説明

インホイールモータ

【課題】電動機から取り外された動力線を固定することができるインホイールモータを提供する。
【解決手段】車輪1の内部に動力線pcを介して電力が供給されることにより車両の走行のためのトルクを発生させる電動機5が着脱可能に収容されるインホイールモータにおいて、電動機5を取り外すことに伴って電動機5から動力線pcを取り外した場合に、その取り外された動力線pcの端子部が電動機5の替わりに接続されることにより動力線pcを車体と一体的に固定する疑似端子台17を備えていることを特徴とする。したがって、電動機5から取り外された動力線pcが疑似端子台17に接続されて固定されるため、車両の足回りから動力線pcを排除することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の車輪ごとに設けられ、各車輪ごとに駆動トルクおよび制動トルクを生じさせることのできるインホイールモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の一形態として、車輪のホイール内部もしくはその近傍に電動機を配置してその電動機により車輪を直接駆動するいわゆるインホイールモータ方式の車両(インホイールモータ車)が開発されている。その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたインホイールモータ車は、電動機に対して電力を供給する動力線が電動機に一体的に設けられた端子ボックス(中継ボックスと呼ばれることがある)のコネクタ部において断線することを防止するために、端子ボックスと車体との間であって、電動機に一体的に配線クランプが設けられており、その配線クランプによって動力線を電動機に固定するように構成されている。そのため、操舵やショックアブソーバーが伸縮したとしても端子ボックスのコネクタ部において動力線に作用する応力を低減でき、その結果、端子ボックスのコネクタ部における動力線の断線を防止することができる、とされている。
【0003】
特許文献2には、動力線における漏電を防止することを目的としたインホイールモータ車に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載されたインホイールモータ車は、電動機を保持するケーシングの軸方向における車体側の壁面に、動力線と電動機との接続部である端子ボックスを設けるとともに、端子ボックスから電源に向かって延びる動力線を係止する係止部を設けるように構成されている。そのため、車両の振動などによって動力線が損傷したり、いわゆるプラグ抜けなどを防止することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240430号公報
【特許文献2】特開2009−219271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の特許文献1および特許文献2に記載された電動機を車体から取り外した場合に、これに伴って電動機に一体的に設けられた端子ボックスから取り外された動力線を固定しなければ、その固定されていない動力線が車両の走行に伴う車輪の回転に巻き込まれてしまう可能性がある。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、電動機から取り外された動力線を固定することができるインホイールモータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、車輪の内部に動力線を介して電力が供給されることにより車両の走行のためのトルクを発生させる電動機が着脱可能に収容されるインホイールモータにおいて、前記電動機を取り外すことに伴って前記電動機から前記動力線を取り外した場合に、その取り外された動力線の端子部が前記電動機の替わりに接続されることにより前記動力線を前記車体と一体的に固定する疑似端子台を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記疑似端子台は、前記車輪を回転自在に支持するナックルに設けられることを特徴とするインホイールモータである。
【0009】
さらにまた、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記ナックルに、前記車輪と一体回転するブレーキローターを挟み付けることにより制動力を発生させるブレーキキャリパが設けられており、前記疑似端子台は、前記車両の前後方向で前記ナックルにおける前記ブレーキキャリパとは反対側に設けられることを特徴とするインホイールモータである。
【0010】
そして、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記電動機は前記車両の車輪ごとに設けられ、いずれかの前記車輪から前記電動機を取り外した場合に、前記電動機が取り外された前記いずれかの車輪における前記疑似端子台に前記動力線が接続されているか否かを検出する動力線検出手段を備え、前記動力線検出手段によって前記動力線が前記疑似端子台に接続されていないことが検出された場合に、前記車両の走行を禁止する禁止手段を備えていることを特徴とするインホイールモータである。
【0011】
そしてまた、請求項5の発明は、請求項1または2の発明において、前記車両の車体もしくは前記ナックルに、電源から供給される電力を前記電動機に対して中継するための中継ボックスが設けられ、前記中継ボックスと前記電動機との間に前記動力線が配線されており、前記車輪から前記電動機を取り外す場合に、前記動力線が前記中継ボックスから取り外されるように構成されていることを特徴とするインホイールモータである。
【0012】
そしてさらに、請求項6の発明は、請求項4または5の発明において、前記動力線検出手段は、前記いずれかの車輪における前記中継ボックスに前記動力線が接続されているか否かを検出する手段を含み、前記禁止手段は、前記動力線検出手段によって前記動力線が前記中継ボックスに接続されていないことが検出された場合に、前記他のいずれかの電動機に対する制御を禁止する手段を含むことを特徴とするインホイールモータである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、電動機は車体に対して着脱可能に設けられており、その電動機を取り外した場合であって、かつ、電動機から動力線を取り外した場合に、その取り外された動力線の端子部が電動機の替わりに接続されることにより動力線を車体に一体的に固定する疑似端子台が設けられている。したがって、電動機から取り外された動力線を疑似端子台に接続して固定することにより、車両のいわゆる足回りから動力線を排除することができる。その結果、車両の走行に伴って車輪が回転した場合に、その車輪の回転に電動機から取り外された動力線が巻き込まれることを防止もしくは抑制することができる。これに加えて、車輪に動力線が巻き込まれることによる断線を防止もしくは抑制することができる。また、動力線が疑似端子台に接続されているため、取り外された動力線に接触することによって感電することを防止もしくは抑制することができる。
【0014】
また、請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果と同様の効果に加えて、疑似端子台は、車輪を回転自在に支持するナックルに設けられているため、電動機から取り外された動力線をナックルに設けられた疑似端子台に接続することにより、その動力線を車体に一体的に固定することができる。
【0015】
さらにまた、請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、疑似端子台は、車両の前後方向でナックルにおけるブレーキキャリパとは反対側に設けられるため、既設の構成の配置を維持することができる。
【0016】
そして、請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明による効果と同様の効果に加えて、電動機は車輪ごとに設けられており、いずれかの車体から電動機を取り外した場合に、その電動機から取り外した動力線がその車輪における疑似端子台に接続されていないことが検出された場合に、車両の走行が禁止されるように構成されている。そのため、電動機から取り外された動力線が車輪の回転に巻き込まれることを防止もしくは抑制することができる。
【0017】
そしてまた、請求項5の発明によれば、請求項1または2の発明による効果と同様の効果に加えて、車体もしくはナックルに中継ボックスが設けられており、その中継ボックスと電動機の間に動力線が配線されている。そのため、車体から電動機を取り外すと、その電動機とともに中継ボックスから動力線が取り外されることとなり、その結果、動力線を車両の足回りから排除することができる。
【0018】
そしてさらに、請求項6の発明によれば、請求項4または5の発明による効果と同様の効果に加えて、いずれかの車輪における中継ボックスに動力線が接続されていないことが検出されると、他のいずれかの車輪における電動機に対する制御が禁止されるように構成されている。そのため、他のいずれかの車輪における電動機のみが駆動されることによって車両の挙動が乱れることを防止もしくは抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る疑似端子台をナックルに一体的に設け、車輪からインホイールモータを取り外す場合に、インホイールモータから取り外した動力線を疑似端子台に接続して固定する構成の一例を模式的に示す図である。
【図2】疑似端子台の構成の一例を模式的に示す図である。
【図3】この発明に係る中継ボックスを車体に一体的に設け、車輪からインホイールモータを取り外す場合に、中継ボックスから動力線を取り外す構成の一例を模式的に示す図である。
【図4】この発明で対象とする車両の構成の一例を模式的に示す図である。
【図5】この発明で対象とする車両の構成の他の例を模式的に示す図である。
【図6】この発明で対象とする車両の構成の更に他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎにこの発明をより具体的に説明する。図4に、この発明で対象とする車両の構成の一例を模式的に示してある。図4に示す車両は、車両の幅方向(図4での左右方向)における左右の前輪1,2および左右の後輪3,4を有している。そして、前輪1,2は、互いにもしくはそれぞれ独立してサスペンション機構(図示せず)やナックルを介して車両の車体に回転自在に支持されている。同様に、後輪3,4も、互いにもしくはそれぞれ独立してサスペンション機構やナックルを介して車両の車体に回転自在に支持されている。
【0021】
車両の駆動力源として、前輪1,2のホイール内部には、それぞれ、ナックルを介して車体に着脱可能に支持されている電動機が上記の前輪1,2のホイール内部に着脱可能に組み込まれていて、それら電動機の出力軸と、前輪1,2の駆動軸とが、それぞれ動力伝達可能に連結されている。すなわち、前輪1,2の電動機は、いわゆるインホイールモータ5,6であり、前輪1,2と共に車両のばね下に配置されていて、各インホイールモータ5,6からそれぞれ各車輪(すなわち駆動輪)1,2へ至る各駆動系統が形成されている。そして、各インホイールモータ5,6の回転をそれぞれ個別に独立して制御することにより、前輪1,2の駆動トルクおよび制動トルクを、それぞれ独立して制御することができるように構成されている。なお、詳細は図示しないが、各駆動系統に、各インホイールモータ5,6の出力をそれぞれ減速して各駆動輪1,2へ伝達させる減速機構を設けることもできる。
【0022】
これらの各インホイールモータ5,6は、例えば交流同期モータにより構成されていて、詳細は図示しないが、動力線(パワーケーブルと呼ばれることがある。)pcを介してインバータ7や蓄電装置8に接続されている。インバータ7は、直流電力を交流電力に変換するものであり、従来一般的に使用されているものであってよい。蓄電装置8には、バッテリやキャパシタなどを使用することができる。したがって、各インホイールモータ5,6を駆動させる場合には、蓄電装置8から供給される直流電力がインバータ7によって交流電力に変換され、その交流電力が各インホイールモータ5,6に供給されることにより上記の各インホイールモータ5,6が力行制御されて、前輪1,2に駆動トルクが付与されるように構成されている。
【0023】
また、各インホイールモータ5,6は前輪1,2の回転エネルギを利用して回生制御することもできるように構成されている。すなわち、各インホイールモータ5,6の回生・発電時には、前輪1,2の回転(運動)エネルギが各インホイールモータ5,6によって電気エネルギに変換され、その際に生じる電力がインバータ7を介して蓄電装置8に蓄電される。このとき、前輪1,2には回生・発電力に基づく制動トルクが付与される。
【0024】
そして、例えば上記のインバータ7は、各インホイールモータ5,6の回転状態を制御する電子制御装置(ECU)9に、それぞれ接続されている。このECU9には、例えば、各駆動輪1,2の回転速度(車輪速度)をそれぞれ検出する車輪速センサ(図示せず)や各インホイールモータ5,6の出力軸の回転角度を検出するレゾルバ(図示せず)などの各種センサ類からの検出信号、およびインバータ7からの情報信号などが入力されるように構成されている。
【0025】
例えば、インバータ7からECU9に入力される信号に基づいて、各インホイールモータ5,6の出力トルク(モータトルク)がそれぞれ演算されて求められる。そして、インバータ7からの入力信号によって各インホイールモータ5,6が力行制御されていることを検出すると、各インホイールモータ5,6へ供給される電力量あるいは電流値を検出し、それに基づいて各インホイールモータ5,6のモータトルクをそれぞれ算出することができる。また、各インホイールモータ5,6の回転を制御する際の電流値に基づいて、各インホイールモータ5,6の回転数をそれぞれ算出することもできる。
【0026】
一方、ECU9からは、インバータ7を介して各インホイールモータ5,6の回転をそれぞれ制御する信号が出力されるように構成されている。すなわち、各インホイールモータ5,6の回転(力行・回生)を制御するために、各インホイールモータ5,6へ供給する、もしくは各インホイールモータ5,6から回収する電流を制御するための制御信号が、ECU9からインバータ7へ出力されるようになっている。
【0027】
また、図4に示す例では、車両の他の駆動力源として、内燃機関10を備えている。その内燃機関10の出力軸はトランスミッション11に動力伝達可能に接続されており、トランスミッション11において変速された動力がプロペラシャフト12やデファレンシャル(図示せず)を介して左右の後輪3,4に伝達されるように構成されている。上記の内燃機関10は、例えばガソリンエンジンもしくはディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの燃料を燃焼して動力を出力するものであり、好ましくは、例えば電子制御式のスロットルバルブ(図示せず)を備えており、出力を電気的に自動制御することができ、また所定の負荷に対して回転数を制御することにより燃費が最も良好な最適運転点に設定できる内燃機関である。トランスミッション11は、変速比を段階的に変化させることによりトルクを段階的に変更する有段式の変速機あるいは変速比を無段階に変化させることによりトルクを無段階に変更する無段変速機あるいは電動機と遊星歯車機構とを組み合わせたハイブリッド式の変速機などを使用することができる。このように、図4に示す構成の車両は、左右の前輪1,2がインホイールモータ5,6によって駆動され、後輪3,4が内燃機関10で発生させた動力により駆動されるように構成された4輪駆動方式のハイブリッド車両である。
【0028】
図4に示す例では、左右の前輪1,2をインホイールモータ5,6によって駆動し、左右の後輪3,4を内燃機関10によって駆動させるように構成した4輪駆動方式の車両の構成例を示しているが、この発明を適用できる車両は、例えば図5に示すように、左右の後輪3,4にインホイールモータ13,14がそれぞれ設けられ、左右の後輪3,4がインホイールモータ13,14によって駆動され、左右の前輪1,2が内燃機関10によって駆動させるように構成してもよい。
【0029】
また、この発明を適用できる車両は、例えば図6に示すように、左右の前輪1,2および左右の後輪3,4の両方に、駆動力源として、インホイールモータ5,6,13,14がそれぞれ設けられた4輪駆動方式のインホイールモータ車であってもよい。要は、この発明を適用できる車両は、複数の車輪が、例えば上記の各インホイールモータ5,6もしくはインホイールモータ13,14のように、各車輪を独立して直接駆動することが可能な構成であればよく、また、各インホイールモータ5,6,13,14を駆動するための蓄電装置8などの電源および電源から電力を供給するための動力線pcを備えていればよい。なお、図4および図5ならびに図6に示す例において、左右の前輪1,2はナックルを介して操舵装置(図示せず)によって転舵されるように構成されている。
【0030】
この発明に係る各インホイールモータ5,6,13,14は、上述したように、車体に対して着脱可能に構成されており、また、これらが取り付けられる各車輪1,2,3,4の各ホイールに対して着脱可能に構成されており、例えば図4に示す例において、左右の前輪1,2を駆動するためのインホイールモータ5,6を車体から取り外すことにより、図4に示す車両を後輪駆動車とすることができる。同様に、図5に示す例において、左右の後輪3,4を駆動するためのインホイールモータ13,14を車体から取り外すことにより、図5に示す車両を前輪駆動車とすることができるように構成されている。また同様に、図6に示す例において、左右の前輪1,2を駆動するためのインホイールモータ5,6を車体から取り外すことにより、後輪駆動車とすることができ、左右の後輪3,4を駆動するためのインホイールモータ13,14を車体から取り外すことにより、前輪駆動車とすることができるように構成されている。
【0031】
ところで、例えば図4や図6に示す車両において、車体からインホイールモータ5を取り外した場合に、インホイールモータ5から取り外した動力線pcを固定せずに放置し、かつ、車両が走行すると、その取り外された動力線pcが車輪1の回転に巻き込まれる可能性がある。そのため、この発明では、取り外した動力線pcの端子部を上記のナックルあるいは車体に一体的に固定することにより、車両が走行した場合に、上記の取り外された動力線pcが車輪1の回転に巻き込まれることを防止もしくは抑制することができるように構成されている。
【0032】
図1に、この発明に係る疑似端子台をナックルに一体的に設け、車体からインホイールモータを取り外した場合に、インホイールモータから取り外した動力線を疑似端子台に接続して固定する構成の一例を模式的に示してある。ここに示す例は、例えばナックル15を介して車体に一定的に支持されているインホイールモータ5を取り外した後であって、車輪1を車体側から見た状態を示している。車輪1は、上述したようにサスペンション機構やナックル15を介して回転自在に車体に支持されており、そのナックル15における車両の前後方向で後方に、車輪1と一体回転するブレーキロータ(図示せず)を挟み付けることにより制動力を生じさせるブレーキキャリパ16がナックル15に一体的に設けられている。
【0033】
一方、ナックル15における車両の前後方向で前方に、疑似端子台17がナックル15に一体的に設けられている。図2に、疑似端子台の構成の一例を模式的に示してある。疑似端子台17は、車体からインホイールモータ5を取り外すことにより、インホイールモータ5から取り外された動力線pcの端部、すなわち端子部を接続できるように構成されており、したがって、例えば、図2に示すように、動力線pcの端部を疑似端子台に設けられた導電性の金属板17aにボルトなどの固定部材17bにより短絡させて固定するように構成されている。そして、金属板17aに短絡させた各動力線pcは導通されることにより、その接続が電気的に確認されるように構成されている。また、上記の構成に替えて、動力線pcの抵抗値に基づいて動力線pcが疑似端子台17に接続されているか否かを電気的に判断するように構成してもよい。さらにまた、疑似端子台17と動力線pcの端子部との接続は、疑似端子台17における動力線pcの端子部が接続される部分の形状と、動力線pcの端子部の形状とが対を成すように、例えばオス型,メス型ジョイントのように構成することができる。このように、疑似端子台17に動力線pcの端子部が接続されることにより、動力線pcおよびその端子部はナックル15および車体に一体的に固定されるように構成されている。
【0034】
また、この発明では、例えば図4に示す車両において、車体からインホイールモータ5を取り外した場合であって、インホイールモータ5から取り外された動力線pcの端子部が疑似端子台17に接続されていないことにより上記の導通が確認されない場合には、上述した内燃機関7および他の車輪2におけるインホイールモータ6の始動や駆動を禁止することにより車両の走行が禁止されるように構成されている。これは、取り外された動力線pcが車両の走行に伴う車輪の回転に巻き込まれることを防止するためである。これとは反対に、例えば図4に示す車両において、インホイールモータ5,6が取り付けられており、かつ、動力線pcを介してインホイールモータ5,6に対して電力が供給されることにより、車輪1,2を駆動輪として機能させることができるようになっている場合には、動力線pcが疑似端子台17に接続されていなくても、上記の内燃機関7およびインホイールモータ5もしくはインホイールモータ6の始動や駆動は禁止されないように構成されている。
【0035】
また、詳細は図示しないが、図5に示す車両においても、図4に示す車両と同様に、車体からインホイールモータ13を取り外したにも拘わらず、動力線pcが疑似端子台17に接続されていないことにより導通が確認されない場合には、内燃機関7および他の車輪4におけるインホイールモータ14の始動や駆動を禁止するように構成されている。さらにまた、図6に示す車両においては、例えば車輪1を駆動するためのインホイールモータ5が車体から取り外され、かつ、インホイールモータ5から取り外された動力線pcの端子部が疑似端子台17に接続されていないことにより導通が確認されない場合には、他の車輪2,3,4を駆動するインホイールモータ6,13,14の始動や駆動を禁止するように構成されている。要は、この発明では、車体からインホイールモータを取り外し、またインホイールモータから動力線pcを外した場合であって、かつ、その取り外された動力線pcが疑似端子部17に接続されていないことにより導通が確認されない場合には、取り外された動力線pcが車輪の回転に巻き込まれることを防止するために車両の走行を禁止するように構成されている。
【0036】
なお、上記の車体からインホイールモータ5を取り外した場合であって、疑似端子台17に動力線pcが接続されているか否かを動力線pcの導通により確認するための手段がこの発明に係る動力線検出手段に相当し、車輪1における疑似端子台17において、動力線pcに導通できないことにより疑似端子台17に動力線pcが接続されていないことが検出された場合に、車両の走行を禁止する手段がこの発明に係る禁止手段に相当している。
【0037】
したがって、上述した図1および図2に示す構成によれば、車体からインホイールモータ5を取り外した場合であって、かつ、インホイールモータ5から動力線pcを取り外した場合に、その取り外した動力線pcの端子部を疑似端子台17に接続することにより動力線pcをナックル15および車体に一体的に固定することができる。その結果、疑似端子台17に動力線pcの端子部を接続することによって車両のいわゆる足回りから動力線pcを排除することができる。すなわち、車両の走行に伴って車輪1が回転したとしても、その車輪1の回転に取り外された動力線pcやその端子部が巻き込まれたりすることを防止もしくは抑制することができる。また、取り外された動力線pcの端子部に接触することによって感電したりすることを防止もしくは抑制することができる。さらにまた、上述した構成によれば、取り外した動力線pcの端子部が疑似端子台17に接続されていないことにより導通を確認できない場合には、例えば図4に示す車両においては、内燃機関7や車輪2におけるインホイールモータ6の始動や駆動が禁止されるため、車両が走行することによって車輪1が回転してその回転に動力線pcが巻き込まれることによる断線を防止もしくは抑制することができる。
【0038】
また、この発明では、各インホイールモータ5,6,13,14と、各インホイールモータ5,6,13,14の電源として機能する蓄電装置8との間に中継ボックスをそれぞれ設け、各中継ボックスと、各インホイールモータ5,6,13,14との間に配線される動力線pcを、例えば車体からインホイールモータ5を取り外す場合に、インホイールモータ5とともにこれに対応する動力線pcを中継ボックスから取り外すように構成してもよい。その構成の一例を図3に模式的に示してあり、図3に示す例では、中継ボックス18が車体における車輪に対向する位置もしくは車輪に近い位置に配置されるとともに、車体に一体的に設けられている。中継ボックス18と車輪1のインホイールモータ5との間には動力線pcが配線されている。動力線pcはコネクタ19などによって中継ボックス18に接続されており、したがって、動力線pcは中継ボックス18に対して比較的容易に脱着できるように構成されている。この中継ボックス18は、例えば、これに接続される各動力線pcの抵抗値に基づいて各動力線pcの接続状態、すなわち、動力線pcが接続されているか否かを判断することができるように構成されており、動力線pcの抵抗値が予め定めた閾値よりも低い場合に動力線pcが中継ボックス18から取り外されていると判断し、これとは反対に、動力線pcの抵抗値が閾値よりも高い場合に、動力線pcが中継ボックス18に接続されていると判断するように構成されている。
【0039】
一方、インホイールモータ5には動力線pcを接続するための端子台20が一体的に設けられており、この端子台20に例えばかしめナットなどを介して動力線pcが強固に接続されている。また、例えば、動力線pcは特殊な工具を使用しないと端子台20に接続したり、端子台20から取り外すことができないように構成されている。
【0040】
また、この発明では、例えば図4に示す車両において、インホイールモータ5を取り外した場合であって、かつ、動力線pcの抵抗値が閾値よりも低いことが判断された場合に、すなわち、動力線pcが中継ボックス18に接続されていない場合に、車輪1のインホイールモータ5および車輪2のインホイールモータ6に対する各種の制御を禁止にするように構成されている。より具体的には、この発明では、車輪1,2にインホイールモータ5,6を取り付けていたとしても、これらのインホイールモータ5,6に対応する各動力線pcが中継ボックス18に接続されていないことによりそれらの動力線pcの抵抗値が閾値よりも低い場合には、各インホイールモータ5,6に対する各種の制御を禁止するように構成されている。これは、いずれか一方の車輪におけるインホイールモータのみが駆動されることによって車両の挙動が乱れることを防止もしくは抑制するためである。
【0041】
また、詳細は図示しないが、図5に示す車両においても、図4に示す車両と同様に、中継ボックス18に取り外された動力線pcが接続されていないことによりその抵抗値が閾値よりも低い場合には、車輪3,4におけるインホイールモータ13およびインホイールモータ14に対する各種の制御を禁止するように構成されている。図6に示す車両においては、いずれかのインホイールモータから動力線pcが取り外され、その取り外された動力線pcが中継ボックス18に接続されていないことによりその抵抗値が閾値よりも低い場合には、各車輪1,2,3,4における各インホイールモータ5,6,13,14に対する各種の制御を禁止するように構成されている。なお、図6に示す車両においては、車輪1を駆動するためのインホイールモータ5から動力線pcが取り外され、その取り外された動力線pcが中継ボックス18に接続されておらず、インホイールモータ5に対応する動力線pcの抵抗値のみが閾値よりも低い場合には、車輪2を駆動するためのインホイールモータ6のみに対する各種の制御を禁止するように構成してもよく、同様に、車輪3を駆動するためのインホイールモータ13から動力線pcが取り外され、その取り外された動力線pcが中継ボックス18に接続されておらず、インホイールモータ13に対応する動力線pcの抵抗値のみが低い場合には、車輪4を駆動するためのインホイールモータ14のみに対する各種の制御を禁止するように構成してもよい。
【0042】
なお、上記の車体からインホイールモータを取り外した場合であって、かつインホイールモータから動力線pcを取り外した場合に、その取り外された動力線pcの抵抗値の大小を判断することにより動力線pcが中継ボックス18に接続されているか否かを検出する手段がこの発明に係る動力線検出手段に相当し、動力線pcの抵抗値が閾値よりも低い場合に動力線pcが中継ボックス18に接続されていないとして、各インホイールモータ5,6,13,14に対する各種の制御を禁止する手段がこの発明に係る禁止手段に相当している。また、上記の禁止手段は、取り外されたいずれかの動力線pcの抵抗値が閾値よりも低いことによりそのいずれかの動力線pcが中継ボックス18に接続されていないことを判断あるいは検出した場合に、各インホイールモータの始動および駆動を含む全ての制御をも禁止するように構成してもよい。
【0043】
したがって、上記の図3に示す構成によれば、例えば図4に示す車両において、車体からインホイールモータ5を取り外す場合に、インホイールモータ5とともに動力線pcを中継ボックス18から取り外すことができるため、動力線pcを車両のいわゆる足回りから排除することができる。すなわち、車両の走行に伴って車輪1が回転したとしても、その車輪1の回転に巻き込まれる動力線pcをなくすことができる。その結果、取り外された動力線pcが車輪1の回転に巻き込まれたり、動力線pcが車輪1の回転に巻き込まれることにより断線したりすることを防止もしくは抑制することができる。また、取り外された動力線pcに接触することによって感電することを防止もしくは抑制することができる。さらにまた、上述した構成によれば、動力線pcの抵抗値の大小に基づいて中継ボックス18に動力線pcが接続されているか否かを判断し、その判断結果に基づいて中継ボックス18に動力線pcが接続されていないことを判断した場合には、他のインホイールモータ6に対する各種の制御が禁止されるため、例えば、車輪2のインホイールモータ6のみが駆動されることによって車両の挙動が乱れることを防止もしくは抑制することができる。すなわち、図4に示す車両においては後輪駆動車として機能させることができ、図5に示す車両においては前輪駆動車として機能させることができる。また、図6に示す車両においては、前輪駆動車あるいは後輪駆動車として機能させることができるとともに、全てのインホイールモータの始動および駆動を禁止することにより車両の走行を禁止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1,2…車輪、 5,6…インホイールモータ(電動機)、 17…疑似端子台、 pc…動力線(パワーケーブル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の内部に動力線を介して電力が供給されることにより車両の走行のためのトルクを発生させる電動機が着脱可能に収容されるインホイールモータにおいて、
前記電動機を取り外すことに伴って前記電動機から前記動力線を取り外した場合に、その取り外された動力線の端子部が前記電動機の替わりに接続されることにより前記動力線を前記車体と一体的に固定する疑似端子台を備えている
ことを特徴とするインホイールモータ。
【請求項2】
前記疑似端子台は、前記車輪を回転自在に支持するナックルに設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ。
【請求項3】
前記ナックルに、前記車輪と一体回転するブレーキローターを挟み付けることにより制動力を発生させるブレーキキャリパが設けられており、
前記疑似端子台は、前記車両の前後方向で前記ナックルにおける前記ブレーキキャリパとは反対側に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のインホイールモータ。
【請求項4】
前記電動機は前記車両の車輪ごとに設けられ、
いずれかの前記車輪から前記電動機を取り外した場合に、前記電動機が取り外された前記いずれかの車輪における前記疑似端子台に前記動力線が接続されているか否かを検出する動力線検出手段を備え、
前記動力線検出手段によって前記動力線が前記疑似端子台に接続されていないことが検出された場合に、前記車両の走行を禁止する禁止手段を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインホイールモータ。
【請求項5】
前記車両の車体もしくは前記ナックルに、電源から供給される電力を前記電動機に対して中継するための中継ボックスが設けられ、
前記中継ボックスと前記電動機との間に前記動力線が配線されており、
前記車輪から前記電動機を取り外す場合に、前記動力線が前記中継ボックスから取り外されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインホイールモータ。
【請求項6】
前記動力線検出手段は、前記いずれかの車輪における前記中継ボックスに前記動力線が接続されているか否かを検出する手段を含み、
前記禁止手段は、前記動力線検出手段によって前記動力線が前記中継ボックスに接続されていないことが検出された場合に、前記他のいずれかの電動機に対する制御を禁止する手段を含む
ことを特徴とする請求項4または5に記載のインホイールモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223041(P2012−223041A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89004(P2011−89004)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】