースピンドル130の回転軸に対して回転対称な形状となる。このため、走査速度を速くすることができる。この結果、測定時間を短縮できる。さらに、被測定物の表面と裏面の相対位置関係を高精度に求めることができる。
【0094】
特に、測定用治具100の製作誤差により、第1の基準面(円錐面111)の基準軸AX1と第2の基準面(円錐面112)の基準軸AX2とが不一致となる場合がある。しかしながら、基準平行平面140の平行度と、基準球150の真球度とは、第1の基準面(円錐面111)の基準軸AX1と第2の基準面(円錐面112)の基準軸AX2を一致させることに比較して、製造精度を高めやすい。また、基準平行平板や基準球は、製造費用も安価にできる。従って、本実施例によれば、基準平行平面140と基準球150という2つの基準物を測定することで、第1の基準面(円錐面111)の基準軸AX1と第2の基準面(円錐面112)の基準軸AX2との不一致による測定誤差を低減できる。この結果、高精度に被測定物の表面と裏面の相対的な位置関係を測定できる。
【0095】
(変形例)
次に、本実施例の変形例について説明する。本実施例では、基準物として基準平行平面140と基準球150との2つの部材を用いている。しかしながら、基準物は、基準軸を決定できる形状を有していれば、これらに限定されない。図11−1は、基準物の第1の変形例の断面構成を示す。なお、測定用治具100は、上述の実施例1と同じものを用いる。図11−1において、基準物1101は、基準平行平面1111、1112と、基準球1121、1122とからなる。これらは、いずれも軸対称形状を有する。基準平行平面1111、1112は周辺部に形成されている。基準球1121、1122は中心部に形成されている。
【0096】
図11−2は、基準物の第2の変形例の断面構成を示す。基準物1102は、基準平行平面1131、1132と、2次曲線からなる基準2次曲面1141、1142とからなる。これらは、いずれも軸対称形状を有する。基準平行平面1131、1132は周辺部に形成されている。基準2次曲面1141、1142は中心部に形成されている。以下、2次曲面とは、光軸に沿う方向の断面において、2次曲面に相当する部分の断面形状が2次曲線となっている面のことをいう。2次曲線の例は、円、放物線、または楕円等である。
【0097】
図11−3は、基準物の第3の変形例の断面構成を示す。基準物1103は、2次曲面からなる基準2次曲面1151、1152である。これらは、いずれも軸対称形状を有する。これら変形例によれば、1つの基準物1101、1102、1103を測定すればよい。このため、測定用治具100への基準物の保持、取り外しの工程を実施例1に比較して低減できる。このため、測定時間を短縮できるという効果を奏する。このように、基準物の構成は、様々な変形例をとることができる。
【0098】
また、本実施例では、ステップS701〜S728を連続して行なっている。しかしながら、この手順には限られない。例えば、ステップS701〜S719を初めに行なう。次に、測定用治具100の基準面形状誤差の座標変換量をあらかじめ求めておき、記憶する。そして、通常の被検物に対する測定時は、ステップS720〜S728のみを行う。このとき、ステップS728では、予め記憶してある基準面形状誤差の座標変換量を用いる。
【0099】
また、各ステップは必ずしも上述のように説明した順番で行う必要はない。例えば、ステップS720〜S727、ステップS701〜S719、そしてステップS728の順番でも良い。さらに、ステップS706〜S710、ステップS715〜S719、ステップS701〜S705、ステップS711〜S714、そしてステップS720〜S728の順番でもよい。
【0100】
さらに、本実施例では、基準平行平板140の平行度誤差は、略0(ゼロ)とみなしている。しかしながら、実際に平行度を測定しても良い。例えば、光電コリメータ等の高精度な測定器を用いて、基準平行平板140の平行度を測定しておく。そして、その測定値を基準面形状誤差の座標変換量に加えて、より高精度な3次元形状測定を行うこともできる。
【0101】
同様に、本実施例では、基準球150の表面151の曲率中心と裏面152の曲率中心とは一致するとみなしている。しかしながら、実際に基準球150を測定しても良い。例えば、オートコリメーション法等の高精度な測定手法を用いて、基準球150の表面151の曲率中心と裏面152の曲率中心との不一致を測定する。そして、その測定値を基準面形状誤差の座標変換量に加えて、より高精度な3次元形状測定を行っても良い。
【実施例2】
【0102】
本発明の実施例2に係る3次元形状測定方法について説明する。図8は、本実施例に用いる測定用治具200の断面形状を示す。上記実施例1と同一の部分には同一に符号を付し、重複する説明は省略する。また、シャフト117の記載は省略する。測定用治具200は、第1の基準平面部211hと第1の基準球面部211rとを有する。第1の基準平面部211hと第1の基準球面部211rとで、第1の基準面211を構成する。また、測定用治具200は、第2の基準平面部212hと第2の基準球面部212rとを有する。第2の基準平面部212hと第2の基準球面部212rとで、第2の基準面212を構成する。
【0103】
図9は、測定用治具200の基準面の関係を示す。第1の基準平面部211hは、第1の基準軸AX1と略直交し、軸対称形状を有する。また、第1の基準球面部211rは、断面が円弧形状を有し、軸対称形状を有する。例えば、第1の基準球面部211rの点Pにおける接平面211tは、第1の基準軸AX1と角度θ1をなす。これは、第1の基準球面部211rは、第1の基準軸AX1に対して傾きを有することに相当する。
【0104】
第1の基準面211とは反対側に第2の基準面212が形成されている。第2の基準平面部212hは、第2の基準軸AX2と略直交し、軸対称形状を有する。また、第2の基準球面部212rは、断面が円弧形状を有し、軸対称形状を有する。例えば、第2の基準球面部212rの点Pにおける接平面212tは、第2の基準軸AX2と角度θ2をなす。これは、第2の基準球面部212rは、第2の基準軸AX2に対して傾きを有することに相当する。
【0105】
次に、図10−1、10−2を参照して、本実施例の3次元形状測定方法の手順を説明する。なお、実施例1と同一の手順の説明は重複するため省略する。ステップS801、S802は、実施例1のステップS701、S702と同じである。即ち、測定用治具200の保持部114に基準となる平行平面140を保持する。
【0106】
ステップS803において、近接センサー160が測定用治具200のシャフト117(不図示)を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、基準平行平面140の表面141にプローブ170を接触させ、形状測定データ(xa,za,θa)(a=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第1の基準平面部211hにプローブ170を接触させ、形状測定データ(xb,zb,θb)(b=1,2,3・・・)を取得する。ステップS803では、第1の基準面211全体でなく、第1の基準平面部211hのみを形状測定する点が、実施例1と異なる。
【0107】
ステップS804は、実施例1のステップS704と同じである。即ち、基準平行平面140の裏面142がプローブ170に対抗するように、測定用治具200をエアースピンドル130の回転部131に固定する。
【0108】
ステップS805において、近接センサー160が測定用治具200のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、基準平行平面140の裏面142にプローブ170を接触させ、形状測定データ(xc,zc,θc)(c=1,2,3・・・)を取得する。続けて、測定用治具200の第2の基準平面部212hにプローブ170を接触させ、形状測定データ(xd,zd,θd)(d=1,2,3・・・)を取得する。ステップS805では、第2の基準面212全体でなく、第2の基準平面部212hのみを形状測定する点が、実施例1と異なる。
【0109】
ステップS806、S807は、実施例1のステップS706、S707と同じである。即ち、平行平面140を測定用治具200から取り外して、保持部114に基準球150を保持する。
【0110】
ステップS808において、近接センサー160が測定用治具200のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、基準球150の表面151にプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xe,ze,θe)(e=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第1の基準球面部211rにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xf,zf,θf)(f=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第1の基準平面部211hにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xp,zp,θp)(p=1,2,3・・・)を取得する。
【0111】
ステップS809は、実施例1のステップS709と同じである。即ち、基準球150の裏面152がプローブ170と対向するように、測定用治具200を反転してエアースピンドル130の回転部131に固定する。
【0112】
ステップS810において、近接センサー160が測定用治具200のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、基準球150の裏面152にプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xg,zg,θg)(g=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第2の基準面212の第2の基準球面部212rにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xh,zh,θh)(h=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第2の基準平面部212hにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xq,zq,θq)(q=1,2,3・・・)を取得する。
【0113】
ステップS811は、実施例1のステップS711と同じである。
【0114】
ステップS812において、ステップS803で取得した第1の基準平面部211hの形状測定データ(xb,zb,θb)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xb,Yb,Zb)に変換する。測定データ(Xb,Yb,Zb)の座標変換から、形状誤差データ(Xb,Yb,ΔZb)を算出する。その結果から、第1の基準平面部211hの座標変換量(Cb,αb,βb)を第2の座標変換量として記憶する。
【0115】
ここで、
Cbは、第1の基準平面部211hの測定データのZ軸方向の並進移動量、
αbは、第1の基準平面部211hの測定データのX軸周りの回転移動量、
βbは、第1の基準平面部211hの測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0116】
ステップS813は、実施例1のステップS713と同じである。ステップS814において、ステップS805で取得した第2の基準平面部212hの形状測定データ(xd,zd,θd)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xd,Yd,Zd)に変換する。測定データ(Xd,Yd,Zd)の座標変換から、形状誤差データ(Xd,Yd,ΔZd)を算出する。その結果から、第2の基準平面部212hの座標変換量(Cd,αd,βd)を、第4の座標変換量として記憶する。
【0117】
ここで、
Cdは、第2の基準平面部212hの測定データのZ軸方向の並進移動量、
αdは、第2の基準平面部212hの測定データのX軸周りの回転移動量、
βdは、第2の基準平面部212hの測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0118】
ステップS815において、ステップS808で取得した第1の基準球面部211rの形状測定データ(xf,zf,θf)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xf,Yf,Zf)に変換する。同様に、第1の基準平面部211hの形状測定データ(xp,zp,θp)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xp,Yp,Zp)に変換する。第1の基準平面部211hの測定データ(Xp,Yp,Zp)の座標変換から、形状誤差データ(Xp,Yp,ΔZp)を算出する。その結果から、第1の基準平面部211hの座標変換量(Cp,αp,βp)を、第5の座標変換量として記憶する。そして、第5の座標変換量の回転移動量である(αp,βp)を回転移動量に用いて、第1の基準球面部211rの測定データ(Xf,Yf,Zf)を座標変換して、形状誤差データ(Xf,Yf,ΔZf)を算出する。その結果から、第1の基準球面部211rの座標変換量(Af,Bf,Cf,αp,βp)を新たな第5の座標変換量として記憶する。
【0119】
ここで、
Afは、第1の基準球面部211rの測定データのX軸方向の並進移動量
Bfは、第1の基準球面部211rの測定データのY軸方向の並進移動量
Cfは、第1の基準球面部211rの測定データのZ軸方向の並進移動量
αpは、第1の基準平面部211hの測定データと基準球面部211rの測定データのX軸周りの回転移動量
βpは、第1の基準平面部211hの測定データと基準球面部211rの測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0120】
ステップS816において、ステップS808で取得した基準球の表面151の形状測定データ(xe,ze,θe)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xe,Ye,Ze)に変換する。そして、第5の座標変換量の回転移動量である(αp,βp)を回転移動量に用いて、測定データ(Xe,Ye,Ze)を座標変換して、形状誤差データ(Xe,Ye,ΔZe)を算出する。その結果から、基準球の表面151の座標変換量(Ae,Be,Ce,αp,βp)を、第6の座標変換量として記憶する。
【0121】
ここで、
Aeは、基準球の表面151の測定データのX軸方向の並進移動量
Beは、基準球の表面151の測定データのY軸方向の並進移動量
Ceは、基準球の表面151の測定データのZ軸方向の並進移動量
αpは、第1の基準平面部211hの測定データと基準球の表面151の測定データのX軸周りの回転移動量
βpは、第1の基準平面部211hの測定データと基準球の表面151の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0122】
ステップS817において、ステップS810で取得した第2の基準球面部212rの形状測定データ(xh,zh,θh)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xh,Yh,Zh)に変換する。同様に、第2の基準平面部212hの形状測定データ(xq,zq,θq)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xq,Yq,Zq)に変換する。第2の基準平面部212hの測定データ(Xq,Yq,Zq)の座標変換から、形状誤差データ(Xq,Yq,ΔZq)を算出する。その結果から、第2の基準平面部212hの座標変換量(Cq,αq,βq)を、第7の座標変換量として記憶する。そして、第7の座標変換量の回転移動量である(αq,βq)を回転移動量に用いて、第2の基準球面部212rの測定データ(Xh,Yh,Zh)を座標変換して、形状誤差データ(Xh,Yh,ΔZh)を算出する。その結果から、第2の基準球面部212rの座標変換量(Ah,Bh,Ch,αp,βp)を、新たな第7の座標変換量として記憶する。
【0123】
ここで、
Ahは、第2の基準球面部212rの測定データのX軸方向の並進移動量、
Bhは、第2の基準球面部212rの測定データのY軸方向の並進移動量、
Chは、第2の基準球面部212rの測定データのZ軸方向の並進移動量、
αqは、第2の基準平面部212hの測定データと基準球面部212rの測定データのX軸周りの回転移動量、
βqは、第2の基準平面部212hの測定データと基準球面部212rの測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0124】
ステップS818において、ステップS810で取得した基準球の裏面152の形状測定データ(xg,zg,θg)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xg,Yg,Zg)に変換する。そして、第8の座標変換量の回転移動量である(αq,βq)を回転移動量に用いて、測定データ(Xg,Yg,Zg)を座標変換して、形状誤差データ(Xg,Yg,ΔZg)を算出する。その結果から、基準球の裏面152の座標変換量(Ag,Bg,Cg,αq,βq)を、第8の座標変換量として記憶する。
【0125】
Agは、基準球の裏面152の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bgは、基準球の裏面152の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cgは、基準球の裏面152の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αqは、基準球の裏面152の測定データと第2の基準平面部212hの測定データのX軸周りの回転移動量、
βqは、基準球の裏面152の測定データと第2の基準平面部212hの測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0126】
次に、ステップS819における演算について説明する。第1の座標変換量(Ca,αa,βa)と第2の座標変換量(Cb,αb,βb)とから、X軸周りの回転移動量とY軸周りの回転移動量の差(αa−αb,βa−βb)を求める。この差分を、第9の座標変換量として記憶する。第9の座標変換量は、基準平行平面140の表面141と第1の基準平面部211hとの傾きの差に対応する。
【0127】
第3の座標変換量(Cc,αc,βc)と第4の座標変換量(Cd,αd,βd)から、X軸周りの回転移動量とY軸周りの回転移動量の差(αc−αd,βc−βd)を求め、第10の座標変換量として記憶する。第10の座標変換量は、基準平行平面140の裏面142と第2の基準平面部212hとの傾きの差に対応する。
【0128】
ここで、表面側(第1の基準平面部211h側)と裏面側(第2の基準平面部212h側)とは180度反転した位置関係である。ここで、表面側の測定データと裏面側の測定データとを同一の座標系で評価する必要がある。このため、表裏反転に伴う座標系の向きを考慮する。具体的には、Y軸周りの回転移動量の符号を反転する。このように、第10の座標変換量におけるY軸周りの回転移動量の符号を反転させ、新たな第10の座標変換量(αc−αd,−βc+βd)として記憶する。
【0129】
第9の座標変換量(αa−αb,βa−βb)と第10の座標変換量(αc−αd,−βc+βd)の差(αa−αb−αc+αd,βa−βb+βc−βd)を求める。そして、この差分を、基準面形状誤差の回転移動の座標変換量として記憶する。ここで、基準平行平面140では、表面141と裏面142の平行度が極めて高い。このため、基準面形状誤差の回転移動の座標変換量は、実質的に第1の基準平面部211hと第2の基準平面部212hの傾きの差とみなすことができる。
【0130】
第5の座標変換量(Af,Bf,Cf)と第6の座標変換量(Ae,Be,Ce)から、X軸方向の並進移動量とY軸方向の並進移動量とZ軸方向の並進移動量の差(Af−Ae,Bf−Be,Cf−Ce)を求める。この差分を第11の座標変換量として記憶する。
【0131】
第7の座標変換量(Ah,Bh,Ch)と第8の座標変換量(Ag,Bg,Cg)とから、X軸方向の並進移動量とY軸方向の並進移動量とZ軸方向の並進移動量の差(Ah−Ag,Bh−Bg,Ch−Cg)を求める。この差分を、第12の座標変換量として記憶する。
【0132】
ステップS719と同様に、表面側の測定データと裏面側の測定データを同一の座標系で評価するために、第12の座標変換量の符号を反転させる。具体的には、Y軸方向およびZ軸方向の並進移動量の符号を反転させる。これにより、新たな第12の座標変換量(Ah−Ag,−Bh+Bg,−Ch+Cg)として記憶する。
【0133】
基準球150は真球度が極めて高い。このため、表面151の曲率中心と裏面152の曲率中心とは一致しているとみなすことができる。よって、基準面形状誤差の回転移動の座標変換量(αa−αb−αc+αd,βa−βb+βc−βd)と、第11の座標変換量(Af−Ae,Bf−Be,Cf−Ce)と、第12の座標変換量(Ah−Ag,−Bh+Bg,−Ch+Cg)、及び基準球150の直径の理論値L0より、第1の基準面211の基準軸と第2の基準面212の基準軸の相対的な位置関係が求まる。これより、理想的な第2の基準面212の基準軸を、実際の第2の基準面212の基準軸の位置に移動させる座標変換量(Ai,Bi,Ci,αi,βi)を算出する。算出した座標変換量を、基準面形状誤差の座標変換量(Ai,Bi,Ci,αi,βi)として、記憶する。
【0134】
上述のステップS801〜S819は、測定用治具200の第1の基準面211の基準軸と第2の基準面212の基準軸との不一致による誤差の補正量を導出する手順に対応する。
【0135】
次に、被測定物の測定について説明する。ステップS820〜S828は、被測定物の3次元形状を測定する手順に対応する。ステップS820、S821は、それぞれ実施例1のステップS720、S721と同じである。
【0136】
ステップS822において、近接センサー160が測定用治具200のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、非球面レンズ120の表面121にプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xj,zj,θj)(j=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第1の基準平面部211hにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xhk,zhk,θhk)(k=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第1の基準球面部211rにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xrk,zrk,θrk)(k=1,2,3・・・)を取得する。
【0137】
ステップS823は、実施例1のステップS723と同じである。
【0138】
ステップS824において、近接センサー160が測定用治具200のシャフト117を検出した時点で、ロータリーエンコーダの回転角度(θ)をリセットする。その後、非球面レンズ120の裏面122にプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xm,zm,θm)(m=1,2,3・・・)を取得する。次に、測定用治具200の第2の基準平面部212hにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xhn,zhn,θhn)(n=1,2,3・・・)を取得する。さらに、測定用治具200の第2の基準球面部212rにプローブ170を接触させる。そして、形状測定データ(xrn,zrn,θrn)(n=1,2,3・・・)を取得する。
【0139】
ステップS825において、ステップS822で取得した第1の基準平面部211hの形状測定データ(xhk,zhk,θhk)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xhk,Yhk,Zhk)に変換する。そして、測定データ(Xhk,Yhk,Zhk)を座標変換して第1の基準平面部211hの形状誤差データ(Xhk,Yhk,ΔZhk)を算出する。これより、第1の基準平面部211hの座標変換量(αk,βk)を得ることができる。次に、第1の基準球面部211rの形状測定データ(xrk,zrk,θrk)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xrk,Yrk,Zrk)に変換する。そして、第1の基準平面部211hの座標変換量の回転移動量(αk,βk)を回転移動量として、測定データ(Xrk,Yrk,Zrk)を座標変換して、第1の基準平面部211hの形状誤差データ(Xrk,Yrk,ΔZrk)を算出する。これより、第1の基準球面部211rの座標変換量(Ak,Bk,Ck)を得ることができる。そして、第1の基準面211の測定データの座標変換量(Ak,Bk,Ck,αk,βk)を、第13の座標変換量として記憶する。
【0140】
ここで、
Akは、第1の基準面211の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bkは、第1の基準面211の測定データのY軸方向の並進移動量、
Ckは、第1の基準面211の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αkは、第1の基準面211の測定データのX軸周りの回転移動量、
βkは、第1の基準面211の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0141】
次に、ステップS826において、ステップS824で取得した第2の基準平面部212hの形状測定データ(xhn,Zhn,θhn)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xhn,Yhn,Zhn)に変換する。そして、測定データ(Xhn,Yhn,Zhn)を座標変換して、第2の基準平面部212hの形状誤差データ(Xhn,Yhn,ΔZhn)を算出する。これより、第2の基準平面部212hの座標変換量(αn,βn)を得ることができる。次に、第2の基準球面部212rの形状測定データ(xrn,Zrn,θrn)を、XYZ直交座標系の測定データ(Xrn,Yrn,Zrn)に変換する。そして、第2の基準平面部212hの座標変換量の回転移動量(αn,βn)を回転移動量として、測定データ(Xrn,Yrn,Zrn)を座標変換して、第2の基準球面部212rの形状誤差データ(Xrn,Yrn,ΔZrn)を算出する。これより、第2の基準球面部212rの座標変換量(An,Bn,Cn)を得ることができる。そして、第2の基準面212の測定データの座標変換量(An,Bn,Cn,αn,βn)を、第14の座標変換量として記憶する。
【0142】
ここで、
Anは、第2の基準面212の測定データのX軸方向の並進移動量、
Bnは、第2の基準面212の測定データのY軸方向の並進移動量、
Cnは、第2の基準面212の測定データのZ軸方向の並進移動量、
αnは、第2の基準面212の測定データのX軸周りの回転移動量、
βnは、第2の基準面212の測定データのY軸周りの回転移動量である。
【0143】
ステップS827、S828は、それぞれ実施例1のステップS727、S728と同じである。これにより、非球面120の表面121と裏面122との形状と相対的な位置関係とを求めることができる。
【0144】
上記実施例1では、基準面形状誤差の座標変換量は、円錐面111、112の測定データを用いて、X軸とY軸とZ軸とに沿った3つの並進移動と、X軸とY軸の周りの2つの回転移動とを座標変換のパラメータとしている。そして、座標変換した結果から座標変換量を求めている。
【0145】
これに対して、本実施例では、基準面形状誤差の座標変換量は、2つの座標変換の結果に基づいて算出されている。第1の座標変換は、基準平面部の測定データを用いて、Z軸に沿った並進移動と、X軸とY軸の周りの2つの回転移動とをパラメータとして座標変換するものである。第2の座標変換は、基準球面部の測定データを用いて、X軸とY軸とZ軸とに沿った3つの並進移動をパラメータとして座標変換するものである。
【0146】
ここで、X軸に沿った並進移動とY軸の周りの回転移動、またはY軸に沿った並進移動とX軸の周りの回転移動とは、それぞれ独立したパラメータではない。例えば、Y軸の周りの回転移動を行うと、測定データはX軸に沿った並進移動も同時にする。このため、X軸に沿った並進移動とY軸の周りの回転移動、またはY軸に沿った並進移動とX軸の周りの回転移動を、1つの測定データから求めるよりも、別の測定データから個々に求めるほうが、座標変換の自由度が減る。これにより、測定時の微小なノイズ等の外乱による座標変換量の誤差を低減できる。
【0147】
従って、本実施例では、実施例1に比較して、測定時の微小なノイズ等の外乱による測定誤差が生じにくい。この結果、高精度に被測定物の表面と裏面との相対的な位置関係を測定できるという効果を奏する。
【0148】
(変形例)
次に、本実施例に用いる測定用治具の変形例について説明する。第1の基準面211と第2の基準面212とは基準軸を決定できる形状を有していれば良い。図12−1は、第1の変形例である測定用治具300の断面構成を示す。図12−1において、第1の基準面311は、第1の基準平面部311hと第1の基準球面部311rとからなる。これらは、いずれも軸対称形状を有する。また、第2の基準面312は、第2の基準平面部312hと第2の基準球面部312rとからなる。これらは、いずれも軸対称形状を有する。基準平面部311h、312hは周辺部に形成されている。基準球面部311r、312rは中心部に形成されている。ここで、図12−1において、第1の基準球面部311rの右側の円弧の曲率中心位置と、左側の円弧の曲率中心位置とは一致していない。このため、第1の基準球面部311rの断面は、基準軸113を中心として断面が円環(ドーナツ)形状の一部である。また、これに限られず、第1の基準球面部311rの右側の円弧の曲率中心位置と、左側の円弧の曲率中心位置とを一致させても良い。このように、XZ断面における基準球面部の曲率中心位置は一致させること、一致させないことの何れでも良い。このことは、全ての基準球面部について同様である。
【0149】
図12−2は、第2の変形例である測定用治具400の断面構成を示す。図12−2において、第1の基準面411は、第1の基準平面部411hと第1の基準球面部411rとからなる。これらは、いずれも軸対称形状を有する。また、第2の基準面412は、第2の基準平面部412hと第2の基準球面部412rとからなる軸対称形状を有する。第1の基準平面部411hは周辺部に形成されている。第1の基準球面部411rは中心部に形成されている。さらに、第2の基準球面部412rは周辺部に形成されている。第2の基準平面部412hは中心部に形成されている。
【0150】
図12−3は、第3の変形例である測定用治具500の断面構成を示す。図12−3において、第1の基準面511は、第1の基準平面部511hと第1の基準球面部511rとからなる。これらは、いずれも軸対称形状を有する。また、第2の基準面512は、第2の基準平面部512hと第2の基準球面部512rとからなる。これらは、いずれも軸対称形状を有する。第1の基準平面部511hは周辺部に形成されている。第1の基準球面部511rは中心部に形成されている。さらに、第2の基準球面部512rは周辺部に形成されている。第2の基準平面部512hは中心部に形成されている。そして、第3の変形例では、測定用治具500の一方の面には、フランジ部501が形成されている。また、測定用治具500の他方の面には、フランジ部502が形成されている。測定用治具500をステージや作業台等に載置したときに、これらフランジ部501、502がステージ等に接触する。これにより、第1の基準面511や第2の基準面512が直接ステージ等に接触して破損することを防止できるという効果を奏する。
【0151】
また、測定用治具の他の変形例として、基準平面部と2次曲面からなる基準2次曲面部とを備える構成でも良い。加えて、さらに他の変形例として、基準面として2次曲面からなる基準2次曲面部のみを備える構成とすることもできる。
【0152】
また、上記各実施例では、回転方向(θ)のリセット(原点)位置を設定するために円柱状のシャフト117を用いている。リセット位置を設定するための検出部材としては、板、角柱、または球形状でも良い。さらに、近接センサー160を用いた例を説明しているが、検出部材を用いて測定用治具がθ方向の所定の位置に来たことを検出できれば、いかなる構成のセンサーでも良い。加えて、シャフトの代わりに、測定用治具の表面に細線などのマーキング(指標)を形成する構成でも良い。マーキングは、基準面の形状を測定するときに、マーキングの位置が検出できれば良い。従って、プローブ170による基準面の測定時に支障を生じない程度に細く、浅く形成することが望ましい。さらに、検出部は、測定用治具の回転(θ)方向の基準位置(原点)を検出できれば、どのような形状、手段でもよい。
【0153】
また、検出部を備えなくても、エアースピンドル130のロータリーエンコーダに対する、測定用治具の取付け位置がわかればよい。例えば、測定用治具とエアースピンドル130の回転部131の双方に位置決め用の穴を設けて、位置決めピンを挿入することにより、測定用治具のスピンドル130の回転部131に対する位置が一定になる構成としても同等の効果が得られる。また、測定用治具とエアースピンドル130の回転部131にマーキング(指標)を形成し、両者のマーキングが一致するように取付けても同等の効果が得られる。さらに、測定用治具のスピンドル130の回転部131に対する位置を決定することができれば、いかなる方法を用いてもよい。
【0154】
さらに、上記各実施例は、Rθ走査方式を例に説明している。しかしながら、本発明は、XY走査方式の3次元形状測定方法にも適用できる。また、形状測定用のプローブとして接触式のプローブ170を用いている。本発明では、接触式のプローブに代えて、公知の光プローブを被測定面との距離を一定に保ちながら走査する非接触式プローブであっても良い。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形をとることができる。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上のように、本発明に3次元形状測定方法は、レンズ等の表面と裏面との形状と相対的な位置関係を測定するときに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1−1】実施例1に用いる測定用治具の断面構成を示す図である。
【図1−2】実施例1に用いる測定用治具の正面構成を示す図である。
【図2】実施例1において3次元形状測定を行なうときの構成を示す図である。
【図3】基準面である円錐面の相対的な位置関係を示す図である。
【図4】測定用治具に平行平面を保持したときの構成を示す図である。
【図5】測定用治具に基準球を保持したときの構成を示す図である。
【図6】実施例1の大まかな手順を示すフローチャートである。
【図7−1】実施例1の3次元形状測定方法の手順を説明するフローチャートである。
【図7−2】実施例1の3次元形状測定方法の手順を説明する他のフローチャートである。
【図8】実施例2に用いる測定用治具の断面構成を示す図である。
【図9】実施例2に用いる測定用治具の基準面の相対的な位置関係を示す図である。
【図10−1】実施例2の3次元形状測定方法の手順を説明するフローチャートである。
【図10−2】実施例2の3次元形状測定方法の手順を説明する他のフローチャートである。
【図11−1】基準物の第1の変形例を示す図である。
【図11−2】基準物の第2の変形例を示す図である。
【図11−3】基準物の第3の変形例を示す図である。
【図12−1】測定用治具の第1の変形例を示す図である。
【図12−2】測定用治具の第2の変形例を示す図である。
【図12−3】測定用治具の第3の変形例を示す図である。
【図13】従来技術の3次元形状測定機の構成を示す図である。
【図14】従来技術の他の3次元形状測定の概略構成を示す図である。
【図15】従来技術の別の3次元形状測定の概略構成を示す図である。
【図16−1】円錐面の相対的な位置関係を示す図である。
【図16−2】円錐面の相対的な位置関係を示す他の図である。
【図17】円錐面の相対的な位置関係を示すさらに他の図である。
【符号の説明】
【0157】
100 測定用治具
111 円錐面
112 円錐面
113 基準軸
114 保持部
115 第1の開口部
116 第2の開口部
117 シャフト
118 外周部
120 非球面レンズ
121 表面
122 裏面
130 エアースピンドル
131 回転部
132 回転支持部
133 回転軸
140 平行平面
141 表面
142 裏面
150 基準球
151 表面
152 裏面
160 近接センサー
170 プローブ
171 先端球
200 測定用治具
211 第1の基準面
211h 第1の基準平面部
211r 第1の基準球面部
212 第2の基準面
212h 第2の基準平面部
212r 第2の基準球面部
300 測定用治具
311 第1の基準面
311h 第1の基準平面部
311r 第1の基準球面部
312 第2の基準面
312h 第2の基準平面部
312r 第2の基準球面部
400 測定用治具
411 第1の基準面
411h 第1の基準平面部
411r 第1の基準球面部
412 第2の基準面
412h 第2の基準平面部
412r 第2の基準球面部
500 測定用治具
501、502 フランジ
511 第1の基準面
511h 第1の基準平面部
511r 第1の基準球面部
512 第2の基準面
512h 第2の基準平面部
512r 第2の基準球面部
1101 基準物
1111、1112 基準平行平面
1121、1122 基準球
1102 基準物
1131,1132 基準平行平面
1141,1142 基準2次曲面
1103 基準物
1151,1152 基準2次曲面
AX1、AX2 基準軸
11 θステージ
12 非球面レンズ
12a 表面
12b 裏面
13a、13b プローブ
14a、14b レーザー測長器
21 レンズ
21a 表面
21b 裏面
22 測定用治具
23 位置決め球
31 非球面レンズ
32 測定用治具
32a 平面部分
32b エッジ部分
33 プローブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基準軸に対して少なくとも形状の一部が傾きを持ち、前記第1の基準軸を中心とした軸対称な形状であって、一方の面に形成された第1の基準面と、第2の基準軸に対して少なくとも形状の一部が傾きを持ち、前記第2の基準軸を中心とした軸対称な形状であって、他方の面に形成された第2の基準面とを有する測定用治具を用いて被測定物の3次元形状を測定する方法であって、
前記測定用治具に基準物を保持する基準物保持工程と、
前記第1の基準面と前記基準物の一方の面の3次元形状とを測定する第1の基準物測定工程と、
前記第2の基準面と前記基準物の他方の面の3次元形状とを測定する第2の基準物測定工程と、
前記第1の基準物測定工程の測定結果と前記第2の基準物測定工程の測定結果とに基づいて、前記第1の基準面と前記第2の基準面との間の相対的位置関係に関する補正値を演算する補正値算出工程と、
前記測定用治具に被測定物を保持する被測定物保持工程と、
前記第1の基準面と前記被測定物の一方の面の3次元形状とを測定する第1の被測定物測定工程と、
前記第2の基準面と前記被測定物の他方の面の3次元形状とを測定する第2の被測定物測定工程と、
前記第1の被測定物測定工程の測定結果と前記第2の被測定物測定工程の測定結果と前記補正値とに基づいて、前記被測定物の3次元形状を演算する3次元形状算出工程とを有することを特徴とする3次元形状測定方法。
【請求項2】
前記基準物保持工程は、基準となる平行平面を保持する平行平面保持工程と、基準球を保持する基準球保持工程とを含み、
前記平行平面保持工程に続いて、前記第1の基準面と前記平行平面の一方の面の3次元形状とを測定する第1の平行平面測定工程と、
前記第2の基準面と前記平行平面の他方の面の3次元形状とを測定する第2の平行平面測定工程と、
前記第1の平行平面測定工程の測定結果と前記第2の平行平面測定工程の測定結果とに基づいて、前記第1の基準面と前記第2の基準面との間の相対的位置関係に関する第1の補正値を演算する第1補正値算出工程と、
前記基準球保持工程に続いて、前記第1の基準面と前記基準球の一方の面の3次元形状とを測定する第1の基準球測定工程と、
前記第2の基準面と前記基準球の他方の面の3次元形状とを測定する第2の基準球測定工程と、
前記第1の基準球測定工程の測定結果と前記第2の基準球測定工程の測定結果とに基づいて、前記第1の基準面と前記第2の基準面との間の相対的位置関係に関する第2の補正値を演算する第2補正値算出工程とをさらに有し、
前記3次元形状算出工程では、前記第1の被測定物測定工程の測定結果と前記第2の被測定物測定工程の測定結果と前記第1の補正値と前記第2の補正値とに基づいて、前記被測定物の3次元形状を演算することを特徴とする請求項1に記載の3次元形状測定方法。
【請求項3】
前記第1の基準面は、前記第1の基準軸と略直交する第1の基準平面部と、前記第1の基準軸に対して所定の角度をなす接平面を有する第1の基準球面部とを備え、
前記第2の基準面は、前記第2の基準軸と略直交する第2の基準平面部と、前記第2の基準軸に対して所定の角度をなす接平面を有する第2の基準球面部とを備え、
前記第1の平行平面測定工程において、前記第1の基準平面部と前記平行平面の一方の面の3次元形状とを測定し、
前記第2の平行平面測定工程において、前記第2の基準平面部と前記平行平面の他方の面の3次元形状とを測定し、
前記第1の基準球測定工程において、前記第1の基準平面部、前記第1の基準球面部、及び前記基準球の一方の面の3次元形状とを測定し、
前記第2の基準球測定工程において、前記第2の基準平面部、前記第2の基準球面部及び前記基準球の他方の面の3次元形状とを測定することを特徴とする請求項2に記載の3次元形状測定方法。
【請求項4】
前記測定用治具に保持される前記基準物は、平面部と円弧部とからなる軸対称形状、平面部と2次曲線部とからなる軸対称形状、または2次曲線部からなる軸対称形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の3次元形状測定方法。
【請求項5】
前記測定用治具に形成されている前記基準面は、平面部と円弧部とからなる軸対称形状、平面部と2次曲線部とからなる軸対称形状、または2次曲線部からなる軸対称形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の3次元形状測定方法。


【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図11−1】
image rotate

【図11−2】
image rotate

【図11−3】
image rotate

【図12−1】
image rotate

【図12−2】
image rotate

【図12−3】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16−1】
image rotate

【図16−2】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−125884(P2006−125884A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311418(P2004−311418)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】