説明

アンテナ装置、監視装置、および車両

【課題】機械的稼動部がなく、広い範囲に複数のビーム方向を形成できる安価なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】誘電体基板630上に形成された、それぞれ給電部を有する複数のアンテナ素子600、610と、アンテナ素子600、610のそれぞれに対向する複数の反射部を有する反射板620とを備える。各反射部は、対向する各アンテナ素子600、610と互いに平行であり、各アンテナ素子600、610のビーム方向は、各アンテナ素子600、610が形成されている誘電体基板630面を基準とする仰角に関しては、各アンテナ素子600、610と対向する反射部との距離を各アンテナ素子600、610毎に異ならせることによって、互いに異ならせている。各アンテナ素子600、610の仰角が異なるビーム方向を組み合わせることにより、広い指向性を実現している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のビームを利用するアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置および車両に関する。例えば、車載レーダ用アンテナ等に適用できる小型平面アンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の進行方向にある障害物を検知する車両監視装置などでは、広い範囲で障害物の位置を精度よく検出できるアンテナが求められていた。そのためには、広い範囲で異なる方向に複数のビームが向くようにしなければならない。
【0003】
このように、異なる方向に複数のビームが向くようにするために、複数のアンテナ装置をビーム方向が互いに異なる向きになるように設置してもよいが、この場合には複数のアンテナ装置が必要となり、また個々に設置しなければならないので、それぞれのビーム方向を調整して設置するのが面倒であった。
【0004】
また、広い範囲で異なる方向に複数のビームが向くようにする別の構成として、主ビーム方向を切り替えるタイプのアンテナ装置が知られている。その主ビーム方向の切替が可能なアンテナ装置の代表例の1つは、機械式ビーム走査アンテナ装置である。このアンテナ装置は、サーチ角度の面内で鋭く収束されたアンテナローブを持ったアンテナを機械的に回動することにより、主ビームの方向を制御するものである。
【0005】
また、別の代表的な主ビーム方向の切替が可能なアンテナ装置として、電子式ビーム走査アンテナ装置がある(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。この装置は、アンテナ素子の励振係数の相対位相によりビーム方向または放射パターンを制御するものである。
【0006】
図26は、特許文献1に開示されている電子式ビーム走査アンテナ装置のブロック図を示している。このアンテナ装置は、自動車のような移動体の前面に搭載され、移動体の進行方向に合わせて、電波ビームの放射方向を切り替えるものである。
【0007】
この電子式ビーム走査アンテナ装置は、複数のアンテナ素子91、91、…と、各々のアンテナ素子91、91、…に対応して設けられる複数の移相器92、92、…とからなるフェーズドアレイアンテナを備えている。また、ステアリングの回転角度計や横方向加速度計等によって構成される進行方向検知装置93と、フェーズドアレイアンテナのビーム方向を切り替える切り替え装置94を備えている。また、フェーズドアレイアンテナから放射する電波の送信信号を作成するとともに、フェーズドアレイアンテナで受波した反射波からなる受信信号を受信して処理する送受信装置95を備えている。
【0008】
切り替え装置94は、進行方向検知装置93から出力される制御信号によって制御されて、移相器92、92、…の移相シフト量を調整して、フェーズドアレイアンテナから放射される電波ビームBが、図26に示すようにB、B、Bというように、自動車の進行方向に向くように切り替える。
【0009】
なお、複数のアンテナ素子を配置して、広い範囲に複数のビーム方向を形成させるアンテナ装置も知られている。たとえば、ビームの放射方向を立体的(円錐形状)に形成させるようにしたアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
特許文献2に開示されているアンテナ装置は、そのアンテナ素子で形成される平面に対する主ビームの仰角が等しいアンテナ素子を、同一平面上に、それぞれの主ビームの水平方向の向きが異なるように複数配置させることにより、ビームの放射方向を円錐形状にして広い範囲のビーム方向の形成を実現している。
【0011】
なお、本明細書においては、アンテナ素子で形成される平面を「水平面」とし、「仰角」とは、その水平面に垂直な軸に対する角度を言うものとする。したがって、水平方向の向きとは、アンテナ素子で形成される平面における向きを言う。
【0012】
図27を用いて、本明細書における「仰角」及び「水平方向」について説明する。82は、アンテナ素子80が形成されている平面を示しており、本明細書では、この平面をアンテナ素子80の水平面と呼ぶ。そして、アンテナ素子80から放射される主ビーム方向81の、水平面82における向きを、ビームの水平方向83と呼ぶ。そして、水平面82に垂直でビームの水平方向83を含む平面84において、主ビーム方向81が水平面82に垂直な軸となす角度θを「仰角」と呼ぶ。また、主ビーム方向81を含む、水平面82に垂直な平面84における、主ビーム方向81の向きを「仰角方向」と呼ぶ。
【0013】
つまり、図27に示すように、アンテナ素子の中心を座標原点とし、アンテナ素子を左右対称とする対称軸をY軸、アンテナ素子で形成される水平面82がX−Y平面となるような座標軸を定義した場合、主ビーム方向81の、X軸からの角度φとなるX−Y平面上における向きが、ビームの水平方向83となる。そして、ビームの水平方向83を含むX−Y平面82に垂直な平面84における、主ビーム方向81がZ軸となす角度が仰角θとなる。なお、図27は、ビームの水平方向83のX軸からの角度φが約50°の場合を示している。
【特許文献1】特開平2−287180号公報
【特許文献2】特開2005−72915号公報
【非特許文献1】吉田孝監修「改訂レーダ技術」社団法人電子情報通信学会、1996年10月1日、P.117−137
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の機械式ビーム走査アンテナ装置では、アンテナ自体や給電ホーン等のアンテナ装置を構成するいずれかの部位を機械的に回転させるため、機械的な損耗が生じること、さらに可動質量体の慣性に基づいて比較的多くの時間を必要とすること、機械的駆動装置のコストがかかること、サイズが大きくなること、といった多くの課題がある。
【0015】
一方、電子式ビーム走査アンテナ装置においても、多数の位相制御器が必要なので、実施コストが高くなるという問題があった。
【0016】
さらに、水平方向のみが異なる方向に複数の主ビームを形成させる複数のアンテナ素子を備えた特許文献2に記載のアンテナ装置では、水平方向のみが異なる機能しかなく、いろいろな仰角方向を実現できていない問題があった。
【0017】
本発明は、上述した従来の課題を解決するもので、機械的稼動部がなく、安価で、広い範囲に複数の異なる仰角方向のビーム方向を持つアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置および車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した第1の課題を解決するために、第1の本発明は、
それぞれ給電部を有している複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対向する複数の反射部とを備えたアンテナ装置において、
前記各アンテナ素子は、各誘電体基板上の導体で、同一平面上もしくは互いに平行な平面上に形成されており、それぞれ、所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ素子と、前記対称軸上で前記ループ素子上に設けられた一対の迂回素子とを有し、
前記給電部は、前記対称軸に対して少なくとも一方側の前記ループ素子上に設けられ、
前記各アンテナ素子の前記対称軸の方向は互いに同じであり、
前記各反射部は、対向する前記各アンテナ素子と互いに平行な平面上にあり、
前記各アンテナ素子と対向する前記各反射部との距離は、前記アンテナ素子毎に異なっており、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれのビーム方向は、前記各アンテナ素子が形成されている平面に垂直な軸を基準とする仰角に関しては、前記反射板との距離が異なることによって、互いに異なっている、アンテナ装置である。
【0019】
また、第2の本発明は、
前記各アンテナ素子は、前記各誘電体基板の表面に形成された導体層の一部を削剥することにより形成されたスロットにより、前記ループ素子および前記一対の迂回素子が形成されており、
前記給電部は、前記ループ素子上に設けられているのに代えて、前記対称軸に対して少なくとも一方側の前記ループ素子の所定の位置の近傍に設けられている、第1の本発明のアンテナ装置である。
【0020】
また、第3の本発明は、
前記複数の反射部は、1枚の反射板で構成されている、第1または第2の本発明のアンテナ装置である。
【0021】
また、第4の本発明は、
前記ループ素子は、対向する頂点に対応する部位が前記対称軸上にある菱形形状であり、
前記ループ素子の前記菱形形状の1辺の長さは、1/4〜3/8波長の長さであり、
前記一対の迂回素子は、それぞれ、1/4波長の長さであり、かつ前記頂点に対応する部位から前記菱形形状の外側または内側に向けて設けられた、折り返した形状の突起部である、第1または第2の本発明のアンテナ装置である。
【0022】
また、第5の本発明は、
前記アンテナ素子は、複数の構成部からなっており、
それぞれの前記構成部は、前記所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ部位と、前記対称軸上で前記ループ部位上に前記ループ部位の外側に向けて設けられた一対の迂回部位とを有しており、
前記各構成部は、それぞれの前記迂回部位同士が連結されて前記対称軸上に構成されている、第1または第2の本発明のアンテナ装置である。
【0023】
また、第6の本発明は、
前記アンテナ素子の構成部の数が、前記各アンテナ素子毎に異なっている、第5の本発明のアンテナ装置である。
【0024】
また、第7の本発明は、
前記誘電体基板の裏面には、マイクロストリップラインが設けられており、
前記給電部が設けられている前記所定の位置の近傍で、前記誘電体基板を挟んで、前記ループ素子と前記マイクロストリップラインが対向しており、
前記各アンテナ素子は、それぞれ前記給電部を複数有しており、
前記各アンテナ素子が有している複数の前記給電部のうち、給電する給電部を切り替える給電切り替え部をさらに備え、
前記給電切り替え部は、前記マイクロストリップライン上の前記所定の位置から1/4波長の奇数倍の距離の位置に設けられており、前記各給電部のそれぞれに対して短絡と給電とを切り替える、第2の本発明のアンテナ装置である。
【0025】
また、第8の本発明は、
前記誘電体基板の裏面には、マイクロストリップラインが設けられており、
前記給電部が設けられている前記所定の位置の近傍で、前記誘電体基板を挟んで、前記ループ素子と前記マイクロストリップラインが対向しており、
前記各アンテナ素子は、それぞれ前記給電部を複数有しており、
前記各アンテナ素子が有している複数の前記給電部のうち、給電する給電部を切り替える給電切り替え部をさらに備え、
前記給電切り替え部は、前記マイクロストリップライン上の前記所定の位置から1/2波長の整数倍の距離の位置に設けられており、前記各給電部のそれぞれに対して開放と給電とを切り替える、第2の本発明のアンテナ装置である。
【0026】
また、第9の本発明は、
電波を送出して、その電波が反射した電波を受信することにより物体や人体の対象物を検出する監視装置において、
広角の単一ビームの電波を送出する、またはそれより狭い範囲の複数のビーム方向の電波を送出する送信アンテナ部と、
第1または第2の本発明のアンテナ装置を有し、前記送信アンテナ部が送信し対象物で反射した電波を複数のビーム方向で受信する受信アンテナ部と、
前記電波として送出するための信号を前記送信アンテナ部に伝達する送信部と、
前記受信アンテナ部が受信した電波を、前記受信アンテナ部から信号として伝達され検出する受信部と、
前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子が有している複数の給電部のうちの、給電する給電部の切り替えを制御して、前記受信アンテナ部で受信する電波の方向を切り替えて受信させることにより監視領域を制御するビーム切り替え部とを備えた監視装置である。
【0027】
また、第10の本発明は、
前記送信アンテナ部は、第1または第2の本発明のアンテナ装置を有する、前記広角の単一ビームよりも狭い範囲の複数のビーム方向の電波を送出するものであり、
前記ビーム切り替え部は、前記送信アンテナ部が有する前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子が有している複数の給電部のうちの、給電する給電部の切り替えも制御して、前記送信アンテナ部が送出する電波のビーム方向も切り替え、監視領域を制御する、第9の本発明の監視装置である。
【0028】
また、第11の本発明は、
第9または第10の本発明の監視装置を搭載した車両である。
【0029】
また、第12の本発明は、
前記監視装置が、前記ビーム方向が車両前方の左右方向に切り替えられる向きで、車両の前方を監視する位置に取り付けられている、第11の本発明の車両である。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、アンテナ素子と反射板間の距離をアンテナ素子毎に異なる構成とすることにより、各アンテナ素子から放射される主ビームの仰角を異ならせているので、機械的稼動部がなく、安価で、広い範囲に複数の異なる仰角方向のビーム方向を持つアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置および車両を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す図である。以下、アンテナ素子を例えばεr=2.26の誘電体基板上に作成した場合について、その動作周波数を26GHz、1波長(1実効波長)を8.2mmとして説明する。また、説明の都合上、各図に示すような座標軸を定義している。
【0033】
図1(a)は、本実施の形態1に係るアンテナ装置10の構成を示す斜視図である。図1(b)は、本実施の形態1に係るアンテナ装置10の構成を示す矢視図であり、図1(a)の矢印方向、すなわち+X側から見た図である。
【0034】
本実施の形態1に係るアンテナ装置10は、図1に示すように、2つの線状迂回ループアンテナ素子100及び110と、反射板120を備えている。なお、線状迂回ループアンテナ素子100及び110は、通常は、誘電体基板上に形成させたり筐体等に取り付けたりするが、ここでは、その誘電体基板などの図示は省略している。
【0035】
なお、線状迂回ループアンテナ素子100及び110が、本発明の複数のアンテナ素子の一例にあたる。また、反射板120の、線状迂回ループアンテナ素子100に対向している部分、及び線状迂回ループアンテナ素子110に対向している部分が、本発明の複数の反射部の一例にあたる。そして、反射板120が、本発明の、複数の反射部が構成している1枚の反射板の一例にあたる。
【0036】
図2は、図1の+Z軸方向から見た線状迂回ループアンテナ素子100の平面図である。なお、線状迂回ループアンテナ素子110も、線状迂回ループアンテナ素子100と同じ構成である。
【0037】
図1(a)及び図2において、線状ループ素子101a〜101dは、素子長L1が約1/3波長(2.7mm)の長さを有し、素子幅が例えば0.2mmの導体である。これらの線状ループ素子101a〜101dは、図2に示すように正方形形状に配置される。
【0038】
線状迂回素子102a及び102bは、全長が約1/4波長(2.1mm)で、長さL2が約1/8波長(1.0mm)の折り返し形状の導体であり、素子幅が例えば0.2mmである。線状迂回素子102aは、線状ループ素子101aと線状ループ素子101cの間に接続され、線状迂回素子102bは、線状ループ素子101bと線状ループ素子101dの間に接続される。ここでは、線状迂回素子102aと線状迂回素子102bとの結合や、線状迂回素子102aと線状ループ素子101a及び101cとの結合や、線状迂回素子102bと線状ループ素子101b及び101dとの結合による放射特性の劣化を最小限に抑えるために、線状迂回素子102a及び102bを正方形形状の外側に突出するように接続している。
【0039】
なお、正方形形状を形成している線状ループ素子101a〜101dが、本発明のループ素子の一例にあたり、線状迂回素子102a及び102bが、本発明の一対の迂回素子の一例にあたる。また、線状ループ素子101a〜101dで形成される正方形形状は、本発明の菱形形状の一例にあたる。また、線状迂回素子102aが接続される、線状ループ素子101aと線状ループ素子101cが接近している部分と、線状迂回素子102bが接続される、線状ループ素子101bと線状ループ素子101dが接近している部分とが、いずれも本発明の、対称軸上にある菱形形状の対向する頂点に対応する部位の一例である。また、正方形形状の外側に突出するように接続されている線状迂回素子102a及び102bの部分が、いずれも本発明の突起部の一例にあたる。
【0040】
給電ポート103が、線状ループ素子101aと線状ループ素子101bの間に設けられており、線状迂回ループアンテナ素子100に給電を行う。なお、線状ループ素子101cと線状ループ素子101dは接続されている。
【0041】
したがって、これらの線状ループ素子及び線状迂回素子で構成される本実施の形態1の線状迂回ループアンテナ素子100は、図2に示すように、正方形形状の対角を結ぶ線を対称軸とし、その対称軸上に線状迂回素子102a及び102bが配置されており、その対称軸に対して左右対称の形状をしている。
【0042】
このように構成された複数の線状迂回ループアンテナ素子100、110が、図1(a)に示すように、それらの対称軸の向きが同じになるように配置されている。また、ここでは、各線状迂回ループアンテナ素子100、110の給電ポート103、113がそれぞれ、対称軸に対して同じ側になるように配置されている。
【0043】
なお、給電ポート103及び113が、それぞれ本発明の給電部の一例にあたる。
【0044】
反射板120は導体板である。図1(b)に示すように、線状迂回ループアンテナ素子100は、そのXY平面が反射板120から約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板120に平行に配置されている。また、線状迂回ループアンテナ素子110は、そのXY平面が反射板120から約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板120に平行に配置されている。
【0045】
次に、上述した構成を有するアンテナ装置10の動作について、図1〜図6を用いて説明する。
【0046】
図3は、本実施の形態1に係るアンテナ装置10を構成する線状迂回ループアンテナ素子100の、線状ループ素子101a〜101d上の電流分布を示す図であり、図3(a)は電流振幅特性を、図3(b)は電流位相特性をそれぞれ示している。なお、図3の横軸に示されている記号(A)〜(D)は、図2に示されている記号(A)〜(D)の位置と対応している。
【0047】
図3(a)において、電流振幅特性201aは、線状ループ素子101aと線状ループ素子101bの電流振幅特性を示しており、線状ループ素子101aと線状ループ素子101bの接続部で電流振幅がピーク値をとることが確認できる。同様に、電流振幅特性201bは、線状ループ素子101cと線状ループ素子101dの電流振幅特性を示しており、線状ループ素子101cと線状ループ素子101dの接続部で電流振幅がピーク値をとることが確認できる。
【0048】
また、図3(b)において、電流位相特性202aは、線状ループ素子101aと線状ループ素子101bのY方向成分の電流位相特性を示しており、電流位相特性202bは、線状ループ素子101cと線状ループ素子101dのY方向成分の電流位相特性を示している。
【0049】
図3(a)及び(b)から、電流振幅のピーク点間におけるY方向成分の電流位相差は、約150度になることが確認できる。この電流位相差は、ピーク点間の距離が、線状ループ素子101aと線状迂回素子102aと線状ループ素子101cを足した長さ(あるいは、線状ループ素子101bと線状迂回素子102bと線状ループ素子101dを足した長さ)であるため、約11/12波長(330度)となり、またピーク点間でY方向成分の電流位相が180度反転するために生じる。
【0050】
ここで、線状ループ素子101a及び101bを一組のアンテナ素子として見なした場合、素子中央で電流のピーク点が存在するため、Y方向偏波の半波長ダイポールに近い動作になると考えられる。同様に、線状ループ素子101c及び101dを一組のアンテナ素子と見なした場合も、Y方向偏波の半波長ダイポールに近い動作になると考えられる。また、図3(b)において、これらのアンテナ素子の位相差が150度であることから、図1に示すアンテナ装置10は、X方向に2素子配列した半波長ダイポールアレーを150度の位相差を持たせて給電した場合とほぼ同様な動作と見なすことができる。
【0051】
次に、アンテナ装置10の動作を垂直(XZ)面に着目して説明する。垂直(XZ)面に着目すると、Y方向偏波の半波長ダイポールの指向性は等方性であるので、点波源でモデル化することができる。
【0052】
図4は、本実施の形態1に係るアンテナ装置10を構成する線状迂回ループアンテナ素子100の動作を点波源モデルで示す模式図である。
【0053】
具体的には、2素子の半波長ダイポールアレーを垂直(XZ)面に着目して2素子の点波源にモデル化した図である。点波源301aは、線状ループ素子101a及び線状ループ素子101bをモデル化したもので、点波源301bは、線状ループ素子101c及び線状ループ素子101dをモデル化したものである。ここで、図3(b)より、点波源301aの励振位相は点波源301bの励振位相に対して150度だけ進むことになる。
【0054】
また、反射板120の効果を、写像の原理を用いてモデル化すると、点波源301a及び301bから−Z側に2h(約0.84自由空間波長(10mm))離れた位置に、それぞれイメージ波源302a及び302bを想定することができる。このとき、イメージ波源302a及び302bの励振位相は、点波源301a及び301bの励振位相に対してそれぞれ180度反転することになる。
【0055】
また、点波源301a及び301bのX方向の位置は、線状ループ素子上の電流振幅のピーク点としているので、点波源301aと301bの間隔L3は約1/2波長(4.1mm)となる。
【0056】
以上のように構成された点波源301a、301bとイメージ波源302a、302bの4素子アレーによる放射は、±Z方向からチルト角α(55度)だけチルトした方向に主ビーム303a、303bが形成されることになる。しかし、実際は反射板120が存在するため、主ビーム303aの方向のみとなる。
【0057】
従って、線状迂回ループアンテナ素子110に関しては、そのXY平面の反射板120からの距離hが上記より短く、反射板120から約0.13自由空間波長(1.5mm)だけ+Z側に離れた位置に配置されているので、図4におけるイメージ波源302a、302bの位置が変化する。これにより、線状迂回ループアンテナ素子110の放射は、±Z方向から線状迂回ループアンテナ素子100より浅いチルト角α(25度)だけチルトした方向に形成される。
【0058】
図5は、本実施の形態1に係るアンテナ装置10の線状迂回ループアンテナ素子100の指向性を示す図である。図5(a)は垂直(XZ)面の指向性を、図5(b)は仰角θが55度における円錐面の指向性をそれぞれ示している。
【0059】
図5(a)において、指向性401は、給電ポート103から線状迂回ループアンテナ素子100を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、+X側に仰角θが55度となる方向にチルトした主ビームを得られることが確認できる。
【0060】
また、図5(b)において、指向性403は、図5(a)の指向性401と同様に、給電ポート103から線状迂回ループアンテナ素子100を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は10.5dBi、円錐面の半値角は57度、F/B比(主ビームとバックローブの比)は7dBである。
【0061】
一方、図6は、本実施の形態1に係るアンテナ装置10の線状迂回ループアンテナ素子110の指向性を示す図である。図6(a)は垂直(XZ)面の指向性を、図6(b)は仰角θが25度における円錐面の指向性をそれぞれ示している。
【0062】
図6(a)において、指向性501は、給電ポート113から線状迂回ループアンテナ素子110を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、+X側に仰角θが25度となる方向にチルトした主ビームを得られることが確認できる。
【0063】
また、図6(b)において、指向性503は、図6(a)の指向性501と同様に、給電ポート113から線状迂回ループアンテナ素子110を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。
【0064】
線状迂回ループアンテナ素子100に関しては、そのXY平面が、反射板120に対して約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置に配置されているのに対し、線状迂回ループアンテナ素子110に関しては、そのXY平面が、反射板120に対して約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置に配置されているので、反射板120との距離により、図4におけるイメージ波源302a、302bの位置が変化する。これにより、線状迂回ループアンテナ素子110の放射は、垂直(XZ)面の指向性の、±Z方向から線状迂回ループアンテナ素子100より浅いチルト角α(25度)だけチルトした方向に形成される。
【0065】
このように本実施の形態1によれば、正方形形状に形成された線状ループ素子101a〜101dとその正方形形状の対向する一組の頂点を結ぶ対称軸上に折り返し形状の線状迂回素子102a、102bを設け、正方形形状から所定の距離を隔てて反射板120を配置し、他の一つの頂点に給電ポート103、113を設け、その給電ポート103、113から励振して動作させる線状迂回ループアンテナ素子100、110を、それら線状迂回ループアンテナ素子100、110の各対称軸の向きが全て同じになるように、かつ反射板120との距離が各々の線状迂回ループアンテナ素子で異なるように複数(N個)配置することで、各線状迂回ループアンテナ素子の給電ポート(N個)の中から少なくとも1つを選択して給電する動作を切り替えることにより、XZ面において、+X側のN個の異なる仰角方向に主ビームを形成させることができる。
【0066】
つまり、本実施の形態1のアンテナ装置10の構成としたことにより、各線状迂回ループアンテナ素子100、110において、線状迂回素子102a及び線状迂回素子102bにより、線状ループ素子101a及び線状ループ素子101bと、線状ループ素子101c及び線状ループ素子101dとの電流位相がずれ、これにより放射される電波と、反射板120によって反射される電波の合成により、線状迂回ループアンテナ素子100、110の各平面鉛直方向からチルトした主ビームを形成させることができる。さらに、各線状迂回ループアンテナ素子100、110において、反射板120との距離が異なることからチルト角が異なり、それら複数の線状迂回ループアンテナ素子100、110の給電ポート103、113に選択的に給電することにより、簡易で安価な構成で、所望の方向に主ビームを形成するアンテナ装置を実現することができる。
【0067】
また、線状迂回ループアンテナ素子の給電ポートの位置が対称軸に対して、図1に示すアンテナ装置10とは反対側に配置されたアンテナ装置(図2の平面図において、給電ポートが対称軸の+X側の線状ループ素子上に配置された線状迂回ループアンテナ素子を有するアンテナ装置)を用いると、XZ面において、−X側の複数の異なる仰角方向に主ビームを形成させることができる。したがって、このような構成のアンテナ装置を図1に示すアンテナ装置10と並設させると、XZ面において、±X方向の広い範囲で複数の仰角方向に主ビームを形成させることができる。
【0068】
また、本実施の形態1のアンテナ装置10は、複数の線状迂回ループアンテナ素子100及び110に対向するそれぞれの反射部を有する反射板として、共通の平面状の反射板120を用いるので、複数の仰角方向の主ビームを有するアンテナ装置を、低コストで簡単な構成で実現できる。
【0069】
図7は、本実施の形態1の他の構成の線状迂回ループアンテナ素子の、+Z側方向から見た平面図を示している。
【0070】
上記に説明した本実施の形態1のアンテナ装置10では、その線状迂回ループアンテナ素子100、110の形状を、図2に示すように、線状迂回素子102a及び102bを、線状ループ素子101a〜101dで形成される正方形形状の外側に突出するように接続する形状としたが、これらの線状迂回素子を正方形形状の内側に向くように接続してもよい。
【0071】
図7(a)は、線状迂回素子を正方形形状の内側に向くように接続した形状の線状迂回ループアンテナ素子の平面図を示している。なお、図2と同じ構成部分には、同じ符号を用いている。
【0072】
図7(a)において、線状ループ素子101a〜101dは、図2に示す線状迂回ループアンテナ素子100と同様に、それぞれ素子長L1が約1/3波長(2.7mm)の長さを有し、素子幅が例えば0.2mmの導体であり、正方形形状に配置されている。
【0073】
線状迂回素子105a及び105bは、全長が約1/4波長(2.1mm)で、長さL4が約1/8波長(1.0mm)の折り返し形状の導体であり、素子幅が例えば0.2mmである。線状迂回素子105aは、線状ループ素子101aと線状ループ素子101cの間に接続され、線状迂回素子105bは、線状ループ素子101bと線状ループ素子101dの間に接続される。
【0074】
線状迂回素子105a及び105bは、図2に示した線状迂回ループアンテナ素子100の線状迂回素子102a及び102bと同じ形状であるが、正方形形状の内側に向くように接続される点が、図2の形状とは異なる。なお、この正方形形状の内側に向くように接続されている線状迂回素子105a及び105bの部分が、本発明の、菱形形状の内側に向けて設けられた突起部の一例にあたる。
【0075】
図7(a)に示す形状の線状迂回ループアンテナ素子を、反射板との距離が互いに異なるように複数配置させたアンテナ装置においても、アンテナ装置10と同様に、XZ面において、+X側の複数の異なる仰角方向に主ビームを形成させることができる。
【0076】
図2の構成の場合に比べて、線状迂回素子と線状ループ素子間の結合や、線状迂回素子同士間の結合により利得が低下するものの、アンテナ装置のY方向のサイズを小さくすることができる。したがって、用途に応じて線状迂回素子の接続する向きを、図2のようにするか図7(a)のようにするかを決定することが望ましい。
【0077】
また、アンテナ装置10では、各線状迂回ループアンテナ素子100、110の線状ループ素子101a〜101dが正方形形状を形成することとしたが、これらの線状ループ素子101a〜101dが菱形形状を形成していてもよい。さらに、動作周波数に応じて線状ループ素子及び線状迂回素子の長さを適切な長さに設定すれば、線状迂回素子を対称軸上に配置した左右対称の形状であれば、同様の効果が得られる。
【0078】
図7(b)は、線状ループ素子が正方形以外の形状を形成している線状迂回ループアンテナ素子の平面図を示している。ここでは、その一例として、線状ループ素子が円形状を形成する構成を示している。なお、図2と同じ構成部分には、同じ符号を用いている。
【0079】
図7(b)において、線状ループ素子106a及び106bは、それぞれ素子長L5が約2/3波長(5.5mm)の長さを有する半円形状の、素子幅が例えば0.2mmの導体である。これらの線状ループ素子106a及び106bは、図7(b)に示すように円形状に配置されている。
【0080】
線状迂回素子107a及び107bは、全長が約1/4波長(2.1mm)で、長さL6が約1/8波長(1.0mm)の折り返し形状の導体であり、素子幅が例えば0.2mmである。線状迂回素子107aは、線状ループ素子106aと線状ループ素子106bの各一方の端部間に接続され、線状迂回素子107bは、線状ループ素子106aと線状ループ素子106bのそれぞれの各もう一方の端部間に接続される。ここでは、線状迂回素子107aと線状迂回素子107bとの結合や、線状迂回素子107aと線状ループ素子106a及び106bとの結合や、線状迂回素子107bと線状ループ素子106a及び106bとの結合による放射特性の劣化を最小限に抑えるために、線状迂回素子107a及び107bを円形状の外側に突出するように接続している。
【0081】
また、給電ポート103が、線状ループ素子106aの中央部に設けられており、この線状迂回ループアンテナ素子に給電を行う。
【0082】
図7(b)に示すような形状の線状迂回ループアンテナ素子を、反射板との距離が互いに異なるように複数配置させたアンテナ装置においても、線状ループ素子の長さと線状迂回素子の長さを動作周波数に応じて適切な長さに設定することにより、アンテナ装置10と同様に、XZ面において、+X側の複数の異なる仰角方向に主ビームを形成させることができる。
【0083】
なお、図7(b)では、2本の線状ループ素子が円形状を形成することとしたが、対称軸に対して左右対称な楕円形状を形成する形状であってもよい。
【0084】
また、複数の線状ループ素子で形成する形状は、菱形や楕円形状などに限らず、対称軸に対して左右対称な形状を形成する形状であれば、同様の効果が得られる。
【0085】
また、形状が異なる複数の線状迂回ループアンテナ素子を、同じアンテナ装置上に設ける構成にしてもよい。例えば、図2や、図7(a)、図7(b)に示すような形状の線状迂回ループアンテナ素子を混在させて、同じアンテナ装置上に設けてもよい。この場合にも、各線状迂回ループアンテナ素子の対称軸の方向を互いに同じになるように配置し、各線状迂回ループアンテナ素子と反射板との距離を異ならせることによって各ビームの仰角を異ならせれば、同様の効果が得られる。
【0086】
また、線状ループ素子上に配置される給電ポートの位置をずらすことで、インピーダンスを合わせることができる。図2や図7(a)では線状ループ素子で形成される正方形形状の頂点の位置に、図7(b)では半円形状の線状ループ素子106aの中央部に、それぞれ給電ポート103を配置する構成として説明したが、周囲の回路構成に応じて、インピーダンスを合わせるために給電ポート103を配置する位置をずらせばよい。例えば、図2の場合には、線状ループ素子101a上や線状ループ素子101b上に、給電ポート103を配置するようにしてもよい。
【0087】
なお、本実施の形態1では、複数の線状迂回ループアンテナ素子に対向する反射部を有する反射板として、共通の平板状の反射板を用いることとしたが、複数の線状迂回ループアンテナ素子を同一平面状に配置し、それぞれの反射部を有する複数の反射板を段違いに配置して、それぞれの線状迂回ループアンテナ素子と反射板との距離を互いに異ならせるようにしてもよい。また、複数の反射部を有した1枚の段違い形状の反射板(図15に示す反射板620のような反射板)を用いてもよい。これらの場合、例えば、複数の線状迂回ループアンテナ素子を共通の誘電体基板上に形成させることができるので、この場合にも、複数の仰角方向の主ビームを有するアンテナ装置を、低コストで簡単な構成で実現できる。
【0088】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【0089】
図8(a)は、本実施の形態2のアンテナ装置11の構成を示す斜視図である。図8(b)は、本実施の形態2のアンテナ装置11の構成を示す矢視図であり、図8(a)の矢印方向、すなわち−Y側から見た図である。なお、図1と同じ構成部分については、同じ符号を用いている。
【0090】
本実施の形態2のアンテナ装置11は、図8に示すように、2つの線状迂回ループアンテナ素子111及び112と、反射板121を備えている。
【0091】
反射板121は導体板である。図8(b)に示すように、線状迂回ループアンテナ素子111は、そのXY平面が反射板121から約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板121に平行に配置されている。また、線状迂回ループアンテナ素子112は、そのXY平面が反射板121から約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板121に平行に配置されている。
【0092】
線状迂回ループアンテナ素子111及び112は、いずれも図2に示す実施の形態1の線状迂回ループアンテナ素子100と同じ構成をしている。本実施の形態2のアンテナ装置11は、図1に示した実施の形態1のアンテナ装置10とは、2つの線状迂回ループアンテナ素子の配置が異なっている。
【0093】
図1に示す実施の形態1のアンテナ装置10では、2つの線状迂回ループアンテナ素子100と110を、Y軸方向に並ぶ位置に配置している。つまり、線状迂回ループアンテナ素子100及び110のそれぞれの対称軸が、図1の座標軸において、同一のYZ平面上になるように配置している。
【0094】
それに対して、本実施の形態2のアンテナ装置11では、図8(a)に示すように、2つの線状迂回ループアンテナ素子111と112を、X軸方向に並ぶ位置に配置している。
【0095】
しかし、本実施の形態2のアンテナ装置11の場合も、線状迂回ループアンテナ素子111及び112のそれぞれの対称軸を平行にして同じ方向に向け、反射板121との距離を異ならせて配置している点については、実施の形態1のアンテナ装置10と同様である。
【0096】
このような構成にしても、実施の形態1と同様に、各線状迂回ループアンテナ素子111及び112の給電ポート103及び113の中から少なくとも1つを選択して給電する動作を切り替えることにより、XZ面において、+X側の複数の異なる仰角方向に主ビームを形成させることができる。
【0097】
また、複数の線状迂回ループアンテナ素子に対向するそれぞれの反射部を有する反射板として、共通の平面状の反射板121を用いる構成なので、複数の仰角方向の主ビームを有するアンテナ装置を、低コストで簡単な構成で実現できる。
【0098】
実施の形態1のアンテナ装置と同様の効果が得られるので、アンテナ装置が組み込まれる装置の構成や、アンテナ装置の設置場所などに応じて、図1のような構成にするか、図8のような構成にするかを決定すればよい。
【0099】
また、図1と図8を組み合わせた構成、すなわち2次元状に複数の線状迂回ループアンテナ素子を配置する構成にしてもよい。その場合にも、各線状迂回ループアンテナ素子の対称軸を平行とし、反射板との距離を互いに異ならせるように配置することにより、同様の効果が得られる。
【0100】
また、Y軸方向やX軸方向に整列するように複数の線状迂回ループアンテナ素子を配置しなくても、各線状迂回ループアンテナ素子の対称軸を平行とし、反射板との距離を互いに異ならせるように配置しさえすれば、同様の効果が得られる。
【0101】
図9は、本発明の実施の形態2の、他の構成のアンテナ装置を示している。
【0102】
図9(a)は、本実施の形態2の他の構成のアンテナ装置12の構成を示す斜視図である。図9(b)は、本実施の形態2のアンテナ装置12の構成を示す矢視図であり、図9(a)の矢印方向、すなわち+X側から見た図である。なお、図1と同じ構成部分については、同じ符号を用いている。
【0103】
本実施の形態2のアンテナ装置12は、図9に示すように、2つの線状迂回ループアンテナ素子115及び116と、反射板122を備えている。
【0104】
反射板122は導体板である。図9(b)に示すように、線状迂回ループアンテナ素子115は、そのXY平面が反射板122から約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板122に平行に配置されている。また、線状迂回ループアンテナ素子116は、そのXY平面が反射板122から約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板122に平行に配置されている。
【0105】
線状迂回ループアンテナ素子115は、図2に示す実施の形態1の線状迂回ループアンテナ素子100と同じ構成であるが、実施の形態1とは、線状迂回ループアンテナ素子116の構成が異なっている。
【0106】
線状迂回ループアンテナ素子116の給電ポート117は、対称軸に対して、線状迂回ループアンテナ素子115の給電ポート103とは反対側に配置されている。図9(a)の場合には、線状迂回ループアンテナ素子115の給電ポート103は、Y軸方向の対称軸に対して−X側に配置されているのに対し、線状迂回ループアンテナ素子116の給電ポート117は、Y軸方向の対称軸に対して+X側に配置されている。
【0107】
図10は、本実施の形態2のアンテナ装置12の線状迂回ループアンテナ素子115及び116の指向性を示す図である。図10(a)は垂直(XZ)面の指向性を示しており、図10(b)は、+X側方向への仰角θが55度、及び−X側方向への仰角θが25度における各円錐面の指向性を示している。
【0108】
図10(a)において、実線で示す指向性411は、線状迂回ループアンテナ素子115の給電ポート103から線状迂回ループアンテナ素子115を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、+X側に仰角θが55度となる方向にチルトした主ビームを得られることが確認できる。また、点線で示す指向性512は、線状迂回ループアンテナ素子116の給電ポート117から線状迂回ループアンテナ素子116を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、−X側に仰角θが25度となる方向にチルトした主ビームが得られることが確認できる。
【0109】
図10(b)において、実線で示す指向性413は、図10(a)の指向性411と同様に、給電ポート103から線状迂回ループアンテナ素子115を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。また、点線で示す指向性514は、図10(a)の指向性512と同様に、給電ポート117から線状迂回ループアンテナ素子116を励振したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向に向いていることが確認できる。
【0110】
本実施の形態2のアンテナ装置12において、給電ポート103と給電ポート117への給電の動作を切り替えることにより、XZ面において、+X側の仰角方向と−X側の仰角方向の2つの方向に主ビームを形成させることができる。
【0111】
図9に示すアンテナ装置12では、+X側の仰角方向に主ビームを形成させる線状迂回ループアンテナ素子115と、−X側の仰角方向に主ビームを形成させる線状迂回ループアンテナ素子116を、それぞれ1つずつ備える構成としたが、+X側及び−X側の仰角方向に主ビームを形成させる線状迂回ループアンテナ素子をそれぞれ複数備える構成にしてもよい。その場合、各線状迂回ループアンテナ素子と反射板との距離を互いに異ならせるように配置することで、各線状迂回ループアンテナ素子の主ビームの仰角方向が異なるので、それらの主ビームの組み合わせにより、広い仰角範囲に主ビームを形成させるアンテナ装置を実現できる。
【0112】
(実施の形態3)
図11及び図12は、本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【0113】
図11(a)は、本実施の形態3に係るアンテナ装置13の構成を示す斜視図である。図11(b)は、本実施の形態3に係るアンテナ装置13の構成を示す矢視図であり、図11(a)の矢印方向、すなわち、+X側から見た図である。
【0114】
本実施の形態3に係るアンテナ装置13は、図11に示すように、2つの線状迂回ループアンテナ素子130及び131と、反射板123を備えている。
【0115】
図12は、図11の+Z軸方向から見た線状迂回ループアンテナ素子130の平面図である。線状迂回ループアンテナ素子131も、線状迂回ループアンテナ素子130と同じ構成である。
【0116】
図1に示す実施の形態1のアンテナ装置10では、各線状迂回ループアンテナ素子が、それぞれ1つの給電ポートを有する構成であるのに対し、本実施の形態3に係るアンテナ装置13では、各線状迂回ループアンテナ素子が、それぞれ給電ポートを2つずつ有している点が実施の形態1と異なる。
【0117】
図11及び図12において、線状ループ素子101a〜101dは、素子長L1が約1/3波長(2.7mm)の長さを有し、素子幅が例えば0.2mmの導体である。これらの線状ループ素子101a〜101dは、図12に示すように正方形形状に配置される。
【0118】
線状迂回素子102a及び102bは、全長が約1/4波長(2.1mm)で、長さL2が約1/8波長(1.0mm)の折り返し形状の導体であり、素子幅が例えば0.2mmである。線状迂回素子102aは、線状ループ素子101aと線状ループ素子101cの間に接続され、線状迂回素子102bは、線状ループ素子101bと線状ループ素子101dの間に接続される。ここでは、線状迂回素子102aと線状迂回素子102bとの結合や、線状迂回素子102aと線状ループ素子101a及び101cとの結合や、線状迂回素子102bと線状ループ素子101b及び101dとの結合による放射特性の劣化を最小限に抑えるために、線状迂回素子102a及び102bを正方形形状の外側に突出するように接続している。
【0119】
線状迂回ループアンテナ素子130には、線状ループ素子101aと線状ループ素子101bの間に第1給電ポート140が、線状ループ素子101cと線状ループ素子101dの間に第2給電ポート141がそれぞれ設けられており、それぞれ線状迂回ループアンテナ素子130に給電を行う。
【0120】
したがって、これらの線状ループ素子及び線状迂回素子で構成される本実施の形態3の線状迂回ループアンテナ素子130は、図12に示すように、正方形形状の対角を結ぶ線を対称軸とし、その対称軸上に線状迂回素子102a及び102bが配置され、その対称軸に対して左右対称の形状をしている。
【0121】
このように構成された複数の線状迂回ループアンテナ素子130、131が、図11(a)に示すように、それらの対称軸の向きが同じになるように配置されている。
【0122】
反射板123は導体板である。図11(b)に示すように、線状迂回ループアンテナ素子130は、そのXY平面が反射板123から約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように反射板123に平行に配置されている。また、線状迂回ループアンテナ素子131は、そのXY平面が反射板123から約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように反射板123に平行に配置されている。
【0123】
次に、上述した構成を有するアンテナ装置13の動作について説明する。
【0124】
本実施の形態3のアンテナ装置13の構成は、図1に示す実施の形態1のアンテナ装置10とは、線状迂回ループアンテナ素子に設けられる給電ポートの数が異なるだけで、各線状迂回ループアンテナ素子の形状は同じなので、本実施の形態3のアンテナ装置13の電流分布は、図3に示すような実施の形態1と同様の分布となる。
【0125】
したがって、本実施の形態3のアンテナ装置13の動作も、図4に模式図を示した点波源モデルで表すことができる。
【0126】
図4に示す点波源モデルにおいて、線状迂回ループアンテナ素子130に関しては、点波源301a、301bとイメージ波源302a、302bの4素子アレーによる放射は、±Z方向からチルト角α(55度)だけチルトした方向に主ビーム303a、303bが形成されることになる。しかし、実際は反射板123が存在するため、主ビーム303aの方向のみとなる。
【0127】
従って、線状迂回ループアンテナ素子131に関しては、そのXY平面の反射板123からの距離hがhより短く、反射板123から約0.13自由空間波長(1.5mm)だけ+Z側に離れた位置に配置されているので、図4におけるイメージ波源302a、302bの位置が変化する。これにより、線状迂回ループアンテナ素子131の放射は、±Z方向から線状迂回ループアンテナ素子130より浅いチルト角α(25度)だけチルトした方向に形成される。
【0128】
図13は、本実施の形態3のアンテナ装置13の線状迂回ループアンテナ素子130の指向性を示す図である。図13(a)は垂直(XZ)面の指向性を、図13(b)は仰角θが55度における円錐面の指向性をそれぞれ示している。
【0129】
図13(a)において、実線で示す指向性421は、第1給電ポート140から線状迂回ループアンテナ素子130を励振し、第2給電ポート141を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、+X側に仰角θが55度となる方向にチルトした主ビームを得られることが確認できる。また、点線で示す指向性422は、第2給電ポート141から線状迂回ループアンテナ素子130を励振し、第1給電ポート140を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、−X側に仰角θが55度となる方向にチルトした主ビームが得られることが確認できる。
【0130】
図13(b)において、実線で示す指向性423は、図13(a)の指向性421と同様に、第1給電ポート140から線状迂回ループアンテナ素子130を励振し、第2給電ポート141を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。また、点線で示す指向性424は、図13(a)の指向性422と同様に、第2給電ポート141から線状迂回ループアンテナ素子130を励振し、第1給電ポート140を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向に向いていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は10.5dBi、円錐面の半値角は57度、F/B比(主ビームとバックローブの比)は7dBである。
【0131】
一方、図14は、本実施の形態3のアンテナ装置13の線状迂回ループアンテナ素子131の指向性を示す図である。図14(a)は垂直(XZ)面の指向性を、図14(b)は仰角θが25度における円錐面の指向性をそれぞれ示している。
【0132】
図14(a)において、実線で示す指向性521は、第1給電ポート142から線状迂回ループアンテナ素子131を励振し、第2給電ポート143を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、+X側に仰角θが25度となる方向にチルトした主ビームを得られることが確認できる。また、点線で示す指向性522は、第2給電ポート143から線状迂回ループアンテナ素子131を励振し、第1給電ポート142を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、−X側に仰角θが25度となる方向にチルトした主ビームが得られることが確認できる。
【0133】
図14(b)において、実線で示す指向性523は、図14(a)の指向性521と同様に、第1給電ポート142から線状迂回ループアンテナ素子131を励振し、第2給電ポート143を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。また、点線で示す指向性524は、図14(a)の指向性522と同様に、第2給電ポート143から線状迂回ループアンテナ素子131を励振し、第1給電ポート142を短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向に向いていることが確認できる。
【0134】
線状迂回ループアンテナ素子130に関しては、そのXY平面が、反射板123に対して約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置に配置されているのに対し、線状迂回ループアンテナ素子131に関しては、そのXY平面が、反射板123に対して約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置に配置されているので、反射板123との距離の違いにより、図4におけるイメージ波源302a、302bの位置が変化する。これにより、線状迂回ループアンテナ素子131の放射は、垂直(XZ)面の指向性の、±Z方向から線状迂回ループアンテナ素子130より浅いチルト角α(25度)だけチルトした方向に形成される。
【0135】
このように本実施の形態3によれば、正方形形状に形成された線状ループ素子101a〜101dとその正方形形状の対向する一組の頂点を結ぶ対称軸上に折り返し形状の線状迂回素子102a、102bを設け、正方形形状から所定の距離を隔てて反射板123を配置し、他の一組の頂点にそれぞれ給電ポート140〜143を設け、それらの給電ポートの一方からアンテナ装置13を励振し、他方の給電ポートは短絡状態となるように動作させる線状迂回ループアンテナ素子130、131は、それぞれの2つの給電ポートを切り替えることにより、2方向に主ビームを切り替えることができるうえ、それら線状迂回ループアンテナ素子130、131の各対称軸の向きが全て同じになるように、かつ反射板123との距離が各々の線状迂回ループアンテナ素子で異なるように複数(N個)配置することで、各線状迂回ループアンテナ素子の給電ポート(2×N個)の中から少なくとも1つを選択して給電する動作を切り替えることにより、XZ面において、2×N個方向に主ビームを形成し、小型で平面構造のマルチビームアンテナを実現することができる。
【0136】
つまり、本実施の形態3のアンテナ装置13の構成としたことにより、実施の形態1のアンテナ装置10に比べて、各線状迂回ループアンテナ素子130、131において、第1給電ポート140及び142と第2給電ポート141及び143からの給電をさらに選択的に切り替えることが可能となり、それら複数の線状迂回ループアンテナ素子130、131の各給電ポート140〜143に選択的に給電することにより、簡易で安価な構成で、所望の方向に主ビームを形成するアンテナ装置を実現することができる。
【0137】
図1に示す実施の形態1のアンテナ装置10では、XZ面において、+X側または−X側のいずれか一方の向きについて複数の異なる仰角方向に主ビームを形成させるのに対し、本実施の形態3のアンテナ装置13は、XZ面において、+X側と−X側のそれぞれの向きについて複数の異なる仰角方向に主ビームを形成させることができる。つまり、本実施の形態3のアンテナ装置13は、より広い仰角方向の範囲に、複数の主ビームを形成させることができる。
【0138】
また、本実施の形態3のアンテナ装置13は、複数の線状迂回ループアンテナ素子に対向するそれぞれの反射部を有する反射板として、共通の平面状の反射板123を用いる構成なので、複数の仰角方向の主ビームを有するアンテナ装置を、低コストで簡単な構成で実現できる。
【0139】
なお、本実施の形態3のアンテナ装置13の線状迂回ループアンテナ素子130及び131では、線状迂回素子102a及び102bが正方形形状の外向きに接続される構成としたが、実施の形態1の図7(a)で示したような、正方形形状の内側向きに接続される構成であってもよい。
【0140】
また、線状ループ素子101a〜101dが正方形形状を形成していることとしたが、線状ループ素子及び線状迂回素子の長さを動作周波数に応じて適切な長さに設定すれば、菱形や、円形、楕円形などの形状であってもよい。また、対称軸に対して左右対称の形状であれば、これら以外の形状であっても上記と同様の効果が得られる。
【0141】
また、本実施の形態3のアンテナ装置13は、複数の線状迂回ループアンテナ素子130及び131を、それぞれの対称軸が同一のYZ平面上となるように配置することとしたが、図8のようにX軸方向に並ぶように配置したり、2次元状に配置するようにしてもよい。その場合にも、各線状迂回ループアンテナ素子の対称軸を平行にして同じ方向に向け、反射板との距離を互いに異ならせるように配置することにより、上記と同様の効果が得られる。
【0142】
(実施の形態4)
図15及び図16は、本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示したものである。以下、アンテナの動作周波数を26GHzとして説明する。また、説明の都合上、図に示すような座標軸を定義している。
【0143】
図15(a)は、本実施の形態4のアンテナ装置20の構成を示す斜視図であり、図15(b)は、図15(a)のA−A´断面図である。また、図16(a)は、本実施の形態4のアンテナ装置20の誘電体基板上に形成されている1つのスロット迂回ループアンテナ素子の上面図、すなわち+Z側から見た平面図を示しており、図16(b)はその下面図、すなわち−Z側から見た平面図を示している。
【0144】
図15(a)において、基板630は、比誘電率εrが例えば3.6で、厚さが0.3mmである誘電体である。以下、ここでは、1波長(1実効波長)を7.2mmとして説明する。
【0145】
本実施の形態4のアンテナ装置20は、図15に示すように、共通の誘電体基板630上に形成されている2つのスロット迂回ループアンテナ素子600及び610と、反射板620を備えている。
【0146】
なお、共通の誘電体基板630上に形成されている2つのスロット迂回ループアンテナ素子600及び610が、本発明の、同一平面上に形成された複数のアンテナ素子の一例にあたる。また、ここでは、反射板620が、各スロット迂回ループアンテナ素子600、610に対向する複数の反射面を有しているが、これらの複数の反射面が、本発明の複数の反射部の一例にあたる。そして、段違い形状の反射板620が、本発明の、複数の反射部が構成している1枚の反射板の一例にあたる。
【0147】
グランド面640は、誘電体基板630の+Z側面に接着された銅箔層である。スロットループ素子601a〜601dは、グランド面640を削剥して形成された空隙(銅箔パターン)であり、素子長が約1/2波長(3.7mm)、素子幅が例えば0.2mmである。これらのスロットループ素子601a〜604dは、図16に示すように正方形形状に配置される。
【0148】
スロット迂回素子602a及び602bは、グランド面640を削剥して形成された空隙であり、全長が約0.14波長(1.0mm)で、長さL8が約0.07波長(0.5mm)で折り返されて形成されている。素子幅は例えば0.2mmである。スロット迂回素子602aはスロットループ素子601aとスロットループ素子601cの間に接続され、スロット迂回素子602bはスロットループ素子601bとスロットループ素子601dの間に接続されている。ここでは、スロット迂回素子602a及び602bが正方形形状の外側に突出するように接続されている。なお、スロットループ素子601aとスロットループ素子601b、及びスロットループ素子601cとスロットループ素子601dは、それぞれ接続されている。
【0149】
なお、誘電体基板630の+Z側面に接着された銅箔層が、本発明の導体層の一例にあたる。また、正方形形状を形成しているスロットループ素子601a〜604dが、本発明の、スロットで形成されたループ素子の一例にあたる。また、スロット迂回素子602a及び602bが、本発明の、スロットで形成された一対の迂回素子の一例にあたる。また、スロットループ素子601a〜604dで形成される正方形形状は、本発明の菱形形状の一例にあたる。また、スロット迂回素子602aが接続される、スロットループ素子601aとスロットループ素子601cが接近している部分と、スロット迂回素子602bが接続される、スロットループ素子601bとスロットループ素子601dが接近している部分とが、いずれも本発明の、対称軸上にある菱形形状の対向する頂点に対応する部位の一例である。また、正方形形状の外側に突出するように接続されているスロット迂回素子602a及び602bの部分が、いずれも本発明の突起部の一例にあたる。
【0150】
したがって、これらのスロットループ素子及びスロット迂回素子で構成される本実施の形態4のスロット迂回ループアンテナ素子600及び610は、図16に示すように、正方形形状の対角を結ぶ線を対称軸とし、その対称軸上にスロット迂回素子602a及び602bが配置され、その対称軸に対して左右対称の形状をしている。
【0151】
このように構成された複数のスロット迂回ループアンテナ素子600、610が、図15(a)に示すように、それらの対称軸の向きが同じになるように配置されている。
【0152】
このグランド面640側では、灰色で示したスロットの内側の銅箔層の部分が、スロットによってスロットの外側の銅箔層の部分と分断されるため、図16(a)に示すように、例えば銅箔パターンで正方形形状に形成される接続導体701a〜701dによって、スロットループ素子601a〜601dのほぼ中央でそれぞれのスロットループ素子601a〜601dを分断するように、スロットループの内側の銅箔層と外側の銅箔層を接続している。
【0153】
このように、接続導体701a〜701dによりスロットループ素子601a〜601dを分断し、スロットの内側の銅箔層の部分とスロットの外側の銅箔層の部分を接続することで、インピーダンス整合が容易にとれ、F/B比が良好なアンテナ装置を実現することができるようになる。
【0154】
図17は、本実施の形態4のスロット迂回ループアンテナ素子の他の構成を示しており、図17(a)は上面図を、図17(b)は下面図をそれぞれ示している。
【0155】
図17に示す構成のスロット迂回ループアンテナ素子の場合には、グランド面640の銅箔層の部分を下面側に導通させるショートピン801を図17(a)に示すような位置に設け、図17(b)に示すように、誘電体基板630の下面側で、導体部分のショートピン801に接続されるショートライン802により、スロットの内側と外側の銅箔層の部分を接続させている。
【0156】
このようにして、スロットの内側の銅箔層の部分とスロットの外側の銅箔層の部分を接続してもよい。
【0157】
スロット迂回ループアンテナ素子600及び610は、図16のように、スロットループ素子601a〜601dと接続導体701a〜701dで構成される。または、図17のように、スロットループ素子601a〜601d、ショートピン801及びショートライン802により構成される。
【0158】
そして、マイクロストリップライン(MSL)605が、誘電体基板630の−Z側面に、スロットループ素子601aとスロットループ素子601bの接続部に対向する位置を通過するようにX軸方向に沿って銅箔パターンにより形成されている。マイクロストリップライン605の幅W1は、特性インピーダンスが50Ωとなるように0.6mmに設定されている。また、マイクロストリップライン605の先端と、スロットループ素子601a及びスロットループ素子601bの接続部との距離L9は、例えば0.45mmに設定されている。
【0159】
また同様に、図16(b)に示すように、マイクロストリップライン605は、誘電体基板630の−Z側面で、スロットループ素子601cとスロットループ素子601dの接続部に対向する位置を通過するようにも形成されている。
【0160】
そして、スロット迂回ループアンテナ素子600においては、マイクロストリップライン605は、スロット迂回ループアンテナ素子600に給電を行う第1給電ポート603及び第2給電ポート604に接続されている。同様に、スロット迂回ループアンテナ素子610においても、マイクロストリップライン605は、スロット迂回ループアンテナ素子610に給電を行う第1給電ポート613及び第2給電ポート614に接続されている。
【0161】
なお、スロットループ素子601aとスロットループ素子601bの接続部、及びスロットループ素子601cとスロットループ素子601dの接続部が、それぞれ本発明の、ループ素子の所定の位置の一例にあたる。また、これらの所定の位置と誘電体基板630を挟んで対向しているマイクロストリップライン605の部分が、本発明の、所定の位置の近傍に設けられている給電部の一例にあたる。
【0162】
以上のような構成を有することにより、マイクロストリップライン605とスロットアンテナ素子は電磁的に結合されるため、第1給電ポート603、613及び第2給電ポート604、614からの信号を、マイクロストリップライン605を介してスロット迂回ループアンテナ素子600及び610へ供給することができる。また、距離L9を適切な長さに設定することで、インピーダンス整合が可能となる。
【0163】
このように、本実施の形態4のアンテナ装置20を用いることにより、平面回路であるマイクロストリップライン605からの給電が容易となり、アンテナ装置の小型化や生産性の向上を図ることができる。
【0164】
また、反射板620は、図15に示すように、2つの平行な平面を有する段違い形状の導体板である。図15(b)に示すように、スロット迂回ループアンテナ素子600に対向して、誘電体基板630の−Z側の、約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ離れた位置になるように、誘電体基板630と平行に、反射板620の平面状部分が配置されている。そして、スロット迂回ループアンテナ素子610に対向して、誘電体基板630の−Z側の、約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ離れた位置になるように、誘電体基板630と平行に、反射板620の他の平面状部分が配置されている。
【0165】
ここで、図15に示す本実施の形態4のアンテナ装置20は、図11に示すアンテナ装置13の線状素子をスロット素子に置き換えたものとほぼ同等と考えることができ、その動作は電界と磁界を置き換えて説明することができる。したがって、図11に示すアンテナ装置13の主偏波成分はEφ成分であるのに対して、図15に示すアンテナ装置20の主偏波成分はEθ成分となり、主ビームの形状は、図13及び図14と同じになる。
【0166】
次に、上述した構成を有するアンテナ装置20において、マイクロストリップライン605からこのアンテナ装置20を励振する場合の動作について説明する。
【0167】
図18は、スロット迂回ループアンテナ素子600を形成している誘電体基板630上に、第1給電ポート603と第2給電ポート604への給電切り替えスイッチを設けた場合の誘電体基板630部分の構成図を示している。図18(a)は、誘電体基板630を+Z側から見た平面図を示しており、図18(b)はその−Z側から見た平面図を示している。
【0168】
図18(b)に示すように、誘電体基板630の下面側にスイッチ760が設けられており、スイッチ760は、誘電体基板630の下面側に形成されているマイクロストリップライン605a及び605bによって、マイクロストリップライン605と接続されている。なお、スイッチ760が、本発明の給電切り替え部の一例にあたる。
【0169】
誘電体基板630の下面側に設けられている給電端子750から励振された信号は、スイッチ760の端子760aに入力される。このとき、スイッチ760は、端子760aと端子760cが、端子760bと端子760dが、それぞれ接続されるように動作する。このため、端子760aに入力された信号は、端子760cを介してマイクロストリップライン605aに入力される。
【0170】
また、マイクロストリップライン605bは、端子760d及び端子760bを介して接地される。ここで、アンテナ素子がスロット素子で構成されているため、線状素子の場合の電界と磁界を置き換えて考えられるので、スロットループ素子601a及び601bの接続点とマイクロストリップライン605bとの結合部の位置では開放状態にする必要がある。このため、スロットループ素子601a及び601bの接続点とマイクロストリップライン605bとの結合部から接地点までの長さ、つまりマイクロストリップライン605b、及びスイッチ760からGND770に接続されるグランド面640までを含めた全体の電気的な長さを、1/4波長の奇数倍に設定しなければならない。このように設定することにより、良好な指向性利得を得ることができ、F/B比が良好なアンテナ装置を実現することができる。
【0171】
同様に、マイクロストリップライン605bからアンテナ装置20を励振する場合は、スイッチ760は、端子760aと端子760dが、端子760bと端子760cが、それぞれ接続されるように動作する。このとき、スロットループ素子601c及び601dの接続点とマイクロストリップライン605aとの結合部の位置で開放状態とする必要がある。このため、スロットループ素子601c及び601dの接続点とマイクロストリップライン605aとの結合部から接地点までの長さを1/4波長の奇数倍に設定しなければならない。このように設定することにより、良好な指向性利得を得ることができ、F/B比が良好なアンテナ装置を実現することができる。
【0172】
なお、本実施の形態4では、スイッチとして1つのDPDTスイッチ(スイッチ760)を用いて説明したが、例えば、SPDT(Single Pole Double Throw)を3つ用いて構成するように、複数のスイッチを用いてもよい。
【0173】
また、本実施の形態4では、スイッチ760の一端子(GND770)を接地し、マイクロストリップラインとスロット素子との結合部から接地点までの長さを1/4波長の奇数倍として説明したが、例えば、スイッチの一端子を開放とし、マイクロストリップラインとスロット素子との結合部から接地点までの長さを1/2波長の整数倍とするように、マイクロストリップラインとスロット素子との結合部の位置で開放状態となるような構成でも、良好な指向性利得を得ることができる。
【0174】
このように本実施の形態4によれば、誘電体基板630の表面に正方形形状に形成されたスロットループ素子601a〜601dと、その正方形形状の対向する一組の頂点にスロット迂回素子602a及び602bを設け、誘電体基板630の裏面にマイクロストリップライン605を配置し、さらにスロットループ素子面から所定の距離を隔てて反射板620を配置し、他の一組の頂点にそれぞれ第1給電ポート603、613及び第2給電ポート604、614を設け、一方の給電ポートからアンテナ装置を励振し、他方の給電ポートは短絡状態となるように動作させるスロット迂回ループアンテナ素子600、610の各対称軸の向きが全て同じになるように、かつ反射板620との距離が各々のスロット迂回ループアンテナ素子で異なるように複数(N個)配置し、各スロット迂回ループアンテナ素子の給電ポート(2×N個)の中から少なくとも1つを選択して給電する動作を切り替えることにより、2×N個方向に主ビームを形成し、小型で平面構造のマルチビームアンテナを実現することができる。
【0175】
つまり、本実施の形態4のアンテナ装置20の構成としたことにより、各スロット迂回ループアンテナ素子600、610において、スロット迂回素子602a及びスロット迂回素子602bにより、スロットループ素子601a及びスロットループ素子601bと、スロットループ素子601c及びスロットループ素子601dとの電流位相がずれ、これにより放射される電波と、反射板620によって反射される電波の合成により、スロット迂回ループアンテナ素子600及び610の各平面の鉛直方向からチルトした主ビームを形成させることができる。さらに、各スロット迂回ループアンテナ素子600、610において、反射板620との距離が異なることからチルト角が異なり、それら複数のスロット迂回ループアンテナ素子600、610の各給電ポート603、604、613、614に選択的に給電することにより、簡易で安価な構成で、所望の方向に主ビームを形成するアンテナ装置を実現することができる。
【0176】
また、このような構成としたことにより、平面回路であるマイクロストリップライン605からの給電が容易となり、マイクロストリップライン長を変化させるだけでインピーダンス整合も可能となると共に、アンテナ装置の小型化や生産性の向上を図ることができる。
【0177】
さらに、複数のスロット迂回ループアンテナ素子を同一の基板に形成し、反射板も凹凸のある同一のもので形成することで、簡易な構造でアンテナ装置を実現できる。また、反射板を設ける代わりに、同じ形状を有する金属の筐体を用い、その筐体の同じ形状の部分を反射板として利用するようにしてもよい。
【0178】
また、本実施の形態4のアンテナ装置20は、複数のスロット迂回ループアンテナ素子を共通の誘電体基板630上に形成させる構成なので、複数の仰角方向の主ビームを有するアンテナ装置を、低コストで簡単な構成で実現できる。
【0179】
なお、本実施の形態4では、マイクロストリップライン605に対向させて信号を供給する位置を、スロットループ素子601aと601bの接続部及びスロットループ素子601cと601dの接続部としたが、これらの対向させる位置をずらすことで、インピーダンスを合わせることができる。周囲の回路構成に応じて、インピーダンスを合わせるために、マイクロストリップライン605に対向させる位置をずらせばよい。例えば、図16の場合には、スロットループ素子601a上や601b上の位置で、またスロットループ素子601c上や601d上の位置で、マイクロストリップライン605と対向させるように配置してもよい。
【0180】
また、本実施の形態4では、段違い形状の反射板620を用いる構成としたが、複数のスロット迂回ループアンテナ素子をそれぞれ反射板からの距離が異なる基板上に形成させ、各スロット迂回ループアンテナ素子に対応する反射板の方を共通な平板状のものにしてもよい。
【0181】
また、本実施の形態4のアンテナ装置20のスロット迂回ループアンテナ素子600及び610では、スロット迂回素子602a及び602bが正方形形状の外向きに接続される構成としたが、正方形形状の内側向きに接続される構成であってもよい。
【0182】
また、スロットループ素子601a〜601dが正方形形状を形成していることとしたが、スロットループ素子及びスロット迂回素子の長さを動作周波数に応じた適切な長さに設定すれば、菱形や、円形、楕円形などの形状であってもよい。また、対称軸に対して左右対称の形状であれば、これら以外の形状であっても上記と同様の効果が得られる。
【0183】
また、本実施の形態4のアンテナ装置20は、複数のスロット迂回ループアンテナ素子600及び610を、それぞれの対称軸が同一のYZ平面上となるように配置することとしたが、X軸方向に並ぶように配置したり、2次元状に配置するようにしてもよい。その場合にも、各スロット迂回ループアンテナ素子の対称軸を平行とし、反射板との距離を互いに異ならせるように配置することにより、上記と同様の効果が得られる。
【0184】
また、本実施の形態4の各スロット迂回ループアンテナ素子600、610は、それぞれ第1給電ポート及び第2給電ポートの2つの給電ポートを備える構成としたが、実施の形態1及び2のように、各スロット迂回ループアンテナ素子が、対称軸に対して一方側にのみ給電ポートを備える構成としてもよい。
【0185】
また、本実施の形態4では、スロット迂回ループアンテナ素子600及び610が、共通の誘電体基板630上に形成されている構成としたが、スロット迂回ループアンテナ素子600及び610の導体部分が、自身で形状を保持できるような材料や厚さで形成されていれば、誘電体基板630が無い構成であってもよい。この場合、例えばスロット迂回ループアンテナ素子を形成する金属板と反射板との間に何も無くても、その空間にある空気が誘電体として機能する。また、そのような金属板と反射板との間に、誘電性を有する液体や固体を設ける構成としてもよい。
【0186】
(実施の形態5)
図19及び図20は、本発明の実施の形態5のアンテナ装置の構成を示す図である。
【0187】
図19(a)は、本実施の形態5のアンテナ装置21の構成を示す斜視図である。図19(b)は、本実施の形態5のアンテナ装置21の構成を示す矢視図であり、図19(a)の矢印方向、すなわち、+X側から見た図である。
【0188】
本実施の形態5のアンテナ装置21は、図19に示すように、2つの線状迂回ループアンテナ素子132及び133と、反射板908を備えている。線状迂回ループアンテナ素子132は、誘電体基板907上に形成されている導体であり、線状迂回ループアンテナ素子133は、誘電体基板909上に形成されている導体である。
【0189】
図20は、図19の+Z軸方向から見た線状迂回ループアンテナ素子132の平面図である。線状迂回ループアンテナ素子133も、線状迂回ループアンテナ素子132と同じ構成である。
【0190】
実施の形態5のアンテナ装置21の線状迂回ループアンテナ素子132及び133の形状について詳細に説明する。以下、アンテナ素子を例えばεr=2.26の誘電体基板上に作成した場合について、その動作周波数を26GHz、1波長(1実効波長)を8.2mmとして説明する。
【0191】
図20において、線状ループ素子901a〜901d、902a〜902d、903a〜903dは、素子長L11が約1/3波長(2.7mm)、素子幅が例えば0.2mmの導体である。これらの線状ループ素子901a〜901d、902a〜902d、903a〜903dは、図20に示すようにそれぞれ正方形形状に配置される。
【0192】
線状連結素子904a〜904dは、素子長L12が約2/5波長(3.2mm)で、素子幅が例えば0.2mmの導体である。線状連結素子904aは、線状ループ素子901aと線状ループ素子902bの間に接続され、線状連結素子904bは、線状ループ素子901bと線状ループ素子903aの間に接続され、線状連結素子904cは、線状ループ素子901cと線状ループ素子902dの間に接続され、線状連結素子904dは、線状ループ素子901dと線状ループ素子903cの間に接続される。
【0193】
線状迂回素子905a及び905bは、全長が約2/5波長(3.2mm)で、長さL13が約1/5波長(1.6mm)の折り返し形状の導体であり、素子幅が例えば0.2mmである。線状迂回素子905aは、線状ループ素子902aと線状ループ素子902cの間に接続され、線状迂回素子905bは、線状ループ素子903bと線状ループ素子903dの間に接続される。
【0194】
なお、線状ループ素子901a〜901dで、線状ループ素子902a〜902dで、線状ループ素子903a〜903dで、それぞれ形成している正方形形状の部分が、それぞれ本発明のループ部位の一例にあたる。また、線状連結素子904a〜904d及び線状迂回素子905a、905bが、それぞれ本発明の迂回部位の一例にあたる。そして、各ループ部位と、その対角部分に接続される一対の迂回部位を合わせた構成が、本発明の構成部の一例にあたる。また、線状連結素子904a〜904dの部分が、本発明の、迂回部位同士が連結されている部分の一例にあたる。
【0195】
第1給電ポート906aは、線状ループ素子901aと901bの間に設けられ、第2給電ポート906bは、線状ループ素子901cと901dの間に設けられる。なお、線状ループ素子902aと902b、線状ループ素子902cと902d、線状ループ素子903aと903b、線状ループ素子903cと903dは、それぞれ接続されている。
【0196】
以上のように構成された、線状ループ素子901a〜901d、902a〜902d、903a〜903dと、線状連結素子904a〜904dと、線状迂回素子905a及び905bと、第1給電ポート906a及び第2給電ポート906bにより、正方形形状アンテナ素子部を接続してアレー構成にした線状迂回ループアンテナ素子132を構成している。線状迂回ループアンテナ素子133も同様の構成である。
【0197】
第1給電ポート906aから線状迂回ループアンテナ素子132が励振される場合、第2給電ポート906bは短絡され、線状ループ素子901cと901dが接続するように動作する。逆に、第2給電ポート906bから線状迂回ループアンテナ素子132が励振される場合、第1給電ポート906aは短絡され、線状ループ素子901aと901bが接続するように動作する。このように第1給電ポート906aと第2給電ポート906bを切り替えて線状迂回ループアンテナ素子132を励振させることにより、1つの線状迂回ループアンテナ素子132で主ビームを2方向に切り替えることが可能となる。
【0198】
図19において、誘電体基板907及び909は厚みtが約0.05波長分(0.4mm)であり、それらの+Z側の面に、線状迂回ループアンテナ素子132及び133が配置されている。
【0199】
反射板908は導体板である。図19(b)に示すように、線状迂回ループアンテナ素子132は、そのXY平面が反射板908から約0.42自由空間波長(5.0mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板908に平行に配置されている。また、線状迂回ループアンテナ素子133は、そのXY平面が反射板908から約0.13自由空間波長(1.5mm)分の距離hだけ+Z側に離れた位置になるように、反射板908に平行に配置されている。
【0200】
図21は、図19及び図20に示す線状迂回ループアンテナ素子132の指向性を示す図である。図21(a)は垂直(XZ)面の指向性を、図21(b)は仰角θが55度における円錐面の指向性をそれぞれ示している。
【0201】
図21(a)において、実線で示す指向性1001は、第1給電ポート906aから線状迂回ループアンテナ素子132を励振し、第2給電ポート906bを短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、+X側に仰角θが55度となる方向にチルトした主ビームを得られることが確認できる。また、点線で示す指向性1002は、第2給電ポート906bから線状迂回ループアンテナ素子132を励振し、第1給電ポート906aを短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、−X側に仰角θが55度となる方向にチルトした主ビームが得られることが確認できる。
【0202】
また、図21(b)において、実線で示す指向性1003は、図21(a)の指向性1001と同様に、第1給電ポート906aから線状迂回ループアンテナ素子132を励振し、第2給電ポート906bを短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが+X方向に向いていることが確認できる。また、点線で示す指向性1004は、図21(a)の指向性1002と同様に、第2給電ポート906bから線状迂回ループアンテナ素子132を励振し、第1給電ポート906aを短絡したときのEφ成分の指向性を示しており、主ビームが−X方向に向いていることが確認できる。このとき、主ビームの指向性利得は14.4dBi、円錐面の半値角は25度、F/B比(主ビームとバックローブの比)は7dBであり、図13(b)に示した実施の形態3の線状迂回ループアンテナ素子130の場合と比較すると、ビームが細くなり、高利得化を実現できている。
【0203】
以上の構成により、図19に示す線状迂回ループアンテナ素子132及び133を用いた本実施の形態5のアンテナ装置21の場合も、図11に示した実施の形態3のアンテナ装置13と同様に、簡易で安価な構成で、複数のビームを有し主ビーム方向の切替が可能となる。
【0204】
つまり、本実施の形態5のアンテナ装置21の構成としたことにより、主ビームの切替方向に対して垂直な方向におけるビーム形状が絞られることにより、高利得化をはかることができ、車載レーダ用途に用いた場合は、地面からの反射を低減することが可能である。
【0205】
さらに、アレー構成としたことで、チルト角における円錐面指向性においては、ビームが細くなり、結果として高利得化を図った構成を実現できる。
【0206】
なお、図20においては、線状ループ素子が3つの場合について説明したが、前述した動作原理に基づく範囲であれば、素子数はいくつであってもよい。
【0207】
また、図19に示した構成のアンテナ装置21では、同じ形状の線状迂回ループアンテナ素子132及び133を用いることとしたが、異なる形状の線状迂回ループアンテナ素子を組み合わせて使用してもよい。例えば、正方形形状を有する構成部の数が異なる線状迂回ループアンテナ素子を組み合わせて使用してもよい。
【0208】
図22は、本発明の実施の形態5の他の構成のアンテナ装置の構成を示す図である。図22(a)は、本実施の形態5の他の構成のアンテナ装置22の構成を示す斜視図であり、図22(b)は、アンテナ装置22の矢視図であり、図22(a)の矢印方向、すなわち、+X側から見た図である。なお、図19と同じ構成部分については、同じ符号を用いている。
【0209】
図22に示すアンテナ装置22は、図22(a)に示すように、正方形形状を有する構成部の数が3つの線状迂回ループアンテナ素子133と、正方形形状を有する構成部の数が1つだけの線状迂回ループアンテナ素子134を組み合わせた構成である。
【0210】
線状迂回ループアンテナ素子は、反射板との距離が大きくなり形成されるビーム方向の仰角が大きくなると相対的にピーク利得が高くなり、反射板との距離が小さくなり形成されるビーム方向の仰角が小さくなると相対的にピーク利得が低くなる傾向がある。
【0211】
図22に示すアンテナ装置22では、反射板908との距離が小さく低仰角となる位置に設けるアンテナ素子には、高利得を図るために、アレー化した形状の線状迂回ループアンテナ素子133を用いる一方、反射板908との距離が大きく高仰角となる位置に設けるアンテナ素子には、アレー化していない形状の線状迂回ループアンテナ素子134を用いている。
【0212】
このように、反射板との距離に応じて形状の異なる線状迂回ループアンテナ素子を設けることにより、それぞれの利得を揃えることができる。
【0213】
さらに、アレー化していない形状の線状迂回ループアンテナ素子134を用いることにより、同じアレー化した形状の線状迂回ループアンテナ素子を並べる場合に比べてアンテナ装置22のサイズを抑えることができる。
【0214】
なお、本実施の形態5では、迂回ループアンテナ素子を線状素子で構成する例について説明したが、実施の形態4のように迂回ループアンテナ素子をスロットにより構成させ、そのスロットの形状を、本実施の形態5のような正方形をアレイ状に連結させた形状としても、本実施の形態5と同様の効果が得られる。
【0215】
(実施の形態6)
図23は、実施の形態4のアンテナ装置20を車両レーダ用に用いた本発明の実施の形態6の車両周囲監視装置の、アンテナ装置20の配置とその監視領域の一例を示したものである。図23(a)は、アンテナ装置20の配置を示した図であり、図23(b)は、アンテナ装置20を備える車両周囲監視装置の監視領域を上から示した図である。
【0216】
図23(a)に示すように、アンテナ装置20を備えた本実施の形態6の車両周囲監視装置1000は、車両の前方の中央部付近、例えば電波を透過する樹脂製のバンパー内に設置され、アンテナ装置20は、図15に示す座標軸のY軸が地面に対して垂直方向に、Z軸が車両前進方向に向くように設置される。
【0217】
このように設置することにより、図23(b)に示すように、アンテナ装置20の第1給電ポート603に給電した場合は、監視領域1101を、第2給電ポート604に給電した場合は、監視領域1102を、第1給電ポート613に給電した場合は、監視領域1103を、第2給電ポート614に給電した場合は、監視領域1104を、1つの車両周囲監視装置1000でそれぞれ検知できる構成になる。
【0218】
以上の構成により、簡易な構成で、複数のビームを有し非常に広角な範囲をカバーし、主ビーム方向の切替が可能で、かつビームの角度分解能で物体の有無の検知が可能となる。
【0219】
図24は、本実施の形態6の車両周囲監視装置1000のブロック構成図を示したものである。
【0220】
図24において、車両周囲監視装置1000は、タイミング制御部1201と、電波を送信する送信部1202と、反射信号を受信する受信部1203と、処理部1204と、送受信を切り替える送受切替スイッチ1206と、走行状況情報格納部1207と、ビーム方向指定手段1208と、給電切替スイッチ1209を備えている。
【0221】
送信部1202、受信部1203、処理部1204、ビーム方向指定手段1208は、タイミング制御部1201からのタイミング信号に基づいて制御され、給電切替スイッチ1209は、ビーム方向指定手段1208と送受切替スイッチ1206に基づき、制御される。
【0222】
アンテナ装置20は、図15に示すように、2個のスロット迂回ループアンテナ素子600及び610が、それらの対称軸の向きが同じになるように、かつ反射板620との距離がスロット迂回ループアンテナ素子600及び610で異なるように配置され、2×2個の給電ポート(第1給電ポート603及び613、第2給電ポート604及び614)を有する。給電切替スイッチ1209が、これらの第1給電ポート603及び613、第2給電ポート604及び614への給電の切り替えを制御することにより、これらの給電ポートの中から、少なくとも1つを選択して給電する動作を切り替えさせて、2×2個方向に主ビームを形成できるようになっている。
【0223】
なお、図24では、アンテナ装置20を送受信で切り替えて共用するので、アンテナ装置20が、本発明の送信アンテナ部の一例にあたり、また本発明の受信アンテナ部の一例にもあたる。また、給電切替スイッチ1209が、本発明の給電切り替え部の一例にあたる。
【0224】
さらに、走行状況情報格納部1207は、車速センサ1210や舵角センサ1220や運転者が操作するスイッチ(例えば、方向指示器等)1230の情報を格納しており、ビーム方向指定手段1208は、走行状況情報格納部1207の情報に基づき、ビーム方向を決定することもできる。
【0225】
例えば、図23において、ドライバーがハンドルを左にきった場合は、舵角センサ1220から走行状況情報格納部1207にその情報が格納され、その情報に基づき、ビーム方向指定手段1208は、給電切替スイッチ1209により、第1給電ポート603または613に給電し、監視領域1101または1103を監視するようにビームを制御することも可能である。
【0226】
あるいは、運転者が右に方向指示器1230を動作させたときは、その情報に基づき、ビーム方向指定手段1208は、給電切替スイッチ1209により、第2給電ポート604または614に給電し、監視領域1102または1104を監視するようにビームを制御することも可能である。
【0227】
なお、図23及び図24に示す本実施の形態6においては、アンテナ装置20を1つのみ設置し、送受切替スイッチ1206により、送信と受信を切り替えて、アンテナ装置20を送受信で共用する構成としたが、送信用と受信用に2つのアンテナ装置を設置しても構わない。
【0228】
また、送信側は広い指向性を有する任意のアンテナ、たとえばパッチアンテナ等で構成してもよい。この場合、送信側のアンテナのビーム方向を切り替える必要がなく、受信側のアンテナのビーム方向の切り替えのみで、対象物がある方向を正確に検出させることができる。なお、この場合の広い指向性を有するパッチアンテナが、本発明の広角の単一ビームの電波を送出する場合の送信アンテナ部が使用するアンテナの一例にあたる。
【0229】
また、本実施の形態6では、車両周囲監視装置1000に、スロット迂回ループアンテナ素子600及び610を有するアンテナ装置20を備える構成で説明したが、アンテナ装置20の代わりに、線状迂回ループアンテナ素子130及び131を有する実施の形態3のアンテナ装置13を備える構成としても、図23(a)と同じ向きに設置するようにすれば、同様の効果が得られる。また、これ以外の他の実施の形態で説明した本発明の他のアンテナ装置を用いても、同様の効果が得られる。
【0230】
(実施の形態7)
実施の形態1〜5に示した本発明の各アンテナ装置を、他の回路を構成している基板内に設けるようにしてもよい。
【0231】
図25は、実施の形態6で説明した車両周囲監視装置の回路基板内に、本発明のアンテナ装置を設けた図を示している。図25(a)は、車両周囲監視装置用の各部品を実装した回路基板の斜視図を、図25(b)は、図25(a)のB−B´断面図を、それぞれ示している。
【0232】
この車両周囲監視装置用の基板811は、6層板であり、その両面に各部品が実装される。図25は、この基板811内に、実施の形態4のアンテナ装置20の構成を設けた例である。
【0233】
図25(b)に示すスロット素子部823は、図15に示すスロット迂回ループアンテナ素子600の、スロットループ素子601a〜601dおよびスロット迂回素子602a、602bに相当する部分であり、基板811の第2層に形成されている。なお、図25(a)の斜視図は、第2層以下の部分については、第2層のスロット素子部823のみを破線で示している。スロット素子部823はスロットアンテナなので、基板811の第2層はグランド層である。
【0234】
基板811の第1層は、車両周囲監視装置用の部品が実装される回路ラインの層であり、IC812などの部品が実装されるとともに、スロット素子部823に給電する給電ライン822も形成されている。この給電ライン822は、図15に示すスロット迂回ループアンテナ素子600のマイクロストリップライン605に相当する部分であり、基板811の第2層のスロット素子部823と第1層の給電ライン822で、図15のスロット迂回ループアンテナ素子600に相当する第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820を構成している。基板811内には、第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820と同様の構成で、第2のスロット迂回ループアンテナ素子部821も形成されている。
【0235】
基板811の第3層および第5層は、それぞれ、車両周囲監視装置の回路用のグランドパターンが形成されている回路グランド824および回路グランド826の層である。また、基板811の第4層および第6層は、それぞれ、車両周囲監視装置の回路用のパターンが形成されていいる回路ライン825および回路ライン827の層である。基板811の裏面側となる回路ライン827の層にはIC813などの車両周囲監視装置用の部品が実装される。
【0236】
図25(b)に示すように、第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820の領域の下側となる基板811の第3層〜第6層の部分には、導電パターンは形成されていない。
【0237】
そして、基板811は、金属製の筐体810の一部(図25(b)で「反射部」と記載している部分)が基板811と平行になるように、筐体810に取り付けられている。
【0238】
第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820は、筐体810のこの反射部を、図15のアンテナ装置20の反射板620に相当する部分として、スロット素子部823とこの筐体810の反射部との距離に対応した仰角方向のビームを形成する。
【0239】
一方、基板811における第2のスロット迂回ループアンテナ素子部821の領域の下側の部分については、第3層および第4層の部分には導電パターンは形成されていないが、第5層については、回路グランド826のパターンが、第2のスロット迂回ループアンテナ素子部821の下側となる領域の全体も含むように形成されている。
【0240】
第2のスロット迂回ループアンテナ素子部821は、その領域の下側にある基板811の第5層の反射部の部分を、図15のアンテナ装置20の反射板620に相当する部分として、スロット素子部823とこの第5層の反射部との距離に対応した仰角方向のビームを形成する。
【0241】
第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820と筐体810の反射部との距離は、第2のスロット迂回ループアンテナ素子部821と基板811の第5層の反射部との距離と異なるので、各スロット迂回ループアンテナ素子部によって形成されるビームの仰角は異なる。第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820と筐体810の反射部との距離の方が大きいので、第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820により高仰角のビームが形成され、第2のスロット迂回ループアンテナ素子部821により低仰角のビームが形成される。
【0242】
このように、基板811内に、車両周囲監視装置用の部品の実装およびパターンを形成する回路部816とともに、第1のアンテナ部814および第2のアンテナ部815の部分を設けることにより、仰角の異なるビーム方向を持つ複数のアンテナを基板811内に形成させることができる。
【0243】
なお、本実施の形態7では、基板811内にスロットタイプのアンテナ素子を形成させることとしたが、実施の形態1の線状迂回ループアンテナ素子ような線状素子タイプのパターンを基板811内に形成させ、図1に示すアンテナ装置10に相当する構成を形成させるようにしてもよい。また、図7に示すような他の形状のループアンテナ素子や、図19に示すようなアレイ形状のループアンテナ素子を基板内に形成させるようにしてもよい。
【0244】
また、本実施の形態7では、6層板の基板811を用いることとしたが、6層板以外の多層基板でも同様に、本発明のアンテナ装置を基板内に構成させることができる。また、本実施の形態7では、基板811の第1層と第2層を用いて各スロット迂回ループアンテナ素子部を形成させることとしたが、基板内のこれら以外の2つの層を用いて形成させてもよい。また、実施の形態1のような線状素子タイプを形成させる場合には、第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820に対応する部分を1つの層だけで形成させることができる。
【0245】
また、本実施の形態7では、筐体810の一部を第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820の反射部として用いたが、筐体の一部を反射部として用いるのではなく、基板内の層だけを反射部として用いるようにしてもよい。例えば、図25(b)の場合には、第2のスロット迂回ループアンテナ素子部821の反射部とは異なる第6層の、スロット素子部823の領域に対向する部分にグランドパターンを形成させて、第1のスロット迂回ループアンテナ素子部820の反射部として用いるようにしてもよい。
【0246】
なお、各実施の形態では、本発明のアンテナ装置の反射板を複数のアンテナ素子で共通の平面状の反射板とした構成、または、複数のアンテナ素子が同一平面上に形成される構成について説明したが、アンテナ素子毎に、反射板も、アンテナ素子が形成される平面も、いずれも異なる構成にしてもよい。
【0247】
例えば、1つのアンテナ素子とそれに対向する反射板とを1つの構成とし、アンテナ素子と反射板間の距離を異ならせたその構成を複数作製し、各構成が有するビームの水平方向の指向性が同じになるようにこれらの複数の構成を並べた場合も、簡易で安価な構成で、複数のビームを有し主ビーム方向の切替が可能となるという、各実施の形態と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明にかかるアンテナ装置、監視装置および車両は、機械的稼動部がなく、安価で、広い範囲に複数の異なる仰角方向のビーム方向を持つという効果を有し、車載レーダ用アンテナ等に利用されるアンテナ装置、そのアンテナ装置を利用する監視装置および車両等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の構成を示す矢視図
【図2】本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置の線状迂回ループアンテナ素子の+Z軸方向から見た平面図
【図3】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子上の電流振幅特性を示す図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子上の電流位相特性を示す図
【図4】本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子の動作を点波源モデルで示す模式図
【図5】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子100の垂直面(XZ面)の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子100のチルト角方向における円錐面の指向性を示す図
【図6】(a)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子110の垂直面(XZ面)の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子110のチルト角方向における円錐面の指向性を示す図
【図7】(a)本発明の実施の形態1に係る、他の構成の線状迂回ループアンテナ素子の+Z側方向から見た平面図、(b)本発明の実施の形態1の、他の構成の線状迂回ループアンテナ素子の+Z側方向から見た平面図
【図8】(a)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の構成を示す矢視図
【図9】(a)本発明の実施の形態2に係る、他の構成のアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態2に係る、他の構成のアンテナ装置の構成を示す矢視図
【図10】(a)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子の垂直面(XZ面)の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子のチルト角方向における円錐面の指向性を示す図
【図11】(a)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の構成を示す矢視図
【図12】本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置の線状迂回ループアンテナ素子の+Z軸方向から見た平面図
【図13】(a)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子130の垂直面(XZ面)の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子130のチルト角方向における円錐面の指向性を示す図
【図14】(a)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置を構成する別の線状迂回ループアンテナ素子131の垂直面(XZ面)の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態3に係るアンテナ装置を構成する別の線状迂回ループアンテナ素子131のチルト角方向における円錐面の指向性を示す図
【図15】(a)本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置のA−A´断面図
【図16】(a)本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置を構成するスロット迂回ループアンテナ素子の上面図、(b)本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置を構成するスロット迂回ループアンテナ素子の下面図
【図17】(a)本発明の実施の形態4に係る、他の構成のアンテナ装置を構成するスロット迂回ループアンテナ素子の上面図、(b)本発明の実施の形態4に係る、他の構成のアンテナ装置を構成するスロット迂回ループアンテナ素子の下面図
【図18】(a)本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の誘電体基板上に給電切り替えスイッチを設けた場合のスロット迂回ループアンテナ素子の上面図、(b)本発明の実施の形態4に係るアンテナ装置の誘電体基板上に給電切り替えスイッチを設けた場合のスロット迂回ループアンテナ素子の下面図
【図19】(a)本発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の構成を示す矢視図
【図20】本発明の実施の形態5に係るアンテナ装置の線状迂回ループアンテナ素子の+Z軸方向から見た平面図
【図21】(a)本発明の実施の形態5に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子132の垂直面(XZ面)の指向性を示す図、(b)本発明の実施の形態5に係るアンテナ装置を構成する線状迂回ループアンテナ素子132のチルト角方向における円錐面の指向性を示す図
【図22】(a)本発明の実施の形態5に係る、他の構成のアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)本発明の実施の形態5に係る、他の構成のアンテナ装置の構成を示す矢視図
【図23】(a)本発明の実施の形態6の車両周囲監視装置が備えるアンテナ装置の配置を示す図、(b)本発明の実施の形態6の車両周囲監視装置の監視領域を示す図
【図24】本発明の実施の形態6の車両周囲監視装置のブロック構成図
【図25】(a)本発明の実施の形態7に係る、監視装置の各部品を実装した回路基板の斜視図、(b)本発明の実施の形態7に係る、監視装置の各部品を実装した回路基板のB−B´断面図
【図26】従来の電子式ビーム走査アンテナ装置のブロック図
【図27】本発明の「仰角」及び「水平方向」について説明する図
【符号の説明】
【0250】
10、11、12、13、20、21、22 アンテナ装置
100、110、111、112、115、116、130、131、132、133、134 線状迂回ループアンテナ素子
101a〜101d、106a、106b、901a〜901d、902a〜902d、903a〜903d 線状ループ素子
102a、102b、105a、105b、107a、107b、905a、905b 線状迂回素子
103、113、117 給電ポート
120、121、122、123、620、908 反射板
140、142、603、613、906a、916a、917a 第1給電ポート
141、143、604、614、906b、916b、917b 第2給電ポート
401、411、421、422、501、512、521、522、1001、1002 XZ面の指向性
403、413、423、424、503、514、523、524、1003、1004 チルト角における円錐面の指向性
600、610 スロット迂回ループアンテナ素子
601a〜601d スロットループ素子
602a、602b スロット迂回素子
605、605a、605b マイクロストリップライン(MSL)
630、907、909、911 誘電体基板
640 グランド面
701a〜701d 接続導体
750 給電端子
760、761 スイッチ
760a〜760d 端子
770 GND
801 ショートピン
802 ショートライン
810 筐体
811 基板
812、813 IC
814 第1のアンテナ部
815 第2のアンテナ部
816 回路部
820 第1のスロット迂回ループアンテナ素子部
821 第2のスロット迂回ループアンテナ素子部
822 給電ライン
823 スロット素子部
824、826 回路グランド
825、827 回路ライン
904a〜904d 線状連結素子
1000 車両周囲監視装置
1101、1102、1103、1104 監視領域
1201 タイミング制御部
1202 送信部
1203 受信部
1204 処理部
1205 出力手段
1206 送受切替スイッチ
1207 走行状況情報格納部
1208 ビーム方向指定手段
1209 給電切替スイッチ
1210 車速センサ
1220 舵角センサ
1230 スイッチ(方向指示器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ給電部を有している複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子のそれぞれに対向する複数の反射部とを備えたアンテナ装置において、
前記各アンテナ素子は、各誘電体基板上の導体で、同一平面上もしくは互いに平行な平面上に形成されており、それぞれ、所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ素子と、前記対称軸上で前記ループ素子上に設けられた一対の迂回素子とを有し、
前記給電部は、前記対称軸に対して少なくとも一方側の前記ループ素子上に設けられ、
前記各アンテナ素子の前記対称軸の方向は互いに同じであり、
前記各反射部は、対向する前記各アンテナ素子と互いに平行な平面上にあり、
前記各アンテナ素子と対向する前記各反射部との距離は、前記アンテナ素子毎に異なっており、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれのビーム方向は、前記各アンテナ素子が形成されている平面に垂直な軸を基準とする仰角に関しては、前記反射板との距離が異なることによって、互いに異なっている、アンテナ装置。
【請求項2】
前記各アンテナ素子は、前記各誘電体基板の表面に形成された導体層の一部を削剥することにより形成されたスロットにより、前記ループ素子および前記一対の迂回素子が形成されており、
前記給電部は、前記ループ素子上に設けられているのに代えて、前記対称軸に対して少なくとも一方側の前記ループ素子の所定の位置の近傍に設けられている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記複数の反射部は、1枚の反射板で構成されている、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記ループ素子は、対向する頂点に対応する部位が前記対称軸上にある菱形形状であり、
前記ループ素子の前記菱形形状の1辺の長さは、1/4〜3/8波長の長さであり、
前記一対の迂回素子は、それぞれ、1/4波長の長さであり、かつ前記頂点に対応する部位から前記菱形形状の外側または内側に向けて設けられた、折り返した形状の突起部である、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ素子は、複数の構成部からなっており、
それぞれの前記構成部は、前記所定の対称軸を基準に左右対称形状でループ状に配置されたループ部位と、前記対称軸上で前記ループ部位上に前記ループ部位の外側に向けて設けられた一対の迂回部位とを有しており、
前記各構成部は、それぞれの前記迂回部位同士が連結されて前記対称軸上に構成されている、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ素子の構成部の数が、前記各アンテナ素子毎に異なっている、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記誘電体基板の裏面には、マイクロストリップラインが設けられており、
前記給電部が設けられている前記所定の位置の近傍で、前記誘電体基板を挟んで、前記ループ素子と前記マイクロストリップラインが対向しており、
前記各アンテナ素子は、それぞれ前記給電部を複数有しており、
前記各アンテナ素子が有している複数の前記給電部のうち、給電する給電部を切り替える給電切り替え部をさらに備え、
前記給電切り替え部は、前記マイクロストリップライン上の前記所定の位置から1/4波長の奇数倍の距離の位置に設けられており、前記各給電部のそれぞれに対して短絡と給電とを切り替える、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記誘電体基板の裏面には、マイクロストリップラインが設けられており、
前記給電部が設けられている前記所定の位置の近傍で、前記誘電体基板を挟んで、前記ループ素子と前記マイクロストリップラインが対向しており、
前記各アンテナ素子は、それぞれ前記給電部を複数有しており、
前記各アンテナ素子が有している複数の前記給電部のうち、給電する給電部を切り替える給電切り替え部をさらに備え、
前記給電切り替え部は、前記マイクロストリップライン上の前記所定の位置から1/2波長の整数倍の距離の位置に設けられており、前記各給電部のそれぞれに対して開放と給電とを切り替える、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
電波を送出して、その電波が反射した電波を受信することにより物体や人体の対象物を検出する監視装置において、
広角の単一ビームの電波を送出する、またはそれより狭い範囲の複数のビーム方向の電波を送出する送信アンテナ部と、
請求項1または2に記載のアンテナ装置を有し、前記送信アンテナ部が送信し対象物で反射した電波を複数のビーム方向で受信する受信アンテナ部と、
前記電波として送出するための信号を前記送信アンテナ部に伝達する送信部と、
前記受信アンテナ部が受信した電波を、前記受信アンテナ部から信号として伝達され検出する受信部と、
前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子が有している複数の給電部のうちの、給電する給電部の切り替えを制御して、前記受信アンテナ部で受信する電波の方向を切り替えて受信させることにより監視領域を制御するビーム切り替え部とを備えた監視装置。
【請求項10】
前記送信アンテナ部は、請求項1または2に記載のアンテナ装置を有する、前記広角の単一ビームよりも狭い範囲の複数のビーム方向の電波を送出するものであり、
前記ビーム切り替え部は、前記送信アンテナ部が有する前記アンテナ装置の複数のアンテナ素子が有している複数の給電部のうちの、給電する給電部の切り替えも制御して、前記送信アンテナ部が送出する電波のビーム方向も切り替え、監視領域を制御する、請求項9に記載の監視装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の監視装置を搭載した車両。
【請求項12】
前記監視装置が、前記ビーム方向が車両前方の左右方向に切り替えられる向きで、車両の前方を監視する位置に取り付けられている、請求項11に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−288537(P2007−288537A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113874(P2006−113874)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】