説明

CVD装置

【課題】CVD反応生成物の生成を抑制できるCVD装置を提供する。
【解決手段】反応室1に原料ガスを導入するガス導入管6と、成膜を施すべき基板10を支持する基板ホルダーと、基板10を加熱する加熱装置4と、反応室内のガスを排気ガスとして系外に排気するガス排気管7とを備えるCVD装置において、排気ガスが接触する壁部2に対し、加熱装置4又は加熱装置4により加熱された部材からの輻射熱を反射する熱反射面8を設置したCVD装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成膜方法の一つとしてCVD法がある。CVD法では、反応室内に原料ガスを導入し、分解、還元、酸化、置換、プラズマ等により反応室内に設置した基板上に薄膜を形成する。
【0003】
しかしながら、CVD装置における原料ガスの利用効率は100%ではなく、原料ガスの未反応物や中間生成物を含んだ形で、排気ガスとして系外に排気される。このため、装置内壁やガス排気管内部など、排気ガスが接する部分には、排気ガスによって生成される生成物(以下、CVD反応生成物という)が付着して徐々に堆積していく。このような堆積物が生じることにより、配管閉塞やパーティクル汚染の発生につながることから、堆積物を除去する必要がある。
【0004】
このため、例えば、下記特許文献1に記載されるように、排気ガスの経路に加熱手段を設けて、原料ガスの未反応物や中間生成物を熱分解することが従来より行われている。
【0005】
また、下記特許文献2には、真空容器とガス供給手段とガス排気手段と放電手段とを備え、前記真空容器内の基板上にプラズマCVD法により堆積膜を形成する堆積膜形成装置において、前記真空容器内のプラズマ放電空間内及び/又はプラズマ放電空間近傍に、ルーバー状部材と、前記ルーバー状部材を加熱する加熱ヒーターを備えた堆積膜形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−312833号公報
【特許文献2】特開平11−80964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1,2では、CVD反応生成物の堆積を抑制するための加熱手段を別途設ける必要があるので、装置コストや運転コストがかさむ問題があった。
【0008】
よって、本発明の目的は、CVD反応生成物の生成を抑制できるCVD装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のCVD装置は、反応室に原料ガスを導入するガス導入管と、成膜を施すべき基板を支持する基板ホルダーと、前記基板を加熱する加熱装置と、反応室内のガスを排気ガスとして系外に排気するガス排気管とを備えるCVD装置において、前記排気ガスが接触する壁部に対し、前記加熱装置又は該加熱装置により加熱された部材からの輻射熱を反射する熱反射面を設置したことを特徴とする。
【0010】
本発明のCVD装置は、前記熱反射面が、前記排気ガスが接触する壁部に対向する位置に配置された部材表面に形成された金属膜で構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明のCVD装置は、前記金属膜が、Au及び/又はAlで構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明のCVD装置は、前記反応室が、隔壁により、前記基板ホルダー及び前記加熱装置が配置された空間と、前記ガス排気管が挿通された空間とに仕切られており、前記熱反射面は、前記ガス排気管が挿通された空間の内壁であって、前記隔壁と前記ガス排気管の外面を除く部分に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のCVD装置によれば、排気ガスが接触する壁部に対し、加熱装置又は該加熱装置により加熱された部材からの輻射熱を反射する熱反射面を設置したことにより、加熱装置又は該加熱装置により加熱された部材からの輻射熱を反射して、排気ガスが接触する壁部を効率よく加熱できる。このため、CVD反応生成物が、装置内壁やガス排気管内部に付着しにくくなり、配管閉塞や、反応室内のパーティクル発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を使用した、プラズマCVD装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明を使用した、プラズマCVD装置の第2の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を使用したCVD装置としては、プラズマCVD装置、常圧CVD装置、減圧CVD装置、光CVD装置等が挙げられる。以下、プラズマCVD装置に適応した場合を例に挙げて説明する。
【0016】
図1は、本発明を使用したプラズマCVD装置の第1の実施形態の概略図である。
【0017】
図1に示すように、このプラズマCVD装置は、反応室1が、隔壁2によって、製膜空間1aと加熱空間1bとに区画されている。
【0018】
製膜空間1aには、2つの平行平板電極である高電圧電極3aと接地電極3bとが互いに間隔を置いて対向して設置されている。接地電極3bの上面は、成膜を施すべき基板10を支持する基板ホルダーを兼ねている。接地電極3bの裏面には、基板10を加熱するための加熱ヒーター4が配置されている。高電圧電極3aの外端側は、反応室1を貫通して、反応室1の外側に配置され、高周波電源5が接続している。高電圧電極3aの外周には絶縁材9が配置されており、絶縁材9によって、高電圧電極3aと反応室1外壁とを絶縁している。
【0019】
反応室1の製膜空間1aには、ガス導入管6が挿通され、その内端側は高電圧電極3aのほぼ中央を貫通しており、高電圧電極3aが、ガス導入管6を介して導入された原料ガスを製膜空間1a内に噴出するシャワー電極とすることができる。また、ガス導入管6の外端側には、原料ガスの流量を制御するマスフローコントローラ(図示しない)が配置されている。
【0020】
反応室1の加熱空間1bには、ガス排気管7が挿通されており、その内端側は隔壁2を貫通して製膜空間1aに配置されている。また、ガス排気管7の外端側は、真空排気系に接続している。
【0021】
加熱空間1bには、隔壁2の加熱空間側面2bを除く内壁全面に、熱反射膜8が形成されている。この熱反射膜8は、Au及び/又はAlからなる金属材料を、メッキ、スパッタリング等の方法で成膜して形成した金属膜で構成されていることが好ましい。AuやAlは、赤外線反射率が高いので、加熱ヒーター4からの輻射熱や、隔壁2からの伝熱を反射して隔壁2などを効率よく過熱できる。
【0022】
熱反射膜の膜厚は、ヒーター4、隔壁2からの放射赤外線を効率よく反射できる、膜厚に設定される。
【0023】
次に、このプラズマCVD装置を用いて基板10表面に成膜する際の動作について説明する。
【0024】
基板10を接地電極3bの上面の基板載置面に配置し、加熱ヒーター4を作動して基板10を加熱し、基板温度を所定温度に調整する。また、図示しない真空排気系によって反応室1内を所定圧力に調整する。
【0025】
このようにして、反応室1内の圧力、基板温度を所定値に調整した後、高周波電源5によって高電圧電極3aに所定の電圧を印加しつつ、原料ガスをガス導入管6を通して高電圧電極3aと接地電極3bとの対向空間内へ導入し、両電極の対向空間内で原料ガスのプラズマを発生させて、基板10上に被膜を形成する。また、反応後のガス(以下、排ガスという)は、ガス排気管7から室外に排気して反応室1内の圧力を一定に維持する。
【0026】
ところで、成膜時における原料ガスの利用効率は100%ではないため、排ガスには、原料ガスの未反応物や中間生成物を含んでいる。このため、排気ガスを反応室1から排気する際に、ガス排気管7が設置されている近傍の壁面(この実施形態では、隔壁2の製膜空間側面2aやガス排気管7の内壁)など、排気ガスが接した部分には、CVD反応生成物が付着し、更にこれが堆積して配管閉塞や、パーティクル汚染が生じることがあった。
【0027】
このプラズマCVD装置は、加熱空間1bの隔壁2を除く内壁全面に、熱反射膜8が形成されているので、該熱反射膜8によって加熱ヒーター4からの輻射熱や、隔壁2からの伝熱を反射して、隔壁2やガス排気管7の内端部近傍を加熱できる。
【0028】
このため、隔壁2の製膜空間側面2aや、ガス排気管7の内部に、CVD反応生成物が付着することを抑制できるので、配管閉塞や、パーティクル発生を抑制でき、装置のメンテナンス頻度を低減できる。
【0029】
次に、本発明を使用したプラズマCVD装置の第2の実施形態について説明する。
【0030】
このプラズマCVD装置は、高電圧電極13aと接地電極13bとが互いに間隔を置いて対向して設置された反応室11と、該反応室11の外周であって、高電圧電極13a側に配置された輻射熱反射部材21とで構成されている。
【0031】
接地電極13bの上面は、成膜を施すべき基板10を支持する基板ホルダーを兼ねている。接地電極13bの裏面には、基板10を加熱するための加熱ヒーター14が配置されている。
【0032】
高電圧電極13aの外端側は、反応室11及び輻射熱反射部材21を貫通して、輻射熱反射部材21の外側に配置され、高周波電源15が接続している。高電圧電極13aの外端外周には絶縁材19が配置されており、絶縁材19によって、高電圧電極13aと、反応室11外壁及び輻射熱反射部材21とを絶縁している。
【0033】
反応室11には、ガス導入管16、ガス排気管17が、それぞれ輻射熱反射部材21を貫通して挿通されている。
【0034】
ガス導入管16の内端側は、高電圧電極13aのほぼ中央を貫通しており、高電圧電極13aが、ガス導入管16を介して導入された原料ガスを反応室11内に噴出するシャワー電極とすることができる。ガス導入管16の外端側は、輻射熱反射部材21の外側に配置され、原料ガスの流量を制御するマスフローコントローラ(図示しない)が配置されている。
【0035】
ガス排気管17の内端側は、反応室11内に配置されている。ガス排気管17の外端側は、輻射熱反射部材21の外側に配置され、図示しない真空排気系に接続している。
【0036】
輻射熱反射部材21は、反応室11に対向する面に、熱反射膜22が形成されている。この熱反射膜22は、上記した第1の実施形態で使用したものと同様のものを使用できる。
【0037】
この実施形態のプラズマCVD装置によれば、反応室11の高電圧電極13a側の外周に、熱反射膜22が形成された輻射熱反射部材21が配置されているので、該熱反射膜22によって加熱ヒーター14からの輻射熱を反射して、高電圧電極13a側の反応室内壁や、ガス排気管17の内端部近傍を加熱できる。
【0038】
このため、高電圧電極13a側の反応室内壁や、ガス排気管17の内部に、CVD反応生成物が付着することを抑制できるので、配管閉塞や、パーティクル発生を抑制でき、装置のメンテナンス頻度を低減できる。
【符号の説明】
【0039】
1、11:反応室
1a:製膜空間
1b:加熱空間
2:隔壁
3a、13a:高電圧電極
3b、13b:接地電極
4、14:加熱ヒーター
5、15:高周波電源
6、16:ガス導入管
7、17:ガス排気管
8、22:熱反射膜
10:基板
21:輻射熱反射部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室に原料ガスを導入するガス導入管と、成膜を施すべき基板を支持する基板ホルダーと、前記基板を加熱する加熱装置と、反応室内のガスを排気ガスとして系外に排気するガス排気管とを備えるCVD装置において、
前記排気ガスが接触する壁部に対し、前記加熱装置又は該加熱装置により加熱された部材からの輻射熱を反射する熱反射面を設置したことを特徴とするCVD装置。
【請求項2】
前記熱反射面は、前記排気ガスが接触する壁部に対向する位置に配置された部材表面に形成された金属膜で構成されている請求項1記載のCVD装置。
【請求項3】
前記金属膜が、Au及び/又はAlで構成されている請求項1又は2に記載のCVD装置。
【請求項4】
前記反応室が、隔壁により、前記基板ホルダー及び前記加熱装置が配置された空間と、前記ガス排気管が挿通された空間とに仕切られており、前記熱反射面は、前記ガス排気管が挿通された空間の内壁であって、前記隔壁と前記ガス排気管の外面を除く部分に形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のCVD装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−1777(P2012−1777A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138839(P2010−138839)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】