説明

SMCの製造方法

【課題】両離型フィルムに挟持されたSMC材料が離型フィルムの幅方向に広がるのを防止することができるSMCの製造方法を提供する。
【解決手段】一の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送って、該離型フィルム上に熱硬化性樹脂の成形材料21を供給すると共に繊維22を散布し、他の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送って、該離型フィルム上に熱硬化性樹脂の成形材料21を供給し、上記一の離型フィルム11上の成形材料21と繊維22の上に他の離型フィルム12上の成形材料21と該離型フィルムとを重ね、これらを連続して送りつつ上下一対の含浸装置43としてのネットコンベア間に通すことによってSMC材料2を両離型フィルム間に挟持するSMCの製造方法である。両離型フィルムの幅方向の両端部近傍をそれぞれ該離型フィルムの長手方向に亘って断続的に溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP等の成形に用いられるSMCの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、SMC(シートモールディングコンパウンド)は、ポリプロピレン等の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送り、離型フィルム上に熱硬化性樹脂の成形材料を供給すると共に、ガラスロービングをカットしたガラス繊維を散布し、またポリプロピレン等の他の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送って、上記離型フィルム上の成形材料とガラス繊維からなるSMC材料の上にこの離型フィルムを重ね、これらをさらに連続して送りつつ上下一対の含浸装置としてのネットコンベア間に通すことによってSMC材料を離型フィルム間に挟持し、この挟持されたサンドイッチ物を所定時間熟成させて製造される。
【特許文献1】特開平11−123718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熟成させるにあたっては、従来は特許文献1に示されるように(図6参照)、上方に開口する矩形箱状をしたコンテナからなる収納部44内にサンドイッチ物1をつづら折り状に折り重ねて収納している。
【0004】
しかしながらこの場合、下方に位置するサンドイッチ物1ほど、上に位置するサンドイッチ物1の重量が大きくかかるため、下部に位置するサンドイッチ物1の離型フィルム11、12間のSMC材料2は側方すなわち、離型フィルム11、12の幅方向の外方へと広がり、端部からはみ出して、設備に付着したり無駄が生じたりする惧れがあった。また、はみ出さない場合でも、SMC材料2の幅が所定よりも広がってしまう惧れがあった。
【0005】
また、離型フィルム11、12の端部は分離しているため、つづら折り状に折り重ねる際、離型フィルム11、12の端部が不用意に折れ易いという問題もあった。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、離型フィルムに挟持されるSMC材料が離型フィルムの幅方向に広がるのを防止することができるSMCの製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、一の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送って、該離型フィルム上に熱硬化性樹脂の成形材料21を供給すると共に繊維22を散布し、他の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送って、該離型フィルム上に熱硬化性樹脂の成形材料21を供給し、上記一の離型フィルム11上の成形材料21と繊維22の上に他の離型フィルム12上の成形材料21と該離型フィルムとを重ね、これらを連続して送りつつ上下一対の含浸装置43としてのネットコンベア間に通すことによってSMC材料2を両離型フィルム間に挟持するSMCの製造方法において、両離型フィルムの幅方向の両端部近傍をそれぞれ該離型フィルムの長手方向に亘って断続的に溶着することを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、SMC材料2を挟持した離型フィルムをつづら折り状に重ねて収納した際、下方に位置するSMC材料2に大きな重量がかかっても、SMC材料2が幅方向に広がるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、SMC材料が端部からはみ出して設備に付着したり無駄が生じたり、SMC材料がはみ出さなくてもSMC材料の幅が所定よりも広がる箇所が生じて幅が一定にならない、といったことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0011】
SMCの製造工程は、図2に示すように、ロール31に巻いた長尺のポロプロピレンフィルムなどの離型フィルム11を連続して繰り出しつつ成形材料供給装置41に送り、離型フィルムの上に成形材料21を供給する。成形材料21としてはFRPに用いられるフェノール樹脂やメラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂成形材料21を使用することができるものであり、ラインのスピードアップを考慮すれば即硬化性のものを選択するのが好ましく、樹脂の他に炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム、アエロジル等のフィラーや顔料を混合したものを用いることができる。
【0012】
成形材料供給装置41は供給する成形材料21の粘度や供給量(目付け)に応じて選択することができ、図示しないが離型フィルム11を送るバックアップロールと、バンク板と、ドクターロールとで形成される従来公知のものが好適に用いられる。
【0013】
また成形材料21を供給した後に連続して送られる離型フィルム11の上方には繊維切断散布装置42が配設してあり、ガラスロービングGを切断して得られるガラス繊維22を離型フィルム11に供給した成形材料21の上に散布するようにしてある。本実施形態では繊維としてガラス繊維22を用いるが、繊維はガラス繊維22に限定されないものである。
【0014】
このようにして成形材料21とガラス繊維22からなるSMC材料2を離型フィルム11の上に供給した後、上記離型フィルム11を巻いたロール31とは別に、ロール32に巻いた長尺のポロプロピレンフィルムなどの他の離型フィルム12を連続して繰り出して送って、上記離型フィルム12上のSMC材料2の上に重ね、さらにこれらを連続して送りつつ上下一対の含浸装置43としてのネットコンベア間に通すことによってSMC材料2を離型フィルム11、12間に挟持する。離型フィルム11、12の幅は、離型フィルム11、12の端部からSMC材料2がはみ出さないように、製造するSMC材料2の幅よりも長く形成するもので、例えばSMC材料2の幅1200mmに対し離型フィルム11、12の幅1500mmとする。
【0015】
そしてこの挟持されたサンドイッチ物1を上方に開口する矩形箱状をしたコンテナ等からなる収納部44につづら折り状に重ねて収納し、熟成庫45にて熟成させる。
【0016】
熟成庫45で熟成させた後、図3に示すように、コンテナ内のサンドイッチ物1を繰り出して送り、離型フィルム巻取り装置51にてサンドイッチ物1から表裏両側の離型フィルム11、12を剥がして該離型フィルム11、12を巻取りロールに巻取り、シート状のSMC材料2を切断装置52の切断刃にて長手方向に必要な長さのSMC断片20毎に切断し、このSMC断片20をFRPの圧縮成形装置53に供給して成形が行われる。
【0017】
そして本発明では、サンドイッチ物1を形成した際、両離型フィルム11、12の幅方向の両端部近傍をそれぞれ該離型フィルム11、12の長手方向に亘って断続的に溶着することを特徴とするもので、本実施形態では溶着装置6により溶着している。
【0018】
溶着装置6は、図4に示すように、含浸装置43の下流側に設置されるもので、上面をサンドイッチ物1が送られる台部61と、台部61の面の一部に形成された開口部62と、開口部62の上側に設置された超音波溶着機7と、開口部62の下側に設置された送り治具63と、で構成される。
【0019】
超音波溶着機7は、台部61の開口部62の上側に溶着機本体71が設置され、溶着対象の離型フィルム11、12を超音波溶着させる溶着部72が台部61の開口部62内に配置される。送り治具63は、離型フィルム11、12の送り方向に回転する側断面が円形状をした回転体であり、この回転体の表面に、溶着部72と接触する離型フィルム11、12を支持する溶着支持部65が形成される。前記回転体の表面には、周方向に所定の間隔で複数の凹部64が凹設してあり、凹部64と凹部64との間の凸部の表面を溶着支持部65とするものである。溶着支持部65(凸部)の周方向の長さは、5mm程度とする。溶着支持部65は、台部61の開口部62内の溶着部72の下側に配置される。回転体は例えばモータ等の駆動手段により駆動され、溶着支持部65の離型フィルム11、12と接触している部分が該離型フィルム11、12の送り速度と同じ速度で移動するように回転する。
【0020】
この超音波溶着機7は、開口部62及び溶着部72・溶着支持部65が離型フィルム11、12の幅方向の両方の端部近傍に位置するようにそれぞれ設けられる。一台の超音波溶着機7の二箇所に開口部62及び溶着部72・溶着支持部65を有するものであっても勿論よい。
【0021】
また、台部61の離型フィルム11、12の端部の外側部分には、SMC材料2がはみ出した場合にこれを検知するはみ出し検知センサ67が設けてあり、はみ出しを検知した場合に装置を停止し、対処することが可能である。
【0022】
溶着装置6での溶着工程について説明すると、台部61の上面をサンドイッチ物1が送られ、フィルム押さえロール66により離型フィルム11、12を台部61の上面に押さえ付ける。開口部62では、溶着部72と溶着支持部65とで両離型フィルム11、12が挟持される。溶着支持部65は送られる離型フィルム12の下面を転動し、その接触している部分の離型フィルム11上面に溶着部72が上方より接触して溶着支持部65とで挟持すると共に、超音波を発生させて挟持している部分を溶着する。回転体の表面には所定の間隔で凹部64が凹設してあるため、溶着支持部65の溶着部72と挟持する部分に凹部64が位置している時には、離型フィルム11、12の溶着が行われない。このため、離型フィルム11、12の長手方向に亘って断続的に溶着される。
【0023】
上述したように、両離型フィルム11、12の幅方向の両端部近傍を、該離型フィルム11、12の長手方向に亘って断続的に溶着することで、サンドイッチ物1をつづら折り状に重ねて収納した際、下方に位置するサンドイッチ物1に大きな重量がかかっても、SMC材料2が幅方向に広がるのを防止することができる。これにより、SMC材料2が端部からはみ出して設備に付着したり無駄が生じたり、はみ出さなくてもSMC材料2の幅が所定よりも広がる箇所が生じて幅が一定にならない、といったことを防止することができ、サンドイッチ物1の梱包時の荷姿の外観が向上し、SMC材料2を使用する際の使い勝手が向上する。また、SMC材料2の端部が幅方向に広がることによる、成形材料21と繊維22との比率の変動により、製品が不均一になるのを防止することができる。
【0024】
また、離型フィルム11、12の長手方向に亘って断続的に溶着しているため、溶着部分13の間の隙間から揮発性のスチレン等のガスが排出可能となり、揮発性のガスが充満して離型フィルム11、12が破裂するのが防止される。なお、揮発性のガスが発生しない場合には、離型フィルム11、12の長手方向に亘って連続的に溶着してもよいものである。
【0025】
また本実施形態では、離型フィルム11、12の溶着部分13の長さが各5mm程度であるため、サンドイッチ物1をつづら折り状に折り曲げた際、各溶着部分13が折れることがない。
【0026】
また、離型フィルム11、12の端部が分離しないため、つづら折り状に折り重ねる際、離型フィルム11、12の端部が不用意に折れるといったこともない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明におけるSMC材料を離型フィルムで挟持してなるサンドイッチ物の斜視図である。
【図2】SMCの製造工程を説明する概略説明図である。
【図3】サンドイッチ物から離型フィルムを剥がし成形装置に供給する場合の説明図である。
【図4】溶着装置の概略斜視図である。
【図5】サンドイッチ物をつづら折り状に折り重ねて収納した収納部の断面図である。
【図6】従来のサンドイッチ物をつづら折り状に折り重ねて収納した収納部の断面図であり、(a)はサンドイッチ物の幅方向に見た側断面図であり、(b)は(a)と直交する方向から見た側断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 サンドイッチ物
11 一の離型フィルム
12 他の離型フィルム
13 溶着部分
2 SMC材料
20 SMC断片
21 成形材料
22 繊維
31 ロール
32 ロール
41 成形材料供給装置
42 繊維切断散布装置
43 含浸装置
44 収納部
45 熟成庫
51 離型フィルム巻取り装置
52 切断装置
53 圧縮成形装置
6 溶着装置
61 台部
62 開口部
63 送り治具
64 凹部
65 溶着支持部
66 フィルム押さえロール
67 はみ出し検知センサ
7 超音波溶着機
71 溶着機本体
72 溶着部
G ガラスロービング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送って、該離型フィルム上に熱硬化性樹脂の成形材料を供給すると共に繊維を散布し、他の長尺の離型フィルムを連続して繰り出して送って、該離型フィルム上に熱硬化性樹脂の成形材料を供給し、上記一の離型フィルム上の成形材料と繊維の上に他の離型フィルム上の成形材料と該離型フィルムとを重ね、これらを連続して送りつつ上下一対の含浸装置としてのネットコンベア間に通すことによってSMC材料を両離型フィルム間に挟持するSMCの製造方法において、両離型フィルムの幅方向の両端部近傍をそれぞれ該離型フィルムの長手方向に亘って断続的に溶着することを特徴とするSMCの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−76249(P2010−76249A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246934(P2008−246934)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】