説明

a−SiTFT及びこのa−SiTFTを有するシフトレジスター

【課題】櫛型状の電極を採用してジグザグ状のチャネル領域を形成したa−SiTFTに
おいて、帯状凸部の形成数を抑制してもチャネル幅を長く形成することができ、それによ
り高速駆動が可能で、かつ電極の断線が抑制された信頼性の高いa−SiTFTを提供す
ること。
【解決手段】ソース電極Sを、半導体層a−Siの表面において複数の凹凸部を描きなが
らジグザグに連なる1本の線形状に形成し、ドレイン電極Dを、半導体層a−Siと非重
畳の基幹部Dと、基幹部から分岐されて半導体層a−Siの側端部を乗り超えて半導体
層a−Siの表面に配置されると共に、ソース電極Sの電極の凹部にその先端部が挿入さ
れるように配置された複数の帯状凸部Dと、からなる櫛型状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質シリコン(a−Si)を用いた薄膜トランジスター(TFT:Thin F
ilm Transistor)及びこのa−SiTFTを有するシフトレジスターに関し、より詳細に
は、ジグザグ状のチャネル領域が形成されるようにソース電極及びドレイン電極が形成さ
れたa−SiTFT及びこのa−SiTFTを有するシフトレジスターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に使用される画素電極の駆動用素子としてはTFTが多く採用されており
、このTFTとしては、半導体層にa−Siを用いたa−SiTFTの他、半導体層にポ
リシコン(p−Si)を用いたp−SiTFTが知られている。このうち、a−SiTF
Tは、製造プロセスの低温化が可能で、かつp−SiTFTに比して安価に製造できるた
めに特に多く採用されている。
【0003】
図5は、a−SiTFTを用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置の表示パネル
を示す平面図である。表示パネル1は中央部に表示領域2が設けられ、この表示領域2に
は、マトリクス状に配置された複数の走査線及び信号線と、平面視でこれら走査線と信号
線とで区画される各サブ画素に対応する位置に形成された画素電極と、それぞれ各画素電
極と接続された複数の画素駆動用TFTとが形成されている。また、表示パネル1上には
、表示領域2の周囲に位置し、走査線、信号線、コモン配線等の引き回し配線が形成され
る引き回し配線形成領域3と、表示領域2の両側に位置する走査線駆動用回路搭載領域4
と、表示領域2の上方に位置する信号線駆動用回路搭載領域5と、表示領域2の下方に位
置する外部回路接続用端子領域6とが形成されている。
【0004】
a−SiTFTは、もっぱら表示領域2に形成される画素駆動用TFTとして用いられ
るが、その他にも、走査線駆動用回路搭載領域4に実装されて走査線を順次駆動するシフ
トレジスターを構成するTFTや、信号線駆動用回路搭載領域5に実装されて信号線を駆
動する信号線駆動回路を構成するTFT等として用いられることもある。
【0005】
図6は液晶表示装置に用いられる従来のa−SiTFTの構造を示す。図6Aはa−S
iTFTの断面構造を示すものであり、透明基板7の表面に形成されるゲート電極Gと、
ゲート電極Gの表面を被覆するゲート絶縁膜8と、ゲート絶縁膜8の表面にゲート電極G
の対応する位置に形成されるa−Siからなる半導体層a−Siと、半導体層a−Siに
その一部が重畳され、かつ互いが一定の距離Lを隔てて形成されるソース電極S及びドレ
イン電極Dを備えている。
【0006】
また、図6Bは図6Aに示したa−SiTFTの平面図であり、符号Wはソース電極S
とドレイン電極Dとの間に形成されるチャネルChの幅(ソース電極Sとドレイン電極D
が対向している長さ、以下「チャネル幅W」という)を示し、符号LはチャネルChの長
さ(ソース電極Sとドレイン電極Dとの間の距離、以下「チャネル長L」という)をそれ
ぞれ示している。
【0007】
このようなTFTは、ゲート電極Gと、画素電極と接続されるドレイン電極Dとの間に
は比較的大きな寄生容量Cgdが形成され、これに対する充電時間の損失が信号波形をな
まらせてa−SiTFTの高速駆動特性を劣化させる要因となることが知られている。こ
の問題点を解決するためには、寄生容量Cgdへの充電を短時間で完了させるために、a
−SiTFTの出力電流を大きくすることが考えられる。そのためには、チャネル長Lを
短くし、チャネル幅Wを長くすればよいが、フォトリソグラフィー法によるドレイン電極
及ソース電極の形成精度の問題からチャネル長Lをより短くするには限界があるため、チ
ャネル幅Wを長く確保する必要がある。
【0008】
しかしながら、チャネル幅Wを長くするとドレイン電極Dの面積が大きくなってこれに
伴い寄生容量Cgdも増加する。したがって、単にチャネル幅Wを長くする方法では、a
−SiTFTの出力電流の増加という観点からは効率が悪い。近年、液晶表示装置では、
表示パネルの高詳細化及びこれに伴う画素数増加が著しく、画素駆動用TFTの高速駆動
化と共に、画素駆動用TFTに信号を供給するためのドライバーIC中のシフトレジスタ
ーの高速・高出力化が要望されている。すなわち、シフトレジスターは同一の走査線に接
続されている多数の画素駆動用TFTを同時に駆動する必要があるため、高速・高出力化
が必要になる。特にa−SiTFTは、p−SiTFTに比してキャリア移動度が低いこ
ともあり、かかる要請に応えることは急務となっている。
【0009】
一方、下記特許文献1には、長いチャネル幅Wを確保しながらも、寄生容量Cgdの形
成を抑制した「非晶質−シリコン薄膜トランジスターとこれを有するシフトレジスター」
の発明が開示されている。下記特許文献1に開示されている発明は、走査線駆動用回路搭
載領域4(図5参照)に実装されて走査線を順次駆動するシフトレジスターの出力用TF
Tの例を示すものであるが、画素駆動用TFTにも同様に採用し得るものである。下記特
許文献1に示されているa−SiTFTは、図7に示すように、ソース電極S及びドレイ
ン電極Dを、それぞれ基幹部S、D及び基幹部から分岐される複数の帯状凸部S
とからなる櫛型状とされている。
【0010】
そして、ソース電極S及びドレイン電極Dの帯状凸部S,Dが他方の電極の凹部に
挿入されるようにそれらソース電極S及びドレイン電極Dを半導体層a−Si上に対向配
置させ、かつ基幹部S及びDについてはゲート電極G及び半導体層a−Siとの重畳
を避けて配置させている。これにより、平面視でジグザグ状に連なる1本のチャネル領域
G−chを形成してゲート電極G上に占めるドレイン電極Dの面積を抑制しながらチャネ
ル幅Wを長くすることができ、TFTの出力電流を増大させながらも寄生容量Cgdの形
成を抑制することを可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−274050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1のような従来のa−SiTFTの構造によると、ソース電極S及びドレ
イン電極Dが半導体層a−Siの側部と平面視で重畳する箇所には、図8A及び図8Bに
示されるように、半導体層a−Siの側端部(エッジ部分)を直接被覆するドレイン電極
Dの第1の段部DE1(図8A参照)及びソース電極Sの第1の段部SE1(図8B参照
)が形成される。更に、上記特許文献1に開示されているような従来のa−SiTFTの
構成によると、ソース電極S及びドレイン電極Dが平面視でゲート電極Gの側部と重畳す
る箇所には、図8A及び図8Bに示されるように、ゲート電極Gの側端部(エッジ部)に
起因するドレイン電極Dの第2の段部DE2(図8A参照)及びソース電極Sの第2の段
部SE2が形成されている。
【0013】
このような第1段部DE1及びSE1、第2段部DE2及びSE2では、半導体層a−
Siのエッジによる断線が発生し易いため、帯状凸部が多いほどドレイン電極D及びソ
ース電極Sの断線の可能性は高くなる。
【0014】
この点をより具体的に説明すると、例えば図7に示されているTFTの例では、チャネ
ル幅W(図6B参照)を長く確保するためにジグザグ状のチャネル領域G−chの直線状
チャネル領域S−chが14箇所(丸囲み数字の1〜14)設けられているが、この14
箇所の直線状チャネル領域S−chを形成するために、ソース電極Sの帯状凸部Sを8
本とドレイン電極Dの帯状凸部Dを7本を形成している。その結果、半導体層a−Si
のエッジ部分に形成される第1及び第2段部S及びDの数、すなわち断線が発生しや
すい箇所の数は、合計32箇所となる。この場合には、チャネル幅Wを長くするために、
帯状凸部を1本分増やして直線状チャネル領域S−Chを新たに一箇所形成するたびに、
断線発生要因となる段部が2箇所増えることになる。
【0015】
本発明は上述した従来技術の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、帯状
凸部の形成数を抑制してもチャネル幅を長く形成することができ、それにより高速・大電
流駆動が可能で、かつドレイン電極及びソース電極の断線が抑制された信頼性の高いa−
SiTFT及びこのa−SiTFTを有するシフトレジスターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のa−SiTFTは、ゲート電極と、前記ゲート電極
の表面を被覆する絶縁膜と、前記絶縁膜の表面に形成されたアモルファスシリコンからな
る半導体層と、前記絶縁膜の表面において前記半導体層とその一部が重畳するようにして
形成されたドレイン電極及びソース電極とを有し、チャネル領域がジグザグ状に連なる一
本の線状に形成されたアモルファスシリコン薄膜トランジスターであって、前記ソース電
極及びドレイン電極の一方は前記半導体層の表面において複数の凹凸部を描きながらジグ
ザグ状に連なる1本の線形状に形成され、前記ソース電極及びドレイン電極の他方は、基
幹部と、前記基幹部から分岐された複数の帯状の凸部と、を有する櫛型形状に形成され、
前記帯状凸部は、前記半導体層の表面に配置されると共に、前記ソース電極及びドレイン
電極の一方によって形成された凹部内にその先端部が配置されている、ことを特徴とする
【0017】
このような構成によれば、半導体層の表面においてソース電極及びドレイン電極の一方
とソース電極及びドレイン電極の他方との間にジグザグ状のチャネル領域が形成されるか
ら、長いチャネル幅を確保することができ、しかも、ソース電極及びドレイン電極の一方
に関しては、平面視でゲート電極のエッジ及び半導体層のエッジ部を跨ぐ段部をそれぞれ
1箇所とすることができる。したがって、本発明のa−SiTFTによれば、従来のもの
に比べると、ソース電極及びドレイン電極の一方に形成される段部が減少した分だけ断線
の可能性を減らすことができ、しかも、チャネル幅を長く形成することができるので、高
速・大電流駆動が可能で、かつソース電極ないしドレイン電極の断線が抑制された信頼性
の高いa−SiTFTが実現される。
【0018】
本発明のTFTにおいては、前記基幹部は前記ゲート電極と平面視で重畳しない位置に
形成され、前記帯状凸部は前記ゲート電極の側端部を被覆する前記絶縁膜の段差部分を乗
り超える段部を有して前記半導体層と平面視で重畳していることが好ましい。
【0019】
このような構成とすると、上述した従来例のTFTと比すると、帯状凸部が平面視でゲ
ート電極のエッジ及び半導体層のエッジ部を跨ぐ段部を乗り越える箇所を大幅に減らすこ
とができるため、よりソース電極及びドレイン電極の断線の可能性を減らすことができる
ようになる。
【0020】
本発明のTFTにおいては、前記基幹部は前記ゲート電極と平面視で重畳する位置に形
成され、前記帯状凸部は前記半導体層の側端部の段差部分を乗り超える段部を有して前記
半導体層と平面視で重畳していることが好ましい。
【0021】
このような構成とすれば、帯状凸部が平面視でゲート電極のエッジ部を跨ぐ段差が形成
されないから、断線しやすい箇所をより少なくして、信頼性をより一層向上させることが
できるようになる。なお、ソース電極及びドレイン電極の基幹部が半導体層と重畳しても
、寄生容量が発生する等の特段の問題は生じない。
【0022】
また、本発明のTFTにおいては、前記ソース電極及びドレイン電極の他方が、前記ソ
ース電極及びドレイン電極の一方を挟んで互いに噛み合うように対向配置された一対の櫛
型状に形成されていることが好ましい。
【0023】
このような構成とすれば、前記ソース電極及びドレイン電極の他方によって互いに噛み
合うように対向配置された一対の櫛型状電極間を前記ソース電極及びドレイン電極の一方
によって形成された1本の線状電極がジグザグ状に配置された状態となるので、より長い
チャネル幅を形成することができるようになる。
【0024】
また、上記目的を達成するための本発明のシフトレジスターは、液晶表示装置の走査線
駆動用ドライバーICを構成するシフトレジスターであって、前記a−SiTFTを備え
る。
【0025】
本発明のシフトレジスターによれば、液晶表示装置の画素駆動用のa−SiTFTと同
時に低温下で製造することができるので、特にシフトレジスター製造用の特別の工程が不
要となり、しかも、液晶表示装置の走査線を高速駆動可能なシフトレジスターを提供する
ことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ジグザグ状のチャネル領域を形成した実施形態のa−SiTFTの構成を示す平面図である。
【図2】図2Aは図1のIIA−IIA線に沿った断面図であり、図2Bは図1のIIB−IIB線に沿った断面図である。
【図3】ジグザグ状のチャネル領域を形成した変形例のa−SiTFTの構成を示す平面図である。
【図4】図4Aは図3のIVA−IVA線に沿った断面図であり、図4Bは図3のIVB−IVB線に沿った断面図である。
【図5】従来例及び実施形態に共通する液晶表示装置の表示パネルを示す平面図である。
【図6】従来の液晶表示装置に用いられる画素駆動用TFTの構造を示す図である。
【図7】櫛型状の電極を採用してジグザグ状のチャネル領域を形成した従来のa−SiTFTの構成を示す平面図である。
【図8】図8Aは図7のVIIIA−VIIIA線に沿った断面図であり、図8Bは図7のVIIIB−VIIIB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図1ないし図4を用いて説明する。ただし、以下に示す実施
形態は本発明の技術的思想を具体化するためのa−SiTFTを例示するものであって、
本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではなく、特許請求範囲に記載され
た技術的範囲に含まれるものに等しく適用し得るものである。また、この明細書における
説明のために用いられた各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大
きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法
に比例して表示されているものではない。
【0028】
本実施形態のa−SiTFTは、先に図5に示したようにアクティブマトリクス型の液
晶表示装置の表示領域2に形成される画素駆動用TFTとして用いられるが、そのほかに
も、走査線駆動用回路搭載領域4に実装されて走査線を順次駆動するシフトレジスターの
形成用TFTや、信号線駆動用回路搭載領域5に実装されて信号線を駆動する信号線駆動
回路の形成用TFT等として用いることができるものである。
【0029】
そして、本実施形態のa−SiTFT10は、図2に示されるように、透明基板7の表
面に形成されるゲート電極Gと、ゲート電極Gの表面を被覆するゲート絶縁膜8と、ゲー
ト絶縁膜8の表面にゲート電極Gの対応する位置に形成されるa−Siからなる半導体層
a−Siと、半導体層a−Siにその一部が重畳され、かつ互いが一定の距離(チャネル
長L)を隔てて形成されるソース電極S及びドレイン電極Dを備えている。
【0030】
そして、図1に示されるように、ソース電極Sは、半導体層a−Siの表面において、
複数の凹凸部を描きながらジグザグ状に連なる1本の線形状に形成されている。一方、ド
レイン電極Dは、ゲート電極G及び半導体層a−Siと非重畳の基幹部Dと、基幹部D
から分岐されて、半導体層a−Siの側端部を乗り超える第1段部DE1及びゲート電
極の側端部を被覆する前記絶縁膜の段差部分を乗り超える第2段部DE2を有して半導体
層a−Siの表面に配置されると共に、ジグザグ状に連なるソース電極Sの凹部内にその
先端部が配置された複数の帯状凸部Dと、からなる櫛型状に形成されている。更に、ソ
ース電極Sは、1対の櫛を対向配置させて互いの歯が互いの歯間に挿入されるように形成
されている。このような構成により、ソース電極Sとドレイン電極Dとの間には、図5に
示した従来のものと同様に、チャネル幅がLのジグザグ状のチャネル領域G−chが形成
されている。
【0031】
図2Aは図1のIIA−IIA線に沿った断面図であり、図2Bは図1のIIB−IIB線に沿
った断面図である。図2Aに示されているように、櫛型状に形成されたドレイン電極Dに
ついては、帯状凸部Dが、半導体層a−Siの側端部(エッジ部分)を乗り上げる箇所
に第1段部DE1が形成され、また、帯状凸部Dがゲート電極の側端部を乗り超える箇
所に第2段部DE2が形成され、これら第1段部DE1と第2段部DE2はそれぞれ7箇
所形成されている。
【0032】
これに対し、ジグザグ状に連なる1本の線形状に形成されたソース電極Sに関しては、
図2B及び図1の記載から明らかなように、ゲート電極Gの側端部を乗り越える箇所は存
在するものの、図1に示す1箇所Pを除いては半導体層a−Siに乗り上げる段部が形成
されていない。
【0033】
すなわち、半導体層a−Siのエッジ部分に形成される第1段部DE1及びPの数、す
なわち、半導体層a−Siのエッジに起因して断線が発生しやすい箇所は合計8箇所しか
なく、図5に示した従来のものよりも大幅に断線の可能性が低くなっている。それでいて
、図1に示されるように、本実施形態のTFTにおいては、図5に示した従来例と同様に
、ジグザグ状チャネル領域G−chの直線状チャネル領域S−chを14箇所(丸付数字
の1〜14)形成されているため、チャネル幅Wが長くなっている。
【0034】
しかも、ドレイン電極Dとゲート電極Gとの間に形成される寄生容量Cgdは、ドレイ
ン電極Dの基幹部Dがゲート電極Gと平面視で重畳していないため、図5に示した従来
例のドレイン電極Dとゲート電極Gとの間に形成される寄生容量Cgdよりも小さくなる
。そのため、実施形態のa−SiTFT10によれば、高速度で作動すると共に長いチャ
ネル幅Wが確保されているため、出力電流の増大を図ることができるようになる。
【0035】
なお、従来例では、図5で示したように、チャネル幅Wを長くするために、帯状凸部を
1つ増やして直線状チャネル領域S−Chを新たに一箇所形成する度に、半導体層a−s
iのエッジに起因する断線発生要因(第1段部)が一箇所増えることになる。しかしなが
ら、本実施形態を適用したa−SiTFTによれば、ドレイン電極Dの帯状凸部Dを1
つ増やして第1段部Dが1箇所増えても、それにより直線状チャネル領域S−Chを2
箇所増加することができ、この点においても本実施形態のa−SiTFTは、従来のa−
SiTFTよりも優れた作用・効果を得ることができる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、櫛型状の電極を採用してジグザグ状のチャネル領域
を形成したa−SiTFTにおいて、帯状凸部の形成数を抑制してもチャネル幅を長く形
成することができ、それにより高速駆動が可能で、かつソース電極ないしドレイン電極の
断線が抑制された信頼性の高いa−SiTFTを実現することを可能としている。
【0037】
なお、本実施形態では、ドレイン電極Dを線形状とし、ソース電極Sを櫛型状としたが
、ドレイン電極を櫛型状として、ソース電極を線形上としても同様の作用効果が得られる
。また、上記実施形態では液晶表示装置の画素駆動用TFTの例を示したが、走査線を順
次駆動するシフトレジスターの形成用TFTや、信号線を駆動する信号線駆動回路の形成
用TFT等として用いることができる。
【0038】
また、本発明のTFTは、変形例として、図3、図4に示すように、基幹部Dが、前
記ゲート電極Gと平面視で重畳するように形成されたTFT10Aにも適用することがで
きる。この変形例のTFT10Aは、半導体層a−Siの面積がゲート電極Gの面積より
小さく構成されている。この変形例のTFT10Aにおいては、半導体層a−Siのエッ
ジに起因する第3段部DE3(上述の第2段部DE2及びSE2に相当)のみが形成され
、先述した第1段部DE1及びSE1が形成されていないから、断線しやすい箇所をより
少なくして信頼性をより一層向上することができる。なお、ソース電極S及びドレイン電
極Dの基幹部が半導体層a−Siと重畳しても、寄生容量が発生する等の特段の問題は生
じない。
【0039】
また、上記実施形態のTFTをこれらのシフトレジスターの形成用TFTないし信号線
駆動回路の形成用TFTとして採用すれば、画素駆動用のa−SiTFTと同時に低温下
で製造することができるので、特別の工程が不要となる。しかも、上記実施形態のTFT
をこれらのシフトレジスターの形成用TFTとして採用した場合には、液晶表示装置の走
査線を高速駆動可能なシフトレジスターを提供することができるようになる。なお、この
ようなシフトレジスターないし信号線駆動回路の形成用TFTの構成は、既に周知のもの
であるので、その詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0040】
1…表示パネル 2…表示領域 3…引き回し配線形成領域 4…走査線駆動用回路搭
載領域 5…信号線駆動用回路搭載領域 6…外部回路接続用端子領域 7…透明基板
8…ゲート絶縁膜 10、10A…a−SiTFT G…ゲート電極 S…ソース電極
D…ドレイン電極 S−ch、G−ch…チャネル領域 L…チャネル長 W…チャネル
幅 D…基幹部 D…帯状凸部 DE1…第1段部 DE2、…第2段部 DE3
第3段部 a−Si…アモルファスシリコン層 G−ch…ジグザグ状チャネル領域 S
−ch…直線状チャネル領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、前記ゲート電極の表面を被覆する絶縁膜と、前記絶縁膜の表面に形成さ
れたアモルファスシリコンからなる半導体層と、前記絶縁膜の表面において前記半導体層
とその一部が重畳するようにして形成されたドレイン電極及びソース電極とを有し、チャ
ネル領域がジグザグ状に連なる一本の線状に形成されたアモルファスシリコン薄膜トラン
ジスターであって、
前記ソース電極及びドレイン電極の一方は前記半導体層の表面において複数の凹凸部を
描きながらジグザグ状に連なる1本の線形状に形成され、
前記ソース電極及びドレイン電極の他方は、基幹部と、前記基幹部から分岐された複数
の帯状の凸部と、を有する櫛型形状に形成され、
前記帯状凸部は、前記半導体層の表面に配置されると共に、前記ソース電極及びドレイ
ン電極の一方によって形成された凹部内にその先端部が配置されている、
ことを特徴とするアモルファスシリコン薄膜トランジスター。
【請求項2】
前記基幹部は前記ゲート電極と平面視で重畳しない位置に形成され、前記帯状凸部は前
記ゲート電極の側端部を被覆する前記絶縁膜の段差部分を乗り超える段部を有して前記半
導体層と平面視で重畳していることを特徴とする請求項1のアモルファスシリコン薄膜ト
ランジスター。
【請求項3】
前記基幹部は前記ゲート電極と平面視で重畳する位置に形成され、前記帯状凸部は前記
半導体層の側端部の段差部分を乗り超える段部を有して前記半導体層と平面視で重畳して
いることを特徴とする請求項1のアモルファスシリコン薄膜トランジスター。
【請求項4】
前記ソース電極及びドレイン電極の他方が、前記ソース電極及びドレイン電極の一方を
挟んで互いに噛み合うように対向配置された一対の櫛型状に形成されていることを特徴と
する請求項1に記載のアモルファスシリコン薄膜トランジスター。
【請求項5】
液晶表示装置の走査線駆動用ドライバーICを構成するシフトレジスターであって、請
求項1〜4のいずれかに記載のアモルファスシリコン薄膜トランジスターを備えているこ
とを特徴とするシフトレジスター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−272664(P2010−272664A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122805(P2009−122805)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】