説明

インバータ回路

【課題】ブートストラップ回路によって正及び負の電源電圧を供給できるようにして、正及び負の電源電圧が必要なスイッチング素子を駆動できるようにする。
【解決手段】上アーム正側及び負側駆動電圧(Vuh,Vul)の何れかを、前記上アーム側スイッチング素子(10)のゲート電圧として印加する上アーム側ドライブ回路(20)と、下アーム正側及び負側の駆動電圧(Vxh,Vxl)の何れかを、前記下アーム側スイッチング素子(11)にゲート電圧として印加する下アーム側ドライブ回路(21)とを設ける。また、上アーム側ドライブ回路(20)に上アーム正側駆動電圧(Vuh)を供給する正側電圧用コンデンサ(C1)と、上アーム側ドライブ回路(20)に上アーム負側駆動電圧(Vul)を供給する負側電圧用コンデンサ(C2)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流を交流に変換し、電動機(例えば多相モータ)等の負荷を駆動するインバータ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気調和装置の圧縮機を駆動する電動機(例えば多相モータ)等の運転状態を制御するために、いわゆる多相インバータ回路が用いられる。この多相インバータ回路では、それぞれの相に対して、上アーム側用及び下アーム側用のスイッチング素子が設けられ、上アーム側のスイッチング素子が駆動されてオンになることによって、所定の高電圧が出力線に接続され、下アーム側のスイッチング素子が駆動されてオンになることによって出力線が接地される。このように各スイッチング素子を駆動するため、多相インバータ回路では、上アーム側のスイッチング素子を駆動する上アーム側ドライブ回路に対して電源電圧を供給する、いわゆるブートストラップ回路が用いられる(例えば特許文献1を参照)。このブートストラップ回路は、上アーム側ドライブ回路に電源電圧を供給するブートストラップキャパシタを備えており、下アーム側スイッチング素子がオンになった際にこのブートストラップキャパシタが充電され、このブートストラップキャパシタによって上アーム側スイッチング素子に電源電圧が供給される。
【0003】
ところで、このような多相インバータ回路では、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子が用いられるのが一般的である。また、近年ではSiC(Silicon Carbite)のような材料を用いたワイドバンドギャップ半導体が盛んに開発されており、低損失で耐熱性が高い等の特性から上記のスイッチング素子としての応用が期待されている。とりわけ、SiCを用いた半導体素子は、MOSFET構造とするよりも接合型電界効果トランジスタ(以下、JFETと略記する。JFET:Junction Field Effect Transistor)構造とした方が損失を小さくしやすいため、接合型電界効果トランジスタとしての応用が期待されている。
【特許文献1】特開2001-275266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、JFETの中には、オンオフを制御する際に、正の電源電圧に加え負の電源電圧を必要とするものもあるが、従来のブートストラップ回路では正及び負の両方の電源電圧を供給することは考慮されてはいなかった。これに対しては例えば、従来のブートストラップ回路に加えて、それぞれのアームに対して負の電圧を供給する電源回路を設けることも考えられるが、これでは回路規模が大きくなり、延いてはインバータ回路のコストアップに繋がることになる。
【0005】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、ブートストラップ回路によって正及び負の電源電圧を供給できるようにして、正及び負の電源電圧が必要なスイッチング素子を駆動できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、第1の発明は、
上アーム側スイッチング素子(10)を含んだ上アームと、下アーム側スイッチング素子(11)を含んだ下アームとからなるアームを複数備え、前記上アーム側スイッチング素子(10)が正側及び負側駆動電圧(Vuh,Vul,…)によって駆動されてスイッチングを行って、複数相の交流電力を出力するインバータ回路であって、
上アーム正側及び負側駆動電圧(Vuh,Vul)の何れかを、前記上アーム側スイッチング素子(10)のゲート電圧として印加する上アーム側ドライブ回路(20)と、
下アーム正側及び負側の駆動電圧(Vxh,Vxl)の何れかを、前記下アーム側スイッチング素子(11)にゲート電圧として印加する下アーム側ドライブ回路(21)と、
前記上アーム側ドライブ回路(20)に、前記上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子を基準とした正の電圧を前記上アーム正側駆動電圧(Vuh)として供給する正側電圧用コンデンサ(C1)と、
前記上アーム側ドライブ回路(20)に、前記上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子を基準とした負の電圧を前記上アーム負側駆動電圧(Vul)として供給する負側電圧用コンデンサ(C2)と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)が、それぞれ充電されると、この正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)が正及び負の電圧を上アーム側ドライブ回路(20)に供給する。そして、正側電圧用コンデンサ(C1)によって供給される正の電圧は、上アーム側スイッチング素子(10)をオンにする駆動電圧として使用でき、また、負側電圧用コンデンサ(C2)によって供給される負の電圧は、上アーム側スイッチング素子(10)をオフにする駆動電圧として使用できる。すなわち正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)がいわゆるブートストラップキャパシタとして機能する。
【0008】
また、第2の発明は、
第1の発明のインバータ回路において、さらに、
前記下アーム側ドライブ回路(21)に対して前記下アーム側スイッチング素子(11)のソース端子を基準とした正の電圧を前記下アーム正側駆動電圧(Vxh)として供給するとともに、前記下アーム側スイッチング素子(11)を介して前記正側電圧用コンデンサ(C1)を充電する下アーム用正側直流電源(Vg1)と、
前記上アーム側スイッチング素子(10)を介して前記負側電圧用コンデンサ(C2)を充電する上アーム用負側直流電源(Vg3)と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
これにより、下アーム側スイッチング素子(11)がオンの場合に、正側電圧用コンデンサ(C1)を下アーム用正側直流電源(Vg1)に接続する経路が形成されて、正側電圧用コンデンサ(C1)が充電される。また、上アーム側スイッチング素子(10)がオンの場合に、負側電圧用コンデンサ(C2)を直流電源(Vg3)に接続する経路が形成されて、負側電圧用コンデンサ(C2)が充電される。そして、この正側電圧用コンデンサ(C1)は上アーム側ドライブ回路(20)に対して正の電源電圧を供給し、負側電圧用コンデンサ(C2)は上アーム側ドライブ回路(20)に対して負の電源電圧を供給する。
【0010】
また、第3の発明は、
第2の発明のインバータ回路において、
前記下アーム側ドライブ回路(21)を制御して前記下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせて前記正側電圧用コンデンサ(C1)を充電させた後に、前記上アーム側ドライブ回路(20)を制御して、充電された前記正側電圧用コンデンサ(C1)によって前記上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせて前記負側電圧用コンデンサ(C2)を充電させる制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とする。
【0011】
これにより、制御回路(30)の制御によって、下アーム側スイッチング素子(11)がオンになって正側電圧用コンデンサ(C1)が充電される。そしてその後、この充電された正側電圧用コンデンサ(C1)によって上アーム側スイッチング素子(10)がオンにされ、負側電圧用コンデンサ(C2)が充電される。すなわち、正側電圧用コンデンサ(C1)、負側電圧用コンデンサ(C2)の順で、片方ずつ充電される。
【0012】
また、第4の発明は、
第2の発明のインバータ回路において、
前記下アーム側ドライブ回路(21)を制御して前記下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせて前記正側電圧用コンデンサ(C1)を所定期間だけ充電させる第1のモードと、前記上アーム側ドライブ回路(20)を制御して、充電された前記正側電圧用コンデンサ(C1)によって前記上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせて前記負側電圧用コンデンサ(C2)を所定期間だけ充電させる第2のモードとを交互に実行する制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とする。
【0013】
これにより、第1のモードで正側電圧用コンデンサ(C1)が所定期間だけ充電され、それに続く第2のモードで負側電圧用コンデンサ(C2)が所定期間だけ充電される。そして、この第1のモード及び第2のモードが交互に繰り返される。すなわち、正側電圧用コンデンサ(C1)と負側電圧用コンデンサ(C2)とが、所定期間ずつ交互に充電される。その結果、正側電圧用コンデンサ(C1)と負側電圧用コンデンサ(C2)の双方の電圧が徐々に上昇する。
【0014】
また、第5の発明は、
第2の発明のインバータ回路において、
前記上アーム側ドライブ回路(20)を制御して、前記上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせて前記負側電圧用コンデンサ(C2)を充電させた後に、前記下アーム側ドライブ回路(21)を制御して前記下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせて前記正側電圧用コンデンサ(C1)を充電させる制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とする。
【0015】
これにより、上アーム側スイッチング素子(10)がオンになって負側電圧用コンデンサ(C2)が充電され、そして上アーム側スイッチング素子(10)がオフになった後に、下アーム側スイッチング素子(11)がオンになって正側電圧用コンデンサ(C1)が充電される。例えば、第2の発明のインバータ回路では、正側電圧用コンデンサ(C1)に充電するには下アーム側スイッチング素子(11)をオン、且つ上アーム側スイッチング素子(10)をオフにする必要がある。しかし、上アーム側スイッチング素子(10)、下アーム側スイッチング素子(11)として、いわゆるノーマリオンタイプのスイッチング素子を採用すると、運転開始時には負側電圧用コンデンサ(C2)が充電されていない状態なので、上アーム側スイッチング素子(10)をオフにできず、正側電圧用コンデンサ(C1)には充電できない。これに対して、第5の発明では、まず、制御回路(30)の制御によって、上アーム側スイッチング素子(10)を介して負側電圧用コンデンサ(C2)が先に充電されるので、ノーマリオンタイプのスイッチング素子を採用した場合の充電シーケンスを容易に制御できる。
【0016】
また、第6の発明は、
第1の発明のインバータ回路において、さらに、
前記下アーム側ドライブ回路(21)に対して前記下アーム側スイッチング素子(11)のソース端子を基準とした正の電圧を前記下アーム正側駆動電圧(Vxh)として供給するとともに、前記正側電圧用コンデンサ(C1)の正側に接続されて該正側電圧用コンデンサ(C1)を充電する下アーム用正側直流電源(Vg1)と、
前記下アーム側スイッチング素子(11)に対して、該下アーム側スイッチング素子(11)のソース端子を基準とした負の電圧である下アーム負側駆動電圧(Vxl)を供給する下アーム用負側直流電源(Vg2)と、
前記負側電圧用コンデンサ(C2)の負側と前記下アーム用負側直流電源(Vg2)との間に設けられた充電用スイッチング素子(40)と、
を備えていることを特徴とする。
【0017】
これにより、正側電圧用コンデンサ(C1)と負側電圧用コンデンサ(C2)とが直列接続の状態で、直列接続状態の下アーム用正側直流電源(Vg1)と下アーム用負側直流電源(Vg2)から、これらの両電源の電圧を合わせた電圧が印加される。すなわち、この下アーム用正側直流電源(Vg1)と下アーム用負側直流電源(Vg2)とによって、正側電圧用コンデンサ(C1)と負側電圧用コンデンサ(C2)とが同時に充電される。
【0018】
また、第7の発明は、
第6の発明のインバータ回路において、
前記上アーム側スイッチング素子(10)がオフの場合に、所定期間だけ前記充電用スイッチング素子(40)をオンに制御する制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とする。
【0019】
これにより、上アーム側スイッチング素子(10)がオフの場合にのみ、正側電圧用コンデンサ(C1)と負側電圧用コンデンサ(C2)の充電が行われる。
また、第8の発明は、
第1の発明から第7の発明の何れかの1つのインバータ回路において、
前記スイッチング素子(10,11)は、ワイドバンドギャップ半導体を用いたことを特徴とする。
【0020】
これにより、ワイドバンドギャップ半導体で構成された上アーム側スイッチング素子(10)がスイッチング動作を行う。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)によってそれぞれ正及び負の電圧を上アーム側スイッチング素子(10)に供給できるので、正及び負の両方の電圧を供給するブートストラップ回路を実現でき、このブートストラップ回路により、正及び負の電源電圧によって駆動されるスイッチング素子を駆動することができる。
【0022】
また、第2の発明によれば、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)を容易に充電することができる。
【0023】
また、第3の発明によれば、正側電圧用コンデンサ(C1)、負側電圧用コンデンサ(C2)の順で片方ずつこれらのコンデンサが充電されるので、いわゆるノーマリオフタイプのスイッチング素子を採用して、上アーム側スイッチング素子(10)がオフ状態から運転開始時されるインバータ回路において、正側電圧用コンデンサ(C1)及び負側電圧用コンデンサ(C2)を容易に充電できる。
【0024】
また、第4の発明によれば、充電時に正側電圧用コンデンサ(C1)と負側電圧用コンデンサ(C2)の双方の電圧が徐々に上昇するので、上アーム側スイッチング素子(10)に対していわゆるノーマリオフタイプのスイッチング素子を採用した場合に、該上アーム側スイッチング素子(10)が誤ってオンになる危険性を低減できる。
【0025】
また、第5の発明によれば、負側電圧用コンデンサ(C2)が充電された後に、正側電圧用コンデンサ(C1)が充電されるので、いわゆるノーマリオンタイプの素子を上アーム側スイッチング素子(10)に採用して、上アーム側スイッチング素子(10)がオン状態から運転開始されるインバータ回路において、正側電圧用コンデンサ(C1)及び負側電圧用コンデンサ(C2)を容易に充電できる。
【0026】
また、第6の発明、第7の発明によればそれぞれ、下側のアーム用に設けられている、下アーム用正側直流電源(Vg1)と下アーム用負側直流電源(Vg2)とによって、正側電圧用コンデンサ(C1)と負側電圧用コンデンサ(C2)とがそれぞれ充電されるので、上アーム用の電源を新たに設けることなく上アームを駆動できる。
【0027】
また、第8の発明によれば、スイッチング素子(10,11)を低損失且つ高耐熱性にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下の各実施形態の説明において、一度説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態に係るインバータ回路は、例えば、空気調和装置の圧縮機を回転駆動する電動機(多相モータ)等の負荷を駆動するために用いられる。
【0030】
図1は、本発明の実施形態1に係るインバータ回路(1)の主要部分を抜粋した回路図である。このインバータ回路(1)は、端子(T1,T2)に接続されたコンバータ回路(図示省略)から直流電力が供給され、複数の相(例えば三相交流のU相、V相、W相)の交流電力を出力端子(図1では1相分の端子(T3)のみを記載してある)に接続された多相モータ(図示省略)などの負荷に対して出力する。
【0031】
−インバータ回路(1)の構成−
インバータ回路(1)は、三相交流の各相に対応した電力を出力する3組のアームを備え、それぞれのアームは、上アーム側スイッチング素子(10)を含んだ上アームと、下アーム側スイッチング素子(11)を含んだ下アームとからなる。なお、図1では、1つのアームに関連する回路のみを代表で図示してある。
【0032】
このインバータ回路(1)は、具体的には図1に示すように、上アーム側スイッチング素子(10)、下アーム側スイッチング素子(11)、上アーム側ドライブ回路(20)、下アーム側ドライブ回路(21)、正側電圧用コンデンサ(C1)、負側電圧用コンデンサ(C2)、直流電源(Vg1,Vg2,Vg3)、ダイオード(D1〜D4)、抵抗(R1〜R4)、コンデンサ(C3〜C5)を備えている。これらのうち、直流電源(Vg1,Vg2,Vg3)及びコンデンサ(C5)以外は、アーム毎に設けられている。
【0033】
上アーム側スイッチング素子(10)及び下アーム側スイッチング素子(11)は、正及び負の電源電圧によって駆動されるスイッチング素子であり、例えばゲート電圧が3Vでオンになり、−15Vでオフになる。本実施形態では、上アーム側スイッチング素子(10)及び下アーム側スイッチング素子(11)にはSiCのようなワイドバンドギャップ半導体を用いてJFET構造を採用している。JFETは、MOSFETのように寄生ダイオードがないので、帰還用のダイオードとして、上アーム側スイッチング素子(10)及び下アーム側スイッチング素子(11)には、それぞれダイオード(D3,D4)をそれぞれのドレイン・ソース端子間に設けている。なお、それぞれのスイッチング素子(10,11)として採用したJFETは例示であり、その他にも例えば、静電誘導トランジスタ(SIT:Static induction transistor)、金属半導体電界効果型トランジスタ(MESFET:Metal-Semiconductor Field-Effect-Transistor)、ヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET:Hetero junction Field Effect Transistor)、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)等を採用することも可能である。
【0034】
上アーム側スイッチング素子(10)と下アーム側スイッチング素子(11)とは直列接続、すなわち上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子と下アーム側スイッチング素子(11)のドレイン端子とが接続されている。また、上アーム側スイッチング素子(10)のドレインは端子(T1)に接続され、下アーム側スイッチング素子(11)のソース端子は、GNDラインに接続されている。このGNDラインは端子(T2)に接続されている。また、上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子は端子(T3)に接続されている。すなわち、上アーム側スイッチング素子(10)がオンの場合に端子(T1)と端子(T3)とが導通し、下アーム側スイッチング素子(11)がオンの場合に端子(T3)が接地する。なお、端子(T1)と端子(T2)との間には、平滑用コンデンサとしてコンデンサ(C5)が接続されている。
【0035】
上アーム側ドライブ回路(20)は、上アーム側スイッチング素子(10)に抵抗(R3)を介して所定の電圧をゲート端子に印加する。具体的には、上アーム側ドライブ回路(20)は、後に詳述するように、上アーム正側駆動電圧(Vuh)(例えば3V)と上アーム負側駆動電圧(Vul)(例えば-15V)が入力され、制御回路(30)から入力された制御信号に応じて、入力された何れかの電源電圧を選択して上アーム側スイッチング素子(10)のゲート端子に印加する。
【0036】
同様に、下アーム側ドライブ回路(21)は、下アーム側スイッチング素子(11)に抵抗(R4)を介して所定の電圧をゲート端子に印加する。具体的には、下アーム側ドライブ回路(21)は、後に詳述するように、下アーム正側駆動電圧(Vxh)(例えば3V)と下アーム負側駆動電圧(Vxl)(例えば−15V)が入力され、制御回路(30)の制御に応じて、入力された何れかの電圧を選択して下アーム側スイッチング素子(11)のゲート端子に印加する。
【0037】
正側電圧用コンデンサ(C1)は、上アーム側ドライブ回路(20)に対して上アーム正側駆動電圧(Vuh)を供給するためのコンデンサである。この例では、正側電圧用コンデンサ(C1)の一端が上アーム側ドライブ回路(20)に接続されて、他端は上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子に接続されている。
【0038】
また、負側電圧用コンデンサ(C2)は、上アーム側ドライブ回路(20)に対して下アーム負側駆動電圧(Vxl)を供給するためのコンデンサである。この負側電圧用コンデンサ(C2)は、その一端が上アーム側ドライブ回路(20)に接続され、他端は上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子に接続されている。
【0039】
直流電源(Vg1)は、下アーム側ドライブ回路(21)に下アーム正側駆動電圧(Vxh)を供給する直流電源である。詳しくは、直流電源(Vg1)は、正側が下アーム側ドライブ回路(21)に接続され、負側がGNDラインと接続されて接地されている。また、この直流電源(Vg1)には平滑用としてコンデンサ(C3)が並列に接続されている。
【0040】
また、この直流電源(Vg1)は、その正側が抵抗(R1)及びダイオード(D1)を介して正側電圧用コンデンサ(C1)の一端側(上アーム側ドライブ回路(20)と接続された側))に接続されている。これは、直流電源(Vg1)によって、正側電圧用コンデンサ(C1)を充電するためである。すなわち、下アーム側スイッチング素子(11)がオンになると、図1において実線矢印で示した経路が形成され、正側電圧用コンデンサ(C1)に対して充電される。なお、ダイオード(D1)は、正側電圧用コンデンサ(C1)に逆方向の電圧が印加されるのを防止するために設けてある(上アーム側スイッチング素子(10)がオンすると、正側電圧用コンデンサ(C1)、抵抗(R1)、直流電源(Vg1)に、高電圧(端子T1-T2間電圧)が印加される)。
【0041】
直流電源(Vg2)は、下アーム側ドライブ回路(21)に下アーム負側駆動電圧(Vxl)を供給する。詳しくは、直流電源(Vg2)は、正側がGNDラインと接続されて接地され、負側が下アーム側ドライブ回路(21)に接続されている。また、この直流電源(Vg2)には平滑用としてコンデンサ(C4)が並列に接続されている。
【0042】
直流電源(Vg3)は、負側電圧用コンデンサ(C2)を充電するための負側用直流電源である。具体的には、この直流電源(Vg3)は、その正側が上アーム側スイッチング素子(10)のドレイン端子に接続され、負側が抵抗(R2)とダイオード(D2)とを介して負側電圧用コンデンサ(C2)の一端側(上アーム側ドライブ回路(20)と接続された側)に接続されている。なお、ダイオード(D2)は、負側電圧用コンデンサ(C2)に逆方向の電圧が印加されるのを防止するために設けてある(下アーム側スイッチング素子(11)がオンすると、直流電源(Vg3)、抵抗(R2)、正側電圧用コンデンサ(C1)、高電圧(端子T1-T2間電圧)が印加される)。これにより、上アーム側スイッチング素子(10)がオンになった場合に、図1において破線で示す経路が形成され、負側電圧用コンデンサ(C2)が充電される。なお、この直流電源(Vg3)は、各アームで共用すればよい。
【0043】
制御回路(30)は、それぞれのドライブ回路(20,21)を制御するための回路である。詳しくは、この制御回路(30)はマイクロコンピュータなどにより形成できる。この制御回路(30)は、それぞれのスイッチング素子(10,11)をオンにする場合には、正の電源電圧をドライブ回路(20,21)に出力させ、オフにする場合には、負の電源電圧をドライブ回路(20,21)に出力させる。より具体的には、この制御回路(30)は、それぞれのスイッチング素子(10,11)をオンにする場合にHレベルの制御信号を出力し、オフにする場合にLレベルの制御信号を出力する。そして、例えば上アーム側ドライブ回路(20)は、Hレベルの制御信号が入力されると、上アーム正側駆動電圧(Vuh)(例えば3V)を選択して上アーム側スイッチング素子(10)のゲート端子に出力して上アーム側スイッチング素子(10)をオンにし、Lレベルの制御信号が入力されると、上アーム負側駆動電圧(Vul)(例えば-15V)を選択して上アーム側スイッチング素子(10)のゲート端子に出力し、上アーム側スイッチング素子(10)をオフにする。同様に、下アーム側ドライブ回路(21)は、Hレベルの制御信号が入力されると、下アーム負側駆動電圧(Vxl)(例えば3V)を選択して下アーム側スイッチング素子(11)のゲート端子に出力して下アーム側スイッチング素子(11)をオンにし、Lレベルの制御信号が入力されると、下アーム負側駆動電圧(Vxl)(例えば-15V)を選択して下アーム側スイッチング素子(11)のゲート端子に出力し、下アーム側スイッチング素子(11)をオフにする。なお、制御回路(30)が上アーム側ドライブ回路(20)に対して出力する制御信号を上アーム駆動信号(Gu)と呼び、下アーム側ドライブ回路(21)に対して出力する制御信号を下アーム駆動信号(Gx)と呼ぶことにする。
【0044】
−インバータ回路(1)におけるスイッチング素子の駆動動作−
本実施形態では、制御回路(30)によって、種々の手順で正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)を充電してスイッチング素子を駆動することができる。以下に充電の手順の具体例を説明する。
【0045】
<第1の充電手順例>
図2は、この第1の充電手順例に係る正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。
【0046】
この例では、電動機の運転を開始させる運転指令信号(図2を参照)がアクティブ状態(この例ではHレベル)になると、まず、制御回路(30)が下アーム側ドライブ回路(21)を制御して下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせる。詳しくは、図2に示すように、制御回路(30)は、t1〜t2の期間に、下アーム駆動信号(Gx)として複数のパルス信号を出力し、下アーム駆動信号(Gx)がHレベルの期間に、直流電源(Vg1)から供給された正側の電源電圧を下アーム側ドライブ回路(21)に選択させて、その正の電圧を下アーム側スイッチング素子(11)のゲート端子に印加させる。これにより、下アーム駆動信号(Gx)がHレベルの期間に、図1において実線矢印で示した経路が形成され、その結果、正側電圧用コンデンサ(C1)が充電されて、上アーム正側駆動電圧(Vuh)が徐々に上昇する。
【0047】
正側電圧用コンデンサ(C1)が充電されると、次に制御回路(30)は、t2〜t3の期間、上アーム側スイッチング素子(10)及び上アーム側ドライブ回路(20)の双方をオフにする。この期間t2〜t3は、上アーム側スイッチング素子(10)、下アーム側スイッチング素子(11)のそれぞれがオンになる期間が重複しないようにするために設けてある。
【0048】
次に制御回路(30)は、上アーム側ドライブ回路(20)を制御して上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせる。詳しくは、図2に示すように、制御回路(30)は、t3〜t4の期間に、上アーム駆動信号(Gu)として複数のパルス信号を出力し、上アーム駆動信号(Gu)がHレベルの期間に、正側電圧用コンデンサ(C1)から供給された正側の電源電圧を上アーム側ドライブ回路(20)に選択させて、その正の電圧を上アーム側スイッチング素子(10)のゲート端子に印加させる。これにより、図1において破線で示す経路が形成され、その結果、負側電圧用コンデンサ(C2)が充電されて、上アーム負側駆動電圧(Vul)の電圧が徐々に上昇する。
【0049】
以上の制御回路(30)の制御により、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)が充電される。そして、制御回路(30)が、図2に示したt4以降にそれぞれのドライブ回路(20,21)を制御して、端子(T3)に繋がれた電動機(負荷)を駆動するための駆動波形を出力させると、電動機がその電力に応じて駆動する。
【0050】
<第2の充電手順例>
図3は、第2の充電手順例に係る正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。
【0051】
この例では、制御回路(30)が下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせて正側電圧用コンデンサ(C1)を所定期間だけ充電させる第1のモードと、充電された前記正側電圧用コンデンサ(C1)によって上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせて負側電圧用コンデンサ(C2)を所定期間だけ充電させる第2のモードとを交互に実行させる。
【0052】
図3の例では、制御回路(30)は、t1〜t2の期間に、互いに位相が180度異なるパルス信号として、上アーム駆動信号(Gu)及び下アーム駆動信号(Gx)を出力する。これにより、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の両方がt1〜t2の期間に交互に充電され、上アーム正側駆動電圧(Vuh)及び上アーム負側駆動電圧(Vul)の双方が徐々に上昇する。
【0053】
上記の制御回路(30)の制御により、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)が充電される。そして、制御回路(30)が、図2に示したt2以降にそれぞれのドライブ回路(20,21)を制御して、端子(T3)に繋がれた電動機(負荷)を駆動するための駆動波形を出力させると、電動機がその電力に応じて駆動する。
【0054】
上記のように正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)を交互に充電する形態は次のような効果がある。すなわち、下アーム側スイッチング素子(11)を駆動している間に、負側電圧用コンデンサ(C2)が全く充電されていないとすれば、上アーム側スイッチング素子(10)の特性如何によっては、上アーム側スイッチング素子(10)が誤ってオンになる可能性がある。しかしながら、上記のように、正側電圧用コンデンサ(C1)、負側電圧用コンデンサ(C2)の双方を交互に充電することで、下アーム側スイッチング素子(11)を駆動している期間には、負側電圧用コンデンサ(C2)は満充電の状態ではないもののある程度の電圧を出力でき、その結果、上アーム側スイッチング素子(10)が誤ってオンになる危険性を低減できる。
【0055】
<第3の充電手順例>
図4は、第3の充電手順例に係る正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。この例は、ゲート端子に電圧を印加していない状態でオンになる、いわゆるノーマリオンタイプのスイッチング素子を上アーム側スイッチング素子(10)等に使用するのに適している。
【0056】
具体的には、この例では負側電圧用コンデンサ(C2)を充電した後に、正側電圧用コンデンサ(C1)を充電する。すなわち、まず、図4に示すように、制御回路(30)は、t1〜t2の期間に、上アーム駆動信号(Gu)として複数のパルス信号を出力し、上アーム駆動信号(Gu)がHレベルの期間に、直流電源(Vg3)から供給された負側の電源電圧を上アーム側ドライブ回路(20)に選択させて、その電圧を下アーム側スイッチング素子(11)のゲート端子に印加させる。これにより、下アーム駆動信号(Gx)がHレベルの期間に、図5において実線矢印で示した経路を電流が流れ、その結果、負側電圧用コンデンサ(C2)が充電されて、下アーム負側駆動電圧(Vxl)が上昇する。
【0057】
負側電圧用コンデンサ(C2)が充電されると次に制御回路(30)は、t2〜t3の期間、上アーム側スイッチング素子(10)及び上アーム側ドライブ回路(20)の双方をオフにする。
【0058】
次に制御回路(30)は下アーム側ドライブ回路(21)を制御して下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせる。詳しくは、図4に示すように、制御回路(30)は、t3〜t4の期間に、下アーム駆動信号(Gx)として複数のパルス信号を出力し、下アーム駆動信号(Gx)がHレベルの期間に、直流電源(Vg1)から供給された正側の電源電圧を下アーム側ドライブ回路(21)に選択させて、その電圧を下アーム側スイッチング素子(11)のゲート端子に印加させる。これにより、図5において破線で示す経路に電流が流れ、その結果、正側電圧用コンデンサ(C1)が充電されて、上アーム正側駆動電圧(Vuh)の電圧が上昇する。
【0059】
以上の制御回路(30)の制御により、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)が充電される。そして、制御回路(30)は、図4に示したt4以降に、それぞれのドライブ回路(20,21)を制御して、端子(T3)に繋がれた負荷を駆動するための駆動波形を出力させる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、各アームに対して負側用のコンデンサを設けて制御回路(30)が上記の何れかの充電手順でそれぞれのドライブ回路(20,21)を制御することでこれらを各アームで共用する直流電源(Vg3)によって充電するようにした。そして、この動作は図1に示したアーム以外のアームにおいても同様に行われ、インバータ回路(1)に繋いだ負荷(多相モータなど)の運転状態が制御される。すなわち、本実施形態によれば、アーム毎に電源回路を設けることなくブートストラップ回路によって正及び負の電源電圧を供給してスイッチング素子を駆動できる。
【0061】
《発明の実施形態2》
図6は、本発明の実施形態2に係るインバータ回路(2)の主要部分を抜粋した回路図である。この例では、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電用に下アーム側の直流電源(Vg1)と直流電源(Vg2)とを用いる。すなわち、インバータ回路(2)は、直流電源(Vg3)(実施形態1を参照)が不要である。このインバータ回路(2)は、具体的には、直流電源(Vg3)の代わりに、充電用スイッチング素子(40)と充電用スイッチング素子駆動回路(41)とを備えている。
【0062】
充電用スイッチング素子(40)は、ソース端子が直流電源(Vg2)の負側と接続され、ドレイン端子が抵抗(R5)を介して負側電圧用コンデンサ(C2)の一端(上アーム側ドライブ回路(20)に接続された側)に接続されている。また、充電用スイッチング素子(40)のゲート端子は、充電用スイッチング素子駆動回路(41)が接続されている。
【0063】
この充電用スイッチング素子駆動回路(41)は、充電用スイッチング素子駆動回路(41)のゲート端子に対して充電用スイッチング素子駆動信号(G1)を所定のタイミングで出力して充電用スイッチング素子(40)のオンオフを制御する。充電用スイッチング素子(40)がオンになると図6に実線矢印で示した経路が形成される。すなわち、直列状態の正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)に対して、直列接続状態の直流電源(Vg1)と直流電源(Vg2)が接続され、正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)が同時に充電される。
【0064】
この充電は、上アーム側スイッチング素子(10)がオフの場合(帰還用ダイオードがある場合はダイオード(D3)もオフの場合)にのみ充電用スイッチング素子(40)がオンになるようにして行う。より具体的には、以下のように充電用スイッチング素子駆動回路(41)で、充電用スイッチング素子(40)のオンオフを制御することが考えられる。
【0065】
具体的には、例えば、充電用スイッチング素子(40)に対して下アーム側ドライブ回路(21)と同じ制御信号を、充電用スイッチング素子(40)のゲート端子に入力することが考えられる。図7は、この場合の正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。この例では、t1〜t2の期間に、充電用スイッチング素子駆動回路(41)は、充電用スイッチング素子駆動信号(G1)として下アーム駆動信号(Gx)と同じパルス信号を、充電用スイッチング素子(40)のゲート端子に出力している。すなわち、このようにすることで、下アーム側ドライブ回路(21)等の制御に使用する制御回路(30)を、充電用スイッチング素子駆動回路(41)として利用できる。
【0066】
また、より好ましくは、充電用スイッチング素子(40)のオンの期間は、下アーム側スイッチング素子(11)がオンの期間よりもが短くなるようにするのがよい。これにより、確実に、上アーム側スイッチング素子(10)がオフの場合にのみ、充電用スイッチング素子(40)がオンになるようにできる。
【0067】
また、下アーム側スイッチング素子(11)がオン状態であることを検出して、充電用スイッチング素子(40)をオンにするように充電用スイッチング素子駆動回路(41)で制御してもよい。
【0068】
また、下アーム側スイッチング素子(11)、及び上アーム側のスイッチング素子(10)の双方がオフの期間に充電用スイッチング素子(40)をオンにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るインバータ回路は、直流を交流に変換し、電動機(例えば多相モータ)等の負荷を駆動するインバータ回路として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係るインバータ回路(1)の主要部分を抜粋した回路図である。
【図2】第1の充電手順例に係る正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。
【図3】第2の充電手順例に係る正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。
【図4】第3の充電手順例に係る正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。
【図5】第3の充電手順を用いた際に、充電時に形成される経路を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るインバータ回路(2)の主要部分を抜粋した回路図である。
【図7】インバータ回路(2)に係る正及び負側電圧用コンデンサ(C1,C2)の充電のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1,2 インバータ回路
10 上アーム側スイッチング素子
11 下アーム側スイッチング素子
20 上アーム側ドライブ回路
21 下アーム側ドライブ回路
30 制御回路
40 充電用スイッチング素子
Vg1 直流電源(下アーム用正側直流電源)
Vg2 直流電源(下アーム用負側直流電源)
Vg3 直流電源(上アーム用負側直流電源)
C1 正側電圧用コンデンサ
C2 負側電圧用コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アーム側スイッチング素子(10)を含んだ上アームと、下アーム側スイッチング素子(11)を含んだ下アームとからなるアームを複数備え、それぞれのスイッチング素子(10,11)が正側及び負側駆動電圧(Vuh,Vul,…)によって駆動されてスイッチングを行って、複数相の交流電力を出力するインバータ回路であって、
上アーム正側及び負側駆動電圧(Vuh,Vul)の何れかを、前記上アーム側スイッチング素子(10)のゲート電圧として印加する上アーム側ドライブ回路(20)と、
下アーム正側及び負側の駆動電圧(Vxh,Vxl)の何れかを、前記下アーム側スイッチング素子(11)にゲート電圧として印加する下アーム側ドライブ回路(21)と、
前記上アーム側ドライブ回路(20)に、前記上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子を基準とした正の電圧を前記上アーム正側駆動電圧(Vuh)として供給する正側電圧用コンデンサ(C1)と、
前記上アーム側ドライブ回路(20)に、前記上アーム側スイッチング素子(10)のソース端子を基準とした負の電圧を前記上アーム負側駆動電圧(Vul)として供給する負側電圧用コンデンサ(C2)と、
を備えたことを特徴とするインバータ回路。
【請求項2】
請求項1のインバータ回路において、さらに、
前記下アーム側ドライブ回路(21)に対して前記下アーム側スイッチング素子(11)のソース端子を基準とした正の電圧を前記下アーム正側駆動電圧(Vxh)として供給するとともに、前記下アーム側スイッチング素子(11)を介して前記正側電圧用コンデンサ(C1)を充電する下アーム用正側直流電源(Vg1)と、
前記上アーム側スイッチング素子(10)を介して前記負側電圧用コンデンサ(C2)を充電する上アーム用負側直流電源(Vg3)と、
を備えたことを特徴とするインバータ回路。
【請求項3】
請求項2のインバータ回路において、
前記下アーム側ドライブ回路(21)を制御して前記下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせて前記正側電圧用コンデンサ(C1)を充電させた後に、前記上アーム側ドライブ回路(20)を制御して、充電された前記正側電圧用コンデンサ(C1)によって前記上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせて前記負側電圧用コンデンサ(C2)を充電させる制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とするインバータ回路。
【請求項4】
請求項2のインバータ回路において、
前記下アーム側ドライブ回路(21)を制御して前記下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせて前記正側電圧用コンデンサ(C1)を所定期間だけ充電させる第1のモードと、前記上アーム側ドライブ回路(20)を制御して、充電された前記正側電圧用コンデンサ(C1)によって前記上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせて前記負側電圧用コンデンサ(C2)を所定期間だけ充電させる第2のモードとを交互に実行する制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とするインバータ回路。
【請求項5】
請求項2のインバータ回路において、
前記上アーム側ドライブ回路(20)を制御して、前記上アーム側スイッチング素子(10)をオンにさせて前記負側電圧用コンデンサ(C2)を充電させた後に、前記下アーム側ドライブ回路(21)を制御して前記下アーム側スイッチング素子(11)をオンにさせて前記正側電圧用コンデンサ(C1)を充電させる制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とするインバータ回路。
【請求項6】
請求項1のインバータ回路において、さらに、
前記下アーム側ドライブ回路(21)に対して前記下アーム側スイッチング素子(11)のソース端子を基準とした正の電圧を前記下アーム正側駆動電圧(Vxh)として供給するとともに、前記正側電圧用コンデンサ(C1)の正側に接続されて該正側電圧用コンデンサ(C1)を充電する下アーム用正側直流電源(Vg1)と、
前記下アーム側スイッチング素子(11)に対して、該下アーム側スイッチング素子(11)のソース端子を基準とした負の電圧である下アーム負側駆動電圧(Vxl)を供給する下アーム用負側直流電源(Vg2)と、
前記負側電圧用コンデンサ(C2)の負側と前記下アーム用負側直流電源(Vg2)との間に設けられた充電用スイッチング素子(40)と、
を備えていることを特徴とするインバータ回路。
【請求項7】
請求項6のインバータ回路において、
前記上アーム側スイッチング素子(10)がオフの場合に、所定期間だけ前記充電用スイッチング素子(40)をオンに制御する制御回路(30)をさらに備えていることを特徴とするインバータ回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れかの1つのインバータ回路において、
前記スイッチング素子(10,11)は、ワイドバンドギャップ半導体を用いたことを特徴とするインバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−35389(P2010−35389A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197666(P2008−197666)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】