ZnO系半導体層とその製造方法、ZnO系半導体発光素子、及びZnO系半導体素子
【課題】例えば結晶性等の向上が図られたZnO系半導体層を提供する。
【解決手段】
ZnO系半導体層に、1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でMgをドープする。
【解決手段】
ZnO系半導体層に、1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でMgをドープする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnO系半導体層及びそれを用いた素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギを持つ直接遷移型の半導体で、励起子の束縛エネルギが60meVと他の半導体に比べて比較的大きい。また、原材料が安価であるとともに、環境や人体への影響が少ない。ZnOを利用した発光素子の実現が期待されている。しかし、現在まで発光効率の高いデバイスの報告はほとんどなく、素子特性の向上が目下研究課題となっている。
【0003】
例えば、発光ダイオード(LED)などの発光素子を作製する場合、素子を構成する各層の品質を高めることは、発光効率や電気特性など素子の品質を向上させることにつながる。特に、電子とホールの再結合が起こる発光層の品質は、発光効率に強く影響する。そのため、発光層の質を向上させることは発光素子をより良いものにするために重要である。発光層にSeまたはTeを混ぜることで、発光層の結晶性を向上させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体と電極との接触抵抗は、半導体側のコンタクト層のキャリア濃度に影響を受ける。コンタクト層の抵抗を下げることにより、発光素子としての特性の向上が図られる。p型コンタクト層と電極との界面にp型不純物の高濃度ドーピング領域を設けることで、ZnO系LEDの動作電圧を低くする技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−69076号公報
【特許文献2】特開2004−95634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、例えば結晶性等の向上が図られたZnO系半導体層とその製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、このようなZnO系半導体層を用いたZnO系半導体発光素子、ZnO系半導体素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、基板と、前記基板の上方に形成され、第1の導電型の第1のZnO系半導体層と、前記第1のZnO系半導体層の上に形成されたZnO系半導体発光層と、前記ZnO系半導体発光層の上に形成され、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のZnO系半導体層とを有し、前記第1のZnO系半導体層、前記ZnO系半導体発光層、及び前記第2のZnO系半導体層の少なくとも1つが、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を含むZnO系半導体発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0010】
ZnO系半導体層にMgを1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープすることにより、例えば、結晶性の向上が図られる。このようなZnO系半導体層を、例えば、ZnO系半導体発光素子の発光層に用いることにより、発光強度の増加が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、ZnO系化合物半導体結晶層を成長させる結晶製造装置の例について説明する。ここで、ZnOを含むII−VI族化合物半導体を、ZnO系化合物半導体(あるいはZnO系半導体)と呼ぶこととする。
【0012】
図1は、分子線エピタキシ(MBE)による結晶成長装置の概略図である。真空容器1内に、基板ヒータを含むステージ2が配置され、ステージ2が基板3を保持する。
【0013】
真空容器1内に、Znソースガン4、Oソースガン5、Mgソースガン6、Nソースガン7、及びGaソースガン8が備えられている。Znソースガン4、Mgソースガン6、及びGaソースガン8は、それぞれ、Zn、Mg、及びGaの固体ソースを収容するクヌーセンセルを含み、Znビーム、Mgビーム、及びGaビームを出射する。
【0014】
Oソースガン5及びNソースガン7は、それぞれ、例えば13.56MHzの高周波を用いる無電極放電管を含み、無電極放電管内で酸素ガス及び窒素ガスをラジカル化して、Oラジカルビーム及びNラジカルビームを出射する。
【0015】
なお、さらに他の元素を供給したい場合は、それに対応するソースガンを用意することができる。
【0016】
ステージ2の基板ヒータで所望の温度にされた基板3上に、所望のビームを供給することにより、所望の組成のZnO系化合物半導体結晶層を成長させることができる。ZnOにGaをドープすることによりn型導電性を付与することができ、Nをドープすることによりp型導電性を付与することができる。
【0017】
なお、真空容器1にはまた、反射高速電子回折(RHEED)用のガン9、及び、RHEED像を映すスクリーン10が取り付けられている。
【0018】
次に、MgをドープしたZnO層(ZnO:Mg層)の単層のフォトルミネセンス(PL)スペクトルを測定した第1の実験について説明する。
【0019】
図2は、第1の実験の測定サンプルの概略断面図である。測定サンプルの作製方法について説明する。測定サンプルは、MBEにより作製した。温度を900℃としたc面ZnO基板21の+c面上に、Znビーム、Oラジカルビーム、及びMgビームを同時に照射して、ZnO:Mg層22を形成した。
【0020】
Znビームの照射は、固体ソースとして純度7NのZnを用い、1.97×1015atoms/(cm2s)のフラックス量で行った。Oラジカルビームの照射は、純度6Nの純酸素ガスを2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。
【0021】
Mgビームの照射は、固体ソースとして純度6NのMgを用い、2.15×1013atoms/(cm2s)以下(フラックスモニターの検出下限以下)のフラックス量で行った。Mgビームフラックス量がフラックスモニターの検出下限以下の範囲で、Mg源のセル温度を変化させて、Mg濃度の異なる複数のサンプルを作製した。
【0022】
図3は、第1の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。Mg濃度は2次イオン質量分析(SIMS)により測定した。サンプル1が6.8×1019cm−3、サンプル2が4.6×1019cm−3、サンプル3が2.3×1018cm−3、サンプル4が4.1×1017cm−3のMg濃度であった。
【0023】
Mgをドープしたサンプルの他に、Mgをドープしないサンプルも用意した。Mgをドープしたサンプルの作製条件からMg照射を省いて、Mgをドープしないサンプルを作製した。これらのサンプルに対しPLスペクトルを測定した。波長325nmのHe−Cdレーザ光(出力2mW)をZnO層に照射し、フォトルミネセンス光を分光して得られた発光スペクトルを光電子増倍管で測定した。
【0024】
図4は、測定されたPLスペクトルである。曲線C1〜C4が、それぞれ、Mgをドープしたサンプル1〜4のスペクトルであり、曲線D1が、Mgをドープしないサンプルのスペクトルである。
【0025】
Mgをドープしないサンプル、すなわちZnO自体の発光ピーク波長は、バンド端の発光に対応する約380nmである。Mgをドープしたサンプルの発光ピーク波長も約380nmであり、発光波長のシフトは見られなかった。これより、Mgをドープしたサンプルのバンドギャップは、ZnOのそれと同等であるといえる。
【0026】
なお、3.37eVのバンドギャップエネルギは波長として367nmとなり、これと観察された発光波長380nmとはずれている。おそらく、バンドギャップエネルギから、励起子の結合エネルギとドナー性欠陥による束縛エネルギの分だけ長波長側へ発光ピークがシフトしているからだと思われる。なお、これは考えられる1つの説明である。
【0027】
驚くべきことに、Mgをドープすることにより発光強度が増し、Mg濃度が高くなるほど発光強度が強くなることがわかった。サンプル4(Mg濃度4.1×1017cm−3)の測定結果から、Mg濃度が1×1017cm−3程度以上であれば、発光強度増加が期待される。
【0028】
一方、Mg濃度が高くなりすぎれば、ZnOの結晶性を低下させて、バンド端の発光強度を低下させるであろう。サンプル1(Mg濃度6.8×1019cm−3)の濃度までずっと、発光強度の増加傾向が続いているので、サンプル1のMg濃度の数倍程度、例えば3倍の2×1020cm−3程度以下では、発光強度増加が期待されよう。少なくとも、Mg濃度が1×1020cm−3程度以下では、発光強度が増加すると考えられる。また、発光強度の増加は、ZnOの結晶性向上を示していると考えられる。
【0029】
なお、後述の発光素子において形成するMgZnO層は、キャリアを閉じ込めるため、
バンドギャップをZnOよりも広げる程度の高い濃度のMgを含む。ZnO:Mg層は、バンドギャップがZnOと同等に保たれる程度の、1%未満の低いMg濃度である。
【0030】
次に、ZnO:Mg層を発光層としたダブルへテロ構造のZnO系発光ダイオード(LED)のエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを測定した第2の実験について説明する。
【0031】
図5は、第2の実験の測定サンプルの概略断面図である。測定サンプルの作製方法について説明する。測定サンプルは、MBEにより作製した。
【0032】
まず、c面ZnO基板31の+c面上に、n型ZnOバッファ層32を形成した。n型ZnOバッファ層32は、基板温度を350℃とし、Znビーム、及びOラジカルビームを同時照射することにより、厚さ30nm成長させた。なお、n型ZnOバッファ層32の成長温度は300℃〜500℃の範囲、厚さは10nm〜50nmの範囲とすることが好ましい。
【0033】
次に、n型ZnOバッファ層32の結晶性を向上させるために、800℃で20分のアニールを行った。なお、アニール温度は500℃〜1000℃の範囲、アニール時間は3分〜20分の範囲とすることが好ましい。
【0034】
なお、後述のように、ZnOはアンドープでもn型になりやすく、この実験のc面ZnO基板31及びZnOバッファ層32は、不純物をドープしなくともn型の導電型を示す。
【0035】
次に、n型ZnOバッファ層32の上に、Gaをドープしたn型ZnO層33を形成した。n型ZnO層33は、基板温度を950℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、及びGaビームを同時照射することにより、厚さ200nm成長させた。なお、n型ZnO層33の成長温度は500℃〜1000℃の範囲、厚さは100nm〜1000nmの範囲とすることが好ましく、また、Ga濃度は1×1016cm−3以上であることが好ましい。
【0036】
次に、n型ZnO層33の上に、Gaをドープしたn型MgZnO層34を形成した。n型MgZnO層34は、基板温度を950℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びGaビームを同時照射することにより、厚さ50nm成長させた。なお、n型MgZnO層34の成長温度は500℃〜1000℃の範囲、厚さは5nm〜200nmの範囲とすることが好ましく、また、Ga濃度は1×1016cm−3以上であることが好ましい。
【0037】
次に、n型MgZnO層34の上に、ZnO:Mg発光層35を形成したZnO:Mg発光層35は、基板温度を950℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、及びMgビームを同時照射することにより、厚さ10nm成長させた。なお、発光層35の成長温度は500℃〜1000℃の範囲、厚さは0.6nm〜200nmの範囲とすることが好ましい。
【0038】
次に、ZnO:Mg発光層35の上に、Nをドープしたp型MgZnO層36を形成した。p型MgZnO層36は、基板温度を800℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームを同時照射することにより、厚さ50nm成長させた。なお、p型MgZnO層36の成長温度は300℃〜1000℃の範囲、厚さは5nm〜200nmの範囲とすることが好ましく、また、N濃度は1×1018cm−3以上であることが好ましい。
【0039】
続いて、n型ZnO基板31の裏面上に、n側電極41を形成した。n側電極41は、例えば、厚さ2nm〜10nmのTi層上に、厚さ300nm〜500nmのAl層を積層して形成される。
【0040】
また、p型MgZnO層36の上に、p側電極42を作製し、p側電極42の上に、ボンディング電極43を形成した。p側電極42は、例えば、厚さ0.5nm〜5nmのNi層上に、厚さ0.1nm〜20nmのAu層を積層して形成される。ボンディング電極43は、例えば、厚さ100nmのNi層上に、厚さ500nmのAu層を積層して形成される。その後、例えば300℃〜800℃の酸化性ガス雰囲気中で、電極合金化処理を行う。処理時間は、例えば30秒〜10分である。電極合金化処理により、p側電極42とp型MgZnO層36とが密着し、かつ、p側電極42が透明化する。
【0041】
このようにして、ZnO:Mg層を発光層としたダブルへテロ構造のZnO系LEDを作製した。ZnO:Mg発光層35の成膜時のMg源のセル温度を変化させて、発光層のMg濃度の異なる複数のサンプルを作製した。
【0042】
図6は、第2の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。Mg濃度はSIMSにより測定した。サンプル5が3.8×1019cm−3、サンプル6が1.2×1018cm−3のMg濃度であった。
【0043】
発光層にMgをドープしたサンプルの他に、発光層にMgをドープしないサンプルも用意した。Mgをドープしたサンプルの発光層の作製条件からMg照射を省いて、Mgをドープしないサンプルを作製した。これらのサンプルに対しELスペクトルを測定した。各サンプルに20mAの電流を流し、エレクトロルミネセンス光を分光しCCDカメラで測定した。
【0044】
図7は、測定されたELスペクトルである。曲線C5、C6が、それぞれ、発光層にMgをドープしたサンプル5、6のスペクトルであり、曲線D2が、発光層にMgをドープしないサンプルのスペクトルである。
【0045】
PLスペクトル(図4参照)の場合と同様に、バンド端の発光波長は、発光層にMgがドーピングされたサンプル、ドーピングされていないサンプルとも約380nmで同等であり、Mg濃度が高いほど発光強度が増加している。
【0046】
また、どのサンプルについても、バンド端の発光波長より長波長側(例えば500nm以長)に、ブロードで低い強度のピークも見られる。これは、ディープレベルからの発光と考えられる。ディープレベルからの発光は、Mgがドーピングされていないサンプルで最も強く、Mg濃度が高いほど弱くなることがわかった。
【0047】
図8は、バンド端の発光強度と、ディープレベルからの発光強度を、Mg濃度に対してプロットしたグラフである。ここで、発光強度は、各ピークの積分強度である。Mg濃度を増大すると、バンド端発光強度は増加し、ディープレベル発光強度は減少することが示されている。
【0048】
Mgドーピングにより、ZnOの結晶性が向上して、ディープレベルからの発光が減少するとともに、バンド端からの発光強度が増大したものと推測される。なお、ZnOのELスペクトルに見られるディープレベルからの発光は、ZnO中のO欠損が一因であると言われている。第2の実験の結果は、Mgをドープすることにより、ZnO中のO欠損を減少できる可能性を示唆しているとも考えられる。
【0049】
次に、ZnO系LEDの電流−電圧特性を測定した第3の実験について説明する。
【0050】
図9は、第3の実験の測定サンプルの概略断面図である。第3の実験の測定サンプルは、第2の実験で測定サンプルとしたZnO系LEDにおいて、p型MgZnO層36とp側電極42との間に、p型ZnO:Mgコンタクト層51を挿入した積層構造である。
【0051】
p型ZnO:Mgコンタクト層51の形成方法について説明する。p型ZnO:Mgコンタクト層51は、基板温度を800℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームを同時照射することにより、厚さ7nm成長させた。測定サンプルのp型ZnO:Mgコンタクト層51のMg濃度は7.2×1019cm−3であった。なお、p型ZnO:Mgコンタクト層51の成長温度は300℃〜1000℃の範囲、厚さは1nm〜100nmの範囲とすることが好ましく、また、N濃度は1×1018cm−3以上であることが好ましい。
【0052】
p型ZnOコンタクト層にMgをドープしたサンプルの他に、p型ZnOコンタクト層にMgをドープしないサンプルも用意した。Mgをドープしたサンプルのp型ZnOコンタクト層の作製条件からMg照射を省いて、Mgをドープしないサンプルを作製した。これらのサンプルに対し電流−電圧特性を測定した。
【0053】
図10A及び図10Bは、それぞれ、Mgをドープしないサンプル及びMgをドープしたサンプルの電流−電圧特性を示すグラフである。横軸は電圧を示し、スケールは1目盛り当たり2Vであり、縦軸は電流を示し、スケールは1目盛り当たり2mAである。サンプルの面積は、300μm×300μmである。
【0054】
Mgをドープしたサンプルでは、Mgをドープしないサンプルに比べて、順バイアス側の電流−電圧特性の立ち上がりが急峻になっている。すなわち、p型ZnOコンタクト層にMgをドープすることにより、発光素子の動作電圧を下げられることがわかった。この一因として、Mgドーピングにより結晶性が向上し、p型ZnOコンタクト層とp側透明電極との接触抵抗が下がったことが考えられる。
【0055】
第3の実験では、p型ZnO系半導体層にMgドーピングを行ったが、n型ZnO系半導体層にMgドーピングを行った場合でも、結晶性を向上させる効果が期待される。
【0056】
なお、ZnOは、導電型決定不純物がアンドープであっても残留電子濃度が高くなりやすく、例えば結晶品質の低い膜だと2×1020cm−3程度であり、n型になりやすい。残留電子濃度を高くする一因がO欠損と考えられている。上述のように、MgドーピングによりO欠損を減少できるならば、アンドープのZnOの残留電子濃度が減少する可能性がある。その結果、p型及びn型の導電性の制御が、導電型決定不純物濃度により良好に行える可能性がある。特に、p型層のキャリア濃度増加が期待される。
【0057】
第3の実験において、p型ZnOコンタクト層のキャリア濃度が増加して、p側電極との接触抵抗が下がった可能性がある。
【0058】
第2の実験では、ZnO系LEDの発光層にMgをドープすることにより、バンド端からの発光強度の増加が得られた。また、第3の実験では、ZnO系LEDのコンタクト層にMgをドープすることにより、電気抵抗低下が図られた。
【0059】
Mgのドーピングはこれらの層に限らず、必要に応じて他のZnO層に行うこともできる。Mgをドープする層は、1層とすることも複数層とすることもできる。発光層以外のZnO層へのMgドーピングにより、例えば、欠陥準位による光吸収の抑制が期待され、素子外へ放射される光量の増加が期待される。
【0060】
なお、ZnO系LEDの構造は、第2の実験または第3の実験のものに限らない。発光層は、井戸層と障壁層の積層を含む構造とすることもできる。
【0061】
図11A及び図11Bに、このような発光層の概略断面図を示す。図11Aに示す発光層35Aは、ZnO:Mg層で形成された井戸層35wの上に、MgZnO層で形成された障壁層35bが積層された構造である。図11Bに示す発光層35Bは、このような井戸層35wと障壁層35bの積層が3層重ねられた多重量子井戸(MQW)構造である。
【0062】
井戸層と障壁層の積層を含む構造の発光層とするとき、発光強度向上のため、少なくとも井戸層にMgがドープされていることが好ましい。なお、(Mg以外でバンドギャップを広げた)障壁層にMgをドープしてもよい
このように、発光層は、第2または第3の実験のように単層(ダブルへテロ構造)とすることも、井戸層と障壁層の積層を含む構造とすることもできる。発光層の成長温度は、結晶性を高めるために500℃以上とし、Znの再蒸発を防ぐために1000℃以下の範囲とすることが好ましい。
【0063】
単層の発光層の厚さは、ZnOの格子定数(c軸長)が0.52nmであるのでZnO膜として均一に成膜するために0.6nm以上とし、発光層による電気抵抗を抑えるため200nm以下とすることが好ましい。井戸層と障壁層を積層した量子井戸構造の場合は、量子閉じ込め効果のある10nm程度以下がよいであろう。なお、発光層に、導電性制御のためn型またはp型の不純物を添加してもよく、電気抵抗が下げられる場合にはさらに発光層の厚さを厚くすることができる。
【0064】
図12は、第3の実験のLED構造の変形例を示す概略断面図である。第3の実験と同様にして、ZnO基板61上に、n型ZnOバッファ層32からp型ZnOコンタクト層51までを形成する。p型ZnOコンタクト層51までが形成されたウエハを結晶製造装置から取り出した後、p型ZnOコンタクト層51上に、レジスト膜または保護膜等を設けてパターニングし、n側電極が形成される領域に対応する切り欠き窓を有するエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクを用いて、例えばウエットエッチングやリアクティブイオンエッチングにより、p型ZnOコンタクト層51、p型MgZnO層36、発光層35、及びn型MgZnO層34をエッチングして、n型ZnO層33を露出させる。
【0065】
次に、露出したn型ZnO層33の表面に、例えば、厚さ10nm〜100nmのTi層を形成し、このTi層に厚さ100nm〜1000nmのAu層を積層することにより、n側電極41Aを形成する。n側電極41Aの形成後、エッチングマスクを除去する。
【0066】
次に、p型ZnOコンタクト層51の上にp側電極42を作製し、p側電極42の上にボンディング電極43を形成する。p側電極42は、例えば、厚さ0.5nm〜5nmのNi層上に、厚さ0.1nm〜20nmのAu層を積層して形成される。ボンディング電極43は、例えば、厚さ100nmのNi層上に、厚さ1000nmのAu層を積層して形成される。なお、p側の電極材料がn側電極41A上に積層されないように、適宜マスクを用いて、p側電極42及びボンディング電極43を形成する。その後、例えば300℃〜800℃の酸化性ガス雰囲気中で電極合金化処理を行う。処理時間は、例えば30秒〜10分である。この変形例のLED構造は、絶縁性の基板であっても用いることができる。
【0067】
なお、第3の実験のLED構造(図9参照)や、変形例のLED構造(図12)から、n型MgZnO層34を省いた構造や、n型MgZnO層34及びp型MgZnO層36を省いた構造とすることもできる。
【0068】
なお、第3の実験のLED構造(図9参照)等で、n型ZnO層33及びn型MgZnO層34をまとめて1つのn型ZnO系半導体層と捉えることもでき、p型MgZnO層36及びp型ZnO:Mgコンタクト層51をまとめて1つのp型ZnO系半導体層と捉えることもできる。
【0069】
LED等の発光素子を作製するとき、電子キャリア密度及びホールキャリア密度は、1×1016cm−3以上は必要であるとされる。
【0070】
n型不純物であるGaをドープしたZnO層、MgZnO層において、Ga濃度は、有効な電子キャリアを得るために1×1016cm−3以上とし、3次元成長を抑えるために7×1019cm−3以下とすることが好ましい。なお、Gaの他にn型不純物として、Al、In等のIII族元素、F、Cl、Br等のVII族元素を用いることもでき、さらに、GaとAl等の2元素以上をドープすることも可能である。上記濃度範囲は、n型不純物としてAl、In等のIII族元素を用いる場合にも概ね有効である。なお、Ga等をドープしなくても十分な残留電子濃度があるならば、アンドープのZnO層やMgZnO層をn型層として用いることも可能である。
【0071】
なお、p型不純物であるNをドープしたZnO層、MgZnO層において、N濃度は、有効なホールキャリアを得るために1×1018cm−3以上とし、膜中の転移や欠陥を抑えるために5×1020cm−3以下とすることが好ましい。より好ましくは、1×1019cm−3〜3×1020cm−3の範囲である。なお、Nの他にp型不純物として、As、P等のV族元素、Li、Na、K等のI族元素を用いることもでき、さらに、NとP等の2元素以上をドープすることも可能である。
【0072】
NはZnOのOサイトの一部を置換してアクセプタとなるが、種々のV族元素の中で、NがOとのイオン半径が近しく、安定的に置換がなされる、Nのドーピングには、N2、N2O、NO、N2+O2、NH3のようなガスソース等、Nを含む種々のソースを用いることができる。
【0073】
なお、上記の実施例ではc面ZnO基板を用い、+c面上に結晶成長させる例を説明したが、−c面上に結晶成長させてもよい。また、a面やm面のZnO基板を用いてもよい。また、ZnO系半導体素子を形成する基板として、ZnO基板に限らず、サファイア(Al2O3)基板、炭化珪素(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、MgZnO基板等を用いることも可能である。
【0074】
結晶性の良いZnO系半導体層を得るためには、格子不整合の小さい基板ほどよいので、ZnO基板が好ましい。発光素子を作製する場合は、発光層からの放射光の基板による吸収を抑えるため、ZnOに比べてバンドギャップを大きくしたMgZnO基板を用いることも好ましい。
【0075】
なお、上記の実施例ではMBEによる結晶成長の例を説明したが、例えば有機金属気相エピタキシ(MOVPE)等の気相エピタキシャル成長法を用いることも可能であろう。
【0076】
なお、上記の実施例ではZnOにMgをドープしたが、ZnO系半導体にMgをドープして、例えば結晶性の向上を図ることができよう。例えば、CdaZn1−aO、BeaZn1−aO、CaaZn1−aO(ともに0<a<1)や、ZnO1−bSb、ZnO1−bSeb、ZnO1−bTeb(ともに0<b<1)などのZnO系の多元系混晶への適用が期待される。
【0077】
なお、ZnO系半導体へのMgドーピングは、発光素子への適用に限らず、ZnO系材料を用いた他の半導体素子等への適用も考えられる。なお、ZnO系材料は、LEDやレーザダイオードといった発光素子の他、電極(透明導電膜)、トランジスタ等の電子デバイス、センサ(湿度センサ、紫外センサ)等への応用も可能である。
【0078】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、MBEによる結晶成長装置の概略図である。
【図2】図2は、第1の実験の測定サンプルの概略断面図である。
【図3】図3は、第1の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。
【図4】図4は、第1の実験で測定されたPLスペクトルである。
【図5】図5は、第2の実験の測定サンプルの概略断面図である。
【図6】図6は、第2の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。
【図7】図7は、第2の実験で測定されたELスペクトルである。
【図8】図8は、第2の実験で得られたELスペクトルについて、バンド端の発光強度と、ディープレベルからの発光強度を、Mg濃度に対してプロットしたグラフである。
【図9】図9は、第3の実験の測定サンプルの概略断面図である。
【図10】図10A及び図10Bは、第3の実験の、Mgをドープしないサンプル及びMgをドープしたサンプルの電流−電圧特性を示すグラフである。
【図11】図11A及び図11Bは、変形例の発光層を示す概略断面図である。
【図12】図12は、変形例のLED構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0080】
31 ZnO基板
32 ZnOバッファ層
33 n型ZnO層
34 n型MgZnO層
35 発光層
36 p型ZnO層
41 n側電極
42 p側電極
43 ボンディング電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZnO系半導体層及びそれを用いた素子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛(ZnO)は、室温で3.37eVのバンドギャップエネルギを持つ直接遷移型の半導体で、励起子の束縛エネルギが60meVと他の半導体に比べて比較的大きい。また、原材料が安価であるとともに、環境や人体への影響が少ない。ZnOを利用した発光素子の実現が期待されている。しかし、現在まで発光効率の高いデバイスの報告はほとんどなく、素子特性の向上が目下研究課題となっている。
【0003】
例えば、発光ダイオード(LED)などの発光素子を作製する場合、素子を構成する各層の品質を高めることは、発光効率や電気特性など素子の品質を向上させることにつながる。特に、電子とホールの再結合が起こる発光層の品質は、発光効率に強く影響する。そのため、発光層の質を向上させることは発光素子をより良いものにするために重要である。発光層にSeまたはTeを混ぜることで、発光層の結晶性を向上させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体と電極との接触抵抗は、半導体側のコンタクト層のキャリア濃度に影響を受ける。コンタクト層の抵抗を下げることにより、発光素子としての特性の向上が図られる。p型コンタクト層と電極との界面にp型不純物の高濃度ドーピング領域を設けることで、ZnO系LEDの動作電圧を低くする技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−69076号公報
【特許文献2】特開2004−95634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、例えば結晶性等の向上が図られたZnO系半導体層とその製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、このようなZnO系半導体層を用いたZnO系半導体発光素子、ZnO系半導体素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、基板と、前記基板の上方に形成され、第1の導電型の第1のZnO系半導体層と、前記第1のZnO系半導体層の上に形成されたZnO系半導体発光層と、前記ZnO系半導体発光層の上に形成され、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のZnO系半導体層とを有し、前記第1のZnO系半導体層、前記ZnO系半導体発光層、及び前記第2のZnO系半導体層の少なくとも1つが、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を含むZnO系半導体発光素子が提供される。
【発明の効果】
【0010】
ZnO系半導体層にMgを1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープすることにより、例えば、結晶性の向上が図られる。このようなZnO系半導体層を、例えば、ZnO系半導体発光素子の発光層に用いることにより、発光強度の増加が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、ZnO系化合物半導体結晶層を成長させる結晶製造装置の例について説明する。ここで、ZnOを含むII−VI族化合物半導体を、ZnO系化合物半導体(あるいはZnO系半導体)と呼ぶこととする。
【0012】
図1は、分子線エピタキシ(MBE)による結晶成長装置の概略図である。真空容器1内に、基板ヒータを含むステージ2が配置され、ステージ2が基板3を保持する。
【0013】
真空容器1内に、Znソースガン4、Oソースガン5、Mgソースガン6、Nソースガン7、及びGaソースガン8が備えられている。Znソースガン4、Mgソースガン6、及びGaソースガン8は、それぞれ、Zn、Mg、及びGaの固体ソースを収容するクヌーセンセルを含み、Znビーム、Mgビーム、及びGaビームを出射する。
【0014】
Oソースガン5及びNソースガン7は、それぞれ、例えば13.56MHzの高周波を用いる無電極放電管を含み、無電極放電管内で酸素ガス及び窒素ガスをラジカル化して、Oラジカルビーム及びNラジカルビームを出射する。
【0015】
なお、さらに他の元素を供給したい場合は、それに対応するソースガンを用意することができる。
【0016】
ステージ2の基板ヒータで所望の温度にされた基板3上に、所望のビームを供給することにより、所望の組成のZnO系化合物半導体結晶層を成長させることができる。ZnOにGaをドープすることによりn型導電性を付与することができ、Nをドープすることによりp型導電性を付与することができる。
【0017】
なお、真空容器1にはまた、反射高速電子回折(RHEED)用のガン9、及び、RHEED像を映すスクリーン10が取り付けられている。
【0018】
次に、MgをドープしたZnO層(ZnO:Mg層)の単層のフォトルミネセンス(PL)スペクトルを測定した第1の実験について説明する。
【0019】
図2は、第1の実験の測定サンプルの概略断面図である。測定サンプルの作製方法について説明する。測定サンプルは、MBEにより作製した。温度を900℃としたc面ZnO基板21の+c面上に、Znビーム、Oラジカルビーム、及びMgビームを同時に照射して、ZnO:Mg層22を形成した。
【0020】
Znビームの照射は、固体ソースとして純度7NのZnを用い、1.97×1015atoms/(cm2s)のフラックス量で行った。Oラジカルビームの照射は、純度6Nの純酸素ガスを2sccmで導入し、RFパワー300Wでプラズマ化して行った。
【0021】
Mgビームの照射は、固体ソースとして純度6NのMgを用い、2.15×1013atoms/(cm2s)以下(フラックスモニターの検出下限以下)のフラックス量で行った。Mgビームフラックス量がフラックスモニターの検出下限以下の範囲で、Mg源のセル温度を変化させて、Mg濃度の異なる複数のサンプルを作製した。
【0022】
図3は、第1の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。Mg濃度は2次イオン質量分析(SIMS)により測定した。サンプル1が6.8×1019cm−3、サンプル2が4.6×1019cm−3、サンプル3が2.3×1018cm−3、サンプル4が4.1×1017cm−3のMg濃度であった。
【0023】
Mgをドープしたサンプルの他に、Mgをドープしないサンプルも用意した。Mgをドープしたサンプルの作製条件からMg照射を省いて、Mgをドープしないサンプルを作製した。これらのサンプルに対しPLスペクトルを測定した。波長325nmのHe−Cdレーザ光(出力2mW)をZnO層に照射し、フォトルミネセンス光を分光して得られた発光スペクトルを光電子増倍管で測定した。
【0024】
図4は、測定されたPLスペクトルである。曲線C1〜C4が、それぞれ、Mgをドープしたサンプル1〜4のスペクトルであり、曲線D1が、Mgをドープしないサンプルのスペクトルである。
【0025】
Mgをドープしないサンプル、すなわちZnO自体の発光ピーク波長は、バンド端の発光に対応する約380nmである。Mgをドープしたサンプルの発光ピーク波長も約380nmであり、発光波長のシフトは見られなかった。これより、Mgをドープしたサンプルのバンドギャップは、ZnOのそれと同等であるといえる。
【0026】
なお、3.37eVのバンドギャップエネルギは波長として367nmとなり、これと観察された発光波長380nmとはずれている。おそらく、バンドギャップエネルギから、励起子の結合エネルギとドナー性欠陥による束縛エネルギの分だけ長波長側へ発光ピークがシフトしているからだと思われる。なお、これは考えられる1つの説明である。
【0027】
驚くべきことに、Mgをドープすることにより発光強度が増し、Mg濃度が高くなるほど発光強度が強くなることがわかった。サンプル4(Mg濃度4.1×1017cm−3)の測定結果から、Mg濃度が1×1017cm−3程度以上であれば、発光強度増加が期待される。
【0028】
一方、Mg濃度が高くなりすぎれば、ZnOの結晶性を低下させて、バンド端の発光強度を低下させるであろう。サンプル1(Mg濃度6.8×1019cm−3)の濃度までずっと、発光強度の増加傾向が続いているので、サンプル1のMg濃度の数倍程度、例えば3倍の2×1020cm−3程度以下では、発光強度増加が期待されよう。少なくとも、Mg濃度が1×1020cm−3程度以下では、発光強度が増加すると考えられる。また、発光強度の増加は、ZnOの結晶性向上を示していると考えられる。
【0029】
なお、後述の発光素子において形成するMgZnO層は、キャリアを閉じ込めるため、
バンドギャップをZnOよりも広げる程度の高い濃度のMgを含む。ZnO:Mg層は、バンドギャップがZnOと同等に保たれる程度の、1%未満の低いMg濃度である。
【0030】
次に、ZnO:Mg層を発光層としたダブルへテロ構造のZnO系発光ダイオード(LED)のエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを測定した第2の実験について説明する。
【0031】
図5は、第2の実験の測定サンプルの概略断面図である。測定サンプルの作製方法について説明する。測定サンプルは、MBEにより作製した。
【0032】
まず、c面ZnO基板31の+c面上に、n型ZnOバッファ層32を形成した。n型ZnOバッファ層32は、基板温度を350℃とし、Znビーム、及びOラジカルビームを同時照射することにより、厚さ30nm成長させた。なお、n型ZnOバッファ層32の成長温度は300℃〜500℃の範囲、厚さは10nm〜50nmの範囲とすることが好ましい。
【0033】
次に、n型ZnOバッファ層32の結晶性を向上させるために、800℃で20分のアニールを行った。なお、アニール温度は500℃〜1000℃の範囲、アニール時間は3分〜20分の範囲とすることが好ましい。
【0034】
なお、後述のように、ZnOはアンドープでもn型になりやすく、この実験のc面ZnO基板31及びZnOバッファ層32は、不純物をドープしなくともn型の導電型を示す。
【0035】
次に、n型ZnOバッファ層32の上に、Gaをドープしたn型ZnO層33を形成した。n型ZnO層33は、基板温度を950℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、及びGaビームを同時照射することにより、厚さ200nm成長させた。なお、n型ZnO層33の成長温度は500℃〜1000℃の範囲、厚さは100nm〜1000nmの範囲とすることが好ましく、また、Ga濃度は1×1016cm−3以上であることが好ましい。
【0036】
次に、n型ZnO層33の上に、Gaをドープしたn型MgZnO層34を形成した。n型MgZnO層34は、基板温度を950℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びGaビームを同時照射することにより、厚さ50nm成長させた。なお、n型MgZnO層34の成長温度は500℃〜1000℃の範囲、厚さは5nm〜200nmの範囲とすることが好ましく、また、Ga濃度は1×1016cm−3以上であることが好ましい。
【0037】
次に、n型MgZnO層34の上に、ZnO:Mg発光層35を形成したZnO:Mg発光層35は、基板温度を950℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、及びMgビームを同時照射することにより、厚さ10nm成長させた。なお、発光層35の成長温度は500℃〜1000℃の範囲、厚さは0.6nm〜200nmの範囲とすることが好ましい。
【0038】
次に、ZnO:Mg発光層35の上に、Nをドープしたp型MgZnO層36を形成した。p型MgZnO層36は、基板温度を800℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームを同時照射することにより、厚さ50nm成長させた。なお、p型MgZnO層36の成長温度は300℃〜1000℃の範囲、厚さは5nm〜200nmの範囲とすることが好ましく、また、N濃度は1×1018cm−3以上であることが好ましい。
【0039】
続いて、n型ZnO基板31の裏面上に、n側電極41を形成した。n側電極41は、例えば、厚さ2nm〜10nmのTi層上に、厚さ300nm〜500nmのAl層を積層して形成される。
【0040】
また、p型MgZnO層36の上に、p側電極42を作製し、p側電極42の上に、ボンディング電極43を形成した。p側電極42は、例えば、厚さ0.5nm〜5nmのNi層上に、厚さ0.1nm〜20nmのAu層を積層して形成される。ボンディング電極43は、例えば、厚さ100nmのNi層上に、厚さ500nmのAu層を積層して形成される。その後、例えば300℃〜800℃の酸化性ガス雰囲気中で、電極合金化処理を行う。処理時間は、例えば30秒〜10分である。電極合金化処理により、p側電極42とp型MgZnO層36とが密着し、かつ、p側電極42が透明化する。
【0041】
このようにして、ZnO:Mg層を発光層としたダブルへテロ構造のZnO系LEDを作製した。ZnO:Mg発光層35の成膜時のMg源のセル温度を変化させて、発光層のMg濃度の異なる複数のサンプルを作製した。
【0042】
図6は、第2の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。Mg濃度はSIMSにより測定した。サンプル5が3.8×1019cm−3、サンプル6が1.2×1018cm−3のMg濃度であった。
【0043】
発光層にMgをドープしたサンプルの他に、発光層にMgをドープしないサンプルも用意した。Mgをドープしたサンプルの発光層の作製条件からMg照射を省いて、Mgをドープしないサンプルを作製した。これらのサンプルに対しELスペクトルを測定した。各サンプルに20mAの電流を流し、エレクトロルミネセンス光を分光しCCDカメラで測定した。
【0044】
図7は、測定されたELスペクトルである。曲線C5、C6が、それぞれ、発光層にMgをドープしたサンプル5、6のスペクトルであり、曲線D2が、発光層にMgをドープしないサンプルのスペクトルである。
【0045】
PLスペクトル(図4参照)の場合と同様に、バンド端の発光波長は、発光層にMgがドーピングされたサンプル、ドーピングされていないサンプルとも約380nmで同等であり、Mg濃度が高いほど発光強度が増加している。
【0046】
また、どのサンプルについても、バンド端の発光波長より長波長側(例えば500nm以長)に、ブロードで低い強度のピークも見られる。これは、ディープレベルからの発光と考えられる。ディープレベルからの発光は、Mgがドーピングされていないサンプルで最も強く、Mg濃度が高いほど弱くなることがわかった。
【0047】
図8は、バンド端の発光強度と、ディープレベルからの発光強度を、Mg濃度に対してプロットしたグラフである。ここで、発光強度は、各ピークの積分強度である。Mg濃度を増大すると、バンド端発光強度は増加し、ディープレベル発光強度は減少することが示されている。
【0048】
Mgドーピングにより、ZnOの結晶性が向上して、ディープレベルからの発光が減少するとともに、バンド端からの発光強度が増大したものと推測される。なお、ZnOのELスペクトルに見られるディープレベルからの発光は、ZnO中のO欠損が一因であると言われている。第2の実験の結果は、Mgをドープすることにより、ZnO中のO欠損を減少できる可能性を示唆しているとも考えられる。
【0049】
次に、ZnO系LEDの電流−電圧特性を測定した第3の実験について説明する。
【0050】
図9は、第3の実験の測定サンプルの概略断面図である。第3の実験の測定サンプルは、第2の実験で測定サンプルとしたZnO系LEDにおいて、p型MgZnO層36とp側電極42との間に、p型ZnO:Mgコンタクト層51を挿入した積層構造である。
【0051】
p型ZnO:Mgコンタクト層51の形成方法について説明する。p型ZnO:Mgコンタクト層51は、基板温度を800℃とし、Znビーム、Oラジカルビーム、Mgビーム、及びNラジカルビームを同時照射することにより、厚さ7nm成長させた。測定サンプルのp型ZnO:Mgコンタクト層51のMg濃度は7.2×1019cm−3であった。なお、p型ZnO:Mgコンタクト層51の成長温度は300℃〜1000℃の範囲、厚さは1nm〜100nmの範囲とすることが好ましく、また、N濃度は1×1018cm−3以上であることが好ましい。
【0052】
p型ZnOコンタクト層にMgをドープしたサンプルの他に、p型ZnOコンタクト層にMgをドープしないサンプルも用意した。Mgをドープしたサンプルのp型ZnOコンタクト層の作製条件からMg照射を省いて、Mgをドープしないサンプルを作製した。これらのサンプルに対し電流−電圧特性を測定した。
【0053】
図10A及び図10Bは、それぞれ、Mgをドープしないサンプル及びMgをドープしたサンプルの電流−電圧特性を示すグラフである。横軸は電圧を示し、スケールは1目盛り当たり2Vであり、縦軸は電流を示し、スケールは1目盛り当たり2mAである。サンプルの面積は、300μm×300μmである。
【0054】
Mgをドープしたサンプルでは、Mgをドープしないサンプルに比べて、順バイアス側の電流−電圧特性の立ち上がりが急峻になっている。すなわち、p型ZnOコンタクト層にMgをドープすることにより、発光素子の動作電圧を下げられることがわかった。この一因として、Mgドーピングにより結晶性が向上し、p型ZnOコンタクト層とp側透明電極との接触抵抗が下がったことが考えられる。
【0055】
第3の実験では、p型ZnO系半導体層にMgドーピングを行ったが、n型ZnO系半導体層にMgドーピングを行った場合でも、結晶性を向上させる効果が期待される。
【0056】
なお、ZnOは、導電型決定不純物がアンドープであっても残留電子濃度が高くなりやすく、例えば結晶品質の低い膜だと2×1020cm−3程度であり、n型になりやすい。残留電子濃度を高くする一因がO欠損と考えられている。上述のように、MgドーピングによりO欠損を減少できるならば、アンドープのZnOの残留電子濃度が減少する可能性がある。その結果、p型及びn型の導電性の制御が、導電型決定不純物濃度により良好に行える可能性がある。特に、p型層のキャリア濃度増加が期待される。
【0057】
第3の実験において、p型ZnOコンタクト層のキャリア濃度が増加して、p側電極との接触抵抗が下がった可能性がある。
【0058】
第2の実験では、ZnO系LEDの発光層にMgをドープすることにより、バンド端からの発光強度の増加が得られた。また、第3の実験では、ZnO系LEDのコンタクト層にMgをドープすることにより、電気抵抗低下が図られた。
【0059】
Mgのドーピングはこれらの層に限らず、必要に応じて他のZnO層に行うこともできる。Mgをドープする層は、1層とすることも複数層とすることもできる。発光層以外のZnO層へのMgドーピングにより、例えば、欠陥準位による光吸収の抑制が期待され、素子外へ放射される光量の増加が期待される。
【0060】
なお、ZnO系LEDの構造は、第2の実験または第3の実験のものに限らない。発光層は、井戸層と障壁層の積層を含む構造とすることもできる。
【0061】
図11A及び図11Bに、このような発光層の概略断面図を示す。図11Aに示す発光層35Aは、ZnO:Mg層で形成された井戸層35wの上に、MgZnO層で形成された障壁層35bが積層された構造である。図11Bに示す発光層35Bは、このような井戸層35wと障壁層35bの積層が3層重ねられた多重量子井戸(MQW)構造である。
【0062】
井戸層と障壁層の積層を含む構造の発光層とするとき、発光強度向上のため、少なくとも井戸層にMgがドープされていることが好ましい。なお、(Mg以外でバンドギャップを広げた)障壁層にMgをドープしてもよい
このように、発光層は、第2または第3の実験のように単層(ダブルへテロ構造)とすることも、井戸層と障壁層の積層を含む構造とすることもできる。発光層の成長温度は、結晶性を高めるために500℃以上とし、Znの再蒸発を防ぐために1000℃以下の範囲とすることが好ましい。
【0063】
単層の発光層の厚さは、ZnOの格子定数(c軸長)が0.52nmであるのでZnO膜として均一に成膜するために0.6nm以上とし、発光層による電気抵抗を抑えるため200nm以下とすることが好ましい。井戸層と障壁層を積層した量子井戸構造の場合は、量子閉じ込め効果のある10nm程度以下がよいであろう。なお、発光層に、導電性制御のためn型またはp型の不純物を添加してもよく、電気抵抗が下げられる場合にはさらに発光層の厚さを厚くすることができる。
【0064】
図12は、第3の実験のLED構造の変形例を示す概略断面図である。第3の実験と同様にして、ZnO基板61上に、n型ZnOバッファ層32からp型ZnOコンタクト層51までを形成する。p型ZnOコンタクト層51までが形成されたウエハを結晶製造装置から取り出した後、p型ZnOコンタクト層51上に、レジスト膜または保護膜等を設けてパターニングし、n側電極が形成される領域に対応する切り欠き窓を有するエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクを用いて、例えばウエットエッチングやリアクティブイオンエッチングにより、p型ZnOコンタクト層51、p型MgZnO層36、発光層35、及びn型MgZnO層34をエッチングして、n型ZnO層33を露出させる。
【0065】
次に、露出したn型ZnO層33の表面に、例えば、厚さ10nm〜100nmのTi層を形成し、このTi層に厚さ100nm〜1000nmのAu層を積層することにより、n側電極41Aを形成する。n側電極41Aの形成後、エッチングマスクを除去する。
【0066】
次に、p型ZnOコンタクト層51の上にp側電極42を作製し、p側電極42の上にボンディング電極43を形成する。p側電極42は、例えば、厚さ0.5nm〜5nmのNi層上に、厚さ0.1nm〜20nmのAu層を積層して形成される。ボンディング電極43は、例えば、厚さ100nmのNi層上に、厚さ1000nmのAu層を積層して形成される。なお、p側の電極材料がn側電極41A上に積層されないように、適宜マスクを用いて、p側電極42及びボンディング電極43を形成する。その後、例えば300℃〜800℃の酸化性ガス雰囲気中で電極合金化処理を行う。処理時間は、例えば30秒〜10分である。この変形例のLED構造は、絶縁性の基板であっても用いることができる。
【0067】
なお、第3の実験のLED構造(図9参照)や、変形例のLED構造(図12)から、n型MgZnO層34を省いた構造や、n型MgZnO層34及びp型MgZnO層36を省いた構造とすることもできる。
【0068】
なお、第3の実験のLED構造(図9参照)等で、n型ZnO層33及びn型MgZnO層34をまとめて1つのn型ZnO系半導体層と捉えることもでき、p型MgZnO層36及びp型ZnO:Mgコンタクト層51をまとめて1つのp型ZnO系半導体層と捉えることもできる。
【0069】
LED等の発光素子を作製するとき、電子キャリア密度及びホールキャリア密度は、1×1016cm−3以上は必要であるとされる。
【0070】
n型不純物であるGaをドープしたZnO層、MgZnO層において、Ga濃度は、有効な電子キャリアを得るために1×1016cm−3以上とし、3次元成長を抑えるために7×1019cm−3以下とすることが好ましい。なお、Gaの他にn型不純物として、Al、In等のIII族元素、F、Cl、Br等のVII族元素を用いることもでき、さらに、GaとAl等の2元素以上をドープすることも可能である。上記濃度範囲は、n型不純物としてAl、In等のIII族元素を用いる場合にも概ね有効である。なお、Ga等をドープしなくても十分な残留電子濃度があるならば、アンドープのZnO層やMgZnO層をn型層として用いることも可能である。
【0071】
なお、p型不純物であるNをドープしたZnO層、MgZnO層において、N濃度は、有効なホールキャリアを得るために1×1018cm−3以上とし、膜中の転移や欠陥を抑えるために5×1020cm−3以下とすることが好ましい。より好ましくは、1×1019cm−3〜3×1020cm−3の範囲である。なお、Nの他にp型不純物として、As、P等のV族元素、Li、Na、K等のI族元素を用いることもでき、さらに、NとP等の2元素以上をドープすることも可能である。
【0072】
NはZnOのOサイトの一部を置換してアクセプタとなるが、種々のV族元素の中で、NがOとのイオン半径が近しく、安定的に置換がなされる、Nのドーピングには、N2、N2O、NO、N2+O2、NH3のようなガスソース等、Nを含む種々のソースを用いることができる。
【0073】
なお、上記の実施例ではc面ZnO基板を用い、+c面上に結晶成長させる例を説明したが、−c面上に結晶成長させてもよい。また、a面やm面のZnO基板を用いてもよい。また、ZnO系半導体素子を形成する基板として、ZnO基板に限らず、サファイア(Al2O3)基板、炭化珪素(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板、MgZnO基板等を用いることも可能である。
【0074】
結晶性の良いZnO系半導体層を得るためには、格子不整合の小さい基板ほどよいので、ZnO基板が好ましい。発光素子を作製する場合は、発光層からの放射光の基板による吸収を抑えるため、ZnOに比べてバンドギャップを大きくしたMgZnO基板を用いることも好ましい。
【0075】
なお、上記の実施例ではMBEによる結晶成長の例を説明したが、例えば有機金属気相エピタキシ(MOVPE)等の気相エピタキシャル成長法を用いることも可能であろう。
【0076】
なお、上記の実施例ではZnOにMgをドープしたが、ZnO系半導体にMgをドープして、例えば結晶性の向上を図ることができよう。例えば、CdaZn1−aO、BeaZn1−aO、CaaZn1−aO(ともに0<a<1)や、ZnO1−bSb、ZnO1−bSeb、ZnO1−bTeb(ともに0<b<1)などのZnO系の多元系混晶への適用が期待される。
【0077】
なお、ZnO系半導体へのMgドーピングは、発光素子への適用に限らず、ZnO系材料を用いた他の半導体素子等への適用も考えられる。なお、ZnO系材料は、LEDやレーザダイオードといった発光素子の他、電極(透明導電膜)、トランジスタ等の電子デバイス、センサ(湿度センサ、紫外センサ)等への応用も可能である。
【0078】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、MBEによる結晶成長装置の概略図である。
【図2】図2は、第1の実験の測定サンプルの概略断面図である。
【図3】図3は、第1の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。
【図4】図4は、第1の実験で測定されたPLスペクトルである。
【図5】図5は、第2の実験の測定サンプルの概略断面図である。
【図6】図6は、第2の実験のサンプルのMg濃度をまとめた表である。
【図7】図7は、第2の実験で測定されたELスペクトルである。
【図8】図8は、第2の実験で得られたELスペクトルについて、バンド端の発光強度と、ディープレベルからの発光強度を、Mg濃度に対してプロットしたグラフである。
【図9】図9は、第3の実験の測定サンプルの概略断面図である。
【図10】図10A及び図10Bは、第3の実験の、Mgをドープしないサンプル及びMgをドープしたサンプルの電流−電圧特性を示すグラフである。
【図11】図11A及び図11Bは、変形例の発光層を示す概略断面図である。
【図12】図12は、変形例のLED構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0080】
31 ZnO基板
32 ZnOバッファ層
33 n型ZnO層
34 n型MgZnO層
35 発光層
36 p型ZnO層
41 n側電極
42 p側電極
43 ボンディング電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層。
【請求項2】
基板と、
前記基板の上方に形成され、第1の導電型の第1のZnO系半導体層と、
前記第1のZnO系半導体層の上に形成されたZnO系半導体発光層と、
前記ZnO系半導体発光層の上に形成され、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のZnO系半導体層と
を有し、
前記第1のZnO系半導体層、前記ZnO系半導体発光層、及び前記第2のZnO系半導体層の少なくとも1つが、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を含むZnO系半導体発光素子。
【請求項3】
前記発光層が単層であり、該発光層にMgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされている請求項2に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項4】
前記発光層が、井戸層と障壁層の積層を含む構造を持ち、少なくとも該井戸層にMgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされている請求項2に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項5】
さらに、前記第2のZnO系半導体層の上に形成された電極を有し、
該第2のZnO系半導体層の該電極と接する表層に、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされている請求項2〜4のいずれか1項に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項6】
前記第2の導電型がp型である請求項5に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項7】
Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を含むZnO系半導体素子。
【請求項8】
基板を準備する工程と、
前記基板の上方に、Zn、O、及びMgを同時に供給して、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を形成する工程と
を有するZnO系半導体層の製造方法。
【請求項9】
前記ZnO系半導体層を形成する工程は、分子線エピタキシを用いる請求項8に記載のZnO系半導体層の製造方法。
【請求項1】
Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層。
【請求項2】
基板と、
前記基板の上方に形成され、第1の導電型の第1のZnO系半導体層と、
前記第1のZnO系半導体層の上に形成されたZnO系半導体発光層と、
前記ZnO系半導体発光層の上に形成され、前記第1の導電型と逆の第2の導電型の第2のZnO系半導体層と
を有し、
前記第1のZnO系半導体層、前記ZnO系半導体発光層、及び前記第2のZnO系半導体層の少なくとも1つが、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を含むZnO系半導体発光素子。
【請求項3】
前記発光層が単層であり、該発光層にMgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされている請求項2に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項4】
前記発光層が、井戸層と障壁層の積層を含む構造を持ち、少なくとも該井戸層にMgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされている請求項2に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項5】
さらに、前記第2のZnO系半導体層の上に形成された電極を有し、
該第2のZnO系半導体層の該電極と接する表層に、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされている請求項2〜4のいずれか1項に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項6】
前記第2の導電型がp型である請求項5に記載のZnO系半導体発光素子。
【請求項7】
Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を含むZnO系半導体素子。
【請求項8】
基板を準備する工程と、
前記基板の上方に、Zn、O、及びMgを同時に供給して、Mgが1×1017cm−3〜2×1020cm−3の範囲の濃度でドープされたZnO系半導体層を形成する工程と
を有するZnO系半導体層の製造方法。
【請求項9】
前記ZnO系半導体層を形成する工程は、分子線エピタキシを用いる請求項8に記載のZnO系半導体層の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−116621(P2010−116621A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292233(P2008−292233)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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