説明

高圧ガス用開閉バルブ

【課題】弁体と弁座の間の圧接荷重が小さい状況下で密閉性を維持でき、しかも、大きな圧接荷重が連続して作用する状況下で弁体と弁座の高い耐久性を維持することのできる高圧ガス用開閉バルブを提供する。
【解決手段】パイロットバルブ26には、円錐状に突出する第1の当接面32を設け、パイロット弁座27には、第1の当接面32との初期当接部が円弧断面33aである環状の第2の当接面33を設ける。第1の当接面32は弾性を有する樹脂によって形成し、第2の当接面33は金属によって形成する。圧接荷重の小さいときには、第1の当接面32と第2の当接面33とが線接触し、圧接荷重が増大すると、第1の当接面32と第2の当接面33とが面接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧ガスを扱う流路で用いられ、弁体と弁座の当接離反によって流路を開閉する高圧ガス用開閉バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池やCNG(Compressed Natural Gas)等の高圧ガスを扱うシステムにおいては、遮断弁等の各種の弁部で開閉バルブが用いられている。このような用途で用いられる開閉バルブは、弁体と弁座の高い密閉性(遮断性能)と、経時使用においての耐久性の要求があり、この両者の要求を高い次元で満たすことが重要となる。
【0003】
そこで、これに対処する高圧ガス用開閉バルブとして、弁体側の当接面を円錐状に形成するとともに、弁座側の当接面を弁体側の当接面を受容するテーパ形状とし、弁体と弁座の一方を金属で形成し、他方を樹脂で形成するようにしたものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4330943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の高圧ガス用開閉バルブにおいては、弁体と弁座の当接面が常時面で接触する構造であるため、閉弁時における両者の圧接荷重が高い場合には、確実な閉弁と高い耐久性を両立できるものの、両者の圧接荷重が小さい場合には、弁体と弁座の密閉性(遮断性能)を維持することが難しくなる。
【0006】
そこでこの発明は、弁体と弁座の間の圧接荷重が小さい状況下で密閉性を維持でき、しかも、大きな圧接荷重が作用する状況下で弁体と弁座の高い耐久性を維持することのできる高圧ガス用開閉バルブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る高圧ガス用開閉バルブでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、同軸に配置された弁体(例えば、実施形態のパイロットバルブ26)と弁座(例えば、実施形態のパイロット弁座27)とを当接・離反させることで流路を開閉する高圧ガス用開閉バルブであって、前記弁体と弁座のうち、一方が円錐状に突出する第1の当接面(例えば、実施形態の第1の当接面32)を備えるとともに、他方が前記第1の当接面との初期当接部が円弧断面(例えば、実施形態の円弧断面33a)である環状の第2の当接面(例えば、実施形態の第2の当接面33)を備え、前記第1の当接面と第2の当接面の一方が樹脂によって形成され、他方が金属によって形成されていることを特徴とするものである。
これにより、弁座に対する弁体の圧接荷重が小さいときには、弁体と弁座が円錐状の第1の当接面と第2の当接面の円弧断面部分で線接触し、弁座に対する弁体の圧接荷重が増大すると、第1の当接面と第2の当接面が樹脂材料の変形によって面接触するようになる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る高圧ガス用開閉バルブにおいて、前記第1の当接面の周域の空間が第1のガス流路(例えば、実施形態の導入通路12)と導通し、前記第2の当接部に囲まれた内側の空間が第2のガス流路(例えば、実施形態の放出通路13)と導通していることを特徴とするものである。
これにより、弁体と弁座の離反と当接により、第1のガス流路と第2のガス流路の間が開閉されることになる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の高圧ガス用開閉バルブにおいて、前記樹脂はポリアミドイミドであることを特徴とするものである。
これにより、第1の当接面と第2の当接面の一方で用いる樹脂が、弾性変形可能で、かつ高強度な特性となる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、弁体と弁座の圧接荷重が小さいときには、円錐状の第1の当接面と第2の当接面の円弧断面部分で線接触し、弁体と弁座の圧接荷重が増大すると、第1の当接面と第2の当接面が樹脂材料の変形によって面接触するようになるため、弁体と弁座の間の圧接荷重が小さい状況下で確実な密閉性を維持できるとともに、大きな圧接荷重が作用する状況下でも弁体と弁座の高い耐久性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態の高圧ガス用開閉バルブを採用した燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】この発明の第1の実施形態である遮断弁の縦断面図である。
【図3】この発明の第1の実施形態の図2のA部に対応する拡大断面図である。
【図4】この発明の第1の実施形態の図2のA部に対応する拡大断面図である。
【図5】この発明の第1の実施形態である遮断弁の縦断面図である。
【図6】この発明の第1の実施形態である遮断弁の縦断面図である。
【図7】この発明の第2の実施形態である減圧弁の縦断面図である。
【図8】この発明の第2の実施形態の図7のB部に対応する拡大断面図である。
【図9】この発明の第2の実施形態である減圧弁の縦断面図である。
【図10】この発明の第2の実施形態の図9のC部に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
最初に、図1〜図6に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、燃料電池システムの概略構成図であり、符号1は、燃料としての水素と酸化剤としての酸素が供給されて発電をする燃料電池スタック(燃料電池)を示している。燃料電池スタック1は、例えば固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。
【0013】
燃料電池スタック1には、高圧の水素を貯蔵する水素タンク2(高圧流体の供給源)から水素供給流路3を介して所定圧力および所定流量の水素ガスが供給されるとともに、図示しない空気供給装置を介して酸素を含む空気が所定圧力および所定流量で供給される。
水素タンク2は、長手方向の両端が略半球状の筒状をなし、その長手方向の一端が開口している。この開口部2aには、水素供給流路3に対する水素タンク2のガス供給と遮断を行う主止弁10が取り付けられている。
【0014】
水素供給流路3には、減圧弁5と受圧デバイス7とが介装されている。水素タンク3から放出される高圧(例えば、35MPaあるいは70MPa等)の水素ガスは、減圧弁5によって所定の圧力(例えば、1MP以下)に減圧されて受圧デバイス7に供給される。ここで、受圧デバイス7とは、減圧弁5と燃料電池スタック1との間に配置されるデバイスの総称であり、エゼクタ、インジェクタ、加湿器などが含まれる。エゼクタは、燃料電池スタック1から排出される水素オフガスを循環利用するために水素オフガスを再び水素供給流路3に戻すデバイスであり、インジェクタは燃料電池スタック1に供給する水素ガス流量を調整するデバイスであり、加湿器は燃料電池スタック1に供給される水素ガスを加湿するデバイスである。受圧デバイス7としていずれのデバイスが組み込まれるかは燃料電池システムの全体構成により決定される。
【0015】
この第1の実施形態は、上記の燃料電池システムの主止弁10に、この発明に係る高圧ガス用開閉バルブを適用したものである。
図2は、主止弁10の具体的な構造を示す図であり、図3,図4は、図2のA部に相当する部分の拡大図である。また、図5,図6は、主止弁10の作動状態を示す図である。
主止弁10は、パイロット式の電磁バルブによって構成され、図2に示すように、バルブボディ11が水素タンク2の開口部2aに封止プラグを兼ねて取り付けられている。バルブボディ11には、水素タンク2の内部と導通する導入通路12(第1のガス流路)と、水素タンク2の外部の水素供給通路3と導通する放出通路13(第2のガス流路)が設けられている。また、バルフボディ11内の導入通路12と放出通路13の間にはバルブ収容室14が設けられ、そのバルブ収容室14内に、放出通路13の端部を開閉するメインバルブ15が進退自在に収容されている。導入通路12は、バルブ収容室14(バルブボディ11)の一端側(図中下端側)の外周壁を径方向に貫通して形成されており、放出通路13は、バルブ収容室14(バルブボディ11)の他端側(図中上端側)の端部壁を軸方向に貫通して形成されている。
【0016】
メインバルブ15は、バルブ収容室14の端部壁に設けられたメイン弁座16に離接する弁頭部17と、その弁頭部17の背部から軸方向に延出する軸部18と、軸部18の周域を取り囲んで弁頭部17と逆側に延出するガイド筒部19と、を備えている。なお、メイン弁座16は、放出通路12の端部の周域を取り囲むように端部壁に突設されている。ガイド筒部19は軸部18とともに内側に凹状空間20を形成し、その凹状空間20がバルブボディ11の導入通路12に対して常時導通するようになっている。弁頭部17と軸部18の軸心位置には、凹状空間20と放出通路12を連通するパイロット孔21が形成されている。
【0017】
また、ガイド筒部19の内側には、後述する駆動ユニット22のプランジャ23が進退変位可能に配置されている。プランジャ23には、径方向に貫通する長孔24が設けられ、ガイド筒部19の対向壁に結合される連結ピン25がこの長孔24内に挿入されている。つまり、メインバルブ15とプランジャ23とは、長孔24による軸方向の若干の遊びを持たせて連結ピン25によって連結されている。
凹状空間20内に配置されるプランジャ23の端面には、弁頭部26aを有するパイロットバルブ26(弁体)が取り付けられている。パイロットバルブ26は、メインバルブ15のパイロット孔21と同軸に配置されており、パイロット孔21の凹状空間20に臨む側の端縁は、パイロットバルブ26と離接するパイロット弁座27(弁座)とされている。パイロットバルブ26とパイロット弁座27については後に詳述する。
【0018】
駆動ユニット22は、パイロットバルブ26とメインバルブ15を開閉操作するためのものであり、電磁コイル28を収容するケーシング29の内側の軸心位置に凹部30が設けられ、この凹部30内に磁性材料から成る上記のプランジャ23が進退自在に収容されている。凹部30は、メインバルブ15のガイド筒部19側に向かって開口し、かつガイド筒部19と同軸に配置されている。凹部30とプランジャ23の間には、付勢手段であるスプリング31が介装され、プランジャ23が、このスプリング31の付勢力によって常時メインバルブ15の軸部18側に付勢されるようになっている。
【0019】
この主止弁10の場合、電磁コイル28が励磁されない間は、プランジャ23がスプリング31の付勢力を受け、パイロットバルブ26の弁頭部26aがメインバルブ15のパイロット弁座27に当接し、かつ、メインバルブ15の弁頭部17がバルブボディ11のメイン弁座16に当接している。したがって、このときメインバルブ15のパイロット孔21がパイロットバルブ26によって閉塞された状態で、バルブボディ11の放出通路13がメインバルブ15によって閉塞されるため、放出通路13は水素タンク2の内部(導入通路12)に対して遮断状態とされている。
【0020】
また、この状態から電磁コイル28が励磁されると、プランジャ23がスプリング31の付勢力に抗する推力を電磁コイル28から受け、図5に示すように、プランジャ23の端部のパイロットバルブ26がメインバルブ15のパイロット弁座16から離間する。これにより、メインバルブ15のパイロット孔21が開口し、水素タンク2内の水素ガスがパイロット孔21を通して放出通路13に小流量で吐出される。この結果、メインバルブ15の前後に作用する圧力の差が小さくなる。
そして、この状態からさらに電磁コイル28が励磁されると、図6に示すようにプランジャ23の長孔24の端部が連結ピン25に当接し、メインバルブ15が連結ピン25を介してプランジャ23と一体に変位するようになる。これにより、放出通路13がメインバルブ15によって開かれ、導入通路12から放出通路13に水素ガスが大流量で吐出される。
【0021】
ところで、この主止弁10のうち、パイロットバルブ26は、弾性を有する樹脂によって形成され、図3,図4に拡大して示すように、その弁頭部26aは円錐状に突出して形成されている。この弁頭部26aの円錐面は第1の当接面32を構成している。この第1の当接面32を構成する樹脂は、弾性を有し、かつ圧接荷重に対して高い耐久性を有することが望ましく、例えば、ポリアミドイミド等が用いられる。
【0022】
一方、メインバルブ15の軸部18に設けられるパイロット弁座27は金属によって形成されている。このパイロット弁座27は、図3,図4に示すように、パイロット孔21の端部のコーナが円周方向に亙って円弧状に面取りされ、その部分が円弧断面33aとされている。この実施形態の場合、円弧断面33a部分とその内外の縁部が第2の当接面33とされている。
【0023】
この第2の当接面33は、パイロットバルブ26側の第1の当接面32との当接初期には、図3に示すように、円弧断面33a部分で第1の当接面32に対して線接触し、この状態から圧接荷重が増大すると、図4に示すように、樹脂から成る第1の当接面32の、第2の当接面33側の円弧断面33a部分を基点とした弾性変形により、第1の当接面32に対して面接触するようになる。このとき、パイロットバルブ26の弁頭部26aは、パイロット孔21内に差し込まれるようにしてパイロット弁座27との接触面積を増大させる。
【0024】
ここで、第2の当接面33の円弧断面33aは、小さな圧接荷重でもパイロットバルブ26とパイロット弁座27の間の密閉性の維持できるようにするためには、曲率半径がより小さいことが有利であるが、樹脂材料から成る第1の当接面32の耐久性との兼ね合いから、パイロットバルブ26側とパイロット弁座27側の各部は以下の範囲に設定することが望ましい。例えば、
パイロット孔21の直径 →0.2mm〜0.5mm
パイロットバルブ26の弁頭部26aの円錐角度 →60°〜120°
円弧断面33aの曲率半径 →0.1mm〜0.5mm
【0025】
以上のように、この実施形態の主止弁10は、弾性を有する樹脂から成る円錐状の第1の当接面32がパイロットバルブ26の弁頭部26aに設けられ、金属から成り円弧断面を有する第2の当接面がパイロット弁座27に設けられているため、パイロットバルブ26とパイロット弁座27の間の圧接荷重の小さい間には、第1の当接面32と第2の当接面33の円弧断面33a部分が線接触することで、密閉性を維持することができ、しかも、パイロットバルブ26とパイロット弁座27の間の圧接荷重が増大したときには、第1の当接面32と第2の当接面33が第1の当接面32の樹脂の変形に伴う面接触することにより、当接面の高い耐久性を維持することができる。
【0026】
なお、この実施形態においては第1の当接面32を樹脂によって形成し、第2の当接面33を金属によって形成しているが、逆に、第1の当接面32を金属によって形成し、第2の当接面33を樹脂によって形成するようにしても良い。
また、ここでは、主止弁10のパイロットバルブ26とパイロット弁座27部分にこの発明に係る高圧ガス用開閉バルブを適用したものについて説明したが、主止弁10のメインバルブ15とメイン弁座16部分にこの発明に係る高圧ガス用開閉バルブを適用することも可能である。この場合、メインバルブ15側とメイン弁座16側の各部は以下の範囲に設定することが望ましい。例えば、
放出通路13のメイン弁座16側の端部の直径 →3mm〜8mm
メインバルブ15の弁頭部17の円錐角度 →60°〜120°
メイン弁座16の円弧断面の曲率半径 →0.1mm〜0.5mm
【0027】
つづいて、図7〜図10に示す第2の実施形態について説明する。この実施形態は、図1に示す燃料電池システムの減圧弁5に、この発明に係る高圧ガス用開閉バルブを適用したものである。
図7,図9は、減圧弁5の具体的な構造を示す図であり、図8,図10は、それぞれ図7,図9のB,C部を拡大した図である。
これらの図に示すように、減圧弁5は、弁ハウジング40の内部に隔壁41を挟んで一次側圧力室42(第1のガス流路)と二次側圧力室43(第2のガス流路)とが設けられている。一次側圧力室42は、弁ハウジング40の流入ポート44を介して水素供給流路3の上流側(水素タンク1側)に接続され、二次側圧力室43は、弁ハウジング40の流出ポート45を介して水素供給流路3の下流側(受圧デバイス7側)に接続されている。隔壁41には、一次側圧力室42と二次側圧力室43を連通する連通孔46が設けられ、この連通孔46が、後述する弁体47によって一次側圧力室42側から開閉されるようになっている。
【0028】
また、弁ハウジング40内には、二次側圧力室43に臨むようにダイヤフラム48が設置されている。ダイヤフラム48は、二次側圧力室43に臨む側の面が受圧面48aとされ、受圧面48aの背面側の空間部が大気に導通している。ダイヤフラム48の中央部には、隔壁41の連通孔46を貫通する上記の弁体47の弁軸47bが連結されている。弁体47は、連通孔46内を貫通する弁軸47bと、弁軸47bの端部に連設されて連通孔46の一次側圧力室42側の端部を開閉する弁頭部47aと、を備えている。また、ダイヤフラム48の背面側には、ダイヤフラム48を、弁体47が連通孔46を開口する方向に付勢するスプリング39が設けられている。
【0029】
ダイヤフラム48には、スプリング39の付勢力と二次側圧力室43の圧力とが作用している。このため、弁体47は、受圧デバイス7側での水素ガスの消費(流れ)によって二次側圧力室43の圧力が所定圧力以下に低下したときに、弁頭部47aが連通孔46を開口して、一次側圧力室42から二次側圧力室43に高圧の水素ガスを減圧して流入させる。
【0030】
また、図8,図10に示すように、弁体47は、弁頭部47aが弁軸47b側に向かって円錐状に突出して形成されている。この弁頭部47aの円錐面は第1の当接面49を成し、金属製のベース面に弾性を有する樹脂から成る表皮材50が取り付けられて構成されている。表皮材50を構成する樹脂は、弾性を有し、かつ圧接荷重に対して高い耐久性を有することが望ましく、例えば、ポリアミドイミド等が用いられる。
一方、連通孔46の一次側圧力室42側の端縁は、弁体47の弁頭部47aが離接する弁座51とされている。この弁座51は全体が金属によって形成されている。また、弁体47はこの弁座51に対して同軸に配置されている。
【0031】
弁座51は、連通孔46の端部のコーナが円周方向に亙って円弧状に面取りされ、その部分が円弧断面52aとされている。この実施形態では、円弧断面52a部分とその内外の縁部が第2の当接面52とされている。この第2の当接面52は、弁体51側の第1の当接面49との当接初期には、図8に示すように、円弧断面52a部分で第1の当接面49に対して線接触し、この状態から圧接荷重が増大すると、図10に示すように、樹脂から成る第1の当接面49の弾性変形によって、第1の当接面49に対して面接触するようになる。このとき、弁体47の弁頭部47aは、連通孔46に差し込まれるようにして、弁座51との接触面積を増大させる。
なお、弁体47側と弁座51側の各部は以下の範囲に設定することが望ましい。例えば、
連通孔46の直径 →3mm〜8mm
弁体47の弁頭部47aの円錐角度 →60°〜120°
弁座51の円弧断面52aの曲率半径 →0.1mm〜0.5mm
【0032】
ところで、この減圧弁5の場合、ダイヤフラム48の受圧面48aの面積Sと、スプリング39のばね定数kが、以下の式(1),(2)を満たすように設定されている。
P1×S−k×ΔL>C (1)
P1<P2 (2)
ただし、式中、P1は、弁体47が連通孔46を閉じたときの二次側圧力室43の圧力、ΔLは、スプリング39の自由長からの変位、Cは、弁体47の締切り必要荷重、P2は、受圧デバイス7の許容最大圧力を表す。
【0033】
このような設定であるため、この減圧弁5では、受圧デバイス7の作動停止等によって受圧デバイス7側での水素ガスの流れが停止すると、当初は、ダイヤフラム48に作用する二次側圧力室43の圧力P1による閉弁方向の推力(P1×S)と、スプリング39による開弁方向の推力(k×ΔL)が釣り合い、図7,図8に示すように弁体47が弁座51に対して微小接触した状態となる。
【0034】
この状態では、弁体18と弁座23の間の圧接力が弱いため、時間の経過とともに弁体47と弁座51の隙間から一次側圧力室42の高圧水素ガスが二次側圧力室43側に僅かずつ漏れ、二次側圧力室43と受圧デバイス7側の流路の圧力P1が次第に高まる。こうして、二次側圧力室43の圧力P1が所定圧力まで高まると、ダイヤフラム48に作用する二次側圧力室43の圧力P1による閉弁方向の推力(P1×S)と、スプリング39による開弁方向の推力(k×ΔL)との差が弁体47の締切り必要荷重Cに達し、図9,図10に示すように、弁体47と弁座51の間が密閉されて、一次側圧力室42と二次側圧力室43の間が完全に遮断されるようになる。このとき、弁体47側の第1の当接面49と弁座51側の第2の当接面52とは、前述のように第1の当接面49の弾性変形によって相互に面接触する。
なお、このときの二次側圧力室43の圧力P1は、上記の式(2)のように受圧デバイス7の許容最大圧力に達しない範囲に設定されているため、この閉弁状態が継続した場合であっても、受圧デバイス7はガスの圧力P1によって悪影響を受けることがない。
【0035】
以上のように、この実施形態の減圧弁5においては、弁体47と弁座51が、円錐状の第1の当接面49と円弧断面52aを有する第2の当接面52で当接し、第1の当接面49が弾性を有する樹脂によって形成され、第2の当接面52が金属によって形成されているため、閉弁方向の推力が小さい間は、第1の当接面49と第2の当接面52を線接触させて閉弁し、閉弁方向の推力が増大すると、第1の当接面49と第2の当接面52を樹脂の変形によって面接触させることができる。
したがって、この減圧弁5においては、ダイヤフラム48に作用する閉弁方向の推力が比較的小さい段階から弁体47と弁座51の間を線接触部で密閉することができるため、ダイヤフラム48の受圧面積の過大な増大を回避して、装置の小型化を図ることができる。また、ダイヤフラム48に作用する閉弁方向の推力が増大すると、弁体47と弁座51が面で接触するようになるため、弁体47や弁座51の当接面の高い耐久性を維持することができる。
【0036】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の各実施形態においては、円錐状に突出する第1の当接面を弁体側に設け、円弧断面を有する第2の当接面を弁座側に設けているが、円錐状に突出する第1の当接面を弁座側に設け、円弧断面を有する第2の当接面を弁体側に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
5…減圧弁(高圧ガス用開閉バルブ)
10…主止弁(高圧ガス用開閉バルブ)
12…導入通路(第1のガス流路)
13…吐出流路(第2のガス流路)
26…パイロットバルブ(弁体)
27…パイロット弁座(弁座)
32…第1の当接面
33…第2の当接面
33a…円弧断面
42…一次側圧力室(第1のガス流路)
43…二次側圧力室(第2のガス流路)
47…弁体
49…第1の当接面
51…弁座
52…第2の当接面
52a…円弧断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に配置された弁体と弁座とを当接・離反させることで流路を開閉する高圧ガス用開閉バルブであって、
前記弁体と弁座のうち、一方が円錐状に突出する第1の当接面を備えるとともに、他方が前記第1の当接面との初期当接部が円弧断面である環状の第2の当接面を備え、
前記第1の当接面と第2の当接面の一方が樹脂によって形成され、他方が金属によって形成されていることを特徴とする高圧ガス用開閉バルブ。
【請求項2】
前記第1の当接面の周域の空間が第1のガス流路と導通し、前記第2の当接部に囲まれた内側の空間が第2のガス流路と導通していることを特徴とする請求項1に記載の高圧ガス用開閉バルブ。
【請求項3】
前記樹脂はポリアミドイミドであることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧ガス用開閉バルブ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−207743(P2012−207743A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74823(P2011−74823)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】