説明

アクチュエータ要素に基づくマイクロ流体システム

本発明は、マイクロ流体システムのマイクロチャネル(16)の壁(15)の内側表面(14)に第1の場所で位置する複数の線毛アクチュエータ要素(10)を有するマイクロ流体システムを提供する。マイクロ流体システムは、更に、マイクロチャネル(16)の中心線に関して第1の場所の実質的に反対の第2の場所でマイクロチャネル(16)の壁(15)に組み込まれた、少なくとも1つの導線(17)によって形成される磁場発生器を有する。本発明は、また、このようなマイクロ流体システムを製造するための方法と、このようなマイクロ流体システムのマイクロチャネル(16)を通じる流体流れを制御する方法とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体システム、マイクロ流体システムを製造するための方法及び/又はマイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御又は操作する方法、更には、マイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御するためのコントローラ、並びに、流体流れを制御する方法においてマイクロ流体システムと共に用いるためのソフトウェアに関する。マイクロ流体システムは、例えば、バイオテクノロジー及び医薬のアプリケーションにおいて、また、マイクロエレクトロニクスアプリケーションのマイクロチャネル冷却システムにおいて用いられることができる。本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、コンパクトで、安価で、処理するのが容易となりうる。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体学は、一般的な液滴より数千倍も小さい量における流体の動作を研究する、物理学、化学、エンジニアリング及びバイオテクノロジーを含む多くの専門に亘る分野に関する。マイクロ流体成分は、マイクロリットル及びナノリットル量の流体を処理して非常に感度が高い分析測定を実行することができる、いわゆる「ラブオンチップ(lab−on−a−chip)」デバイス又はバイオチップネットワークの基礎を形成する。マイクロ流体素子を造るのに用いられる製作技術は、比較的安価であり、非常に精巧で多重化されたデバイスに、更に、大量生産に、適している。マイクロ流体技術は、マイクロエレクトロニクスにおけるのと同様に、同一の基板チップ上において異なる幾つかの機能を実行するための高度集積素子の製作を可能にする。
【0003】
マイクロ流体チップは、今日の急成長しているバイオテクノロジーの多く、例えば迅速なDNA分離及びサイジング、細胞操作、細胞ソート並びに分子検出、について、鍵となる土台になってきている。マイクロ流体チップベースの技術は、従来のマクロサイズの対応する技術に勝る多くの利点を提供する。マイクロ流体学は、中でも、遺伝子チップ及びタンパク質チップの開発への努力において、重要な構成要素である。
【0004】
全てのマイクロ流体デバイスにおいて、流体流れを制御することへの基本的な必要性がある、即ち、流体は、約0.1mmの典型的な幅を有するチャネルを含むマイクロチャネルシステムを通じて運搬、混合、分離、そして誘導されなければならない。
【0005】
マイクロ流体作動(actuation)におけるチャレンジは、マイクロチャネル中で可変の組成物(例えば唾液及び血)の複雑な流体の流れを調節又は操作するためのコンパクトで信頼性が高いマイクロ流体システムを設計することである。種々の駆動機構が開発されて現在使用されており、これらは例えば、圧力駆動機構、微細加工機械式弁及びポンプ、インクジェット型ポンプ、動電学的に制御された流れ並びに表面弾性波である。
【0006】
例えば、混合の場合、マイクロ流体チャネル中で優勢な層流は、低いレイノルズ数のため、通常、かなり遅いプロセスである拡散によってのみ混合を可能にする。これまでは、混合を増進するために、受動的構造又は超音波が用いられてきている。しかし、受動的構造は、比較的大きくなくてはならず、良好な混合が起きるためには長時間が必要である。他方、超音波は、空間的にあまり限定されていない。最後に、受動的構造及び超音波は、効果的な混合を提供しない。
【0007】
微小電気機械システム(MEMS)技術のマイクロ流体デバイスへの適用は、広範囲の流れ速度及び圧力で種々の流体を運搬するマイクロポンプの開発を刺激した。
【0008】
国際公開第2006/087655号パンフレットにおいて、一端においてマイクロチャネル壁に取り付けられたアクチュエータ要素に基づくマイクロ流体システムが提唱されている。アクチュエータ要素は、外部刺激を加えることによってそれらの形状を変えることによって動かされることができる。一実施形態によれば、外部刺激は、磁場である。従って、マイクロ流体システムのチャネル壁は、アクチュエータ要素で覆われ、それらの形の協調した変化(concerted change)、例えば、曲がった形からまっすぐな形への変化が、チャネル中にある流体を動かす。壁をアクチュエータ要素で覆うことは、例えば、二次元アレイを成すようになされることができる。アクチュエータ要素を個々にアドレスすることによって、又は、アクチュエータ要素の行をアドレスすることによって、運搬、混合又は渦を作るのに有利でありうる波状運動、他の相関運動(correlated movement)又は非相関運動が発生させられることができる。
【0009】
図1は、チャネル36の壁35に取り付けられており磁気的に作動されるアクチュエータ要素30の基本原理を示す。アクチュエータ要素30の磁気作動を可能にする1つの方法は、超常磁性分子をアクチュエータ要素30に組み込むことである。図1に与えられる例では、空間的に変化する磁場が、チャネル36の壁35に位置する導線41によって加えられる。導線41の位置のため、即ちアクチュエータ要素30の下という位置のため、アクチュエータ要素30は導線41への磁場勾配を受ける。磁場は、チャネル36の壁35の近くにおいて、壁35から遠くにおけるよりも、大きい。例えば、図1において、位置Aにおいては磁場は位置Bにおけるよりも大きく、位置Bにおいては磁場は位置Cにおけるよりも大きい。
【0010】
磁力は、アクチュエータ要素30に対し、磁場の勾配の方向に、即ち導線41に向かう方向に、作用する。
【0011】
外部磁場
【数1】


の印加は、アクチュエータ要素30に対する並進力を生じる。並進力は、
【数2】


である。ここで、
【数3】


は、アクチュエータ要素30の磁化であり、μ=4π10−7は自由空間の透磁率であり、Vはアクチュエータ元素30の体積であり、
【数4】


は、アクチュエータ要素30がないときの磁場である。
【0012】
マイクロ流体デバイスにおける使用のために適切なアクチュエータ要素30においては、結果として生じる、アクチュエータ要素30に作用する力
【数5】


は、一方では、アクチュエータ要素30を有意に曲げるのに、即ち、アクチュエータ要素30の剛性を克服するのに、十分でなければならず、他方では、チャネル36中に存在する周囲の流体によってアクチュエータ要素30に加わる抵抗力を上回るのに十分大きくなければならない。これを達成するためには、特に、磁力が曲げを引き起こすのに最も効果的である、アクチュエータ要素30の先端において、アクチュエータ要素30の位置における磁場勾配は、十分に大きくなければならない。
【0013】
図1に示されたような、マイクロ流体システムのチャネル36の壁35に組み込まれた導線41の位置は、最も効果的ではないかもしれない。なぜなら、磁場勾配は1/rとして急速に低下し、アクチュエータ要素30に作用する力は1/rとして低下するからである。ここで、rは、アクチュエータ要素30の位置(例えばA、B、C)と導線41との間の距離である。従って、十分な力を得るためには、かなり大きな電流(場合によっては、アプリケーション並びにアクチュエータ要素30の弾性率及び形状に応じて10Aよりも高くなりうる)が、上述のとおりマイクロ流体システムにおける使用のために適切なアクチュエータ要素30の充分な曲がりを作動させる又は得るために、導線41を通じて送られることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、良いマイクロ流体システム、及び/又は、これを製造及び/又は操作する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの利点は、磁気作動の使用のため、これらが非常に複雑な非磁性の体液(例えば唾液、痰又は血)と動作することができるということである。
【0016】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの他の利点は、それが、アクチュエータ要素が取り付けられたマイクロチャネルの壁にある導線によって発生する磁場によって磁気作動が得られる従来技術のマイクロ流体システムに対して、同等であるかそれより低い電流で、高められた作動効果を提供するということである。
【0017】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、経済的で処理が簡単であると同時に、丈夫でコンパクトであり、複雑な流体に適している。
【0018】
上記の目的は、本発明による方法及び装置によって達成される。
【0019】
特定の及び好適な本発明の態様は、添付の独立及び従属クレームに提示される。従属クレームからの特徴は、適宜、独立クレームの特徴及び他の従属クレームの特徴と組み合わせられることができ、クレームに明示的に提示されたものだけではない。
【0020】
本発明の第1の態様において、マイクロ流体システムが提供される。マイクロ流体システムは、壁及びその長さに沿って中心線を有する少なくとも1つのマイクロチャネルを含む。マイクロ流体システムは、更に、第1の位置で壁の表面に取り付けられた複数の線毛アクチュエータ要素(ciliary actuator element)であって、各線毛アクチュエータ要素が形状及び方向を有する、複数の繊毛アクチュエータ要素と、前記複数の線毛アクチュエータ要素に磁場を加えて前記複数の線毛アクチュエータ要素の前記形状及び/又は方向の変化を引き起こすための磁場発生器とを含む。
【0021】
前記複数の線毛アクチュエータ要素に前記磁場を加えるための前記磁場発生器は、前記マイクロチャネルの前記壁に第2の位置で組み込まれる少なくとも1つの導線によって形成され、前記第2の位置は、前記マイクロチャネルの前記中心線に対して実質的に反対である。
【0022】
本発明の実施形態によるマイクロ流体デバイスの利点は、それが、アクチュエータ要素が取り付けられたマイクロチャネルの壁にある導線によって発生する磁場によって磁気作動が得られる従来技術のマイクロ流体システムに対して、同等であるかそれより低い電流で、高められた作動効果を提供するということである。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記複数の線毛アクチュエータ要素は実質的に列を成すように配置され、前記マイクロ流体システムは、前記壁に前記第2の位置で組み込まれる複数の導線を含んでよく、2つの引き続きの線毛アクチュエータ要素の各々の間に導線が位置してよい。好ましくは、線毛アクチュエータ要素と第1の導線との間の距離は、本発明の実施形態によれば、線毛アクチュエータ要素と第2の導線との間の距離よりも低くてもよく、また、その逆も同じである。この場合、導線の位置は、線毛アクチュエータ要素の位置に関して非対称であり、これにより、単一の線毛アクチュエータ要素が、主に単一の導線によってアドレスされることができる。他の実施形態によれば、線毛アクチュエータ要素と第1の導線との間の距離は、線毛アクチュエータ要素と第2の導線との間の距離に等しくてもよい。この場合、導線は2つの引き続きの線毛アクチュエータ要素の間の中央に置かれることができる。これらの実施形態によれば、導線がその間に位置する両方の線毛アクチュエータ要素は、同時に作動する。
【0024】
他の実施形態によれば、前記マイクロ流体システムは、マイクロチャネルの前記壁に前記第2の位置で組み込まれる複数の導線を含んでよく、前記複数の線毛アクチュエータ要素の各々について別個の導線が設けられてよい。これらの実施形態の利点は、線毛アクチュエータ要素の各々が個々にアドレスされることができるということである。
【0025】
本発明の更に他の実施形態によれば、前記マイクロチャネルの前記壁は、前記第2の位置で少なくとも1つの突起を有してよく、前記少なくとも1つの導線は、前記壁の前記少なくとも1つの突起内に位置してよい。これらの場合、導線は、突起が設けられない場合よりも、線毛アクチュエータ要素の先端に更に近づけられることができる。それゆえに、従来技術マイクロ流体システムに対して、線毛アクチュエータを作動させるために必要な電流は、突起が設けられない本発明の実施形態におけるより低くてよい。
【0026】
前記少なくとも1つの突起は、線毛アクチュエータ要素と0μm〜10μmの重なりを示してもよい。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態によれば、マイクロ流体システムは更に、外部磁場発生器を含むことができる。
【0028】
前記複数の線毛アクチュエータ要素は、好ましくはポリマーアクチュエータ要素であってもよい。重合体アクチュエータ要素は、例えば、ポリマーMEMSを含んでよい。本発明の特定の実施形態によれば、ポリマーアクチュエータ要素は、アイオノマーポリマー−金属複合体(IPMC)を含んでよい。
【0029】
線毛アクチュエータ要素に磁気特性を与えるために、前記線毛アクチュエータ要素は、本発明の実施形態によれば、均一な連続磁気層を含んでよい。他の実施形態によれば、前記線毛アクチュエータ要素は、パターン化された連続磁気層を含んでよい。更に別の好適な実施形態によれば、前記線毛アクチュエータ要素は、磁性粒子を含んでよい。
【0030】
更に、マイクロ流体システムは、前記複数の線毛アクチュエータ要素の運動を測定するための少なくとも1つの磁気センサを含んでよい。
【0031】
具体例によれば、マイクロ流体システムは更に、少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の移動を制限するための少なくとも1つのストッパ要素を含むことができる。
【0032】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、バイオテクノロジー、医薬、電気又は電子のアプリケーションで用いられることができる。
【0033】
本発明の更なる態様において、少なくとも1つのマイクロチャネルを含み、該マイクロチャネルは壁及び当該マイクロチャネルの長さに沿って中心線を有する、マイクロ流体システムを製造する方法が提供される。この方法は、前記少なくとも1つのマイクロチャネルの壁の内側表面に、第1の位置で取り付けられる複数の繊毛アクチュエータ要素を設けるステップと、前記少なくとも1つのマイクロチャネルの前記壁に第2の位置で少なくとも1つの導線を設けるステップとを含み、前記第2の位置は、前記マイクロチャネルの前記中心線に関して前記第1の位置と実質的に反対である。
【0034】
本発明による方法は、第1の位置でマイクロチャネルの壁にある導線によって発生する磁場によって磁気作動が得られる従来技術マイクロ流体システムに対して、同等であるかそれより低い電流で、高められた作動効果を示すマイクロ流体システムを生じる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、本方法は、複数の導線を提供するステップを含んでよく、これら複数の導線の提供は、2つの引き続きの線毛アクチュエータ要素の各々の間に導線を設けることによって実行されてよい。好ましくは、本発明の実施形態によれば、複数の導線の提供は、線毛アクチュエータ要素と第1の導線の間の距離が、線毛アクチュエータ要素と第2の導線との間の距離よりも低くなるように、実行されることができる。この場合、導線の位置は、線毛アクチュエータ要素の位置に関して非対称であり、これにより、単一の線毛アクチュエータ要素は、主に単一の導線によってアドレスされることができる。他の実施形態によれば、複数の導線の提供は、線毛アクチュエータ要素と第1の導線との間の距離が線毛アクチュエータ要素と第2の導線との間の距離に等しくなるように実行されてもよい。この場合、導線は2つの引き続きの線毛アクチュエータ要素の間の中央に置かれることができる。これらの実施形態によれば、導線がその間に位置する両方の線毛アクチュエータ要素は、同時に作動する。
【0036】
他の実施形態によれば、本方法は、複数の導線を提供することを含んでよい。これら複数の導線の提供は、前記複数の線毛アクチュエータ要素の各々について別個の導線を設けることによって実行されてよい。これらの実施形態による方法は、線毛アクチュエータ要素の各々が個々にアドレスされることができるマイクロ流体システムを生じる。
【0037】
本発明の他の実施形態によれば、本方法は更に、前記マイクロチャネルの前記壁に前記第2の位置で少なくとも1つの突起を設けることを含んでよい。前記少なくとも1つの導線の提供は、前記少なくとも1つの導線を前記壁の前記少なくとも1つの突起に設けることによって実行されてよい。これらの実施形態によれば、導線は、突起が設けられない場合よりも、線毛アクチュエータ要素の先端に更に近づけられることができる。従って、従来技術マイクロ流体システムに対して、本発明の実施形態による方法は、突起が設けられない本発明の実施形態における場合よりも線毛アクチュエータ要素を作動させるために必要な電流が低くなりうるマイクロ流体システムを生じる。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態によれば、本方法は更に、前記少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の運動を制限するための少なくとも1つのストッパ要素を設けることを含んでよい。
【0039】
本発明の別の態様において、マイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御する方法が提供され、前記マイクロチャネルは、該マイクロチャネルの長さに沿った中心線及び壁を有し、前記マイクロチャネルの前記壁は、複数の線毛アクチュエータ要素を第1の位置で有し、前記線毛アクチュエータ要素は、各々が形状及び方向を有する。この方法は、前記線毛アクチュエータ要素に磁場を加えて少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の前記形状及び/又は方向の変化を生じさせるために前記マイクロチャネルの前記壁に前記マイクロチャネルの前記中心線に関して前記第1の位置と実質的に反対の第2の位置で存在する少なくとも1つの導線を通じて電流を印加するステップを有する。
【0040】
少なくとも1つの導線を通じての電流の印加は、0.1A〜10Aの電流を印加することにより実行されてよい。好ましくは、少なくとも1つの導線を通じての電流の印加は、0.1A〜10Aの電流を印加することにより実行されてよい。
【0041】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御する方法は、バイオテクノロジー、医薬、電気又は電子のアプリケーションで使われることができる。
【0042】
本発明の更に他の態様において、マイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御するコントローラが提供され、前記マイクロチャネルは該マイクロチャネルの長さに沿った中心線及び壁を有し、前記マイクロチャネルの前記壁は第1の位置で複数の線毛アクチュエータ要素を有し、前記線毛アクチュエータ要素は各々が形状及び方向を有している。このコントローラは、前記線毛アクチュエータ要素に磁場を加えて少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の前記形状及び/又は方向の変化を生じさせるために前記マイクロチャネルの前記壁に前記マイクロチャネルの前記中心線に関して前記第1の位置と実質的に反対の第2の位置で存在する少なくとも1つの導線を通じて流れる電流を制御する制御ユニットを含む。
【0043】
本発明は、更に、計算手段において実行されると本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御する方法を実行させるためのコンピュータプログラム(computer program product)を提供する。
【0044】
更に、本発明は、本発明の実施形態によるコンピュータプログラムを記憶する機械読取り可能なデータ記憶デバイスと、ローカル又は広域電気通信ネットワーク上での本発明の実施形態によるコンピュータプログラムの伝送とを提供する。
【0045】
本発明の上記及び他の特徴、機能及び利点は、例示により本発明の原理を示す添付の図面と共に参照される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。この説明は、本発明の範囲を制限することなく、例のためにのみ与えられる。下で示される参照番号は、添付の図面に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来技術による、導線によって誘発される不均一磁場において作動させられる超常磁性線毛アクチュエータ要素を図示する。
【図2】有効ストローク及び回復ストロークを示す線毛ビートサイクルの例を図示する。
【図3】それらの協調を継時波で示す線毛の波を図示する。
【図4】本発明の一実施形態による連続磁気層を含む線毛アクチュエータ要素を図示する。
【図5】本発明の一実施形態による磁性粒子を含む線毛アクチュエータ要素を図式的に示す。
【図6】本発明の一実施形態によるマイクロ流体システムの一部分を図示する。
【図7】本発明の一実施形態によるマイクロ流体システムの一部分を図示する。
【図8】本発明の他の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分を図示する。
【図9】本発明の更に他の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分を図示する。
【図10】本発明の更に他の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分を図示する。
【図11】本発明の更に他の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分を図示する。
【図12】本発明の実施形態によるマイクロチャネルの壁にある導線によって発生する磁場に外部磁場が重畳される場合の磁場の勾配の方向を示す。
【図13】種々の位置に位置する導線によって作動させられる線毛アクチュエータ要素の有限要素シミュレーションを示す。
【図14】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのアプリケーションを図示する。
【図15a】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのアプリケーションを図示する。
【図15b】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのアプリケーションを図示する。
【図16】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのアプリケーションを図示する。
【図17a】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分及びその動作の原理を図示する。
【図17b】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分及びその動作の原理を図示する。
【図17c】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分及びその動作の原理を図示する。
【図17d】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分及びその動作の原理を図示する。
【図18】本発明の一実施形態による、曲がる線毛アクチュエータ要素及びこのような曲がる線毛アクチュエータ要素によって覆われた応答する表面を図示する。
【図19】本発明の一実施形態による曲がる線毛アクチュエータ要素の概略図である。
【図20】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムにおいて使用されるシステムコントローラを図式的に示す。
【図21】本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御する方法を実行するために使用されることができる処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
異なる図において、同じ引用符号は、同一又は類似した要素を参照する。
【0048】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、クレームのみによって限定される。請求項のいかなる参照符号も、範囲を制限することとして解釈されない。記載されている図面は、概略的なものであり、制限的なものではない。図中、幾つかの要素の大きさは、説明のため、誇張されている可能性があり、縮尺どおりには描かれていない。
【0049】
用語「含む(comprising)」が本明細書及びクレーム中で用いられる場合、他の要素又はステップを除外するものではない。不定冠詞又は定冠詞、例えば「a」、「an」、「the」が単数名詞を参照するときに用いられる場合、これは、そうでないことが明示的に述べられている場合を除き、複数のこの名詞を含む。
【0050】
更に、明細書中及びクレーム中において、第1の、第2の等の用語は、類似した要素間で区別するために用いられるのであり、時間的、空間的、階級的又は他のいかなる方式においても順列を表すものでは必ずしもない。このように用いられる用語は、適当な条件下で交換可能であり、ここに説明される本発明の実施形態は、ここに説明又は示されるのとは他の順序での動作が可能である。
【0051】
更に、説明及びクレーム中において、上等の用語は、説明のために用いられているのであり、相対的な位置を説明するために必ずしも用いられているのではない。このように用いられる用語は、適当な条件下で交換可能であり、ここに説明される本発明の実施形態は、ここに説明又は示されるのとは他の方向での動作が可能である。
【0052】
本明細書全体に亘って、「1つの実施形態」又は「一実施形態」は、その実施形態に関連して説明された特定の機能、構造又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。従って、本明細書全体に亘って種々の場所における「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」という用語の出現は、同一実施形態を全て参照しているわけでは必ずしもないが、そうであってもよい。更に、特定の機能、構造又は特徴は、本開示から当業者にとって明らかであるように、1つ又は複数の実施形態中でいかなる適切な態様においても組み合わせられることができる。
【0053】
同様に、本発明の実施形態の説明において、本開示の簡素化のため、また、種々の発明の側面の理解を助けるため、本発明の種々の特徴が、場合によっては、それに関連する単一の実施形態、図又は説明にまとめられている。しかしながら、この開示の方法は、クレームされた発明が、各クレーム中に明示的に列挙された特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するように解釈されるべきではない。むしろ、以下のクレームが反映するように、発明の側面は、単一の先行する開示された実施形態の全ての特徴よりも少ないものである。従って、詳細な説明に続くクレームは、ここでは、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各クレームは本発明の別個の実施形態としてそれぞれ別個のものである。
【0054】
更に、当業者に理解されるように、ここに説明される幾つかの実施形態は、他の実施形態に含まれる特徴の幾つかは含むが幾つかは含まず、異なった実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内にあり、異なった実施形態を形成する。例えば、以下のクレームにおいて、クレームされた実施形態の何れも、いかなる組み合わせにおいても用いられることができる。更に、実施形態の幾つかは、コンピュータシステムのプロセッサ又は機能を実行する他の手段によって実現される方法として又は方法の要素の組み合わせとしてここで説明される。従って、このような方法又は方法の要素を実行するための必要な命令を備えたプロセッサが、当該方法又は方法の要素を実行するための手段を形成する。更に、ここに説明された装置の実施形態の要素は、本発明を実行する目的で該要素によって実行される機能を実行するための手段の一例である。
【0055】
ここに与えられる説明において、多数の具体的な詳細が記述される。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細無しに実現されうることは理解されるべきである。他の場合においては、よく知られた方法、構造及び技術は、この説明の理解を妨げることがないように、詳細には示されない。
【0056】
第1の態様において、本発明は、磁気アクチュエータ、例えば、マイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体の運搬又は(局所的)混合若しくは誘導を可能にする磁気作動手段、を備えたマイクロ流体システムを提供する。第2の態様において、本発明はこの種のマイクロ流体システムを製造する方法を提供する。第3の態様において、本発明はマイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御する方法を提供する。
【0057】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、経済的で処理が簡単であると同時に、丈夫でコンパクトであり、複雑な流体に適している。
【0058】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、壁及びその長さに沿った中心線を有する少なくとも1つのマイクロチャネルを含む。マイクロ流体システムは、更に、少なくとも1つのマイクロチャネルの壁に第1の位置で取り付けられた複数の線毛アクチュエータ要素を有し、各線毛アクチュエータ要素は形状及び方向を有している。線毛アクチュエータ要素の形状及び/又は方向の変化を引き起こすために複数の線毛アクチュエータ要素への刺激(即ち磁場)を加えるための更なる手段が設けられる。本発明の実施形態によれば、複数の線毛アクチュエータ要素への刺激(即ち磁場)を加えるための手段は、マイクロチャネルの壁に第2の位置で組み込まれる少なくとも1つの導線によって形成され、前記第2の位置は、マイクロチャネルの中心線に関して第1の位置と実質的に反対である。
【0059】
本発明によるマイクロ流体システムは、バイオテクノロジーアプリケーション、例えばマイクロトータル分析システム、バイオリアクタ、マイクロ流体診断法、マイクロファクトリ、及び化学又は生化学マイクロプラント、バイオセンサ、高速DNA分離及びサイジング、細胞操作及び分離、医薬アプリケーション、特に局所的混合が必須であるハイスループット組み合わせ試験で、そして、例えばマイクロエレクトロニクスアプリケーションでのマイクロチャネル冷却システムで、使われることができる。
【0060】
本発明の一態様において、アクチュエータ要素が作用するべき方法は、自然により着想を与えられる。自然には、小さい尺度(即ち1〜100ミクロンのスケール)で流体を操作する種々の方法がある。見つかっている1つの特定のメカニズムは、微生物(例えばゾウリムシ(Paramecium)、テマリクラゲ(pleurobrachia)及びオパリナ(opaline))の外部表面上の脈打つ線毛の覆いによるものである。線毛運動性の清掃(ciliary motile clearance)が、また、汚濁物を除去するために哺乳類の気管支及び鼻において用いられている。線毛は、表面に付着した、例えば原生動物においては10μmの典型的長さ及び0.1μmの典型的直径を持つ小さな毛又は可撓性の棒として見ることができる。微生物の推進メカニズムの他には、線毛の他の機能は、えらの洗浄、摂食、排出及び生殖である。例えば、人間の気管は、粘液を肺から上方に運搬して出す線毛で覆われている。線毛は、また、長い軸で硬い基体に取り付いた固着性生物によって、摂食のための水流を生じるために用いられる。線毛運動と、軸の周期的な長短化との組み合わさった運動が、無秩序な渦を生じる。これは、周囲の流体の無秩序な濾過動作を生じる。
【0061】
上記の議論は、線毛がマイクロチャネルにおける流体の運搬及び/又は混合のために使われることができることを示す。線毛運動及び流れの仕組みは、長年動物学者及び流体機械学者に興味を持たれてきた。単一の線毛の鼓動は、2つの異なった段階、即ち、線毛が流体を所望の方向に送る速い有効ストローク(effective stroke)(図2の曲線1〜3)及び線毛が生成された流体運動に対してその影響を最小にしようとする回復ストローク(図2の曲線4〜7))に分けられることができる。自然において、流体運動は、生物の表面に亘って列を成した高濃度の線毛によって生じる。隣接した線毛の一方向への運動は位相がずれており、この現象は継時性(metachronism)と呼ばれている。このように、線毛の運動は、生物上を波が通過しているように見える。図3は、このような線毛の波8がそれらの協調を継時波として示しているところをを示す。線毛による流体の運動を説明するモデルは、J. Blakeによって「A model for the micro−structure in ciliated organisms」, J. Fluid. Mech. 55, p.1−23 (1972)において発表されている。この論文において、流体流れへの線毛の影響は、繊毛を、流体中で点力として見ることができる、その中心線上の「ストークスレット」の集合として現すことによってモデリングされると記載されている。時間に対してのこれらのストークスレットの運動は定まっており、結果として生じる流体流れは計算されることができる。単一の線毛による流れが計算されることができるだけでなく、継時波に従って移動する、無限の流体層を持つ単一の壁を覆う線毛の集合による流れも計算されることができる。
【0062】
好ましい本発明の態様におけるアプローチは、この原理を使用して、マイクロチャネルの壁を微小なアクチュエータ要素に基づく「人工線毛」、即ちそれらの形状及び/又は寸法を印加された磁場に応答して変化させる構造、によって覆うことによって、マイクロチャネルにおける線毛状流体操作を模倣する。それゆえに、本発明の一態様はマイクロ流体システム又はマイクロ流体流れデバイス、例えば、人工線毛の継時的な活動のための手段を有するポンプを提供する。
【0063】
本発明によれば、全ての適切な材料、即ち、例えば加えられた磁場に応答して機械的に変形することによってそれらの形状を変化させることができる材料が、人工の線毛又は線毛アクチュエータ要素を形成するために用いられることができる。大部分の本発明の好ましい実施形態によれば、アクチュエータ要素は、ポリマー材料に基づいてよい。適切な材料は、本「Electroactive Polymer (EAP) Actuators as Artificial Muscles」, ed. Bar−Cohen, SPIE Press, 2004に見られる。しかし、他の材料もアクチュエータ要素に用いられることができる。本発明のアクチュエータ要素を形成するために用いることができる材料は、形成されたアクチュエータ要素が以下の特徴を有するようなものでなければならない:
アクチュエータ要素は、柔軟(compliant)でなければならず(即ち固くない)、
アクチュエータ要素は、堅くあるべきであり、脆くないべきであり、
アクチュエータ要素は、曲がることにより又は形状を変化させることにより磁場に対して応答すべきであり、
アクチュエータ要素は、好ましくは、比較的安価な方法によって容易に処理可能であるべきである。
【0064】
アクチュエータ要素を形成するために用いる材料は、機能化されなければならないかもしれない。上記にまとめられたリストの第1、第2及び第4の特徴を考慮すると、アクチュエータの少なくとも一部にはポリマーが好ましい。本発明の用途にあまり適していない非常に脆いポリマー(例えばポリスチレン)を除いて、大部分の種類のポリマーが本発明では使われることができる。
【0065】
上記のため、本発明では、アクチュエータ要素は、好ましくは、ポリマー材料によって形成されるか、又はその構造の一部としてポリマー材料を含んでよい。
【0066】
従って、以下の説明で、本発明はポリマーアクチュエータ要素によって説明されている。しかし、上記のとおり、ポリマーとは異なる材料がアクチュエータ要素を形成するのに用いられるときにも本発明が使用されることができることは、当業者によって理解されなければならない。ポリマー材料は、通常、脆くはなく硬く、比較的安価であり、大きな歪み(最高10%)に対しても弾力的であり、単純な方法で大きな表面積で処理可能であるという観点を提供する。
【0067】
本発明の実施形態によれば、磁気作動を得るために、金属もアクチュエータ要素の少なくとも一部(例えばアイオノマーポリマー−金属複合物(IPMC))を形成するために用いられることができる。例えば、FeNi又は他の磁性材料が、アクチュエータ要素を形成するために用いられることができる。しかし、金属の不利な点は、機械的疲労及び処理のコストでありえる。
【0068】
他の実施形態によれば、磁場を加えることによってアクチュエータ要素を作動させることが可能であるために、アクチュエータ要素は、磁気特性を備えていなければならない。
【0069】
非磁性(例えばポリマーの)アクチュエータ要素10に磁気特性を与える1つの方法は、図4に示される種々の実施形態で示されるように、連続磁気層11を非磁性の、例えばポリマーの、アクチュエータ要素10に組み込むことによる。磁気特性を有するアクチュエータ要素10は、更なる説明において、磁気アクチュエータ要素10又は磁気特性を有するポリマーアクチュエータ要素10として称される。連続磁気層11は、アクチュエータ要素10の上(図4の上の図面)若しくは下(図4の中央の図面)に配置されることができ、又は、アクチュエータ要素10のボディ内、例えば真中に位置してよい(図4の下の図面)。連続磁気層11の位置は、その熱機械的特性と共に、磁気アクチュエータ要素10の「自然な」、初期の又は作動されていない形状、即ち平らな、上向きに曲がっている又は下向きに曲がっている形状、を決定する。連続磁気層11は、例えば、電気メッキを施されたパーマロイ(例えばNi−Fe)であってもよく、例えば、均一な層として堆積することができる。連続磁気層11は、0.1〜10μmの厚さを持っていてよい。簡単な磁化の方向は、堆積過程で決定されることができて、挙げられる例では、「平面」方向であってよい。均一な層の代わりに、連続磁気層11は、柔軟性を増すため、また、磁気アクチュエータ要素10の変形の容易化のため、パターン化されることもできる(図示せず)。
【0070】
ポリマーアクチュエータ要素10に磁気特性を与える他の方法は、ポリマーアクチュエータ要素10への磁性粒子12の組み込みである。ポリマーはこの場合、磁性粒子12が分散した「マトリックス」として機能することができ、これは図5に示され、以下ではポリマーマトリックス13と呼ばれる。磁性粒子12は、溶液でポリマーに加えられることができ、又は、後ほど重合されることができるモノマーに加えられることができる。次のステップで、ポリマーは、次に、任意の適切な方法によって、例えば湿式堆積技術、例えばスピンコーティングによって、マイクロ流体システムのマイクロチャネルの壁に塗布されることができる。磁性粒子12は、例えば図5の上2つの図にて示されるように球状でもよく、又は、図5の下の図にて示されるように細長く、例えば棒状でもよい。棒状の磁性粒子12は、それらが堆積プロセスの間、剪断流れによって自動的に配向しうるという利点がありうる。図5の上下の図にて示されるように、磁性粒子12はポリマーマトリックス13中でランダムに配置されることができ、又は、これらは、図5の中央の図にて示されるように、ポリマーマトリックス13中で規則的なパターン、例えば行及び/又は列を成すように配置又は配列されることができる。
【0071】
磁性粒子12は、例えば、強磁性又はフェリ磁性粒子であってよく、又は、例えばコバルト、ニッケル、鉄、フェライト等の元素を含む(超)常磁性粒子であってよい。本発明の実施形態によれば、特に、ポリマーの弾性回復が磁場変調と比較して遅いときは、磁性粒子12は超常磁性分子であってもよい、即ち、印加磁場が消されたときに残留磁場を有しないものであってもよい。磁場の長いオフタイムは、電力消費を節約することができる。
【0072】
堆積の間、正味の磁化が例えば磁気アクチュエータ要素10の長さ方向に向けられるように、磁性粒子12を移動して配向させるために、磁場が用いることができる。磁性粒子12が超常磁性分子である場合、堆積の最中に特定の方向の磁場を印加することは、分子双極相互作用のため、同方向へのアクチュエータ要素10の後の磁化を促進する。
【0073】
以下の説明において、ポリマーアクチュエータ要素等のアクチュエータ要素12は、また、アクチュエータ(例えばポリマーアクチュエータ又はマイクロポリマーアクチュエータ、アクチュエータ要素、マイクロポリマーアクチュエータ要素又はポリマーアクチュエータ要素)とも称されうる。これらの用語のいずれかが以下の説明において使われるとき、本発明による同じ微小なアクチュエータ要素が意味されることに注意されたい。
【0074】
好ましい実施形態において、磁気特性を有するアクチュエータ要素12は、作動されないとき、チャネル壁上でチャネル壁と実質的に直角をなす方向にある。実質的に直角とは、チャネル壁の垂線に対して好ましくは45°以下の角度を含んでよいことを意味する。磁気特性を有するアクチュエータ要素12が、作動されていないときに曲がった形状を有する場合、チャネル壁の垂線に対するその方向は、チャネル壁の垂線とアクチュエータ要素12の両方の端を通る直線との間に含まれる角度によって決定されてよい。
【0075】
本発明によれば、磁気特性を有するポリマーアクチュエータ要素10は、磁場を印加することによって作動させられることができる。磁場は、少なくとも1つのマイクロ流体システムのマイクロチャネルの壁に存在する少なくとも1つの導線を通じて電流を送ることによって発生させられることができる。前記少なくとも1つの導線は、壁上で、マイクロチャネルの中心線に関して、ポリマーアクチュエータ要素10が位置する位置、例えば壁に取り付けられた位置の実質的に反対の位置にある。マイクロ流体システムのマイクロチャネルに組み込まれ、マイクロチャネルの中心線に関して、磁気特性を有するポリマーアクチュエータ要素10の位置と実質的に反対に位置する導線を使用することは、マイクロチャネルの壁において、ポリマーアクチュエータ要素10がマイクロチャネルの壁に取り付けられるのと同じ位置に導線が位置する従来技術マイクロ流体システムと比べて、導線をポリマーアクチュエータ要素10の先端に近づけることを可能にする。これは、従来技術によるマイクロ流体システムの組み込まれた導線と同様の電流が本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの組み込まれた導線で送られると仮定した場合、ポリマーアクチュエータ要素10に作用する実効的な力を増加させる。
【0076】
本発明の実施形態は、磁性粒子12を含むポリマーアクチュエータ要素10によって説明される。しかしながら、これは例に過ぎず、本発明をいかなるようにも制限する意図はないことは理解されなければならない。磁気特性を有する、又は、形状及び/又は方向特性が磁場印加によって変わる、いかなる適切なアクチュエータ要素10も、本発明において使われることができる。
【0077】
図6において示される第1実施形態によれば、磁性粒子12を含むポリマーアクチュエータ要素10は、第1の位置でマイクロチャネル16の壁15の表面14に取り付けられる。マイクロチャネル16の中心線に関して第1の位置の実質的に反対側にある第2の位置で、2つの導線17a及び17bは、マイクロチャネル16の壁15に組み込まれる。この実施形態によれば、アクチュエータ要素10がマイクロチャネル16の壁15の底面に取り付けられる場合、組み込まれた導線17a及び17bは、アクチュエータ要素10の先端の両側においてポリマーアクチュエータ要素10の上に位置することができる。ポリマーアクチュエータ要素10の形状及び/又は方向の変化を引き起こすのに十分な大きさを有する磁場を生成するために、導線17a又は17bのうちの1つを通じて電流が送られることができる。電流は、好ましくは0.01A〜10A、好ましくは0.01〜5A、より好ましくは0.01A〜1Aであってよい。生成される磁場の大きさは、導線17a又は17bを通じて送られる電流次第である。
【0078】
生成された磁場は、ポリマーアクチュエータ要素10を作動させて曲げる、又はより一般的には、その形状を変える。これは、導線17a又は17bのうちの1つを通じて電流を送ることによって発生する磁場の勾配が、それぞれ導線17a、17bに向けられるからである。生成された磁場のため、アクチュエータ要素10は、式(1)に従って導線17a又は17bのそれぞれに向けられる力を受ける。力は、第1近似で、生成された磁場の勾配と平行である。これは、電流がどの導線17aか17bを通じて送られるかに依存して、アクチュエータ要素10が導線17a又は導線17bの方へ曲がるようにする。換言すれば、導線17a又は17bのうちの1つを通じて電流を送ることによって、磁気特性を有するポリマーアクチュエータ要素10は、動かされることができる。これは、図6の点線によって示される。
【0079】
ポリマーアクチュエータ要素10は、10〜200μm、典型的には50μmであってよい長さLを持っていてよく、1〜200μm、典型的には50μmの幅(図6を示す紙の平面において消える次元)を持っていてよい。磁性を有するポリマーアクチュエータ要素10は、0.1〜20μm、典型的には5μmの厚さを持っていてよい。マイクロチャネル16の直径dmは、好ましくは、導線17と、その最も伸びた(例えばまっすぐの)構成の(即ち、導線17a、17bが設けられるマイクロチャネル16の壁15に最も近くなった)ポリマーアクチュエータ要素10との間の距離dが、0〜20μm、好ましくは0〜5μm、最も好ましくは0〜1μmであるようなものであってよい。
【0080】
本実施形態によれば、複数のポリマーアクチュエータ要素10a、10b、10cがマイクロチャネル16の壁15の内面14に取り付けられるとき、導線17a〜dは引き続きのポリマーアクチュエータ要素10の間にあってもよい(図7を参照)。導線17a〜dが第1のポリマーアクチュエータ要素10a及び第2のポリマーアクチュエータ要素10bの間に位置する場合(図7を参照)、第1及び第2のポリマーアクチュエータ要素10a、10bの間の距離はSによって示されるとき、導線17a〜dの各々は、第1のポリマーアクチュエータ要素10aから第1の距離Sw1に、そして、第2のポリマーアクチュエータ要素10bからの第2の距離Sw2に、位置することができる。本発明の実施形態によれば、導線17a〜dのうちの少なくとも1つについて、Sw1はSw2に等しくてもよい。この場合、導線17a〜dのうちの少なくとも1つは、2つの引き続きのポリマーアクチュエータ要素10a、10bの間の中央に置かれることができる。好ましい実施形態によれば、この系の最初及び最後のものを除いて、全ての導線17a〜dは、2つの引き続きのポリマーアクチュエータ要素10a〜cの間で中央に置かれることができる。動作中、例えば、導線17bがポリマーアクチュエータ要素10a及び10bの間で中央にあり、電流が導線17bを通じて送られるとき、ポリマーアクチュエータ要素10a及び10bは同時に作動する。従って、好ましい実施形態によれば、第1の距離Sw1は、第2の距離Sw2と異なってもよい。例えば、第1の距離Sw1は、第2の距離Sw2より小さくてもよい。この場合、導線17a〜dの位置は、アクチュエータ要素10a〜cの位置に関して非対称であるので、単一のポリマーアクチュエータ要素10a〜cが、単一の導線17a〜dによってアドレスされることができる。Sw1がSw2より小さいとき、ポリマーアクチュエータ要素10a〜cはそのポリマーアクチュエータ要素10a〜cの最も近くに配置される導線17a〜dによって作動する。本発明の他の実施形態によれば、Sw2はSw1より小さくてもよい。
【0081】
本発明の更に他の実施形態によれば、各々のポリマーアクチュエータ要素10a、10bは、図8に示すように、作動のための2つの作動導線と関連してもよい。その構成では、ポリマーアクチュエータ要素10bとは独立して主にポリマーアクチュエータ要素10aを作動させるために、2つの導線17a及び17bが、ポリマーアクチュエータ要素10aの両側にそれぞれ距離SWL及びSWRの位置で配置されることができる更に2つの導線17c及び17dは、ポリマーアクチュエータ要素10bの両側に配置されることができる。導線17cは、ポリマーアクチュエータ要素10bを作動させるためのこの導線17cがアクチュエータ要素10aよりもポリマーアクチュエータ要素10bに近いように、ポリマーアクチュエータ要素10aを作動させるための導線17bから距離Sの位置でポリマーアクチュエータ要素10a及び10bの間に配置されることができる。電流が作動のために第1のポリマーアクチュエータ要素10aと関連する導線17a及び17bを通じて送られると、主にその第1のポリマーアクチュエータ要素10aが磁気刺激によってアドレスされる。電流が作動のために第2のポリマーアクチュエータ要素10bと関連する導線17c及び17dを通じて送られると、主にポリマーアクチュエータ要素10bがアドレスされる。これらの実施形態の利点は、複数のポリマーアクチュエータ要素10が個々にアドレスされることができるということである。これは、複雑な流体操作をつくるために有益でありえる。
【0082】
他の実施形態によれば、マイクロチャネル16の中心線に関してポリマーアクチュエータ要素10が取り付けられる第1の位置に対して反対の第2の位置のマイクロチャネル16の壁15は、壁15の内面14からマイクロチャネル16に延在する突起19(図9を参照)を含むことができる。突起19は、ポリマーアクチュエータ要素10の先端とマイクロチャネル16の壁15の内側表面14との間に残されたスペースよりも深くマイクロチャネル16内に延在するようなものであってもよい、即ち、図9にて示されるように、これらはポリマーアクチュエータ要素10との重複Oを示す。重複Oは、0〜50μm、好ましくは0〜20μm、最も好ましくは0〜3μmであってよい。これらの実施形態によれば、導線17は突起19内に位置することができる。これにより、導線17は、ポリマーアクチュエータ要素10の先端のより近くに位置することができる。それゆえに、マイクロ流体システムを、マイクロ流体システムのマイクロチャネル16内の流体を混合、運搬、誘導又は他のやり方で操作するのに用いられるのに適しているようにするのに十分にポリマーアクチュエータ要素10を作動させるために、より少ない電流が導線17を通じて送られなければならない。これらの実施形態によれば、導線17が突起19内に位置することができるので、これら導線は、第2の位置の壁15が突起19を含まないときよりもポリマーアクチュエータ要素10の先端により近く位置することができる。
【0083】
更に他の実施形態によれば、ポリマーアクチュエータ要素10の作動は、外部から印加された均一な磁場Bexternalと前述の実施形態と類似したやり方で導線17を通じて与えられる局所的に印加される不均一磁場との組合せによって誘起されることができる。外部磁場は、例えば大きい磁石(ミリメートルサイズ)又はコイル若しくは電磁石をマイクロチャネル16の隣に配置することによって得られることができる。外部磁場は、ポリマーアクチュエータ要素10が取り付けられるマイクロチャネル16の壁15と実質的に直角をなす方向に印加されることができる。少なくとも1つの導線17は、本発明の実施形態によれば、図10に示すように、マイクロチャネル16の壁15に、マイクロチャネル16の中心線に関してポリマーアクチュエータ要素10がマイクロチャネル16の壁15に取り付けられる第1の位置の実質的に反対の第2の位置で、組み込まれることができる。少なくとも1つの導線17は、ポリマーアクチュエータ要素10のすぐ上に位置してよい。
【0084】
本発明の本実施形態によれば、図11にて示されるように、複数のポリマーアクチュエータ要素10が、マイクロチャネル16の壁15の内側表面14に取り付けられることができ、独立した導線17a、17b、17cが、磁気特性を有する複数のポリマーアクチュエータ要素10の各々のために提供されることができる。磁場を生成するために導線17a、17b、17cを通じて電流が送られると、各々の導線17a、17b、17cは、外部から印加された均一な磁場Bexternalと共に、磁気特性を有するその対応するポリマーアクチュエータ要素10を動かす。このような方法で、磁気特性を有する各々のポリマーアクチュエータ要素10は、必要とされる流体操作を達成するために個々にアドレスされることができる。ポリマーアクチュエータ要素10を個々にアドレスすることによって、渦を運搬、混合又は作るのに有利でありうる、波状、相関又は非相関運動が発生させられることができる。個々にアドレスすることは、一組の弁がマイクロ流体回路において個々にアドレスされなければならない場合にも有用でありえる。
【0085】
図10及び11において示される本実施形態によれば、ポリマーアクチュエータ要素10を作動させるための総磁場勾配は、ポリマーアクチュエータ要素10の先端の位置において、ポリマーアクチュエータ要素10に対して、実質的に垂直であってもよい。これは、図12に見ることができ、ここで、矢印は、200mTの均一な垂直磁場と図10に示されるように位置する導線17を通じて電流IAを送ることによって発生する磁場との組合せである磁場の磁場勾配の方向を示す。式(1)によれば、ポリマーアクチュエータ要素10に対する力の方向は、場の勾配の方向と同一線上である。図12のシミュレーションにおいて、垂直な外部均一磁場の方向は、図10に示すように、下から上であってもよく、そして、導線17は、画像の平面から外に流れていてよい。ポリマーアクチュエータ要素10の運動は、紙の右側への方向である。他の実施形態によれば、導線17の電流はまた、画像の平面内に流入することができ、この場合、ポリマーアクチュエータ要素10は紙の左側へ移動する。換言すれば、ポリマーアクチュエータ要素10の運動の方向は、導線17を通じて送られる電流の方向に依存する。
【0086】
図12のシミュレーションの磁場勾配の値は、ポリマーアクチュエータ要素10の先端の位置において2.5・10A/mであり、ポリマーアクチュエータ要素に作用する面積あたりの力の良い近似値が、式(1)を考慮して与えられることができる。ポリマーアクチュエータ要素10の先端における均一な磁化及び均一な磁場勾配(先端は、ポリマーアクチュエータ要素10と等しい幅及び厚さを持ち、ポリマーアクチュエータ要素10のベース又は底面から最も離れて位置する表面として定義される)は:
【数6】


ここで、μは自由空間の透磁率であり、Msatは酸化鉄の飽和磁化(5・10A/m)であり、Cはポリマーアクチュエータ要素中での超常磁性酸化鉄粒子の体積濃度(0.1)であり、dHは磁場勾配(2.5・10A/m)であり、Aは先端の表面積である(1x1平方ミクロン)。
【0087】
点表面負荷による梁の先端における曲がりについての以下の基本的な式を方程式(2)と共に使用することで、ポリマーアクチュエータ要素10の曲がりは以下により近似されることができる。
【数7】


ここで、Lはポリマーアクチュエータ要素10の高さであり(例えば10ミクロン)、Wはポリマーアクチュエータ要素の幅であり(例えば1ミクロン)、Eはポリマーアクチュエータ要素のヤング率である。
【0088】
式(2)及び(3)を組み合わせることで、曲がりは6.3ミクロンに達することが分かり、これは、この例で与えられた寸法のポリマーアクチュエータ要素10でマイクロチャネル16中の流体運動を誘導するのに十分である。
【0089】
マイクロチャネル16の流体が磁性粒子12を含む場合、外部磁場Bexternalは、好ましくない粒子のクラスタ化及び引き続きのこれらのクラスタの沈降を避けるために、限定されるべきであることに注意されたい。
【0090】
本実施形態は、ポリマーアクチュエータ要素10の先端により近い導線17の配置及び外部磁場により大幅に向上したポリマーアクチュエータ要素10の磁化によって、従来技術と比較して同等であるか低い電流で改良された作動を提供する。外部磁場は、0〜1Tであってよく、好ましくは0〜500mTであり、最も好ましくは100〜200mTである。導線17の電流は、0.01A〜10Aであってよく、好ましくは0.01A〜5Aであり、最も好ましくは0.01A〜1Aである。
【0091】
第1の実施形態において既に議論されたのと同様に、ポリマーアクチュエータ要素10は、10〜200μm、典型的には50μmであってよい長さLを持っていてよく、1〜200μm、典型的には50μmの幅を持っていてよい。ポリマーアクチュエータ要素10は、0.1μm〜20μm、典型的には5μmの厚さを持っていてよい。マイクロチャネル16の直径dmは、好ましくは、導線17とポリマーアクチュエータ要素10との間の距離dが、0μm〜20μm、好ましくは0〜5μm、最も好ましくは0〜1μmであるようなものであってよい。
【0092】
本発明の上記の実施形態にて説明したように、導線17の位置のため、磁気特性を有するポリマーアクチュエータ要素10の良い作動及び従って良い変形が得られることができ、従って、本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、マイクロ流体システムのマイクロチャネル16中の流体の運搬、混合、誘導又は操作のために使われることに適している。以下で、このことが、超常磁性分子12を含むポリマーアクチュエータ要素10について説明される。
【0093】
導線17の隣に配置される超常磁性分子12は導線17を通じて電流を送ることによって発生する磁場によって磁化されることができ、このような方法で、分子12は磁化Mを得る。磁化された分子は、式(1)において表されるような並進力Fを受ける。この種の超常磁性分子12を含み、導線17の隣に配置されているポリマーアクチュエータ要素10は、磁場の勾配の方向に移動する、又は換言すれば、導線17の方へ進む。図13は、種々の位置に位置する導線17によって作動するアクチュエータ要素10の有限要素シミュレーションを示す。参照番号20〜24によって示される線は、以下の仮定の下に、ポリマーアクチュエータ要素10の先端における所与の曲がりのための導線17の可能な位置(座標x:y)を表す。
【0094】
低い磁気誘導(<20mT、ポリマーアクチュエータ要素10の飽和磁化に到達しない)。
【0095】
低い粒子割合(<0.2、力線は磁気ポリマーアクチュエータ要素10によってあまり修正されない)。
【0096】
小さい変形(力は変形によって変化しない)
【0097】
ポリマーアクチュエータ要素のヤング率=10Mpa(例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)又はPBMA(ポリブチルメタクリレート)はこの範囲のヤング率を有する)。
【0098】
導線を通じる電流=200mA。
【0099】
ポリマーアクチュエータ要素10のアスペクト比=40(20μmx0.5μm)。
【0100】
作製は、例えば、イオンビームリソグラフィによって与えられることができる。
【0101】
ポリマーアクチュエータ要素の酸化鉄ナノ粒子の割合=0.2。
【0102】
導線17が上の実施形態にて説明したように位置していれば、例えば、座標x:y=3:21又は5:12を有する位置(図13ではそれぞれA及びBと示される)では、ポリマーアクチュエータ要素10の変形は、ミクロンのオーダーに達し、それ故、効果的な流体操作が、本発明の実施形態によるマイクロ流体システムで起こることが分かる。
【0103】
上記の実施形態において、アクチュエータ要素10の運動は、例えば、マイクロ流体システムに置かれる1つ又は複数の磁気センサで測定されることができる。これは、流れ特性(例えばマイクロチャネル16の流体の流れ速度及び/又は粘性)を決定することを可能にしうる。更に、他の流体の詳細は、異なる作動周波数を使用することで測定されることができる。例えば、流体の細胞含有物(例えばヘマトクリット値)又は流体の凝固特性が、そのような方法で測定されることができる。
【0104】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの利点は、磁気作動の使用のため、これらが非常に複雑な体液(例えば唾液、痰又は血液)と動作できるということである。
【0105】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの他の利点は、これが、磁気作動がマイクロチャネルの壁にある導線によって発生する磁場によって得られる従来技術マイクロ流体システムと比較して同等であるか低い電流で、高められた作動効果を提供するということである。
【0106】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、バイオテクノロジー若しくはバイオメディカルアプリケーション例えばバイオセンサ、高速DNA分離及びサイジング、細胞操作及び分離、又は、医薬アプリケーション、特に局所的混合が必須であるハイスループット組み合わせ試験に用いられることができる。
【0107】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、マイクロエレクトロニクスアプリケーションでのマイクロチャネル冷却システムでも用いられることができる。
【0108】
例えば、本発明のマイクロ流体システムは、例えば、体液(例えば、唾液、痰、血液、血漿、間質液又は尿)中における、少なくとも1つの目標分子、例えばタンパク質、抗体、核酸(例えばDNR、RNA)、ペプチド、オリゴ又は多糖又は砂糖の検出のためのバイオセンサにおいて使われることができる。
【0109】
従って、流体(例えば液滴)の小さいサンプルがシステムに供給され、マイクロチャネルシステム内の流体の操作によって、流体は実際の検出が起こる検知位置に動かされる。本発明の実施形態によるマイクロ流体システム中で種々のセンサを用いることによって、異なる種類の目標分子が1回の分析で検出されることができる。
【0110】
図14及び15は、本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの可能なアプリケーションを示す。
【0111】
図14は、流体を混合するために使われることができるマイクロ流体システムの構成の一部切欠上面図である。この図において示されるマイクロ流体システムはマイクロチャネル16の上壁に組み込まれる複数の導線17、28を含むことができ、上壁は上面図の明快さのために取り去られている。図面中の矢印は、ポリマーアクチュエータ要素10の運動を示す。導線17、28及びポリマーアクチュエータ要素10は、互いに対して、図7に示される導線17a〜d及びポリマーアクチュエータ要素10と同じように位置するが、マイクロチャネル16に関するそれらの方向は異なっている。図7の実施形態において、ポリマーアクチュエータ要素10は、その幅がマイクロチャネル16の幅の方向になるように配置されている一方で、
【0112】
図14の実施形態では、アクチュエータ要素10はそれらの幅がマイクロチャネル16の長さの方向になるように配置されている。同様に、図7の実施形態では、導線はマイクロチャネル16の幅に沿って伸びている一方で、図14の実施形態では、導線はマイクロチャネル16に沿って伸びている。図7の実施形態は混合又はポンピングのために用いられることができる一方で、図14の実施形態は、主に混合のために用いられることができる。
【0113】
図15aは、流体を誘導するために用いられることができる本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの断面であり、図15bは一部切欠上面図である。この例によるマイクロ流体システムは、ポリマーアクチュエータ要素10の第1の側(与えられた例ではポリマーアクチュエータ要素10の右側)にあるストッパ要素29を含み、これは、ポリマーアクチュエータ要素10の第1の方向(与えられた例では図の右への方向であり、これは、与えられた例では、流体流れの方向でもある)への運動を制限する。導線17は、ポリマーアクチュエータ要素10の第2の側(与えられる例ではポリマーアクチュエータ要素10の左側)にあってよい。導線17を通じて電流を送ることによりポリマーアクチュエータ要素10を作動させることによって、マイクロチャネル16は開閉されることができる。図15において示される実施形態は、従って、弁動作を提供することができる。
【0114】
図16はポンピング又は混合のために使われることができる本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの一部切欠上面図である。この例によるマイクロ流体システムは複数のアクチュエータ要素10を示し、その全てがマイクロチャネル16の長さに亘って列を成しているわけではない。示される例において、2つのポリマーアクチュエータ要素10は、マイクロチャネル16の幅で互いの隣に配置される一方で、第3のポリマーアクチュエータ要素10は、マイクロチャネル16の幅の中央で、2つのポリマーアクチュエータ要素10から少し離れて配置される。マイクロ流体システムは、1つのポリマーアクチュエータ要素10の両側に配置された2つの導線17を備えており、マイクロチャネル16の幅方向で互いに隣り合った2つのポリマーアクチュエータ要素10の組の両側に配置された2つの導線17を備えている。これは、マイクロチャネル16の幅方向で互いに隣り合った2つのポリマーアクチュエータ要素10が共に作動させられることができ、そこから独立した所で、1つのポリマーアクチュエータ要素10が作動することができることを意味する。
【0115】
図17は、本発明の実施形態によるマイクロ流体システムの一部分を示す。マイクロ流体システムは、単一のポリマーアクチュエータ要素10及び2つの導線17a及び17bを含むことができる。図17において示される実施形態によるマイクロ流体システムにおいて、ポリマーアクチュエータ要素10の非対称の運動を誘発する導線17a、17bの特定の作動機構が用いられる。すでに上で議論されたように、これは特定の流体操作のために有利でありえる。図17aにおいて、電流は導線17a及び17bを通じておらず、この結果、ポリマーアクチュエータ要素10は変形しない。図17bにおいて、ワイヤ17bには図の平面に向かう方向に電流が流れており、ワイヤ17aには電流は流れていない。その結果、ポリマーアクチュエータ要素10は、導線17bの方へ変形する。図17cにおいて、同等の電流が反対方向にワイヤ17a及び17bに流れている、即ち、導線17bでは図の平面に入る方向に電流が流れ、導線17aでは図の平面から出る方向に電流が流れている。この場合、最も高い強度の磁場の点は、2つの導線17a及び17bの間にある、即ち、磁場の勾配は、その点の方を指しており、従って、ポリマーアクチュエータ要素10の上にある。この場合、ポリマーアクチュエータ要素10は、その最高勾配の位置の方へ引きつけられる。従って、ポリマーアクチュエータ要素10が取り付けられる壁15が平面に位置するとき、アクチュエータ要素10は実質的に壁15の平面と直角をなす方向に向かって上方に引きつけられ、それゆえ、図17cにて示されるように、まっすぐ伸びた変形をする。図17dにおいて、両方の導線17a、17bの電流は、図17cの場合について議論されたのと同じ方向で流れている。しかし、図17dにおいて示される場合には、電流の強度は図17cにおけるよりも低いが、導線17a及び17bについて両電流は依然として同等である。ポリマーアクチュエータ要素10は、図17cの場合について示されたのと同じ理由から、まっすぐ伸びた状態にあるが、電流の強度がより低いので、ポリマーアクチュエータ要素10は図17cの状況よりも伸びていない。図17c又は図17dの状況で電流が導線17a、17bを流れるのが止められると、ポリマーアクチュエータ要素10は図17aの初期位置に戻る、即ちその最初の形状になる。これは、ポリマーアクチュエータ要素10の非対称の運動が、前述のように電流を順番に印加することによって又は他のあらゆる類似した方法によって、成し遂げられることができることを示す。
【0116】
混合及びポンピングは、ポリマーアクチュエータ要素10の集合的な運動のために異なる駆動体系を必要とし、特に、隣接したポリマーアクチュエータ要素10間の運動の位相差が重要な役割を演ずることに注意されたい。
【0117】
以下に、本発明の実施形態によるマイクロ流体システムにおいて使われることができるポリマーアクチュエータ要素10が、更に詳細に説明される。
【0118】
図18及び図19は、ポリマーアクチュエータ要素10の例を示す。図18の左側部分は、印加された磁場に対して上下に曲がることで応答しうるアクチュエータ要素10を表す。図18の右側部分は、アクチュエータ要素10で覆われているマイクロチャネル16の壁15と直角をなす方向の横断面を示す。図18の右側部分のアクチュエータ要素10は、印加された磁場に左右に曲がることで応答しうる。ポリマーアクチュエータ要素10は、ポリマー微小電気機械システム即ちポリマーMEMS25と、ポリマーMEMS25をマイクロ流体システムのマイクロチャネル16の壁15の内面14に取り付けるための取付け手段26とを含んでよい。取付け手段26は、ポリマーMEMS25の第1の端に配置されてよい。ポリマーMEMS25は、梁の形状を有することができる。しかし、本発明は梁形のMEMSに限られるものではなく、ポリマーアクチュエータ要素10はまた、他の適切な形状(好ましくは例えば棒の形状のような細長い形状)を有するポリマーMEMS25を含むことができる。マイクロチャネル16の壁15の内面14に取り付けられるポリマーアクチュエータ要素10を形成する方法の実施形態が以下に説明される。ポリマーアクチュエータ要素10は、種々の可能な方法でマイクロチャネル16の壁15の内面14に固定することができる。ポリマーアクチュエータ要素10をマイクロチャネル16の壁15の内面14に取り付ける第1の方法は、例えばスピニング、蒸発又は他の適切な堆積技術によって、ポリマーアクチュエータ要素10が形成される材料の層を犠牲的層の上に堆積することによる。従って、最初に、犠牲的層はマイクロチャネル16の壁15の内面14に堆積されることができる。犠牲的層は、例えば、金属(例えばアルミニウム)、酸化物(例えばSiO)、窒化物(例えばSi)又はポリマーから成ることができる。犠牲的層を構成する材料は、ポリマーアクチュエータ要素10が形成される材料に関して、選択的にエッチングされることができて、適切な長さに亘ってマイクロチャネル16の壁15の内面14に堆積されることができるようなものであるべきである。本発明の実施形態によれば、犠牲的層は、例えば、マイクロチャネル16の壁15の全部の内側表面(典型的には数cmのオーダーの領域)に亘って堆積されることができる。しかし、他の実施形態によれば、犠牲的層が長さLに亘って堆積されることができ、この長さLは、アクチュエータ要素10の長さと同じ長さであってもよく、これは典型的には10〜200μmであってよい。使用される材料に依存して、犠牲的層は0.1〜10μmの厚さを持ちうる。
【0119】
次のステップにおいて、後にポリマーMEMS25を形成するポリマー材料の層は、犠牲的層の上に堆積され、犠牲的層の一方の側の隣にある。その後、犠牲的層はポリマーMEMS25の下の犠牲的層をエッチングすることによって取り除かれることができる。このような方法で、ポリマー層は(図18にて図示したように)長さLに亘って壁15の内面14から解放され、この部分がポリマーMEMS25を形成する。壁15の内面14に付属したままのポリマー層の部分は、ポリマーMEMS25をマイクロチャネル16に、特にマイクロチャネル16の壁15の内面14に、取り付けるための取付け手段26を形成する。
【0120】
本発明によって用いられることができるポリマーアクチュエータ要素10を形成する他の方法は、ポリマー材料を塗布する前に壁15の内面14のパターン化された表面エネルギーエンジニアリングを用いることによるものでありうる。その場合、ポリマーアクチュエータ要素10が取り付けられるマイクロチャネル16の壁15の内面14は、異なる表面エネルギーを有する領域が得られるようにパターン化される。これは、適切な技術(例えばリソグラフィ又は印刷)によってなされることができる。従って、ポリマーアクチュエータ要素10が造られる材料の層は堆積され、構築される。各々は当業者に知られる適切な技術でなされる。層は、壁15の内面14の幾つかの領域に強く付着し(以下で強い接着領域と称される)、壁15の内面14の他の領域に弱く付着する(以下で弱い接着領域と称される)。このとき、弱い接着領域では層の自発的な解放を得る一方で、層は強い接着領域では固定されたままであることが可能でありうる。このとき強い接着領域は付着手段26を形成する。そのような方法で、このように、自己形成の独立したポリマーアクチュエータ要素10を得ることが可能である。
【0121】
ポリマーMEMS25は、例えば、アクリレートポリマー、ポリエチレングリコールポリマー、共重合体を含むポリマーを含むことができ、又は、他のいかなる適切なポリマーも含むことができる。好ましくは、ポリマーMEMS25が形成されるポリマーは、それらがマイクロチャネル16の流体又はマイクロチャネル16の流体の成分と最小の(生)化学相互作用を持つように、生体適合性のポリマーであるべきである。あるいは、ポリマーアクチュエータ要素10は、非特異的な吸着特性及び湿潤性を制御するように変更を加えられることができる。ポリマーMEMS25は、例えば、複合材料を含むことができる。例えば、これは、粒子で充填されたマトリクス材料又は多層構造を含むことができる。「液晶ポリマーネットワーク材料」が本発明によって用いられることができることも言及しておく。
【0122】
ポリマーMEMS25は、例えば、磁性粒子で満たされたPDMS(ポリジメチルシロキサン)によっても製造されることができる。ポリマーMEMS25は、例えば磁性粒子で充填されたPDMSを鋳型中で硬化させることによって、ポリマーアクチュエータ要素10(例えばスラブ)に形成されることができる。この過程のための必要な鋳型は、例えば、UVリソグラフィー又はイオンビームリソグラフィをフォトレジストに実行することによって製作されることができ、このフォトレジストは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)又はSU−8(エポキシベースのフォトレジスト)であってよい。高アスペクト比のPDMSポリマーアクチュエータ要素10を鋳型から離すために、「Soft Lithography, Younan Xia and George M. Whitesides, annu. Rev. Mater. Sci. 1998 28:153−84」及び「Cells lying on a bed of microneedles, J.Tan, J.Tien, D.Pirone, D. Gray, K. Bhadriraju, C. Chen, PNAS, February 2003, vol.100, p.1484−1489」に示されるように二重鋳型方法が使われることができる。
【0123】
非作動状態で、即ち、磁場がポリマーアクチュエータ要素10に印加されない状態で、具体例において梁の形を有することができるポリマーMEMS25は、曲がっているか又はまっすぐである。ポリマーアクチュエータ要素10a〜dに印加される磁場は、これらを曲げるか又はまっすぐにする、換言すれば、それらを動かす。ポリマーアクチュエータ要素10の形状の変化は、マイクロ流体システムのマイクロチャネル16に存在する周囲の流体を動かす。図18において、ポリマーMEMS25の曲がりは矢印27によって示され、図19では、これは点線によって示される。ポリマーアクチュエータ要素10の1つの端の壁15の内面14への固定のため、得られた運動は、上述の線毛の運動に類似している。
【0124】
本発明の上記の態様によれば、ポリマーMEMSは、10〜200μm、典型的には50μmであってよい長さLを持っていてよく、1〜200μm、典型的には50μmの幅を持っていてよい。ポリマーMEMS25は、0.1〜20μm、典型的には5μmの厚さtを持っていてよい。
【0125】
マイクロチャネル16の壁15の内側表面14は、複数のまっすぐであるか曲がったポリマーアクチュエータ要素10で覆われていてよい。アクチュエータ要素10に印加される磁場の作用の下で、ポリマーMEMS25は、前後に動くことができる。アクチュエータ要素10は、例えば棒状形状又は梁状形状を有することができるポリマーMEMS25を含むことができ、これらの幅は、図の平面から出る方向に伸びる。
【0126】
マイクロチャネル16の壁15の内面14のポリマーアクチュエータ要素10は、1つ又は複数の行を成すように配置されることができる。本発明の実施形態によれば、アクチュエータ要素10は、アクチュエータ要素10の複数の行を成すように配列されることができ、これらは、例えば二次元アレイを形成するように配列されることができる。更に他の実施形態によれば、アクチュエータ要素10は、マイクロチャネル16の壁15の内面14にランダムに配置されることができる。
【0127】
流体を特定の方向に運搬することが可能であるためには、ポリマーアクチュエータ要素10の運動は、非対称でなければならない。即ち、「ビーティング」ストロークの性質は、「回復」ストロークのそれとは異ならなければならない。これは、速いビーティングストローク及びこれより大幅に遅い回復ストローク(図2を参照)によって達成されることができる。
【0128】
ポンピングデバイスについては、ポリマーアクチュエータ要素10の運動は、継時的なアクチュエータ手段によって提供される。これは、アクチュエータ要素10を個々に又は行ごとにアドレスする手段を提供することによってなされることができる。これは、マイクロチャネル壁構造の一部分であり、また、アクチュエータ要素10が個々に又は行ごとにアドレスされることができるようにするために局所磁場をつくることは可能にすることができるパターン化された伝導性のフィルムを提供することによって達成されることができる。
【0129】
マイクロチャネル16の壁15の内側表面14が、印加された磁場を作動させる構造パターンを含む場合、アクチュエータ要素10の個々の又は行ごとの刺激が、このようにして可能になる。時間的に適切なアドレシングによって、例えば波状の協調刺激が可能にされる。非協調又はランダムアクチュエータ手段、シンプレクティック継時的アクチュエータ手段及びアンティプレクティック継時的アクチュエータ手段は、本発明の範囲内に含まれる。
【0130】
他の態様において、本発明は更に、本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのマイクロチャネル16中の流体フローを制御するためのマイクロ流体システムにおける使用のためのシステムコントローラ40を提供する。システムコントローラ40(図20において図式的に示される)は、マイクロ流体システムのマイクロチャネル16中の流体流れを制御するためのマイクロ流体システムの全体的な動作を制御することができる。本態様によるシステムコントローラ40は、マイクロチャネル16の壁15に存在する少なくとも1つの導線17を通じて電流を印加することによって磁場発生器を制御するための制御ユニット42を含むことができる。電流は、例えば、電流供給ユニット43(例えば複数の電流又は電圧源)を通じて印加されることができる。少なくとも1つの導線17を制御することは、電流供給ユニット43に予め定められた又は計算された制御信号を供給することによって実行されることができる。システムコントローラ40がマイクロ流体システムの他の部分を制御するための他の制御ユニットを含むことができることは、当業者にとって明白である。しかし、そのような他の制御ユニットは、図20においては示されない。
【0131】
システムコントローラ40はコンピュータ(例えばマイクロプロセッサ)を含むことができ、これはマイクロコントローラであってもよい。特に、これは、プログラム可能なコントローラ(例えばプログラマブルデジタル論理デバイス(例えばプログラマブルアレイ論理(PAL))、プログラマブル論理アレイ、プログラマブルゲートアレイ、特にフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))を含むことができる。FPGAの使用は、例えばFPGAの必要な設定をダウンロードすることによって、マイクロ流体システムの引き続きのプログラミングを可能にする。システムコントローラ40は、設定可能なパラメータに従って作動されることができる。
【0132】
本発明の実施形態によるマイクロ流体システムのマイクロチャネル16を通じて流体フローを制御する方法は、図21に示されるような処理システム50において実装されることができる。図21は、少なくとも1つの形式のメモリ(例えばRAM、ROM、その他)を含むメモリサブシステム52に結合された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサ51を含む処理システム50の1つの構成を示す。プロセッサ51又は複数のプロセッサが、汎用目的又は特別目的プロセッサであってもよく、デバイス、例えば、他の機能を実行する他の部品を持つチップに含まれるものであってもよいことに注意されたい。このように、本発明の1つ又は複数の態様は、デジタル電子回路において、若しくはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアにおいて、又は、それらの組合せで、実行されることができる。処理システムは、少なくとも1つのディスクドライブ及び/又はCD−ROMドライブ及び/又はDVDドライブを有する記憶サブシステム53を含むことができる。幾つかの実施態様において、ディスプレイシステム、キーボード及びポインティングデバイスは、ユーザに手動で情報を入力させるためのユーザインタフェースサブシステム54の一部として含まれることができる。データ、例えば所望の得られた流れ速度の入力及び出力をするためのポートも含まれることができる。より多くの要素(例えばネットワーク接続、種々のデバイスに対するインタフェース、その他)が含まれることができるが、図21においては示されない。処理システム50の種々の要素は、バスサブシステム55を介する方法を含む種々の方法で結合されることができ、バスシステム55は、単純性のため単一のバスとして図21に示されているが、当業者には少なくとも1つのバスのシステムを含むと理解される。メモリサブシステム52のメモリは、場合によって、処理システム50に実行された場合ここに記載された方法実施形態のステップを実行する指示のセットの一部又は全体(いずれの場合でも56として示される)を有することができる。従って、図21に示されるような処理システム50は従来技術である一方で、粒子を操作する又は粒子を特徴付けする方法の側面を実施する命令を含むシステムは従来技術ではなく、従って図21は従来技術として示されてはいない。
【0133】
本発明は、また、コンピュータに実行されると、本発明の方法のいずれかの機能を提供する、コンピュータプログラムを含む。このようなコンピュータプログラムは、プログラマブルプロセッサによって実行されるための機械可読のコードを担持しているキャリア媒体に、有形に具体化されることができる。本発明は、従って、計算手段に実行されると、上述の方法のいずれかを実行するための指示を提供するコンピュータプログラムを担持しているキャリア媒体に関する。用語「キャリア媒体」は、実行のためにプロセッサに指示を提供することに参加するあらゆる媒体を参照する。この種の媒体は多くの形式を取ることができ、不揮発性媒体及び伝達媒体を含むがこれらに限定されるものではない。例えば、不揮発性媒体は、光学又は磁気ディスク、例えば大容量記憶装置の一部分である記憶装置を含む。一般的な形式の計算機可読媒体は、CD−ROM、DVD、フレキシブルディスク若しくはフロッピーディスク、テープ、メモリチップ又はカートリッジ、或いは、コンピュータが読むことができる他のあらゆる媒体を含む。種々の形式の計算機可読媒体は、プロセッサに実行させるための1つ又は複数の命令の1つ又は複数のシーケンスを担持するのに関与しうる。コンピュータプログラムは、また、ネットワーク(例えばLAN、WAN又はインターネット)の搬送波を経て送信されることができる。伝送媒体は、電波及び赤外線のデータ通信の最中に発生する音波又は光波の形式を取ることができる。伝送媒体は同軸ケーブル、銅導線及び光ファイバーを含み、これは、コンピュータ内のバスを含む導線を含む。
【0134】
本発明によるデバイスに関して好ましい実施形態、特定の構造及び構成、更には材料が説明されたが、本発明の範囲及び精神から離れることなく形式及び詳細に種々の変化又は変更がなされることができることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマイクロチャネルを含み、該マイクロチャネルは壁及び当該マイクロチャネルの長さに沿って中心線を有する、マイクロ流体システムであって、
該マイクロ流体システムは更に、
第1の位置で前記壁の表面に取り付けられた複数の線毛アクチュエータ要素であって、各線毛アクチュエータ要素は形状及び方向を有する、複数の繊毛アクチュエータ要素と、
前記複数の線毛アクチュエータ要素に磁場を加えて前記複数の線毛アクチュエータ要素の前記形状及び/又は方向の変化を引き起こすための磁場発生器と
を含み、
前記複数の線毛アクチュエータ要素に前記磁場を加えるための前記磁場発生器は、前記マイクロチャネルの前記壁に第2の位置で組み込まれる少なくとも1つの導線によって形成され、前記第2の位置は、前記マイクロチャネルの前記中心線に関して前記第1の位置と実質的に反対である、マイクロ流体システム。
【請求項2】
前記複数の線毛アクチュエータ要素は実質的に列を成すように配置され、前記マイクロ流体システムは、前記壁に前記第2の位置で組み込まれる複数の導線を含み、2つの引き続きの線毛アクチュエータ要素の各々の間に導線が位置する、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項3】
前記マイクロ流体システムは、前記壁に前記第2の位置で組み込まれる複数の導線を含み、前記複数の線毛アクチュエータ要素の各々について別個の導線が設けられる、請求項1に記載のマイクロ流体システム。
【請求項4】
前記マイクロチャネルの前記壁は、前記第2の位置で少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの導線は、前記壁の前記少なくとも1つの突起内に位置する、請求項1乃至3の何れか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの突起は、前記線毛アクチュエータ要素と0μm〜10μmの重なりを示す、請求項4に記載のマイクロ流体システム。
【請求項6】
更に外部磁場発生器を含む、請求項1乃至5の何れか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項7】
前記複数の線毛アクチュエータ要素は、ポリマーアクチュエータ要素である、請求項1乃至6の何れか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項8】
前記ポリマーアクチュエータ要素は、ポリマーMEMSを含む、請求項7に記載のマイクロ流体システム。
【請求項9】
前記線毛アクチュエータ要素は、均一な連続磁気層、パターン化された連続磁気層及び磁性粒子のうちの1つを含む、請求項1乃至8の何れか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項10】
更に、前記複数の線毛アクチュエータ要素の運動を測定するための少なくとも1つの磁気センサを含む、請求項1乃至9の何れか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の運動を制限するための少なくとも1つのストッパ要素を含む、請求項1乃至10の何れか1項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のマイクロ流体システムの、バイオテクノロジー、医薬、電気又は電子のアプリケーションにおける使用。
【請求項13】
少なくとも1つのマイクロチャネルを含み、該マイクロチャネルは壁及び当該マイクロチャネルの長さに沿って中心線を有する、マイクロ流体システムを製造する方法であって、
前記少なくとも1つのマイクロチャネルの壁の内側表面に、第1の位置で取り付けられる複数の繊毛アクチュエータ要素を設けるステップと、
前記少なくとも1つのマイクロチャネルの前記壁に第2の位置で少なくとも1つの導線を設けるステップと
を含み、
前記第2の位置は、前記マイクロチャネルの前記中心線に関して前記第1の位置と実質的に反対である、方法。
【請求項14】
前記アクチュエータ要素は、ポリマーMEMSと、該ポリマーMEMSを前記マイクロチャネルの前記壁の前記内側表面に取り付ける取付け手段とを含み、前記ポリマーMEMSは、磁性粒子で充填されたポリジメチルシロキサン(PDMS)を鋳型中で硬化させることによってポリマーアクチュエータ要素に形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
当該方法のために必要な鋳型は、UVリソグラフィー又はイオンビームリソグラフィを、ポリメチルメタクリレート及びエポキシベースのフォトレジストからなる群から選択されるフォトレジストに実行することによって作製される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複数の導線を提供するステップを含み、
これら複数の導線の提供は、2つの引き続きの線毛アクチュエータ要素の各々の間に導線を設けることによって実行される、請求項13乃至15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
複数の導線を提供するステップを含み、
これら複数の導線の提供は、2つの引き続きの線毛アクチュエータ要素の各々の間に導線を設けることによって実行される、請求項13乃至15の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
更に、前記マイクロチャネルの前記壁に前記第2の位置で少なくとも1つの突起を設けることを含み、
前記少なくとも1つの導線の提供は、前記少なくとも1つの導線を前記壁の前記少なくとも1つの突起内に設けることによって実行される、請求項13乃至17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
更に、少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の移動を制限するための少なくとも1つのストッパ要素を設けるステップを含む、請求項13乃至18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
マイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御する方法であって、
前記マイクロチャネルは、該マイクロチャネルの長さに沿った中心線及び壁を有し、前記マイクロチャネルの前記壁は、複数の線毛アクチュエータ要素を第1の位置で有し、前記線毛アクチュエータ要素は、各々が形状及び方向を有し、
当該方法は、前記線毛アクチュエータ要素に磁場を加えて少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の前記形状及び/又は方向の変化を生じさせるために前記マイクロチャネルの前記壁に前記マイクロチャネルの前記中心線に関して前記第1の位置と実質的に反対の第2の位置で存在する少なくとも1つの導線を通じて電流を印加するステップを含む、方法。
【請求項21】
少なくとも1つの導線を通じての電流の印加は、0.1A〜10Aの電流を印加することにより実行される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの導線を通じての電流の印加は、0.1A〜10Aの電流を印加することにより実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項20乃至22の何れか1項に記載の方法の、バイオテクノロジー、医薬、電気又は電子のアプリケーションにおける使用。
【請求項24】
マイクロ流体システムのマイクロチャネルを通じる流体流れを制御するコントローラであって、
前記マイクロチャネルは該マイクロチャネルの長さに沿った中心線及び壁を有し、前記マイクロチャネルの前記壁は第1の位置で複数の線毛アクチュエータ要素を有し、前記線毛アクチュエータ要素は各々が形状及び方向を有し、
当該コントローラは、前記線毛アクチュエータ要素に磁場を加えて少なくとも1つの線毛アクチュエータ要素の前記形状及び/又は方向の変化を生じさせるために前記マイクロチャネルの前記壁に前記マイクロチャネルの前記中心線に関して前記第1の位置と実質的に反対の第2の位置で存在する少なくとも1つの導線を通じて流れる電流を制御する制御ユニットを含む、コントローラ。
【請求項25】
計算手段において実行されると請求項20乃至22の何れか1項に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項26】
請求項25に記載のコンピュータプログラムを記憶する機械読取り可能なデータ記憶デバイス。
【請求項27】
ローカル又は広域電気通信ネットワーク上での請求項25に記載のコンピュータプログラムの伝送。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15a】
image rotate

【図15b】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17a】
image rotate

【図17b】
image rotate

【図17c】
image rotate

【図17d】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−521285(P2010−521285A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553251(P2009−553251)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050857
【国際公開番号】WO2008/110975
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(505307806)スティッチング ダッチ ポリマー インスティテュート (18)
【Fターム(参考)】