説明

EGR装置

【課題】EGR通路を通過する気体の温度調整を好適に行う。
【解決手段】EGR装置16は、(i)車両1に搭載され、(ii)吸気通路12に配置されたコンプレッサ14c及び排気通路13に配置されたタービン14tを有する過給機14と、(iii)吸気通路におけるコンプレッサの下流側に配置され、吸気通路を流れる気体を冷却するインタークーラ15と、を備えるエンジン11に搭載される。EGR装置は、排気通路におけるタービンの上流側と、吸気通路におけるインタークーラの下流側とを連通する第1流路161、162と、排気通路におけるタービンの上流側と、排気通路におけるコンプレッサの下流側且つインタークーラの上流側とを連通する第2流路161、163と、第1流路及び第2流路を相互に切り替える切替手段166と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された過給機付きエンジンのEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、過給機付きエンジンのEGR装置であって、EGR通路に、排気通路から分岐されたEGR排気通路を経た排気ガスにより駆動されるタービンと該タービンに同軸駆動されるコンプレッサとを備え、該コンプレッサによりEGR通路内のEGRガスを加圧しEGR弁を経て給気通路に送給するEGR過給機が設置されたEGR装置が提案されている。ここでは特に、EGRガス圧力が給気圧力検出値よりも大きいときのみ(即ち、給気管内の給気がEGR管側に流入しないときのみ)EGR弁を解放することが記載されている(特許文献1参照)。
【0003】
或いは、例えば、過給機付きエンジンンのEGR装置であって、該エンジンの負荷が所定負荷よりも低い場合、排気通路に配置されたパティキュレートフィルタの下流から、吸気通路に配置された給気冷却器の下流へ排気を還流させ、エンジンの負荷が所定負荷よりも高い場合、パティキュレートフィルタの下流から、給気冷却器の上流へ排気を還流させるEGR装置が提案されています(特許文献2参照)。
【0004】
或いは、例えば、過給機付きエンジンのEGR装置であって、EGR通路に、EGRガスと、エンジンの冷却システムの冷却水と、の間で熱交換を行うEGRクーラを配置することによって、エンジンの冷間運転の際に該エンジンの暖機を促進するEGR装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−100508号公報
【特許文献2】特開2006−022770号公報
【特許文献3】特開2011−017315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の背景技術によれば、EGR通路を通過する気体の温度調整が十分ではない可能性があるという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、EGR通路を通過する気体の温度調整を好適に行うことができるEGR装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のEGR装置は、上記課題を解決するために、(i)車両に搭載され、(ii)吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有する過給機と、(iii)前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側に配置され、前記吸気通路を流れる気体を冷却するインタークーラと、を備えるエンジンに搭載され、前記排気通路における前記タービンの上流側と、前記吸気通路における前記インタークーラの下流側とを連通する第1流路と、前記排気通路における前記タービンの上流側と、前記排気通路における前記コンプレッサの下流側且つ前記インタークーラの上流側とを連通する第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路を相互に切り替える切替手段と、を備える。
【0009】
本発明のEGR装置によれば、当該EGR装置が搭載されるエンジンは、例えば自動車等の車両に搭載されている。該エンジンは、吸気通路に配置されたコンプレッサ、及び排気通路に配置されたタービンを有する過給機と、吸気通路における過給機のコンプレッサの下流側に配置され、該吸気通路を流れる気体(例えば、吸気等)を冷却するインタークーラと、を備えている。
【0010】
EGR装置は、排気通路における過給機のタービンの上流側と、吸気通路におけるインタークーラの下流側とを連通する第1流路と、排気通路における過給機のタービンの上流側と、吸気通路における過給機のコンプレッサの下流側且つインタークーラの上流側とを連通する第2流路と、前記第1流路及び前記第2流路を相互に切り替える切替手段と、を備える。尚、第1流路及び第2流路の各々における気体の流れる方向は、排気通路から吸気通路へ向かう方向に限らず、吸気通路から排気通路へ向かう方向であってよい。
【0011】
上述の如く構成された当該EGR装置において、例えばエンジンの負荷に応じて、第1流路及び第2流路を相互に切り替えれば、第1流路又は第2流路を介して、排気通路から吸気通路へ還流される排気ガスの温度を適切に調整することができる。
【0012】
具体的には例えば、エンジンが比較的軽負荷で運転している際には、吸気通路におけるインタークーラの下流側へ排気ガスを還流するように、切替手段が第1流路に切り替えれば、比較的高温の排気ガスがエンジン内へ供給されるので、例えばエンジンの失火等を抑制することができる。他方、エンジンが比較的高負荷で運転している際には、吸気通路におけるインタークーラの上流側へ排気ガスを還流するように、切替手段が第2流路に切り替えれば、インタークーラにより冷却された排気ガスがエンジン内へ供給されるので、例えばノッキングの発生等を抑制することができる。
【0013】
更に、吸気通路に係る圧力(即ち、吸気圧)が、排気通路に係る圧力(即ち、背圧)よりも高い場合に、吸気通路におけるインタークーラの上流側から、排気通路におけるタービンの上流側へ吸気を供給するように、切替手段が第2流路に切り替えれば、インタークーラにより冷却されていない比較的高温の吸気を、過給機のタービンに供給することができるので、効率的にタービンの回転数を上昇させることができる。
【0014】
以上の結果、本発明のEGR装置によれば、EGR通路を通過する気体の温度調整を好適に行うことができる。
【0015】
本発明のEGR装置の一態様では、前記切替手段は、前記車両に対する加速要求があり、且つ、前記吸気通路に係る圧力が前記排気通路に係る圧力よりも大きいときに、前記第2流路に切り替える。
【0016】
この態様によれば、比較的容易にして、比較的高温の吸気を、過給機のタービンに供給することができる。このため、効率的にタービンの回転数を上昇させることができ、実用上非常に有利である。
【0017】
尚、「第2流路に切り替える」とは、気体が第1流路を流れている場合に、第1流路から第2流路へ切り替えることに限らず、(i)気体が第2流路を流れている場合に、その状態を維持すること、及び(ii)第1流路及び第2流路のいずれにも気体が流れていない場合に、第2流路に気体が流れるようにすること、も含む。
【0018】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るEGR装置が搭載される車両の要部を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るEGRクーラ及びEGR弁の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のEGR装置に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
先ず、本実施形態に係る車両について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るEGR装置が搭載される車両の要部を示す概略構成図である。尚、図1における実線矢印は、気体の流れを表わしており、点線は、冷却媒体(例えば、冷却水)の流路を表わしている。
【0022】
図1において、車両1は、エンジン11と、該エンジン11に接続された吸気通路(インテークマニホールド:インマニ)12と、該エンジン11に接続された排気通路13と、吸気通路12に配置されたコンプレッサ14c及び排気通路13に配置されたタービン14tを有する過給機14と、吸気通路12に配置されたインマニインタークーラ15と、EGR装置16と、インタークーラ17と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)20と、を備えて構成されている。
【0023】
EGR装置16は、EGR通路161、162及び163、EGR弁164、EGRクーラ165、並びに流路切替弁166を備えて構成されている。
【0024】
ここで、EGR通路161は、排気通路13における過給機14のタービン14tの上流側と、流路切替弁166との間を結ぶ通路である。EGR通路162は、吸気通路12におけるインマニインタークーラ15の下流側と、流路切替弁166とを結ぶ通路である。EGR通路163は、吸気通路12における過給機14のコンプレッサ14cの下流側且つインマニインタークーラ15の上流側と、流路切替弁166とを結ぶ通路である。
【0025】
尚、EGR通路161及び162により、本発明に係る「第1流路」の一例が構成されており、EGR通路161及び163により、本発明に係る「第2流路」の一例が構成されている。
【0026】
EGRクーラ165には、エンジン11との間で熱交換を行う冷却媒体が流れる冷却媒体通路31と、インマニインタークーラ15及びインタークーラ17各々において外気との間で熱交換を行う冷却媒体が流れる冷却媒体流路33と、が接続されている。ここで、冷却媒体通路31に流れる冷却媒体の温度は、冷却媒体通路33に流れる冷却媒体の温度に比べて高いので、説明の便宜上、冷却媒体通路31に流れる冷却媒体を、「高温冷却媒体」と、冷却媒体通路33に流れる冷却媒体を「低温冷却媒体」と、適宜称する。
【0027】
図1に示すように、高温冷却媒体が流れる冷却媒体通路には、EGRクーラ165をバイパスする冷却媒体通路32も存在する。冷却媒体通路31と冷却媒体通路32とは、バルブv2及びv3がECU20に制御されることにより、相互に切り替えられる。また、低温冷却媒体が流れる冷却媒体通路にも、EGRクーラ165をバイパスする冷却媒体通路34が存在する。冷却媒体通路33と冷却媒体通路34とは、バルブv1がECU20に制御されることにより、相互に切り替えられる。
【0028】
次に、以上のように構成された車両1において、ECU20が実行するEGRクーラ165及びEGR弁164の制御処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
図2において、ECU20は、先ず、エンジン11の暖機中であるか否かを判定する(ステップS101)。尚、エンジン11の暖機中であるか否かは、例えばエンジン11に係る温度等を検出することにより判定すればよい。いずれにせよ、エンジン11が暖機中であるか否かの判定方法には、公知の各種態様を適用可能であるので、ここでは割愛する。
【0030】
エンジン11の暖機中であると判定された場合(ステップS101:Yes)、ECU20は、EGR通路161及び162を介して、排気ガスの一部が、吸気通路12におけるインマニインタークーラ15の下流側に還流されるように、EGR弁164及び流路切替弁166を夫々制御する。ECU20は、更に、EGRクーラ165に高温冷却媒体のみが供給されるように、バルブv1、v2及びv3を夫々制御する(ステップS102)。
【0031】
すると、比較的高温な排気ガスがエンジン11に還流されることに起因して、該エンジン11に供給される燃料の霧化が促進される。更に、EGRクーラ165において温められた高温冷却媒体とエンジン11との間の熱交換により該エンジン11の温度が上昇する(エンジン11の暖機時には、EGRクーラ165において温められた高温冷却媒体の温度が、エンジン11の温度よりも高いため)。この結果、エンジン11の暖機が促進される。
【0032】
上記ステップS101の処理において、エンジン11の暖機中ではないと判定された場合(ステップS101:No)、ECU20は、エンジン11の負荷状態が軽負荷状態であるか否かを判定する(ステップS103)。具体的には例えば、ECU20は、エンジン11の実際の負荷を検出し、該検出された負荷と所定閾値とを比較して、エンジン11の負荷状態が軽負荷状態であるか否かを判定する。尚、所定閾値は、エンジン11の仕様毎に適切に設定すればよい。
【0033】
エンジン11の負荷状態が軽負荷状態であると判定された場合(ステップS103:Yes)、ECU20は、EGR通路161及び162を介して、排気ガスの一部が、吸気通路12におけるインマニインタークーラ15の下流側に還流されるように、EGR弁164及び流路切替弁166を夫々制御する。ECU20は、更に、EGRクーラ165に高温冷却媒体のみが供給されるように、バルブv1、v2及びv3を夫々制御する(ステップS104)。
【0034】
すると、比較的高温な排気ガスがエンジン11に還流されることに起因して、該エンジン11に供給される燃料の霧化が促進される。更に、EGRクーラ165において、還流される排気ガスが冷却されるので、該還流される排気ガスの容積が減少し、EGRの制御性を向上させることができる。この結果、排気ガスが還流されることに起因するエンジン11の失火を防止することができる。
【0035】
上記ステップS103の処理において、エンジン11の負荷状態が軽負荷状態でないと判定された場合(ステップS103:No)、ECU20は、エンジン11の負荷状態が中高負荷状態であるか否かを判定する(ステップS105)。具体的には例えば、ECU20は、エンジン11の実際の負荷を検出し、該検出された負荷と所定閾値とを比較して、エンジン11の負荷状態が中高負荷状態であるか否かを判定する。尚、所定閾値は、エンジン11の仕様毎に適切に設定すればよい。
【0036】
エンジン11の負荷状態が中高負荷状態であると判定された場合(ステップS105:Yes)、ECU20は、EGR通路161及び163を介して、排気ガスの一部が、吸気通路12における過給機14のコンプレッサ14cの下流側且つインマニインタークーラ15の上流側に還流されるように、EGR弁164及び流路切替弁166を夫々制御する。ECU20は、更に、EGRクーラ165に高温冷却媒体及び低温冷却媒体が供給されるように、バルブv1、v2及びv3を夫々制御する(ステップS106)。
【0037】
この結果、還流される排気ガスが、EGRクーラ165及びインマニインタークーラ15の両方において冷却されるので、ノッキングの発生を効果的に抑制することができる。加えて、インマニインタークーラ15を利用することにより、EGRクーラ165の容量を削減することができるので、実用上非常に有利である。
【0038】
上記ステップS105の処理において、エンジン11の負荷状態が中高負荷状態でないと判定された場合(ステップS105:No)、EGR20は、EGR通路163及び161を介して、吸気の一部が排気通路13における過給機14のタービン14tの上流側に供給されるように、EGR弁164及び流路切替弁166を夫々制御する。ECU20は、更に、EGRクーラ165において、上記吸気の一部が冷却されないように(即ち、高温冷却媒体が冷却媒体通路32を流れ、低温冷却媒体が冷却媒体通路34を流れるように)、バルブv1、v2及びv3を夫々制御する(ステップS107)。
【0039】
この場合は、典型的には、車両1の加速時であり、且つ、吸気圧が背圧より高いので、EGR通路163及び161を介して、吸気が排気通路13に流入する。この際、EGRクーラ165により吸気が冷却されないので、比較的高温の吸気が排気通路13に配置された過給機14のタービン14tに流入することとなる。この結果、吹き抜けを利用してタービン14tの回転数を上昇させる場合に、吹き抜ける吸気の温度低下が抑制され、もって、タービン14tの回転数の低下を抑制することができる。
【0040】
尚、本実施形態に係る「インマニインタークーラ15」及び「流路切替弁166」は、夫々、本発明に係る「インタークーラ」及び「切替手段」の一例である。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うEGR装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…車両、11…エンジン、12…吸気通路、13…排気通路、14…過給機、15…インマニインタークーラ、16…EGR装置、17…インタークーラ、20…EUC、161、162、163…EGR通路、164…EGR弁、165…EGRクーラ、166…流路切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)車両に搭載され、(ii)吸気通路に配置されたコンプレッサ及び排気通路に配置されたタービンを有する過給機と、(iii)前記吸気通路における前記コンプレッサの下流側に配置され、前記吸気通路を流れる気体を冷却するインタークーラと、を備えるエンジンに搭載され、
前記排気通路における前記タービンの上流側と、前記吸気通路における前記インタークーラの下流側とを連通する第1流路と、
前記排気通路における前記タービンの上流側と、前記排気通路における前記コンプレッサの下流側且つ前記インタークーラの上流側とを連通する第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路を相互に切り替える切替手段と、
を備えることを特徴とするEGR装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記車両に対する加速要求があり、且つ、前記吸気通路に係る圧力が前記排気通路に係る圧力よりも大きいときに、前記第2流路に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のEGR装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−237271(P2012−237271A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107918(P2011−107918)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】