説明

CVD装置

【課題】成膜容器内に付着する反応生成膜の除去作業などの成膜に寄与しない作業での待ち時間を削減でき、これにより、生産性を向上させることができると共に、成膜対象物への均一な成膜を実現できる構造簡単且つ安価なCVD装置を提供する。
【解決手段】成膜容器1内に収容される成膜対象物Sを加熱し、該加熱された状態の成膜対象物Sに膜形成するCVD装置100は、成膜容器1内において、トレイ10に支持される成膜対象物Sとは反対側で該成膜対象物Sを加熱する発熱源2と、トレイ10と発熱源2との間に位置すると共に、トレイ10に接触され且つ発熱源2との間に空間Qを確保した状態で、トレイ10に支持される成膜対象物Sの温度を均一化する温度均一化部材4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜容器内に収容される成膜対象物を加熱し、該加熱された状態の成膜対象物に膜形成するCVD装置に関し、例えば、太陽電池等の半導体デバイスの製造に用いられるCVD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜容器内に収容される成膜対象物を加熱し、該加熱された状態の成膜対象物に膜形成する従来のCVD装置(Chemical Vapor Deposition)は、例えば、半導体デバイス製造工程において、窒化シリコン等の成膜のために広く使用されている。
【0003】
斯かる従来のCVD装置においては、一般的には、成膜容器内に収容される成膜対象物を加熱する加熱手段を備え、該加熱手段によって加熱された状態の成膜対象物に対して成膜を行っている。
【0004】
従来のCVD装置として、例えば、加熱手段にヒータ線の表面を電気的に絶縁したシースヒータを金属製のブロック内部に埋設したヒータブロックを用い、該ヒータブロックによって、成膜対象基板を加熱するように構成したCVD装置が提案されている。
【0005】
このヒータブロックを用いた従来のCVD装置による成膜プロセスについて、太陽電池反射防止膜を形成するプロセスを例にとって以下に説明する。図2は、ヒータブロックを用いた従来のCVD装置を概略的に示す側面図である。
【0006】
図2に示すCVD装置100’では、成膜が行われるにあたり、成膜対象基板である100枚程度のシリコンウェハSがトレイ10’に載置されると共、該シリコンウェハSを載置したトレイ10’が成膜容器である成膜チャンバー1内に収容され、接地されたヒータブロック20’上に載置される。そして、トレイ10’を載置したヒータブロックが温度制御手段15’によって所定温度(例えば500℃程度)に加熱される。
【0007】
次に、ガス供給手段7によって、成膜チャンバー1内に、成膜原料ガスとして、シラン(SiH4)、アンモニア(NH3)、窒素(N2)の混合ガスが導入されると共に、排気手段14によって、該成膜チャンバー1内が減圧され、所定圧力(例えば100Pa程度)に保持される。
【0008】
そして、成膜チャンバー1内において、電力供給手段5によって、トレイ10’に対して対向配置された電極6に高周波電力が印加されて、前記混合ガスがプラズマ状態にされ、トレイ10’に載置されたシリコンウェハSの表面に反応生成膜である窒化シリコン膜が形成される。
【0009】
かかる従来のCVD装置100’においては、次のような問題があった。例えば、半導体デバイスの製造工程においては、成膜対象基板Sだけでなく、成膜チャンバー1内壁1’や成膜チャンバー1内部品にも反応生成膜が付着する。また、前記した一連の成膜プロセスは、通常は、連続的に繰り返される。このため、成膜チャンバー1内壁1’や成膜チャンバー1内部品に付着した反応生成膜は、前記成膜プロセスが繰り返されることにより、成膜チャンバー1内壁1’や成膜チャンバー1内部品に積み重なって付着し、その内部応力により、成膜チャンバー1内壁1’や成膜チャンバー1内部品からはがれ、その一部は成膜対象基板S上に付着する。そして、成膜対象基板S上に付着した反応生成膜の一部は、本来、該成膜対象基板S上に成長すべき反応生成膜の正常な成長を妨げることになる。
【0010】
これを防止するため、通常は、成膜チャンバー1を定期的に(例えば一定バッチ数の成膜処理が終わる毎に)開放し、成膜チャンバー1内壁1’や成膜チャンバー1内部品に付着した反応生成膜を除去する作業が行われる。
【0011】
しかし、成膜チャンバー1が開放される際には、ヒータブロック20’をある程度の温度まで下げておかないと、ヒータブロック20’や成膜チャンバー1内部品が大気に触れる際に、急激な温度変化により、破損する虞がある。そのため、成膜チャンバー1内に付着する反応生成膜の除去作業においては、ヒータ線2’への通電を一定時間停止して、ヒータブロック20’や成膜チャンバー1内部品の温度がある程度下がった後でないと、成膜チャンバー1を開放することができない。
【0012】
また、成膜チャンバー1内の反応生成膜の除去作業終了後においては、成膜チャンバー1を密閉し、真空引きした後、さらに、ヒータ線2’を通電し、成膜対象基板Sが所定温度になるまで、ヒータ線2’に対して一定時間通電を続けた後でないと、次の成膜対象基板Sに成膜を行うことができない。
【0013】
そして、ヒータブロック20’は、既述したように、ヒータ線2’の表面を電気的に絶縁したシースヒータを金属製のブロック内部に埋設した構成であるので、ヒータ線そのものに比べ、熱容量が大きく、それだけ、温度低下及び温度上昇に時間を要する。
【0014】
このように、ヒータブロックを用いた従来のCVD装置では、前記した反応生成膜の除去作業を定期的に実施する際に、ヒータブロックの温度低下及び温度上昇に時間を要するため、稼働率が大幅に低下する。
【0015】
この問題を解決するものとして、例えば、冷却手段によって、加熱手段を冷却するCVD装置が開示されている(下記特許文献1参照)。
【0016】
しかしながら、前記特許文献1に記載のCVD装置では、冷却手段によって加熱手段を冷却することで、成膜容器内に付着する反応生成膜の除去作業などの作業での待ち時間を削減できるものの、装置構成が複雑化し、それだけ装置コストが高くつく。
【特許文献1】特開2001−330352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明は、成膜容器内に付着する反応生成膜の除去作業などの成膜に寄与しない作業での待ち時間を削減でき、これにより、生産性を向上させることができると共に、成膜対象物への均一な成膜を実現できる構造簡単且つ安価なCVD装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記課題を解決するために、成膜容器内に収容される成膜対象物を加熱し、該加熱された状態の成膜対象物に膜形成するCVD装置であって、前記成膜容器内において、トレイに支持される成膜対象物とは反対側で該成膜対象物を加熱する発熱源と、前記トレイと前記発熱源との間に位置すると共に、前記トレイに接触され且つ前記発熱源との間に空間を確保した状態で、前記トレイに支持される成膜対象物の温度を均一化する温度均一化部材とを備えていることを特徴とするCVD装置を提供する。
【0019】
本発明に係るCVD装置は、成膜容器内に収容される成膜対象物を加熱し、該加熱された状態の成膜対象物に膜形成できるものであれば、何れのものにも適用できる。例えば、成膜容器内に供給される成膜原料ガスを電力印加によりプラズマ状態にし、該プラズマ状態下で前記成膜容器内に収容される成膜対象物に膜形成するプラズマCVD装置、成膜容器内に供給される成膜原料ガスに光エネルギーを与えて前記成膜容器内に収容される成膜対象物に膜形成する光CVD装置、成膜容器内に供給される成膜原料ガスを熱分解させて前記成膜容器内に収容される成膜対象物に膜形成する熱CVD装置、或いは、成膜容器内に供給される成膜原料ガスを加熱した触媒体に接触させることで得られる生成物を堆積させて前記成膜容器内に収容される成膜対象物に膜形成する触媒CVD装置などを挙げることができる。
【0020】
本発明に係るCVD装置によれば、従来装置のようなヒータブロックを用いる構成ではなく、前記発熱源と前記温度均一化部材との間に空間が確保され、前記発熱源が前記温度均一化部材との間に空間が存する状態で前記トレイに支持される成膜対象物を加熱するので、該発熱源の熱容量を従来装置のヒータブロックの場合に比べ小さくしても該トレイに支持される成膜対象物を支障なく加熱することができる。このように、前記発熱源の熱容量を従来装置のヒータブロックの場合に比べ小さくできるので、前記発熱源の温度低下及び温度上昇に必要な時間を短縮でき、それだけ、成膜容器内に付着する反応生成膜の除去作業などの作業での待ち時間の短縮化を図ることができる。従って、前記反応生成膜の除去作業などの成膜に寄与しない作業での待ち時間を削減でき、これにより、生産性を向上させることが可能となる。
【0021】
また、前記トレイと前記発熱源との間に位置すると共に、前記トレイに接触され且つ前記発熱源との間に空間を確保した状態で、前記トレイに支持される成膜対象物の温度を均一化する前記温度均一化部材が設けられるので、該温度均一化部材によって前記トレイに支持される成膜対象物の温度を均一にすることができ、これにより、成膜対象物への均一な成膜が可能となる。
【0022】
さらに、従来装置のような冷却手段を設ける構成ではないので、構造が簡単であり、且つ、安価である。
【0023】
本発明に係るCVD装置の具体的態様として、前記温度均一化部材は、前記トレイに接触する接触面を有すると共に、該接触面が水平になるように前記発熱源の上方に配置されており、該温度均一化部材の前記接触面の上に前記トレイを乗載して該トレイに支持される成膜対象物を成膜する態様を例示できる。こうすることで、さらに簡単且つ安価な構成で成膜対象物を成膜することが可能となる。
【0024】
本発明に係るCVD装置において、前記発熱源からの赤外線を含む電磁波の輻射により、前記トレイに支持される成膜対象物の温度制御を行う態様を例示できる。これにより、前記発熱源と前記温度均一化部材との間に空間が確保された状態でも、前記トレイに支持される成膜対象物を良好に温度制御することができる。この場合、前記発熱源としては、代表的には電熱線を例示できる。
【0025】
また、本発明に係るCVD装置において、前記トレイに支持される成膜対象物をさらに均一に加熱するという観点から、前記温度均一化部材は、例えば、熱伝導率が前記トレイの熱伝導率よりも大きい材料で形成されていることが好ましい。
【0026】
本発明に係るCVD装置において、前記温度均一化部材は、金属材料で形成されていることが好ましい。この場合、熱伝導率が比較的大きい金属材料として、銅又は銅を含む合金を用いることができる。但し、それに限定されるものではなく、例えば、比較的安価な金属材料として、鉄又は鉄を含む合金を用いてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によると、成膜容器内に付着する反応生成膜の除去作業などの成膜に寄与しない作業での待ち時間を削減でき、これにより、生産性を向上させることができると共に、成膜対象物への均一な成膜を実現できる構造簡単且つ安価なCVD装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係るCVD装置の一実施形態を概略的に示す側面図である。図1に示すCVD装置100は、成膜容器1内に収容される成膜対象物Sを加熱し、該加熱された状態の成膜対象物Sに膜形成するものである。
【0030】
CVD装置100は、成膜容器1と、成膜容器1内において、トレイ10に支持される成膜対象物Sとは反対側で該成膜対象物Sを加熱する発熱源2と、トレイ10と発熱源2との間に位置すると共に、トレイ10に接触され且つ発熱源2との間に空間Qを確保した状態で、トレイ10に支持される成膜対象物Sの温度を均一化する温度均一化部材4とを備えている。
【0031】
本実施の形態では、温度均一化部材4は、トレイ10に接触する接触面(以下、第1平面という。)4aを有すると共に、該第1平面4aが水平になるように発熱源2の上方に配置されており、該温度均一化部材4の第1平面4aの上にトレイ10を乗載して該トレイ10に支持される成膜対象基板Sを成膜するように構成されている。
【0032】
さらに説明すると、CVD装置100は、成膜容器1内に供給される成膜原料ガスを電力印加によりプラズマ状態にし、該プラズマ状態下で成膜容器1内に収容される成膜対象物である成膜対象基板Sに膜形成するプラズマCVD装置とされている。
【0033】
詳しくは、CVD装置100は、前記の構成に加えて、第1電極6と、電力供給手段5と、成膜原料ガス供給手段7と、排気手段14とを備えている。なお、温度均一化部材4は、ここでは、第2電極を兼ねている。
【0034】
成膜容器1は、成膜室として用いられる真空容器であり、電気的に接地されている。この成膜容器(以下、成膜チャンバーという。)1は、開閉可能な開閉部(図示せず)を有しており、該開閉部を介して成膜チャンバー1内にトレイ10及び成膜対象基板Sを搬入、又は成膜チャンバー1内からトレイ10及び成膜対象基板Sを搬出できるようになっている。
【0035】
トレイ10は、成膜チャンバー1内で膜形成される成膜対象基板Sを載置するものである。このトレイ(以下、基板トレイという。)10は、成膜対象基板Sを載置する第1平面10aと、該第1平面10aとは反対側に該第1平面10aに略平行に形成された第2平面10bとを有している。第1平面10aは、成膜対象基板Sの成膜される側とは反対側の面S’と面接触する面とされている。また、第2平面10bは、温度均一化部材4の第1平面4aと面接触する面とされている。
【0036】
温度均一化部材4は、既述のとおり、第2電極を兼ねている。この温度均一化部材4は、ここでは、導電性材料で形成されている。また、温度均一化部材4は、基板トレイ10の第2平面10bと面接触する第1平面4aが水平になるように配置されており、該第1平面4aとは反対側に該第1平面4aと略平行に形成された第2平面4bを有している。具体的には、温度均一化部材4は、板状に形成されている。この第2平面4bは、後述する発熱源2に対して空間Qをおいて対向する面とされている。そして、温度均一化部材4は、基板トレイ10の第2平面10bの全領域を覆って形成される。温度均一化部材4は、ここでは、平面4a,4bに沿う方向の長さが基板トレイ10の平面10a,10bに沿う方向の長さよりも大きくなるように形成されている。
【0037】
発熱源2は、成膜チャンバー1内に収容されている。この発熱源2は、温度均一化部材4を基準にして、該温度均一化部材4に乗載される基板トレイ10とは反対側(ここでは該温度均一化部材4の下方)において、該温度均一化部材4に対して所定の間隔をおいて配置されている。発熱源2は、ここでは通電により発熱するものであり、赤外線の輻射(放射)作用を有する電熱線とされている。そして、発熱源2は、電力が供給されることによって、発熱するようになっている。
【0038】
この発熱源2の熱容量は、従来装置のヒータブロックの場合に比べ小さくなっている。即ち、CVD装置100は、従来装置のようなヒータブロックを用いる構成ではなく、発熱源2が温度均一化部材4との間に空間が存する状態で成膜対象基板Sを加熱する構成とされているので、該発熱源2の熱容量を従来装置のヒータブロックの場合に比べ小さくしても成膜対象基板Sを支障なく加熱することができる。
【0039】
第1電極6は、成膜チャンバー1内に収容されており、導電性材料によって形成されている。第1電極6は、ここでは、基板トレイ10に支持される成膜対象基板Sに臨む側に該成膜対象基板Sに対向するように延びる面6aを有し、中空形状とされている。
【0040】
この第1電極6は、後述する成膜原料ガス供給手段7からの成膜原料ガスが導入されるガス導入空間61と、ガス導入空間61に連通するガス流出孔62とを有している。
【0041】
第1電極6の成膜対象基板Sに対向する面6aは、平面に形成されている。この平面6aには、全面に亘って多数(例えば1000個程度)のガス流出孔62が所定間隔をおいて略均等に形成されている。各ガス流出孔62の直径は、例えば3mm程度とされている。
【0042】
また、第1電極6は、ガス流出孔62形成側とは反対側に設けられたガス流入孔63を有している。ガス流入孔63は、ガス導入空間61に連通し、成膜ガス供給手段7からの成膜原料ガスが流入されるようになっている。
【0043】
このように構成された第1電極6は、成膜ガス供給手段7からの成膜原料ガスを成膜チャンバー1内にシャワー状に噴出する役割も果たす、いわゆるシャワー電極とされている。
【0044】
電力供給手段5は、第2電極を兼ねる温度均一化部材4と第1電極6との間に電力を供給するものである。ここでは、電力供給手段5は、RF(高周波)電源51を備えている。RF(高周波)電源51は、第1電極6に電気的に接続されている。また、第2電極を兼ねる温度均一化部材4は、電気的に接地されている。
【0045】
成膜原料ガス供給手段7は、成膜チャンバー1内に成膜原料ガスを供給するものである。この成膜原料ガス供給手段7は、ガス供給源71と、一端がガス供給源71に接続され且つ他端が成膜チャンバー1内の第1電極6に接続されるガス供給配管72とを備えている。そして、成膜原料ガス供給手段7は、ガス供給配管72を介して成膜チャンバー1内に1種類又は2種類以上の成膜用原料ガスを供給できるようになっている。
【0046】
排気手段14は、成膜チャンバー1内を排気するものである。この排気手段14は、成膜チャンバー1内を減圧する圧力ポンプ13と、一端が圧力ポンプ13に接続され且つ他端が成膜チャンバー1に接続される排気配管11と、排気配管11に介挿され、成膜チャンバー1内の圧力を調整する圧力調整バルブ12とを備えている。そして、排気手段14は、圧力ポンプ13により排気配管11を介して成膜チャンバー1内を排気すると共に、圧力調整バルブ12により該成膜チャンバー1内を所定の圧力に調整できるようになっている。
【0047】
CVD装置100は、さらに、基板トレイ10に載置される成膜対象基板Sの温度を制御する温度制御手段15を備えている。
【0048】
温度制御手段15は、例えば、系統電源などの電力源(図示せず)から供給される電力を調整する温度調整部151を備え、温度調整部151にて調整した電力を発熱源2に与える。即ち、温度制御手段15は、発熱源2に予め定める電力を供給するように前記電力源からの電力を調整することによって、発熱源2の発熱量を制御するようになっている。
【0049】
斯かる構成を備えることにより、CVD装置100は、基板トレイ10に載置される成膜対象基板Sを発熱源2からの赤外線の輻射(放射)によって所定の温度に制御できるようになっている。
【0050】
以上説明したCVD装置100では、成膜対象基板(例えばシリコンウェハ)Sが成膜されるにあたり、成膜チャンバー1の外部より、図示を省略した搬送手段によって、成膜対象基板Sを100枚程度載置した基板トレイ10が搬入され、温度均一化部材4の上に乗載される。このとき、成膜対象基板Sは、温度調整部151にて発熱量が調整された状態の発熱源2によって所定温度(例えば500℃程度)に加熱される。
【0051】
即ち、発熱源2が発熱すると、赤外線の輻射(放射)によって温度均一化部材4が加熱され、温度均一化部材4の温度が上昇する。温度均一化部材4の温度が上昇すると温度均一化部材4が発熱し、この温度均一化部材4の発熱によって、温度均一化部材4に接触する基板トレイ10が均一な温度分布で上昇し、該基板トレイ10に支持される成膜対象基板Sが加熱される。これにより、加熱された成膜対象基板Sの温度分布を結果として均一なものにすることが可能となる。
【0052】
温度均一化部材4上に基板トレイ10が乗載された後、ガス供給源71より、ガス供給配管72を通じ、成膜原料ガスとして、シラン(SiH4)、アンモニア(NH3)、窒素(N2)の混合ガスが第1電極6に供給され、該第1電極6に供給された混合ガスが該第1電極6から均一に且つシャワー状に成膜チャンバー1内に噴出される。
【0053】
次に、圧力調整バルブ12の開度が調整された状態で、圧力ポンプ13により成膜チャンバー1内に供給された混合ガスが排気配管11を通じて排気されることで、成膜チャンバー1内の圧力が所定の圧力(例えば100Pa程度)に調整される。
【0054】
さらにRF電源51により、所定の周波数(例えば13.56MHz)の高周波電力が第1電極6に供給され、成膜チャンバー1内の混合ガスがプラズマ状態にされて、成膜対象基板S上に反応性成膜(例えばシリコン窒化膜)が形成される。
【0055】
そして、前記した一連の成膜プロセスが連続的に繰り返されると、成膜チャンバー1内壁1’や成膜チャンバー1内部品に反応生成膜が堆積する。このため、成膜チャンバー1内壁1’や成膜チャンバー1内部品に付着した反応生成膜を定期的に除去する作業が行われる。
【0056】
この点、図1に示すCVD装置100では、発熱源2の熱容量は従来装置のヒータブロックの場合に比べ小さいので、次のような利点がある。
【0057】
即ち、成膜チャンバー1内に付着する反応生成膜の除去作業においては、発熱源2の通電停止から、発熱源2や成膜チャンバー1内部品の温度がある程度下がるまでの時間が短縮される。また、成膜チャンバー1内の反応生成膜の除去作業終了後においては、発熱源2の通電開始から、成膜対象基板Sが所定温度になるまでの時間が短縮される。
【0058】
このようにCVD装置100によれば、発熱源2の熱容量を従来装置のヒータブロックの場合に比べ小さくできるので、発熱源2の温度低下及び温度上昇に必要な時間を短縮でき、それだけ、成膜チャンバー1内に付着する反応生成膜の除去作業などの作業での待ち時間の短縮化を図ることができる。従って、前記反応生成膜の除去作業などの成膜に寄与しない作業での待ち時間を削減でき、これにより、該CVD装置100の稼働率を向上させることができる。
【0059】
ここで、発熱源2の熱容量を従来装置のヒータブロックの場合に比べ小さくするのみであれば、前述した温度均一化部材4は不要であるが、成膜対象基板Sを載置する基板トレイ10を温度均一化部材4に乗載することにより、発熱源2から発せられる赤外線を基板トレイ10に直接輻射する場合と比べ、基板トレイ10に載置される成膜対象基板Sの温度分布を均一にでき、これにより、成膜対象基板Sへの均一な成膜が可能となる。
【0060】
さらに、従来装置のような冷却手段を設ける構成ではないので、構造が簡単であり、且つ、安価である。
【0061】
本実施の形態では、前記温度均一化部材は、温度均一化部材4の第1面4aの上に基板トレイ10を乗載して該トレイ10に支持される成膜対象基板Sを成膜するので、基板トレイ10を温度均一化部材4に保持するための部材を用いる必要がなく、さらに簡単且つ安価な構成で成膜対象物を成膜することが可能となる。
【0062】
本実施の形態において、温度均一化部材4は、熱伝導率が基板トレイ10の熱伝導率よりも大きい材料で形成されていることが好ましい。こうすることで、基板トレイ10に支持される成膜対象基板Sをさらに均一に加熱でき、それだけ均一に成膜対象基板Sに成膜できる。
【0063】
ここでは、基板トレイ10は、耐熱性に優れる樹脂材料で形成されている。この樹脂材料としては、例えば、カーボン樹脂を用いることができる。また、温度均一化部材4は、金属材料(具体的には銅)で形成されている。なお、温度均一化部材4は、銅を含む合金や、鉄、或いは鉄を含む合金で形成されていてもよい。
【0064】
なお、温度均一化部材4は、金属材料のような熱伝導率の大きい材料で形成されているので、電気伝導性も高くなり、このため、基板トレイ10上成膜対象基板Sの電位の均一性も良くなる。
【0065】
また、基板トレイ10のみでは、該トレイ10の撓みにより、複数載置される基板S毎で第1電極6との間隔が異なり易いが、温度均一化部材4として、該トレイ10の撓みを有効に防止できるような材質及び/又は厚みのものを用いることで、第1電極6との間隔を一定にすることが可能となる。
【0066】
このように、温度、電位及び電極との間隔の均一性が向上することにより、従来のヒータブロックを使用する場合と同様に、均一な成膜を実現することができる。
【0067】
基板トレイ10の厚みとしては、それには限定されないが、5mm〜20mm程度を例示できる。基板トレイ10の熱伝導率としては、それには限定されないが、20W/(m・K)〜70W/(m・K)程度を例示できる。
【0068】
また、温度均一化部材4の厚みとしは、それには限定されないが、1mm〜5mm程度を例示できる。温度均一化部材4の熱伝導率としては、それには限定されないが、50W/(m・K)〜500W/(m・K)程度を例示できる。
【0069】
基板トレイ10の第1平面10aの面積としては、それには限定されないが、2m2〜3m2程度を例示でき、温度均一化部材4の第1平面4aの面積としては、それには限定されないが、3m2〜4m2程度を例示できる。
【0070】
また、空間Qの距離(即ち温度均一化部材4と発熱源2との間の距離)としては、それには限定されないが、10mm〜500mm程度を例示できる。
【0071】
なお、図1に示すCVD装置100では、温度均一化部材4は電極を兼ねるが、温度均一化部材4とは別に電極が設けられていてもよい。本発明CVD装置は、電極が設けられていない装置にも、勿論、適用可能である。
(実施例)
本発明の実施に係るCVD装置100について、温度低下及び温度上昇に要する時間を測定したので、ヒータブロックを用いた従来のCVD装置の比較例と共に、その測定結果を以下に示す。
【0072】
ヒータブロックを用いた従来のCVD装置の場合・・・約11時間
本発明のCVD装置の場合・・・約3時間
このように、本発明のCVD装置では、従来のCVD装置に比べ、温度低下及び温度上昇に要する時間を大幅に短縮できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係るCVD装置の一実施形態を概略的に示す側面図である。
【図2】ヒータブロックを用いた従来のCVD装置を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 成膜容器
2 発熱源
4 温度均一化部材
10 トレイ
100 CVD装置
S 成膜対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜容器内に収容される成膜対象物を加熱し、該加熱された状態の成膜対象物に膜形成するCVD装置であって、
前記成膜容器内において、トレイに支持される成膜対象物とは反対側で該成膜対象物を加熱する発熱源と、
前記トレイと前記発熱源との間に位置すると共に、前記トレイに接触され且つ前記発熱源との間に空間を確保した状態で、前記トレイに支持される成膜対象物の温度を均一化する温度均一化部材とを備えていることを特徴とするCVD装置。
【請求項2】
前記温度均一化部材は、前記トレイに接触する接触面を有すると共に、該接触面が水平になるように前記発熱源の上方に配置されており、
該温度均一化部材の前記接触面の上に前記トレイを乗載して該トレイに支持される成膜対象物を成膜することを特徴とする請求項1に記載のCVD装置。
【請求項3】
前記発熱源からの赤外線を含む電磁波の輻射により、前記トレイに支持される成膜対象物の温度制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のCVD装置。
【請求項4】
前記発熱源は、電熱線であることを特徴とする請求項3に記載のCVD装置。
【請求項5】
前記温度均一化部材は、熱伝導率が前記トレイの熱伝導率よりも大きい材料で形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のCVD装置。
【請求項6】
前記温度均一化部材は、金属材料で形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のCVD装置。
【請求項7】
前記金属材料は、銅又は銅を含む合金であることを特徴とする請求項6に記載のCVD装置。
【請求項8】
前記金属材料は、鉄又は鉄を含む合金であることを特徴とする請求項6に記載のCVD装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−294154(P2008−294154A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136957(P2007−136957)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】