説明

MEMSデバイス

【課題】表面側保護基板を通してデバイス本体のパッドと実装基板の導体パターンとを電気的に接続でき、且つ、デバイス本体に不要な応力がかかるのを抑制しつつ電気的な接続信頼性を高めることが可能なMEMSデバイスを提供する。
【解決手段】SOI基板(半導体基板)100を用いて形成され複数のパッド13を一表面側に備えたミラー形成基板(デバイス本体)1、ミラー形成基板1の一表面側に接合された第1のカバー基板(表面側保護基板)2を有するMEMSチップ4と、MEMSチップ4が実装された実装基板5とを備える。第1のカバー基板2は、ミラー形成基板1の各パッド13それぞれと接合されて電気的に接続されたシリコンからなる複数の導電部202が、第1のカバー基板2の厚み寸法内で設けられている。各導電部202と実装基板5の各導体パターン502とが、両者に跨って形成された半田部6を介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(micro electro mechanical systems)デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、マイクロマシニング技術などを利用して形成されるMEMSデバイスとして、例えば、光スキャナ、加速度センサ、ジャイロセンサなどが広く知られている。
【0003】
ところで、この種のMEMSデバイスは、MEMSチップが実装基板に1次実装されており、この実装基板をプリント配線基板などの配線基板に2次実装して用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、特許文献1には、図11(c)に示すように、可動ミラー124が形成されたマイクロミラー(デバイス本体)110と、マイクロミラー110が実装されたベース基板(実装基板)8とを備えた光走査装置(光スキャナ)が開示されている。この光走査装置は、図11(c)におけるマイクロミラー110の下側が、ベース基板8で封止され、マイクロミラー110の上側が、光ビームの入出射が行われる透明基板(表面側保護基板)7で封止されている。なお、図11(c)の光走査装置では、マイクロミラー110と透明基板7とでMEMSチップを構成している。
【0005】
上述のマイクロミラー110は、第1のシリコン基板101aと第2のシリコン基板101bとを絶縁層(SiO層)101cを介して張り合わせたSOI(Silicon on Insulator)基板101を用いて形成されている。
【0006】
マイクロミラー110は、図11(a),(b)に示すように、固定枠111と、固定枠111の内側に配置された可動ミラー124と、固定枠111と可動ミラー124とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部130,130とを備えている。また、マイクロミラー110は、静電駆動型であり、可動ミラー124において一対の捩りばね部130,130を結ぶ方向に直交する方向の両側に可動電極(電気要素)122が形成され、固定枠111に、各可動電極122それぞれに対向する2つの固定電極(電気要素)112が形成されている。また、マイクロミラー110は、各可動電極122および各固定電極112それぞれが各別に接続された4つのパッド113を備えている。
【0007】
ここにおいて、図11(b)では、マイクロミラー110のパッド113と、ベース基板8のリード端子806とがボンディングワイヤ106を介して電気的に接続されている。これに対し、図11(c)では、透明基板7の貫通孔702に充填された金属部706とベース基板8のリード端子806とがボンディングワイヤ106を介して電気的に接続されている。
【0008】
また、図11(c)に示した光走査装置は、ベース基板8におけるマイクロミラー110側の表面の中央部に、可動ミラー124の揺動空間となる凹部810が形成されており、透明基板7と固定枠111とベース基板8とで囲まれた空間を真空としてあるので、マイクロミラー110の可動ミラー124の振れ角を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−257944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図11(c)に示した光走査装置では、マイクロミラー110に接合される透明基板7の一部に貫通孔702を形成しておき、後に金属で充填することにより、各可動電極122および各固定電極112を、金属部706とボンディングワイヤ106とを介してベース基板8のリード端子806と電気的に接続することができる。
【0011】
しかしながら、図11(c)に示した光走査装置では、ボンディングワイヤ106が透明基板7の表面よりも突出しているので、ハンドリング時などにボンディングワイヤ106が外部物体と接触してボンディングワイヤ106が破損してしまう恐れがあった。そこで、ボンディングワイヤ106を保護するためにボンディングワイヤ106を覆う樹脂からなる保護部を設けることも考えられるが、保護部に多量の樹脂を必要とし、保護部に起因してマイクロミラー110にかかる応力が大きくなって特性が変化したり、製造時に樹脂が透明基板7における光の入射部位や出射部位の上まで流れて当該樹脂に起因した凹凸が形成され光学特性が変化する恐れがある。
【0012】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、表面側保護基板を通してデバイス本体のパッドと実装基板の導体パターンとを電気的に接続でき、且つ、デバイス本体に不要な応力がかかるのを抑制しつつ電気的な接続信頼性を高めることが可能なMEMSデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のMEMSデバイスは、半導体基板を用いて形成され複数のパッドを一表面側に備えたデバイス本体、前記デバイス本体の前記一表面側に接合された表面側保護基板を有するMEMSチップと、前記MEMSチップが実装された実装基板とを備え、前記表面側保護基板は、前記デバイス本体の前記各パッドそれぞれと接合されて電気的に接続されたシリコンからなる複数の導電部が、前記表面側保護基板の厚み寸法内で設けられ、且つ、前記各導電部と前記実装基板において前記各導電部それぞれに対応付けられた各導体パターンとが、前記導電部と前記導体パターンとに跨って形成された半田部を介して電気的に接続されてなることを特徴とする。
【0014】
このMEMSデバイスにおいて、前記導電部は、前記表面側保護基板における前記デバイス本体側とは反対側において前記表面側保護基板の前記厚み寸法内で前記表面側保護基板の側面まで延設されてなることが好ましい。
【0015】
このMEMSデバイスにおいて、前記MEMSチップは、前記デバイス本体の他表面側に接合された裏面側保護基板を備え、前記デバイス本体の周部と前記表面側保護基板と裏面側保護基板とで囲まれた空間を気密空間としてあることが好ましい。
【0016】
このMEMSデバイスにおいて、前記MEMSチップは、前記気密空間を真空雰囲気としてあり、前記表面側保護基板と前記裏面側保護基板との一方において前記気密空間に臨む部位にゲッタが配置されてなることが好ましい。
【0017】
このMEMSデバイスにおいて、前記実装基板は、前記導体パターンを含む平面よりも凹んだ凹部を有し、当該凹部の内底面に前記MEMSチップが搭載されてなることが好ましい。
【0018】
このMEMSデバイスにおいて、前記デバイス本体は、前記一表面側において前記表面側保護基板の周部が接合される外側フレーム部と、前記外側フレーム部の内側に配置され一対の第1の捩ればね部を介して前記外側フレーム部により支持された可動フレーム部と、前記可動フレーム部の内側に位置し前記第1の捩ればね部の並設方向に直交する方向に並設された一対の第2の捩ればね部を介して前記可動フレーム部に支持されたミラー部と、前記外側フレーム部において前記可動フレーム部側に設けられた第1の固定電極と、前記可動フレーム部において前記外側フレーム部側に設けられた第1の可動電極と、前記可動フレーム部において前記ミラー部側に設けられた第2の固定電極と、前記ミラー部において前記可動フレーム部側に設けられた第2の可動電極とを有し、前記第1の可動電極、前記第1の固定電極、前記第2の可動電極、前記第2の固定電極それぞれに電気的に接続された前記各パッドは、前記外側フレーム部に配置されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のMEMSデバイスにおいては、表面側保護基板を通してデバイス本体のパッドと実装基板の導体パターンとを電気的に接続でき、且つ、デバイス本体に不要な応力がかかるのを抑制しつつ電気的な接続信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1のMEMSデバイス(光スキャナ)を示し、(a)は概略斜視図、(b)は要部概略断面図である。
【図2】同上のMEMSデバイスの概略分解斜視図である。
【図3】同上のMEMSデバイスにおけるMEMSチップを示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のA−A概略断面図、(c)は(a)のA−B概略断面図である。
【図4】同上のMEMSデバイスにおけるMEMSチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図5】同上のMEMSデバイスにおけるMEMSチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図6】実施形態2のMEMSデバイス(光スキャナ)の概略分解斜視図である。
【図7】同上のMEMSデバイスの概略斜視図である。
【図8】同上のMEMSデバイスにおけるMEMSチップの概略斜視図である。
【図9】同上のMEMSデバイスにおけるMEMSチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図10】同上のMEMSデバイスにおけるMEMSチップの製造方法を説明するための主要工程断面図である。
【図11】従来例を示し、(a)はマイクロミラーの概略平面図、(b)は(a)のA−A断面に対応しマイクロミラーをベース基板に実装した状態での概略断面図、(c)は(a)のA−A断面に対応する光走査装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
本実施形態では、MEMSデバイスの一例として、光スキャナを例示する。
【0022】
以下、本実施形態の光スキャナについて図1〜図3を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の光スキャナは、MEMSチップ4と、MEMSチップ4が実装された実装基板5とを備えている。
【0024】
MEMSチップ4は、SOI基板100を用いて形成され可動部20にミラー面(光学要素)21が設けられたミラー形成基板1を備えている。ここにおいて、ミラー形成基板1は、ミラー面21が設けられた一表面側に、複数のパッド13を備えている。また、MEMSチップ4は、ミラー形成基板1の上記一表面側に接合された第1のカバー基板2を備えている。また、MEMSチップ4は、ミラー形成基板1の他表面側に接合された第2のカバー基板3を備えている。なお、本実施形態では、SOI基板100が、半導体基板を構成している。また、本実施形態では、ミラー形成基板1が、デバイス本体を構成し、第1のカバー基板2が、表面側保護基板を構成し、第2のカバー基板3が、裏面側保護基板を構成している。
【0025】
ミラー形成基板1は、枠状(ここでは、矩形枠状)の外側フレーム部10と、外側フレーム部10の内側に配置された上述の可動部20と、外側フレーム部10の内側で可動部20を挟む形で配置され外側フレーム部10と可動部20とを連結した一対の捩りばね部(機械要素)30,30とを有している。各捩りばね部30,30は、捩れ変形が可能となっている。
【0026】
外側フレーム部10は、外周形状および内周形状それぞれが矩形状に形成されている。ここにおいて、MEMSチップ4は、ミラー形成基板1および各カバー基板2,3それぞれの外周形状が、矩形状であり、各カバー基板2,3の外形寸法を、ミラー形成基板1の外形寸法に合わせてある。
【0027】
ミラー形成基板1は、可動部20の平面視形状が矩形状であり、ミラー面21の平面視形状も矩形状としてある。
【0028】
ミラー形成基板1は、上述のSOI基板100をバルクマイクロマシニング技術などにより加工することによって形成してある。SOI基板100は、導電性を有する第1のシリコン層100aと第2のシリコン層(シリコン基板)100bとの間に絶縁層(SiO層)100cが介在している。なお、SOI基板100は、第1のシリコン層100aの厚さを400μm、第2のシリコン層100bの厚さを400μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、SOI基板100の一表面である第1のシリコン層100aの表面は(100)面としてある。また、ミラー形成基板1の外形サイズは数mm□程度であるが、特に限定するものではない。
【0029】
ミラー形成基板1の外側フレーム部10は、SOI基板100の第1のシリコン層100a、絶縁層100c、第2のシリコン層100bそれぞれを利用して形成してある。そして、ミラー形成基板1は、外側フレーム部10のうち第1のシリコン層100aにより形成された部位が、第1のカバー基板2の外周部と全周に亘って接合され、外側フレーム部10のうち第2のシリコン層100bにより形成された部位が、第2のカバー基板3の外周部と全周に亘って接合されている。また、ミラー形成基板1は、上記一表面側において、外側フレーム部10に、後述の2つのパッド13が形成されている。各パッド13は、平面視形状が円形状であり、第1の金属膜(例えば、Al−Si膜など)により構成されている。なお、本実施形態では、各パッド13の膜厚を500nmに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。ここで、各パッド13は、外部からの給電用に設けられたものであり、各パッド13の材料としては、第1のシリコン層100aに対してオーミック接触が可能な材料であればよく、Al−Siに限らず、AuやAlなどを採用してもよい。
【0030】
また、ミラー形成基板1の可動部20および各捩りばね部30,30は、SOI基板100の第1のシリコン層100aを用いて形成されており、外側フレーム部10よりも十分に薄肉となっている。また、可動部20に設けられたミラー面21は、光源(レーザ光源など)からの光を反射するものであり、可動部20において第1のシリコン層100aにより形成された部位上に形成した第2の金属膜(例えば、Al−Si膜など)からなる反射膜21aの表面により構成されている。なお、本実施形態では、反射膜21aの膜厚を500nmに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0031】
以下では、図3(a),(b),(c)それぞれの左下に示すように、平面視において一対の捩りばね部30,30の並設方向に直交する方向をx軸方向、一対の捩りばね部30,30の並設方向をy軸方向、x軸方向およびy軸方向に直交する方向をz軸方向として説明する。
【0032】
ミラー形成基板1は、一対の捩りばね部30,30がy軸方向に並設されており、可動部20が、外側フレーム部10に対して一対の捩りばね部30,30の回りで変位可能となっている(y軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対の捩りばね部30,30は、外側フレーム部10に対して可動部20が揺動自在となるように外側フレーム部10と可動部20とを連結している。言い換えれば、外側フレーム部10の内側に配置される可動部20は、可動部20から相反する2方向へ連続一体に延長された2つの捩りばね部30,30を介して、外側フレーム部10に揺動自在に支持されている。ここで、一対の捩りばね部30,30は、両者のy軸方向に沿った中心線同士を結ぶ直線が、平面視で可動部20の重心を通るように形成されている。なお、各捩りばね部30,30は、厚み寸法(z軸方向の寸法)を30μm、幅寸法(x軸方向の寸法)を、5μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、可動部20およびミラー面21の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、外側フレーム部10の内周形状も矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。
【0033】
上述のミラー形成基板1は、可動部20において一対の捩りばね部30,30を結ぶ方向(一対の捩りばね部30,30の並設方向)に直交する方向(つまり、x軸方向)の両側に形成された櫛形状の可動電極22を備えている。さらに、ミラー形成基板1は、外側フレーム部10に形成され可動電極22の複数の可動櫛歯片22bに対向する複数の固定櫛歯片12bを有する櫛形状の固定電極12を備えている。ここにおいて、可動電極22と固定電極12とで、静電力により可動部20を駆動する静電駆動式の駆動手段を構成している。なお、本実施形態では、駆動手段が、静電力により可動部20を駆動するものであるが、静電駆動式に限らず、例えば、電磁力によって可動部20を駆動する電磁駆動式でもよいし、圧電素子によって可動部20を駆動する圧電駆動式でもよい。
【0034】
上述の固定電極12は、平面視形状が櫛形状であり、外側フレーム部10のうちy軸方向に沿った枠片部において第1のシリコン層100aにより形成された部位の一部が、櫛骨部12aを構成している。そして、固定電極12は、櫛骨部12aにおける可動部20との対向面(外側フレーム部10におけるy軸方向に沿った内側面)に、多数の固定櫛歯片12bが一対の捩りばね部30,30の並設方向に沿って列設されている。ここで、各固定櫛歯片12bは、第1のシリコン層100aの一部により構成されている。
【0035】
一方、可動電極22は、可動部20における固定電極12の櫛骨部12a側の櫛骨部22aの側面(可動部20におけるy軸方向に沿った側面)において、第1のシリコン層100aの一部により構成され固定櫛歯片12bにそれぞれ対向する多数の可動櫛歯片22bが上記並設方向に列設されている。ここで、各可動櫛歯片22bは、第1のシリコン層100aの一部により構成されている。
【0036】
櫛形状の固定電極12と櫛形状の可動電極22とは、それぞれの櫛骨部12a,22aが互いに対向し、固定電極12の各固定櫛歯片12bが可動電極22の櫛溝に入り組んでおり、固定櫛歯片12bと可動櫛歯片22bとが、y軸方向において互いに離間している。したがって、駆動手段では、固定電極12と可動電極22との間に電圧が印加されることにより、固定電極12と可動電極22との間に互いに引き合う方向に作用する静電力が発生する。なお、y軸方向における固定櫛歯片12bと可動櫛歯片22bとの間の隙間は、例えば、2μm〜5μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0037】
ミラー形成基板1の外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部位には、一方のパッド13(図2における左側のパッド13a)が各可動電極22に電気的に接続されるとともに他方のパッド13(図2における右側のパッド13b)が各固定電極12に電気的に接続され、且つ、各固定電極12と各可動電極22とが電気的に絶縁されるように、複数(ここでは、3つ)のスリット10aが絶縁層100cに達する深さで形成されている。これにより、外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部分は、可動部20の各可動電極22と同電位になる第1の導電性構造体11aと、各固定電極12と同電位になる第2の導電性構造体11bとに分けられている。
【0038】
第1の導電性構造体11aは、各捩りばね部30,30それぞれに連続一体に連結された2つのアンカー部11aa,11abと、一方のパッド13aが形成された島状(ここでは、平面視矩形状)の導電部11acと、一方のアンカー部11aaと島部11acとをつなぐ平面視L字状の導電部11adとで構成されている。また、第2の導電性構造体11bは、第1のシリコン層100aのうち第1の導電性構造体11a以外の残りの部分からなり、他方のパッド13bが形成されている。
【0039】
ここで、ミラー形成基板1では、第1のシリコン層100aに形成する各スリット10aをトレンチとし、各スリット10aの平面視形状を外側フレーム部10の外側面側に開放されない形状としてある。しかして、本実施形態におけるMEMSチップ4では、外側フレーム部10に複数のスリット10aを形成した構造を採用しながらも、外側フレーム部10と第1のカバー基板2との接合性が低下するのを防止することが可能となり、外側フレーム部10と各カバー基板2,3とで囲まれる空間の気密性を確保することができる。
【0040】
また、第1のカバー基板2は、ガラスにより形成された平板状のカバー本体200と、カバー本体200の厚み方向に貫通して設けられ各パッド13それぞれと接合されて電気的に接続される複数の導電部202とを備えている。要するに、第1のカバー基板2は、ミラー形成基板1の各パッド13それぞれと接合されて電気的に接続されるシリコンからなる複数の導電部202が、厚み寸法内で設けられている。なお、第1のカバー基板2の厚さは、300μmに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0041】
ここで、MEMSチップ4は、ミラー形成基板1における可動部20の第1のカバー基板2側への変位空間を確保するために、可動部20および一対の捩ればね部30,30それぞれにおける第1のシリコン層100aの厚みを薄くしてある。要するに、外側フレーム部10よりも内側では、第1のシリコン層100aの厚みを薄くしてある。
【0042】
本実施形態におけるMEMSチップ4では、各パッド13の平面視形状を直径が0.5mmの円形状としてあり、各導体部202のミラー形成基板1側での端面の直径を0.5mmよりも小さく設定してあるが、これらの直径は特に限定するものではない。また、パッド13の大きくなるようにしてあるが、各パッド13,13の直径は特に限定するものではなく、また、パッド13の形状も必ずしも円形状とする必要はなく、例えば、正方形状としてもよい。
【0043】
また、導電部202は、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1側とは反対側において第1のカバー基板2の厚み寸法内で第1のカバー基板2の側面まで延設された延設部203を備えている。
【0044】
また、第2のカバー基板3は、パイレックス(登録商標)ガラスなどからなるガラス基板300を加工することにより形成してある。なお、ガラス基板300の厚さは、0.5mm〜1.5mm程度の範囲で設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0045】
第2のカバー基板3は、ガラス基板300におけるミラー形成基板1側の一表面に、凹部301を形成してある。第2のカバー基板3は、凹部301が、可動部20の変位空間を確保するための変位空間形成用凹部を構成している。ただし、第2のカバー基板3の厚み方向の両面を平面状であっても、第2のカバー基板3が可動部20のz軸方向への変位を妨げない場合には、凹部301を必ずしも形成する必要はない。
【0046】
ガラス基板300の上記一表面に凹部301を形成する場合は、例えば、サンドブラスト法などにより形成すればよい。また、第2のカバー基板3は、2枚のガラス板を接合して形成してもよく、ミラー形成基板1に近い側に配置するガラス板(以下、第1のガラス板と称する)において凹部301に対応する部位に厚み方向に貫通する開孔部を形成するとともにミラー形成基板1から遠い側に配置するガラス板(以下、第2のガラス板と称する)を平板状としてもよい。なお、第2のカバー基板3は、光を透過させる必要がないので、ガラス基板300に限らず、ミラー形成基板1との接合が容易で且つ半導体基板(SOI基板100)の材料であるSiとの線膨張率差が小さな材料により形成された基板であればよく、例えば、シリコン基板を用いて形成してもよく、この場合の凹部301は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して形成すればよい。
【0047】
なお、上述のガラス基板300のガラス材料としては、ミラー形成基板1との接合が容易で且つ半導体基板(SOI基板100)の材料であるSiとの線膨張率差が小さな硼珪酸ガラスが好ましく、例えば、コーニング社のパイレックス(登録商標)やショット社のテンパックス(登録商標)などを採用すればよいが、硼珪酸ガラスに限らず、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどを採用してもよい。また、本実施形態では、凹部301の深さを300μm〜800μmの範囲で設定してあるが、これらの数値は一例であり、可動部20のz軸方向への変位量に応じて適宜設定すればよく(つまり、可動部20の回動運動を妨げない深さであればよく)、特に限定するものではない。
【0048】
また、上述のMEMSチップ4では、ミラー形成基板1の外側フレーム部10と第1のカバー基板2と第2のカバー基板3とで囲まれる気密空間を真空とすることで、低消費電力化を図りつつ可動部20の機械振れ角を大きくすることが可能となる。そこで、上述のMEMSチップ4では、上記気密空間を真空としてある。また、上述のMEMSチップ4では、第2のカバー基板3におけるミラー形成基板1との対向面において外側フレーム部10に接合される部位よりも内側の適宜部位(ここでは、凹部301の内底面)にフィルム状のゲッタ9を配置してある。なお、ゲッタ9としては、非蒸発型ゲッタが好ましく、例えば、Zrを主成分とする合金やTiを主成分とする合金などにより形成すればよい。
【0049】
また、上述のMEMSチップ4は、各導電部202と実装基板5において各導電部202それぞれに対応付けられた各導体パターン502とが、導電部202と導体パターン502とに跨って形成された半田部6を介して電気的に接続されている。ここにおいて、導電部202における半田部6との接合部位には、半田部6の材料である半田との濡れ性の良い金属材料(例えば、Au、Alなど)からなる金属層を形成しておくことが好ましい。また、本実施形態では、導電部202が上述の延設部203を備えているので、半田部6が延設部203の延長方向に沿って形成されるように導電部202と導体パターン502との相対的な位置関係を設定することが好ましい。あるいは、導電部202と導体パターン502との位置関係に基づいて延設部203の延設方向を設定することが好ましい。なお、延設部203は必ずしも設ける必要はなく、この場合は、カバー本体200の厚み方向に貫通した導電部202と実装基板5の導体パターン502とを半田部6を介して電気的に接続すればよい。
【0050】
次に、MEMSチップ4の動作について簡単に説明する。
【0051】
本実施形態におけるMEMSチップ4では、一対のパッド13,13を通して、対向する可動電極22と固定電極12との間に可動部20を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、可動電極22・固定電極12間に静電力が発生し、可動部20がy軸方向の軸回りで回動する。しかして、本実施形態におけるMEMSチップ4では、可動電極22・固定電極12間に所定の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20を揺動させることができる。
【0052】
ここで、上述の可動部20は、内部応力に起因して、静止状態でも水平姿勢(xy平面に平行な姿勢)ではなく、きわめて僅かであるが傾いているので、例えば、可動電極22・固定電極12間にパルス電圧が印加されると、静止状態からであっても、可動部20に略垂直な方向(z軸方向)の駆動力が加わり、可動部20が一対の捩りばね部30,30を回動軸として当該一対の捩りばね部30,30を捩りながら回動する。そして、可動電極22・固定電極12間の駆動力を、可動櫛歯片22bと固定櫛歯片12bとが完全に重なりあうような姿勢となったときに解除すると、可動部20は、慣性力により、一対の捩りばね部30,30を捩りながら回動し続ける。そして、可動部20の回動方向への慣性力と、一対の捩りばね部30,30の復元力とが等しくなったとき、当該回動方向への可動部20の回動が停止する。このとき、可動電極22・固定電極12間に再びパルス電圧が印加されて静電力が発生すると、可動部20は、一対の捩りばね部30,30の復元力と可動電極22および固定電極12により構成される駆動手段の駆動力により、それまでとは逆の方向への回動を開始する。可動部20は、駆動手段の駆動力と一対の捩りばね部30,30の復元力とによる回動を繰り返して、一対の捩りばね部30,30を回動軸として揺動する。
【0053】
本実施形態におけるMEMSチップ4では、可動部20と一対の捩りばね部30,30とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、可動部20が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(xy平面に平行な水平面を基準としたときの傾き)が大きくなる。なお、可動電極22・固定電極12間への電圧(駆動電圧)の印加形態や周波数は特に限定するものではなく、例えば、可動電極22・固定電極12間に印加する電圧を正弦波電圧としてもよい。
【0054】
以下、本実施形態のMEMSデバイスにおけるMEMSチップ4の製造方法について図4を参照しながら説明するが、(a)〜(d)は図3(a)のA−B断面に対応する部分の概略断面を示している。
【0055】
まず、半導体基板であるSOI基板100における第1のシリコン層100aのうち、外側フレーム部10に対応する領域よりも内側の領域を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して薄くする。その後、SOI基板100の上記一表面側に、所定膜厚(例えば、500nm)の金属膜(例えば、Al膜)をスパッタ法や蒸着法などにより成膜する金属膜形成工程を行い、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることにより各パッド13および反射膜21aを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図4(a)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、各パッド13と反射膜21aとの材料および膜厚を同じに設定してあるので、各パッド13と反射膜21aとを同時に形成しているが、各パッド13と反射膜21aとの材料や膜厚が相違する場合には、各パッド13を形成するパッド形成工程と反射膜21aを形成する反射膜形成工程とを別々に設ければよく、パッド形成工程と反射膜形成工程との順序はどちらが先でもよい。
【0056】
上述の各パッド13および反射膜21aを形成した後、SOI基板100の上記一表面側で、第1のシリコン層100aのうち可動部20、一対の捩りばね部30,30、外側フレーム部10、各固定電極12、各可動電極22に対応する部位を覆うようにパターニングされた第1のレジスト層107を形成する。続いて、第1のレジスト層107をマスクとして、第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程(表面側パターニング工程)を行うことによって、図4(b)に示す構造を得る。なお、第1のシリコン層パターニング工程では、第1のシリコン層100aにおいて第1のレジスト層107により覆われていない部位を、絶縁層100cに達する深さ(第1の所定深さ)までエッチングする。この第1のシリコン層パターニング工程での第1のシリコン層100aのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性の高いエッチングが可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第1のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0057】
上述の第1のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の上記一表面側の第1のレジスト層107を除去する。その後、SOI基板100の上記一表面側の全面に第2のレジスト層108を形成し、続いて、SOI基板100の他表面側で、第2のシリコン層100bのうち外側フレーム部10に対応する部位以外を露出させるようにパターニングされた第3のレジスト層109を形成する。そして、第3のレジスト層109をマスクとして、第2のシリコン層100bをパターニングする第2のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図4(c)に示す構造を得る。この第2のシリコン層パターニング工程では、第2のシリコン層100bを絶縁層100cに達する深さ(第2の所定深さ)までエッチングする。要するに、第2のシリコン層パターニング工程は、半導体基板であるSOI基板100を上記他表面から第2の所定深さまでエッチングする裏面側パターニング工程を構成している。第2のシリコン層パターニング工程での第2のシリコン層100bのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性が高く垂直深堀が可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第2のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0058】
上述の第2のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の絶縁層100cにおいて外側フレーム部10と可動部20との間の部位、互いに対向する可動電極22と固定電極12との間の部位を、SOI基板100の上記他表面側からエッチングする絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成する。続いて、第2のレジスト層108および第3のレジスト層109を除去する。その後、ミラー形成基板1と、第1のカバー基板2および第3のカバー基板3とを陽極接合などにより接合する接合工程を行うことによって、図4(d)に示す構造のMEMSチップ4を得る。
【0059】
上述の接合工程では、ミラー形成基板1のミラー面21を保護する観点から、第1のカバー基板2とミラー形成基板1とを接合する第1の接合過程を行ってから、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合する第2の接合過程を行うことが好ましい。ここで、第1の接合過程では、第1のカバー基板2とミラー形成基板1とを重ねた積層体を、所定真空度(例えば、10Pa以下)の真空中で所定の接合温度(例えば、300℃〜400℃程度)に加熱した状態で、第1のシリコン層100aと第1のカバー基板2との間に第1のカバー基板2側を低電位側として所定電圧(例えば、400V〜800V程度)を印加し、この状態を所定の接合時間(例えば、20分〜60分程度)だけ保持すればよい。また、第2の接合過程では、上述の第1の接合過程に準じて、第2のシリコン層100bと第2のカバー基板3との陽極接合を行う。なお、ミラー形成基板1と第1のカバー基板2および第2のカバー基板3を接合する接合方法は、陽極接合に限らず、例えば、表面活性化接合法(例えば、常温接合法)などでもよい。また、第1のシリコン層パターニング工程の後に、SOI基板100と第1のカバー基板2とを接合し、その後、第2のシリコン層パターニング工程、絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成し、その後、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合するようにしてもよい。
【0060】
以上説明したMEMSチップ4の製造方法では、接合工程が終了するまでの全工程をミラー形成基板1、第1のカバー基板2および第2のカバー基板3それぞれについてウェハレベルで行うことでMEMSチップ4を複数備えたウェハレベルパッケージ構造体を形成するようにし、当該ウェハレベルパッケージ構造体から個々のMEMSチップ4に分割する分割工程を行うようにしている。要するに、本実施形態におけるMEMSチップ4の製造方法では、ミラー形成基板1を複数形成した第1のウェハと、第1のカバー基板2を複数形成した第2のウェハ(ここでは、ウェハ状の構造物)および第2のカバー基板3を複数形成した第3のウェハとを接合することでウェハレベルパッケージ構造体を形成し、その後、ウェハレベルパッケージ構造体からミラー形成基板1の外形サイズに分割するようにしているので、第1のカバー基板2および第2のカバー基板3の平面サイズをミラー形成基板1の外形サイズに合わせることができるから、小型のMEMSチップ4の量産性を高めることができる。
【0061】
上述の第1のカバー基板2の形成にあたっては、まず、図5(a)に示すように導電性基板であるシリコン基板250の一表面側を加工することにより当該シリコン基板250の上記一表面側に導電部202(ここでは、導電部202が延設部203を備える場合)のもととなる凸部202aを形成する。その後、図5(b)に示すように、シリコン基板250の一表面側にガラスを塗布することで平坦化することにより、シリコン基板250の上記一表面側にカバー本体200のもととなるガラス構造体200aを形成する。続いて、図5(c)に示すように、ガラス構造体200aの表面側(図5(b)における下面側)およびシリコン基板250の他表面側(図5(b)における上面側)それぞれから研磨を行うことにより導電部202の両端面を露出させる。
【0062】
また、上述の実装基板5は、MEMSチップ4の各パッド13それぞれが導電部202および半田部6を介して電気的に接続される複数の導体パターン(電極)502が一表面側に形成されている。
【0063】
また、実装基板5は、プリント配線板などの配線基板(回路基板)に対して2次実装するにあたって、表面実装できるように、側面(側面に形成された切欠部の内面)と裏面とに跨って連続する導体パターン(端子パターン)からなる外部接続電極504が形成されている。しかして、本実施形態のMEMSデバイスでは、実装基板5を上記配線基板に2次実装する場合に半田フィレットを形成でき、実装強度の向上を図れる。なお、実装基板5は、各導体パターン502と外部接続電極504とを電気的に接続する配線用の導体パターン503も形成されている。ただし、実装基板5については、導体パターン502と外部接続電極504とが連続して形成されるような配置にすれば、配線用の導体パターン503は設ける必要はない。
【0064】
ところで、MEMSチップ4の第1のカバー基板2は、上述のように、ミラー形成基板1の各パッド13それぞれに電気的に接続される導電部202が形成されている。ここにおいて、実装基板5の各導体パターン502は、MEMSチップ4におけるミラー形成基板1の対応するパッド13(導電部202および半田部6を介して電気的に接続さるパッド13)との距離が短くなるように配置されており、延設部203は、1対1で対応するパッド13と導体パターン502との並び方向に沿って走るように形成されている。
【0065】
また、実装基板5は、中央部に、導体パターン502を含む平面よりも凹んだ凹部501が形成されており、当該凹部501の内底面にMEMSチップ4が搭載されている。しかして、本実施形態のMEMSデバイスでは、実装基板5の凹部501の深さ寸法を適宜設定することにより、ミラー形成基板1の厚み方向に沿った方向におけるパッド13と導体パターン502との高低差を低減でき、半田部6による接続信頼性を高めることができる。ここで、実装基板5の凹部501の深さ寸法は、MEMSチップ4の裏面からパッド13表面までの高さに応じて適宜設定すればよい。言い換えれば、実装基板5の凹部501の深さ寸法を適宜設定することにより、ミラー形成基板1の厚み方向に沿った方向におけるパッド13と導体パターン502との高低差を調整することができる。半田部6をいわゆる半田ブリッジのように形成するには、高低差が略零であることが好ましい。なお、MEMSチップ4は、実装基板5に対して、ダイボンド材を用いて接着されている(ダイボンドされている)。ダイボンド材としては、例えば、樹脂系のダイボンド材(例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂など)を採用すればよいが、実装基板5の凹部501の内底面からパッド13表面までの高さ寸法の精度を高めるために例えば多数の球状のスペーサを混ぜた樹脂を用いてもよい。また、実装基板5は、セラミック基板により形成されているが、特にセラミック基板に限定するものではない。
【0066】
本実施形態のMEMSデバイスの製造にあたっては、上述のMEMSチップ4の製造方法により製造されたMEMSチップ4を実装基板5に接着することで実装基板5に搭載するチップ搭載工程を行い、その後、MEMSチップ4における第1のカバー基板2の導電部202と実装基板5の導体パターン502とを半田部6を介して電気的に接続する電気接続工程を行うようにすればよい。
【0067】
以上説明した本実施形態のMEMSデバイス(光スキャナ)によれば、第1のカバー基板2に、ミラー形成基板1の各パッド13それぞれと接合されて電気的に接続されたシリコンからなる複数の導電部202が、第2のカバー基板2の厚み寸法内で設けられ、且つ、各導電部202と実装基板5において導電部202それぞれに対応付けられた各導体パターン502とが、導電部202と導体パターン502とに跨って形成された半田部6を介して電気的に接続されている。しかして、本実施形態のMEMSデバイスでは、ボンディングワイヤを用いることなく、第1のカバー基板2を通してミラー形成基板1のパッド13と実装基板5の導体パターン502とを電気的に接続でき、且つ、ボンディングワイヤを保護する樹脂を設ける必要がないのでミラー形成基板1に不要な応力がかかるのを抑制しつつ電気的な接続信頼性を高めることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態のMEMSデバイスでは、導電部202が、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1側とは反対側において第1のカバー基板2の厚み寸法内で第1のカバー基板2の側面まで延設されているので、導電部202と導体パターン502との接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態のMEMSデバイスでは、MEMSチップ4において、ミラー形成基板1の周部を構成する外側フレーム部10と第1のカバー基板2と第2のカバー基板3とで囲まれた空間が気密空間としてあるので、デバイス特性(本実施形態では、可動部20の機械振れ角)の向上を図れる。
【0070】
また、本実施形態のMEMSデバイスでは、MEMSチップ4の上記気密空間を真空雰囲気としてあり、第2のカバー基板3において上記気密空間に臨む部位にゲッタ9が配置されているので、上記気密空間の真空度を高めることができるとともに、上記気密空間の真空度の変化を抑制することができ、真空度の変化に起因したデバイス特性(本実施形態では、可動部20の機械振れ角)の変化を防止することができる。なお、MEMSチップ4の構造によっては、第1のカバー基板2において上記気密空間に臨む部位にゲッタ9を配置するようにしてもよいし、第1のカバー基板2と第2のカバー基板3の両方にゲッタ9を配置するようにしてもよい。
【0071】
(実施形態2)
本実施形態では、MEMSデバイスの一例として、実施形態1と同様、光スキャナを例示する。
【0072】
以下、本実施形態の光スキャナについて図6〜図8を参照しながら説明する。
【0073】
本実施形態のMEMSデバイスの基本構成は実施形態1と略同じであって、可動部20および第1のカバー基板2などの構造が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0074】
本実施形態では、可動部20が、外側フレーム部10に一対の捩りばね部30,30(以下、第1の捩りばね部30,30と称する)を介して揺動自在に支持された枠状(ここでは、矩形枠状)の可動フレーム部23と、可動フレーム部23の内側に配置されミラー面21が設けられた平面視矩形状のミラー部24と、可動フレーム部23の内側でミラー部24を挟む形で配置され可動フレーム部23とミラー部24とを連結し捩れ変形が可能な一対の捩りばね部25,25(以下、第2の捩りばね部25,25と称する)とを有している。
【0075】
第2の捩りばね部25,25は、第1の捩りばね部30,30の並設方向(y軸方向)とは直交する方向(x軸方向)に並設されている。要するに、可動部20は、一対の第2の捩りばね部25,25がx軸方向に並設されており、ミラー部24が、可動フレーム部23に対して一対の第2の捩りばね部25,25の回りで変位可能となっている(x軸方向の軸回りで回動可能となっている)。つまり、一対の第2の捩りばね部25,25は、可動フレーム部23に対してミラー部24が揺動自在となるように可動フレーム部23とミラー部24とを連結している。言い換えれば、可動フレーム部23の内側に配置されるミラー部24は、ミラー部24から相反する2方向へ連続一体に延長された2つの第2の捩りばね部25,25を介して可動フレーム部23に揺動自在に支持されている。ここで、一対の第2の捩りばね部25,25は、両者のx軸方向に沿った中心線同士を結ぶ直線が、平面視でミラー部24の重心を通るように形成されている。なお、各第2の捩りばね部25,25は、厚み寸法(z軸方向の寸法)を30μm、幅寸法(y軸方向の寸法)を、30μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。また、ミラー部24およびミラー面21の平面視形状は、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、可動フレーム部23の内周形状も矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。
【0076】
上述の説明から分かるように、ミラー部24は、一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りの回動と、一対の第2の捩りばね部25,25の軸回りの回動とが可能である。要するに、ミラー部24のミラー面21が、2次元的に回動可能に構成されている。ここにおいて、可動部20は、可動フレーム部23における第1のカバー基板2側とは反対側に一体に設けられ可動フレーム部23を支持する枠状の支持体29を備えており、当該支持体29が可動フレーム部23と一体に回動可能となっている。
【0077】
そこで、第2のカバー基板3は、ガラス基板300における凹部301の深さ寸法を実施形態1よりも大きく設定してある。
【0078】
また、本実施形態では、外側フレーム部10に、3つのパッド13が平面視において一直線上に並ぶように略等間隔で並設されており、第1のカバー基板2に、各パッド13それぞれに電気的に接続される3つの導電部202が貫設され、各導電部202それぞれが延設部203を備えている。
【0079】
また、本実施形態のMEMSデバイスにおけるミラー形成基板1は、実施形態1と同様、可動部20において一対の第1の捩りばね部30,30を結ぶ方向(一対の第1の捩りばね部30,30の並設方向)に直交する方向(つまり、x軸方向)の両側それぞれに形成された櫛形状の可動電極22(以下、第1の可動電極22と称する)と、外側フレーム部10に形成され第1の可動電極22の複数の可動櫛歯片22bに対向する複数の固定櫛歯片12bを有する2つの櫛形状の固定電極12(以下、第1の固定電極12と称する)とを備えている。さらに、ミラー形成基板1は、ミラー部24において一対の第2の捩りばね部25,25を結ぶ方向(一対の第2の捩りばね部25,25の並設方向)に直交する方向(つまり、y軸方向)の両側それぞれに形成された櫛形状の第2の可動電極27と、可動フレーム部23に形成され第2の可動電極27の複数の可動櫛歯片27bに対向する複数の固定櫛歯片26bを有する2つの櫛形状の第2の固定電極26とを備えている。しかして、ミラー形成基板1は、第1の可動電極22と第1の固定電極12との組、第2の可動電極27と第2の固定電極26との組、それぞれが静電力により可動部20を駆動する静電駆動式の駆動手段を構成している。
【0080】
上述の第2の固定電極26は、平面視形状が櫛形状であり、櫛骨部26aが可動フレーム部23の一部により構成されており、櫛骨部26aにおけるミラー部24との対向面(可動フレーム部23におけるx軸方向に沿った内側面)には多数の固定櫛歯片26bが一対の第2の捩りばね部25,25の並設方向に沿って列設されている。一方、第2の可動電極27はミラー部24の一部により構成されており、第2の固定電極26の櫛骨部26a側の側面(ミラー部24におけるx軸方向に沿った側面)には、固定櫛歯片26bにそれぞれ対向する多数の可動櫛歯片27bが上記並設方向に列設されている。ここで、櫛形状の第2の固定電極26と櫛形状の第2の可動電極27とは、櫛骨部26a,27aが互いに対向し、第2の固定電極26の各固定櫛歯片26bが第2の可動電極27の櫛溝に入り組んでいる。したがって、第2の固定電極26と第2の可動電極27とは、固定櫛歯片26bと可動櫛歯片27bとが、x軸方向において互いに離間している。しかして、ミラー形成基板1では、第2の固定電極26と第2の可動電極27との間に電圧が印加されることにより、第2の固定電極26と第2の可動電極27との間に互いに引き合う方向に作用する静電力が発生する。なお、x軸方向における固定櫛歯片26bと可動櫛歯片27bとの間の隙間は、例えば、2μm〜5μm程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0081】
ミラー形成基板1は、外側フレーム部10において第1のシリコン層100aにより形成された部位に複数(図示例では、3つ)のスリット10aを形成するとともに、可動部20の可動フレーム部23において第1のシリコン層100aにより形成された部位に複数(図示例では、4つ)のスリット20aを形成することにより、3つのパッド13のうち図6における真ん中のパッド13(13b)が各第1の固定電極12と電気的に接続されて同電位となり、右側のパッド13(13a)が各第1の可動電極22および各第2の固定電極26と電気的に接続されて同電位となり、左側のパッド13(13c)がミラー部24の各第2の可動電極27と電気的に接続されて同電位となっている。
【0082】
ここで、外側フレーム部10の複数のスリット10aは絶縁層100cに達する深さで形成されている。本実施形態においても、実施形態1と同様、各スリット10aをトレンチとし、各スリット10aの平面視形状を外側フレーム部10の外側面側に開放されない形状とすることで、外側フレーム部10にスリット10aを形成した構造を採用しながらも、外側フレーム部10と第1のカバー基板2との接合性が低下するのを防止し、外側フレーム部10と第1のカバー基板2と第2のカバー基板3とで囲まれる空間の気密性を確保している。
【0083】
また、可動部20における可動フレーム部23の各スリット20aは、トレンチとしてあり、SOI基板100の絶縁層100cの一部と第2のシリコン層100bの一部とで構成される上述の支持体29における絶縁層100cに達する深さに形成してある。要するに、本実施形態では、可動フレーム部23に複数のスリット20aを形成した構成を採用しながらも支持体29により可動フレーム部23を支持しているので、可動フレーム部23と支持体29とが、一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りで一体に回動可能となっている。ここにおいて、支持体29は、可動フレーム部23のうち各固定櫛歯片26bおよび各可動櫛歯片22bを除く部位を覆う枠状(矩形枠状)に形成されている(図8参照)。また、可動フレーム部23の複数のトレンチ20aは、支持体29を含めた可動部20の重心が、平面視において一対の第1の捩りばね部30,30のy軸方向に沿った中心線を結ぶ直線の略真ん中に位置するように形状設計してある。しかして、可動部20が一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りでスムーズに揺動し、反射光のスキャンが適正に行われる。なお、本実施形態では、支持体29において第2のシリコン層100bにより構成される部位の厚さを外側フレーム部10において第2のシリコン層100bにより構成される部位と同じ厚さに設定してあるが、同じに限らず、厚くしてもよいし薄くしてもよい。
【0084】
本実施形態のMEMSデバイスでは、例えば、第1の可動電極22および第2の固定電極26が電気的に接続されたパッド13aの電位を基準電位として、第1の固定電極12および第2の可動電極27それぞれの電位を周期的に変化させることにより、可動部20を一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りで回動させることができるとともに、ミラー部24を一対の第2の捩りばね部25,25の軸回りで回動させることができる。要するに、一対のパッド13b,13aを通して、対向する第1の固定電極12と第1の可動電極22との間に可動部20を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に静電力が発生し、可動部20がy軸方向の軸回りで回動し、また、一対のパッド13a,13cを通して、対向する第2の固定電極26と第2の可動電極27との間にミラー部24を駆動するためのパルス電圧を与えることにより、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に静電力が発生し、ミラー部24がx軸方向の軸回りで回動する。しかして、本実施形態のMEMSデバイスでは、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に所定の第1の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20全体を揺動させることができ、さらに、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に所定の第2の駆動周波数のパルス電圧を印加することにより、周期的に静電力を発生させることができ、可動部20のミラー部24を揺動させることができる。なお、本実施形態におけるミラー形成基板1は、外側フレーム部10と第1のカバー基板2とで囲まれた空間側において、第1のシリコン層100aの反射膜21aが形成されていない部位の表面に、シリコン酸化膜111a(図10(c)参照)が形成されている。
【0085】
本実施形態のMEMSデバイスでは、第1の固定電極12・第1の可動電極22間に、可動部20と一対の第1の捩りばね部30,30とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、可動部20が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(xy平面に平行な水平面を基準としたときの傾き)が大きくなる。また、本実施形態のMEMSデバイスでは、第2の固定電極26・第2の可動電極27間に、ミラー部24と一対の第2の捩りばね部25,25とにより構成される振動系の共振周波数の略2倍の周波数のパルス電圧を印加することにより、ミラー部24が共振現象を伴って駆動され、機械振れ角(可動フレーム部23における第1のカバー基板2側の表面に平行な面を基準としたときの傾き)が大きくなる。
【0086】
以下、本実施形態におけるMEMSチップ4の製造方法について図9および図10を参照しながら説明するが、図9(a)〜(c)および図10(a)〜(c)は図6のA−B断面に対応する部分の概略断面を示している。
【0087】
まず、半導体基板であるSOI基板100における第1のシリコン層100aのうち、外側フレーム部10に対応する領域よりも内側の領域を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して薄くする。その後、SOI基板100の上記一表面側および上記他表面側それぞれに熱酸化法などによりシリコン酸化膜111a,111bを形成する酸化膜形成工程を行うことによって、図9(a)に示す構造を得る。
【0088】
その後、SOI基板100の上記一表面側のシリコン酸化膜111aのうち可動部20において反射膜21aの形成予定領域以外の部分、第1の捩りばね部30,30などに対応する部位などが残るように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図9(b)に示す構造を得る。
【0089】
その後、SOI基板100の上記一表面側に所定膜厚(例えば、500nm)の金属膜(例えば、Al膜など)をスパッタ法や蒸着法などにより成膜する金属膜形成工程を行い、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることにより各パッド13および反射膜21aを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図9(c)に示す構造を得る。なお、本実施形態では、各パッド13と反射膜21aとの材料および膜厚を同じに設定してあるので、各パッド13と反射膜21aとを同時に形成しているが、各パッド13と反射膜21aとの材料や膜厚が相違する場合には、各パッド13を形成するパッド形成工程と反射膜21aを形成する反射膜形成工程とを別々に設ければよい。
【0090】
上述の各パッド13および反射膜21aを形成した後、SOI基板100の上記一表面側で、第1のシリコン層100aのうち可動フレーム部23、ミラー部24、一対の第1の捩りばね部30,30、一対の第2の捩りばね部25,25、外側フレーム部10、各第1の固定電極12、各第2の可動電極22、各第2の固定電極26、各第2の可動電極27に対応する部位を覆うようにパターニングされた第1のレジスト層107を形成する。そして、第1のレジスト層107をマスクとして、第1のシリコン層100aをエッチングすることにより第1のシリコン層100aをパターニングする第1のシリコン層パターニング工程(表面側パターニング工程)を行うことによって、図10(a)に示す構造を得る。この第1のシリコン層パターニング工程では、第1のシリコン層100aを絶縁層100cに達する深さ(第1の所定深さ)までエッチングする。第1のシリコン層パターニング工程での第1のシリコン層100aのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性の高いエッチングが可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第1のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0091】
上述の第1のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の上記一表面側の第1のレジスト層107を除去する。その後、SOI基板100の上記一表面側の全面に第2のレジスト層108を形成し、続いて、SOI基板100の他表面側で、第2のシリコン層100bのうち外側フレーム部10、支持体29に対応する部位以外を露出させるようにパターニングされた第3のレジスト層109を形成する。その後、第3のレジスト層109をマスクとして、第2のシリコン層100bをエッチングすることにより第2のシリコン層100bをパターニングする第2のシリコン層パターニング工程を行うことによって、図10(b)に示す構造を得る。この第2のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cに達する深さ(第2の所定深さ)までエッチングする。第2のシリコン層パターニング工程での第2のシリコン層100bのエッチングは、誘導結合プラズマ(ICP)型のエッチング装置などの異方性が高く垂直深堀が可能なドライエッチング装置により行えばよい。また、第2のシリコン層パターニング工程では、絶縁層100cをエッチングストッパ層として利用している。
【0092】
上述の第2のシリコン層パターニング工程の後、SOI基板100の絶縁層100cの不要部分をSOI基板100の上記他表面側からエッチングする絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成する。続いて、第2のレジスト層108および第3のレジスト層109を除去する。その後、ミラー形成基板1と、第1のカバー基板2および第2のカバー基板3とを陽極接合などにより接合する接合工程を行うことによって、図10(c)に示す構造のMEMSチップ4を得る。ここにおいて、接合工程では、ミラー形成基板1のミラー面21を保護する観点から、第1のカバー基板2とミラー形成基板1とを接合する第1の接合過程を行ってから、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合する第2の接合過程を行うことが好ましい。なお、第1のシリコン層パターニング工程の後に、SOI基板100と第1のカバー基板2とを接合し、その後、第2のシリコン層パターニング工程、絶縁層パターニング工程を行うことでミラー形成基板1を形成し、その後、ミラー形成基板1と第2のカバー基板3とを接合するようにしてもよい。
【0093】
ところで、本実施形態におけるMEMSチップ4の製造方法では、実施形態1と同様、
接合工程が終了するまでの全工程をミラー形成基板1および各カバー基板2,3それぞれについてウェハレベルで行うことでMEMSチップ4を複数備えたウェハレベルパッケージ構造体を形成するようにし、当該ウェハレベルパッケージ構造体から個々のMEMSチップ4に分割する分割工程を行うようにしている。要するに、本実施形態におけるMEMSチップ4の製造方法では、ミラー形成基板1を複数形成した第1のウェハと、第1のカバー基板2を複数形成した第2のウェハおよび第2のカバー基板3を複数形成した第3のウェハとを接合することでウェハレベルパッケージ構造体を形成した後、ウェハレベルパッケージ構造体からミラー形成基板1の外形サイズに分割するようにしているので、各カバー基板2,3の平面サイズをミラー形成基板1の外形サイズに合わせることができる。
【0094】
以上説明した本実施形態のMEMSデバイス(光スキャナ)によれば、実施形態1と同様、第1のカバー基板2に、ミラー形成基板1の各パッド13それぞれと接合されて電気的に接続されたシリコンからなる複数の導電部202が、第2のカバー基板2の厚み寸法内で設けられ、且つ、各導電部202と実装基板5において導電部202それぞれに対応付けられた各導体パターン502とが、導電部202と導体パターン502とに跨って形成された半田部6を介して電気的に接続されている。しかして、本実施形態のMEMSデバイスでは、ボンディングワイヤを用いることなく、第1のカバー基板2を通してミラー形成基板1のパッド13と実装基板5の導体パターン502とを電気的に接続でき、且つ、ボンディングワイヤを保護する樹脂を設ける必要がないのでミラー形成基板1に不要な応力がかかるのを抑制しつつ電気的な接続信頼性を高めることが可能となる。
【0095】
また、本実施形態のMEMSデバイスにおいても、導電部202が、第1のカバー基板2におけるミラー形成基板1側とは反対側において第1のカバー基板2の厚み寸法内で第1のカバー基板2の側面まで延設されているので、導電部202と導体パターン502との接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0096】
また、本実施形態のMEMSデバイスでは、ミラー形成基板1が、上述の、外側フレーム部10、一対の第1の捩ればね部30,30、可動フレーム部23、一対の第2の捩ればね部25,25、ミラー部24、各第1の固定電極12、各第1の可動電極22、各第2の固定電極26、および各第2の可動電極27を有し、各第1の可動電極22、各第1の固定電極12、各第2の可動電極27、各第2の固定電極26それぞれに電気的に接続された各パッド13が、外側フレーム部10に配置されているので、ミラー部24が、一対の第1の捩りばね部30,30の軸回りの回動と、一対の第2の捩りばね部25,25の軸回りの回動とが可能であり、しかも、各パッド13と各導電部202との接合信頼性を高めることができる。
【0097】
ところで、上記各実施形態では、MEMSデバイスの一例として光スキャナについて例示したが、MEMSデバイスは、光スキャナに限らず、例えば、加速度センサやジャイロセンサ、マイクロリレー、振動エネルギを電気エネルギに変換する振動式の発電デバイス、圧電層の厚み方向の縦振動モードを利用する共振子を備えたBAW(Bulk Acoustic Wave)共振装置、赤外線センサなどでもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 ミラー形成基板(デバイス本体)
2 第1のカバー基板(表面側保護基板)
3 第2のカバー基板(裏面側保護基板)
4 MEMSチップ
5 実装基板
6 半田部
9 ゲッタ
10 外側フレーム部
12 固定電極(第1の固定電極)
13 パッド
22 可動電極(第1の可動電極)
23 可動フレーム部
24 ミラー部
25 第2の捩ればね部
26 第2の固定電極
27 第2の可動電極
30 第1の捩ればね部
100 SOI基板(半導体基板)
202 導電部
203 延設部
501 凹部
502 導体パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を用いて形成され複数のパッドを一表面側に備えたデバイス本体、前記デバイス本体の前記一表面側に接合された表面側保護基板を有するMEMSチップと、前記MEMSチップが実装された実装基板とを備え、前記表面側保護基板は、前記デバイス本体の前記各パッドそれぞれと接合されて電気的に接続されたシリコンからなる複数の導電部が、前記表面側保護基板の厚み寸法内で設けられ、且つ、前記各導電部と前記実装基板において前記各導電部それぞれに対応付けられた各導体パターンとが、前記導電部と前記導体パターンとに跨って形成された半田部を介して電気的に接続されてなることを特徴とするMEMSデバイス。
【請求項2】
前記導電部は、前記表面側保護基板における前記デバイス本体側とは反対側において前記表面側保護基板の前記厚み寸法内で前記表面側保護基板の側面まで延設されてなることを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記MEMSチップは、前記デバイス本体の他表面側に接合された裏面側保護基板を備え、前記デバイス本体の周部と前記表面側保護基板と裏面側保護基板とで囲まれた空間を気密空間としてあることを特徴とする請求項1または請求項2記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記MEMSチップは、前記気密空間を真空雰囲気としてあり、前記表面側保護基板と前記裏面側保護基板との一方において前記気密空間に臨む部位にゲッタが配置されてなることを特徴とする請求項3記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
前記実装基板は、前記導体パターンを含む平面よりも凹んだ凹部を有し、当該凹部の内底面に前記MEMSチップが搭載されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のMEMSデバイス。
【請求項6】
前記デバイス本体は、前記一表面側において前記表面側保護基板の周部が接合される外側フレーム部と、前記外側フレーム部の内側に配置され一対の第1の捩ればね部を介して前記外側フレーム部により支持された可動フレーム部と、前記可動フレーム部の内側に位置し前記第1の捩ればね部の並設方向に直交する方向に並設された一対の第2の捩ればね部を介して前記可動フレーム部に支持されたミラー部と、前記外側フレーム部において前記可動フレーム部側に設けられた第1の固定電極と、前記可動フレーム部において前記外側フレーム部側に設けられた第1の可動電極と、前記可動フレーム部において前記ミラー部側に設けられた第2の固定電極と、前記ミラー部において前記可動フレーム部側に設けられた第2の可動電極とを有し、前記第1の可動電極、前記第1の固定電極、前記第2の可動電極、前記第2の固定電極それぞれに電気的に接続された前記各パッドは、前記外側フレーム部に配置されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のMEMSデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−51062(P2012−51062A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194944(P2010−194944)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】