説明

MOCVD装置のクリーニング方法

【課題】安全かつ簡単に、効率よく反応生成物を除去することができるMOCVD装置のクリーニング方法を提供する。
【解決手段】ヒ素(As)原子又はリン(P)原子を含む原料ガスを使用してGaAs、GaInP、AlGaInP、AlGaAsなどのIII-V族化合物半導体材料の成膜を行うMOCVD装置の反応炉12や排気管15の内面に付着した反応生成物を除去するMOCVD装置のクリーニング方法において、クリーニングガスとしてアミン系ガス又は反応炉内でアミン系ガスに変化するガスと水素ガスとを前記反応炉内に供給して反応生成物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MOCVD装置のクリーニング方法に関し、詳しくは、ヒ素(As)やリン(P)といった原子を含み、危険かつ発火性の高い物質を原料ガスとして使用するMOCVD装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色発光デバイスや近赤外域光デバイスを作製するための成長装置として、AsやPを含む原料ガスを使用するMOCVD装置が知られている。原料ガスとしては、一般的に、アルシン(AsH)やホスフィン(PH)、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)などが使用され、近年では、アルシンやホスフィンの代替原料としてターシャリーブチルホスフィン(TBP)やターシャリーブチルアルシン(TBA)を用いることがある。
【0003】
このような原料ガスを使用して成膜を行うと、反応炉内及び配管内部にヒ素原子やリン原子を含む反応生成物が付着する。この反応生成物は、周期的に反応炉を開放して配管などの部品から除去するようにしているが、ヒ素原子やリン原子を含む反応生成物は自然発火性を有しており、空気と接触すると発火するため、反応炉の開放は危険を伴う作業となっている。一方、反応炉を開放しないで反応生成物を除去するクリーニング方法として、反応炉内にハロゲン系化合物をクリーニングガスとして流通させる方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−60171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ハロゲン系ガスは、一般に反応性が高いために取り扱い性に難点がある。例えば、ハロゲン系ガスとして塩素系ガスを用いた場合、金属部材や炭素部材が冒されてしまうおそれがあり、また、僅かな水分との反応で液体の塩酸となり、排気トラップや除害フィルタを目詰まりさせるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、安全かつ簡単に、効率よく反応炉の内面などから反応生成物を除去することができるMOCVD装置のクリーニング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のMOCVD装置のクリーニング方法は、ヒ素原子又はリン原子を含む原料ガスを使用して成膜を行うMOCVD装置の反応炉の内面に付着した反応生成物を除去するMOCVD装置のクリーニング方法において、クリーニングガスとしてアミン系ガス又は反応炉内でアミン系ガスに変化するガスと水素ガスとを前記反応炉内に供給することを特徴としている。
【0008】
前記アミン系ガス(アミノ基の構造を有する化合物)又は反応炉内でアミン系ガスに変化するガスとしては、金属アミド化合物をあげることができる。具体的には、トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルヒドラジン、ヒドラジン、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム、テトラキスエチルメチルアミノシリコン、テトラキスジメチルアミノチタン、ジメチルエチルアミノアランのいずれかから選択される少なくとも1つのガスを用いることができる。
【0009】
また、前記反応炉を800〜1100℃に加熱した状態で前記クリーニングガスを反応炉内に供給することが好ましく、さらに、前記アミン系ガスとして金属原子を含むアミン系ガスを用いて反応生成物を除去した後、酸洗浄を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のMOCVD装置のクリーニング方法によれば、アミン系ガスが有する腐食性を利用して反応炉や配管を大気開放することなく、ヒ素化合物やリン化合物からなる反応生成物を除去することができる。さらに、クリーニング後に大気開放しても、残留物が自然発火することはなく、安全に反応炉などを大気開放して補修作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明方法を実施するMOCVD装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のMOCVD装置のクリーニング方法を実施するMOCVD装置は、例えば図1に示すように、ステンレス鋼製のチャンバー11の内部に、石英製の反応炉(フローライナー)12を収容し、該反応炉12内に設置したサセプタ13に基板を載置し、サセプタ13を回転軸13aで回転させながらヒータで所定温度に加熱するとともに、原料ガス導入管14からキャリアガスに同伴させた原料ガスを反応炉12内に導入して基板面にヒ素化合物やリン化合物を含む膜、例えば、GaAs、GaInP、AlGaInP、AlGaAsなどのIII-V族化合物半導体材料を成膜するものであって、成膜中又はクリーニング中の排ガスは、反応炉12の下流側に接続されている排気管15に設けたドライポンプなどの排気装置16に吸引され、クリーニングガス除害装置17及び原料ガス除害装置18を経て除害処理された後に排出される。原料ガス導入管14には、キャリアガス供給源19と、原料ガスとなる第1原料ガス供給源20及び第2原料ガス供給源21と、クリーニングガス供給源22とが設けられている。
【0013】
成膜を行う際には、キャリアガス供給源17からは水素、窒素などのキャリアガスが供給され、第1原料ガス供給源20からはアルシンやホスフィンなどのヒ素原子又はリン原子を含む原料ガスが供給され、第2原料ガス供給源からはトリメチルガリウムやトリメチルインジウム、トリメチルアルミニウムなどの有機金属系原料ガスが成膜する膜の種類に応じてそれぞれ供給される。成膜中には、原料ガスの熱分解や反応によって基板面に前記半導体材料が成膜されるが、反応炉12の内面や排気管15などの配管の内面にも、前記半導体材料と同じ反応生成物23が粉末状態又は破片状態となって付着する。
【0014】
反応炉12の内面などのクリーニングを行う際には、前記クリーニングガス供給源22から、成膜中に反応炉12の内面などに付着したヒ素化合物やリン化合物からなる反応生成物23を除去するためのクリーニングガスとして、アミン系ガス又は熱分解によりアミン系ガスを生成するガスが供給される。アミン系ガス又は熱分解によりアミン系ガスを生成するガスとしては、トリメチルアミン、ジメチルアミン、モノメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルヒドラジン、ヒドラジン、ジメチルエチルアミノアラン(C11N・AlH)、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf[N(C)CH)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr[N(CH)CHCH)、テトラキスエチルメチルアミノシリコン(Si[N(CH)CHCH)、テトラキスジメチルアミノチタン(Ti[N(CH)などの各種のものを使用可能であるが、コストや取り扱い性、危険性などを考慮すると、熱分解によりジエチルアミンと窒素とを生成するジメチルヒドラジン、アルミ配線技術などのプロセスで一般的に用いられているジメチルエチルアミノアランが最適である。
【0015】
成膜中に反応炉12や排気管15に付着した反応生成物を除去するためのクリーニング操作は、第1原料ガス供給源20及び第2原料ガス供給源21からの原料ガスの供給を停止し、反応炉12内を適当な圧力に保持した状態で、原料ガス導入管14から反応炉12内に、キャリアガス供給源17から水素を供給するとともに、クリーニングガス供給源22からクリーニングガスとを供給することによって行うことができる。
【0016】
クリーニング中の反応炉12などは、クリーニング効果を高めるために高温に加熱することが好ましい。加熱温度は任意であるが、低すぎると熱分解によりアミン系ガスを生成するガスを十分に熱分解させることができず、800℃未満では十分なクリーニング効果を得ることが困難であり、1000℃を超えると加熱に要するコストが増大するため、通常は、800〜1100℃の範囲に加熱することが好ましい。
【0017】
また、常温で液体又は固体の物質をクリーニングガスとして供給する場合は、液体や固体を適当な温度に加熱したり、液体中に水素や窒素でバブリングしたりしてガス化することにより容易に供給することができる。この場合は、原料ガス導入管14などの配管内でクリーニングガスが再液化又は再固化しないように、配管を適度な温度に加熱しておくことが望ましい。
【0018】
例えば、水素を10SLMで供給してクリーニングを行う場合、クリーニングガスとしてジメチルヒドラジンを使用するときには、45℃にて500sccmの窒素ガスでバブリングすることにより、適当量のジメチルヒドラジンを窒素に同伴させて反応炉12内に供給することができる。また、ヒドラジンを使用するときには、25℃にて1SLMの窒素ガスでバブリングすることにより適当量のヒドラジンを供給することができる。さらに、クリーニングガスは、あらかじめ水素と混合した状態で供給することもできる。
【0019】
クリーニングガスとしてジメチルエチルアミノアランなどの金属原子を含むものを使用した場合、反応炉12内で分解することで反応炉12などの内部に金属が残留するため、クリーニング終了後にMOCVD装置を大気開放して反応炉12などから金属を除去する工程を行う必要がある。反応炉12などの内部に残留する金属は、完全な膜として付着するのではなくフレーク状態となって反応炉12などの内面に付着するので、真空掃除機のようなものを使用することによって金属の大半を除去することができる。
【0020】
また、クリーニング中に十分に加熱されている部分は、クリーニングガスによって反応生成物を十分に除去することができるが、配管の下流側など、加熱が十分に行えない部分では、僅かに付着物が残留することがあるが、残留した付着物は、アミン系ガスとの反応で発火性を失った状態になっているので、大気開放しても付着物が発火するおそれはない。さらに、濃度5〜10%程度のフッ酸を用いて洗浄することにより、反応炉12などに残留した金属や前記付着物を完全に除去することができる。また、ステンレス鋼の部分は、布材を用いて拭き取り作業を行うことで付着した金属類を除去することができる。
【0021】
原料ガス除害装置18の上流側に直列に設けられたクリーニングガス除害装置17は、クリーニング中の反応炉12から排出される排ガス中の有害成分、主として前記アミン系ガスの除害処理、除去処理を行うものであって、除害剤としては、アミン系ガスの除害処理を行うことができ、かつ、成膜中に反応炉12から排出される排ガス中に含まれる成分によって処理能力が損なわれないものならば各種除害剤を使用することができるが、これらの条件を満たす除害剤としては、酸化鉄(III)を主成分とした除害剤が最適である。
【0022】
酸化鉄としては各種のものが存在するが、酸化鉄(II、III)(Fe)は、アミン系ガスとは反応せず、酸化鉄(II)(FeO)は、アンモニアなどとも反応することから、アミン系ガスの除害処理を行うための除害剤としては、アミン系ガスを選択的に除害処理することができる前記酸化鉄(III)を反応主成分として使用する。
【0023】
除害剤は、球状、円柱状、破砕状などの形状であり、最大長が1〜20mm程度の範囲、最短長が1〜20mm程度の範囲の大きさである。除害剤の成形方法は、押し出し造粒、転動造粒、破砕、打錠などの一般的な成形方法を採用することができる。このような粒状に成形された除害剤は、除害カラムに充填した状態で排ガスの除害処理に用いることができる。除害カラムへの充填密度は、差圧が生じない十分な低い密度であることが望ましい。
【0024】
このように、酸化鉄(III)を反応主成分とする除害剤を用いてアミン系ガスの除害処理を行うクリーニングガス除害装置17を、他の成分の除害処理を行う原料ガス除害装置18の上流側に直列に設けることにより、アミン系ガスによって後段の原料ガス除害装置18に使用した除害剤の処理能力を損なうことがなくなり、原料ガス除害装置18における除害対象成分の除害処理を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
11…チャンバー、12…反応炉、13…サセプタ、13a…回転軸、14…原料ガス導入管、15…排気管、16…排気装置、17…クリーニングガス除害装置、18…原料ガス除害装置、19…キャリアガス供給源、20…第1原料ガス供給源、21…第2原料ガス供給源、22…クリーニングガス供給源、23…反応生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒ素原子又はリン原子を含む原料ガスを使用して成膜を行うMOCVD装置の反応炉の内面に付着した反応生成物を除去するMOCVD装置のクリーニング方法において、クリーニングガスとしてアミン系ガス又は反応炉内でアミン系ガスに変化するガスと水素ガスとを前記反応炉内に供給することを特徴とするMOCVD装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記アミン系ガス又は反応炉内でアミン系ガスに変化するガスは、ジメチルヒドラジン、ヒドラジン、テトラキスエチルメチルアミンハフニウム、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム、テトラキスエチルメチルアミノシリコン、テトラキスジメチルアミノチタン、ジメチルエチルアミノアランのいずれかから選択される少なくとも1つのガスであることを特徴とする請求項1記載のMOCVD装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記反応炉を800〜1100℃に加熱した状態で前記クリーニングガスを反応炉内に供給することを特徴とする請求項1又は2記載のMOCVD装置のクリーニング方法。
【請求項4】
前記アミン系ガスとして金属原子を含むアミン系ガスを用いて反応生成物を除去した後、酸洗浄を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のMOCVD装置のクリーニング方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−151297(P2011−151297A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13067(P2010−13067)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【出願人】(509054005)大陽日酸イー・エム・シー株式会社 (13)
【Fターム(参考)】