N−カドヘリンおよびLY6−E:癌の診断および治療のための標的
本発明は、N−カドヘリンおよびLy6−Eを過剰発現する癌(前立腺癌および膀胱癌が含まれる)の診断、予後、および治療のための治療標的を得る方法を提供する。本発明は、さらに、N−カドヘリンおよびLy6−Eのその受容体への結合を阻害または防止する医薬品(pharmaceutical agent)を同定するための創薬方法を提供する。この医薬品は、単独またはN−カドヘリンおよびLy6−Eの過剰発現に関連する癌の耐性の逆転、腫瘍の進行、および癌の転移のための公知の化学療法、免疫療法、および放射線療法と組み合わせて使用する場合に有用である。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
序論
前立腺癌は、最も一般的な悪性疾患であり、アメリカ人男性の癌に関連する死亡原因の第2位である。前立腺癌は、生物学的および臨床的に異種の疾患である。この悪性疾患を有する男性の大部分では腫瘍成長が遅く、個体の自然な寿命に影響を与えないかもしれない一方で、他の男性は急速な進行性転移性腫瘍を罹患する。PSAスクリーニングは、特異性を欠き、患者が耐ホルモン性転移性疾患の発症リスクがあることを予想することができないという制限がある。診断により低いPSA閾値を推奨する最近の研究では前立腺癌の診断数を増加させることになり、無痛性癌患者と侵襲性癌患者の同定をさらに複雑にしている(非特許文献1)。臨床転帰と相関するか潜在的侵襲性疾患患者を同定する新規の血清および組織マーカーが早急に必用である(非特許文献2)。
【0002】
最近の発現プロファインリング研究により、転移性腫瘍対非転移性腫瘍の発現サインは原発性腫瘍に存在し得ることが示唆される(非特許文献3;非特許文献4)。腫瘍が特定の器官に転移する傾向を持つさらなる特徴も、原発性腫瘍にいくらか頻繁に存在し得る(非特許文献5)。これらの最近の所見により、転移前または耐ホルモン性の前立腺癌の新規のマーカーを、初期疾患中に同定することができると示唆される。これらのマーカーは、転移性または耐ホルモン性の前立腺癌の進行でも生物学的役割を果たし得る。転帰と相関し、前立腺癌進行で生物学的役割を果たす原発性腫瘍に存在する遺伝子の最近の例には、EZH2およびLIMキナーゼが含まれる(非特許文献6;非特許文献7)。しかし、これら2つの遺伝子のいずれも分泌されない。
【0003】
耐ホルモン性前立腺癌の新規の候補血清または組織マーカーを同定するために、本発明者らは、一対のホルモン依存性前立腺癌異種移植片および耐ホルモン性前立腺癌異種移植片の遺伝子発現プロフィールを比較した。LAPC−9異種移植片を骨芽細胞骨転移から確立し、この移植片は免疫不全マウスの去勢後にアンドロゲン依存性から非依存性に進行させる(非特許文献8)。これは、前立腺癌における候補治療標的を同定するために以前に使用されていた。差分発現した遺伝子を認証し、分泌タンパク質または細胞表面タンパク質に対する配列相同性について試験した。本発明者らは、ここに、耐ホルモン性前立腺癌および膀胱癌の両方で過剰発現する2つのかかる候補遺伝子(Ly6 EおよびN−カドヘリン)の同定、特徴づけ、および最初の認証を報告する。
【0004】
したがって、本発明は、Ly6 Eおよび/またはN−カドヘリンを過剰発現する癌(前立腺癌および膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない)の診断、予後、および治療におけるN−カドヘリンまたはLY6−Eを標的する組成物および方法を提供する。
【非特許文献1】Punglia et al.,N Engl J Med,349:335−342(2003)
【非特許文献2】Welsh et al.,Proc Natl.Acad Sci USA,100:3410−3415(2003)
【非特許文献3】Ramaswamy et al.,Nat Genet,33:49−54(2003)
【非特許文献4】Sotiriou et al.,Proc Natl Acad Sci USA,100:10393−10398(2003)
【非特許文献5】Kang et al.,Cancer Cell,3:537−549(2003)
【非特許文献6】Varambally et al.,Nature,419:624−629(2002)
【非特許文献7】Yoshioka et al.,Proc Natl Acad Sci U SA,100:7247−7252(2003)
【非特許文献8】Craft et al.,Cancer Research,In Press(1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌(特に、前立腺癌および/または膀胱癌)のリスクのある個体を診断および予後診断する方法を提供する。本方法は、一般に、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有するリスクのある個体から試験組織サンプルを得る工程、および癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、試験組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物の有無または量を決定する工程を含む。典型的には、組織サンプルは血清であるが、生検組織(前立腺組織または膀胱組織が含まれる)でもあり得る。
【0006】
さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eは、悪性または浸潤性の前立腺癌および膀胱癌と、正常な前立腺組織および膀胱組織と、前立腺および膀胱の非悪性新形成とを区別するための有用な前立腺癌および膀胱癌のマーカーである。例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eは、良性前立腺過形成(BPH)と比較して、前立腺癌で過剰発現する。これらのマーカーは、癌(例えば、膀胱癌、前立腺癌)が治療耐性またはホルモン非依存性状態に進行し、浸潤性になり、そして/または転移するかどうかの予後診断に役立ち得る。上記のいくつかの実施形態では、E−カドヘリンの過小発現が、浸潤性で且つ転移する可能性がある、より侵襲性の高い癌と関連するので、E−カドヘリンレベルは、予後診断でも使用される。レベルは過小発現である。したがって、いくつかの実施形態では、E−カドヘリンレベルおよびN−カドヘリンレベルの両方を決定する。
【0007】
本発明は、さらに、それぞれ腫瘍組織の細胞上のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLY6−E受容体の結合を阻害または減少させる工程を含む、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌性腫瘍の成長を阻害し、退行を促進する方法を提供する。本方法は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する任意の癌(前立腺癌および膀胱癌が含まれる)の治療で特に適用される。
【0008】
本発明はまた、それぞれのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のそれぞれのN−カドヘリンまたはLY6−E受容体の結合を阻害する化合物を同定する方法を提供する。この化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する癌性腫瘍(例えば、泌尿生殖器組織の腫瘍(前立腺または膀胱の癌腫瘍が含まれる))の成長の阻害および退行の促進で適用される。スクリーニング法を、in vitro(すなわち、ELISA)およびin vivoで行うことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、サンプルまたは生検におけるN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の発現レベルまたは活性の増加が癌を示す、被験体由来の癌または腫瘍の生体サンプルまたは生検におけるN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の発現レベルおよび活性の決定による、被験体における癌の診断方法を提供する。いくつかの実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルの決定は、(a)被験体由来の組織サンプルまたは生検をN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させる工程、および(b)N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質がサンプルまたは生検中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、癌を診断する工程を含む。さらなる実施形態では、癌は、前立腺癌,卵巣癌,腎臓癌,乳癌,結腸癌,肺癌,白血病,非ホジキンリンパ腫,多発性骨髄腫,または肝細胞癌であり得る。いくつかのさらなる実施形態では、組織サンプルは、依然として、針生検,外科生検、または骨髄生検であり得る。組織サンプルを、固定するかパラフィンに包埋することができる。組織サンプルは、例えば、前立腺、卵巣、骨、血液、リンパ節、肝臓、または腎臓に由来し得る。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルの上昇は、癌を示す。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。好ましい実施形態では、癌の診断を、N−カドヘリンまたはLY6−Eのタンパク質レベルおよび他の従来の癌の指標に基づいて行う。例えば、診断は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の所見および癌細胞の組織学または成長の特徴に基づき得る。前立腺癌の場合、例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の所見は、Gleasonスコアリングシステムを補足し、発癌性および疾患進行の可能性のより正確または信頼できる指標を得ることができる。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0010】
任意の上記の他の実施形態では、本方法は、(a)組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質3核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触させること、(b)サンプル中でN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質核酸を増幅させること、および(c)N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質核酸がサンプル中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、癌を診断することによってN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルを決定する。第1のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E cDNAのヌクレオチド配列を含むことができ、第2のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E 3 cDNAに相補的なヌクレオチド配列を含むことができる。好ましくは、両ヌクレオチドは、50塩基対長未満である。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0011】
いくつかの態様では、本発明は、癌が浸潤性であるか、転移するか、再発するか、治療耐性を示す可能性を評価することによる、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌の予後診断方法を提供する。本態様の第1の実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eが過剰発現するか、N−カドヘリンまたはLY6−E転写活性が増加し、その結果、浸潤、転移、再発、または治療耐性の可能性が増加する、癌をさらに診断する方法を提供する。本方法は、(a)組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−Eと特異的に結合する抗体と接触させる工程、および(b)N−カドヘリンまたはLY6−Eがサンプル中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を診断する工程を含む。癌を、N−カドヘリンまたはLY6−Eの発現または活性レベルのためのサンプルを得てそれを分析する前後に診断することができる。癌を、組織学的外観(例えば、前立腺癌の場合、Gleasonスコア)に基づいて同定したのかもしれないが、N−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの決定に基づかなかった。癌を、そのようなものとしてN−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの上昇の知識を使用するか使用しないで診断した可能性があるか、N−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの上昇の知識にもかかわらず、診断した可能性がある。上記のさらなる実施形態では、癌は、前立腺癌または膀胱癌、腎臓癌、乳癌、結腸癌、肺癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌であり得る。いくつかのさらなる実施形態では、組織サンプルは、針生検、外科生検、または骨髄生検でもあり得る。組織サンプルを、固定するかパラフィンに包埋することができる。組織サンプルは、例えば、前立腺、卵巣、骨、リンパ節、肝臓、または腎臓に由来し得る。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルの上昇は、癌の再発または治療耐性のリスクの増加の前兆であり、且つこの増加に関連する。好ましい実施形態では、癌は、前立腺癌または膀胱癌である。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0012】
この第2の態様についての上記の他の実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌の診断方法は、(a)組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−E核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触させる工程、(b)サンプル中でN−カドヘリンまたはLY6−E核酸増幅させる工程、および(c)N−カドヘリンまたはLY6−E核酸がサンプル中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を診断する工程を含む。第1のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E cDNAのヌクレオチド配列を含むことができ、第2のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E cDNAに相補的なヌクレオチド配列を含むことができる。好ましくは、両ヌクレオチドは、50塩基対長未満である。上記方法では、サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの増加は、癌の再発、転移、ホルモン非依存性、または治療耐性のリスクの増加であり、これらの予後が診断され、これらに関連する。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0013】
さらに他の実施形態では、本発明は、癌組織の外科切除(例えば、前立腺切除(prostectomy))の前、間、または後または別の癌治療の前、間、または後に採取した患者由来の組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの上昇に基づいたより侵襲性が高いか別の癌療法または癌再発の監視を増加するために患者を標的する方法を提供する。N−カドヘリンまたはLY6−Eの活性レベルまたは発現レベルを、上記のように決定することができる。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌は、例えば、前立腺癌、卵巣癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌であり得る。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。N−カドヘリンまたはLY6−Eレベルが上昇し、それにより、癌の転移、再発、または療法耐性リスクが高いと同定された患者を、任意選択的に化学療法および/または放射線療法を補足した外因性または内因性ホルモン除去(hormone ablation)で治療することができる。前立腺癌の場合、ホルモン除去は、アンドロゲン除去(例えば、フィナステリドおよび他の抗テストステロン(anti−tesosterone)または抗DHT薬での治療)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療有効量のN−カドヘリンもしくはLY6−EまたはN−カドヘリンもしくはLY6−E発現の1つまたは複数のインヒビターを被験体に投与する工程を含む、被験体のN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌、治療耐性癌、癌の転移、または癌の再発を治療または阻害する方法を提供する。N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌は、例えば、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌であり得る。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。化合物は、以下の態様で同定された化合物であり得る。過剰発現を、前の態様に記載のように同定することができる。化合物を、別の癌療法薬と同時に投与することができる。
【0015】
本発明はまた、細胞を化合物と接触させる工程、および細胞中のN−カドヘリンまたはLY6−E ポリペプチドの発現または活性に及ぼす化合物の影響を決定する工程を含み、癌、その転移、またはホルモン非依存性もしくは治療耐性状態への進行を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eの発現レベルまたは活性レベルを減少させる化合物を同定する、癌、治療耐性癌、または癌の転移もしくは再発を阻害する化合物を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、細胞中のN−カドヘリンまたはLY6−Eの発現を減少させる。さらに他の実施形態では、細胞は癌細胞であり、より詳細には、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する特定の組織型または供給源(例えば、前立腺、卵巣、腎臓、肺、乳房、結腸、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌)の癌細胞であり得る。なおさらなる実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌は、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌である。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。
【0016】
本発明はまた、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する細胞を被験体中で画像化する工程を含み、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌が、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、腎臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、および肝細胞癌からなる群から選択される、in vivoでN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現し、それにより、浸潤性である可能性が高いか、転移する可能性が高いか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である癌を局在化する方法を提供する。
【0017】
さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質およびN−カドヘリンまたはLY6−Eコード核酸分子を、種々の免疫療法で使用して、特に、かかる腫瘍が浸潤性である場合、癌(例えば、前立腺腫瘍または膀胱腫瘍)の免疫介在性破壊を促進することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてN−カドヘリンおよびLY6−Eに結合してその各活性を減少させる抗体の投与による、癌、特に浸潤性癌もしくは転移を治療するか、癌の治療耐性状態、ホルモン非依存性状態、または転移状態への進行を防止する方法を提供する。さらに、いくつかの他の実施形態では、抗体を、エフェクター部分に抱合し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する細胞に対して優先的に細胞傷害性を示す。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eに特異的なRNAi分子またはアンチセンス分子を投与し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eの発現を阻害することができる、癌を治療するか、癌の治療耐性、ホルモン非依存性、または転移状態への進行を防止する方法を提供する。いくつかの実施形態では、RNAi分子は、短いヘアピンRNAiである。
【0020】
別の態様では、本発明は、N−カドヘリンまたはLy6−Eに対する抗体を提供する。N−カドヘリンまたはLy6−E抗体を、単独またはエフェクター部分と抱合して、癌(例えば、前立腺癌または膀胱癌)の診断、予後、または治療で使用することができる。リシンなどの毒剤と抱合したN−カドヘリンまたはLy6−E抗体および非抱合抗体は、N−カドヘリンまたはLy6−E保有前立腺癌細胞に天然に標的にする有用な治療薬であり得る。かかる抗体は、浸潤の遮断で有用であり得る。本発明の使用に適切なN−カドヘリン抗体には、GC4、1H7、1F12、2B3が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
上記態様および実施形態のいずれかでは、治療すべき組織、癌、被験体、または患者は非とまたは哺乳動物である。上記態様および実施形態のいずれかでは、癌はアンドロゲン非依存性癌であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明者らは、ここに、耐ホルモン性前立腺癌および膀胱癌中で過剰発現される2つの遺伝子産物の同定、特徴づけ、および検証を報告する。これらの遺伝子産物は、N−カドヘリンおよびLy6−Eである。
【0023】
本発明はまた、浸潤性の膀胱癌および前立腺癌がN−カドヘリンの上方制御およびE−カドヘリンの下方制御によって特徴づけられる上皮−間葉転換(Epithelial to Mesenchymal Transition(EMT))を受けるという発見に関する。本発明者らは、中和N−カドヘリン抗体がリン酸化Akt発現の減少およびE−カドヘリンの下方制御によって膀胱癌細胞の浸潤を遮断することができることも見いだし、これは、かかるマーカーに対する抗体が癌、特に癌転移の治療および防止に有用であることを示す。特に、本発明者らは、膀胱癌中のN−カドヘリン発現がAkt発現の活性化、ボイデン・チェンバにおける浸潤活性、およびin vitro再構築モデルに関連すること、2)N−カドヘリン中和はAktリン酸化の阻害によって浸潤を特異的に減少させ、E−カドヘリンを回復してEMTを逆行させることを見いだした。PI3キナーゼ阻害は、E−カドヘリンを回復せず、N−カドヘリンが複数の経路を介してシグナル伝達し、N−カドヘリン/E−カドヘリンが強い予後情報を提供することが示唆される。
【0024】
前立腺癌に関して、本発明は、N−カドヘリンが前立腺癌の浸潤性および転移性の進行を促進し、アンドロゲン非依存性成長も促進するとういう所見に関する。
【0025】
・N−カドヘリンは、アンドロゲン非依存性異種移植片で下方制御される。
【0026】
・N−カドヘリン発現は、耐ホルモン性腫瘍で共通する。
【0027】
・N−カドヘリン発現は、浸潤性およびアンドロゲン依存性前立腺癌細胞におけるアンドロゲン非依存性成長を促進する。
【0028】
・浸潤性はメタロプロテイナーゼ発現に関連した。
【0029】
・浸潤性は、抗体曝露によって減少した。
【0030】
したがって、N−カドヘリンは、特に有望な治療標的である。これは、細胞表面上に見いだされ、多数の上皮腫瘍中で過剰発現し、浸潤、転移、およびおそらくアンドロゲン非依存性に関連する。したがって、N−カドヘリンに対する抗体は、上皮癌(泌尿生殖器癌(膀胱、前立腺)が含まれるが、これに限定されない)、より詳細には、その浸潤性形態または転移形態の治療での使用に特に好ましい薬剤である。いくつかの実施形態では、N−カドヘリンの細胞外ドメインに指向するモノクローナル抗体が好ましい。さらなる実施形態では、N−カドヘリンの第1の細胞外ドメイン(ECl)、第1および第2のドメインの一部、または第4の細胞外ドメインは、これらの癌の治療で好ましい。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン4に指向する抗体は、このドメインが機能調整(promotility)および浸潤可能性で重要であることが見いだされているので、これらの治療に好ましい(Kim et al,J Cell Biol.151(6):1193−206(2000)(種々のN−カドヘリンドメインの定義に関してその全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0031】
N−カドヘリン発現は、前立腺癌および膀胱癌の浸潤および転移ならびに前立腺癌の耐ホルモン性疾患への進行に寄与し得る。N−カドヘリンを、単独またはmTORおよびEGFRの他の小分子インヒビターと組み合わせて治療的にターゲティングすることができる。N−カドヘリンのターゲティングは、浸潤性および転移性の前立腺癌の防止または抑制に役立ち得る。
定義
「N−カドヘリン、LY6−E、およびE−カドヘリン」は、(1)本明細書中に記載のそれぞれ参照した核酸配列またはアミノ酸配列によってコードされるポリペプチド(例えば、それぞれ、図7、8、および9)と、好ましくは、少なくとも約25、50、100、200、500、または1000またはそれを超えるアミノ酸の領域にわたって、約60%を超えるアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、またはそれを超えるアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、(2)図7、8、および9に示すにそれぞれ示す参照アミノ酸配列を含む免疫原に対して惹起した抗体(例えば、ポリクローナル抗体)、それぞれのその免疫原性フラグメント、およびそれぞれのその保存的に修飾された変異型に特異的に結合し、(3)ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で図7、8、および9に示すにそれぞれ示す参照アミノ酸配列をコードする核酸およびそれぞれのその保存的に修飾された変異型と特異的にハイブリッド形成し、(4)図7、8、および9にそれぞれ示す基準核酸配列と、好ましくは、少なくとも約25、50、100、150、200、250、500、または1000、またはそれを超えるヌクレオチドの領域にわたって、約95%超、好ましくは約96%、97%、98%、99%超、またはそれを超えるヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する核酸(例えば、遺伝子、プレmRNA、mRNA、およびポリペプチド、多型変異型、対立遺伝子、変異体、および種間ホモログ)をいう。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、典型的には、哺乳動物(霊長類(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または任意の哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない)に由来する。本発明の核酸およびタンパク質には、天然に存在する分子または組換え分子の両方が含まれる。
【0032】
「癌」は、ヒトの癌および癌腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病など(固形腫瘍およびリンパ癌、腎臓、乳房、肺、腎臓、膀胱、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、胃、脳、頭頸部、皮膚、子宮、精巣、食道、および肝臓の癌、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫が含まれる)が含まれる)をいう。「泌尿生殖器癌」は、ヒトの尿路および生殖器組織(腎臓、膀胱、尿路、尿道、前立腺(prostrate)、陰茎、精巣、外陰、膣、頸部、および卵巣の組織が含まれるが、これらに限定されない)の癌をいう。
【0033】
本明細書中で治療すべき癌は、N−カドヘリンまたはLy6−Eの過剰な活性化によって特徴づけられる癌であり得る。本発明の1つの実施形態では、診断または予後アッセイを、患者の癌がN−カドヘリンまたはLy6−Eの過剰発現によって特徴づけられるかどうかを決定するために行われるであろう。かかる増殖/過剰発現を決定するための種々のアッセイが意図され、免疫組織化学、FISH、および分断抗原(shed antigen)アッセイ、サザンブロッティング、またはPCR技術が含まれる。さらに、N−カドヘリンまたはLy6−Eの過剰発現または増幅を、in vivo診断アッセイ(例えば、検出すべき分子に結合し、検出可能な標識(例えば、放射性同位体)でタグ化した分子を投与し、標識の局在化について患者を外部からスキャニングすることによる)を使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、治療すべき癌は、まだ浸潤していないが、N−カドヘリンを過剰発現する。
【0034】
「治療耐性」癌、腫瘍細胞、および腫瘍は、アポトーシス媒介性(例えば、細胞死受容体細胞シグナル伝達(例えば、Fasリガンド受容体、TRAIL受容体、TNF−R1、化学療法薬、照射))癌療法および非アポトーシス媒介性(例えば、中毒性薬物(toxic drug)、化学物質)癌療法(化学療法、ホルモン療法、放射線療法、および免疫療法が含まれる)のいずれかまたは両方に対して耐性または無効となった癌をいう。
【0035】
「過剰発現」は、コントロール組織サンプル中でのN−カドヘリン、LY6−E、およびE−カドヘリンのRNAまたはタンパク質の発現よりも有意に高い試験組織サンプル中のN−カドヘリン、LY6−E、およびE−カドヘリンのRNAまたはタンパク質の発現をいう。1つの実施形態では、組織サンプルは自家である。浸潤性、転移、ホルモン非依存性(例えば、アンドロゲン非依存性)、治療無効性、またはその可能性の増大に関連する癌試験組織サンプル(例えば、膀胱、前立腺)は、典型的には、転移に進行する可能性が低い患者由来の癌組織または正常な(すなわち、非癌)組織サンプルと比較して、N−カドヘリンまたはLY6−EのmRNAまたはタンパク質の発現が少なくとも2倍、しばしば、N−カドヘリンまたはLY6−E発現の3倍、4倍、5倍、8倍、10倍、またはそれを超える。かかる相違は、試験サンプルおよびコントロールサンプルをほぼ同様にロードしたゲルのバンドを観察した場合に容易に明らかであり得る。増量したN−カドヘリンまたはLy6−Eを発現する前立腺癌は、癌が浸潤性になるか、転移するか、アンドロゲン非依存性に進行するか、治療無効である可能性がより高い。原発性腫瘍中の微小なN−カドヘリンまたはLy6−E陽性細胞が再発および転移リスクの高い腫瘍を同定することが可能であるので、種々のカットオフがN−カドヘリンまたはLy6−E陽性に適切である。用語「過剰発現する」、「過剰発現」、または「過剰発現した」は、交換可能に、通常は癌細胞中で、正常細胞と比較して検出可能により高いレベルで転写または翻訳される遺伝子をいう。したがって、過剰発現は、タンパク質およびRNAの過剰発現(転写、転写後プロセシング、翻訳、翻訳後プロセシングの増大、安定性の変化、およびタンパク質分解の変化による)ならびにタンパク質輸送パターンの変化(核局在化の増加)および機能活性の増大(例えば、基質の酵素加水分解の増加など)に起因する局所過剰反応をいう。過剰発現はまた、正常細胞または比較細胞(例えば、BPH細胞)と比較して、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれを超え得る。
【0036】
「N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌」および「N−カドヘリンまたはLY6−Eの過剰発現に関連する癌」は、交換可能に、上記定義にしたがってN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌細胞または組織をいう。
【0037】
用語「癌関連抗原」または「腫瘍特異的マーカー」、または「腫瘍マーカー」は、交換可能に、正常細胞と比較して癌細胞中で優先的に発現され、薬理学的作用因子(pahrmacological agent)の癌細胞への優先的ターゲティングに有用な分子(典型的には、タンパク質、炭水化物、または脂肪)をいう。マーカーまたは抗原を、細胞表面上または細胞内に発現することができる。しばしば、癌関連抗原は、正常細胞と比較して、癌細胞中で過剰発現するか最小の分解で安定化する分子である(例えば、正常細胞と比較して、2倍、3倍、またはそれを超える過剰発現)。しばしば、癌関連抗原は、癌細胞中で不適切に合成される分子(例えば、正常細胞上に発現する分子と比較して、欠失、付加、または変異を含む分子)である。しばしば、癌関連抗原は、癌細胞中に排他的に発現し、正常細胞中で合成も発現もされないであろう。細胞表面腫瘍マーカーの例には、タンパク質(乳癌についてのc−erbB−2およびヒト上皮成長因子受容体(HER)、前立腺癌についてのPSMA)および炭水化物(多数の癌(乳癌、卵巣癌、および結腸直腸癌が含まれる)におけるムチン)が含まれる。細胞内腫瘍マーカーの例には、例えば、変異腫瘍抑制因子または脂肪周期タンパク質(p53が含まれる)が含まれる。
【0038】
E−カドヘリンは、癌が浸潤性になるか、転移するか、アンドロゲン非依存性に進行するか、治療無効である可能性が高い癌患者由来の組織サンプル中の眼組織サンプル中で典型的には逆に過小発現する。この過小発現は、2倍、3倍、4倍、または少なくとも5倍である。かかる相違は、試験サンプルおよびコントロールサンプルをほぼ同様にロードしたゲルのバンドを観察した場合に容易に明らかであり得る。したがって、癌が浸潤性になるか、転移するか、アンドロゲン非依存性に進行するか、治療無効である可能性が高い癌における組み合わせたN−カドヘリン/E−カドヘリン値はさらに高く、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または20倍であり得る。原発性腫瘍中の微小なN−カドヘリン陽性細胞が再発および転移リスクの高い腫瘍を同定することが可能であるので、種々のカットオフがN−カドヘリン陽性/e−カドヘリン陰性に適切である。
【0039】
「アゴニスト」は、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合し、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現を刺激、増加、活性化、促進、活性化の増強、感作、または上方制御する作用因子(agent)をいう。
【0040】
「アンタゴニスト」は、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を阻害し、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの刺激を部分的または完全に遮断し、活性を減少、防止、活性化の遅延、不活化、脱感作、または下方制御する作用因子をいう。
【0041】
発現または活性の「インヒビター」、「アクチベーター」、および「モジュレーター」は、発現または活性についてのin vitroアッセイおよびin vivoアッセイを使用して同定された分子をそれぞれ阻害、活性化、または調整することをいうために使用される(例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、およびそのホモログおよび模倣物)。用語「モジュレーター」には、インヒビターおよびアクチベーターが含まれる。インヒビターは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合して部分的または完全に刺激または酵素活性を遮断し、活性化を減少、防止、遅延させ、活性を不活化、脱感作、または下方制御する作用因子である(例えば、アンタゴニスト)。アクチベーターは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を誘導または活性化するか、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合して活性化または酵素活性を刺激、増加、開始、活性化、促進、するか、活性を感作または上方制御する作用因子である(例えば、アゴニスト)。モジュレーターには、天然に存在するか合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、および小化学分子などが含まれる。インヒビターおよびアクチベーターを同定するためのアッセイは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの存在下または非存在下で細胞に推定モジュレーター化合物を適用し、その後に本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド活性に及ぼす機能的影響を決定する工程を含む。潜在的アクチベーター、インヒビター、またはモジュレーターで処置する本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含むサンプルおよびアッセイを、インヒビター、アクチベーター、またはモジュレーターを含まないコントロールサンプルと比較し、影響の範囲を試験する。コントロールサンプル(モジュレーターで未処置)を、相対活性値100%に割り当てる。コントロールと比較した本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性値が約80%、任意選択的に50%、または25〜1%である場合、阻害されている。コントロールと比較した本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性値が110%、任意選択的に150%、任意選択的に200〜500%、または1000〜3000%である場合、活性化されている。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「試験化合物」、「薬物候補」、「モジュレーター」、または文法上の等価物は、天然または合成の任意の分子(例えば、タンパク質、オリゴペプチド(約5〜約25アミノ酸長、好ましくは約10〜20または12〜18アミノ酸長、好ましくは12、15、または18アミノ酸長)、有機小分子、ポリサッカリド、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、RNAi、siRNA、抗体、オリゴヌクレオチドなど)を説明する。試験化合物は、試験化合物のライブラリーの形態(十分な多様性が得られる組み合わせライブラリーまたは無作為化ライブラリーなど)であり得る。試験化合物は、融合パートナー(例えば、ターゲティング化合物、レスキュー化合物、二量体化化合物、安定化化合物、アドレス可能な(addressable)化合物、および他の機能的部分)と任意選択的に連結している。従来は、有用な性質を有する新規の化学物質を、いくつかの望ましい性質または活性(例えば、阻害活性)を有する試験化合物(「リード化合物」と呼ばれる)の同定、リード化合物の変異型の作製、および変異化合物の性質および活性の評価によって作製する。しばしば、かかる分析のために高処理スクリーニング(HTS)法を使用する。
【0043】
「有機小分子」は、分子量が約50ダルトン超且つ約2500ダルトン未満、好ましくは約2000ダルトン未満、好ましくは約100〜約1000ダルトン、より好ましくは約200〜約500ダルトンの天然または合成の有機分子をいう。
【0044】
細胞毒性薬には、「細胞周期特異的」、「抗有糸分裂性」、または「細胞骨格相互性」の薬物が含まれる。これらの用語は、交換可能に、有糸分裂中の細胞を遮断する任意の薬理学的作用因子をいう。かかる薬剤は、化学療法で有用である。一般に、細胞周期特異的薬物は、細胞骨格タンパク質であるチューブリンに結合してチューブリンが微小管に重合する能力を遮断し、それにより、中期の細胞分裂が停止される。細胞周期特異的薬物の例には、ビンカアルカロイド、タキサン、コルヒチン、およびポドフィロトキシンが含まれる。ビンカアルカロイドの例には、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン およびビノレルビンが含まれる。タキサンの例には、パクリタキセルおよびドセタキセルが含まれる。細胞骨格相互作用薬の別の例には、2−メトキシエストラジオールが含まれる。
【0045】
「siRNA」または「RNAi」は、siRNAが遺伝子または標的遺伝子と同一の細胞中で発現される場合にこの遺伝子または標的遺伝子の発現を減少または阻害する能力を有する二本鎖RNAを形成する核酸をいう。したがって、「siRNA」または「RNAi」は、相補鎖によって形成された二本鎖RNAをいう。ハイブリッド形成して二本酸分子を形成するsiRNAの相補部分は、典型的には、実質的または完全に同一である。1つの実施形態では、siRNAは、標的遺伝子と実質的にまたは完全に同一であり、二本酸siRNAを形成する核酸をいう。典型的には、siRNAは、少なくとも約15〜50ヌクレオチド長である(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は15〜50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは約15〜50塩基対長、好ましくは約20〜30塩基のヌクレオチド長、好ましくは約20〜25または24〜29ヌクレオチド長(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長)である)。
【0046】
siRNA分子およびベクターのデザインおよび作製は、当業者に周知である。例えば、適切なsiRNAのデザインに有効な過程は、mRNA転写物をAUG開始コドンから開始させ(例えば、図5を参照のこと)、AAジヌクレオチド配列についてスキャンする(Elbashir et al.EMBO J 20:6877−6888(2001)を参照のこと)。各AAおよび3’隣接ヌクレオチドは、潜在的なsiRNA標的部位である。隣接部位配列の長さによってsiRNAの長さが決定される。例えば、19個の隣接部位により、21ヌクレオチド長のsiRNAが得られるであろう。3’オーバーハングUUジヌクレオチドを有するsiRNAは、しばしば最も有効である。このアプローチはまた、ヘアピンsiRNAを転写するためのRNA pol IIIの使用に適合する。RNA pol IIIは、4−6ヌクレオチドポリ(T)領域で転写を終結させ、短いポリ(U)テールを有するRNA分子を作製する。しかし、他の3’末端ジヌクレオチドオーバーハングを有するsiRNAはまた、RNAiを有効に誘導することができ、配列を経験的に選択することができる。選択性について、他のコード配列に相同な16〜17個を超える連続塩基対を有する標的配列を、BLAST検索の実施によって回避することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと)。
【0047】
siRNAを直接投与するかsiRNA発現ベクターを使用して異なるデザイン基準を有し得るRNAiを誘導することができる。ベクターを、短いスペーサー配列によって分離された2つの逆方向反復に挿入し、転写終結に役立つ一連のTで終結させることができる。発現したRNA転写物は、短いヘアピンsiRNAに折り畳まれると予想される。siRNA標的配列の選択、推定ヘアピンのステムをコードする逆方向反復、逆方向反復の順序、ヘアピンのループをコードするスペーサー配列の長さおよび組成、ならびに5’オーバーハングの有無を変化させることができる。siRNA発現カセットの好ましい順序は、センス鎖、短いスペーサー、およびアンチセンス鎖である。これらの種々のステム長(例えば、15〜30)を有するヘアピンsiRNAが適切であり得る。ヘアピンsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖に結合するループの長さは、種々の長さ(例えば、3〜9ヌクレオチドまたはそれを超える)であり得る。ベクターは、siRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されるプロモーターおよび発現エンハンサーまたは他の調節エレメントを含むことができる。発現「調節配列」は、特定の宿主生物中の作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列をいう。原核生物に適切な調節配列には、プロモーター、任意選択的にオペレーター配列、およびリボゾーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが公知である。これらの調節エレメントを、制御エレメントが応答する外因子の付加または調節によって遺伝子発現をオフまたはオンにすることが臨床家によって行うことができるようにデザインすることができる。
【0048】
所望の治療遺伝子のコード配列および調節配列を含む適切なベクターの構築は、当該分野で十分に理解されている標準的なライゲーション技術および制限技術を使用する(Maniatis et al.,in Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1982)を参照のこと)。単離されたプラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドを、切断し、調整し、所望の形態に再ライゲーションする。
【0049】
別の核酸配列と機能的関係にある場合、核酸は、「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現する場合、DNAに作動可能に連結しているか、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されているか、リボゾーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結している。一般に、「作動可能に連結された」は、連結されるDNA配列が相互に隣接して存在し、分泌リーダーの場合、連続して読み取り枠に合って存在することを意味する。しかし、エンハンサーは、連続する必要はない。都合のよい制限部位でのライゲーションによって連結する。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、従来の実務にしたがって使用する。
【0050】
「機能的影響の決定」は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間接的または直接的影響下にあるパラメーターが増加または減少する化合物のアッセイ(例えば、物理的および化学的または表現型の影響の測定)をいう。かかる機能的影響を、当業者に公知の任意の手段(例えば、タンパク質の分光学的変化(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的変化(例えば、形状)、クロマトグラフの変化、または溶解性の変化)、タンパク質の誘導性マーカーまたは転写活性化の測定、結合活性の測定または結合アッセイ(例えば、抗体への結合)、リガンド結合親和性の変化の測定、カルシウム流入の測定、本発明のポリペプチドの酵素産物の蓄積または基質枯渇の測定、本発明のポリペプチドの酵素活性(例えば、キナーゼ活性)の変化、タンパク質レベルの変化の測定、RNA安定性の測定、Gタンパク質結合、GPCRリン酸化または脱リン酸化、シグナル伝達(例えば、受容体−リガンド相互作用、第2メッセンジャーの濃度(例えば、cAMP、IP3、または細胞内Ca2+))、例えば、化学発光、蛍光、比色反応、抗体結合、誘導性マーカー、およびリガンド結合アッセイによるレポーター遺伝子発現の下流の同定(CAT、ルシフェラーゼ、β−gal、およびGFPなど))によって測定することができる。
【0051】
潜在的アクチベーター、インヒビター、またはモジュレーターである本明細書中に記載の核酸またはタンパク質を含むサンプルまたはアッセイを、インヒビター、アクチベーター、またはモジュレーターを含まないコントロールサンプルを比較して、阻害範囲を試験する。コントロールサンプル(インヒビターで未処置)を、相対タンパク質活性値100%に割り当てる。コントロールと比較した活性値が約80%、好ましく50%、より好ましくは25〜0%である場合、阻害されている。コントロール(アクチベーターで未処置)と比較した活性値が110%、より好ましくは150%、より好ましくは200〜500%(コントロールと比較して2〜5倍)、より好ましくは1000〜3000%である場合、活性化されている。
【0052】
「生体サンプル」には、生検および剖検サンプルならびに組織学的目的のために採取した凍結切片などの組織切片が含まれる。かかるサンプルには、血液および血液の画分または産物(例えば、血清、血漿、血小板、および赤血球など)、唾液、組織、培養細胞(例えば、初代培養物)、外植片、および形質転換細胞、排泄物、尿などが含まれる。生体サンプルを、典型的には、真核生物、最も好ましくは哺乳動物(霊長類(例えば、チンパンジーまたはヒトなど)、ウシ、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、モルモット、ラット、マウス)、ウサギ、トリ、爬虫類、または魚類)から得る。
【0053】
「生検」は、診断または予後の評価のために組織サンプルを取り出す過程および組織標本自体をいう。当該分野で公知の任意の生検技術を、本発明の診断方法および予後方法に適用することができる。適用される生検技術は、評価すべき組織型(すなわち、前立腺、リンパ節、肝臓、骨髄、血球)、腫瘍のサイズおよび型(すなわち、固体または懸濁(すなわち、血液または腹水))などに依存するであろう。代表的生検技術には、切除生検、切開生検、針生検、外科生検、および骨髄生検が含まれる。「切除生検」は、生検周囲の少しの正常組織を含む全腫瘤の除去をいう。「切開生検」は、腫瘍の断面直径を含む楔形の組織の除去をいう。内視鏡または蛍光透視検査によって行う診断または予後は、腫瘤の「コアニードル生検(core−needle biopsy)」または一般に腫瘤内部から細胞の懸濁液を得る「穿刺吸引生検(fine−needle aspiration biopsy)」が必要であり得る。生検技術は、例えば、Harrison ’s Principles of Internal Medicine,Kasper,et al,eds.,16th ed.,2005のChapter 70およびPart V全体で考察されている。
【0054】
2つまたはそれを超える核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一」または「同一」率は、下記のデフォルトパラメーターを使用したBLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用するか、手作業のアラインメントおよび目視検査によって測定した場合、同一であるか同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定の比率(すなわち、比較ウィンドウまたは指定の領域と最大対応させるために比較および整列させた場合に指定の領域と約60%同一、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一である)の2つまたはそれを超える配列またはサブシーケンスをいう(例えば、NCBI ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照のこと)。次いで、かかる配列を、「実質的に同一である」という。この定義はまた、試験配列の相補物をいうか、これに適用することができる。定義は、欠失および/または付加された配列ならびに置換された配列も含まれる。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを含み得る。好ましくは、少なくとも25アミノ酸長またはヌクレオチド長の配列、より好ましくは50〜100アミノ酸長またはヌクレオチド長の領域にわたって同一である。
【0055】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列と比較する基準配列の機能を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および基準配列を、コンピュータに入力し、サブシーケンス座標を指定し、必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。好ましくは、デフォルトプログラムパラメーターを使用することができるか、別のパラメーターを指定することできる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて基準配列と比較した試験配列の配列同一率を計算する。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「比較ウィンドウ」には、2つの配列を最適に整列させた後に配列を同数の連続する位置の基準配列と比較することができる、20〜600、通常約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群から選択される連続した位置数のいずれか1つのセグメントに対する基準が含まれる。比較のための配列のアラインメント方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントを、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat 7.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動のアラインメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照のこと)によって行うことができる。
【0057】
配列同一率および配列類似率の決定に適切なアルゴリズムの好ましい例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al,Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschul et al,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0を、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一率を決定するための本明細書中に記載のパラメーターと共に使用する。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さのワードと整列させた場合にいくつかの正の数の閾値スコアTに適合するか満たすクエリー配列中の長さWの短いワードの決定によって高スコアリング配列対(high scoring sequence pairs)(HSP)を最初に同定する工程を含む。Tは、隣接するワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al,supra)。これらの最初の隣接ワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見出すための検索開始のための種(seed)の機能を果たす。累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、ワードヒットを各配列に沿って両方の方向に伸長する。ヌクレオチド配列についてはパラメーターM(適合残基対についてのリウォードスコア(reward score);常に0超)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に0未満)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列について、スコアリング行列を使用して、累積スコアを計算する。以下の場合に各方向でのワードヒットの伸長を中止する:累積アラインメントスコアがその達成された最大値から量Xまで低下する場合、1つまたは複数の負にスコアリングされた残基アラインメントの蓄積によって累積スコアが0以下になった場合、またはいずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定づける。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルト値としてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルト値としてワード長3および期待値(E)10、BLOSUM62スコアリング行列(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を使用する。
【0058】
「核酸」は、一本鎖形態または二本鎖形態およびその相補物のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーをいう。この用語は、公知のヌクレオチドアナログまたは修飾骨格残基または連鎖を含む核酸、基準核酸と類似の結合性を有する合成、天然、および非天然の核酸、および類似の様式で基準ヌクレオチドに代謝される核酸を含む。かかるアナログの例には、ホスホロチオアート、ホスホルアミダート、メチルホスホナート、キラル−メチルホスホナート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNAs)が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
他で示さない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異型(例えば、縮重コドン置換)および相補配列ならびに暗に示された配列を暗に含む。具体的には、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基に置換された配列の生成によって縮重コドン置換を行うことができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol Chem.260:2605−2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語「核酸」を、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと交換可能に使用する。
【0060】
特定の核酸配列はまた、「スプライスバリアント」を暗に含む。同様に、核酸によってコードされる特定のタンパク質は、その核酸のスプライスバリアントによってコードされる任意のタンパク質を暗に含む。名称によって示唆されるように、「スプライスバリアント」は、遺伝子の選択的スプライシング産物である。転写後、最初の核酸転写物を、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライシングすることができる。スプライスバリアントの産生機構は様々であるが、エクソンの選択的スプライシングが含まれる。リードスルー転写(read−through transcription)による同一核酸由来の別のポリペプチドも、本定義に含まれる。スプライシング反応の任意の産物(スプライス産物の組換え形態が含まれる)は、本定義に含まれる。カリウムチャネルスプライスバリアントの例は、Leicher,et al.,J.Biol.Chem.273(52):35095−35101(1998)で考察されている。
【0061】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうために本明細書中で交換可能に使用される。この用語を、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸であるアミノ酸ポリマーならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。
【0062】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸ならびにその後に修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基(例えば、ホモセリン、ノルリシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)に結合するα)を有する化合物をいう。かかるアナログは、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化合物をいう。
【0063】
アミノ酸を、本明細書中で、その一般に知られている三文字表記またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている一文字表記のいずれかによって示すことができる。ヌクレオチドを、同様に、その一般的に受け入れられている一文字表記によって示すことができる。
【0064】
「保存的に修飾された変異型」を、アミノ酸および核酸の両方に適用する。特定のアミノ酸配列に関して、保存的に修飾された変異型は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいうか、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列をいう。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一な核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、あるコドンによってアラニンが指定される全ての位置で、コードされるポリペプチドを変化させることなく、任意の記載の対応するコドンを変化させることができる。かかる核酸の変動(variation)は、「サイレント変動」であり、これは、保存的に修飾された変動の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書中の全核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレント変動を記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常唯一のメチオニンコドンであるAUGおよび通常唯一のトリプトファンコドンであるTGG以外)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができると認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変動は、実際のプローブ配列ではなく発現産物に関して記載の各配列に潜在する。
【0065】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中のアミノ酸の1つのアミノ酸または少数のアミノ酸を変化、付加、または欠失する核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列に対するそれぞれの置換、欠失、または付加が「保存的に修飾された変異型」であり、この変化により、アミノ酸が化学的に類似するアミノ酸と置換されることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を示す保存的置換表は、当該分野で周知である。かかる保存的に修飾された変異型を追加し、本発明の多型変異型、種間ホモログ、および対立遺伝子を排除しない。
【0066】
以下の8つの群は、それぞれ、相互に保存的に置換されるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照のこと)。
【0067】
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、または他の物理学的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで一般に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または、例えば放射性標識のペプチドへの組み込みによって検出可能になるか、ペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用されるハプテンおよびタンパク質が含まれる。
【0068】
用語「組換え」は、例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用する場合、細胞、核酸、タンパク質、または異種ベクターが核酸またはタンパク質の導入または未変性の核酸またはタンパク質の変化によって修飾されているか細胞がそのようにして修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の未変性(非組換え)形態内で見出されない遺伝子を発現するか、そうでなければ以上に発現されるか、過小発現されるか、全く発現されない未変性遺伝子を発現する。
【0069】
用語「異種」は、核酸の一部に関して使用する場合、核酸が天然で相互に同一の関係で見出されない2つまたはそれを超えるサブシーケンスを含むことを示す。例えば、核酸は、典型的には組換えによって産生され、新規の機能的核酸が作製されるように配置された無関係の遺伝子由来の2つまたはそれを超える配列を有する(例えば、一方の供給源由来のプロモーターおよび他方の供給源由来のコード領域)。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が天然で相互に同一の関係で見出されない2つまたはそれを超えるサブシーケンスを含むことを示す(例えば、融合タンパク質)。
【0070】
句「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」は、典型的には核酸の混合物中でプローブがその標的サブシーケンスとハイブリッド形成するが他の配列とハイブリッド形成しない条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、環境によって異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリッド形成する。核酸ハイブリッド形成のより詳細なガイドは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。一般に、ストリンジェントな条件を、定義したイオン強度pHで特定の配列の融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択する。Tmは、(定義したイオン強度、pH、および核濃度において)標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリッド形成する温度である(Tmで標的配列が過剰に存在する場合、平衡状態でプローブが50%を占める)。ホルムアミドなどの不安定化剤を添加してストリンジェントな条件を達成することもできる。選択的または特定のハイブリッド形成のために、正のシグナルはバックグラウンドの少なくとも2倍であり、好ましくは、バックグラウンドハイブリッド形成の10倍である。ストリンジェントなハイブリッド形成条件の例は、以下であり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDSにて42℃でインキュベーションまたは5×SSC、1%SDSにて65℃でインキュベーション、65℃での0.2×SSCおよび0.1%SDSによる洗浄。
【0071】
ストリンジェントな条件下で相互にハイブリッド形成しない核酸は、これらの核酸がコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、依然として実質的に同一である。例えば、遺伝暗号によって許容された最大コドン縮重を使用して核酸のコピーが作製する場合にこれが起こる。そのような場合、核酸は、典型的に、中ストリンジェントなハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する。例示的な「中ストリンジェントなハイブリッド形成条件」には、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSで37℃、および45℃の1×SSCでの洗浄が含まれる。正のハイブリッド形成は、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、別のハイブリッド形成および洗浄条件を使用して類似のストリンジェンシー条件を得ることができることを容易に認識する。ハイブリッド形成パラメーターの決定についてのさらなるガイドは、多数の参考文献(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel,et ai,John Wiley & Sons)に示されている。
【0072】
PCRについて、約36℃が低ストリンジェンシー増幅に典型的であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに応じて約32℃と48℃との間で変化し得る。高ストリンジェンシーPCR増幅について、約62℃が典型的であるが、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に応じて約50℃〜65℃の範囲であり得る。高および低ストリンジェンシー増幅の両方について典型的なサイクル条件は、90℃〜95℃で30秒間〜2分間の変性期、30秒〜2分間持続させるアニーリング期、および約72℃で1〜2分間の伸長期を含む。低および高ストリンジェンシー増幅反応についてのプロトコールおよびガイドラインは、例えば、Innis et al.(1990)PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.)に示されている。
【0073】
「抗体」は、抗原に特異的に結合し、認識する免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメント由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドをいう。認識された免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεに分類され、同様に、免疫グロブリンクラス(IgG,IgM,IgA,IgD、およびIgE)を定義する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性および親和性において最も重要であろう。
【0074】
例示的免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100〜110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を定義する。用語「可変軽鎖(VL)」および「可変重鎖(VH)」は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖をいう。
【0075】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンまたは種々のペプチダーゼでの消化によって産生された多数の十分に特徴づけられたフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、F(ab)’2(それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に連結した軽鎖であるFabの二量体)を産生する。F(ab)’2を穏やかな条件下で還元して、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を破壊し、それにより、F(ab)’2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は、本質的に、ヒンジ領域の一部を含むFabである(Fundamental Immunology(Paul ed.,3d ed.1993)を参照のこと)。種々の抗体フラグメントをインタクトな抗体の消化に関して定義する一方で、当業者は、かかるフラグメントを化学的または組換えDNA法の使用のいずれかによってde novoで合成することができることを認識するであろう。したがって、本明細書中で使用する場合、用語「抗体」には、全抗体の修飾によって産生された抗体フラグメント、組換えDNA法を使用してde novoで合成された抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定した抗体フラグメントも含まれる(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990)を参照のこと)。
【0076】
本発明および本発明の使用に適切な抗体(例えば、組換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体)の調製のために、当該分野で公知の多数の技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein,Nature 256:495−497(1975);Kozbor et ah,Immunology Today 4:72(1983);Cole et al.,pp.77−96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985);Coligan,Current Protocols in Immunology(1991);Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988);およびGoding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.1986)を参照のこと)。目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を、細胞からクローニングすることができる(例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、これを使用して組換えモノクローナル抗体を産生することができる)。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーを、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製することもできる。重鎖および軽鎖の遺伝子産物の無作為な組み合わせにより、異なる抗原特異性を有する抗体の巨大なプールを生成する(例えば、Kuby,Immunology(3rd ed.1997)を参照のこと)。単鎖抗体または組換え抗体の産生技術(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)を適用して、本発明のポリペプチドに対する抗体を産生することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物(他の哺乳動物など)を使用して、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現することができる(例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号,Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−13(1994);Fishwild el al.,Nature Biotechnology 14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);およびLonberg & Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照のこと)。あるいは、ファージディスプレイテクノロジーを使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFabフラグメントを同定することができる(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990);Marks et al.,Biotechnology 10:779−783(1992)を参照のこと)。抗体を二重特異性にすることもできる(すなわち、2つの異なる抗原を認識することができる)(例えば、WO93/08829号,Traunecker et al.,EMBO J.10:3655−3659(1991);およびSuresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと)。抗体はまた、ヘテロ抱合体(heteroconjugate)(例えば、2つの共有結合した抗体または免疫毒素)であり得る(例えば、米国特許第4,676,980号,WO91/00360号;WO 92/200373号;およびEP03089号を参照のこと)。
【0077】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化方法は、当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の抗体に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基を、しばしば、輸送残基といい、典型的には、輸送可変ドメインから採取する。ヒト化を、本質的に、Winter and co−workersの方法(例えば、Jones et al,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al,Science 239:1534−1536(1988)およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992))に従って、げっ歯類CDRまたはCDR配列の対応するヒト抗体の配列との置換によって行うことができる。したがって、かかるヒト化抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、これは、実質的にインタクトなヒト可変ドメイン未満が対応する非ヒト種由来の配列に置換されている。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基および恐らくいくつかのFR残基がげっ歯類抗体中の類似の部位由来の残基と置換されたヒト抗体である。
【0078】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるか変化したクラス、エフェクター機能、および/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新規の性質を付与する全く異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物など)に連結されるように定常領域またはその一部を変化、置換、または交換したか、(b)可変領域またはその一部を異なるまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化させるか、置換するか、交換した抗体分子である。本発明および本発明の使用に好ましい抗体には、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体が含まれる。
【0079】
1つの実施形態では、抗体を、「エフェクター」部分に抱合する。エフェクター部分は、かなりの数の分子(放射性標識または蛍光標識などの標識部分が含まれる)であり得るか、治療部分であり得る。1つの態様では、抗体はタンパク質の活性を調整する。かかるエフェクター部分には、抗腫瘍薬、毒素、放射性作用因子、サイトカイン、第2の抗体または酵素が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、本発明の抗体を、プロドラッグを細胞毒性薬に変換する酵素に連結する実施形態を提供する。
【0080】
免疫抱合体を、N−カドヘリンまたはLy6−E陽性細胞(特に、N−カドヘリンまたはLy6タンパク質を過剰発現する細胞)へのエフェクター部分のターゲティングに使用することができる。かかる相違は、試験サンプルおよびコントロールサンプルをほぼ同様にロードしたゲルのバンドを観察した場合に容易に明らかであり得る。細胞毒性薬の例には、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン(dihydroxy anthracin dione)、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アルブリン(abrin)、糖質コルチコイド、他の化学療法薬、および放射性同位体が含まれるが、これらに限定されない。適切な検出可能なマーカーには、放射性同位体、蛍光化合物、生体発光化合物、化学発光化合物、金属キレーター、または酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLy6−Eに対する抗体を提供する。N−カドヘリンまたはLy6−E抗体を全身に単独またはエフェクター部分と抱合して使用して、癌(例えば、前立腺癌または膀胱癌)を治療することができる。リシンなどの毒剤と抱合したN−カドヘリンまたはLy6−E抗体および非抱合抗体は、N−カドヘリンまたはLy6−E保有前立腺癌細胞を天然にターゲティングする有用な治療薬であり得る。かかる抗体は、侵襲性の遮断で有用でありうる。本発明の使用に適切なN−カドヘリン抗体には、GC4 1H7、1F12、2B3が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
さらに、本発明の任意のモノクローナル抗体の抗原結合領域を含む本発明の組換えタンパク質を使用して、癌を治療することができる。かかる状況では、組換えタンパク質を抗原結合領域を、治療活性を有する第2のタンパク質の少なくとも機能的に活性な部分に連結する。第2のタンパク質には、酵素、リンホカイン、オンコスタチン、または毒素が含まれるが、これらに限定されない。適切な毒素には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、リシン、アルブリン、糖質コルチコイド、および放射性同位体が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
治療薬の抗体への抱合技術は周知である(例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review” in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475−506(1985);およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと)。
【0084】
句、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または抗体「と特異的に(または選択的に)免疫反応性を示す」は、タンパク質またはペプチドに関する場合、しばしばタンパク質および他の生体物質(biologics)の異種集団中のタンパク質の存在を決定する結合反応をいう。したがって、指定の免疫アッセイ条件下で、指定の抗体は、特定のタンパク質と、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10〜100倍を超えて結合する。かかる条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパクに対するその特異性について選択される抗体を必要とする。例えば、選択した抗原と特異的に免疫反応性を示すが、他のタンパク質では示さないポリクローナル抗体のみが得られるようにポリクローナル抗体を選択することができる。他の分子と交差反応する抗体を取り去ることによってこの選択を行うことができる。種々の免疫アッセイ形式を使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性を示す抗体を選択することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイを日常的に使用して、タンパク質と特異的に免疫反応性を示す抗体を選択する(例えば、特異的免疫反応性を決定するために使用することができる免疫アッセイ形式および条件の説明については、Harlow & Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manual(1998)を参照のこと)。
【0085】
「治療有効用量または量」は、本明細書中で、投与効果が得られる用量を意味する。正確な用量および処方は、治療目的に依存し、当業者は公知の技術を使用して確認可能であろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1−3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Gennaro,Editor(2003)およびPickar,Dosage Calculations(1999)を参照のこと)。
【0086】
「薬学的に許容可能な塩」または「薬学的に許容可能なキャリア」は、本明細書中に記載の化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基を使用して調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、原液または適切な不活性溶媒中でかかる化合物の中性形態を十分な量の所望の塩基と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な塩基付加塩の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、マグネシウム塩、または類似の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、原液または適切な不活性溶媒中でかかる化合物の中性形態を十分な量の所望の酸と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨード化水素、亜リン酸(phosphorous acid)のような無機酸由来の酸付加塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、およびメタンスルホン酸のような比較的非毒性の有機酸由来の塩が含まれる。アルギン酸などのアミノ酸の塩およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al.,Journal of Pharmaceutical Science 66:1−19(1977)を参照のこと)。本発明の一定の特異的化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩に変換することが可能な塩基性および酸性の官能基の両方を含む。当業者に公知の他の薬学的に許容可能なキャリアが、本発明に適切である。
【0087】
化合物の中性形態を、従来の様式での塩の塩基または酸との接触および親化合物の単離によって再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒中の溶解性などの一定の物理的性質が種々の塩形態と異なるが、そうでなければ、塩は本発明の目的の化合物の親形態と等価である。
【0088】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書中に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学変化を容易に受けて本発明の化合物が得られる化合物である。さらに、プロドラッグを、ex vivo環境下で化学的方法または生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、適切な酵素または化学試薬を含む経皮パッチリザーバに含めた場合、プロドラッグを本発明の化合物にゆっくり変換することができる。
【0089】
本発明の一定の化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態(水和形態が含まれる)で存在することができる。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に含まれることが意図される。本発明の一定の化合物は、多結晶形態または無定形形態で存在することができる。一般に、全物理的形態は、本発明によって意図される使用について等価であり、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0090】
本発明の一定の化合物は、非対称炭素原子(光学中心)または二重結合を保有し、ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、および各異性体は全て本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0091】
上皮−間葉転換(EMT)は、上皮腫瘍細胞による間質特性の獲得をいう。癌では、EMTは、浸潤および運動性挙動に関連し、転移の基礎をなす中心的過程であり得る。EMTは、予後不良に関連し、複数の転写因子(SNAIL、SLUG、およびTWIST)によって媒介される。
【0092】
E−カドヘリンは、一般に浸潤性および転移性の固形腫瘍で喪失する上皮細胞−細胞接着に関与する細胞表面タンパク質である。
詳細な実施形態
本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌、特に、泌尿生殖器癌(前立腺癌および/または膀胱癌が含まれる)のリスクがある個体を診断し、予後を得る方法を提供する。本方法は、一般に、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させる工程、およびN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して試験組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の有無を決定する工程を含む。典型的には、組織サンプルは血清であるが、生検、特に、泌尿生殖器組織(前立腺組織または膀胱組織が含まれる)由来の組織でもあり得る。通常、抗体はモノクローナル抗体である。癌を有することが知られていない個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、より高いレベルのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質が検出される場合(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、またはそれを超える)、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陽性と診断される。例えば、当該分野で公知の標準的なELISA技術を使用して、検出方法を実施することができる(Gosling,Immunoassays:A Practical Approach,2000,Oxford University Pressに概説)。例えば、放射性同位体、蛍光標識、酵素、または当該分野で公知の任意の他の検出可能な標識での一次抗体または二次抗体の標識によって検出する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−E核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触させる工程、サンプル中でN−カドヘリンまたはLY6−E核酸を増幅する工程、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して試験組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の有無を決定する工程による、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌、特に、前立腺癌または膀胱癌のリスクがある個体を診断し、予後を得る方法を提供する。さらに、通常、組織サンプルは血清であるが、生検、特に、泌尿生殖器組織(前立腺組織または膀胱組織が含まれる)由来の組織でもあり得る。癌を有することが知られていない個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、より高いレベルのN−カドヘリンまたはLY6−E転写RNAが検出される場合、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陽性と診断される。
【0094】
本発明はまた、治療有効量のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の結合を阻害する化合物を癌腫瘍組織の細胞上のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体にそれぞれ投与する工程によるによるN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌の癌療法に対する応答を改善する方法を提供する。いくつかの実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合を阻害する方法を、別の抗癌療法(例えば、耐性、腫瘍進行、および転移の逆転のための公知の化学療法、免疫療法、および放射線療法が含まれる)と同時に行う。
【0095】
本発明は、さらに、腫瘍組織の細胞上のN−カドヘリンまたはLY6−E受容体へのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のそれぞれの結合を阻害する工程を含む、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する腫瘍の成長を阻害し、退行を促進する方法を提供する。N−カドヘリンまたはLY6−E受容体へのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のそれぞれの結合を阻害する十分量の化合物を必要とする個体に投与することによって本方法を行うことができる。いくつかの実施形態では、化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−E受容体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の転写または翻訳を防止する。本方法は、特に、前立腺癌および膀胱癌の治療で使用する。いくつかの実施形態では、化合物は、ポリペプチド(N−カドヘリンまたはLY6−Eポリペプチドの抗体、アナログ、またはフラグメントが含まれる)を含む。
【0096】
本方法は、特に、前立腺癌および膀胱癌の診断、予後、および治療で適用される。一定の実施形態では、本方法は、耐ホルモン性癌または治療耐性癌に適用される。一定の実施形態では、本方法は、転移性癌に適用される。例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質および/またはmRNAの差分発現の比較を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有する固体の癌の病期を決定することができる。
【0097】
治療は、一般に、有効用量の静脈注射(IV)などの許容可能な投与経路による抗N−カドヘリンまたは抗LY6−E抗体、免疫抱合体、インヒビター、およびsiRNA調製物の反復投与を含むであろう。投薬量は、当業者に一般に認識される種々の要因(癌の型の重症度、悪性度、または癌の病期、使用薬剤の結合親和性および半減期、患者におけるN−カドヘリンまたはLY6−E発現の程度、分断N−カドヘリンまたはLY6−E抗原の循環範囲、所望の定常状態の抗体濃度レベル、治療頻度、および本発明の治療方法と組み合わせて使用される化学療法薬の影響が含まれるが、これらに限定されない)に依存するであろう。典型的な1日量は、約0.1〜100mg/kgの範囲であり得る。10〜500mgのmAbまたは免疫抱合体/週の範囲の用量が有効且つ十分に許容され得るが、さらにより高い週用量が適切および/または十分に許容され得る。適切な用量の定義における主な決定要因は、特定の状況において治療有効量であるために必要な特定の薬剤の量である。腫瘍の阻害または退行を達成するために反復投与が必要であり得る。初期負荷用量はより高くて良い。初期負荷用量を、注入として投与することができる。初期用量が十分に許容された場合、周期的維持用量を同様に投与することができる。
【0098】
薬剤の直接投与も可能であり、一定の状況で有利であり得る。例えば、膀胱癌治療のために、薬剤を、膀胱に直接注射することができる。膀胱に直接投与する薬剤が患者から迅速にクリアランスされるので、抗原性の有意な合併症を引き起こすことなく非ヒト抗体またはキメラ抗体を有効に使用することが可能である。
【0099】
本発明は、さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメントを含むように処方されたワクチンを提供する。抗癌療法で使用するための体液性免疫および細胞性免疫を生成するためのワクチンにおける腫瘍抗原の使用は、当該分野で周知であり、例えば、ヒトPSMAおよびげっ歯類PAP免疫原を使用した前立腺癌で使用されている(Hodge et al.,1995,Int.J.Cancer 63:231−237;Fong et al.,1997,J.Immunol.159:3113−3117)。かかる方法を、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメント、またはN−カドヘリンまたはLY6−Eコード核酸分子およびN−カドヘリンまたはLY6−E免疫原を発現するか適切に提示することができる組換えベクターの使用によって容易に実施することができる。
【0100】
例えば、ウイルス遺伝子送達系を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eコード核酸分子を送達することができる。本発明のこの態様の実施で使用することができる種々のウイルス遺伝子送達系には、ワクシニア、カナリア痘ウイルス、アデノウイルス、インフルエンザ、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、シンドビスウイルス が含まれるが、これらに限定されない(Restifo,1996,Curr.Opin.Immunol.8:658−663)。抗腫瘍応答を誘導するために患者に導入された(例えば、筋肉内に)N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメントをコードする裸のDNAの使用によって非ウイルス送達系も使用することもできる。1つの実施形態では、全長ヒトN−カドヘリンまたはLY6−E cDNAを使用することができる。別の実施形態では、特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープをコードするN−カドヘリンまたはLY6−E核酸分子を使用することができる。指定のHLA対立遺伝子に任意選択的に結合することができるN−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質内のペプチドを同定するための特定のアルゴリズム(例えば、Epimer,Brown University)を使用してCTLエピトープを決定することができる。
【0101】
種々のex vivoストラテジーを使用することもできる。1つのアプローチは、N−カドヘリンまたはLY6−E抗原を患者の免疫系に提示するための樹状細胞の使用を含む。樹状細胞は、MHCクラスIおよびII、B7共刺激因子、およびIL−12であり、したがって、高度に特殊化した抗原提示細胞である。前立腺癌では、N−カドヘリンまたはLY6−Eのペプチドでパルスした自家樹状細胞を使用して、前立腺癌患者の免疫系を刺激することができる(Tjoa et al.,1996,Prostate 28:65−69;Murphy et al.,1996,Prostate 29:371− 380)。樹状細胞を使用して、MHCクラスIおよびII分子の状況でN−カドヘリンまたはLY6−EペプチドをT細胞に提示することができる。1つの実施形態では、自家樹状細胞を、MHC分子に結合することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eペプチドでパルスする。別の実施形態では、樹状細胞を、完全なN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質でパルスする。さらに別の実施形態は、当該分野で公知の種々の実施ベクター(implementing vector)(アデノウイルス(Arthur et al.,1997,Cancer Gene Ther.4:17−25)、レトロウイルス(Henderson et al.,1996,Cancer Res.56:3763−3770)、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、DNAトランスフェクション(Ribas et al.,1997,Cancer Res.57:2865−2869)、および腫瘍由来RNAトランスフェクション(Ashley et al.,1997,J.Exp.Med.186:1177−1182))を使用して樹状細胞中でN−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子の過剰発現を操作する工程を含む。
【0102】
抗イディオタイプ抗N−カドヘリンまたは抗LY6−E抗体を、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質をそれぞれ発現する細胞に対して免疫応答を誘導するためのワクチンとして抗癌療法で使用することもできる。具体的には、抗イディオタイプ抗体の生成は、当該分野で周知であり、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質上のエピトープをそれぞれ模倣する抗イディオタイプ抗N−カドヘリンまたは抗LY6−E抗体を生成するように容易に適合させることができる(例えば、Wagner et al.,1997,Hybridoma 16:33−40;Foon et al.,1995,J Clin Invest 96:334−342;Herlyn et al.,1996,Cancer Immunol Immunother 43:65−76)。かかる抗イディオタイプ抗体を、腫瘍抗原に指向する他の抗イディオタイプ抗体を使用して現在実施されている抗イディオタイプ療法で使用することができる。
【0103】
遺伝子免疫化法を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eを発現する癌細胞に指向する予防用または治療用の体液性および細胞性免疫応答を得ることができる。本明細書中に記載のN−カドヘリンまたはLY6−EコードDNA分子を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原をコードするDNAおよび適切な調節配列を含む構築物を、個体の筋肉または皮膚に直接注射し、その結果、筋肉細胞または皮膚細胞が構築物を取り込み、コードされたN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原を発現させることができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原を、細胞表面タンパク質として発現するか分泌することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原の発現により、前立腺癌に対する予防用または治療用の体液性免疫および細胞性免疫が得られる。当該分野で公知の種々の予防用および治療用遺伝子免疫化技術を使用することができる(概説として、インターネットアドレスwww.genweb.comに公開された情報および参考文献を参照のこと)。
【0104】
本発明は、さらに、その細胞表面上に複数のN−カドヘリンまたはLY6−E抗原を発現する細胞の細胞活性(例えば、細胞の増殖、活性化、または増殖)を阻害する方法を提供する。本方法は、本発明の免疫抱合体(例えば、不均一または均一な混合物)を細胞と反応させ、それにより、細胞表面上のN−カドヘリンまたはLY6−E抗原が免疫抱合体と複合体を形成する工程を含む。細胞表面上のN−カドヘリンまたはLY6−E抗原数が増加するほど、それぞれ使用することができるN−カドヘリンまたはLY6−E−抗体複合体数が増加する。N−カドヘリンまたはLY6−E−抗体複合体数が増加するほど、阻害される細胞活性が増加する。
【0105】
不均一な混合物は、異なるまたは同一のエピトープを認識するN−カドヘリンまたはLY6−E抗体を含み、この各抗体は同一または異なる治療薬に抱合している。均一な混合物は、同一のエピトープを認識する抗体を含み、この各抗体は同一の治療薬に抱合している。
【0106】
本発明は、さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合をそれぞれ遮断することによるN−カドヘリンまたはLY6−Eの生物活性を阻害する方法を提供する。本方法は、N−カドヘリンまたはLY6−E−免疫抱合体またはN−カドヘリンまたはLY6−E−抗体複合体を許容する条件下で、一定量のN−カドヘリンまたはLY6−Eを本発明の抗体または免疫抱合体と接触させ、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eのその癌度との結合を遮断し、N−カドヘリンまたはLY6−Eの活性を阻害する工程を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明は、癌細胞の成長を阻害するのに有効な量のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を認識して結合する抗体またはそのフラグメントで被験体を処置するか癌細胞と接触させる工程による、癌、特にN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を治療するかN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、前立腺癌細胞または膀胱癌である。接触させる抗体は、モノクローナル抗体および/またはキメラ抗体であり得る。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体であるか、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。さらなる実施形態では、抗体フラグメントは、Fab、F(ab)2、またはFvを含む。他の実施形態では、フラグメントは、抗原結合領域を有する組換えタンパク質を含む。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、細胞の阻害に十分な量で本発明の免疫抱合体のいずれか1つまたは組み合わせを細胞と反応させる工程による、癌、特にN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を治療するかN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を発現または過剰発現する細胞を選択的に阻害する方法を提供する。かかる量には、細胞を死滅させる量または細胞の成長または増殖を阻害するのに十分な量が含まれる。上記で考察するように、用量および投薬計画は、N−カドヘリンまたはLY6−Eに関連する疾患または障害の性質、その集団、抗体が指向する位置、特定の免疫毒素の特徴、および患者に依存するであろう。例えば、免疫抱合体の量は、0.1〜200mg/kg患者体重の範囲であり得る。免疫抱合体は、治療薬に結合した抗N−カドヘリンまたはLY6−E抗体またはリガンドを含むことができる。治療薬は細胞毒性薬であり得る。細胞毒性薬は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アルブリン、アルブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α−サルシン(alpha−sarcin)、ゲロニンマイトゲリン(ゲロニン mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター(sapaonaria officinalis inhibitor)、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択することができる。治療薬は、放射性同位体であり得る。治療同位体は、212Bi、131I、111In、90Y、および186Reからなる群から選択することができる。
【0109】
上記実施形態のいずれかでは、化学療法薬および/または放射線療法をさらに投与することができる。いくつかの実施形態では、患者にホルモンアンタゴニスト療法も受けさせる。患者の抗体または抗体フラグメントとの接触を、患者への抗体の静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、または皮内投与によって行うことができる。いくつかの実施形態では、患者は、泌尿生殖器癌(例えば、膀胱癌、前立腺癌)を有する。上記のいくつかの実施形態では、患者は前立腺癌を罹患し、患者にホルモン除去療法を任意選択的にさらに受けさせる。いくつかの実施形態では、接触は、抗体を癌または癌の転移に直接投与する工程を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、小分子である細胞毒性薬を有する。マイタンシン、マイタンシノイド、サポリン、ゲロニン、リシン、またはカリチアマイシンおよびそのアナログまたは誘導体などの毒素も適切である。抗N−カドヘリンまたはLY6−E抗体に抱合することができる他の細胞毒性薬には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、および5−フルオロウラシルが含まれる。酵素活性毒素およびそのフラグメントも使用することができる。放射性エフェクター部分を、公知の方法で抱合体(例えば、二官能性リンカー、融合タンパク質)に組み込むことができる。本発明の抗体を、プロドラッグを活性化学療法薬に変換する酵素であるエフェクター部分に抱合することもできる。WO88/07378号、米国特許第4,975,278号;および米国特許第6,949,245を参照のこと。抗体または免疫抱合体を、非タンパク質ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー)に任意選択的に連結することができる。
【0111】
抗体と細胞毒性薬との抱合体を、当該分野で周知の方法を使用して作製することができる(米国特許第6,949,245号を参照のこと)。例えば、種々の二官能性タンパク質カップリング剤(N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジピミド酸ジメチル塩酸HCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トルエン2,6−ジイソシアナートなど)、およびビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)など)を使用して抱合体を作製することができる。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al.Science 238:1098(1987)に記載のように調製することができる。14C標識イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のための例示的キレート剤である。WO94/11026号を参照のこと。リンカーは、細胞中での細胞傷害薬の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari ct al.Cancer Research 52:127−131(1992))を使用することができる。
投与および配合方法
公知の方法(静脈内投与(例えば、ボーラスとしてか長期間にわたる持続注入)、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路(intracerobrospinal)、皮下経路、関節内経路、滑液嚢内経路、鞘内経路、経口経路、局所経路、または吸入経路など)に従って、抗N−カドヘリンまたはLy6−E抗体または免疫抱合体をヒトに投与する。抗体の静脈内投与または皮下投与が好ましい。投与は、局所または全身であり得る。
【0112】
投与用の組成物は、一般に、薬学的に許容可能なキャリア(好ましくは、水性キャリア)に溶解した本明細書中に記載の薬剤(例えば、N−カドヘリンおよびLy6−Eインヒビター、N−カドヘリンおよびLy6−E抗体および免疫抱合体、N−カドヘリンおよびLY6−E siRNAおよびそのベクター)を含むであろう。種々の水性キャリア(例えば、緩衝化生理食塩水など)を使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に、望ましくない物質は含まれない。これらの組成物を、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。組成物は、pH調整剤および緩衝剤などの生理学的条件に近づけるのに必要な薬学的に許容可能な補助剤および毒性調整剤(toxicity adjusting agent)など(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなど)を含むことができる。これらの処方物中の活性成分(active agent)の濃度は、広範に変化することができ、主に、選択された特定の投与様式および患者のニーズにしたがって、流動物の体積、粘度、および体重に基づいて選択するであろう。
【0113】
したがって、静脈内投与のための典型的な薬学的組成物は、薬剤に応じて変化するであろう。非経口投与可能な組成物の実際の調製方法は、当業者に公知であるか明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)などの刊行物により詳細に記載されている。
【0114】
薬学定組成物を、投与方法に応じて種々の単位投薬形態で投与することができる。例えば、経口投与に適切な単位投薬形態には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、およびロゼンジが含まれるが、これらに限定されない。経口投与した場合、抗体を消化から保護すべきであると認識される。典型的には、酸性加水分解および酵素加水分解への耐性を付与するための組成物との分子の複合体化または適切な耐性を示すキャリア(リポソームまたは保護バリアなど)への分子のパッケージングのいずれかによってこれを行う。消化からの薬剤の保護手段は、当該分野で周知である。
【0115】
特に、本発明と共に使用するための抗体および免疫抱合体およびインヒビターの薬学的処方物を、所望の純度を有する抗体と任意選択的な薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤との混合によって調製することができる。かかる処方物は、凍結乾燥処方物または水溶液であり得る。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用した投薬量および濃度でレシピエントに非毒性である。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、酢酸、リン酸、クエン酸、および他の有機酸、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、防腐剤(低分子量ポリペプチド)、タンパク質(血清アルブミンまたはゼラチンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸、モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる)、キレート剤、イオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、錯塩(例えば、Zn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性剤であり得る。抗体を、0.5〜200mg/mlまたは10〜50mg/mlの濃度で処方することができる。
【0116】
処方物はまた、さらなる活性化合物(化学療法薬、細胞毒性薬、サイトカイン、成長阻害剤、および抗ホルモン剤が含まれる)を提供することもできる。有効成分を、徐放性調製物(例えば、固体疎水性ポリマー(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート))、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド)の半透性マトリックス)として調製することもできる。抗体および免疫抱合体を、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製したマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセルまたはポリ−(メチルメタクリラート)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに取り込むこともできる。
【0117】
組成物を、治療または予防上の処置のために投与することができる。治療への応用では、組成物を、「治療有効用量」で罹患患者に投与する。この用途に有効な量は、疾患の重症度および患者の一般的な健康状態に依存するであろう。組成物の単回投与または複数回投与を、患者の必要性および許容に応じた投薬量および頻度に応じて行うことができる。本発明の目的のための「患者」または「被験体」には、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳動物が含まれる。したがって、本方法を、ヒト療法および動物の両方に適用可能である。好ましい実施形態では、患者は、哺乳動物、好ましくは霊長類であり、最も好ましくは、患者はヒトである。他の公知の癌療法を、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明に従って使用される組成物を使用して、細胞を他の癌治療薬(5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、およびメトトレキサートなど)にターゲティングするか感作することもできる。
【0118】
他の実施形態では、本発明の方法を、他の癌療法(例えば、根治的前立腺適除術)、放射線療法(外部ビームまたは近接照射療法)、ホルモン療法(例えば、精巣摘除術、テストステロン産生を抑制するためのLHRH−アナログ療法、抗アンドロゲン療法)、または化学療法と共に使用する。根治的前立腺適除術は、全前立腺およびいくらかの周辺組織の切除を含む。一般に、癌が組織を超えて拡大していないと考えられる場合にこの治療を使用する。放射線療法は、一般に、依然として前立腺に限定されているか近接組織に拡大している前立腺癌を治療するために使用される。疾患がより進行している場合、照射を使用して、腫瘍サイズを減少させることができる。ホルモン療法は、しばしば、前立腺癌が前立腺を超えて拡大しているか再発している患者に使用される。ホルモン療法の目的は、男性ホルモンであるアンドロゲンのレベルを低下させ、それにより、前立腺癌を萎縮させるかその成長をより遅くすることである。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストは、テストステロン産生を減少させる。これらの薬剤を、月1回またはそれより長い間隔で注射することができる。2つのかかるアナログは、ロイプロリドおよびゴセレリンである。抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、ビカルタミド、およびニルタミド)を使用することもできる。全アンドロゲン遮断(total androgen blockade)は、精巣摘除術またはLHRHアナログと組み合わせた抗アンドロゲン剤の使用に関するものであり、その組み合わせをいう。化学療法は、前立腺癌が前立腺の外側に拡大し、ホルモン療法に失敗した患者に対する1つの選択肢である。これは、全ての癌細胞を破壊することは期待されないが、腫瘍成長を遅延し、痛みを軽減することができる。ホルモン療法を使用した治療後に元に戻るか成長および拡大し続けている前立腺癌の治療で使用されるいくつかの化学療法薬には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エストラムスチン、エトポシド、ミトキサントロン、ビンブラスチン、およびパクリタキセルが含まれる。2つまたはそれを超える薬物をしばしば共に投与して、癌細胞が化学療法に耐性を示すようになる可能性を軽減する。小細胞癌は珍しい前立腺癌型であり、ホルモン療法よりも化学療法に反応する可能性が高い。
【0119】
いくつかの実施形態では、「心臓防御薬(心臓防御薬)」を、本発明で使用されるN−カドヘリンまたはLY6−E抗体、N−カドヘリンまたはLy6−E結合インヒビター、またはN−カドヘリンまたはLy6−E siRNA分子と共に投与する(米国特許第6,949,245号を参照のこと)。心臓防御薬は、患者への薬物(アントラサイクリン系抗生物質など)の投与に関連する心筋機能障害(すなわち、心筋症および/または鬱血性心不全)を防止または軽減する化合物または組成物である。心臓防御薬は、例えば、フリーラジカル媒介心臓毒作用を遮断または軽減するか、酸化的ストレス損傷を防止または軽減することができる。本定義に含まれる心臓防御薬の例には、以下が含まれる:鉄−キレート剤であるデクスラゾキサン(ICRF−187)(Seifert et al.The Annals of Pharmacotherapy 28:1063−1072(1994));脂質低下薬および/または抗酸化剤(プロブコール(Singal ct al.J.Mol.Cell Cardiol.27:1055−1063(1995))など);アミホスチン(アミノチオール 2−[(3−アミノプロピル)アミノ]エタンチオール−二水素リン酸エステル(WR−2721とも呼ばれる)、およびWR−1065と呼ばれるその脱リン酸化細胞取り込み形態)、ならびにS−3−(3−メチルアミノプロピルアミノ)プロピルホスホロ−チオ酸(WR−151327)(Green et al.Cancer Research 54:738−741(1994)を参照のこと);ジゴキシン(Bristow,M.R.In:Bristow M R,ed.Drug−Induced Heart Disease.New York:Elsevier 191−215(1980));β遮断薬(メトプロロール(Hjalmarson et al.Drugs 47:Suppl 4:31−9(1994)およびShaddy et al.Am.Heart J.129:197−9(1995))など);ビタミンE;アスコルビン酸(ビタミンC);フリーラジカル消去剤(オレアノール酸、ウルソル酸、およびN−アセチルシステイン(NAC)など);スピントラップ化合物(α−フェニル−tert−ブチルニトロン(PBN)など);(Paracchini et al.,Anticancer Res.13:1607−1612(1993));セレン含有有機化合物(P251(Elbesen)など)など。
【0120】
組み合わせ投与は、個別の処方物または単一の薬学的処方物を使用した同時投与およびいずれかの順序での連続的投与を意図し、両方(または全ての)活性成分がその生物活性を同時に発揮する時間間隔が好ましい。
【0121】
N−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質の発現および/または機能を間接的または直接的に調整すると同定された分子および化合物は、N−カドヘリンまたはLy6−Eをそれぞれ過剰発現する癌の治療に有用であり得る。N−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質モジュレーターを、単独で投与するか、従来の化学療法、放射線療法、または免疫療法および現在開発中の両方と組み合わせて同時投与することができる。
【0122】
経口投与に適切な処方物は、(a)溶液(水、生理食塩水、またはPEG400などの希釈剤に懸濁した有効量のパッケージングされた核酸など)、(b)液体、固体、顆粒、またはゼラチンとして所定量の有効成分をそれぞれ含むカプセル、サシェ、または錠剤、(c)適切な液体の懸濁液、および(d)適切な乳濁液からなり得る。錠剤形態は、1つまたは複数のラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、防腐剤、香味物質、色素、崩壊剤、および薬学的に適合可能なキャリアを含むことができる。ロゼンジ形態は、風味を付けた(例えば、スクロース)有効成分、不活性基剤(ゼラチンおよびグリセリン)中に有効成分を含む香剤、または有効成分に加えて当該分野で公知のキャリアを含むスクロースおよびアカシア乳濁液、およびゲルなどを含むことができる。
【0123】
選択した化合物を、単独または他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアゾール処方物にすることができる(すなわち、この処方物を「噴霧する」ことができる)。エアゾール処方物を、加圧した許容可能な噴射剤(ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および窒素など)に入れることができる。
【0124】
直腸投与に適切な処方物には、例えば、座剤用基剤と共にパッケージングした核酸からなる座剤が含まれる。適切な座剤用基剤には、天然または合成のトリグリセリドまたはパラフィン炭化水素が含まれる。さらに、選択した化合物と基剤(例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、およびパラフィン炭化水素が含まれる)との組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。
【0125】
例えば、関節内(関節中)経路、静脈内経路、筋肉内経路、腫瘍内経路、皮内経路、腹腔内経路、および皮下経路などによる非経口投与に適切な処方物には、水性および非水性の等張滅菌注射液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および処方物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含むことができる)および水性および非水性の滅菌懸濁液(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含むことができる)が含まれる。本発明の実施では、組成物を、例えば、静脈内注入、経口、局所、腹腔内、膀胱内、または鞘内に投与することができる。非経口投与、経口投与、および静脈内投与は、好ましい投与方法である。化合物の処方物を、単位用量または複数回用量の密封容器(アンプルおよびバイアルなど)に入れることができる。
【0126】
注射液および懸濁液を、上述の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。ex vivo療法のための核酸を形質導入された細胞を、上記のように静脈内または非経口投与することもできる。
【0127】
薬学的調製物は、単位投薬形態であることが好ましい。かかる形態では、調製物を、適量の活性成分を含む単位用量にさらに分割する。単位投薬形態は、パッケージングされた調製物、個別の量の調製物を含むパッケージ(バイアルまたはアンプル中にパッケージングされた錠剤、カプセル、粉末など)であり得る。また、単位投薬形態は、カプセル、錠剤、カシェ、またはロゼンジ自体であり得るか、適切な数のこれらのいずれかを含むパッケージングされた形態であり得る。組成物はまた、必要に応じて、他の適合可能な治療薬を含むことができる。
【0128】
好ましい薬学的調製物は、任意選択的に1つまたは複数の化学療法薬または免疫療法薬と組み合わせた1つまたは複数の活性なN−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質モジュレーターを含む徐放性処方物を送達させる。典型的には、N−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターを、他の細胞傷害性癌療法(化学療法、放射線療法、免疫療法 およびホルモン療法が含まれる)に対する腫瘍細胞の感受性を増大させる感作物質として治療的に投与する。
【0129】
癌治療のための治療的用途では、本発明の薬学的方法で使用されるN−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターまたはインヒビターを、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg/日で投与する。約0.01mg/kg〜約500mg/kg、約0.1mg/kg〜約200mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg、または約10mg/kg〜約50mg/kgの1日量範囲を使用することができる。しかし、投薬量を、患者の要件、治療を受ける容態の重症度、および使用した化合物に応じて変化させることができる。例えば、特定の患者で診断された癌の型および病期を考慮して、投薬量を経験的に決定することができる。本発明の文脈における患者への投与量は、長期にわたって患者に有利な治療反応をもたらすのに十分でなければならない。用量のサイズも、特定のベクターの投与に伴う任意の副作用の存在、性質、および範囲または特定の患者における形質導入細胞の型によって決定する。特定の状況に適切な投薬量の決定は、当業者の範囲内に含まれる。一般に、治療を、化合物の至適用量より少量の投薬量から開始する。その後、環境下で至適効果に到達するまで少しずつ増加させることによって投薬量を増加させる。便宜上、総1日投薬量を分割し、必要に応じて、日中にその一部を投与する。
【0130】
本発明で使用される薬学的調製物(例えば、N−カドヘリンまたはLy6−E siRNAs、N−カドヘリンまたはLy6−E抗体、N−カドヘリンまたはLy6−Eワクチン、N−カドヘリンまたはLy6−Eインヒビター、および免疫抱合体)を、典型的には、哺乳動物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物が含まれる)に投与する。本発明を使用して治療される非ヒト哺乳動物には、ペット(domesticated animal)(すなわち、イヌ、ネコ、マウス、げっ歯類、およびウサギ)および家畜(agricultural animal)(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ)が含まれる。
N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のモジュレーターのアッセイ
N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の調整および細胞(例えば、腫瘍細胞)増殖の対応する調整を、種々のin vitroおよびin vivoアッセイ(細胞ベースのモデルが含まれる)を使用して評価することができる。かかるアッセイを使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のインヒビターおよびアクチベーターを試験し、その結果、細胞増殖のインヒビターおよびアクチベーター(化学療法の感受性および毒性のモジュレーターが含まれる)を試験することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のかかるモジュレーターは、病理学的細胞増殖に関連する障害(例えば、癌)の治療に有用である。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のモジュレーターを、組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−E、好ましくはヒトN−カドヘリンまたはLY6−Eのいずれかを使用して試験する。
【0131】
組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を発現する細胞での細胞増殖調整の測定を、本明細書中に記載のように、種々のアッセイを使用して、in vitro、in vivo、およびex vivoで行うことができる。活性(例えば、キナーゼ活性などの酵素活性)、細胞増殖、またはリガンド結合(例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体)に影響を及ぼす適切な物理的、化学的、または表現型の変化を使用して、本発明のポリペプチドに及ぼす試験化合物の影響を評価することができる。インタクトな細胞または動物を使用して機能的影響を決定する場合、種々の影響(リガンド結合、キナーゼ活性、既知および特徴づけられていない遺伝子マーカーの両方の転写の変化(例えば、ノーザンブロット)、細胞代謝の変化、細胞増殖に関連する変化、細胞表面マーカー発現、DNA合成、マーカーおよび色素希釈アッセイ(例えば、GFPおよび細胞トラッカーアッセイ)、接触インヒビター、ヌードマウスにおける腫瘍成長など)を測定することもできる。
in vitroアッセイ
N−カドヘリンまたはLY6−E調整活性を有する化合物を同定するためのアッセイを、in vitroで行うことができる。かかるアッセイは、全長N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質、その変異型(例えば、図6および7をそれぞれ参照のこと)、その変異体、またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のフラグメントを使用することができる。精製した組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を、本発明のin vitro法で使用することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に加えて、組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質は、細胞溶解物または細胞膜の一部であり得る。下記のように、結合アッセイは、固体状態または可溶性状態のいずれかであり得る。好ましくは、タンパク質または膜を、固体支持体に共有結合または非共有結合する。しばしば、本発明のin vitroアッセイは、非競合的または競合的な基質またはリガンド結合または親和性アッセイであある。他のin vitroアッセイは、タンパク質の分光学的変化(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的変化(例えば、形状)、クロマトグラフの変化、または溶解性の変化の測定を含む。他のin vitroアッセイには、酵素活性アッセイ(リン酸化または自己リン酸化アッセイなど)が含まれる。
【0132】
1つの実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメントを潜在的モジュレーターと接触させ、適切な期間インキュベートする高処理結合アッセイを行う。1つの実施形態では、潜在的モジュレーターを、固体支持体に結合させ、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を添加する。別の実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を、固体支持体に結合させる。下記のように、広範な種々のモジュレーター(有機小分子、ペプチド、抗体、およびN−カドヘリンまたはLY6−Eリガンドアナログが含まれる)を使用することができる。広範な種々のアッセイ(標識タンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度、免疫アッセイ、キナーゼアッセイなどの酵素アッセイなどが含まれる)を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−E−モジュレーター結合を同定することができる。いくつかの場合、潜在的モジュレーターの存在下で既知のリガンドまたは基質の結合の干渉を測定する競合結合アッセイの使用によって候補モジュレーターの結合を決定する。
【0133】
1つの実施形態では、マイクロタイタープレートを、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体で最初にコートし、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体への結合を阻害することができる可能性がある1つまたは複数の試験化合物に曝露する。コートしたタンパク質(N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のいずれか)の標識した(すなわち、蛍光、酵素、放射性同位体)結合パートナーを、コートしたタンパク質および試験化合物に曝露する。非結合タンパク質を、必要に応じて、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体、または試験化合物への曝露の間に洗い流す。検出可能なシグナルの非存在は、試験化合物がN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質とN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体との間の結合相互作用をそれぞれ阻害したことを示す。検出可能なシグナル(すなわち、蛍光、比色、放射能)の存在は、試験化合物がN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質とN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体との間のそれぞれの結合相互作用を阻害しなかったことを示す。検出可能なシグナルの有無を、非阻害シグナルを示す試験化合物に曝露されなかったコントロールサンプルと比較する。いくつかの実施形態では、結合パートナーを標識しないが、結合パートナーに特異的に結合する標識抗体に曝露する。
細胞ベースのin vivoアッセイ
別の実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を細胞中で発現させ、機能的(例えば、物理的および化学的または表現型の)変化をアッセイして、細胞増殖(例えば、腫瘍細胞増殖)のN−カドヘリンまたはLY6−Eおよびモジュレーターを同定する。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を発現する細胞を、結合アッセイおよび酵素アッセイで使用することもできる。任意の適切な機能的影響を、本明細書中に記載のように測定することができる。例えば、細胞形態学(例えば、細胞体積、核体積、細胞周囲、および核周囲)、リガンド結合、キナーゼ活性、アポトーシス、細胞表面マーカーの発現、細胞増殖、GFP陽性、および色素希釈アッセイ(例えば、細胞膜に結合する色素を使用した細胞トラッカーアッセイ)、DNA合成アッセイ(例えば、3H−チミジンおよび蛍光DNA結合色素(BrdUまたはFACS分析と使用するHoechst色素など))は全て、細胞ベースの系を使用した潜在的モジュレーターを同定するのに適切なアッセイである。かかる細胞ベースのアッセイに適切な細胞には、本明細書中に記載の初代の癌および腫瘍の細胞および細胞株(例えば、A549(肺)、MCF7(乳房、p53野生型)、H1299(肺、p53ヌル)、Hela(子宮頸部)、PC3(前立腺、p53変異体)、MDA−MB−231(乳房、p53野生型))が含まれる。癌細胞株は、p53変異体、p53ヌルであり得るか、野生型p53を発現することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質は、天然に存在するか組換えであり得る。また、N−カドヘリンまたはLY6−EのフラグメントまたはキメラN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を、細胞ベースのアッセイで使用することができる。
【0134】
細胞N−カドヘリンまたはLY6−Eポリペプチドレベルを、タンパク質またはmRNAレベルの測定によって決定することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはN−カドヘリンまたはLY6−Eに関連するタンパク質のレベルを、N−カドヘリンまたはLY6−Eポリペプチドまたはそのフラグメントにそれぞれ選択的に結合する抗体を使用した免疫アッセイ(ウェスタンブロッティングおよびELISAなど)を使用して測定する。mRNA測定のために、例えば、PCR、LCR、またはハイブリッド形成アッセイ(例えば、ノーザンハイブリッド形成、RNアーゼ保護、ドットブロッティング)を使用した増幅が好ましい。本明細書中に記載のように、タンパク質またはmRNAのレベルを、直接または間接的に標識した検出剤(例えば、蛍光または放射性標識した核酸および放射性または酵素標識した抗体など)を使用して検出する。
【0135】
あるいは、N−カドヘリンまたはLY6−E発現を、レポーター遺伝子系を使用して測定することができる。かかる系を、レポーター遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼなど)に作動可能に連結されたN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質プロモーターを使用して考案することができる。さらに、目的のタンパク質を、赤色蛍光タンパク質または緑色蛍光タンパク質などの第2のレポーターへの結合を介した間接的レポーターとして使用することができる(例えば、Mistili & Spector,Nature Biotechnology 15:961−964(1997)を参照のこと)。レポーター構築物を、典型的には、細胞にトランスフェクトする。潜在的モジュレーターでの処理後、レポーター遺伝子の転写、翻訳、または活性の量を、当業者に公知の標準的技術にしたがって測定する。
動物モデル
細胞増殖の動物モデルは、細胞増殖のモジュレーターのスクリーニングにも使用される。同様に、適切な遺伝子ターゲティングベクターでの相同組換えまたは遺伝子過剰発現の結果としての遺伝子ノックアウトテクノロジーを含むトランスジェニック動物テクノロジーにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の発現の有無が得られる。同一のテクノロジーを、ノックアウト細胞を作製するために適用することができる。必要に応じて、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の組織特異的発現またはノックアウトが必要であり得る。かかる方法によって作製されたトランスジェニック動物は、細胞増殖の動物モデルとして使用され、さらに、細胞増殖のモジュレーターのスクリーニングで有用である。
【0136】
ノックアウト細胞およびトランスジェニックマウスを、相同組換えを介したマウスゲノム中の内因性N−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子部位へのマーカー遺伝子または他の異種遺伝子の挿入によって作製することができる。かかるマウスを、内因性N−カドヘリンまたはLY6−EのN−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子の変異バージョンとの置換または例えば発癌物質への曝露による内因性N−カドヘリンまたはLY6−Eの変異によって作製することもできる。
【0137】
DNA構築物を、胚幹細胞の核に導入する。新規に操作した遺伝子損傷を含む細胞を、宿主マウス肺に注射し、レシピエント雌に再移植する。これらの胚のいくつかは、部分的に変異細胞株由来の生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスの交配により、導入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系列を得ることが可能である(例えば、Capecchi el ai,Science 244:1288(1989)を参照のこと)。キメラ−ターゲティングマウスを、Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988),Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,Robertson,ed.,IRL Press,Washington,D.C.,(1987),and Pinkert,Transgenic Animal Technology:A Laboratory Handbook,Academic Press(2003)にしたがって誘導することができる。
例示的アッセイ
軟寒天成長または懸濁液中でのコロニー形成
正常な細胞は、付着および成長に固体基質が必要である。細胞を形質転換する場合、細胞はこの表現型を喪失し、基質から脱離して成長する。例えば、形質転換細胞は、撹拌浮遊培養で成長するか、半固体培地(半固体寒天または軟寒天など)中に懸濁することができる。形質転換細胞は、腫瘍抑制遺伝子でトランスフェクトされた場合、正常な表現型を再生し、付着および成長に固体基質が必要である。
【0138】
懸濁アッセイにおける軟寒天成長またはコロニー形成を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。典型的には、形質転換宿主細胞(例えば、軟寒天上で成長する細胞)を、本アッセイで使用する。例えば、RKOまたはHCT116細胞株を使用することができる。懸濁アッセイにおける軟寒天成長またはコロニー形成技術は、Freshney,Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique,3rd ed.,Wiley−Liss,New York(1994)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。Garkavtsev et al.(1996),supraの方法の部(本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。
接触阻害および成長の密度制限
正常な細胞は、典型的には、この細胞が他の細胞に接するまで、ペトリ皿中で平ら且つ組織的に成長する。細胞が相互に接触する場合、細胞は接触阻害され、成長を停止する。しかし、細胞が形質転換された場合、細胞は接触阻害されず、無秩序の病巣中に高密度まで成長する。したがって、形質転換細胞は、正常細胞よりも高い飽和密度まで成長する。細胞の混乱した単層または正常な周辺細胞の規則的パターン内の病巣中の円形細胞(rounded cell)の形成によって、これを形態学的に検出することができる。あるいは、飽和密度での[3H]−チミジンでの標識率を使用して、成長の密度制限を測定することができる。Freshney(1994),supraを参照のこと。形質転換細胞は、細胞増殖モジュレーターと接触させた場合、正常な表現型を再生し、接触阻害するようになり、より低い密度まで成長するであろう。
【0139】
成長アッセイの接触阻害および密度制限を使用して、宿主細胞中での異常な増殖および形質転換を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。典型的には、形質転換宿主細胞(例えば、接触阻害しない細胞)を、本アッセイで使用する。例えば、RKOまたはHCTl116細胞株を使用することができる。このアッセイでは、飽和密度の[3H]−チミジンでの標識率が、成長の密度制限の好ましい測定方法である。形質転換宿主細胞を、潜在的なN−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターと接触させ、非制限培地条件下にて飽和密度で24時間成長させる。[3H]−チミジンで標識された細胞の比率を、オートラジオグラフィで決定する。Freshney(1994),supraを参照のこと。N−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターと接触した宿主細胞は、コントロール(例えば、インサートを欠くベクターでトランスフェクトした形質転換宿主細胞)と比較してより低い標識率が得られるであろう。
成長因子または血清依存性
成長因子または血清依存性を、N−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターを同定するためのアッセイとして使用することができる。形質転換細胞は、その正常な対応物よりも血清依存性が低い(例えば、Temin,J.Natl.Cancer Insti.37:167−175(1966);Eagle et ai,J.Exp.Med.131:836−879(1970));Freshney,supraを参照のこと)。これは、形質転換細胞による種々の成長因子の放出に一部依存する。形質転換細胞がN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターと接触する場合、細胞は血清依存性を再獲得し、より低いレベルの成長因子を放出するであろう。
腫瘍特異的マーカーレベル
腫瘍細胞は、その正常な対応物よりも増加した一定の因子(以後、「腫瘍特異的マーカー」)を放出する。例えば、プラスミノゲンアクチベーター(PA)は、正常な脳細胞よりも高いレベルでヒトグリオーマから放出される(例えば、Gullino,Angiogenesis,tumor vascularization,and potential interference with tumor growth.In Mihich(ed.):“Biological Responses in Cancer.” New York,Academic Press,pp.178−184(1985)を参照のこと)。同様に、腫瘍血管形成因子(TAF)は、その正常な対応物よりも高いレベルで腫瘍細胞中に放出される。例えば、Folkman,Angiogenesis and cancer,Sem Cancer Biol.(1992)を参照のこと。
【0140】
腫瘍特異的マーカーをアッセイして、宿主細胞からのこれらのマーカーの放出レベルを減少させるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。典型的には、形質転換宿主細胞または発癌性宿主細胞を使用する。これらの因子の放出を測定する種々の技術は、Freshney(1994),supraに記載されている。また、Unkless et al.,J.Biol.Chem.249:4295−4305(1974);Strickland & Beers,J.Biol.Chem.251:5694−5702(1976);Whur et al,Br.J.Cancer 42:305−312(1980);Gulino,Angiogenesis,tumor vascularization,and potential interference with tumor growth.In Mihich,E.(ed):“Biological Responses in Cancer.” New York,Plenum(1985);Freshney Anticancer Res.5:111−130(1985)を参照のこと。
マトリゲルへの侵襲性
マトリゲルまたはいくつかの他の細胞外基質構成要素への侵襲度を、異常な細胞増殖および腫瘍成長を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定するためのアッセイとして使用することができる。腫瘍細胞は、悪性度とマトリゲルまたはいくつかの他の細胞外基質構成要素への細胞の侵襲性との間に良好な相関関係を示す。このアッセイでは、典型的には、腫瘍生成細胞を宿主細胞として使用する。したがって、N−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを、潜在的モジュレーターの導入前後の宿主細胞間の侵襲性レベルの変化の測定によって同定することができる。化合物がN−カドヘリンまたはLY6−Eを調整する場合、腫瘍生成宿主細胞におけるその発現は侵襲性に影響を及ぼすであろう。
【0141】
Freshney(1994),supraに記載の技術を使用することができる。簡潔に述べれば、宿主細胞の浸潤レベルを、マトリゲルまたはいくつかの他の細胞外基質構成要素でコーティングしたフィルターの使用によって測定することができる。ゲルへの浸透またはフィルターの遠位側に通じた浸透を侵襲性と評価し、細胞数および移動距離または125Iでの細胞のプレラベリングおよびフィルターの遠位側または皿の底の放射能の計算によって組織学的に評価する。例えば、Freshney(1984),supraを参照のこと。
in vivoでの腫瘍成長
細胞成長に及ぼすN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターの影響を、トランスジェニックマウスまたは免疫抑制マウスにおいて試験することができる。内因性N−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子を破壊したノックアウトトランスジェニックマウスを作製することができる。かかるノックアウトマウスを使用して、例えば、癌モデルとして、N−カドヘリンまたはLY6−Eを調整する化合物についてのin vivoでのアッセイ手段として、N−カドヘリンまたはLY6−Eの影響を研究し、野生型または変異N−カドヘリンまたはLY6−Eをノックアウトマウスに戻す効果を試験することができる。
【0142】
ノックアウト細胞およびトランスジェニックマウスを、相同組換えを介したマウスゲノム中の内因性N−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子部位へのマーカー遺伝子または他の異種遺伝子の挿入によって作製することができる。かかるマウスを、内因性N−カドヘリンまたはLY6−EのN−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子の変異バージョンとの置換または例えば発癌物質への曝露による内因性N−カドヘリンまたはLY6−Eの変異によって作製することもできる。
【0143】
DNA構築物を、胚幹細胞の核に導入する。新規に操作した遺伝子損傷を含む細胞を、宿主マウス肺に注射し、レシピエント雌に再移植する。これらの胚のいくつかは、部分的に変異細胞株由来の生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスの交配により、導入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系列を得ることが可能である(例えば、Capecchi el ai,Science 244:1288(1989)を参照のこと)。キメラーターゲティングマウスを、Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)およびTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,Robertson,ed.,IRL Press,Washington,D.C.,(1987)にしたがって誘導することができる。これらのノックアウトマウスを、細胞成長に及ぼす種々のN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターの影響を試験するための宿主として使用することができる。
【0144】
あるいは、種々の免疫抑制宿主動物または免疫不全宿主細胞を使用することができる。例えば、遺伝的胸腺欠損「ヌード」マウス(例えば、Giovanella et al.,J.Natl.Cancer Inst.52:921(1974)を参照のこと)、SCIDマウス、胸腺摘出マウス、または照射マウス(see,例えば、Bradley et al,Br.J.Cancer 38:263(1978);Selby et al,Br.J.Cancer 41:52(1980)を参照のこと)を、宿主として使用することができる。同質宿主に注射した移植可能な腫瘍細胞(典型的には、約106細胞)は、高い比率で浸潤性腫瘍を産生する一方で、類似の起源の正常細胞では生産しない。例えば、注射によって宿主をN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターで処置する。適切な期間後、好ましくは4〜8週間後、腫瘍成長を測定し(例えば、体積またはその2つの最も長い寸法による)、コントロールと比較する。統計的に有意に減少する(例えば、スチューデントT検定を使用)腫瘍は、成長が阻害されたと言える。アッセイとして腫瘍サイズの減少を使用して、例えば、異常な細胞集団を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。
スクリーニング法
本発明はまた、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物を同定する方法を提供する。この化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する腫瘍(例えば、泌尿生殖器癌腫瘍(前立腺または膀胱の癌腫瘍が含まれる))の成長の阻害および退行の促進で使用される。
【0145】
本明細書中に記載のアッセイを使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLY6−E受容体への結合を減少、阻害する能力について種々の化合物および化合物の混合物をスクリーニングすることによる、治療に有効な調整剤である化合物を同定するためのさらなる試験に適切なリード化合物を同定することができる。目的の化合物は、合成または天然に存在し得る。
【0146】
スクリーニングアッセイを、in vitroまたはin vivoで行うことができる。典型的には、最初のスクリーニングアッセイをin vitroで行い、細胞ベースのアッセイまたは動物モデルを使用してin vivoで確認することができる。例えば、再生遺伝子ファミリーのタンパク質は、細胞増殖に関与する。したがって、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物は、試験化合物に曝露していない細胞と比較して、この結合相互作用に起因する細胞増殖を阻害することができる。また、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合は、組織損傷応答、炎症、および異形成に関与する。動物モデルでは、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のその受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物は、例えば、試験化合物に曝露していない動物と比較して、創傷治癒または異形成の進行を阻害することができる。例えば、Zhang,et al,World J Gastroenter(2003)9:2635−41を参照のこと。
【0147】
通常、N−カドヘリンまたはLY6−EのN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物は合成である。アッセイ工程を自動化し、任意の都合のよい供給源からアッセイするための化合物を得ること(典型的には、これらを並行して(例えば、ロボット利用のアッセイにおけるマイクロタイタープレート女王のマイクロタイター形式で)行う)によって巨大な化学ライブラリーをスクリーニングするようにスクリーニング法をデザインする。
【0148】
本発明は、高処理形式でのN−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合の阻害についてのin vitroアッセイを提供する。記載の各アッセイ形式について、モジュレーターを含まない「無モジュレーター」コントロール反応により、バックグラウンドレベルのN−カドヘリンまたはLY6−Eの受容体への結合相互作用が得られる。本発明の高処理アッセイでは、1日に数千個までの異なるモジュレーターをスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルを使用して、選択した潜在的なモジュレーターに対する個別のアッセイを行うことができるか、濃度またはインキュベーション時間の影響が認められる場合、5〜10ウェル毎に1つのモジュレーターを試験することができる。したがって、1つの標準的マイクロタイタープレートは、約100(96)個のモジュレーターをアッセイすることができる。1536個のウェルプレートを使用する場合、1つのプレートで、約100〜約1500個のことなる化合物を容易にアッセイすることができる。1日に多数の異なるプレートをアッセイすることが可能であり、本発明の統合システムを使用して、約6,000〜20,000、さらに約100,000〜1,000,000個の異なる化合物についてのアッセイスクリーニングが可能である。標識、試薬の添加、流動物の変更、および検出工程は、例えば、BioTX Automation,Conroe,TX;Qiagen,Valencia,CA;Beckman Coulter,Fullerton,CA;およびCaliper Life Sciences,Hopkinton,MAから市販されているプログラム可能なロボットシステムまたは「集積システム」を使用して、完全自動に適合可能である。
【0149】
本質的に任意の化合物を、本発明の方法で使用するためのN−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合の潜在的なインヒビターとして試験することができる。一般に、水溶液または有機(特に、DMSOベースの)溶液に溶解することができる化合物を使用することが最も好ましい。化合物の多数の供給業者(Sigma(St.Louis,MO)、Aldrich(St.Louis,MO)、Sigma− Aldrich(St.Louis,MO)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(Buchs Switzerland)が含まれる)ならびにスクリーニング用の有機小分子およびペプチドライブラリーの供給業者(Chembridge Corp.(San Diego,CA)、Discovery Partners International(San Diego,CA)、Triad Therapeutics(San Diego,CA)、Nanosyn(Menlo Park,CA)、Affymax(Palo Alto,CA)、ComGenex(South San Francisco,CA)、およびTripos,Inc.(St.Louis,MO)が含まれる)が存在することが認識されるであろう。
【0150】
1つの好ましい実施形態では、N−カドヘリンまたはLy6−E受容体の結合相互作用のインヒビターを、多数の潜在的な治療化合物(潜在的なモジュレーター化合物)を含む組み合わせライブラリーのスクリーニングによって同定する。かかる「組み合わせ化学またはペプチドライブラリー」を、本明細書中に記載のように1つまたは複数のアッセイでスクリーニングして、所望の特徴的活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定することができる。したがって、同定された化合物は、従来の「リード化合物」として役立つか、化合物自体を潜在的または実際の治療薬として使用することができる。
【0151】
組み合わせ化学ライブラリーは、試薬などの多数の化学的「基礎単位(building block)」の組み合わせによって化学合成または生物学的合成のいずれかで精製された多様な化合物の集団である。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの線状組み合わせ化学ライブラリー(linear combinatorial chemical library)を、所与の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸数)のためのできる限りの方法での化学的基礎単位(アミノ酸)組の組み合わせによって形成する。化学的基礎単位のかかる組み合わせ混合によって何百万もの化合物を合成することができる。
【0152】
組み合わせ化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知である。かかる組み合わせ化学ライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号,Furka,Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493(1991)、およびHoughton et al,Nature 354:84−88(1991)を参照のこと)が含まれるが、これに限定されない。化学的に多様なライブラリーの生成のための他の化学物質も使用することができる。かかる化学物質には、いかが含まれるが、これらに限定されない:ペプチド(PC公開番号WO91/19735号)、コードペプチド(PCT公開WO93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO92/00091号)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ダイバーソマー(diversomer)(ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなど)(Hobbs et al,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993))、ビニログ(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara et al,J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、β−D−グルコース足場を有する非ペプチドのペプチド模倣物(Hirschmann et al.,J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、小化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chen et al,J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバマート(Cho et al,Science 261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスホナート(Campbell et al,J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリー(Ausubel,Berger and Sambrook,all supraを参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn et al,Nature Biotechnology,14(3):309−314(1996)およびPCT/US96/10287を参照のこと)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang et al,Science,274:1520−1522(1996)および米国特許第5,593,853号を参照のこと)、有機小分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN,Jan 18,page 33(1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;トリアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、同第5,288,514号など)。
【0153】
組み合わせライブラリーの調製用デバイスは、市販されている(例えば、357 MPS,390 MPS,Advanced Chem.Tech,Louisville KY,Symphony,Rainin,Woburn,MA,433A Applied Biosystems,Foster City,CA,9050 Plus,Millipore,Bedford,MAを参照のこと)。
siRNAテクノロジー
siRNA分子およびベクターのデザインおよび作製は、当業者に周知である。例えば、適切なsiRNAのデザインに有効な過程は、mRNA転写物をAUG開始コドンから開始させ(例えば、図7、8、9を参照のこと)、AAジヌクレオチド配列についてスキャンする(Elbashir et al.EMBO J 20:6877−6888(2001)を参照のこと)。各AAおよび3’隣接ヌクレオチドは、潜在的なsiRNA標的部位である。隣接部位配列の長さによってsiRNAの長さが決定される。例えば、19個の隣接部位により、21ヌクレオチド長のsiRNAが得られるであろう。3’オーバーハングUUジヌクレオチドを有するsiRNAは、しばしば最も有効である。このアプローチはまた、ヘアピンsiRNAを転写するためのRNA pol IIIの使用に適合する。RNA pol IIIは、4−6ヌクレオチドポリ(T)領域で転写を終結させ、短いポリ(U)テールを有するRNA分子を作製する。しかし、他の3’末端ジヌクレオチドオーバーハングを有するsiRNAはまた、RNAiを有効に誘導することができ、配列を経験的に選択することができる。選択性について、他のコード配列に相同な16〜17個を超える連続塩基対を有する標的配列を、BLAST検索の実施によって回避することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと)。
【0154】
RNAiを誘導するためのsiRNA発現ベクターは、異なるデザイン基準を有し得る。ベクターを、短いスペーサー配列によって分離された2つの逆方向反復に挿入し、転写終結に役立つ一連のTで終結させることができる。発現したRNA転写物は、短いヘアピンsiRNAに折り畳まれると予想される。siRNA標的配列の選択、推定ヘアピンのステムをコードする逆方向反復、逆方向反復の順序、ヘアピンのループをコードするスペーサー配列の長さおよび組成、ならびに5’オーバーハングの有無を変化させることができる。siRNA発現カセットの好ましい順序は、センス鎖、短いスペーサー、およびアンチセンス鎖である。これらの種々のステム長(例えば、15〜30)を有するヘアピンsiRNAが適切であり得る。ヘアピンsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖に結合するループの長さは、種々の長さ(例えば、3〜9ヌクレオチドまたはそれを超える)であり得る。ベクターは、siRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されるプロモーターおよび発現エンハンサーまたは他の調節エレメントを含むことができる。これらの調節エレメントを、制御エレメントが応答する外因子の付加または調節によって遺伝子発現をオフまたはオンにすることが臨床家によって行うことができるようにデザインすることができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明は、癌細胞の成長を阻害するのに有効な量のタンパク質を認識して結合する抗体またはそのフラグメントと癌細胞を接触させる工程による、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、前立腺癌細胞または膀胱癌である。接触させる抗体は、モノクローナル抗体および/またはキメラ抗体であり得る。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体であるか、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。さらなる実施形態では、抗体フラグメントは、Fab、F(ab)2、またはFvを含む。他の実施形態では、フラグメントは、抗原結合領域を有する組換えタンパク質を含む。さらに他の実施形態では、抗体またはフラグメントは、治療薬に連結した抗体またはフラグメントを含む免疫抱合体である。治療薬は、細胞毒性薬である。細胞毒性薬を、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アルブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択することができる。治療薬は、放射性同位体であり得る。治療同位体は、212Bi、131I、111In、90Y、および186Reからなる群から選択することができる。上記実施形態のいずれかでは、化学療法薬および/または放射線療法をさらに投与することができる。いくつかの実施形態では、患者にホルモンアンタゴニスト療法も受けさせる。患者の抗体または抗体フラグメントとの接触を、患者への抗体の静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、または皮内投与によって行うことができる。いくつかの実施形態では、患者は、泌尿生殖器癌(例えば、膀胱癌、前立腺癌)を有する。上記のいくつかの実施形態では、患者は前立腺癌を罹患し、患者にホルモン除去療法を任意選択的にさらに受けさせる。いくつかの実施形態では、接触は、抗体を癌または癌の転移に直接投与する工程を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、小分子である細胞毒性薬を有する。マイタンシン、マイタンシノイド、サポリン、ゲロニン、リシン、またはカリチアマイシンおよびそのアナログまたは誘導体などの毒素も適切である。抗N−カドヘリンまたはLY6−E抗体に抱合することができる他の細胞毒性薬には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、および5−フルオロウラシルが含まれる。酵素活性毒素およびそのフラグメントも使用することができる。放射性標識または他の標識を、公知の方法で抱合体(例えば、二官能性リンカー、融合タンパク質)に組み込むことができる。本発明の抗体を、プロドラッグを活性化学療法薬に変換する酵素に抱合することもできる。WO88/07378号および米国特許第4,975,278号を参照のこと。抗体または免疫抱合体を、非タンパク質ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー)に任意選択的に連結することができる。
【0157】
投与用の組成物は、一般に、薬学的に許容可能なキャリア(好ましくは、水性キャリア)に溶解した本明細書中に記載の薬剤を含むであろう。種々の水性キャリア(例えば、緩衝化生理食塩水など)を使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に、望ましくない物質は含まれない。これらの組成物を、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。組成物は、pH調整剤および緩衝剤などの生理学的条件に近づけるのに必要な薬学的に許容可能な補助剤および毒性調整剤など(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなど)を含むことができる。これらの処方物中の活性成分の濃度は、広範に変化することができ、主に、選択された特定の投与様式および患者のニーズにしたがって、流動物の体積、粘度、および体重に基づいて選択するであろう。
【0158】
したがって、静脈内投与のための典型的な薬学的組成物を、約0.1〜100mg/患者/日で投与することができる。0.1から約100mg/患者/日までの投薬量を使用することができる。実質的により高い投薬量が局所投与で可能である。非経口投与可能な組成物の実際の調製方法は、当業者に公知であるか明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)などの刊行物により詳細に記載されている。
【0159】
薬学定組成物を、投与方法に応じて種々の単位投薬形態で投与することができる。例えば、経口投与に適切な単位投薬形態には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、およびロゼンジが含まれるが、これらに限定されない。経口投与した場合、抗体を消化から保護すべきであると認識される。典型的には、酸性加水分解および酵素加水分解への耐性を付与するための組成物との分子の複合体化または適切な耐性を示すキャリア(リポソームまたは保護バリアなど)への分子のパッケージングのいずれかによってこれを行う。消化からの薬剤の保護手段は、当該分野で周知である。
【0160】
特に、本発明と共に使用するための抗体および免疫抱合体およびインヒビターの薬学的処方物を、所望の純度を有する抗体と任意選択的な薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤との混合によって調製することができる。かかる処方物は、凍結乾燥処方物または水溶液であり得る。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用した投薬量および濃度でレシピエントに非毒性である。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、酢酸、リン酸、クエン酸、および他の有機酸、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、防腐剤(低分子量ポリペプチド)、タンパク質(血清アルブミンまたはゼラチンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸、モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる)、キレート剤、イオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、錯塩(例えば、Zn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性剤であり得る。抗体を、0.5〜200mg/mlまたは10〜50mg/mlの濃度で処方することができる。
【0161】
処方物はまた、さらなる活性化合物(化学療法薬、細胞毒性薬、サイトカイン、成長阻害剤、および抗ホルモン剤が含まれる)を提供することもできる。有効成分を、徐放性調製物(例えば、固体疎水性ポリマー(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート))、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド)の半透性マトリックス)として調製することもできる。抗体および免疫抱合体を、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製したマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセルまたはポリ−(メチルメタクリラート)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに取り込むこともできる。
【0162】
本発明のインヒビターおよび薬剤(例えば、抗体)を含む組成物を、治療または予防上の処置のために投与することができる。治療への応用では、組成物を、「治療有効用量」で罹患患者に投与する。この用途に有効な量は、疾患の重症度および患者の一般的な健康状態に依存するであろう。組成物の単回投与または複数回投与を、患者の必要性および許容に応じた投薬量および頻度に応じて行うことができる。本発明の目的のための「患者」または「被験体」には、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳動物が含まれる。したがって、本方法を、ヒト療法および動物の両方に適用可能である。好ましい実施形態では、患者は、哺乳動物、好ましくは霊長類であり、最も好ましくは、患者はヒトである。他の公知の癌療法を、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、Wntシグナル伝達のインヒビターを使用して、細胞を他の癌治療薬(5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、およびメトトレキサートなど)にターゲティングするか感作することもできる。他の実施形態では、本発明の方法を、放射線療法などと共に使用することができる。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は、例証のために提供するが、特許請求の範囲に記載の発明を制限しない。
(実施例1)材料と方法
細胞株
ヒト膀胱癌細胞株(T24、EJ、J82、TCC Sup、647V、UC−14、SW780、RT112、SD148)を全て、10% ウシ胎児血清(Omega Scientific,Inc.)および1%ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(PSG)(Invitrogen)を補足したRPMI1640 1×培地(Cellgro)中にて、37℃の加湿5%CO2雰囲気下で維持した。
試薬および抗体
E−およびN−カドヘリンに対するマウスmAbを、Zymed Laboratories Inc.(San Francisco)から入手した。別のマウス抗N−カドヘリンAb(クローンGC−4,Sigma,Saint−Louis)を使用して、ボイデン・チェンバアッセイにおいてN−カドヘリンを中和した。pan−AktおよびpAkt(Ser473)に対するウサギmAbを、Cell Signalling Technologyから購入した。マウスmAb抗PTEN抗体を、Santa Cruz Biotechnologyから入手した。ポリクローナル抗上皮成長因子受容体リン特異的抗体(PY1068)を、Biosourceから購入した。LY294002塩酸(PI3Kインヒビター)を、Sigmaから購入した。これを濃縮保存液としてジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、実験時に希釈した。
ウェスタンブロット
コンフルエントな単層細胞を、室温のPBSで洗浄し、加熱溶解緩衝液で抽出した。超音波処理器を使用した溶解物の20秒間の超音波処理後、各サンプルのタンパク質濃度を、DCタンパク質アッセイキット(BIO−RAD,Hercules,California,USA)によって測定し、等量のタンパク質をSDS−PAGEにロードした。タンパク質を、10%ポリアクリルアミドゲルにて分離し、その後、電気泳動によってニトロセルロース上に移動させた。一次抗体(N−およびE−カドヘリン、Pten、pAkt、pan−Akt、およびpEGFR)を使用して、4℃で一晩免疫ブロッティングを行った。次いで、ブロットを、二次抗体(抗マウスまたは抗ウサギ)と室温で1時間インキュベートした。ECL検出試薬(Amersham)を使用して、検出を行った。
【0164】
GC−4によるN−カドヘリン機能またはLY294002によるPI3K機能の阻害を含む実験のために、細胞を、最初に一晩血清を枯渇させ(RPMI1640、0.1%BSA、1%PSG)、次いで、50倍希釈のGC−4または異なる濃度のLY294002を含めるか含めないで1時間インキュベートした。
細胞増殖および生存アッセイ
MTTアッセイを実施し、Akt活性を阻害する一方で、T24細胞株の細胞生存率を保存するGC−4およびLY294002の正確な濃度を決定した。2.5×103細胞を、200μlの培地を含む96ウェルプレート中で培養し、数時間付着させた。細胞を、一晩血清枯渇させた。翌日、GC−4(50倍希釈)またはLY294002(10μmol/1)を各ウェルに添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートした。5mg/mlの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を含む10μlのPBS溶液を各ウェルに添加し、さらに5時間インキュベートを再開した。培地を吸引し、200μl DMSOを各ウェルに添加した。プレートを、撹拌機にて1分間震盪し、ELISAプレートリーダーを使用して、550nmの吸光度を測定した。
浸潤アッセイ
各細胞の浸潤挙動を、マトリゲルコーティングしたボイデン・チェンバ(24ウェルインサート、ポアサイズ8μm;BD Bioscience,Bedford,MA,USA)を使用して測定した。細胞(2.5×104細胞)を洗浄し、枯渇培地(RPMI1640,0.1%BSA、1%PSG)に再懸濁し、上部のチャンバーに入れた。FBS10%を含むRPMI1640を、化学誘引物質として使用し、下部チャンバーに入れた。細胞を、37℃で21時間インキュベートし、マトリゲルを通過させた細胞を、2%パラホルムアルデヒドで固定し、その後、クリスタルバイオレット0.1%で染色した。マトリゲルを通過しなかった細胞を、綿棒でインサートから除去した。GC−4(50倍)に関するブロッキング実験では、コントロールとしてマウスmIgG1(Sigma)を使用した。細胞を一晩枯渇させ、1時間後にGC−4またはマウスIgG1を播種した。
【0165】
LY294002(10mM)に関する実験では、細胞を一晩枯渇させ、播種前にさらに1時間チャンバー中でインキュベートした。インキュベーション後、顕微鏡(10倍)での4つの独立した視野の計数によって細胞数を評価し、結果を標準誤差を含む平均値として示した。
in vitro浸潤アッセイ
初期ボイデン・チェンバ浸潤アッセイは、腫瘍細胞と細胞外基質との間の相互作用を正確に再生するために脱上皮化マウスまたはラットの膀胱を使用した膀胱癌浸潤の三次元モデルと相関した。マウスおよびラットの膀胱を、小腹壁切開によって得て、尿路上皮を酵素消化を使用しない解剖鉗子によって除去した。膀胱を2つの部分に採取し、脱表皮下表面を上に向けて30mmコラーゲンコーティングしたインサート上に配置した。37℃で30分間のインキュベーション後、ヒト膀胱癌細胞(5×105細胞)を洗浄し、2mlのRPMI培地に再懸濁し、間質に配置した。さらに6mlのRPMI培地を培養インサートの外側の培養皿に添加して、各培養インサート内に空気−液体接触面を作製した。24時間後、培地をインサートから除去した。培養皿中の6mlの培地を、3日毎に交換した。7日目および15日目に培養を停止させた。各膀胱サンプルを、10%ホルマリン中で少なくとも12時間固定し、次いで、パラフィン中に包埋した。各外植片の中央の組織学的切片を作製し、ヘマトキシリンを使用して評価した。癌細胞による間質浸潤の証拠を、顕微鏡(40倍)で観察した。全実験を、3回繰り返した。
高リスクTaおよびT1ヒト膀胱癌中のN−およびE−カドヘリン発現
本発明者らは、12個の急速凍結した非浸潤性膀胱癌(1個のpTa;11個のpT1)および5個の急速凍結した浸潤性膀胱癌(3個のpT3;2個のpT4)を分析した。患者に、書面によるインフォームドコンセントを行った。1973のWHO分類にしたがって腫瘍の悪性度を分類し、TNM分類ガイドラインに従って病期を決定した。全腫瘍サンプルを、1988年と1997年との間の以前の処置を行わずに経尿道的切除物または根治的膀胱適除物から得た(Henri Mondor Hospital,Creteil,France)。組織学的コントロールのためにフラグメントを固定し、他の部分をチューブに慎重に採取し、液体窒素中で急速凍結し、タンパク質抽出のために−80℃で保存した。組織サンプルを、抗プロテアーゼおよび抗ホスホリパーゼを補足したRIPA溶解緩衝液で溶解した。タンパク質を抽出し、BCAキットで総タンパク質濃度を決定した。前述のようにこれらの標本のウェスタンブロット分析を行った。
浸潤性ヒト膀胱癌におけるN−およびE−カドヘリン発現
患者
根治的膀胱適除によって処置された30人の浸潤性膀胱癌患者のコホートを研究した。全患者を、各時点でサンプルを採取して手術当日から死亡日まで追跡した。腫瘍と無関係の他の原因で死亡する患者もいた。追跡に失敗した患者もいた。これらの患者を、生存分析で検閲した(7症例)。
DNAアレイデータ
本研究で使用したDNAマイクロアレイは、2つのGeneChipアレイ(U95AおよびU95Av2)からなり、ほぼ12600プローブ対を含むAffymetrixヒトゲノムU95組であった。各プローブ組は、22個の異なるオリゴヌクレオチドからなる(そのうちの11個は、標的転写物と完全に適合し、11個は中央に1つのヌクレオチドミスマッチを有する)。これらの22個のオリゴヌクレオチドを使用して、所与の転写物レベルを測定した。チップをスキャンし、各プローブ組の強度を、Affymetrix MAS5.0デフォルト設定を使用して計算した。本発明者らは、30アレイの少なくとも5%(ほぼ8900プローブ対)に「存在する」特壊死を有するプローブ対のみを保持した。各遺伝子「X」について、患者を以下の2つの群に分類した:遺伝子「X」の全測定値の中央値を超える発現測定値を有するもの、および中央値未満の発現測定値を有するもの。これにより、2つの群をそれぞれ「X」+および「X」−に定義することができた。
RT−PCR
総RNAを、塩化セシウム遠心分離によって抽出した。以前に記載のように、これを、ランダムプライミングによる第1のcDNA鎖分析のためのテンプレートとして使用した(23、24)。N−カドヘリンmRNA量を、内部コントロールとしてTBP(TATA結合タンパク質)を使用した半定量的放射性RT−PCRによって決定した。使用プライマーは、N−カドヘリンについてはGCTGGACCATTTGCTTTTGATおよびGATGGGAACTTCATAGATACCであり、TBPについてはAGTGAAGAACAGTCCAGACTGおよびCCAGGAAATAACTCTGGCTCATであった。PCR反応の指数関数部分となるようにサイクル数を選択した(25サイクル)。PCR産物を、8%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に供した。シグナルを、Molecular Dynamics300 PhosphorImager(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)で定量した。
統計分析
Windows(登録商標)用のRソフトウェアを使用して、統計分析を行った。カプラン・マイヤー法を使用して、生存曲線を評価した。ログランク検定を行って、2群間で生存の差異は存在しないという帰無仮説を検定した。0.05未満のp値を、統計的に有意と見なした。本発明者らは、スピアマンの順位相関係数を使用して、相違測定値を相関させた。スチューデント検定を行って、相関の有意性を検定した。本発明者らは、データをログ化していない相関研究を除くログ化(logged)Affymetrixデータを使用した。
(実施例2)膀胱癌細胞株中のN−カドヘリン発現は、Akt活性化、E−カドヘリン喪失、および浸潤性挙動に関連する。
【0166】
膀胱癌におけるEMTの可能な役割を研究するために、本発明者らは、最初に、N−カドヘリンおよびE−カドヘリン発現について膀胱癌細胞株のパネルをスクリーニングした。図1Aに示すように、N−カドヘリンは、6つの細胞株のうちの4つ(TCC、EJ、J82、およびT24)で発現し、6つのうちの2つ(UC14およびSW780)に存在しなかった。N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間には強い逆相関が存在し、これは、EMTを受けた細胞におけるカドヘリン「スイッチ」の以前の報告と一致した。UC14およびSW780は、最も高レベルのE−カドヘリンを発現し、且つN−カドヘリン陰性である一方で、N−カドヘリン陽性株(TCC)は低レベルのE−カドヘリン発現を保持する。N−カドヘリンがAktを活性化することができることを示唆した最近の研究に基づいて、本発明者らは、リンレベルおよび総Aktレベルについても細胞をアッセイした。N−カドヘリン発現とAkt活性化のアイだに顕著な関連が認められ、全N−カドヘリン陽性細胞株は有意なレベルのリン−Aktを発現する。N−カドヘリン陰性細胞は、逆に、低レベルの活性化Aktを発現する。
【0167】
Akt活性化がPTENの喪失または変異に起因するかどうかを決定するために、本発明者らは、全株におけるPTENを配列決定し、PTENタンパク質レベルを測定した(図1B)。T24でPTEN変異が認められ、これは、以前の報告(25)と一致する。J82は、検出可能なPTENタンパク質を発現しない。EJおよびTCCは野生型PTENを発現し、2/4 N−カドヘリン陽性細胞株でAkt発現がPTENと無関係であることが示唆される(データ示さず)。形態学的に、J82およびTCCは、培養時に線維芽細胞様外観を示す一方で、T24およびEJは小さな不十分に分化した形態を有した。SW780およびUC14は、上皮様形態を有する。
【0168】
N−カドヘリンと浸潤可能性との関連を評価するために、全細胞株を、前述のボイデン・チェンバアッセイまたはin vitro再構成モデルで評価した。後者を使用して、上皮と間質とのin vivoでの関係を模倣した。図2に示すように、N−カドヘリン陽性細胞株は全て種々の程度の浸潤性挙動を示す一方で、N−カドヘリンヌル細胞の浸潤は最小であった。EJは、ボイデン・チェンバアッセイおよびin vitro再構成モデルの両方で高い浸潤性を示す一方で、SW780はいずれのアッセイでも浸潤せず、2つの試験間に良好な相関が示唆された。別の細胞株647Vは、J82ほどの浸潤であった。興味深いことに、647VはN−カドヘリンを発現しないが、高レベルの活性化Aktを発現する。これらの所見は、N−カドヘリンの非存在下でさえも浸潤とAktリン酸化との間の関連を支持する。
(実施例3)P−AKT経路の活性化および阻害は、浸潤性ヒト膀胱細胞株におけるN−カドヘリンまたはP−EGFR発現に依存する。
【0169】
PI3キナーゼ−Akt経路は、ヒト癌における腫瘍の進行および転移の中核をなし、膀胱癌浸潤で極めて重要な役割を果たすと考えられている。しかし、膀胱癌においてAktを活性化する上流シグナルについてはほとんど知られていない。N−カドヘリンおよび上皮成長因子受容体(EGFR)のシグナル伝達経路を調査し、いくつかの浸潤性ヒト膀胱細胞株におけるAkt活性かの関連を評価した。これらの細胞株におけるN−カドヘリンおよびEGFR阻害の分子および機能の影響も調査した。
【0170】
浸潤性および非浸潤性の膀胱癌細胞株のパネルを、ウェスタンブロットによって、活性化EGFR、N−カドヘリン、E−カドヘリン、活性化Akt、およびPTEN発現についてスクリーニングした。細胞を、EGFR アンタゴニストIressa、N−カドヘリン遮断抗体GC−4、およびPI3KインヒビターLY294002を使用するか使用しないで評価した。上記分子インヒビターの存在下または非存在下での各細胞株の浸潤挙動も評価した。
【0171】
N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間に反比例関係が存在した。T24、J82、およびTCCsup細胞株は、強いN−カドヘリン陽性およびE−カドヘリン陰性を示した。1つ(例えば、EJ細胞株)を除き、N−カドヘリン発現と活性化EGFR(pEGFR)発現との間にも反比例関係が存在した。全N−カドヘリン陽性細胞株(T24−EJ−J82−TCCSup)は、活性化Akt(pAkt)を強く発現する一方で、たった1つのpEGFR陽性細胞株(例えば、647V)しか発現しなかった。in vitro浸潤アッセイでは、強いpAkt発現を伴うN−カドヘリンおよびpEGFR陽性細胞株のみが浸潤性を示した。GC4およびIressaは、全細胞株においてpAkt発現を下方制御した。同様に、GC−4およびIressaは、T24−EJ−J82および647Vの浸潤をそれぞれ有意に減少させた。LY294002は、pAkt用紙絵細胞株の浸潤性の遮断において、GC−4またはIressaほどの有効性を示し、pAktがN−カドヘリンおよびpEGFR媒介性浸潤に極めて重要であることが示唆された。興味深いことに、CG−4でのN−カドヘリン遮断はAkt活性化を減少させるだけでなく、E−カドヘリン発現を回復させた。同様に、Iressa処置により、pAkt陽性および非浸潤性が弱い場合でも、全pEGFR陽性細胞株(647V−SD148−RT112)のE−カドヘリン発現が増加した。対照的に、Ly294002処置は、E−カドヘリン発現を回復しなかった。
(実施例4)N−カドヘリンおよびpEGFRは、浸潤性膀胱癌挙動に必要な別のAkt活性化経路を示す。
【0172】
図3Aに示すように、N−カドヘリン陽性細胞株TCC、EJ、T24、およびJ82の処置により、浸潤が有意に減少したのに対して、浸潤性N−カドヘリンヌル細胞株647Vには影響を及ぼさなかった。本発明者らは、in vitro再構成モデルにおけるGC−4を使用するか使用しないEJ浸潤性も評価し、細胞を培養したラット間質への浸潤の50%減少が認められた(データ示さず)。これらの結果により、N−カドヘリン遮断がN−カドヘリン陽性細胞株の浸潤を特異的に阻害することができることが示唆される。
【0173】
内因性N−カドヘリンの中和がAkt活性化を阻害するかどうかを決定するために、処置細胞のウェスタンブロッティングを行った。図3Bに示すように、GC−4処置により、T24細胞株においてAktリン酸化が有意に減少した。他のN−カドヘリン細胞株で類似の結果が認められた。本発明者らは、N−カドヘリン中和がEMTの特徴であるカドヘリンスイッチを逆転することができるかどうかも調査した。図3Bは、GC−4処置がE−カドヘリン発現を以前のE−カドヘリン陽性T24細胞株に回復することを示す。これらの結果により、Aktの不活化およびE−カドヘリン発現の回復によってN−カドヘリン遮断が浸潤を阻害することができることが示唆される。
【0174】
N−カドヘリンおよびpEGFR遮断は、浸潤の遮断に十分であり、Aktの下方制御によって遮断されるようである。PI3キナーゼインヒビターがこれらの細胞株における浸潤を遮断する能力は、この過程におけるAktの極めて重要な役割を強調し、N−カドヘリンおよびpEGFRがPI3キナーゼカスケードを介してAktを活性化することを示す。GC−4およびIressaはE−カドヘリン発現を回復または増加させることができるがLy294002ではできず、E−カドヘリンがAktによって直接調節されないことが示唆される。
【0175】
並行実験では、本発明者らは、ホルモン依存性および非依存性の前立腺癌異種移植片対における遺伝子発現を比較した。本発明者らは、N−カドヘリンが、前立腺癌によって死亡した男性の耐ホルモン性異種移植片および剖検で一貫して上方制御されることを見出し、前立腺癌もEMTを受けることによって進行し得ることが示唆された。最近、本発明者らは、de novo N−カドヘリン発現が、アンドロゲン反応性前立腺癌細胞株に浸潤性およびアンドロゲン非依存性成長を付与することができることを示した。本発明者らは、N−カドヘリンに対する一連の新規のモノクローナル抗体を生成した。
【0176】
したがって、N−カドヘリン発現は、前立腺癌および膀胱癌の浸潤および転移ならびに前立腺癌の耐ホルモン性疾患への進行に寄与し得る。N−カドヘリンを、単独およびmTORおよびEGFRの他の小分子インヒビターとの組み合わせの両方で治療的にターゲティングすることができる。N−カドヘリンのターゲティングは、浸潤性および転移性前立腺癌を防止または抑制するのに役立ち得る。
(実施例5)活性化Aktは、膀胱癌浸潤を部分的にのみ担う。
【0177】
膀胱癌細胞SW780の浸潤におけるAKTの役割を理解するために、N−カドヘリンおよびpAKT陰性細胞株(図1A)に、活性化AKTを含むレンチウイルスを感染させた。レンチウイルス含有GFPを、ネガティブコントロールとして使用した。SW780細胞を、ボイデン・チェンバアッセイを使用して浸潤性について試験した。予想通り、活性化AKT細胞は、さらにより浸潤性が高かった(図4A)。内因性pAKTの役割を確認するために、T24細胞(高いpAKTおよびN−カドヘリンを有することが公知)を、PI3キナーゼインヒビターであるLY294002で処置した。pAkt発現は、10μgのLY294002によって強く阻害された(図4B)。図4Cに示すように、LY294002は膀胱癌浸潤を減少させたが、ウェスタンブロットで等しくGC−4およびLYの両方がAkt活性化を阻害したにもかかわらず、その程度はN−カドヘリン抗体GC−4より小さかった。これらの結果により、pAktがN−カドヘリン陽性膀胱癌細胞の浸潤に部分的にしか寄与しないことが示唆される。GC−4への細胞の曝露後に認められるように、LY294002処置によってE−カドヘリンは再発現されなかった(データ示さず)。また、SW780細胞におけるpAktの強制発現は、E−カドヘリン発現を減少させなかった(図4A)。PI3K遮断後のE−カドヘリン発現の非存在およびpAkt発現によるE−カドヘリン減少の失敗により、E−カドヘリンのN−カドヘリン媒介調節がAkt依存性ではないことが示唆される。N−カドヘリンの浸潤への寄与がpAktの増加およびE−カドヘリン発現の減少の両方に起因することがさらに示唆される。
(実施例6)表在性膀胱癌および浸潤性膀胱癌の臨床例において、N−カドヘリン発現はE−カドヘリンと反比例する
本発明者らのin vitro所見をヒト膀胱癌に拡大するために、本発明者らは、最初に、17個の新たに得た表在性癌および浸潤性癌のパネルを、N−カドヘリンがヒト膀胱腫瘍によって実際に発現するのかどうかを決定するために、ウェスタンブロットによってN−およびE−カドヘリン発現について調査した。1つを除いた全ての腫瘍は、T1または浸潤癌を有する患者に由来し、事実上全てが高悪性度であった。図5Aに示すように、17個の腫瘍のうちの14個(66%)が、いくらかの程度のN−カドヘリンタンパク質を発現した。これらの14個のうちの7個が、低レベルのE−カドヘリンを発現する一方で、別の7個は検出可能なE−カドヘリンを持たなかった。概して、N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間に強い逆相関が認められた。最も強いN−カドヘリン発現を示す腫瘍はE−カドヘリンが存在しない傾向がある一方で、強いE−カドヘリン陽性を示す腫瘍はN−カドヘリン陰性を示した。この患者パネルについての長期追跡は利用できなかったが、データは、N−カドヘリンが一般に膀胱癌細胞株で認められたレベルに対応するレベルで高悪性度の表在性膀胱癌および浸潤性膀胱癌の間で発現することを証明する。さらに、データは、N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間の反比例を支持するが、多くの腫瘍が両遺伝子を同時発現することに注目すべきである。
(実施例7)N−カドヘリン発現は、浸潤性膀胱癌患者の不良な予後に関連する。
【0178】
前データによりN−カドヘリンタンパク質がヒト膀胱癌で発現することが確認される。N−カドヘリン発現およびEMTの証拠が膀胱癌において予後的意義を有するかどうかを決定するために、本発明者らは、そのN−カドヘリン発現に基づいて、浸潤性膀胱癌の根治的膀胱適除を受けた患者群の間の生存を比較した。N−カドヘリン抗体がパラフィン包埋組織切片を不十分に染色するので(データ示さず)、本発明者らは、方法と材料に記載のように、RNA発現に基づいてN−カドヘリン発現をスコアリングした(図5B)。簡潔に述べれば、本発明者らは、AffymetrixチップからN−カドヘリンRNA発現に関するデータを得て、平均と比較した発現に基づいて腫瘍を陽性または陰性にスコアリングした。RT−PCRを使用して、RNAを利用可能な15人の患者の小集団に対するこの方法の妥当性を確認した。RT−PCRとAffymetrixチップ由来の情報との相関は、有意性が高く、このアプローチの妥当性が確認された。図5Bに示すように、N−カドヘリン陽性腫瘍患者は、腫瘍がN−カドヘリンを発現しなかった患者と比較して、全生存が有意に短かった(p−0.0064)。
【0179】
次に、本発明者らは、N−カドヘリン発現およびE−カドヘリン発現の両方に基づいて患者を階層化した。N−カドヘリンと同様にE−カドヘリン発現をスコアリングし、立証した。以下の4つの患者群を同定した:N−カドヘリンのみを発現する患者、E−カドヘリンおよびN−カドヘリンの両方を発現する患者、いずれも発現しない患者、およびE−カドヘリンのみを発現する患者。N−およびE−カドヘリンの両方を発現する患者ならびにいずれも発現しない患者は同様に生存曲線を示し、これらを共にプロットした。図6に示すように、全生存は、3つの群に明確に階層化し、N−カドヘリン陽性腫瘍の予後が最悪であり、E−カドヘリン陽性腫瘍の予後が最良であった。混合腫瘍は、中間の予後を示した。これらのデータは、N−カドヘリン発現およびE−カドヘリン発現が組合わされて浸潤性膀胱癌患者の予後が決定されることを示す。N−カドヘリンの存在はより不良な予後を付与し、E−カドヘリンのみの使用によって得られる予後にさらなる情報を与える。実際、N−カドヘリンは、E−カドヘリンよりも強い予後の非依存性マーカーである。
(実施例8)N−カドヘリンは、耐ホルモン性前立腺癌の異種移植片、細胞株、および患者の腫瘍で上方制御される。
【0180】
数年にわたって、本発明者らは、ホルモン感受性および非依存性LAPC−4およびLAPC−9前立腺癌異種移植片対の遺伝子発現を比較してきた。これらのモデルを使用して、本発明者らは、以前に、Reg*IV(耐ホルモン性腫瘍の60%で上方制御される分泌タンパク質)をクローン化した。LAPC−4および9AI(アンドロゲン非依存性)腫瘍で上方制御されることが一貫して見出された別の遺伝子はN−カドヘリンであった。リアルタイムPCR(図8)およびウェスタンブロット分析(図7)により、N−カドヘリンが非依存性に誘導されたAIクローンで増加することが確認された。N−カドヘリンはAI細胞株 22RV1およびPC3でも発現するが、アンドロゲン依存性細胞株LNCaPでは発現しない(示さず)。これらのデータは、60%を超える耐ホルモン性前立腺癌がN−カドヘリン陽性であるというTomita et al.and othersによる以前の報告と一致する。高悪性度原発性腫瘍(Gleason 8〜10)もN−カドヘリンを発現する一方で(約40%)、低悪性度腫瘍は稀にしか陽性でなかった。本発明者らは、剖検由来の前立腺癌転移のコホートにおけるN−カドヘリン発現をも比較した。これらのアンドロゲン非依存性腫瘍の大部分は、PC3(上記の浸潤性膀胱癌株と類似のレベルを有する細胞株)と類似のレベルのN−カドヘリンを発現する。これらの結果により、転移の促進またはアンドロゲン非依存性への進行のいずれかによるEMTおよびN−カドヘリン発現も前立腺癌で重要であり得ることが示唆される。
(実施例9)N−カドヘリン発現は、浸潤性およびアンドロゲン非依存性成長を促進する。
【0181】
N−カドヘリン発現によって浸潤性、転移性、またはアンドロゲン非依存性の成長を得ることができるかどうかを決定するために、本発明者らは、アンドロゲン依存性LNCaP細胞株にレンチウイルス含有N−カドヘリン構築物を安定に感染させた。N−カドヘリンを形質導入したLNCaP細胞は、検出可能レベルのN−カドヘリンを有し(図9)、コントロール感染細胞と比較して形態が顕著に変化し(示さず)、コントロールよりも有意にマトリゲルチャンバーに浸潤した(図9)。LNCaP−Nカドヘリン細胞は、チャコールストリップ血清(charcoal stripped serum)で生存し、アンドロゲン非依存性の獲得が示唆された。最も顕著には、これらの細胞は、去勢マウスで腫瘍を急速に形成する一方で、コントロール細胞は腫瘍を形成せず、腫瘍形成性およびアンドロゲン非依存性の両方の増加が示唆された(図10)。継代早期のアンドロゲン受容体レベルは変化せず、この影響がARに非依存性であることが示唆される。最後に、N−カドヘリン中和はこれらの細胞の浸潤を減少させ、このことは、膀胱癌における前の結果と一致する。これらの結果は、N−カドヘリン発現が、(1)前立腺癌細胞においてEMTを生じさせ、(2)前立腺癌細胞に浸潤挙動を付与し、(3)アンドロゲン非依存性成長を付与することができることを本発明らに知らしめた最初の証拠を提供する。最後に、N−カドヘリン中和は浸潤を阻害し、N−カドヘリンがEMTの証拠と共に前立腺癌細胞における治療標的であり得ることが示唆された。N−カドヘリン過剰発現は、アンドロゲン非依存性細胞周期の活性化およびLNCaP細胞の成長を引き起こし、LNCaP成長においてアンドロゲン感受性を消失させることも見出された。
【0182】
これらの所見は、N−カドヘリン誘導によって特徴づけられるEMTが膀胱癌の浸潤性を増加させることを証明し、これが臨床的に転移および死亡のリスクの増加と解釈される。この生物学的影響は、その一部が、Aktの活性化およびE−カドヘリンの喪失によって調節され、N−カドヘリンに対する抗体によって治療的にターゲティングすることができる。膀胱癌に加えて、本発明者らの予備的結果により、N−カドヘリンが耐ホルモン性前立腺癌で上方制御されることが示唆される。今まで予後との関連を調査した者はなかったにもかかわらず、これは、進行前立腺癌におけるN−カドヘリン発現の他の報告と一致する。同様に、治療的な前立腺癌におけるN−カドヘリンのターゲティングまたはN−カドヘリンの耐ホルモン性前立腺癌への生物学的寄与の概念を調査した者はなかった。
【0183】
本明細書中に記載の実施例および実施形態が例示のみを目的とし、これらを考慮して当業者によって種々の修正形態または変更形態が示唆され、これらが本願の精神および範囲および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると理解される。本明細書中に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、事実上その全体が本明細書中で参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】ヒト膀胱癌細胞株における内因性カドヘリンプロフィール。A.ウェスタンブロットは、N−カドヘリンタンパク質レベルがpAktレベルと直接相関し、E−カドヘリン発現と逆相関することを証明する。B.ヒト膀胱癌細胞株のPTEN状態。
【図2】種々のカドヘリンプロフィールを有するヒト膀胱癌細胞株のMatrigel in−vitro浸潤アッセイ。E−カドヘリンを発現する細胞株は、内因性N−カドヘリンを発現する細胞株よりも浸潤性が低かった。実験を三連で行い、平均を取った。
【図3】浸潤に及ぼすN−カドヘリン抗体中和の効果。A.ヒト膀胱癌細胞株のGC4 中和抗体(白)での処置対非処置(黒)での処置の比較。B.抗体中和によってN−カドヘリン発現T24細胞株において内因性にpAKT発現が減少し、E−カドヘリン発現が増加することを示すウェスタンブロット分析。浸潤アッセイデータは、三連で行い、平均を取った実験を示す。
【図4】PI3/Akt経路は、内因性に発現するN−カドヘリン膀胱癌細胞株で見いだされる浸潤活性の全てではないかいくらかに寄与する。A.N−カドヘリン陽性SW780細胞におけるレンチウイルス感染による強制的pAkt発現。E−カドヘリン発現の変化は認められない。B.pAkt発現が強制されたSW780細胞株に浸潤活性の増加が認められる。C.N−カドヘリン陽性細胞株T24を、AktインヒビターLY294002で処置した。このインヒビターでの処置により、pAkt発現が減少した。D.N−カドヘリン中和抗体で処置したT24細胞により、Aktインヒビターのみと比較した場合に浸潤可能性が増大した。
【図5】N−カドヘリン状態は、表在性および浸潤性膀胱癌患者の生存率の減少に相関する。A.表在性および浸潤性ヒト膀胱腫瘍のカドヘリンプロフィールを示すウェスタンブロット。17人の患者のうち14人は、N−カドヘリンを発現した。B.浸潤性膀胱癌の根治的膀胱適除術後のN−カドヘリン状態に応じてグループ分けした患者の全生存率のカプラン・マイヤー曲線。N−カドヘリン発現を、Affymetrixチップによって収集し、RNA発現に基づいてデータから決定した。統計分析は、N−カドヘリン陽性を示した患者(青色で示す)が、N−カドヘリン陰性患者(赤色で示す)と比較して生存率が減少することを証明した。
【図6】カドヘリン状態は、浸潤性膀胱癌患者の間の予後と相関する。N−カドヘリンおよびE−カドヘリンの両方に基づいて患者を階層化し、3つの群に分けた。N−カドヘリン陽性およびE−カドヘリン陰性腫瘍を有する患者を示すカプラン・マイヤー曲線は、最悪の全生存を示した。E−カドヘリン陽性N−カドヘリン陰性腫瘍を有する患者の生存率が最も高く、混合プロフィールの患者が中間であった。
【図7】ウェスタンブロット分析。これらの分析は、膀胱癌細胞株(J82および647V)、前立腺癌細胞株(LNCaP、22RV1、およびPC3)、および前立腺癌異種移植片(LAPC−9 アンドロゲン依存性および非依存性)中でのN−カドヘリンおよびE−カドヘリン発現を示す。J82ならびにアンドロゲン依存性株PC3、22RV1、およびLAPC−9 AI中のN−カドヘリンの発現に留意されたい。N−カドヘリンは、LAPC−4 AI中でも発現する(示さず)。Eカドヘリンは、PC3およびJ82中で下方制御されるが、22RV1および9AI細胞株/異種移植片で下方制御されない。
【図8】N−カドヘリン発現のリアルタイムPCR分析。耐ホルモン性前立腺癌転移ならびに前立腺癌細胞株PC3、LNCaP、LAPC−4 AD、AI、LAPC 9 AD、AI、および22RV1におけるN−カドヘリン発現を評価した。発現レベルをPC3(N−カドヘリン発現が非常に高い細胞株)に規準化する。22 RV1発現は、より低いレベルのN−カドヘリンレベルを発現し、これをウェスタンによって検出可能である。5つの腫瘍がPC3よりも4〜25倍(00−090EEおよび01−046C)のレベルのN−カドヘリンを発現することに留意されたい。PC3と類似のレベルは、21種中16種で認められる。
【図9】N−カドヘリンを形質導入したLNCaP細胞。N−カドヘリンを形質導入したLNCaP細胞は、高レベルのN−カドヘリンを発現し、それにより、E−カドヘリンを下方制御し、EMTと一致する形態学的変化が起こる。LNCaP−N−カドヘリン細胞は、in vitroで浸潤性が高い。これらのPTENヌル細胞においてAktは変化しない。
【図10】マウスにおけるLNCaP−IN−カドヘリン細胞。マウス中のLNCaP−N−カドヘリン細胞は去勢マウスで腫瘍を急速に形成する一方で、コントロール細胞は成長せず、このことは、アンドロゲン非依存性表現型への変換と一致する。
【図11】N−カドヘリン中の切断部位および抗体結合部位。
【図12】LNCaP−N−カドヘリン細胞における浸潤活性に及ぼす影響による抗体のスクリーニング。
【図13−1】N−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図13−2】N−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図14】Ly6−Eのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図15−1】E−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図15−2】E−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図15−3】E−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図16−1】N−カドヘリン変異型の配列および抗体結合情報。
【図16−2】N−カドヘリン変異型の配列および抗体結合情報。
【図16−3】N−カドヘリン変異型の配列および抗体結合情報。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
序論
前立腺癌は、最も一般的な悪性疾患であり、アメリカ人男性の癌に関連する死亡原因の第2位である。前立腺癌は、生物学的および臨床的に異種の疾患である。この悪性疾患を有する男性の大部分では腫瘍成長が遅く、個体の自然な寿命に影響を与えないかもしれない一方で、他の男性は急速な進行性転移性腫瘍を罹患する。PSAスクリーニングは、特異性を欠き、患者が耐ホルモン性転移性疾患の発症リスクがあることを予想することができないという制限がある。診断により低いPSA閾値を推奨する最近の研究では前立腺癌の診断数を増加させることになり、無痛性癌患者と侵襲性癌患者の同定をさらに複雑にしている(非特許文献1)。臨床転帰と相関するか潜在的侵襲性疾患患者を同定する新規の血清および組織マーカーが早急に必用である(非特許文献2)。
【0002】
最近の発現プロファインリング研究により、転移性腫瘍対非転移性腫瘍の発現サインは原発性腫瘍に存在し得ることが示唆される(非特許文献3;非特許文献4)。腫瘍が特定の器官に転移する傾向を持つさらなる特徴も、原発性腫瘍にいくらか頻繁に存在し得る(非特許文献5)。これらの最近の所見により、転移前または耐ホルモン性の前立腺癌の新規のマーカーを、初期疾患中に同定することができると示唆される。これらのマーカーは、転移性または耐ホルモン性の前立腺癌の進行でも生物学的役割を果たし得る。転帰と相関し、前立腺癌進行で生物学的役割を果たす原発性腫瘍に存在する遺伝子の最近の例には、EZH2およびLIMキナーゼが含まれる(非特許文献6;非特許文献7)。しかし、これら2つの遺伝子のいずれも分泌されない。
【0003】
耐ホルモン性前立腺癌の新規の候補血清または組織マーカーを同定するために、本発明者らは、一対のホルモン依存性前立腺癌異種移植片および耐ホルモン性前立腺癌異種移植片の遺伝子発現プロフィールを比較した。LAPC−9異種移植片を骨芽細胞骨転移から確立し、この移植片は免疫不全マウスの去勢後にアンドロゲン依存性から非依存性に進行させる(非特許文献8)。これは、前立腺癌における候補治療標的を同定するために以前に使用されていた。差分発現した遺伝子を認証し、分泌タンパク質または細胞表面タンパク質に対する配列相同性について試験した。本発明者らは、ここに、耐ホルモン性前立腺癌および膀胱癌の両方で過剰発現する2つのかかる候補遺伝子(Ly6 EおよびN−カドヘリン)の同定、特徴づけ、および最初の認証を報告する。
【0004】
したがって、本発明は、Ly6 Eおよび/またはN−カドヘリンを過剰発現する癌(前立腺癌および膀胱癌が含まれるが、これらに限定されない)の診断、予後、および治療におけるN−カドヘリンまたはLY6−Eを標的する組成物および方法を提供する。
【非特許文献1】Punglia et al.,N Engl J Med,349:335−342(2003)
【非特許文献2】Welsh et al.,Proc Natl.Acad Sci USA,100:3410−3415(2003)
【非特許文献3】Ramaswamy et al.,Nat Genet,33:49−54(2003)
【非特許文献4】Sotiriou et al.,Proc Natl Acad Sci USA,100:10393−10398(2003)
【非特許文献5】Kang et al.,Cancer Cell,3:537−549(2003)
【非特許文献6】Varambally et al.,Nature,419:624−629(2002)
【非特許文献7】Yoshioka et al.,Proc Natl Acad Sci U SA,100:7247−7252(2003)
【非特許文献8】Craft et al.,Cancer Research,In Press(1999)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌(特に、前立腺癌および/または膀胱癌)のリスクのある個体を診断および予後診断する方法を提供する。本方法は、一般に、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有するリスクのある個体から試験組織サンプルを得る工程、および癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、試験組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物の有無または量を決定する工程を含む。典型的には、組織サンプルは血清であるが、生検組織(前立腺組織または膀胱組織が含まれる)でもあり得る。
【0006】
さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eは、悪性または浸潤性の前立腺癌および膀胱癌と、正常な前立腺組織および膀胱組織と、前立腺および膀胱の非悪性新形成とを区別するための有用な前立腺癌および膀胱癌のマーカーである。例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eは、良性前立腺過形成(BPH)と比較して、前立腺癌で過剰発現する。これらのマーカーは、癌(例えば、膀胱癌、前立腺癌)が治療耐性またはホルモン非依存性状態に進行し、浸潤性になり、そして/または転移するかどうかの予後診断に役立ち得る。上記のいくつかの実施形態では、E−カドヘリンの過小発現が、浸潤性で且つ転移する可能性がある、より侵襲性の高い癌と関連するので、E−カドヘリンレベルは、予後診断でも使用される。レベルは過小発現である。したがって、いくつかの実施形態では、E−カドヘリンレベルおよびN−カドヘリンレベルの両方を決定する。
【0007】
本発明は、さらに、それぞれ腫瘍組織の細胞上のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLY6−E受容体の結合を阻害または減少させる工程を含む、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌性腫瘍の成長を阻害し、退行を促進する方法を提供する。本方法は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する任意の癌(前立腺癌および膀胱癌が含まれる)の治療で特に適用される。
【0008】
本発明はまた、それぞれのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のそれぞれのN−カドヘリンまたはLY6−E受容体の結合を阻害する化合物を同定する方法を提供する。この化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する癌性腫瘍(例えば、泌尿生殖器組織の腫瘍(前立腺または膀胱の癌腫瘍が含まれる))の成長の阻害および退行の促進で適用される。スクリーニング法を、in vitro(すなわち、ELISA)およびin vivoで行うことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、サンプルまたは生検におけるN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の発現レベルまたは活性の増加が癌を示す、被験体由来の癌または腫瘍の生体サンプルまたは生検におけるN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の発現レベルおよび活性の決定による、被験体における癌の診断方法を提供する。いくつかの実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルの決定は、(a)被験体由来の組織サンプルまたは生検をN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させる工程、および(b)N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質がサンプルまたは生検中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、癌を診断する工程を含む。さらなる実施形態では、癌は、前立腺癌,卵巣癌,腎臓癌,乳癌,結腸癌,肺癌,白血病,非ホジキンリンパ腫,多発性骨髄腫,または肝細胞癌であり得る。いくつかのさらなる実施形態では、組織サンプルは、依然として、針生検,外科生検、または骨髄生検であり得る。組織サンプルを、固定するかパラフィンに包埋することができる。組織サンプルは、例えば、前立腺、卵巣、骨、血液、リンパ節、肝臓、または腎臓に由来し得る。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルの上昇は、癌を示す。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。好ましい実施形態では、癌の診断を、N−カドヘリンまたはLY6−Eのタンパク質レベルおよび他の従来の癌の指標に基づいて行う。例えば、診断は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の所見および癌細胞の組織学または成長の特徴に基づき得る。前立腺癌の場合、例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の所見は、Gleasonスコアリングシステムを補足し、発癌性および疾患進行の可能性のより正確または信頼できる指標を得ることができる。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0010】
任意の上記の他の実施形態では、本方法は、(a)組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質3核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触させること、(b)サンプル中でN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質核酸を増幅させること、および(c)N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質核酸がサンプル中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、癌を診断することによってN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルを決定する。第1のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E cDNAのヌクレオチド配列を含むことができ、第2のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E 3 cDNAに相補的なヌクレオチド配列を含むことができる。好ましくは、両ヌクレオチドは、50塩基対長未満である。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0011】
いくつかの態様では、本発明は、癌が浸潤性であるか、転移するか、再発するか、治療耐性を示す可能性を評価することによる、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌の予後診断方法を提供する。本態様の第1の実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eが過剰発現するか、N−カドヘリンまたはLY6−E転写活性が増加し、その結果、浸潤、転移、再発、または治療耐性の可能性が増加する、癌をさらに診断する方法を提供する。本方法は、(a)組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−Eと特異的に結合する抗体と接触させる工程、および(b)N−カドヘリンまたはLY6−Eがサンプル中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を診断する工程を含む。癌を、N−カドヘリンまたはLY6−Eの発現または活性レベルのためのサンプルを得てそれを分析する前後に診断することができる。癌を、組織学的外観(例えば、前立腺癌の場合、Gleasonスコア)に基づいて同定したのかもしれないが、N−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの決定に基づかなかった。癌を、そのようなものとしてN−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの上昇の知識を使用するか使用しないで診断した可能性があるか、N−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの上昇の知識にもかかわらず、診断した可能性がある。上記のさらなる実施形態では、癌は、前立腺癌または膀胱癌、腎臓癌、乳癌、結腸癌、肺癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌であり得る。いくつかのさらなる実施形態では、組織サンプルは、針生検、外科生検、または骨髄生検でもあり得る。組織サンプルを、固定するかパラフィンに包埋することができる。組織サンプルは、例えば、前立腺、卵巣、骨、リンパ節、肝臓、または腎臓に由来し得る。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質レベルの上昇は、癌の再発または治療耐性のリスクの増加の前兆であり、且つこの増加に関連する。好ましい実施形態では、癌は、前立腺癌または膀胱癌である。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0012】
この第2の態様についての上記の他の実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌の診断方法は、(a)組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−E核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触させる工程、(b)サンプル中でN−カドヘリンまたはLY6−E核酸増幅させる工程、および(c)N−カドヘリンまたはLY6−E核酸がサンプル中で過剰発現するかどうかを決定し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を診断する工程を含む。第1のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E cDNAのヌクレオチド配列を含むことができ、第2のオリゴヌクレオチドは、N−カドヘリンまたはLY6−E cDNAに相補的なヌクレオチド配列を含むことができる。好ましくは、両ヌクレオチドは、50塩基対長未満である。上記方法では、サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの増加は、癌の再発、転移、ホルモン非依存性、または治療耐性のリスクの増加であり、これらの予後が診断され、これらに関連する。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。
【0013】
さらに他の実施形態では、本発明は、癌組織の外科切除(例えば、前立腺切除(prostectomy))の前、間、または後または別の癌治療の前、間、または後に採取した患者由来の組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eレベルの上昇に基づいたより侵襲性が高いか別の癌療法または癌再発の監視を増加するために患者を標的する方法を提供する。N−カドヘリンまたはLY6−Eの活性レベルまたは発現レベルを、上記のように決定することができる。上記のいくつかの実施形態では、診断は、同様に決定することができるE−カドヘリンレベルにも基づく。N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌は、例えば、前立腺癌、卵巣癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌であり得る。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。N−カドヘリンまたはLY6−Eレベルが上昇し、それにより、癌の転移、再発、または療法耐性リスクが高いと同定された患者を、任意選択的に化学療法および/または放射線療法を補足した外因性または内因性ホルモン除去(hormone ablation)で治療することができる。前立腺癌の場合、ホルモン除去は、アンドロゲン除去(例えば、フィナステリドおよび他の抗テストステロン(anti−tesosterone)または抗DHT薬での治療)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療有効量のN−カドヘリンもしくはLY6−EまたはN−カドヘリンもしくはLY6−E発現の1つまたは複数のインヒビターを被験体に投与する工程を含む、被験体のN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌、治療耐性癌、癌の転移、または癌の再発を治療または阻害する方法を提供する。N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌は、例えば、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌であり得る。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。化合物は、以下の態様で同定された化合物であり得る。過剰発現を、前の態様に記載のように同定することができる。化合物を、別の癌療法薬と同時に投与することができる。
【0015】
本発明はまた、細胞を化合物と接触させる工程、および細胞中のN−カドヘリンまたはLY6−E ポリペプチドの発現または活性に及ぼす化合物の影響を決定する工程を含み、癌、その転移、またはホルモン非依存性もしくは治療耐性状態への進行を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eの発現レベルまたは活性レベルを減少させる化合物を同定する、癌、治療耐性癌、または癌の転移もしくは再発を阻害する化合物を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、細胞中のN−カドヘリンまたはLY6−Eの発現を減少させる。さらに他の実施形態では、細胞は癌細胞であり、より詳細には、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する特定の組織型または供給源(例えば、前立腺、卵巣、腎臓、肺、乳房、結腸、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌)の癌細胞であり得る。なおさらなる実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌は、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、腎臓癌、肺癌、乳癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、または肝細胞癌である。好ましい実施形態では、癌は前立腺癌または膀胱癌である。
【0016】
本発明はまた、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する細胞を被験体中で画像化する工程を含み、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌が、前立腺癌、膀胱癌、卵巣癌、腎臓癌、乳癌、肺癌、結腸癌、白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、および肝細胞癌からなる群から選択される、in vivoでN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現し、それにより、浸潤性である可能性が高いか、転移する可能性が高いか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である癌を局在化する方法を提供する。
【0017】
さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質およびN−カドヘリンまたはLY6−Eコード核酸分子を、種々の免疫療法で使用して、特に、かかる腫瘍が浸潤性である場合、癌(例えば、前立腺腫瘍または膀胱腫瘍)の免疫介在性破壊を促進することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、患者においてN−カドヘリンおよびLY6−Eに結合してその各活性を減少させる抗体の投与による、癌、特に浸潤性癌もしくは転移を治療するか、癌の治療耐性状態、ホルモン非依存性状態、または転移状態への進行を防止する方法を提供する。さらに、いくつかの他の実施形態では、抗体を、エフェクター部分に抱合し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する細胞に対して優先的に細胞傷害性を示す。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eに特異的なRNAi分子またはアンチセンス分子を投与し、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eの発現を阻害することができる、癌を治療するか、癌の治療耐性、ホルモン非依存性、または転移状態への進行を防止する方法を提供する。いくつかの実施形態では、RNAi分子は、短いヘアピンRNAiである。
【0020】
別の態様では、本発明は、N−カドヘリンまたはLy6−Eに対する抗体を提供する。N−カドヘリンまたはLy6−E抗体を、単独またはエフェクター部分と抱合して、癌(例えば、前立腺癌または膀胱癌)の診断、予後、または治療で使用することができる。リシンなどの毒剤と抱合したN−カドヘリンまたはLy6−E抗体および非抱合抗体は、N−カドヘリンまたはLy6−E保有前立腺癌細胞に天然に標的にする有用な治療薬であり得る。かかる抗体は、浸潤の遮断で有用であり得る。本発明の使用に適切なN−カドヘリン抗体には、GC4、1H7、1F12、2B3が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
上記態様および実施形態のいずれかでは、治療すべき組織、癌、被験体、または患者は非とまたは哺乳動物である。上記態様および実施形態のいずれかでは、癌はアンドロゲン非依存性癌であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明者らは、ここに、耐ホルモン性前立腺癌および膀胱癌中で過剰発現される2つの遺伝子産物の同定、特徴づけ、および検証を報告する。これらの遺伝子産物は、N−カドヘリンおよびLy6−Eである。
【0023】
本発明はまた、浸潤性の膀胱癌および前立腺癌がN−カドヘリンの上方制御およびE−カドヘリンの下方制御によって特徴づけられる上皮−間葉転換(Epithelial to Mesenchymal Transition(EMT))を受けるという発見に関する。本発明者らは、中和N−カドヘリン抗体がリン酸化Akt発現の減少およびE−カドヘリンの下方制御によって膀胱癌細胞の浸潤を遮断することができることも見いだし、これは、かかるマーカーに対する抗体が癌、特に癌転移の治療および防止に有用であることを示す。特に、本発明者らは、膀胱癌中のN−カドヘリン発現がAkt発現の活性化、ボイデン・チェンバにおける浸潤活性、およびin vitro再構築モデルに関連すること、2)N−カドヘリン中和はAktリン酸化の阻害によって浸潤を特異的に減少させ、E−カドヘリンを回復してEMTを逆行させることを見いだした。PI3キナーゼ阻害は、E−カドヘリンを回復せず、N−カドヘリンが複数の経路を介してシグナル伝達し、N−カドヘリン/E−カドヘリンが強い予後情報を提供することが示唆される。
【0024】
前立腺癌に関して、本発明は、N−カドヘリンが前立腺癌の浸潤性および転移性の進行を促進し、アンドロゲン非依存性成長も促進するとういう所見に関する。
【0025】
・N−カドヘリンは、アンドロゲン非依存性異種移植片で下方制御される。
【0026】
・N−カドヘリン発現は、耐ホルモン性腫瘍で共通する。
【0027】
・N−カドヘリン発現は、浸潤性およびアンドロゲン依存性前立腺癌細胞におけるアンドロゲン非依存性成長を促進する。
【0028】
・浸潤性はメタロプロテイナーゼ発現に関連した。
【0029】
・浸潤性は、抗体曝露によって減少した。
【0030】
したがって、N−カドヘリンは、特に有望な治療標的である。これは、細胞表面上に見いだされ、多数の上皮腫瘍中で過剰発現し、浸潤、転移、およびおそらくアンドロゲン非依存性に関連する。したがって、N−カドヘリンに対する抗体は、上皮癌(泌尿生殖器癌(膀胱、前立腺)が含まれるが、これに限定されない)、より詳細には、その浸潤性形態または転移形態の治療での使用に特に好ましい薬剤である。いくつかの実施形態では、N−カドヘリンの細胞外ドメインに指向するモノクローナル抗体が好ましい。さらなる実施形態では、N−カドヘリンの第1の細胞外ドメイン(ECl)、第1および第2のドメインの一部、または第4の細胞外ドメインは、これらの癌の治療で好ましい。いくつかの実施形態では、細胞外ドメイン4に指向する抗体は、このドメインが機能調整(promotility)および浸潤可能性で重要であることが見いだされているので、これらの治療に好ましい(Kim et al,J Cell Biol.151(6):1193−206(2000)(種々のN−カドヘリンドメインの定義に関してその全体が参考として援用される)を参照のこと)。
【0031】
N−カドヘリン発現は、前立腺癌および膀胱癌の浸潤および転移ならびに前立腺癌の耐ホルモン性疾患への進行に寄与し得る。N−カドヘリンを、単独またはmTORおよびEGFRの他の小分子インヒビターと組み合わせて治療的にターゲティングすることができる。N−カドヘリンのターゲティングは、浸潤性および転移性の前立腺癌の防止または抑制に役立ち得る。
定義
「N−カドヘリン、LY6−E、およびE−カドヘリン」は、(1)本明細書中に記載のそれぞれ参照した核酸配列またはアミノ酸配列によってコードされるポリペプチド(例えば、それぞれ、図7、8、および9)と、好ましくは、少なくとも約25、50、100、200、500、または1000またはそれを超えるアミノ酸の領域にわたって、約60%を超えるアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、またはそれを超えるアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、(2)図7、8、および9に示すにそれぞれ示す参照アミノ酸配列を含む免疫原に対して惹起した抗体(例えば、ポリクローナル抗体)、それぞれのその免疫原性フラグメント、およびそれぞれのその保存的に修飾された変異型に特異的に結合し、(3)ストリンジェントなハイブリッド形成条件下で図7、8、および9に示すにそれぞれ示す参照アミノ酸配列をコードする核酸およびそれぞれのその保存的に修飾された変異型と特異的にハイブリッド形成し、(4)図7、8、および9にそれぞれ示す基準核酸配列と、好ましくは、少なくとも約25、50、100、150、200、250、500、または1000、またはそれを超えるヌクレオチドの領域にわたって、約95%超、好ましくは約96%、97%、98%、99%超、またはそれを超えるヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する核酸(例えば、遺伝子、プレmRNA、mRNA、およびポリペプチド、多型変異型、対立遺伝子、変異体、および種間ホモログ)をいう。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、典型的には、哺乳動物(霊長類(例えば、ヒト)、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または任意の哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない)に由来する。本発明の核酸およびタンパク質には、天然に存在する分子または組換え分子の両方が含まれる。
【0032】
「癌」は、ヒトの癌および癌腫、肉腫、腺癌、リンパ腫、白血病など(固形腫瘍およびリンパ癌、腎臓、乳房、肺、腎臓、膀胱、結腸、卵巣、前立腺、膵臓、胃、脳、頭頸部、皮膚、子宮、精巣、食道、および肝臓の癌、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫が含まれる)が含まれる)をいう。「泌尿生殖器癌」は、ヒトの尿路および生殖器組織(腎臓、膀胱、尿路、尿道、前立腺(prostrate)、陰茎、精巣、外陰、膣、頸部、および卵巣の組織が含まれるが、これらに限定されない)の癌をいう。
【0033】
本明細書中で治療すべき癌は、N−カドヘリンまたはLy6−Eの過剰な活性化によって特徴づけられる癌であり得る。本発明の1つの実施形態では、診断または予後アッセイを、患者の癌がN−カドヘリンまたはLy6−Eの過剰発現によって特徴づけられるかどうかを決定するために行われるであろう。かかる増殖/過剰発現を決定するための種々のアッセイが意図され、免疫組織化学、FISH、および分断抗原(shed antigen)アッセイ、サザンブロッティング、またはPCR技術が含まれる。さらに、N−カドヘリンまたはLy6−Eの過剰発現または増幅を、in vivo診断アッセイ(例えば、検出すべき分子に結合し、検出可能な標識(例えば、放射性同位体)でタグ化した分子を投与し、標識の局在化について患者を外部からスキャニングすることによる)を使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、治療すべき癌は、まだ浸潤していないが、N−カドヘリンを過剰発現する。
【0034】
「治療耐性」癌、腫瘍細胞、および腫瘍は、アポトーシス媒介性(例えば、細胞死受容体細胞シグナル伝達(例えば、Fasリガンド受容体、TRAIL受容体、TNF−R1、化学療法薬、照射))癌療法および非アポトーシス媒介性(例えば、中毒性薬物(toxic drug)、化学物質)癌療法(化学療法、ホルモン療法、放射線療法、および免疫療法が含まれる)のいずれかまたは両方に対して耐性または無効となった癌をいう。
【0035】
「過剰発現」は、コントロール組織サンプル中でのN−カドヘリン、LY6−E、およびE−カドヘリンのRNAまたはタンパク質の発現よりも有意に高い試験組織サンプル中のN−カドヘリン、LY6−E、およびE−カドヘリンのRNAまたはタンパク質の発現をいう。1つの実施形態では、組織サンプルは自家である。浸潤性、転移、ホルモン非依存性(例えば、アンドロゲン非依存性)、治療無効性、またはその可能性の増大に関連する癌試験組織サンプル(例えば、膀胱、前立腺)は、典型的には、転移に進行する可能性が低い患者由来の癌組織または正常な(すなわち、非癌)組織サンプルと比較して、N−カドヘリンまたはLY6−EのmRNAまたはタンパク質の発現が少なくとも2倍、しばしば、N−カドヘリンまたはLY6−E発現の3倍、4倍、5倍、8倍、10倍、またはそれを超える。かかる相違は、試験サンプルおよびコントロールサンプルをほぼ同様にロードしたゲルのバンドを観察した場合に容易に明らかであり得る。増量したN−カドヘリンまたはLy6−Eを発現する前立腺癌は、癌が浸潤性になるか、転移するか、アンドロゲン非依存性に進行するか、治療無効である可能性がより高い。原発性腫瘍中の微小なN−カドヘリンまたはLy6−E陽性細胞が再発および転移リスクの高い腫瘍を同定することが可能であるので、種々のカットオフがN−カドヘリンまたはLy6−E陽性に適切である。用語「過剰発現する」、「過剰発現」、または「過剰発現した」は、交換可能に、通常は癌細胞中で、正常細胞と比較して検出可能により高いレベルで転写または翻訳される遺伝子をいう。したがって、過剰発現は、タンパク質およびRNAの過剰発現(転写、転写後プロセシング、翻訳、翻訳後プロセシングの増大、安定性の変化、およびタンパク質分解の変化による)ならびにタンパク質輸送パターンの変化(核局在化の増加)および機能活性の増大(例えば、基質の酵素加水分解の増加など)に起因する局所過剰反応をいう。過剰発現はまた、正常細胞または比較細胞(例えば、BPH細胞)と比較して、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれを超え得る。
【0036】
「N−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌」および「N−カドヘリンまたはLY6−Eの過剰発現に関連する癌」は、交換可能に、上記定義にしたがってN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌細胞または組織をいう。
【0037】
用語「癌関連抗原」または「腫瘍特異的マーカー」、または「腫瘍マーカー」は、交換可能に、正常細胞と比較して癌細胞中で優先的に発現され、薬理学的作用因子(pahrmacological agent)の癌細胞への優先的ターゲティングに有用な分子(典型的には、タンパク質、炭水化物、または脂肪)をいう。マーカーまたは抗原を、細胞表面上または細胞内に発現することができる。しばしば、癌関連抗原は、正常細胞と比較して、癌細胞中で過剰発現するか最小の分解で安定化する分子である(例えば、正常細胞と比較して、2倍、3倍、またはそれを超える過剰発現)。しばしば、癌関連抗原は、癌細胞中で不適切に合成される分子(例えば、正常細胞上に発現する分子と比較して、欠失、付加、または変異を含む分子)である。しばしば、癌関連抗原は、癌細胞中に排他的に発現し、正常細胞中で合成も発現もされないであろう。細胞表面腫瘍マーカーの例には、タンパク質(乳癌についてのc−erbB−2およびヒト上皮成長因子受容体(HER)、前立腺癌についてのPSMA)および炭水化物(多数の癌(乳癌、卵巣癌、および結腸直腸癌が含まれる)におけるムチン)が含まれる。細胞内腫瘍マーカーの例には、例えば、変異腫瘍抑制因子または脂肪周期タンパク質(p53が含まれる)が含まれる。
【0038】
E−カドヘリンは、癌が浸潤性になるか、転移するか、アンドロゲン非依存性に進行するか、治療無効である可能性が高い癌患者由来の組織サンプル中の眼組織サンプル中で典型的には逆に過小発現する。この過小発現は、2倍、3倍、4倍、または少なくとも5倍である。かかる相違は、試験サンプルおよびコントロールサンプルをほぼ同様にロードしたゲルのバンドを観察した場合に容易に明らかであり得る。したがって、癌が浸潤性になるか、転移するか、アンドロゲン非依存性に進行するか、治療無効である可能性が高い癌における組み合わせたN−カドヘリン/E−カドヘリン値はさらに高く、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または20倍であり得る。原発性腫瘍中の微小なN−カドヘリン陽性細胞が再発および転移リスクの高い腫瘍を同定することが可能であるので、種々のカットオフがN−カドヘリン陽性/e−カドヘリン陰性に適切である。
【0039】
「アゴニスト」は、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合し、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性または発現を刺激、増加、活性化、促進、活性化の増強、感作、または上方制御する作用因子(agent)をいう。
【0040】
「アンタゴニスト」は、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を阻害し、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの刺激を部分的または完全に遮断し、活性を減少、防止、活性化の遅延、不活化、脱感作、または下方制御する作用因子をいう。
【0041】
発現または活性の「インヒビター」、「アクチベーター」、および「モジュレーター」は、発現または活性についてのin vitroアッセイおよびin vivoアッセイを使用して同定された分子をそれぞれ阻害、活性化、または調整することをいうために使用される(例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニスト、およびそのホモログおよび模倣物)。用語「モジュレーター」には、インヒビターおよびアクチベーターが含まれる。インヒビターは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を阻害するか、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合して部分的または完全に刺激または酵素活性を遮断し、活性化を減少、防止、遅延させ、活性を不活化、脱感作、または下方制御する作用因子である(例えば、アンタゴニスト)。アクチベーターは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの発現を誘導または活性化するか、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに結合して活性化または酵素活性を刺激、増加、開始、活性化、促進、するか、活性を感作または上方制御する作用因子である(例えば、アゴニスト)。モジュレーターには、天然に存在するか合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、および小化学分子などが含まれる。インヒビターおよびアクチベーターを同定するためのアッセイは、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの存在下または非存在下で細胞に推定モジュレーター化合物を適用し、その後に本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチド活性に及ぼす機能的影響を決定する工程を含む。潜在的アクチベーター、インヒビター、またはモジュレーターで処置する本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含むサンプルおよびアッセイを、インヒビター、アクチベーター、またはモジュレーターを含まないコントロールサンプルと比較し、影響の範囲を試験する。コントロールサンプル(モジュレーターで未処置)を、相対活性値100%に割り当てる。コントロールと比較した本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性値が約80%、任意選択的に50%、または25〜1%である場合、阻害されている。コントロールと比較した本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの活性値が110%、任意選択的に150%、任意選択的に200〜500%、または1000〜3000%である場合、活性化されている。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「試験化合物」、「薬物候補」、「モジュレーター」、または文法上の等価物は、天然または合成の任意の分子(例えば、タンパク質、オリゴペプチド(約5〜約25アミノ酸長、好ましくは約10〜20または12〜18アミノ酸長、好ましくは12、15、または18アミノ酸長)、有機小分子、ポリサッカリド、脂質、脂肪酸、ポリヌクレオチド、RNAi、siRNA、抗体、オリゴヌクレオチドなど)を説明する。試験化合物は、試験化合物のライブラリーの形態(十分な多様性が得られる組み合わせライブラリーまたは無作為化ライブラリーなど)であり得る。試験化合物は、融合パートナー(例えば、ターゲティング化合物、レスキュー化合物、二量体化化合物、安定化化合物、アドレス可能な(addressable)化合物、および他の機能的部分)と任意選択的に連結している。従来は、有用な性質を有する新規の化学物質を、いくつかの望ましい性質または活性(例えば、阻害活性)を有する試験化合物(「リード化合物」と呼ばれる)の同定、リード化合物の変異型の作製、および変異化合物の性質および活性の評価によって作製する。しばしば、かかる分析のために高処理スクリーニング(HTS)法を使用する。
【0043】
「有機小分子」は、分子量が約50ダルトン超且つ約2500ダルトン未満、好ましくは約2000ダルトン未満、好ましくは約100〜約1000ダルトン、より好ましくは約200〜約500ダルトンの天然または合成の有機分子をいう。
【0044】
細胞毒性薬には、「細胞周期特異的」、「抗有糸分裂性」、または「細胞骨格相互性」の薬物が含まれる。これらの用語は、交換可能に、有糸分裂中の細胞を遮断する任意の薬理学的作用因子をいう。かかる薬剤は、化学療法で有用である。一般に、細胞周期特異的薬物は、細胞骨格タンパク質であるチューブリンに結合してチューブリンが微小管に重合する能力を遮断し、それにより、中期の細胞分裂が停止される。細胞周期特異的薬物の例には、ビンカアルカロイド、タキサン、コルヒチン、およびポドフィロトキシンが含まれる。ビンカアルカロイドの例には、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン およびビノレルビンが含まれる。タキサンの例には、パクリタキセルおよびドセタキセルが含まれる。細胞骨格相互作用薬の別の例には、2−メトキシエストラジオールが含まれる。
【0045】
「siRNA」または「RNAi」は、siRNAが遺伝子または標的遺伝子と同一の細胞中で発現される場合にこの遺伝子または標的遺伝子の発現を減少または阻害する能力を有する二本鎖RNAを形成する核酸をいう。したがって、「siRNA」または「RNAi」は、相補鎖によって形成された二本鎖RNAをいう。ハイブリッド形成して二本酸分子を形成するsiRNAの相補部分は、典型的には、実質的または完全に同一である。1つの実施形態では、siRNAは、標的遺伝子と実質的にまたは完全に同一であり、二本酸siRNAを形成する核酸をいう。典型的には、siRNAは、少なくとも約15〜50ヌクレオチド長である(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は15〜50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは約15〜50塩基対長、好ましくは約20〜30塩基のヌクレオチド長、好ましくは約20〜25または24〜29ヌクレオチド長(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長)である)。
【0046】
siRNA分子およびベクターのデザインおよび作製は、当業者に周知である。例えば、適切なsiRNAのデザインに有効な過程は、mRNA転写物をAUG開始コドンから開始させ(例えば、図5を参照のこと)、AAジヌクレオチド配列についてスキャンする(Elbashir et al.EMBO J 20:6877−6888(2001)を参照のこと)。各AAおよび3’隣接ヌクレオチドは、潜在的なsiRNA標的部位である。隣接部位配列の長さによってsiRNAの長さが決定される。例えば、19個の隣接部位により、21ヌクレオチド長のsiRNAが得られるであろう。3’オーバーハングUUジヌクレオチドを有するsiRNAは、しばしば最も有効である。このアプローチはまた、ヘアピンsiRNAを転写するためのRNA pol IIIの使用に適合する。RNA pol IIIは、4−6ヌクレオチドポリ(T)領域で転写を終結させ、短いポリ(U)テールを有するRNA分子を作製する。しかし、他の3’末端ジヌクレオチドオーバーハングを有するsiRNAはまた、RNAiを有効に誘導することができ、配列を経験的に選択することができる。選択性について、他のコード配列に相同な16〜17個を超える連続塩基対を有する標的配列を、BLAST検索の実施によって回避することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと)。
【0047】
siRNAを直接投与するかsiRNA発現ベクターを使用して異なるデザイン基準を有し得るRNAiを誘導することができる。ベクターを、短いスペーサー配列によって分離された2つの逆方向反復に挿入し、転写終結に役立つ一連のTで終結させることができる。発現したRNA転写物は、短いヘアピンsiRNAに折り畳まれると予想される。siRNA標的配列の選択、推定ヘアピンのステムをコードする逆方向反復、逆方向反復の順序、ヘアピンのループをコードするスペーサー配列の長さおよび組成、ならびに5’オーバーハングの有無を変化させることができる。siRNA発現カセットの好ましい順序は、センス鎖、短いスペーサー、およびアンチセンス鎖である。これらの種々のステム長(例えば、15〜30)を有するヘアピンsiRNAが適切であり得る。ヘアピンsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖に結合するループの長さは、種々の長さ(例えば、3〜9ヌクレオチドまたはそれを超える)であり得る。ベクターは、siRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されるプロモーターおよび発現エンハンサーまたは他の調節エレメントを含むことができる。発現「調節配列」は、特定の宿主生物中の作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列をいう。原核生物に適切な調節配列には、プロモーター、任意選択的にオペレーター配列、およびリボゾーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが公知である。これらの調節エレメントを、制御エレメントが応答する外因子の付加または調節によって遺伝子発現をオフまたはオンにすることが臨床家によって行うことができるようにデザインすることができる。
【0048】
所望の治療遺伝子のコード配列および調節配列を含む適切なベクターの構築は、当該分野で十分に理解されている標準的なライゲーション技術および制限技術を使用する(Maniatis et al.,in Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1982)を参照のこと)。単離されたプラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドを、切断し、調整し、所望の形態に再ライゲーションする。
【0049】
別の核酸配列と機能的関係にある場合、核酸は、「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質として発現する場合、DNAに作動可能に連結しているか、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されているか、リボゾーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合、コード配列に作動可能に連結している。一般に、「作動可能に連結された」は、連結されるDNA配列が相互に隣接して存在し、分泌リーダーの場合、連続して読み取り枠に合って存在することを意味する。しかし、エンハンサーは、連続する必要はない。都合のよい制限部位でのライゲーションによって連結する。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、従来の実務にしたがって使用する。
【0050】
「機能的影響の決定」は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間接的または直接的影響下にあるパラメーターが増加または減少する化合物のアッセイ(例えば、物理的および化学的または表現型の影響の測定)をいう。かかる機能的影響を、当業者に公知の任意の手段(例えば、タンパク質の分光学的変化(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的変化(例えば、形状)、クロマトグラフの変化、または溶解性の変化)、タンパク質の誘導性マーカーまたは転写活性化の測定、結合活性の測定または結合アッセイ(例えば、抗体への結合)、リガンド結合親和性の変化の測定、カルシウム流入の測定、本発明のポリペプチドの酵素産物の蓄積または基質枯渇の測定、本発明のポリペプチドの酵素活性(例えば、キナーゼ活性)の変化、タンパク質レベルの変化の測定、RNA安定性の測定、Gタンパク質結合、GPCRリン酸化または脱リン酸化、シグナル伝達(例えば、受容体−リガンド相互作用、第2メッセンジャーの濃度(例えば、cAMP、IP3、または細胞内Ca2+))、例えば、化学発光、蛍光、比色反応、抗体結合、誘導性マーカー、およびリガンド結合アッセイによるレポーター遺伝子発現の下流の同定(CAT、ルシフェラーゼ、β−gal、およびGFPなど))によって測定することができる。
【0051】
潜在的アクチベーター、インヒビター、またはモジュレーターである本明細書中に記載の核酸またはタンパク質を含むサンプルまたはアッセイを、インヒビター、アクチベーター、またはモジュレーターを含まないコントロールサンプルを比較して、阻害範囲を試験する。コントロールサンプル(インヒビターで未処置)を、相対タンパク質活性値100%に割り当てる。コントロールと比較した活性値が約80%、好ましく50%、より好ましくは25〜0%である場合、阻害されている。コントロール(アクチベーターで未処置)と比較した活性値が110%、より好ましくは150%、より好ましくは200〜500%(コントロールと比較して2〜5倍)、より好ましくは1000〜3000%である場合、活性化されている。
【0052】
「生体サンプル」には、生検および剖検サンプルならびに組織学的目的のために採取した凍結切片などの組織切片が含まれる。かかるサンプルには、血液および血液の画分または産物(例えば、血清、血漿、血小板、および赤血球など)、唾液、組織、培養細胞(例えば、初代培養物)、外植片、および形質転換細胞、排泄物、尿などが含まれる。生体サンプルを、典型的には、真核生物、最も好ましくは哺乳動物(霊長類(例えば、チンパンジーまたはヒトなど)、ウシ、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えば、モルモット、ラット、マウス)、ウサギ、トリ、爬虫類、または魚類)から得る。
【0053】
「生検」は、診断または予後の評価のために組織サンプルを取り出す過程および組織標本自体をいう。当該分野で公知の任意の生検技術を、本発明の診断方法および予後方法に適用することができる。適用される生検技術は、評価すべき組織型(すなわち、前立腺、リンパ節、肝臓、骨髄、血球)、腫瘍のサイズおよび型(すなわち、固体または懸濁(すなわち、血液または腹水))などに依存するであろう。代表的生検技術には、切除生検、切開生検、針生検、外科生検、および骨髄生検が含まれる。「切除生検」は、生検周囲の少しの正常組織を含む全腫瘤の除去をいう。「切開生検」は、腫瘍の断面直径を含む楔形の組織の除去をいう。内視鏡または蛍光透視検査によって行う診断または予後は、腫瘤の「コアニードル生検(core−needle biopsy)」または一般に腫瘤内部から細胞の懸濁液を得る「穿刺吸引生検(fine−needle aspiration biopsy)」が必要であり得る。生検技術は、例えば、Harrison ’s Principles of Internal Medicine,Kasper,et al,eds.,16th ed.,2005のChapter 70およびPart V全体で考察されている。
【0054】
2つまたはそれを超える核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における用語「同一」または「同一」率は、下記のデフォルトパラメーターを使用したBLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用するか、手作業のアラインメントおよび目視検査によって測定した場合、同一であるか同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定の比率(すなわち、比較ウィンドウまたは指定の領域と最大対応させるために比較および整列させた場合に指定の領域と約60%同一、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて同一である)の2つまたはそれを超える配列またはサブシーケンスをいう(例えば、NCBI ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照のこと)。次いで、かかる配列を、「実質的に同一である」という。この定義はまた、試験配列の相補物をいうか、これに適用することができる。定義は、欠失および/または付加された配列ならびに置換された配列も含まれる。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを含み得る。好ましくは、少なくとも25アミノ酸長またはヌクレオチド長の配列、より好ましくは50〜100アミノ酸長またはヌクレオチド長の領域にわたって同一である。
【0055】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列と比較する基準配列の機能を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および基準配列を、コンピュータに入力し、サブシーケンス座標を指定し、必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。好ましくは、デフォルトプログラムパラメーターを使用することができるか、別のパラメーターを指定することできる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて基準配列と比較した試験配列の配列同一率を計算する。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「比較ウィンドウ」には、2つの配列を最適に整列させた後に配列を同数の連続する位置の基準配列と比較することができる、20〜600、通常約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群から選択される連続した位置数のいずれか1つのセグメントに対する基準が含まれる。比較のための配列のアラインメント方法は、当該分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントを、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat 7.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動のアラインメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.1995 supplement)を参照のこと)によって行うことができる。
【0057】
配列同一率および配列類似率の決定に適切なアルゴリズムの好ましい例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al,Nuc.Acids Res.25:3389−3402(1977)およびAltschul et al,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0を、本発明の核酸およびタンパク質の配列同一率を決定するための本明細書中に記載のパラメーターと共に使用する。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公的に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同一の長さのワードと整列させた場合にいくつかの正の数の閾値スコアTに適合するか満たすクエリー配列中の長さWの短いワードの決定によって高スコアリング配列対(high scoring sequence pairs)(HSP)を最初に同定する工程を含む。Tは、隣接するワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al,supra)。これらの最初の隣接ワードヒットは、これらを含むより長いHSPを見出すための検索開始のための種(seed)の機能を果たす。累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、ワードヒットを各配列に沿って両方の方向に伸長する。ヌクレオチド配列についてはパラメーターM(適合残基対についてのリウォードスコア(reward score);常に0超)およびN(ミスマッチ残基についてのペナルティスコア;常に0未満)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列について、スコアリング行列を使用して、累積スコアを計算する。以下の場合に各方向でのワードヒットの伸長を中止する:累積アラインメントスコアがその達成された最大値から量Xまで低下する場合、1つまたは複数の負にスコアリングされた残基アラインメントの蓄積によって累積スコアが0以下になった場合、またはいずれかの配列の末端に到達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定づける。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルト値としてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルト値としてワード長3および期待値(E)10、BLOSUM62スコアリング行列(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989))、アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両鎖の比較を使用する。
【0058】
「核酸」は、一本鎖形態または二本鎖形態およびその相補物のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそのポリマーをいう。この用語は、公知のヌクレオチドアナログまたは修飾骨格残基または連鎖を含む核酸、基準核酸と類似の結合性を有する合成、天然、および非天然の核酸、および類似の様式で基準ヌクレオチドに代謝される核酸を含む。かかるアナログの例には、ホスホロチオアート、ホスホルアミダート、メチルホスホナート、キラル−メチルホスホナート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNAs)が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
他で示さない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変異型(例えば、縮重コドン置換)および相補配列ならびに暗に示された配列を暗に含む。具体的には、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基に置換された配列の生成によって縮重コドン置換を行うことができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol Chem.260:2605−2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語「核酸」を、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと交換可能に使用する。
【0060】
特定の核酸配列はまた、「スプライスバリアント」を暗に含む。同様に、核酸によってコードされる特定のタンパク質は、その核酸のスプライスバリアントによってコードされる任意のタンパク質を暗に含む。名称によって示唆されるように、「スプライスバリアント」は、遺伝子の選択的スプライシング産物である。転写後、最初の核酸転写物を、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライシングすることができる。スプライスバリアントの産生機構は様々であるが、エクソンの選択的スプライシングが含まれる。リードスルー転写(read−through transcription)による同一核酸由来の別のポリペプチドも、本定義に含まれる。スプライシング反応の任意の産物(スプライス産物の組換え形態が含まれる)は、本定義に含まれる。カリウムチャネルスプライスバリアントの例は、Leicher,et al.,J.Biol.Chem.273(52):35095−35101(1998)で考察されている。
【0061】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーをいうために本明細書中で交換可能に使用される。この用語を、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸であるアミノ酸ポリマーならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用する。
【0062】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物をいう。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸ならびにその後に修飾されるアミノ酸(例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基(例えば、ホモセリン、ノルリシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)に結合するα)を有する化合物をいう。かかるアナログは、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と類似の様式で機能する化合物をいう。
【0063】
アミノ酸を、本明細書中で、その一般に知られている三文字表記またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている一文字表記のいずれかによって示すことができる。ヌクレオチドを、同様に、その一般的に受け入れられている一文字表記によって示すことができる。
【0064】
「保存的に修飾された変異型」を、アミノ酸および核酸の両方に適用する。特定のアミノ酸配列に関して、保存的に修飾された変異型は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいうか、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列をいう。遺伝暗号の縮重のために、多数の機能的に同一な核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、あるコドンによってアラニンが指定される全ての位置で、コードされるポリペプチドを変化させることなく、任意の記載の対応するコドンを変化させることができる。かかる核酸の変動(variation)は、「サイレント変動」であり、これは、保存的に修飾された変動の1種である。ポリペプチドをコードする本明細書中の全核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレント変動を記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常唯一のメチオニンコドンであるAUGおよび通常唯一のトリプトファンコドンであるTGG以外)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができると認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変動は、実際のプローブ配列ではなく発現産物に関して記載の各配列に潜在する。
【0065】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中のアミノ酸の1つのアミノ酸または少数のアミノ酸を変化、付加、または欠失する核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、またはタンパク質配列に対するそれぞれの置換、欠失、または付加が「保存的に修飾された変異型」であり、この変化により、アミノ酸が化学的に類似するアミノ酸と置換されることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を示す保存的置換表は、当該分野で周知である。かかる保存的に修飾された変異型を追加し、本発明の多型変異型、種間ホモログ、および対立遺伝子を排除しない。
【0066】
以下の8つの群は、それぞれ、相互に保存的に置換されるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);および8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)を参照のこと)。
【0067】
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、または他の物理学的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAで一般に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、または、例えば放射性標識のペプチドへの組み込みによって検出可能になるか、ペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用されるハプテンおよびタンパク質が含まれる。
【0068】
用語「組換え」は、例えば、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターに関して使用する場合、細胞、核酸、タンパク質、または異種ベクターが核酸またはタンパク質の導入または未変性の核酸またはタンパク質の変化によって修飾されているか細胞がそのようにして修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の未変性(非組換え)形態内で見出されない遺伝子を発現するか、そうでなければ以上に発現されるか、過小発現されるか、全く発現されない未変性遺伝子を発現する。
【0069】
用語「異種」は、核酸の一部に関して使用する場合、核酸が天然で相互に同一の関係で見出されない2つまたはそれを超えるサブシーケンスを含むことを示す。例えば、核酸は、典型的には組換えによって産生され、新規の機能的核酸が作製されるように配置された無関係の遺伝子由来の2つまたはそれを超える配列を有する(例えば、一方の供給源由来のプロモーターおよび他方の供給源由来のコード領域)。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が天然で相互に同一の関係で見出されない2つまたはそれを超えるサブシーケンスを含むことを示す(例えば、融合タンパク質)。
【0070】
句「ストリンジェントなハイブリッド形成条件」は、典型的には核酸の混合物中でプローブがその標的サブシーケンスとハイブリッド形成するが他の配列とハイブリッド形成しない条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、環境によって異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリッド形成する。核酸ハイブリッド形成のより詳細なガイドは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。一般に、ストリンジェントな条件を、定義したイオン強度pHで特定の配列の融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択する。Tmは、(定義したイオン強度、pH、および核濃度において)標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリッド形成する温度である(Tmで標的配列が過剰に存在する場合、平衡状態でプローブが50%を占める)。ホルムアミドなどの不安定化剤を添加してストリンジェントな条件を達成することもできる。選択的または特定のハイブリッド形成のために、正のシグナルはバックグラウンドの少なくとも2倍であり、好ましくは、バックグラウンドハイブリッド形成の10倍である。ストリンジェントなハイブリッド形成条件の例は、以下であり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDSにて42℃でインキュベーションまたは5×SSC、1%SDSにて65℃でインキュベーション、65℃での0.2×SSCおよび0.1%SDSによる洗浄。
【0071】
ストリンジェントな条件下で相互にハイブリッド形成しない核酸は、これらの核酸がコードするポリペプチドが実質的に同一である場合、依然として実質的に同一である。例えば、遺伝暗号によって許容された最大コドン縮重を使用して核酸のコピーが作製する場合にこれが起こる。そのような場合、核酸は、典型的に、中ストリンジェントなハイブリッド形成条件下でハイブリッド形成する。例示的な「中ストリンジェントなハイブリッド形成条件」には、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSで37℃、および45℃の1×SSCでの洗浄が含まれる。正のハイブリッド形成は、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、別のハイブリッド形成および洗浄条件を使用して類似のストリンジェンシー条件を得ることができることを容易に認識する。ハイブリッド形成パラメーターの決定についてのさらなるガイドは、多数の参考文献(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel,et ai,John Wiley & Sons)に示されている。
【0072】
PCRについて、約36℃が低ストリンジェンシー増幅に典型的であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに応じて約32℃と48℃との間で変化し得る。高ストリンジェンシーPCR増幅について、約62℃が典型的であるが、高ストリンジェンシーアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に応じて約50℃〜65℃の範囲であり得る。高および低ストリンジェンシー増幅の両方について典型的なサイクル条件は、90℃〜95℃で30秒間〜2分間の変性期、30秒〜2分間持続させるアニーリング期、および約72℃で1〜2分間の伸長期を含む。低および高ストリンジェンシー増幅反応についてのプロトコールおよびガイドラインは、例えば、Innis et al.(1990)PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.)に示されている。
【0073】
「抗体」は、抗原に特異的に結合し、認識する免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメント由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドをいう。認識された免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεに分類され、同様に、免疫グロブリンクラス(IgG,IgM,IgA,IgD、およびIgE)を定義する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性および親和性において最も重要であろう。
【0074】
例示的免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対は1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100〜110またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を定義する。用語「可変軽鎖(VL)」および「可変重鎖(VH)」は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖をいう。
【0075】
抗体は、例えば、インタクトな免疫グロブリンまたは種々のペプチダーゼでの消化によって産生された多数の十分に特徴づけられたフラグメントとして存在する。したがって、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、F(ab)’2(それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に連結した軽鎖であるFabの二量体)を産生する。F(ab)’2を穏やかな条件下で還元して、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を破壊し、それにより、F(ab)’2二量体をFab’単量体に変換することができる。Fab’単量体は、本質的に、ヒンジ領域の一部を含むFabである(Fundamental Immunology(Paul ed.,3d ed.1993)を参照のこと)。種々の抗体フラグメントをインタクトな抗体の消化に関して定義する一方で、当業者は、かかるフラグメントを化学的または組換えDNA法の使用のいずれかによってde novoで合成することができることを認識するであろう。したがって、本明細書中で使用する場合、用語「抗体」には、全抗体の修飾によって産生された抗体フラグメント、組換えDNA法を使用してde novoで合成された抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定した抗体フラグメントも含まれる(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990)を参照のこと)。
【0076】
本発明および本発明の使用に適切な抗体(例えば、組換え抗体、モノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体)の調製のために、当該分野で公知の多数の技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein,Nature 256:495−497(1975);Kozbor et ah,Immunology Today 4:72(1983);Cole et al.,pp.77−96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985);Coligan,Current Protocols in Immunology(1991);Harlow & Lane,Antibodies,A Laboratory Manual(1988);およびGoding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.1986)を参照のこと)。目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を、細胞からクローニングすることができる(例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、これを使用して組換えモノクローナル抗体を産生することができる)。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーを、ハイブリドーマまたは形質細胞から作製することもできる。重鎖および軽鎖の遺伝子産物の無作為な組み合わせにより、異なる抗原特異性を有する抗体の巨大なプールを生成する(例えば、Kuby,Immunology(3rd ed.1997)を参照のこと)。単鎖抗体または組換え抗体の産生技術(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)を適用して、本発明のポリペプチドに対する抗体を産生することができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物(他の哺乳動物など)を使用して、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現することができる(例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号,Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−13(1994);Fishwild el al.,Nature Biotechnology 14:845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);およびLonberg & Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照のこと)。あるいは、ファージディスプレイテクノロジーを使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFabフラグメントを同定することができる(例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990);Marks et al.,Biotechnology 10:779−783(1992)を参照のこと)。抗体を二重特異性にすることもできる(すなわち、2つの異なる抗原を認識することができる)(例えば、WO93/08829号,Traunecker et al.,EMBO J.10:3655−3659(1991);およびSuresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと)。抗体はまた、ヘテロ抱合体(heteroconjugate)(例えば、2つの共有結合した抗体または免疫毒素)であり得る(例えば、米国特許第4,676,980号,WO91/00360号;WO 92/200373号;およびEP03089号を参照のこと)。
【0077】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化方法は、当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の抗体に導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基を、しばしば、輸送残基といい、典型的には、輸送可変ドメインから採取する。ヒト化を、本質的に、Winter and co−workersの方法(例えば、Jones et al,Nature 321:522−525(1986);Riechmann et al,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyen et al,Science 239:1534−1536(1988)およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992))に従って、げっ歯類CDRまたはCDR配列の対応するヒト抗体の配列との置換によって行うことができる。したがって、かかるヒト化抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、これは、実質的にインタクトなヒト可変ドメイン未満が対応する非ヒト種由来の配列に置換されている。実際、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基および恐らくいくつかのFR残基がげっ歯類抗体中の類似の部位由来の残基と置換されたヒト抗体である。
【0078】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるか変化したクラス、エフェクター機能、および/または種の定常領域、またはキメラ抗体に新規の性質を付与する全く異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物など)に連結されるように定常領域またはその一部を変化、置換、または交換したか、(b)可変領域またはその一部を異なるまたは変化した抗原特異性を有する可変領域で変化させるか、置換するか、交換した抗体分子である。本発明および本発明の使用に好ましい抗体には、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体が含まれる。
【0079】
1つの実施形態では、抗体を、「エフェクター」部分に抱合する。エフェクター部分は、かなりの数の分子(放射性標識または蛍光標識などの標識部分が含まれる)であり得るか、治療部分であり得る。1つの態様では、抗体はタンパク質の活性を調整する。かかるエフェクター部分には、抗腫瘍薬、毒素、放射性作用因子、サイトカイン、第2の抗体または酵素が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、本発明の抗体を、プロドラッグを細胞毒性薬に変換する酵素に連結する実施形態を提供する。
【0080】
免疫抱合体を、N−カドヘリンまたはLy6−E陽性細胞(特に、N−カドヘリンまたはLy6タンパク質を過剰発現する細胞)へのエフェクター部分のターゲティングに使用することができる。かかる相違は、試験サンプルおよびコントロールサンプルをほぼ同様にロードしたゲルのバンドを観察した場合に容易に明らかであり得る。細胞毒性薬の例には、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン(dihydroxy anthracin dione)、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アルブリン(abrin)、糖質コルチコイド、他の化学療法薬、および放射性同位体が含まれるが、これらに限定されない。適切な検出可能なマーカーには、放射性同位体、蛍光化合物、生体発光化合物、化学発光化合物、金属キレーター、または酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLy6−Eに対する抗体を提供する。N−カドヘリンまたはLy6−E抗体を全身に単独またはエフェクター部分と抱合して使用して、癌(例えば、前立腺癌または膀胱癌)を治療することができる。リシンなどの毒剤と抱合したN−カドヘリンまたはLy6−E抗体および非抱合抗体は、N−カドヘリンまたはLy6−E保有前立腺癌細胞を天然にターゲティングする有用な治療薬であり得る。かかる抗体は、侵襲性の遮断で有用でありうる。本発明の使用に適切なN−カドヘリン抗体には、GC4 1H7、1F12、2B3が含まれるが、これらに限定されない。
【0082】
さらに、本発明の任意のモノクローナル抗体の抗原結合領域を含む本発明の組換えタンパク質を使用して、癌を治療することができる。かかる状況では、組換えタンパク質を抗原結合領域を、治療活性を有する第2のタンパク質の少なくとも機能的に活性な部分に連結する。第2のタンパク質には、酵素、リンホカイン、オンコスタチン、または毒素が含まれるが、これらに限定されない。適切な毒素には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、リシン、アルブリン、糖質コルチコイド、および放射性同位体が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
治療薬の抗体への抱合技術は周知である(例えば、Arnon et al.,“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243−56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,“Antibodies For Drug Delivery”in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623−53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review” in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475−506(1985);およびThorpe et al.,“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.,62:119−58(1982)を参照のこと)。
【0084】
句、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または抗体「と特異的に(または選択的に)免疫反応性を示す」は、タンパク質またはペプチドに関する場合、しばしばタンパク質および他の生体物質(biologics)の異種集団中のタンパク質の存在を決定する結合反応をいう。したがって、指定の免疫アッセイ条件下で、指定の抗体は、特定のタンパク質と、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10〜100倍を超えて結合する。かかる条件下での抗体への特異的結合は、特定のタンパクに対するその特異性について選択される抗体を必要とする。例えば、選択した抗原と特異的に免疫反応性を示すが、他のタンパク質では示さないポリクローナル抗体のみが得られるようにポリクローナル抗体を選択することができる。他の分子と交差反応する抗体を取り去ることによってこの選択を行うことができる。種々の免疫アッセイ形式を使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性を示す抗体を選択することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイを日常的に使用して、タンパク質と特異的に免疫反応性を示す抗体を選択する(例えば、特異的免疫反応性を決定するために使用することができる免疫アッセイ形式および条件の説明については、Harlow & Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manual(1998)を参照のこと)。
【0085】
「治療有効用量または量」は、本明細書中で、投与効果が得られる用量を意味する。正確な用量および処方は、治療目的に依存し、当業者は公知の技術を使用して確認可能であろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1−3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Gennaro,Editor(2003)およびPickar,Dosage Calculations(1999)を参照のこと)。
【0086】
「薬学的に許容可能な塩」または「薬学的に許容可能なキャリア」は、本明細書中に記載の化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的非毒性の酸または塩基を使用して調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含む場合、原液または適切な不活性溶媒中でかかる化合物の中性形態を十分な量の所望の塩基と接触させることによって塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な塩基付加塩の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、マグネシウム塩、または類似の塩が含まれる。本発明の化合物が比較的塩基性の官能基を含む場合、原液または適切な不活性溶媒中でかかる化合物の中性形態を十分な量の所望の酸と接触させることによって酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容可能な酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic)、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨード化水素、亜リン酸(phosphorous acid)のような無機酸由来の酸付加塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、およびメタンスルホン酸のような比較的非毒性の有機酸由来の塩が含まれる。アルギン酸などのアミノ酸の塩およびグルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge et al.,Journal of Pharmaceutical Science 66:1−19(1977)を参照のこと)。本発明の一定の特異的化合物は、化合物を塩基付加塩または酸付加塩に変換することが可能な塩基性および酸性の官能基の両方を含む。当業者に公知の他の薬学的に許容可能なキャリアが、本発明に適切である。
【0087】
化合物の中性形態を、従来の様式での塩の塩基または酸との接触および親化合物の単離によって再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒中の溶解性などの一定の物理的性質が種々の塩形態と異なるが、そうでなければ、塩は本発明の目的の化合物の親形態と等価である。
【0088】
塩形態に加えて、本発明は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書中に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で化学変化を容易に受けて本発明の化合物が得られる化合物である。さらに、プロドラッグを、ex vivo環境下で化学的方法または生化学的方法によって本発明の化合物に変換することができる。例えば、適切な酵素または化学試薬を含む経皮パッチリザーバに含めた場合、プロドラッグを本発明の化合物にゆっくり変換することができる。
【0089】
本発明の一定の化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態(水和形態が含まれる)で存在することができる。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に含まれることが意図される。本発明の一定の化合物は、多結晶形態または無定形形態で存在することができる。一般に、全物理的形態は、本発明によって意図される使用について等価であり、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0090】
本発明の一定の化合物は、非対称炭素原子(光学中心)または二重結合を保有し、ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体、および各異性体は全て本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0091】
上皮−間葉転換(EMT)は、上皮腫瘍細胞による間質特性の獲得をいう。癌では、EMTは、浸潤および運動性挙動に関連し、転移の基礎をなす中心的過程であり得る。EMTは、予後不良に関連し、複数の転写因子(SNAIL、SLUG、およびTWIST)によって媒介される。
【0092】
E−カドヘリンは、一般に浸潤性および転移性の固形腫瘍で喪失する上皮細胞−細胞接着に関与する細胞表面タンパク質である。
詳細な実施形態
本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌、特に、泌尿生殖器癌(前立腺癌および/または膀胱癌が含まれる)のリスクがある個体を診断し、予後を得る方法を提供する。本方法は、一般に、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させる工程、およびN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して試験組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の有無を決定する工程を含む。典型的には、組織サンプルは血清であるが、生検、特に、泌尿生殖器組織(前立腺組織または膀胱組織が含まれる)由来の組織でもあり得る。通常、抗体はモノクローナル抗体である。癌を有することが知られていない個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、より高いレベルのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質が検出される場合(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、4倍、またはそれを超える)、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陽性と診断される。例えば、当該分野で公知の標準的なELISA技術を使用して、検出方法を実施することができる(Gosling,Immunoassays:A Practical Approach,2000,Oxford University Pressに概説)。例えば、放射性同位体、蛍光標識、酵素、または当該分野で公知の任意の他の検出可能な標識での一次抗体または二次抗体の標識によって検出する。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルをN−カドヘリンまたはLY6−E核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触させる工程、サンプル中でN−カドヘリンまたはLY6−E核酸を増幅する工程、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して試験組織サンプル中のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の有無を決定する工程による、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌、特に、前立腺癌または膀胱癌のリスクがある個体を診断し、予後を得る方法を提供する。さらに、通常、組織サンプルは血清であるが、生検、特に、泌尿生殖器組織(前立腺組織または膀胱組織が含まれる)由来の組織でもあり得る。癌を有することが知られていない個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、より高いレベルのN−カドヘリンまたはLY6−E転写RNAが検出される場合、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌について陽性と診断される。
【0094】
本発明はまた、治療有効量のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の結合を阻害する化合物を癌腫瘍組織の細胞上のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体にそれぞれ投与する工程によるによるN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌の癌療法に対する応答を改善する方法を提供する。いくつかの実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合を阻害する方法を、別の抗癌療法(例えば、耐性、腫瘍進行、および転移の逆転のための公知の化学療法、免疫療法、および放射線療法が含まれる)と同時に行う。
【0095】
本発明は、さらに、腫瘍組織の細胞上のN−カドヘリンまたはLY6−E受容体へのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のそれぞれの結合を阻害する工程を含む、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する腫瘍の成長を阻害し、退行を促進する方法を提供する。N−カドヘリンまたはLY6−E受容体へのN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のそれぞれの結合を阻害する十分量の化合物を必要とする個体に投与することによって本方法を行うことができる。いくつかの実施形態では、化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−E受容体に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の転写または翻訳を防止する。本方法は、特に、前立腺癌および膀胱癌の治療で使用する。いくつかの実施形態では、化合物は、ポリペプチド(N−カドヘリンまたはLY6−Eポリペプチドの抗体、アナログ、またはフラグメントが含まれる)を含む。
【0096】
本方法は、特に、前立腺癌および膀胱癌の診断、予後、および治療で適用される。一定の実施形態では、本方法は、耐ホルモン性癌または治療耐性癌に適用される。一定の実施形態では、本方法は、転移性癌に適用される。例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質および/またはmRNAの差分発現の比較を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはmRNA転写物を過剰発現する癌を有する固体の癌の病期を決定することができる。
【0097】
治療は、一般に、有効用量の静脈注射(IV)などの許容可能な投与経路による抗N−カドヘリンまたは抗LY6−E抗体、免疫抱合体、インヒビター、およびsiRNA調製物の反復投与を含むであろう。投薬量は、当業者に一般に認識される種々の要因(癌の型の重症度、悪性度、または癌の病期、使用薬剤の結合親和性および半減期、患者におけるN−カドヘリンまたはLY6−E発現の程度、分断N−カドヘリンまたはLY6−E抗原の循環範囲、所望の定常状態の抗体濃度レベル、治療頻度、および本発明の治療方法と組み合わせて使用される化学療法薬の影響が含まれるが、これらに限定されない)に依存するであろう。典型的な1日量は、約0.1〜100mg/kgの範囲であり得る。10〜500mgのmAbまたは免疫抱合体/週の範囲の用量が有効且つ十分に許容され得るが、さらにより高い週用量が適切および/または十分に許容され得る。適切な用量の定義における主な決定要因は、特定の状況において治療有効量であるために必要な特定の薬剤の量である。腫瘍の阻害または退行を達成するために反復投与が必要であり得る。初期負荷用量はより高くて良い。初期負荷用量を、注入として投与することができる。初期用量が十分に許容された場合、周期的維持用量を同様に投与することができる。
【0098】
薬剤の直接投与も可能であり、一定の状況で有利であり得る。例えば、膀胱癌治療のために、薬剤を、膀胱に直接注射することができる。膀胱に直接投与する薬剤が患者から迅速にクリアランスされるので、抗原性の有意な合併症を引き起こすことなく非ヒト抗体またはキメラ抗体を有効に使用することが可能である。
【0099】
本発明は、さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメントを含むように処方されたワクチンを提供する。抗癌療法で使用するための体液性免疫および細胞性免疫を生成するためのワクチンにおける腫瘍抗原の使用は、当該分野で周知であり、例えば、ヒトPSMAおよびげっ歯類PAP免疫原を使用した前立腺癌で使用されている(Hodge et al.,1995,Int.J.Cancer 63:231−237;Fong et al.,1997,J.Immunol.159:3113−3117)。かかる方法を、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメント、またはN−カドヘリンまたはLY6−Eコード核酸分子およびN−カドヘリンまたはLY6−E免疫原を発現するか適切に提示することができる組換えベクターの使用によって容易に実施することができる。
【0100】
例えば、ウイルス遺伝子送達系を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eコード核酸分子を送達することができる。本発明のこの態様の実施で使用することができる種々のウイルス遺伝子送達系には、ワクシニア、カナリア痘ウイルス、アデノウイルス、インフルエンザ、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、シンドビスウイルス が含まれるが、これらに限定されない(Restifo,1996,Curr.Opin.Immunol.8:658−663)。抗腫瘍応答を誘導するために患者に導入された(例えば、筋肉内に)N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメントをコードする裸のDNAの使用によって非ウイルス送達系も使用することもできる。1つの実施形態では、全長ヒトN−カドヘリンまたはLY6−E cDNAを使用することができる。別の実施形態では、特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープをコードするN−カドヘリンまたはLY6−E核酸分子を使用することができる。指定のHLA対立遺伝子に任意選択的に結合することができるN−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質内のペプチドを同定するための特定のアルゴリズム(例えば、Epimer,Brown University)を使用してCTLエピトープを決定することができる。
【0101】
種々のex vivoストラテジーを使用することもできる。1つのアプローチは、N−カドヘリンまたはLY6−E抗原を患者の免疫系に提示するための樹状細胞の使用を含む。樹状細胞は、MHCクラスIおよびII、B7共刺激因子、およびIL−12であり、したがって、高度に特殊化した抗原提示細胞である。前立腺癌では、N−カドヘリンまたはLY6−Eのペプチドでパルスした自家樹状細胞を使用して、前立腺癌患者の免疫系を刺激することができる(Tjoa et al.,1996,Prostate 28:65−69;Murphy et al.,1996,Prostate 29:371− 380)。樹状細胞を使用して、MHCクラスIおよびII分子の状況でN−カドヘリンまたはLY6−EペプチドをT細胞に提示することができる。1つの実施形態では、自家樹状細胞を、MHC分子に結合することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eペプチドでパルスする。別の実施形態では、樹状細胞を、完全なN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質でパルスする。さらに別の実施形態は、当該分野で公知の種々の実施ベクター(implementing vector)(アデノウイルス(Arthur et al.,1997,Cancer Gene Ther.4:17−25)、レトロウイルス(Henderson et al.,1996,Cancer Res.56:3763−3770)、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、DNAトランスフェクション(Ribas et al.,1997,Cancer Res.57:2865−2869)、および腫瘍由来RNAトランスフェクション(Ashley et al.,1997,J.Exp.Med.186:1177−1182))を使用して樹状細胞中でN−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子の過剰発現を操作する工程を含む。
【0102】
抗イディオタイプ抗N−カドヘリンまたは抗LY6−E抗体を、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質をそれぞれ発現する細胞に対して免疫応答を誘導するためのワクチンとして抗癌療法で使用することもできる。具体的には、抗イディオタイプ抗体の生成は、当該分野で周知であり、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質上のエピトープをそれぞれ模倣する抗イディオタイプ抗N−カドヘリンまたは抗LY6−E抗体を生成するように容易に適合させることができる(例えば、Wagner et al.,1997,Hybridoma 16:33−40;Foon et al.,1995,J Clin Invest 96:334−342;Herlyn et al.,1996,Cancer Immunol Immunother 43:65−76)。かかる抗イディオタイプ抗体を、腫瘍抗原に指向する他の抗イディオタイプ抗体を使用して現在実施されている抗イディオタイプ療法で使用することができる。
【0103】
遺伝子免疫化法を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eを発現する癌細胞に指向する予防用または治療用の体液性および細胞性免疫応答を得ることができる。本明細書中に記載のN−カドヘリンまたはLY6−EコードDNA分子を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原をコードするDNAおよび適切な調節配列を含む構築物を、個体の筋肉または皮膚に直接注射し、その結果、筋肉細胞または皮膚細胞が構築物を取り込み、コードされたN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原を発現させることができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原を、細胞表面タンパク質として発現するか分泌することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質/免疫原の発現により、前立腺癌に対する予防用または治療用の体液性免疫および細胞性免疫が得られる。当該分野で公知の種々の予防用および治療用遺伝子免疫化技術を使用することができる(概説として、インターネットアドレスwww.genweb.comに公開された情報および参考文献を参照のこと)。
【0104】
本発明は、さらに、その細胞表面上に複数のN−カドヘリンまたはLY6−E抗原を発現する細胞の細胞活性(例えば、細胞の増殖、活性化、または増殖)を阻害する方法を提供する。本方法は、本発明の免疫抱合体(例えば、不均一または均一な混合物)を細胞と反応させ、それにより、細胞表面上のN−カドヘリンまたはLY6−E抗原が免疫抱合体と複合体を形成する工程を含む。細胞表面上のN−カドヘリンまたはLY6−E抗原数が増加するほど、それぞれ使用することができるN−カドヘリンまたはLY6−E−抗体複合体数が増加する。N−カドヘリンまたはLY6−E−抗体複合体数が増加するほど、阻害される細胞活性が増加する。
【0105】
不均一な混合物は、異なるまたは同一のエピトープを認識するN−カドヘリンまたはLY6−E抗体を含み、この各抗体は同一または異なる治療薬に抱合している。均一な混合物は、同一のエピトープを認識する抗体を含み、この各抗体は同一の治療薬に抱合している。
【0106】
本発明は、さらに、N−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合をそれぞれ遮断することによるN−カドヘリンまたはLY6−Eの生物活性を阻害する方法を提供する。本方法は、N−カドヘリンまたはLY6−E−免疫抱合体またはN−カドヘリンまたはLY6−E−抗体複合体を許容する条件下で、一定量のN−カドヘリンまたはLY6−Eを本発明の抗体または免疫抱合体と接触させ、それにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eのその癌度との結合を遮断し、N−カドヘリンまたはLY6−Eの活性を阻害する工程を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明は、癌細胞の成長を阻害するのに有効な量のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を認識して結合する抗体またはそのフラグメントで被験体を処置するか癌細胞と接触させる工程による、癌、特にN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を治療するかN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、前立腺癌細胞または膀胱癌である。接触させる抗体は、モノクローナル抗体および/またはキメラ抗体であり得る。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体であるか、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。さらなる実施形態では、抗体フラグメントは、Fab、F(ab)2、またはFvを含む。他の実施形態では、フラグメントは、抗原結合領域を有する組換えタンパク質を含む。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、細胞の阻害に十分な量で本発明の免疫抱合体のいずれか1つまたは組み合わせを細胞と反応させる工程による、癌、特にN−カドヘリンまたはLY6−Eを過剰発現する癌を治療するかN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を発現または過剰発現する細胞を選択的に阻害する方法を提供する。かかる量には、細胞を死滅させる量または細胞の成長または増殖を阻害するのに十分な量が含まれる。上記で考察するように、用量および投薬計画は、N−カドヘリンまたはLY6−Eに関連する疾患または障害の性質、その集団、抗体が指向する位置、特定の免疫毒素の特徴、および患者に依存するであろう。例えば、免疫抱合体の量は、0.1〜200mg/kg患者体重の範囲であり得る。免疫抱合体は、治療薬に結合した抗N−カドヘリンまたはLY6−E抗体またはリガンドを含むことができる。治療薬は細胞毒性薬であり得る。細胞毒性薬は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アルブリン、アルブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α−サルシン(alpha−sarcin)、ゲロニンマイトゲリン(ゲロニン mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター(sapaonaria officinalis inhibitor)、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択することができる。治療薬は、放射性同位体であり得る。治療同位体は、212Bi、131I、111In、90Y、および186Reからなる群から選択することができる。
【0109】
上記実施形態のいずれかでは、化学療法薬および/または放射線療法をさらに投与することができる。いくつかの実施形態では、患者にホルモンアンタゴニスト療法も受けさせる。患者の抗体または抗体フラグメントとの接触を、患者への抗体の静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、または皮内投与によって行うことができる。いくつかの実施形態では、患者は、泌尿生殖器癌(例えば、膀胱癌、前立腺癌)を有する。上記のいくつかの実施形態では、患者は前立腺癌を罹患し、患者にホルモン除去療法を任意選択的にさらに受けさせる。いくつかの実施形態では、接触は、抗体を癌または癌の転移に直接投与する工程を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、小分子である細胞毒性薬を有する。マイタンシン、マイタンシノイド、サポリン、ゲロニン、リシン、またはカリチアマイシンおよびそのアナログまたは誘導体などの毒素も適切である。抗N−カドヘリンまたはLY6−E抗体に抱合することができる他の細胞毒性薬には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、および5−フルオロウラシルが含まれる。酵素活性毒素およびそのフラグメントも使用することができる。放射性エフェクター部分を、公知の方法で抱合体(例えば、二官能性リンカー、融合タンパク質)に組み込むことができる。本発明の抗体を、プロドラッグを活性化学療法薬に変換する酵素であるエフェクター部分に抱合することもできる。WO88/07378号、米国特許第4,975,278号;および米国特許第6,949,245を参照のこと。抗体または免疫抱合体を、非タンパク質ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー)に任意選択的に連結することができる。
【0111】
抗体と細胞毒性薬との抱合体を、当該分野で周知の方法を使用して作製することができる(米国特許第6,949,245号を参照のこと)。例えば、種々の二官能性タンパク質カップリング剤(N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシニミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジピミド酸ジメチル塩酸HCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアナート(トルエン2,6−ジイソシアナートなど)、およびビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)など)を使用して抱合体を作製することができる。例えば、リシン免疫毒素を、Vitetta et al.Science 238:1098(1987)に記載のように調製することができる。14C標識イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のための例示的キレート剤である。WO94/11026号を参照のこと。リンカーは、細胞中での細胞傷害薬の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chari ct al.Cancer Research 52:127−131(1992))を使用することができる。
投与および配合方法
公知の方法(静脈内投与(例えば、ボーラスとしてか長期間にわたる持続注入)、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路(intracerobrospinal)、皮下経路、関節内経路、滑液嚢内経路、鞘内経路、経口経路、局所経路、または吸入経路など)に従って、抗N−カドヘリンまたはLy6−E抗体または免疫抱合体をヒトに投与する。抗体の静脈内投与または皮下投与が好ましい。投与は、局所または全身であり得る。
【0112】
投与用の組成物は、一般に、薬学的に許容可能なキャリア(好ましくは、水性キャリア)に溶解した本明細書中に記載の薬剤(例えば、N−カドヘリンおよびLy6−Eインヒビター、N−カドヘリンおよびLy6−E抗体および免疫抱合体、N−カドヘリンおよびLY6−E siRNAおよびそのベクター)を含むであろう。種々の水性キャリア(例えば、緩衝化生理食塩水など)を使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に、望ましくない物質は含まれない。これらの組成物を、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。組成物は、pH調整剤および緩衝剤などの生理学的条件に近づけるのに必要な薬学的に許容可能な補助剤および毒性調整剤(toxicity adjusting agent)など(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなど)を含むことができる。これらの処方物中の活性成分(active agent)の濃度は、広範に変化することができ、主に、選択された特定の投与様式および患者のニーズにしたがって、流動物の体積、粘度、および体重に基づいて選択するであろう。
【0113】
したがって、静脈内投与のための典型的な薬学的組成物は、薬剤に応じて変化するであろう。非経口投与可能な組成物の実際の調製方法は、当業者に公知であるか明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)などの刊行物により詳細に記載されている。
【0114】
薬学定組成物を、投与方法に応じて種々の単位投薬形態で投与することができる。例えば、経口投与に適切な単位投薬形態には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、およびロゼンジが含まれるが、これらに限定されない。経口投与した場合、抗体を消化から保護すべきであると認識される。典型的には、酸性加水分解および酵素加水分解への耐性を付与するための組成物との分子の複合体化または適切な耐性を示すキャリア(リポソームまたは保護バリアなど)への分子のパッケージングのいずれかによってこれを行う。消化からの薬剤の保護手段は、当該分野で周知である。
【0115】
特に、本発明と共に使用するための抗体および免疫抱合体およびインヒビターの薬学的処方物を、所望の純度を有する抗体と任意選択的な薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤との混合によって調製することができる。かかる処方物は、凍結乾燥処方物または水溶液であり得る。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用した投薬量および濃度でレシピエントに非毒性である。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、酢酸、リン酸、クエン酸、および他の有機酸、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、防腐剤(低分子量ポリペプチド)、タンパク質(血清アルブミンまたはゼラチンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸、モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる)、キレート剤、イオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、錯塩(例えば、Zn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性剤であり得る。抗体を、0.5〜200mg/mlまたは10〜50mg/mlの濃度で処方することができる。
【0116】
処方物はまた、さらなる活性化合物(化学療法薬、細胞毒性薬、サイトカイン、成長阻害剤、および抗ホルモン剤が含まれる)を提供することもできる。有効成分を、徐放性調製物(例えば、固体疎水性ポリマー(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート))、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド)の半透性マトリックス)として調製することもできる。抗体および免疫抱合体を、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製したマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセルまたはポリ−(メチルメタクリラート)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに取り込むこともできる。
【0117】
組成物を、治療または予防上の処置のために投与することができる。治療への応用では、組成物を、「治療有効用量」で罹患患者に投与する。この用途に有効な量は、疾患の重症度および患者の一般的な健康状態に依存するであろう。組成物の単回投与または複数回投与を、患者の必要性および許容に応じた投薬量および頻度に応じて行うことができる。本発明の目的のための「患者」または「被験体」には、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳動物が含まれる。したがって、本方法を、ヒト療法および動物の両方に適用可能である。好ましい実施形態では、患者は、哺乳動物、好ましくは霊長類であり、最も好ましくは、患者はヒトである。他の公知の癌療法を、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明に従って使用される組成物を使用して、細胞を他の癌治療薬(5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、およびメトトレキサートなど)にターゲティングするか感作することもできる。
【0118】
他の実施形態では、本発明の方法を、他の癌療法(例えば、根治的前立腺適除術)、放射線療法(外部ビームまたは近接照射療法)、ホルモン療法(例えば、精巣摘除術、テストステロン産生を抑制するためのLHRH−アナログ療法、抗アンドロゲン療法)、または化学療法と共に使用する。根治的前立腺適除術は、全前立腺およびいくらかの周辺組織の切除を含む。一般に、癌が組織を超えて拡大していないと考えられる場合にこの治療を使用する。放射線療法は、一般に、依然として前立腺に限定されているか近接組織に拡大している前立腺癌を治療するために使用される。疾患がより進行している場合、照射を使用して、腫瘍サイズを減少させることができる。ホルモン療法は、しばしば、前立腺癌が前立腺を超えて拡大しているか再発している患者に使用される。ホルモン療法の目的は、男性ホルモンであるアンドロゲンのレベルを低下させ、それにより、前立腺癌を萎縮させるかその成長をより遅くすることである。黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストは、テストステロン産生を減少させる。これらの薬剤を、月1回またはそれより長い間隔で注射することができる。2つのかかるアナログは、ロイプロリドおよびゴセレリンである。抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミド、ビカルタミド、およびニルタミド)を使用することもできる。全アンドロゲン遮断(total androgen blockade)は、精巣摘除術またはLHRHアナログと組み合わせた抗アンドロゲン剤の使用に関するものであり、その組み合わせをいう。化学療法は、前立腺癌が前立腺の外側に拡大し、ホルモン療法に失敗した患者に対する1つの選択肢である。これは、全ての癌細胞を破壊することは期待されないが、腫瘍成長を遅延し、痛みを軽減することができる。ホルモン療法を使用した治療後に元に戻るか成長および拡大し続けている前立腺癌の治療で使用されるいくつかの化学療法薬には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エストラムスチン、エトポシド、ミトキサントロン、ビンブラスチン、およびパクリタキセルが含まれる。2つまたはそれを超える薬物をしばしば共に投与して、癌細胞が化学療法に耐性を示すようになる可能性を軽減する。小細胞癌は珍しい前立腺癌型であり、ホルモン療法よりも化学療法に反応する可能性が高い。
【0119】
いくつかの実施形態では、「心臓防御薬(心臓防御薬)」を、本発明で使用されるN−カドヘリンまたはLY6−E抗体、N−カドヘリンまたはLy6−E結合インヒビター、またはN−カドヘリンまたはLy6−E siRNA分子と共に投与する(米国特許第6,949,245号を参照のこと)。心臓防御薬は、患者への薬物(アントラサイクリン系抗生物質など)の投与に関連する心筋機能障害(すなわち、心筋症および/または鬱血性心不全)を防止または軽減する化合物または組成物である。心臓防御薬は、例えば、フリーラジカル媒介心臓毒作用を遮断または軽減するか、酸化的ストレス損傷を防止または軽減することができる。本定義に含まれる心臓防御薬の例には、以下が含まれる:鉄−キレート剤であるデクスラゾキサン(ICRF−187)(Seifert et al.The Annals of Pharmacotherapy 28:1063−1072(1994));脂質低下薬および/または抗酸化剤(プロブコール(Singal ct al.J.Mol.Cell Cardiol.27:1055−1063(1995))など);アミホスチン(アミノチオール 2−[(3−アミノプロピル)アミノ]エタンチオール−二水素リン酸エステル(WR−2721とも呼ばれる)、およびWR−1065と呼ばれるその脱リン酸化細胞取り込み形態)、ならびにS−3−(3−メチルアミノプロピルアミノ)プロピルホスホロ−チオ酸(WR−151327)(Green et al.Cancer Research 54:738−741(1994)を参照のこと);ジゴキシン(Bristow,M.R.In:Bristow M R,ed.Drug−Induced Heart Disease.New York:Elsevier 191−215(1980));β遮断薬(メトプロロール(Hjalmarson et al.Drugs 47:Suppl 4:31−9(1994)およびShaddy et al.Am.Heart J.129:197−9(1995))など);ビタミンE;アスコルビン酸(ビタミンC);フリーラジカル消去剤(オレアノール酸、ウルソル酸、およびN−アセチルシステイン(NAC)など);スピントラップ化合物(α−フェニル−tert−ブチルニトロン(PBN)など);(Paracchini et al.,Anticancer Res.13:1607−1612(1993));セレン含有有機化合物(P251(Elbesen)など)など。
【0120】
組み合わせ投与は、個別の処方物または単一の薬学的処方物を使用した同時投与およびいずれかの順序での連続的投与を意図し、両方(または全ての)活性成分がその生物活性を同時に発揮する時間間隔が好ましい。
【0121】
N−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質の発現および/または機能を間接的または直接的に調整すると同定された分子および化合物は、N−カドヘリンまたはLy6−Eをそれぞれ過剰発現する癌の治療に有用であり得る。N−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質モジュレーターを、単独で投与するか、従来の化学療法、放射線療法、または免疫療法および現在開発中の両方と組み合わせて同時投与することができる。
【0122】
経口投与に適切な処方物は、(a)溶液(水、生理食塩水、またはPEG400などの希釈剤に懸濁した有効量のパッケージングされた核酸など)、(b)液体、固体、顆粒、またはゼラチンとして所定量の有効成分をそれぞれ含むカプセル、サシェ、または錠剤、(c)適切な液体の懸濁液、および(d)適切な乳濁液からなり得る。錠剤形態は、1つまたは複数のラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、防腐剤、香味物質、色素、崩壊剤、および薬学的に適合可能なキャリアを含むことができる。ロゼンジ形態は、風味を付けた(例えば、スクロース)有効成分、不活性基剤(ゼラチンおよびグリセリン)中に有効成分を含む香剤、または有効成分に加えて当該分野で公知のキャリアを含むスクロースおよびアカシア乳濁液、およびゲルなどを含むことができる。
【0123】
選択した化合物を、単独または他の適切な成分と組み合わせて、吸入を介して投与されるエアゾール処方物にすることができる(すなわち、この処方物を「噴霧する」ことができる)。エアゾール処方物を、加圧した許容可能な噴射剤(ジクロロジフルオロメタン、プロパン、および窒素など)に入れることができる。
【0124】
直腸投与に適切な処方物には、例えば、座剤用基剤と共にパッケージングした核酸からなる座剤が含まれる。適切な座剤用基剤には、天然または合成のトリグリセリドまたはパラフィン炭化水素が含まれる。さらに、選択した化合物と基剤(例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、およびパラフィン炭化水素が含まれる)との組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。
【0125】
例えば、関節内(関節中)経路、静脈内経路、筋肉内経路、腫瘍内経路、皮内経路、腹腔内経路、および皮下経路などによる非経口投与に適切な処方物には、水性および非水性の等張滅菌注射液(抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および処方物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含むことができる)および水性および非水性の滅菌懸濁液(懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含むことができる)が含まれる。本発明の実施では、組成物を、例えば、静脈内注入、経口、局所、腹腔内、膀胱内、または鞘内に投与することができる。非経口投与、経口投与、および静脈内投与は、好ましい投与方法である。化合物の処方物を、単位用量または複数回用量の密封容器(アンプルおよびバイアルなど)に入れることができる。
【0126】
注射液および懸濁液を、上述の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。ex vivo療法のための核酸を形質導入された細胞を、上記のように静脈内または非経口投与することもできる。
【0127】
薬学的調製物は、単位投薬形態であることが好ましい。かかる形態では、調製物を、適量の活性成分を含む単位用量にさらに分割する。単位投薬形態は、パッケージングされた調製物、個別の量の調製物を含むパッケージ(バイアルまたはアンプル中にパッケージングされた錠剤、カプセル、粉末など)であり得る。また、単位投薬形態は、カプセル、錠剤、カシェ、またはロゼンジ自体であり得るか、適切な数のこれらのいずれかを含むパッケージングされた形態であり得る。組成物はまた、必要に応じて、他の適合可能な治療薬を含むことができる。
【0128】
好ましい薬学的調製物は、任意選択的に1つまたは複数の化学療法薬または免疫療法薬と組み合わせた1つまたは複数の活性なN−カドヘリンまたはLy6−Eタンパク質モジュレーターを含む徐放性処方物を送達させる。典型的には、N−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターを、他の細胞傷害性癌療法(化学療法、放射線療法、免疫療法 およびホルモン療法が含まれる)に対する腫瘍細胞の感受性を増大させる感作物質として治療的に投与する。
【0129】
癌治療のための治療的用途では、本発明の薬学的方法で使用されるN−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターまたはインヒビターを、約0.001mg/kg〜約1000mg/kg/日で投与する。約0.01mg/kg〜約500mg/kg、約0.1mg/kg〜約200mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg、または約10mg/kg〜約50mg/kgの1日量範囲を使用することができる。しかし、投薬量を、患者の要件、治療を受ける容態の重症度、および使用した化合物に応じて変化させることができる。例えば、特定の患者で診断された癌の型および病期を考慮して、投薬量を経験的に決定することができる。本発明の文脈における患者への投与量は、長期にわたって患者に有利な治療反応をもたらすのに十分でなければならない。用量のサイズも、特定のベクターの投与に伴う任意の副作用の存在、性質、および範囲または特定の患者における形質導入細胞の型によって決定する。特定の状況に適切な投薬量の決定は、当業者の範囲内に含まれる。一般に、治療を、化合物の至適用量より少量の投薬量から開始する。その後、環境下で至適効果に到達するまで少しずつ増加させることによって投薬量を増加させる。便宜上、総1日投薬量を分割し、必要に応じて、日中にその一部を投与する。
【0130】
本発明で使用される薬学的調製物(例えば、N−カドヘリンまたはLy6−E siRNAs、N−カドヘリンまたはLy6−E抗体、N−カドヘリンまたはLy6−Eワクチン、N−カドヘリンまたはLy6−Eインヒビター、および免疫抱合体)を、典型的には、哺乳動物(ヒトおよび非ヒト哺乳動物が含まれる)に投与する。本発明を使用して治療される非ヒト哺乳動物には、ペット(domesticated animal)(すなわち、イヌ、ネコ、マウス、げっ歯類、およびウサギ)および家畜(agricultural animal)(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ)が含まれる。
N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のモジュレーターのアッセイ
N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の調整および細胞(例えば、腫瘍細胞)増殖の対応する調整を、種々のin vitroおよびin vivoアッセイ(細胞ベースのモデルが含まれる)を使用して評価することができる。かかるアッセイを使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のインヒビターおよびアクチベーターを試験し、その結果、細胞増殖のインヒビターおよびアクチベーター(化学療法の感受性および毒性のモジュレーターが含まれる)を試験することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のかかるモジュレーターは、病理学的細胞増殖に関連する障害(例えば、癌)の治療に有用である。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のモジュレーターを、組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−E、好ましくはヒトN−カドヘリンまたはLY6−Eのいずれかを使用して試験する。
【0131】
組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を発現する細胞での細胞増殖調整の測定を、本明細書中に記載のように、種々のアッセイを使用して、in vitro、in vivo、およびex vivoで行うことができる。活性(例えば、キナーゼ活性などの酵素活性)、細胞増殖、またはリガンド結合(例えば、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体)に影響を及ぼす適切な物理的、化学的、または表現型の変化を使用して、本発明のポリペプチドに及ぼす試験化合物の影響を評価することができる。インタクトな細胞または動物を使用して機能的影響を決定する場合、種々の影響(リガンド結合、キナーゼ活性、既知および特徴づけられていない遺伝子マーカーの両方の転写の変化(例えば、ノーザンブロット)、細胞代謝の変化、細胞増殖に関連する変化、細胞表面マーカー発現、DNA合成、マーカーおよび色素希釈アッセイ(例えば、GFPおよび細胞トラッカーアッセイ)、接触インヒビター、ヌードマウスにおける腫瘍成長など)を測定することもできる。
in vitroアッセイ
N−カドヘリンまたはLY6−E調整活性を有する化合物を同定するためのアッセイを、in vitroで行うことができる。かかるアッセイは、全長N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質、その変異型(例えば、図6および7をそれぞれ参照のこと)、その変異体、またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のフラグメントを使用することができる。精製した組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を、本発明のin vitro法で使用することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質に加えて、組換えまたは天然に存在するN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質は、細胞溶解物または細胞膜の一部であり得る。下記のように、結合アッセイは、固体状態または可溶性状態のいずれかであり得る。好ましくは、タンパク質または膜を、固体支持体に共有結合または非共有結合する。しばしば、本発明のin vitroアッセイは、非競合的または競合的な基質またはリガンド結合または親和性アッセイであある。他のin vitroアッセイは、タンパク質の分光学的変化(例えば、蛍光、吸光度、屈折率)、流体力学的変化(例えば、形状)、クロマトグラフの変化、または溶解性の変化の測定を含む。他のin vitroアッセイには、酵素活性アッセイ(リン酸化または自己リン酸化アッセイなど)が含まれる。
【0132】
1つの実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはそのフラグメントを潜在的モジュレーターと接触させ、適切な期間インキュベートする高処理結合アッセイを行う。1つの実施形態では、潜在的モジュレーターを、固体支持体に結合させ、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を添加する。別の実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を、固体支持体に結合させる。下記のように、広範な種々のモジュレーター(有機小分子、ペプチド、抗体、およびN−カドヘリンまたはLY6−Eリガンドアナログが含まれる)を使用することができる。広範な種々のアッセイ(標識タンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度、免疫アッセイ、キナーゼアッセイなどの酵素アッセイなどが含まれる)を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−E−モジュレーター結合を同定することができる。いくつかの場合、潜在的モジュレーターの存在下で既知のリガンドまたは基質の結合の干渉を測定する競合結合アッセイの使用によって候補モジュレーターの結合を決定する。
【0133】
1つの実施形態では、マイクロタイタープレートを、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体で最初にコートし、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体への結合を阻害することができる可能性がある1つまたは複数の試験化合物に曝露する。コートしたタンパク質(N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体またはN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のいずれか)の標識した(すなわち、蛍光、酵素、放射性同位体)結合パートナーを、コートしたタンパク質および試験化合物に曝露する。非結合タンパク質を、必要に応じて、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体、または試験化合物への曝露の間に洗い流す。検出可能なシグナルの非存在は、試験化合物がN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質とN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体との間の結合相互作用をそれぞれ阻害したことを示す。検出可能なシグナル(すなわち、蛍光、比色、放射能)の存在は、試験化合物がN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質とN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質受容体との間のそれぞれの結合相互作用を阻害しなかったことを示す。検出可能なシグナルの有無を、非阻害シグナルを示す試験化合物に曝露されなかったコントロールサンプルと比較する。いくつかの実施形態では、結合パートナーを標識しないが、結合パートナーに特異的に結合する標識抗体に曝露する。
細胞ベースのin vivoアッセイ
別の実施形態では、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を細胞中で発現させ、機能的(例えば、物理的および化学的または表現型の)変化をアッセイして、細胞増殖(例えば、腫瘍細胞増殖)のN−カドヘリンまたはLY6−Eおよびモジュレーターを同定する。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を発現する細胞を、結合アッセイおよび酵素アッセイで使用することもできる。任意の適切な機能的影響を、本明細書中に記載のように測定することができる。例えば、細胞形態学(例えば、細胞体積、核体積、細胞周囲、および核周囲)、リガンド結合、キナーゼ活性、アポトーシス、細胞表面マーカーの発現、細胞増殖、GFP陽性、および色素希釈アッセイ(例えば、細胞膜に結合する色素を使用した細胞トラッカーアッセイ)、DNA合成アッセイ(例えば、3H−チミジンおよび蛍光DNA結合色素(BrdUまたはFACS分析と使用するHoechst色素など))は全て、細胞ベースの系を使用した潜在的モジュレーターを同定するのに適切なアッセイである。かかる細胞ベースのアッセイに適切な細胞には、本明細書中に記載の初代の癌および腫瘍の細胞および細胞株(例えば、A549(肺)、MCF7(乳房、p53野生型)、H1299(肺、p53ヌル)、Hela(子宮頸部)、PC3(前立腺、p53変異体)、MDA−MB−231(乳房、p53野生型))が含まれる。癌細胞株は、p53変異体、p53ヌルであり得るか、野生型p53を発現することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質は、天然に存在するか組換えであり得る。また、N−カドヘリンまたはLY6−EのフラグメントまたはキメラN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を、細胞ベースのアッセイで使用することができる。
【0134】
細胞N−カドヘリンまたはLY6−Eポリペプチドレベルを、タンパク質またはmRNAレベルの測定によって決定することができる。N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質またはN−カドヘリンまたはLY6−Eに関連するタンパク質のレベルを、N−カドヘリンまたはLY6−Eポリペプチドまたはそのフラグメントにそれぞれ選択的に結合する抗体を使用した免疫アッセイ(ウェスタンブロッティングおよびELISAなど)を使用して測定する。mRNA測定のために、例えば、PCR、LCR、またはハイブリッド形成アッセイ(例えば、ノーザンハイブリッド形成、RNアーゼ保護、ドットブロッティング)を使用した増幅が好ましい。本明細書中に記載のように、タンパク質またはmRNAのレベルを、直接または間接的に標識した検出剤(例えば、蛍光または放射性標識した核酸および放射性または酵素標識した抗体など)を使用して検出する。
【0135】
あるいは、N−カドヘリンまたはLY6−E発現を、レポーター遺伝子系を使用して測定することができる。かかる系を、レポーター遺伝子(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアルカリホスファターゼなど)に作動可能に連結されたN−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質プロモーターを使用して考案することができる。さらに、目的のタンパク質を、赤色蛍光タンパク質または緑色蛍光タンパク質などの第2のレポーターへの結合を介した間接的レポーターとして使用することができる(例えば、Mistili & Spector,Nature Biotechnology 15:961−964(1997)を参照のこと)。レポーター構築物を、典型的には、細胞にトランスフェクトする。潜在的モジュレーターでの処理後、レポーター遺伝子の転写、翻訳、または活性の量を、当業者に公知の標準的技術にしたがって測定する。
動物モデル
細胞増殖の動物モデルは、細胞増殖のモジュレーターのスクリーニングにも使用される。同様に、適切な遺伝子ターゲティングベクターでの相同組換えまたは遺伝子過剰発現の結果としての遺伝子ノックアウトテクノロジーを含むトランスジェニック動物テクノロジーにより、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の発現の有無が得られる。同一のテクノロジーを、ノックアウト細胞を作製するために適用することができる。必要に応じて、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質の組織特異的発現またはノックアウトが必要であり得る。かかる方法によって作製されたトランスジェニック動物は、細胞増殖の動物モデルとして使用され、さらに、細胞増殖のモジュレーターのスクリーニングで有用である。
【0136】
ノックアウト細胞およびトランスジェニックマウスを、相同組換えを介したマウスゲノム中の内因性N−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子部位へのマーカー遺伝子または他の異種遺伝子の挿入によって作製することができる。かかるマウスを、内因性N−カドヘリンまたはLY6−EのN−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子の変異バージョンとの置換または例えば発癌物質への曝露による内因性N−カドヘリンまたはLY6−Eの変異によって作製することもできる。
【0137】
DNA構築物を、胚幹細胞の核に導入する。新規に操作した遺伝子損傷を含む細胞を、宿主マウス肺に注射し、レシピエント雌に再移植する。これらの胚のいくつかは、部分的に変異細胞株由来の生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスの交配により、導入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系列を得ることが可能である(例えば、Capecchi el ai,Science 244:1288(1989)を参照のこと)。キメラ−ターゲティングマウスを、Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988),Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,Robertson,ed.,IRL Press,Washington,D.C.,(1987),and Pinkert,Transgenic Animal Technology:A Laboratory Handbook,Academic Press(2003)にしたがって誘導することができる。
例示的アッセイ
軟寒天成長または懸濁液中でのコロニー形成
正常な細胞は、付着および成長に固体基質が必要である。細胞を形質転換する場合、細胞はこの表現型を喪失し、基質から脱離して成長する。例えば、形質転換細胞は、撹拌浮遊培養で成長するか、半固体培地(半固体寒天または軟寒天など)中に懸濁することができる。形質転換細胞は、腫瘍抑制遺伝子でトランスフェクトされた場合、正常な表現型を再生し、付着および成長に固体基質が必要である。
【0138】
懸濁アッセイにおける軟寒天成長またはコロニー形成を使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。典型的には、形質転換宿主細胞(例えば、軟寒天上で成長する細胞)を、本アッセイで使用する。例えば、RKOまたはHCT116細胞株を使用することができる。懸濁アッセイにおける軟寒天成長またはコロニー形成技術は、Freshney,Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique,3rd ed.,Wiley−Liss,New York(1994)(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。Garkavtsev et al.(1996),supraの方法の部(本明細書中で参考として援用される)も参照のこと。
接触阻害および成長の密度制限
正常な細胞は、典型的には、この細胞が他の細胞に接するまで、ペトリ皿中で平ら且つ組織的に成長する。細胞が相互に接触する場合、細胞は接触阻害され、成長を停止する。しかし、細胞が形質転換された場合、細胞は接触阻害されず、無秩序の病巣中に高密度まで成長する。したがって、形質転換細胞は、正常細胞よりも高い飽和密度まで成長する。細胞の混乱した単層または正常な周辺細胞の規則的パターン内の病巣中の円形細胞(rounded cell)の形成によって、これを形態学的に検出することができる。あるいは、飽和密度での[3H]−チミジンでの標識率を使用して、成長の密度制限を測定することができる。Freshney(1994),supraを参照のこと。形質転換細胞は、細胞増殖モジュレーターと接触させた場合、正常な表現型を再生し、接触阻害するようになり、より低い密度まで成長するであろう。
【0139】
成長アッセイの接触阻害および密度制限を使用して、宿主細胞中での異常な増殖および形質転換を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。典型的には、形質転換宿主細胞(例えば、接触阻害しない細胞)を、本アッセイで使用する。例えば、RKOまたはHCTl116細胞株を使用することができる。このアッセイでは、飽和密度の[3H]−チミジンでの標識率が、成長の密度制限の好ましい測定方法である。形質転換宿主細胞を、潜在的なN−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターと接触させ、非制限培地条件下にて飽和密度で24時間成長させる。[3H]−チミジンで標識された細胞の比率を、オートラジオグラフィで決定する。Freshney(1994),supraを参照のこと。N−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターと接触した宿主細胞は、コントロール(例えば、インサートを欠くベクターでトランスフェクトした形質転換宿主細胞)と比較してより低い標識率が得られるであろう。
成長因子または血清依存性
成長因子または血清依存性を、N−カドヘリンまたはLy6−Eモジュレーターを同定するためのアッセイとして使用することができる。形質転換細胞は、その正常な対応物よりも血清依存性が低い(例えば、Temin,J.Natl.Cancer Insti.37:167−175(1966);Eagle et ai,J.Exp.Med.131:836−879(1970));Freshney,supraを参照のこと)。これは、形質転換細胞による種々の成長因子の放出に一部依存する。形質転換細胞がN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターと接触する場合、細胞は血清依存性を再獲得し、より低いレベルの成長因子を放出するであろう。
腫瘍特異的マーカーレベル
腫瘍細胞は、その正常な対応物よりも増加した一定の因子(以後、「腫瘍特異的マーカー」)を放出する。例えば、プラスミノゲンアクチベーター(PA)は、正常な脳細胞よりも高いレベルでヒトグリオーマから放出される(例えば、Gullino,Angiogenesis,tumor vascularization,and potential interference with tumor growth.In Mihich(ed.):“Biological Responses in Cancer.” New York,Academic Press,pp.178−184(1985)を参照のこと)。同様に、腫瘍血管形成因子(TAF)は、その正常な対応物よりも高いレベルで腫瘍細胞中に放出される。例えば、Folkman,Angiogenesis and cancer,Sem Cancer Biol.(1992)を参照のこと。
【0140】
腫瘍特異的マーカーをアッセイして、宿主細胞からのこれらのマーカーの放出レベルを減少させるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。典型的には、形質転換宿主細胞または発癌性宿主細胞を使用する。これらの因子の放出を測定する種々の技術は、Freshney(1994),supraに記載されている。また、Unkless et al.,J.Biol.Chem.249:4295−4305(1974);Strickland & Beers,J.Biol.Chem.251:5694−5702(1976);Whur et al,Br.J.Cancer 42:305−312(1980);Gulino,Angiogenesis,tumor vascularization,and potential interference with tumor growth.In Mihich,E.(ed):“Biological Responses in Cancer.” New York,Plenum(1985);Freshney Anticancer Res.5:111−130(1985)を参照のこと。
マトリゲルへの侵襲性
マトリゲルまたはいくつかの他の細胞外基質構成要素への侵襲度を、異常な細胞増殖および腫瘍成長を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定するためのアッセイとして使用することができる。腫瘍細胞は、悪性度とマトリゲルまたはいくつかの他の細胞外基質構成要素への細胞の侵襲性との間に良好な相関関係を示す。このアッセイでは、典型的には、腫瘍生成細胞を宿主細胞として使用する。したがって、N−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを、潜在的モジュレーターの導入前後の宿主細胞間の侵襲性レベルの変化の測定によって同定することができる。化合物がN−カドヘリンまたはLY6−Eを調整する場合、腫瘍生成宿主細胞におけるその発現は侵襲性に影響を及ぼすであろう。
【0141】
Freshney(1994),supraに記載の技術を使用することができる。簡潔に述べれば、宿主細胞の浸潤レベルを、マトリゲルまたはいくつかの他の細胞外基質構成要素でコーティングしたフィルターの使用によって測定することができる。ゲルへの浸透またはフィルターの遠位側に通じた浸透を侵襲性と評価し、細胞数および移動距離または125Iでの細胞のプレラベリングおよびフィルターの遠位側または皿の底の放射能の計算によって組織学的に評価する。例えば、Freshney(1984),supraを参照のこと。
in vivoでの腫瘍成長
細胞成長に及ぼすN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターの影響を、トランスジェニックマウスまたは免疫抑制マウスにおいて試験することができる。内因性N−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子を破壊したノックアウトトランスジェニックマウスを作製することができる。かかるノックアウトマウスを使用して、例えば、癌モデルとして、N−カドヘリンまたはLY6−Eを調整する化合物についてのin vivoでのアッセイ手段として、N−カドヘリンまたはLY6−Eの影響を研究し、野生型または変異N−カドヘリンまたはLY6−Eをノックアウトマウスに戻す効果を試験することができる。
【0142】
ノックアウト細胞およびトランスジェニックマウスを、相同組換えを介したマウスゲノム中の内因性N−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子部位へのマーカー遺伝子または他の異種遺伝子の挿入によって作製することができる。かかるマウスを、内因性N−カドヘリンまたはLY6−EのN−カドヘリンまたはLY6−E遺伝子の変異バージョンとの置換または例えば発癌物質への曝露による内因性N−カドヘリンまたはLY6−Eの変異によって作製することもできる。
【0143】
DNA構築物を、胚幹細胞の核に導入する。新規に操作した遺伝子損傷を含む細胞を、宿主マウス肺に注射し、レシピエント雌に再移植する。これらの胚のいくつかは、部分的に変異細胞株由来の生殖細胞を有するキメラマウスに成長する。したがって、キメラマウスの交配により、導入された遺伝子損傷を含む新規のマウス系列を得ることが可能である(例えば、Capecchi el ai,Science 244:1288(1989)を参照のこと)。キメラーターゲティングマウスを、Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)およびTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach,Robertson,ed.,IRL Press,Washington,D.C.,(1987)にしたがって誘導することができる。これらのノックアウトマウスを、細胞成長に及ぼす種々のN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターの影響を試験するための宿主として使用することができる。
【0144】
あるいは、種々の免疫抑制宿主動物または免疫不全宿主細胞を使用することができる。例えば、遺伝的胸腺欠損「ヌード」マウス(例えば、Giovanella et al.,J.Natl.Cancer Inst.52:921(1974)を参照のこと)、SCIDマウス、胸腺摘出マウス、または照射マウス(see,例えば、Bradley et al,Br.J.Cancer 38:263(1978);Selby et al,Br.J.Cancer 41:52(1980)を参照のこと)を、宿主として使用することができる。同質宿主に注射した移植可能な腫瘍細胞(典型的には、約106細胞)は、高い比率で浸潤性腫瘍を産生する一方で、類似の起源の正常細胞では生産しない。例えば、注射によって宿主をN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターで処置する。適切な期間後、好ましくは4〜8週間後、腫瘍成長を測定し(例えば、体積またはその2つの最も長い寸法による)、コントロールと比較する。統計的に有意に減少する(例えば、スチューデントT検定を使用)腫瘍は、成長が阻害されたと言える。アッセイとして腫瘍サイズの減少を使用して、例えば、異常な細胞集団を阻害することができるN−カドヘリンまたはLY6−Eモジュレーターを同定することができる。
スクリーニング法
本発明はまた、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物を同定する方法を提供する。この化合物は、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する腫瘍(例えば、泌尿生殖器癌腫瘍(前立腺または膀胱の癌腫瘍が含まれる))の成長の阻害および退行の促進で使用される。
【0145】
本明細書中に記載のアッセイを使用して、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLY6−E受容体への結合を減少、阻害する能力について種々の化合物および化合物の混合物をスクリーニングすることによる、治療に有効な調整剤である化合物を同定するためのさらなる試験に適切なリード化合物を同定することができる。目的の化合物は、合成または天然に存在し得る。
【0146】
スクリーニングアッセイを、in vitroまたはin vivoで行うことができる。典型的には、最初のスクリーニングアッセイをin vitroで行い、細胞ベースのアッセイまたは動物モデルを使用してin vivoで確認することができる。例えば、再生遺伝子ファミリーのタンパク質は、細胞増殖に関与する。したがって、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物は、試験化合物に曝露していない細胞と比較して、この結合相互作用に起因する細胞増殖を阻害することができる。また、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合は、組織損傷応答、炎症、および異形成に関与する。動物モデルでは、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質のその受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物は、例えば、試験化合物に曝露していない動物と比較して、創傷治癒または異形成の進行を阻害することができる。例えば、Zhang,et al,World J Gastroenter(2003)9:2635−41を参照のこと。
【0147】
通常、N−カドヘリンまたはLY6−EのN−カドヘリンまたはLy6−E受容体へのそれぞれの結合を阻害する化合物は合成である。アッセイ工程を自動化し、任意の都合のよい供給源からアッセイするための化合物を得ること(典型的には、これらを並行して(例えば、ロボット利用のアッセイにおけるマイクロタイタープレート女王のマイクロタイター形式で)行う)によって巨大な化学ライブラリーをスクリーニングするようにスクリーニング法をデザインする。
【0148】
本発明は、高処理形式でのN−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合の阻害についてのin vitroアッセイを提供する。記載の各アッセイ形式について、モジュレーターを含まない「無モジュレーター」コントロール反応により、バックグラウンドレベルのN−カドヘリンまたはLY6−Eの受容体への結合相互作用が得られる。本発明の高処理アッセイでは、1日に数千個までの異なるモジュレーターをスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルを使用して、選択した潜在的なモジュレーターに対する個別のアッセイを行うことができるか、濃度またはインキュベーション時間の影響が認められる場合、5〜10ウェル毎に1つのモジュレーターを試験することができる。したがって、1つの標準的マイクロタイタープレートは、約100(96)個のモジュレーターをアッセイすることができる。1536個のウェルプレートを使用する場合、1つのプレートで、約100〜約1500個のことなる化合物を容易にアッセイすることができる。1日に多数の異なるプレートをアッセイすることが可能であり、本発明の統合システムを使用して、約6,000〜20,000、さらに約100,000〜1,000,000個の異なる化合物についてのアッセイスクリーニングが可能である。標識、試薬の添加、流動物の変更、および検出工程は、例えば、BioTX Automation,Conroe,TX;Qiagen,Valencia,CA;Beckman Coulter,Fullerton,CA;およびCaliper Life Sciences,Hopkinton,MAから市販されているプログラム可能なロボットシステムまたは「集積システム」を使用して、完全自動に適合可能である。
【0149】
本質的に任意の化合物を、本発明の方法で使用するためのN−カドヘリンまたはLY6−Eのその受容体への結合の潜在的なインヒビターとして試験することができる。一般に、水溶液または有機(特に、DMSOベースの)溶液に溶解することができる化合物を使用することが最も好ましい。化合物の多数の供給業者(Sigma(St.Louis,MO)、Aldrich(St.Louis,MO)、Sigma− Aldrich(St.Louis,MO)、Fluka Chemika−Biochemica Analytika(Buchs Switzerland)が含まれる)ならびにスクリーニング用の有機小分子およびペプチドライブラリーの供給業者(Chembridge Corp.(San Diego,CA)、Discovery Partners International(San Diego,CA)、Triad Therapeutics(San Diego,CA)、Nanosyn(Menlo Park,CA)、Affymax(Palo Alto,CA)、ComGenex(South San Francisco,CA)、およびTripos,Inc.(St.Louis,MO)が含まれる)が存在することが認識されるであろう。
【0150】
1つの好ましい実施形態では、N−カドヘリンまたはLy6−E受容体の結合相互作用のインヒビターを、多数の潜在的な治療化合物(潜在的なモジュレーター化合物)を含む組み合わせライブラリーのスクリーニングによって同定する。かかる「組み合わせ化学またはペプチドライブラリー」を、本明細書中に記載のように1つまたは複数のアッセイでスクリーニングして、所望の特徴的活性を示すライブラリーメンバー(特定の化学種またはサブクラス)を同定することができる。したがって、同定された化合物は、従来の「リード化合物」として役立つか、化合物自体を潜在的または実際の治療薬として使用することができる。
【0151】
組み合わせ化学ライブラリーは、試薬などの多数の化学的「基礎単位(building block)」の組み合わせによって化学合成または生物学的合成のいずれかで精製された多様な化合物の集団である。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの線状組み合わせ化学ライブラリー(linear combinatorial chemical library)を、所与の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸数)のためのできる限りの方法での化学的基礎単位(アミノ酸)組の組み合わせによって形成する。化学的基礎単位のかかる組み合わせ混合によって何百万もの化合物を合成することができる。
【0152】
組み合わせ化学ライブラリーの調製およびスクリーニングは、当業者に周知である。かかる組み合わせ化学ライブラリーには、ペプチドライブラリー(例えば、米国特許第5,010,175号,Furka,Int.J.Pept.Prot.Res.37:487−493(1991)、およびHoughton et al,Nature 354:84−88(1991)を参照のこと)が含まれるが、これに限定されない。化学的に多様なライブラリーの生成のための他の化学物質も使用することができる。かかる化学物質には、いかが含まれるが、これらに限定されない:ペプチド(PC公開番号WO91/19735号)、コードペプチド(PCT公開WO93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO92/00091号)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ダイバーソマー(diversomer)(ヒダントイン、ベンゾジアゼピン、およびジペプチドなど)(Hobbs et al,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993))、ビニログ(vinylogous)ポリペプチド(Hagihara et al,J.Amer.Chem.Soc.114:6568(1992))、β−D−グルコース足場を有する非ペプチドのペプチド模倣物(Hirschmann et al.,J.Amer.Chem.Soc.114:9217−9218(1992))、小化合物ライブラリーの類似の有機合成(Chen et al,J.Amer.Chem.Soc.116:2661(1994))、オリゴカルバマート(Cho et al,Science 261:1303(1993))、および/またはペプチジルホスホナート(Campbell et al,J.Org.Chem.59:658(1994))、核酸ライブラリー(Ausubel,Berger and Sambrook,all supraを参照のこと)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば、米国特許第5,539,083号を参照のこと)、抗体ライブラリー(例えば、Vaughn et al,Nature Biotechnology,14(3):309−314(1996)およびPCT/US96/10287を参照のこと)、炭水化物ライブラリー(例えば、Liang et al,Science,274:1520−1522(1996)および米国特許第5,593,853号を参照のこと)、有機小分子ライブラリー(例えば、ベンゾジアゼピン、Baum C&EN,Jan 18,page 33(1993);イソプレノイド、米国特許第5,569,588号;トリアゾリジノンおよびメタチアザノン、米国特許第5,549,974号;ピロリジン、米国特許第5,525,735号および同第5,519,134号;モルホリノ化合物、米国特許第5,506,337号;ベンゾジアゼピン、同第5,288,514号など)。
【0153】
組み合わせライブラリーの調製用デバイスは、市販されている(例えば、357 MPS,390 MPS,Advanced Chem.Tech,Louisville KY,Symphony,Rainin,Woburn,MA,433A Applied Biosystems,Foster City,CA,9050 Plus,Millipore,Bedford,MAを参照のこと)。
siRNAテクノロジー
siRNA分子およびベクターのデザインおよび作製は、当業者に周知である。例えば、適切なsiRNAのデザインに有効な過程は、mRNA転写物をAUG開始コドンから開始させ(例えば、図7、8、9を参照のこと)、AAジヌクレオチド配列についてスキャンする(Elbashir et al.EMBO J 20:6877−6888(2001)を参照のこと)。各AAおよび3’隣接ヌクレオチドは、潜在的なsiRNA標的部位である。隣接部位配列の長さによってsiRNAの長さが決定される。例えば、19個の隣接部位により、21ヌクレオチド長のsiRNAが得られるであろう。3’オーバーハングUUジヌクレオチドを有するsiRNAは、しばしば最も有効である。このアプローチはまた、ヘアピンsiRNAを転写するためのRNA pol IIIの使用に適合する。RNA pol IIIは、4−6ヌクレオチドポリ(T)領域で転写を終結させ、短いポリ(U)テールを有するRNA分子を作製する。しかし、他の3’末端ジヌクレオチドオーバーハングを有するsiRNAはまた、RNAiを有効に誘導することができ、配列を経験的に選択することができる。選択性について、他のコード配列に相同な16〜17個を超える連続塩基対を有する標的配列を、BLAST検索の実施によって回避することができる(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと)。
【0154】
RNAiを誘導するためのsiRNA発現ベクターは、異なるデザイン基準を有し得る。ベクターを、短いスペーサー配列によって分離された2つの逆方向反復に挿入し、転写終結に役立つ一連のTで終結させることができる。発現したRNA転写物は、短いヘアピンsiRNAに折り畳まれると予想される。siRNA標的配列の選択、推定ヘアピンのステムをコードする逆方向反復、逆方向反復の順序、ヘアピンのループをコードするスペーサー配列の長さおよび組成、ならびに5’オーバーハングの有無を変化させることができる。siRNA発現カセットの好ましい順序は、センス鎖、短いスペーサー、およびアンチセンス鎖である。これらの種々のステム長(例えば、15〜30)を有するヘアピンsiRNAが適切であり得る。ヘアピンsiRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖に結合するループの長さは、種々の長さ(例えば、3〜9ヌクレオチドまたはそれを超える)であり得る。ベクターは、siRNAをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されるプロモーターおよび発現エンハンサーまたは他の調節エレメントを含むことができる。これらの調節エレメントを、制御エレメントが応答する外因子の付加または調節によって遺伝子発現をオフまたはオンにすることが臨床家によって行うことができるようにデザインすることができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、本発明は、癌細胞の成長を阻害するのに有効な量のタンパク質を認識して結合する抗体またはそのフラグメントと癌細胞を接触させる工程による、N−カドヘリンまたはLY6−Eタンパク質を過剰発現する癌細胞の成長を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、癌細胞は、前立腺癌細胞または膀胱癌である。接触させる抗体は、モノクローナル抗体および/またはキメラ抗体であり得る。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体であるか、ヒト免疫グロブリン定常領域を含む。さらなる実施形態では、抗体フラグメントは、Fab、F(ab)2、またはFvを含む。他の実施形態では、フラグメントは、抗原結合領域を有する組換えタンパク質を含む。さらに他の実施形態では、抗体またはフラグメントは、治療薬に連結した抗体またはフラグメントを含む免疫抱合体である。治療薬は、細胞毒性薬である。細胞毒性薬を、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アルブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択することができる。治療薬は、放射性同位体であり得る。治療同位体は、212Bi、131I、111In、90Y、および186Reからなる群から選択することができる。上記実施形態のいずれかでは、化学療法薬および/または放射線療法をさらに投与することができる。いくつかの実施形態では、患者にホルモンアンタゴニスト療法も受けさせる。患者の抗体または抗体フラグメントとの接触を、患者への抗体の静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、または皮内投与によって行うことができる。いくつかの実施形態では、患者は、泌尿生殖器癌(例えば、膀胱癌、前立腺癌)を有する。上記のいくつかの実施形態では、患者は前立腺癌を罹患し、患者にホルモン除去療法を任意選択的にさらに受けさせる。いくつかの実施形態では、接触は、抗体を癌または癌の転移に直接投与する工程を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、免疫抱合体は、小分子である細胞毒性薬を有する。マイタンシン、マイタンシノイド、サポリン、ゲロニン、リシン、またはカリチアマイシンおよびそのアナログまたは誘導体などの毒素も適切である。抗N−カドヘリンまたはLY6−E抗体に抱合することができる他の細胞毒性薬には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、および5−フルオロウラシルが含まれる。酵素活性毒素およびそのフラグメントも使用することができる。放射性標識または他の標識を、公知の方法で抱合体(例えば、二官能性リンカー、融合タンパク質)に組み込むことができる。本発明の抗体を、プロドラッグを活性化学療法薬に変換する酵素に抱合することもできる。WO88/07378号および米国特許第4,975,278号を参照のこと。抗体または免疫抱合体を、非タンパク質ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマー)に任意選択的に連結することができる。
【0157】
投与用の組成物は、一般に、薬学的に許容可能なキャリア(好ましくは、水性キャリア)に溶解した本明細書中に記載の薬剤を含むであろう。種々の水性キャリア(例えば、緩衝化生理食塩水など)を使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に、望ましくない物質は含まれない。これらの組成物を、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。組成物は、pH調整剤および緩衝剤などの生理学的条件に近づけるのに必要な薬学的に許容可能な補助剤および毒性調整剤など(例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムなど)を含むことができる。これらの処方物中の活性成分の濃度は、広範に変化することができ、主に、選択された特定の投与様式および患者のニーズにしたがって、流動物の体積、粘度、および体重に基づいて選択するであろう。
【0158】
したがって、静脈内投与のための典型的な薬学的組成物を、約0.1〜100mg/患者/日で投与することができる。0.1から約100mg/患者/日までの投薬量を使用することができる。実質的により高い投薬量が局所投与で可能である。非経口投与可能な組成物の実際の調製方法は、当業者に公知であるか明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)などの刊行物により詳細に記載されている。
【0159】
薬学定組成物を、投与方法に応じて種々の単位投薬形態で投与することができる。例えば、経口投与に適切な単位投薬形態には、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、およびロゼンジが含まれるが、これらに限定されない。経口投与した場合、抗体を消化から保護すべきであると認識される。典型的には、酸性加水分解および酵素加水分解への耐性を付与するための組成物との分子の複合体化または適切な耐性を示すキャリア(リポソームまたは保護バリアなど)への分子のパッケージングのいずれかによってこれを行う。消化からの薬剤の保護手段は、当該分野で周知である。
【0160】
特に、本発明と共に使用するための抗体および免疫抱合体およびインヒビターの薬学的処方物を、所望の純度を有する抗体と任意選択的な薬学的に許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤との混合によって調製することができる。かかる処方物は、凍結乾燥処方物または水溶液であり得る。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、使用した投薬量および濃度でレシピエントに非毒性である。許容可能なキャリア、賦形剤、または安定剤は、酢酸、リン酸、クエン酸、および他の有機酸、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、防腐剤(低分子量ポリペプチド)、タンパク質(血清アルブミンまたはゼラチンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸、モノサッカリド、ジサッカリド、および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる)、キレート剤、イオン性および非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)、錯塩(例えば、Zn−タンパク質錯体)、および/または非イオン性界面活性剤であり得る。抗体を、0.5〜200mg/mlまたは10〜50mg/mlの濃度で処方することができる。
【0161】
処方物はまた、さらなる活性化合物(化学療法薬、細胞毒性薬、サイトカイン、成長阻害剤、および抗ホルモン剤が含まれる)を提供することもできる。有効成分を、徐放性調製物(例えば、固体疎水性ポリマー(例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート))、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド)の半透性マトリックス)として調製することもできる。抗体および免疫抱合体を、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって調製したマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセルまたはポリ−(メチルメタクリラート)マイクロカプセル、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンに取り込むこともできる。
【0162】
本発明のインヒビターおよび薬剤(例えば、抗体)を含む組成物を、治療または予防上の処置のために投与することができる。治療への応用では、組成物を、「治療有効用量」で罹患患者に投与する。この用途に有効な量は、疾患の重症度および患者の一般的な健康状態に依存するであろう。組成物の単回投与または複数回投与を、患者の必要性および許容に応じた投薬量および頻度に応じて行うことができる。本発明の目的のための「患者」または「被験体」には、ヒトおよび他の動物の両方、特に哺乳動物が含まれる。したがって、本方法を、ヒト療法および動物の両方に適用可能である。好ましい実施形態では、患者は、哺乳動物、好ましくは霊長類であり、最も好ましくは、患者はヒトである。他の公知の癌療法を、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。例えば、Wntシグナル伝達のインヒビターを使用して、細胞を他の癌治療薬(5FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、シスプラチン、およびメトトレキサートなど)にターゲティングするか感作することもできる。他の実施形態では、本発明の方法を、放射線療法などと共に使用することができる。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は、例証のために提供するが、特許請求の範囲に記載の発明を制限しない。
(実施例1)材料と方法
細胞株
ヒト膀胱癌細胞株(T24、EJ、J82、TCC Sup、647V、UC−14、SW780、RT112、SD148)を全て、10% ウシ胎児血清(Omega Scientific,Inc.)および1%ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(PSG)(Invitrogen)を補足したRPMI1640 1×培地(Cellgro)中にて、37℃の加湿5%CO2雰囲気下で維持した。
試薬および抗体
E−およびN−カドヘリンに対するマウスmAbを、Zymed Laboratories Inc.(San Francisco)から入手した。別のマウス抗N−カドヘリンAb(クローンGC−4,Sigma,Saint−Louis)を使用して、ボイデン・チェンバアッセイにおいてN−カドヘリンを中和した。pan−AktおよびpAkt(Ser473)に対するウサギmAbを、Cell Signalling Technologyから購入した。マウスmAb抗PTEN抗体を、Santa Cruz Biotechnologyから入手した。ポリクローナル抗上皮成長因子受容体リン特異的抗体(PY1068)を、Biosourceから購入した。LY294002塩酸(PI3Kインヒビター)を、Sigmaから購入した。これを濃縮保存液としてジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、実験時に希釈した。
ウェスタンブロット
コンフルエントな単層細胞を、室温のPBSで洗浄し、加熱溶解緩衝液で抽出した。超音波処理器を使用した溶解物の20秒間の超音波処理後、各サンプルのタンパク質濃度を、DCタンパク質アッセイキット(BIO−RAD,Hercules,California,USA)によって測定し、等量のタンパク質をSDS−PAGEにロードした。タンパク質を、10%ポリアクリルアミドゲルにて分離し、その後、電気泳動によってニトロセルロース上に移動させた。一次抗体(N−およびE−カドヘリン、Pten、pAkt、pan−Akt、およびpEGFR)を使用して、4℃で一晩免疫ブロッティングを行った。次いで、ブロットを、二次抗体(抗マウスまたは抗ウサギ)と室温で1時間インキュベートした。ECL検出試薬(Amersham)を使用して、検出を行った。
【0164】
GC−4によるN−カドヘリン機能またはLY294002によるPI3K機能の阻害を含む実験のために、細胞を、最初に一晩血清を枯渇させ(RPMI1640、0.1%BSA、1%PSG)、次いで、50倍希釈のGC−4または異なる濃度のLY294002を含めるか含めないで1時間インキュベートした。
細胞増殖および生存アッセイ
MTTアッセイを実施し、Akt活性を阻害する一方で、T24細胞株の細胞生存率を保存するGC−4およびLY294002の正確な濃度を決定した。2.5×103細胞を、200μlの培地を含む96ウェルプレート中で培養し、数時間付着させた。細胞を、一晩血清枯渇させた。翌日、GC−4(50倍希釈)またはLY294002(10μmol/1)を各ウェルに添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートした。5mg/mlの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)を含む10μlのPBS溶液を各ウェルに添加し、さらに5時間インキュベートを再開した。培地を吸引し、200μl DMSOを各ウェルに添加した。プレートを、撹拌機にて1分間震盪し、ELISAプレートリーダーを使用して、550nmの吸光度を測定した。
浸潤アッセイ
各細胞の浸潤挙動を、マトリゲルコーティングしたボイデン・チェンバ(24ウェルインサート、ポアサイズ8μm;BD Bioscience,Bedford,MA,USA)を使用して測定した。細胞(2.5×104細胞)を洗浄し、枯渇培地(RPMI1640,0.1%BSA、1%PSG)に再懸濁し、上部のチャンバーに入れた。FBS10%を含むRPMI1640を、化学誘引物質として使用し、下部チャンバーに入れた。細胞を、37℃で21時間インキュベートし、マトリゲルを通過させた細胞を、2%パラホルムアルデヒドで固定し、その後、クリスタルバイオレット0.1%で染色した。マトリゲルを通過しなかった細胞を、綿棒でインサートから除去した。GC−4(50倍)に関するブロッキング実験では、コントロールとしてマウスmIgG1(Sigma)を使用した。細胞を一晩枯渇させ、1時間後にGC−4またはマウスIgG1を播種した。
【0165】
LY294002(10mM)に関する実験では、細胞を一晩枯渇させ、播種前にさらに1時間チャンバー中でインキュベートした。インキュベーション後、顕微鏡(10倍)での4つの独立した視野の計数によって細胞数を評価し、結果を標準誤差を含む平均値として示した。
in vitro浸潤アッセイ
初期ボイデン・チェンバ浸潤アッセイは、腫瘍細胞と細胞外基質との間の相互作用を正確に再生するために脱上皮化マウスまたはラットの膀胱を使用した膀胱癌浸潤の三次元モデルと相関した。マウスおよびラットの膀胱を、小腹壁切開によって得て、尿路上皮を酵素消化を使用しない解剖鉗子によって除去した。膀胱を2つの部分に採取し、脱表皮下表面を上に向けて30mmコラーゲンコーティングしたインサート上に配置した。37℃で30分間のインキュベーション後、ヒト膀胱癌細胞(5×105細胞)を洗浄し、2mlのRPMI培地に再懸濁し、間質に配置した。さらに6mlのRPMI培地を培養インサートの外側の培養皿に添加して、各培養インサート内に空気−液体接触面を作製した。24時間後、培地をインサートから除去した。培養皿中の6mlの培地を、3日毎に交換した。7日目および15日目に培養を停止させた。各膀胱サンプルを、10%ホルマリン中で少なくとも12時間固定し、次いで、パラフィン中に包埋した。各外植片の中央の組織学的切片を作製し、ヘマトキシリンを使用して評価した。癌細胞による間質浸潤の証拠を、顕微鏡(40倍)で観察した。全実験を、3回繰り返した。
高リスクTaおよびT1ヒト膀胱癌中のN−およびE−カドヘリン発現
本発明者らは、12個の急速凍結した非浸潤性膀胱癌(1個のpTa;11個のpT1)および5個の急速凍結した浸潤性膀胱癌(3個のpT3;2個のpT4)を分析した。患者に、書面によるインフォームドコンセントを行った。1973のWHO分類にしたがって腫瘍の悪性度を分類し、TNM分類ガイドラインに従って病期を決定した。全腫瘍サンプルを、1988年と1997年との間の以前の処置を行わずに経尿道的切除物または根治的膀胱適除物から得た(Henri Mondor Hospital,Creteil,France)。組織学的コントロールのためにフラグメントを固定し、他の部分をチューブに慎重に採取し、液体窒素中で急速凍結し、タンパク質抽出のために−80℃で保存した。組織サンプルを、抗プロテアーゼおよび抗ホスホリパーゼを補足したRIPA溶解緩衝液で溶解した。タンパク質を抽出し、BCAキットで総タンパク質濃度を決定した。前述のようにこれらの標本のウェスタンブロット分析を行った。
浸潤性ヒト膀胱癌におけるN−およびE−カドヘリン発現
患者
根治的膀胱適除によって処置された30人の浸潤性膀胱癌患者のコホートを研究した。全患者を、各時点でサンプルを採取して手術当日から死亡日まで追跡した。腫瘍と無関係の他の原因で死亡する患者もいた。追跡に失敗した患者もいた。これらの患者を、生存分析で検閲した(7症例)。
DNAアレイデータ
本研究で使用したDNAマイクロアレイは、2つのGeneChipアレイ(U95AおよびU95Av2)からなり、ほぼ12600プローブ対を含むAffymetrixヒトゲノムU95組であった。各プローブ組は、22個の異なるオリゴヌクレオチドからなる(そのうちの11個は、標的転写物と完全に適合し、11個は中央に1つのヌクレオチドミスマッチを有する)。これらの22個のオリゴヌクレオチドを使用して、所与の転写物レベルを測定した。チップをスキャンし、各プローブ組の強度を、Affymetrix MAS5.0デフォルト設定を使用して計算した。本発明者らは、30アレイの少なくとも5%(ほぼ8900プローブ対)に「存在する」特壊死を有するプローブ対のみを保持した。各遺伝子「X」について、患者を以下の2つの群に分類した:遺伝子「X」の全測定値の中央値を超える発現測定値を有するもの、および中央値未満の発現測定値を有するもの。これにより、2つの群をそれぞれ「X」+および「X」−に定義することができた。
RT−PCR
総RNAを、塩化セシウム遠心分離によって抽出した。以前に記載のように、これを、ランダムプライミングによる第1のcDNA鎖分析のためのテンプレートとして使用した(23、24)。N−カドヘリンmRNA量を、内部コントロールとしてTBP(TATA結合タンパク質)を使用した半定量的放射性RT−PCRによって決定した。使用プライマーは、N−カドヘリンについてはGCTGGACCATTTGCTTTTGATおよびGATGGGAACTTCATAGATACCであり、TBPについてはAGTGAAGAACAGTCCAGACTGおよびCCAGGAAATAACTCTGGCTCATであった。PCR反応の指数関数部分となるようにサイクル数を選択した(25サイクル)。PCR産物を、8%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動に供した。シグナルを、Molecular Dynamics300 PhosphorImager(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)で定量した。
統計分析
Windows(登録商標)用のRソフトウェアを使用して、統計分析を行った。カプラン・マイヤー法を使用して、生存曲線を評価した。ログランク検定を行って、2群間で生存の差異は存在しないという帰無仮説を検定した。0.05未満のp値を、統計的に有意と見なした。本発明者らは、スピアマンの順位相関係数を使用して、相違測定値を相関させた。スチューデント検定を行って、相関の有意性を検定した。本発明者らは、データをログ化していない相関研究を除くログ化(logged)Affymetrixデータを使用した。
(実施例2)膀胱癌細胞株中のN−カドヘリン発現は、Akt活性化、E−カドヘリン喪失、および浸潤性挙動に関連する。
【0166】
膀胱癌におけるEMTの可能な役割を研究するために、本発明者らは、最初に、N−カドヘリンおよびE−カドヘリン発現について膀胱癌細胞株のパネルをスクリーニングした。図1Aに示すように、N−カドヘリンは、6つの細胞株のうちの4つ(TCC、EJ、J82、およびT24)で発現し、6つのうちの2つ(UC14およびSW780)に存在しなかった。N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間には強い逆相関が存在し、これは、EMTを受けた細胞におけるカドヘリン「スイッチ」の以前の報告と一致した。UC14およびSW780は、最も高レベルのE−カドヘリンを発現し、且つN−カドヘリン陰性である一方で、N−カドヘリン陽性株(TCC)は低レベルのE−カドヘリン発現を保持する。N−カドヘリンがAktを活性化することができることを示唆した最近の研究に基づいて、本発明者らは、リンレベルおよび総Aktレベルについても細胞をアッセイした。N−カドヘリン発現とAkt活性化のアイだに顕著な関連が認められ、全N−カドヘリン陽性細胞株は有意なレベルのリン−Aktを発現する。N−カドヘリン陰性細胞は、逆に、低レベルの活性化Aktを発現する。
【0167】
Akt活性化がPTENの喪失または変異に起因するかどうかを決定するために、本発明者らは、全株におけるPTENを配列決定し、PTENタンパク質レベルを測定した(図1B)。T24でPTEN変異が認められ、これは、以前の報告(25)と一致する。J82は、検出可能なPTENタンパク質を発現しない。EJおよびTCCは野生型PTENを発現し、2/4 N−カドヘリン陽性細胞株でAkt発現がPTENと無関係であることが示唆される(データ示さず)。形態学的に、J82およびTCCは、培養時に線維芽細胞様外観を示す一方で、T24およびEJは小さな不十分に分化した形態を有した。SW780およびUC14は、上皮様形態を有する。
【0168】
N−カドヘリンと浸潤可能性との関連を評価するために、全細胞株を、前述のボイデン・チェンバアッセイまたはin vitro再構成モデルで評価した。後者を使用して、上皮と間質とのin vivoでの関係を模倣した。図2に示すように、N−カドヘリン陽性細胞株は全て種々の程度の浸潤性挙動を示す一方で、N−カドヘリンヌル細胞の浸潤は最小であった。EJは、ボイデン・チェンバアッセイおよびin vitro再構成モデルの両方で高い浸潤性を示す一方で、SW780はいずれのアッセイでも浸潤せず、2つの試験間に良好な相関が示唆された。別の細胞株647Vは、J82ほどの浸潤であった。興味深いことに、647VはN−カドヘリンを発現しないが、高レベルの活性化Aktを発現する。これらの所見は、N−カドヘリンの非存在下でさえも浸潤とAktリン酸化との間の関連を支持する。
(実施例3)P−AKT経路の活性化および阻害は、浸潤性ヒト膀胱細胞株におけるN−カドヘリンまたはP−EGFR発現に依存する。
【0169】
PI3キナーゼ−Akt経路は、ヒト癌における腫瘍の進行および転移の中核をなし、膀胱癌浸潤で極めて重要な役割を果たすと考えられている。しかし、膀胱癌においてAktを活性化する上流シグナルについてはほとんど知られていない。N−カドヘリンおよび上皮成長因子受容体(EGFR)のシグナル伝達経路を調査し、いくつかの浸潤性ヒト膀胱細胞株におけるAkt活性かの関連を評価した。これらの細胞株におけるN−カドヘリンおよびEGFR阻害の分子および機能の影響も調査した。
【0170】
浸潤性および非浸潤性の膀胱癌細胞株のパネルを、ウェスタンブロットによって、活性化EGFR、N−カドヘリン、E−カドヘリン、活性化Akt、およびPTEN発現についてスクリーニングした。細胞を、EGFR アンタゴニストIressa、N−カドヘリン遮断抗体GC−4、およびPI3KインヒビターLY294002を使用するか使用しないで評価した。上記分子インヒビターの存在下または非存在下での各細胞株の浸潤挙動も評価した。
【0171】
N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間に反比例関係が存在した。T24、J82、およびTCCsup細胞株は、強いN−カドヘリン陽性およびE−カドヘリン陰性を示した。1つ(例えば、EJ細胞株)を除き、N−カドヘリン発現と活性化EGFR(pEGFR)発現との間にも反比例関係が存在した。全N−カドヘリン陽性細胞株(T24−EJ−J82−TCCSup)は、活性化Akt(pAkt)を強く発現する一方で、たった1つのpEGFR陽性細胞株(例えば、647V)しか発現しなかった。in vitro浸潤アッセイでは、強いpAkt発現を伴うN−カドヘリンおよびpEGFR陽性細胞株のみが浸潤性を示した。GC4およびIressaは、全細胞株においてpAkt発現を下方制御した。同様に、GC−4およびIressaは、T24−EJ−J82および647Vの浸潤をそれぞれ有意に減少させた。LY294002は、pAkt用紙絵細胞株の浸潤性の遮断において、GC−4またはIressaほどの有効性を示し、pAktがN−カドヘリンおよびpEGFR媒介性浸潤に極めて重要であることが示唆された。興味深いことに、CG−4でのN−カドヘリン遮断はAkt活性化を減少させるだけでなく、E−カドヘリン発現を回復させた。同様に、Iressa処置により、pAkt陽性および非浸潤性が弱い場合でも、全pEGFR陽性細胞株(647V−SD148−RT112)のE−カドヘリン発現が増加した。対照的に、Ly294002処置は、E−カドヘリン発現を回復しなかった。
(実施例4)N−カドヘリンおよびpEGFRは、浸潤性膀胱癌挙動に必要な別のAkt活性化経路を示す。
【0172】
図3Aに示すように、N−カドヘリン陽性細胞株TCC、EJ、T24、およびJ82の処置により、浸潤が有意に減少したのに対して、浸潤性N−カドヘリンヌル細胞株647Vには影響を及ぼさなかった。本発明者らは、in vitro再構成モデルにおけるGC−4を使用するか使用しないEJ浸潤性も評価し、細胞を培養したラット間質への浸潤の50%減少が認められた(データ示さず)。これらの結果により、N−カドヘリン遮断がN−カドヘリン陽性細胞株の浸潤を特異的に阻害することができることが示唆される。
【0173】
内因性N−カドヘリンの中和がAkt活性化を阻害するかどうかを決定するために、処置細胞のウェスタンブロッティングを行った。図3Bに示すように、GC−4処置により、T24細胞株においてAktリン酸化が有意に減少した。他のN−カドヘリン細胞株で類似の結果が認められた。本発明者らは、N−カドヘリン中和がEMTの特徴であるカドヘリンスイッチを逆転することができるかどうかも調査した。図3Bは、GC−4処置がE−カドヘリン発現を以前のE−カドヘリン陽性T24細胞株に回復することを示す。これらの結果により、Aktの不活化およびE−カドヘリン発現の回復によってN−カドヘリン遮断が浸潤を阻害することができることが示唆される。
【0174】
N−カドヘリンおよびpEGFR遮断は、浸潤の遮断に十分であり、Aktの下方制御によって遮断されるようである。PI3キナーゼインヒビターがこれらの細胞株における浸潤を遮断する能力は、この過程におけるAktの極めて重要な役割を強調し、N−カドヘリンおよびpEGFRがPI3キナーゼカスケードを介してAktを活性化することを示す。GC−4およびIressaはE−カドヘリン発現を回復または増加させることができるがLy294002ではできず、E−カドヘリンがAktによって直接調節されないことが示唆される。
【0175】
並行実験では、本発明者らは、ホルモン依存性および非依存性の前立腺癌異種移植片対における遺伝子発現を比較した。本発明者らは、N−カドヘリンが、前立腺癌によって死亡した男性の耐ホルモン性異種移植片および剖検で一貫して上方制御されることを見出し、前立腺癌もEMTを受けることによって進行し得ることが示唆された。最近、本発明者らは、de novo N−カドヘリン発現が、アンドロゲン反応性前立腺癌細胞株に浸潤性およびアンドロゲン非依存性成長を付与することができることを示した。本発明者らは、N−カドヘリンに対する一連の新規のモノクローナル抗体を生成した。
【0176】
したがって、N−カドヘリン発現は、前立腺癌および膀胱癌の浸潤および転移ならびに前立腺癌の耐ホルモン性疾患への進行に寄与し得る。N−カドヘリンを、単独およびmTORおよびEGFRの他の小分子インヒビターとの組み合わせの両方で治療的にターゲティングすることができる。N−カドヘリンのターゲティングは、浸潤性および転移性前立腺癌を防止または抑制するのに役立ち得る。
(実施例5)活性化Aktは、膀胱癌浸潤を部分的にのみ担う。
【0177】
膀胱癌細胞SW780の浸潤におけるAKTの役割を理解するために、N−カドヘリンおよびpAKT陰性細胞株(図1A)に、活性化AKTを含むレンチウイルスを感染させた。レンチウイルス含有GFPを、ネガティブコントロールとして使用した。SW780細胞を、ボイデン・チェンバアッセイを使用して浸潤性について試験した。予想通り、活性化AKT細胞は、さらにより浸潤性が高かった(図4A)。内因性pAKTの役割を確認するために、T24細胞(高いpAKTおよびN−カドヘリンを有することが公知)を、PI3キナーゼインヒビターであるLY294002で処置した。pAkt発現は、10μgのLY294002によって強く阻害された(図4B)。図4Cに示すように、LY294002は膀胱癌浸潤を減少させたが、ウェスタンブロットで等しくGC−4およびLYの両方がAkt活性化を阻害したにもかかわらず、その程度はN−カドヘリン抗体GC−4より小さかった。これらの結果により、pAktがN−カドヘリン陽性膀胱癌細胞の浸潤に部分的にしか寄与しないことが示唆される。GC−4への細胞の曝露後に認められるように、LY294002処置によってE−カドヘリンは再発現されなかった(データ示さず)。また、SW780細胞におけるpAktの強制発現は、E−カドヘリン発現を減少させなかった(図4A)。PI3K遮断後のE−カドヘリン発現の非存在およびpAkt発現によるE−カドヘリン減少の失敗により、E−カドヘリンのN−カドヘリン媒介調節がAkt依存性ではないことが示唆される。N−カドヘリンの浸潤への寄与がpAktの増加およびE−カドヘリン発現の減少の両方に起因することがさらに示唆される。
(実施例6)表在性膀胱癌および浸潤性膀胱癌の臨床例において、N−カドヘリン発現はE−カドヘリンと反比例する
本発明者らのin vitro所見をヒト膀胱癌に拡大するために、本発明者らは、最初に、17個の新たに得た表在性癌および浸潤性癌のパネルを、N−カドヘリンがヒト膀胱腫瘍によって実際に発現するのかどうかを決定するために、ウェスタンブロットによってN−およびE−カドヘリン発現について調査した。1つを除いた全ての腫瘍は、T1または浸潤癌を有する患者に由来し、事実上全てが高悪性度であった。図5Aに示すように、17個の腫瘍のうちの14個(66%)が、いくらかの程度のN−カドヘリンタンパク質を発現した。これらの14個のうちの7個が、低レベルのE−カドヘリンを発現する一方で、別の7個は検出可能なE−カドヘリンを持たなかった。概して、N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間に強い逆相関が認められた。最も強いN−カドヘリン発現を示す腫瘍はE−カドヘリンが存在しない傾向がある一方で、強いE−カドヘリン陽性を示す腫瘍はN−カドヘリン陰性を示した。この患者パネルについての長期追跡は利用できなかったが、データは、N−カドヘリンが一般に膀胱癌細胞株で認められたレベルに対応するレベルで高悪性度の表在性膀胱癌および浸潤性膀胱癌の間で発現することを証明する。さらに、データは、N−カドヘリン発現とE−カドヘリン発現との間の反比例を支持するが、多くの腫瘍が両遺伝子を同時発現することに注目すべきである。
(実施例7)N−カドヘリン発現は、浸潤性膀胱癌患者の不良な予後に関連する。
【0178】
前データによりN−カドヘリンタンパク質がヒト膀胱癌で発現することが確認される。N−カドヘリン発現およびEMTの証拠が膀胱癌において予後的意義を有するかどうかを決定するために、本発明者らは、そのN−カドヘリン発現に基づいて、浸潤性膀胱癌の根治的膀胱適除を受けた患者群の間の生存を比較した。N−カドヘリン抗体がパラフィン包埋組織切片を不十分に染色するので(データ示さず)、本発明者らは、方法と材料に記載のように、RNA発現に基づいてN−カドヘリン発現をスコアリングした(図5B)。簡潔に述べれば、本発明者らは、AffymetrixチップからN−カドヘリンRNA発現に関するデータを得て、平均と比較した発現に基づいて腫瘍を陽性または陰性にスコアリングした。RT−PCRを使用して、RNAを利用可能な15人の患者の小集団に対するこの方法の妥当性を確認した。RT−PCRとAffymetrixチップ由来の情報との相関は、有意性が高く、このアプローチの妥当性が確認された。図5Bに示すように、N−カドヘリン陽性腫瘍患者は、腫瘍がN−カドヘリンを発現しなかった患者と比較して、全生存が有意に短かった(p−0.0064)。
【0179】
次に、本発明者らは、N−カドヘリン発現およびE−カドヘリン発現の両方に基づいて患者を階層化した。N−カドヘリンと同様にE−カドヘリン発現をスコアリングし、立証した。以下の4つの患者群を同定した:N−カドヘリンのみを発現する患者、E−カドヘリンおよびN−カドヘリンの両方を発現する患者、いずれも発現しない患者、およびE−カドヘリンのみを発現する患者。N−およびE−カドヘリンの両方を発現する患者ならびにいずれも発現しない患者は同様に生存曲線を示し、これらを共にプロットした。図6に示すように、全生存は、3つの群に明確に階層化し、N−カドヘリン陽性腫瘍の予後が最悪であり、E−カドヘリン陽性腫瘍の予後が最良であった。混合腫瘍は、中間の予後を示した。これらのデータは、N−カドヘリン発現およびE−カドヘリン発現が組合わされて浸潤性膀胱癌患者の予後が決定されることを示す。N−カドヘリンの存在はより不良な予後を付与し、E−カドヘリンのみの使用によって得られる予後にさらなる情報を与える。実際、N−カドヘリンは、E−カドヘリンよりも強い予後の非依存性マーカーである。
(実施例8)N−カドヘリンは、耐ホルモン性前立腺癌の異種移植片、細胞株、および患者の腫瘍で上方制御される。
【0180】
数年にわたって、本発明者らは、ホルモン感受性および非依存性LAPC−4およびLAPC−9前立腺癌異種移植片対の遺伝子発現を比較してきた。これらのモデルを使用して、本発明者らは、以前に、Reg*IV(耐ホルモン性腫瘍の60%で上方制御される分泌タンパク質)をクローン化した。LAPC−4および9AI(アンドロゲン非依存性)腫瘍で上方制御されることが一貫して見出された別の遺伝子はN−カドヘリンであった。リアルタイムPCR(図8)およびウェスタンブロット分析(図7)により、N−カドヘリンが非依存性に誘導されたAIクローンで増加することが確認された。N−カドヘリンはAI細胞株 22RV1およびPC3でも発現するが、アンドロゲン依存性細胞株LNCaPでは発現しない(示さず)。これらのデータは、60%を超える耐ホルモン性前立腺癌がN−カドヘリン陽性であるというTomita et al.and othersによる以前の報告と一致する。高悪性度原発性腫瘍(Gleason 8〜10)もN−カドヘリンを発現する一方で(約40%)、低悪性度腫瘍は稀にしか陽性でなかった。本発明者らは、剖検由来の前立腺癌転移のコホートにおけるN−カドヘリン発現をも比較した。これらのアンドロゲン非依存性腫瘍の大部分は、PC3(上記の浸潤性膀胱癌株と類似のレベルを有する細胞株)と類似のレベルのN−カドヘリンを発現する。これらの結果により、転移の促進またはアンドロゲン非依存性への進行のいずれかによるEMTおよびN−カドヘリン発現も前立腺癌で重要であり得ることが示唆される。
(実施例9)N−カドヘリン発現は、浸潤性およびアンドロゲン非依存性成長を促進する。
【0181】
N−カドヘリン発現によって浸潤性、転移性、またはアンドロゲン非依存性の成長を得ることができるかどうかを決定するために、本発明者らは、アンドロゲン依存性LNCaP細胞株にレンチウイルス含有N−カドヘリン構築物を安定に感染させた。N−カドヘリンを形質導入したLNCaP細胞は、検出可能レベルのN−カドヘリンを有し(図9)、コントロール感染細胞と比較して形態が顕著に変化し(示さず)、コントロールよりも有意にマトリゲルチャンバーに浸潤した(図9)。LNCaP−Nカドヘリン細胞は、チャコールストリップ血清(charcoal stripped serum)で生存し、アンドロゲン非依存性の獲得が示唆された。最も顕著には、これらの細胞は、去勢マウスで腫瘍を急速に形成する一方で、コントロール細胞は腫瘍を形成せず、腫瘍形成性およびアンドロゲン非依存性の両方の増加が示唆された(図10)。継代早期のアンドロゲン受容体レベルは変化せず、この影響がARに非依存性であることが示唆される。最後に、N−カドヘリン中和はこれらの細胞の浸潤を減少させ、このことは、膀胱癌における前の結果と一致する。これらの結果は、N−カドヘリン発現が、(1)前立腺癌細胞においてEMTを生じさせ、(2)前立腺癌細胞に浸潤挙動を付与し、(3)アンドロゲン非依存性成長を付与することができることを本発明らに知らしめた最初の証拠を提供する。最後に、N−カドヘリン中和は浸潤を阻害し、N−カドヘリンがEMTの証拠と共に前立腺癌細胞における治療標的であり得ることが示唆された。N−カドヘリン過剰発現は、アンドロゲン非依存性細胞周期の活性化およびLNCaP細胞の成長を引き起こし、LNCaP成長においてアンドロゲン感受性を消失させることも見出された。
【0182】
これらの所見は、N−カドヘリン誘導によって特徴づけられるEMTが膀胱癌の浸潤性を増加させることを証明し、これが臨床的に転移および死亡のリスクの増加と解釈される。この生物学的影響は、その一部が、Aktの活性化およびE−カドヘリンの喪失によって調節され、N−カドヘリンに対する抗体によって治療的にターゲティングすることができる。膀胱癌に加えて、本発明者らの予備的結果により、N−カドヘリンが耐ホルモン性前立腺癌で上方制御されることが示唆される。今まで予後との関連を調査した者はなかったにもかかわらず、これは、進行前立腺癌におけるN−カドヘリン発現の他の報告と一致する。同様に、治療的な前立腺癌におけるN−カドヘリンのターゲティングまたはN−カドヘリンの耐ホルモン性前立腺癌への生物学的寄与の概念を調査した者はなかった。
【0183】
本明細書中に記載の実施例および実施形態が例示のみを目的とし、これらを考慮して当業者によって種々の修正形態または変更形態が示唆され、これらが本願の精神および範囲および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると理解される。本明細書中に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、事実上その全体が本明細書中で参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】ヒト膀胱癌細胞株における内因性カドヘリンプロフィール。A.ウェスタンブロットは、N−カドヘリンタンパク質レベルがpAktレベルと直接相関し、E−カドヘリン発現と逆相関することを証明する。B.ヒト膀胱癌細胞株のPTEN状態。
【図2】種々のカドヘリンプロフィールを有するヒト膀胱癌細胞株のMatrigel in−vitro浸潤アッセイ。E−カドヘリンを発現する細胞株は、内因性N−カドヘリンを発現する細胞株よりも浸潤性が低かった。実験を三連で行い、平均を取った。
【図3】浸潤に及ぼすN−カドヘリン抗体中和の効果。A.ヒト膀胱癌細胞株のGC4 中和抗体(白)での処置対非処置(黒)での処置の比較。B.抗体中和によってN−カドヘリン発現T24細胞株において内因性にpAKT発現が減少し、E−カドヘリン発現が増加することを示すウェスタンブロット分析。浸潤アッセイデータは、三連で行い、平均を取った実験を示す。
【図4】PI3/Akt経路は、内因性に発現するN−カドヘリン膀胱癌細胞株で見いだされる浸潤活性の全てではないかいくらかに寄与する。A.N−カドヘリン陽性SW780細胞におけるレンチウイルス感染による強制的pAkt発現。E−カドヘリン発現の変化は認められない。B.pAkt発現が強制されたSW780細胞株に浸潤活性の増加が認められる。C.N−カドヘリン陽性細胞株T24を、AktインヒビターLY294002で処置した。このインヒビターでの処置により、pAkt発現が減少した。D.N−カドヘリン中和抗体で処置したT24細胞により、Aktインヒビターのみと比較した場合に浸潤可能性が増大した。
【図5】N−カドヘリン状態は、表在性および浸潤性膀胱癌患者の生存率の減少に相関する。A.表在性および浸潤性ヒト膀胱腫瘍のカドヘリンプロフィールを示すウェスタンブロット。17人の患者のうち14人は、N−カドヘリンを発現した。B.浸潤性膀胱癌の根治的膀胱適除術後のN−カドヘリン状態に応じてグループ分けした患者の全生存率のカプラン・マイヤー曲線。N−カドヘリン発現を、Affymetrixチップによって収集し、RNA発現に基づいてデータから決定した。統計分析は、N−カドヘリン陽性を示した患者(青色で示す)が、N−カドヘリン陰性患者(赤色で示す)と比較して生存率が減少することを証明した。
【図6】カドヘリン状態は、浸潤性膀胱癌患者の間の予後と相関する。N−カドヘリンおよびE−カドヘリンの両方に基づいて患者を階層化し、3つの群に分けた。N−カドヘリン陽性およびE−カドヘリン陰性腫瘍を有する患者を示すカプラン・マイヤー曲線は、最悪の全生存を示した。E−カドヘリン陽性N−カドヘリン陰性腫瘍を有する患者の生存率が最も高く、混合プロフィールの患者が中間であった。
【図7】ウェスタンブロット分析。これらの分析は、膀胱癌細胞株(J82および647V)、前立腺癌細胞株(LNCaP、22RV1、およびPC3)、および前立腺癌異種移植片(LAPC−9 アンドロゲン依存性および非依存性)中でのN−カドヘリンおよびE−カドヘリン発現を示す。J82ならびにアンドロゲン依存性株PC3、22RV1、およびLAPC−9 AI中のN−カドヘリンの発現に留意されたい。N−カドヘリンは、LAPC−4 AI中でも発現する(示さず)。Eカドヘリンは、PC3およびJ82中で下方制御されるが、22RV1および9AI細胞株/異種移植片で下方制御されない。
【図8】N−カドヘリン発現のリアルタイムPCR分析。耐ホルモン性前立腺癌転移ならびに前立腺癌細胞株PC3、LNCaP、LAPC−4 AD、AI、LAPC 9 AD、AI、および22RV1におけるN−カドヘリン発現を評価した。発現レベルをPC3(N−カドヘリン発現が非常に高い細胞株)に規準化する。22 RV1発現は、より低いレベルのN−カドヘリンレベルを発現し、これをウェスタンによって検出可能である。5つの腫瘍がPC3よりも4〜25倍(00−090EEおよび01−046C)のレベルのN−カドヘリンを発現することに留意されたい。PC3と類似のレベルは、21種中16種で認められる。
【図9】N−カドヘリンを形質導入したLNCaP細胞。N−カドヘリンを形質導入したLNCaP細胞は、高レベルのN−カドヘリンを発現し、それにより、E−カドヘリンを下方制御し、EMTと一致する形態学的変化が起こる。LNCaP−N−カドヘリン細胞は、in vitroで浸潤性が高い。これらのPTENヌル細胞においてAktは変化しない。
【図10】マウスにおけるLNCaP−IN−カドヘリン細胞。マウス中のLNCaP−N−カドヘリン細胞は去勢マウスで腫瘍を急速に形成する一方で、コントロール細胞は成長せず、このことは、アンドロゲン非依存性表現型への変換と一致する。
【図11】N−カドヘリン中の切断部位および抗体結合部位。
【図12】LNCaP−N−カドヘリン細胞における浸潤活性に及ぼす影響による抗体のスクリーニング。
【図13−1】N−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図13−2】N−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図14】Ly6−Eのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図15−1】E−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図15−2】E−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図15−3】E−カドヘリンのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の情報。
【図16−1】N−カドヘリン変異型の配列および抗体結合情報。
【図16−2】N−カドヘリン変異型の配列および抗体結合情報。
【図16−3】N−カドヘリン変異型の配列および抗体結合情報。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−カドヘリンタンパク質を過剰発現する泌尿生殖器癌を診断する方法であって、該方法が以下:
(a)N−カドヘリンタンパク質を過剰発現する癌を有するリスクのある個体から試験組織サンプルを得る工程、および
(b)癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のN−カドヘリンタンパク質の有無または量を決定し、それにより、該N−カドヘリンタンパク質を過剰発現する癌を診断する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記試験組織がN−カドヘリンタンパク質に特異的に結合する抗体と接触し、それにより、前記N−カドヘリンタンパク質の過剰発現が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N−カドヘリンmRNAも過剰発現し、前記試験組織サンプルが該N−カドヘリンmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触してN−カドヘリンmRNA核酸を増幅し、それにより、N−カドヘリンタンパク質の過剰発現も決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組織サンプルが、血清サンプルまたは血液サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組織サンプルが、前立腺組織または膀胱組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が膀胱癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が耐ホルモン性前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が転移癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルにおけるレベルの少なくとも4倍は大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記mRNA転写物の有無または量をPCRによって決定する、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
癌予後を提供する方法であって、該方法が以下:
(a)癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルを接触させる工程、および
(b)癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のN−カドヘリンタンパク質の有無または量を決定し、それにより、癌がN−カドヘリンmRNA転写物の過剰発現として同定される工程を含む、方法。
【請求項15】
前記試験組織サンプルがN−カドヘリンmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触して該サンプル中のN−カドヘリンmRNA核酸を増幅し、それにより、N−カドヘリンタンパク質の有無または量が決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試験組織サンプルをN−カドヘリンタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させ、それにより、N−カドヘリンタンパク質の相対的な有無または量を決定する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記癌が前立腺癌である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が膀胱癌である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
N−カドヘリンの過剰発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効となる可能性が高いことを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
N−カドヘリンの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する方法であって、該方法が以下:
(a)N−カドヘリンタンパク質およびN−カドヘリン受容体を発現する細胞を化合物と接触させる工程、および
(b)該化合物がN−カドヘリンタンパク質の該N−カドヘリン受容体への結合を阻害するかどうか決定し、それにより、N−カドヘリンの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する工程
を含む、方法。
【請求項24】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
N−カドヘリンを過剰発現する癌を治療する方法であって、前立腺組織細胞中に治療有効量のN−カドヘリンタンパク質のN−カドヘリン受容体への結合を阻害する化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
N−カドヘリンに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項30】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する 、請求項29〜請求項31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
N−カドヘリンに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含み、該抗体がエフェクター部分と抱合している、癌の治療方法。
【請求項34】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する、請求項33〜請求項35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記エフェクター分子が細胞毒性薬である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞毒性薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン(dihydroxy anthracin dione)、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン(abrin)、アルブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α−サルシン(alpha−sarcin)、ゲロニンマイトゲリン(gelonin mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クリシン(curicin)、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター(sapaonaria officinalis inhibitor)、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
N−カドヘリンの発現を阻害またはサイレンシングすることができるsiRNAを投与する工程を含む、癌を治療する方法。
【請求項40】
前記N−カドヘリンの発現が阻害され、前記RNAiが図7の核酸配列と同一の配列を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する、請求項39〜請求項41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記siRNAが短いヘアピンRNAである、請求項39〜請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項39〜請求項43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、請求項14に記載の方法の治療が無効である可能性が高いかどうかを決定する工程、および癌が浸潤するようになるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、治療が無効である可能性が増大するかどうかによって化学療法薬、免疫療法薬、ホルモン療法薬、または放射線療法薬を施行する工程を含む、癌患者を治療する方法。
【請求項46】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記癌が前立腺癌である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記化学療法薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記患者を、根治的前立腺適除術、放射線療法、ホルモン療法、または化学療法によって治療する、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記N−カドヘリンの過剰発現がコントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項45〜請求項49に記載の方法。
【請求項51】
N−カドヘリンインヒビター、N−カドヘリンsiRNA、または抗N−カドヘリン抗体も投与する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
癌の診断、予後、または治療における標的としてのN−カドヘリンタンパク質またはmRNAの使用。
【請求項53】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する 、請求項52に記載の使用。
【請求項55】
前記癌が少なくとも4倍のN−カドヘリンを過剰発現する、請求項53に記載の使用。
【請求項56】
N−カドヘリンタンパク質を抗N−カドヘリン抗体と接触させる、請求項52に記載の使用。
【請求項57】
mRNAの発現を干渉することができるsiRNAを、N−カドヘリンを過剰発現する癌を有する被験体に投与する、請求項52に記載の使用。
【請求項58】
前記癌が浸潤性であるか、治療が無効である、請求項52または請求項51に記載の使用。
【請求項59】
Ly6−Eタンパク質を過剰発現する癌を診断する方法であって、該方法が以下:
(a)Ly6−Eタンパク質を過剰発現する癌を有するリスクのある個体から試験組織サンプルを得る工程、および
(b)該癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のLy6−Eタンパク質の有無または量を決定し、それにより、該Ly6−Eタンパク質を過剰発現する癌を診断する工程
を含む、方法。
【請求項60】
前記試験組織がLy6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触し、それにより、前記Ly6−Eタンパク質の過剰発現が決定される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記Ly6−EmRNAも過剰発現し、前記試験組織サンプルが該Ly6−EmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触してLy6−EmRNA核酸を増幅し、それにより、Ly6−Eタンパク質の過剰発現も決定される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記組織サンプルが、血清サンプルまたは血液サンプルである、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記組織サンプルが、前立腺組織または膀胱組織である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記癌が前立腺癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記癌が膀胱癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記癌が耐ホルモン性前立腺癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記癌が転移癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルにおけるレベルの少なくとも4倍は大きい、請求項59に記載の方法。
【請求項70】
前記mRNA転写物の有無または量をPCRによって決定する、請求項61に記載の方法。
【請求項71】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項59に記載の方法。
【請求項72】
癌予後を提供する方法であって、該方法が以下:
(a)癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルを接触させる工程、および
(b)癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のLy6−Eタンパク質の有無または量を決定し、それにより、癌がLy6−EmRNA転写物の過剰発現として同定される工程を含む、方法。
【請求項73】
前記試験組織サンプルがLy6−EmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触して該サンプル中のLy6−EmRNA核酸を増幅し、それにより、Ly6−Eタンパク質の有無または量が決定される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記試験組織サンプルをLy6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させ、それにより、Ly6−Eタンパク質の相対的な有無または量を決定する、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記癌が前立腺癌である、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記癌が膀胱癌である、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
Ly6−Eの過剰発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効となる可能性が高いことを示す、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
Ly6−Eの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する方法であって、該方法が以下:
(a)Ly6−Eタンパク質およびLy6−E受容体を発現する細胞を化合物と接触させる工程、および
(b)該化合物がLy6−Eタンパク質の該Ly6−E受容体への結合を阻害するかどうか決定し、それにより、Ly6−Eの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する工程
を含む、方法。
【請求項82】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
Ly6−Eを過剰発現する癌を治療する方法であって、該方法が、前立腺組織細胞中にLy6−Eタンパク質のLy6−E受容体への結合を阻害する治療有効量の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項85】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
Ly6−Eに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項88】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項87〜請求項89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
Ly6−Eに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含み、該抗体がエフェクター部分と抱合している、癌の治療方法。
【請求項92】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項91〜請求項93のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
前記エフェクター分子が細胞毒性薬である、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞毒性薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
Ly6−Eの発現を阻害またはサイレンシングすることができるsiRNAを投与する工程を含む、癌を治療する方法。
【請求項98】
前記Ly6−Eの発現が阻害され、前記RNAiが図9の核酸配列と同一の配列を有する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項97〜請求項99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
前記siRNAが短いヘアピンRNAである、請求項97〜請求項99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項97〜請求項99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、請求項14に記載の方法の治療が無効である可能性が高いかどうかを決定する工程、および癌が浸潤するようになるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、治療が無効となる可能性が増大するかどうかによって化学療法薬、免疫療法薬、ホルモン療法、または放射線療法を施行する工程を含む、癌患者を治療する方法。
【請求項104】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記癌が前立腺癌である、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記化学療法薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項103に記載の方法。
【請求項107】
前記患者を、根治的前立腺適除術、放射線療法、ホルモン療法、または化学療法によって治療する、請求項103に記載の方法。
【請求項108】
前記Ly6−Eの過剰発現がコントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項103〜請求項107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
Ly6−Eインヒビター、Ly6−EsiRNA、または抗Ly6−E抗体も投与する、請求項103〜請求項107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
癌の診断、予後、または治療における標的としてのLy6−Eタンパク質またはmRNAの使用。
【請求項111】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項110に記載の使用。
【請求項112】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項110に記載の使用。
【請求項113】
前記癌が少なくとも4倍のLy6−Eを過剰発現する、請求項110に記載の使用。
【請求項114】
Ly6−Eタンパク質を抗Ly6−E抗体と接触させる、請求項110に記載の使用。
【請求項115】
mRNAの発現を干渉することができるsiRNAを、Ly6−Eを過剰発現する癌を有する被験体に投与する、請求項110に記載の使用。
【請求項116】
前記癌が浸潤性であるか、治療が無効である、請求項110に記載の使用。
【請求項1】
N−カドヘリンタンパク質を過剰発現する泌尿生殖器癌を診断する方法であって、該方法が以下:
(a)N−カドヘリンタンパク質を過剰発現する癌を有するリスクのある個体から試験組織サンプルを得る工程、および
(b)癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のN−カドヘリンタンパク質の有無または量を決定し、それにより、該N−カドヘリンタンパク質を過剰発現する癌を診断する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記試験組織がN−カドヘリンタンパク質に特異的に結合する抗体と接触し、それにより、前記N−カドヘリンタンパク質の過剰発現が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N−カドヘリンmRNAも過剰発現し、前記試験組織サンプルが該N−カドヘリンmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触してN−カドヘリンmRNA核酸を増幅し、それにより、N−カドヘリンタンパク質の過剰発現も決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組織サンプルが、血清サンプルまたは血液サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組織サンプルが、前立腺組織または膀胱組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が膀胱癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が耐ホルモン性前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が転移癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルにおけるレベルの少なくとも4倍は大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記mRNA転写物の有無または量をPCRによって決定する、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
癌予後を提供する方法であって、該方法が以下:
(a)癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルを接触させる工程、および
(b)癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のN−カドヘリンタンパク質の有無または量を決定し、それにより、癌がN−カドヘリンmRNA転写物の過剰発現として同定される工程を含む、方法。
【請求項15】
前記試験組織サンプルがN−カドヘリンmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触して該サンプル中のN−カドヘリンmRNA核酸を増幅し、それにより、N−カドヘリンタンパク質の有無または量が決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記試験組織サンプルをN−カドヘリンタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させ、それにより、N−カドヘリンタンパク質の相対的な有無または量を決定する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記癌が前立腺癌である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が膀胱癌である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
N−カドヘリンの過剰発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効となる可能性が高いことを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
N−カドヘリンの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する方法であって、該方法が以下:
(a)N−カドヘリンタンパク質およびN−カドヘリン受容体を発現する細胞を化合物と接触させる工程、および
(b)該化合物がN−カドヘリンタンパク質の該N−カドヘリン受容体への結合を阻害するかどうか決定し、それにより、N−カドヘリンの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する工程
を含む、方法。
【請求項24】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
N−カドヘリンを過剰発現する癌を治療する方法であって、前立腺組織細胞中に治療有効量のN−カドヘリンタンパク質のN−カドヘリン受容体への結合を阻害する化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
N−カドヘリンに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項30】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する 、請求項29〜請求項31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
N−カドヘリンに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含み、該抗体がエフェクター部分と抱合している、癌の治療方法。
【請求項34】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する、請求項33〜請求項35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記エフェクター分子が細胞毒性薬である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞毒性薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン(dihydroxy anthracin dione)、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン(abrin)、アルブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、α−サルシン(alpha−sarcin)、ゲロニンマイトゲリン(gelonin mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、クリシン(curicin)、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター(sapaonaria officinalis inhibitor)、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
N−カドヘリンの発現を阻害またはサイレンシングすることができるsiRNAを投与する工程を含む、癌を治療する方法。
【請求項40】
前記N−カドヘリンの発現が阻害され、前記RNAiが図7の核酸配列と同一の配列を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する、請求項39〜請求項41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記siRNAが短いヘアピンRNAである、請求項39〜請求項41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項39〜請求項43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、請求項14に記載の方法の治療が無効である可能性が高いかどうかを決定する工程、および癌が浸潤するようになるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、治療が無効である可能性が増大するかどうかによって化学療法薬、免疫療法薬、ホルモン療法薬、または放射線療法薬を施行する工程を含む、癌患者を治療する方法。
【請求項46】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記癌が前立腺癌である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記化学療法薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記患者を、根治的前立腺適除術、放射線療法、ホルモン療法、または化学療法によって治療する、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記N−カドヘリンの過剰発現がコントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項45〜請求項49に記載の方法。
【請求項51】
N−カドヘリンインヒビター、N−カドヘリンsiRNA、または抗N−カドヘリン抗体も投与する、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
癌の診断、予後、または治療における標的としてのN−カドヘリンタンパク質またはmRNAの使用。
【請求項53】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
前記癌がN−カドヘリンを過剰発現する 、請求項52に記載の使用。
【請求項55】
前記癌が少なくとも4倍のN−カドヘリンを過剰発現する、請求項53に記載の使用。
【請求項56】
N−カドヘリンタンパク質を抗N−カドヘリン抗体と接触させる、請求項52に記載の使用。
【請求項57】
mRNAの発現を干渉することができるsiRNAを、N−カドヘリンを過剰発現する癌を有する被験体に投与する、請求項52に記載の使用。
【請求項58】
前記癌が浸潤性であるか、治療が無効である、請求項52または請求項51に記載の使用。
【請求項59】
Ly6−Eタンパク質を過剰発現する癌を診断する方法であって、該方法が以下:
(a)Ly6−Eタンパク質を過剰発現する癌を有するリスクのある個体から試験組織サンプルを得る工程、および
(b)該癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のLy6−Eタンパク質の有無または量を決定し、それにより、該Ly6−Eタンパク質を過剰発現する癌を診断する工程
を含む、方法。
【請求項60】
前記試験組織がLy6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触し、それにより、前記Ly6−Eタンパク質の過剰発現が決定される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記Ly6−EmRNAも過剰発現し、前記試験組織サンプルが該Ly6−EmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触してLy6−EmRNA核酸を増幅し、それにより、Ly6−Eタンパク質の過剰発現も決定される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記組織サンプルが、血清サンプルまたは血液サンプルである、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記組織サンプルが、前立腺組織または膀胱組織である、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記癌が前立腺癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記癌が膀胱癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記癌が耐ホルモン性前立腺癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記癌が転移癌である、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルにおけるレベルの少なくとも4倍は大きい、請求項59に記載の方法。
【請求項70】
前記mRNA転写物の有無または量をPCRによって決定する、請求項61に記載の方法。
【請求項71】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項59に記載の方法。
【請求項72】
癌予後を提供する方法であって、該方法が以下:
(a)癌を有するリスクのある個体由来の試験組織サンプルを接触させる工程、および
(b)癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して、該試験組織サンプル中のLy6−Eタンパク質の有無または量を決定し、それにより、癌がLy6−EmRNA転写物の過剰発現として同定される工程を含む、方法。
【請求項73】
前記試験組織サンプルがLy6−EmRNA核酸とそれぞれ特異的にハイブリッド形成する第1のオリゴヌクレオチドおよび第2のオリゴヌクレオチドのプライマー組と接触して該サンプル中のLy6−EmRNA核酸を増幅し、それにより、Ly6−Eタンパク質の有無または量が決定される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記試験組織サンプルをLy6−Eタンパク質に特異的に結合する抗体と接触させ、それにより、Ly6−Eタンパク質の相対的な有無または量を決定する、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記癌が前立腺癌である、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記癌が膀胱癌である、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
Ly6−Eの過剰発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効となる可能性が高いことを示す、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
前記過剰発現が、前記コントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記試験組織サンプル中のE−カドヘリンのさらなる有無または量を、癌について陰性であることが既知の個体由来のコントロール組織サンプルと比較して決定し、
ここで、E−カドヘリンの過小発現は、前記癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性となるか、治療が無効である可能性が高いことをさらに示す、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
Ly6−Eの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する方法であって、該方法が以下:
(a)Ly6−Eタンパク質およびLy6−E受容体を発現する細胞を化合物と接触させる工程、および
(b)該化合物がLy6−Eタンパク質の該Ly6−E受容体への結合を阻害するかどうか決定し、それにより、Ly6−Eの過剰発現に関連する癌を阻害する化合物を同定する工程
を含む、方法。
【請求項82】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
Ly6−Eを過剰発現する癌を治療する方法であって、該方法が、前立腺組織細胞中にLy6−Eタンパク質のLy6−E受容体への結合を阻害する治療有効量の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項85】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
Ly6−Eに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含む、癌の治療方法。
【請求項88】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項87〜請求項89のいずれかに記載の方法。
【請求項91】
Ly6−Eに結合する治療有効量の抗体を投与する工程を含み、該抗体がエフェクター部分と抱合している、癌の治療方法。
【請求項92】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項91〜請求項93のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
前記エフェクター分子が細胞毒性薬である、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞毒性薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
Ly6−Eの発現を阻害またはサイレンシングすることができるsiRNAを投与する工程を含む、癌を治療する方法。
【請求項98】
前記Ly6−Eの発現が阻害され、前記RNAiが図9の核酸配列と同一の配列を有する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項97〜請求項99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
前記siRNAが短いヘアピンRNAである、請求項97〜請求項99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記方法が、癌の浸潤または転移を阻害する、請求項97〜請求項99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
癌が浸潤性となるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、請求項14に記載の方法の治療が無効である可能性が高いかどうかを決定する工程、および癌が浸潤するようになるか、転移するか、ホルモン非依存性であるか、治療が無効となる可能性が増大するかどうかによって化学療法薬、免疫療法薬、ホルモン療法、または放射線療法を施行する工程を含む、癌患者を治療する方法。
【請求項104】
前記癌が泌尿生殖器癌である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記癌が前立腺癌である、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
前記化学療法薬が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アルブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、ゲロニンマイトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン、クロチン、カリチアマイシン、サパオナリア・オフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドリシンからなる群から選択される、請求項103に記載の方法。
【請求項107】
前記患者を、根治的前立腺適除術、放射線療法、ホルモン療法、または化学療法によって治療する、請求項103に記載の方法。
【請求項108】
前記Ly6−Eの過剰発現がコントロールサンプルの少なくとも4倍である、請求項103〜請求項107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
Ly6−Eインヒビター、Ly6−EsiRNA、または抗Ly6−E抗体も投与する、請求項103〜請求項107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
癌の診断、予後、または治療における標的としてのLy6−Eタンパク質またはmRNAの使用。
【請求項111】
前記癌が前立腺癌または膀胱癌である、請求項110に記載の使用。
【請求項112】
前記癌がLy6−Eを過剰発現する、請求項110に記載の使用。
【請求項113】
前記癌が少なくとも4倍のLy6−Eを過剰発現する、請求項110に記載の使用。
【請求項114】
Ly6−Eタンパク質を抗Ly6−E抗体と接触させる、請求項110に記載の使用。
【請求項115】
mRNAの発現を干渉することができるsiRNAを、Ly6−Eを過剰発現する癌を有する被験体に投与する、請求項110に記載の使用。
【請求項116】
前記癌が浸潤性であるか、治療が無効である、請求項110に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13−1】
【図13−2】
【図14】
【図15−1】
【図15−2】
【図15−3】
【図16−1】
【図16−2】
【図16−3】
【公表番号】特表2009−530645(P2009−530645A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501552(P2009−501552)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/007083
【国際公開番号】WO2007/109347
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/007083
【国際公開番号】WO2007/109347
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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