説明

ウェーハの搬送用パッド

【課題】BGテープの貼付け張力によるウェーハの反りを防止して、ウェーハの吸着不良、落下等の不具合のないウェーハの搬送用パッドを提供する。
【解決手段】パッド1を加熱するためのヒータ2と、パッド1の温度制御用センサ2aと、制御盤3とを備え、裏面研削後のウェーハ7の搬送時の真空吸着に際し、ヒータ2により円形基板1cが所定の温度に加熱されたことを温度制御用センサ2aで検知確認して、パッド1をウェーハ7に当接させることによりウェーハ7のパターン面7aに貼付けられたBGテープ8の貼付け張力を低減させ、ウェーハ7の反りを防止し、ウェーハ7のエッジ部とパッド1との密着状態を良好に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン面の裏面研削を行うグラインダ装置内に半導体ウェーハを搬送するパッドに関し、特に、研削加工後の反りの大きいウェーハに対応するウェーハ搬送用のパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体製品に設けられている集積回路は、シリコンウェーハ(以下単にウェーハと記す。)上にエッチングレジストとして感光性樹脂を塗布した後、エッチングすることにより形成される。ウェーハは、集積回路がエッチングされたパターン面の裏面をバックグラインダにより研削することにより所定の厚さとされる。この研削加工の際、パターン面には事前に保護用のバックグラインドテープ(以下BGテープと記す。)が貼付けられる。
【0003】
このBGテープの貼付け張力が高かった場合、ウェーハをバックグラインダで研削して薄膜化した後、ウェーハがBGテープの貼付け張力で反ってしまう場合がある。
具体的には、従来はウェーハ7自体が厚く、BGテープ8の貼付け張力によるウェーハ7の反りはそれほど問題とならなかった。しかし、最近では研削後のウェーハ7の厚さは、25〜50μmと、BGテープ8の厚さ(100〜200μm)と較べてもかなり薄くなってきた。このため特に薄物において、ウェーハ7の反りによる吸着不良が発生するようになった。
【0004】
この反りの方向は、BGテープが貼付けられるパターン面を下面、研削加工面を上面とすると、凸型(上に凸)となる。
通常、薄膜化されたウェーハは全面吸着パッドによる搬送が行われるが、上記の反りが大きいウェーハの場合、エッジ部が反りにより吸着面から浮かび上がってしまうため、正常に吸着保持ができなくなり、ウェーハの搬送不良や搬送パッドからのウェーハの落下という不具合が生じる。
【0005】
上記の問題点についてパッドをヒータで加熱し、その熱を搬送中のウェーハに伝えてBGテープを軟化させ、貼付け張力を低減させてウェーハの反りを防止する方法が考えられる。
特許文献1には、内部にヒータとしての導電体が埋設されているセラミック基板について記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−110879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のヒータ付きセラミック基板の発明は、外部端子に力が加わった場合でもヒータの破損や外部端子の損壊を生じないセラミック基板を提供することを目的とするものであり、本発明とは目的において異なるものである。
【0008】
本発明は、上記ウェーハの反りの問題を解決して、ウェーハの裏面研削装置からの搬出に際しウェーハの吸着不良、落下等の不具合を防止するウェーハの搬送用パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、半導体ウェーハの裏面研削装置から前記ウェーハの搬送を行う搬送パッドであって、真空吸着用の配管が設けられた基板と、該基板に接して設けられ、前記基板を加熱するためのヒータと、前記基板の温度制御用センサと、を備えることを特徴とする。これにより、ウェーハを加熱しBGテープの貼付け張力を低減させてウェーハの反りを防止することができる。
請求項2の発明は、さらに、前記基板の材質は多孔質のセラミックであることを特徴とする。これにより、真空吸着機能及び熱伝導効率に優れた搬送パッドとすることができる。
請求項3の発明は、さらに、前記ヒータにより前記基板が所定の温度に加熱されたことを前記温度制御用センサで検知確認して、前記基板により裏面研削後の半導体ウェーハを吸着して搬送することを特徴とする。これにより、各ウェーハの材質、厚さに応じた設定温度に達したことを確認した後に吸着、搬送を行うことができ、反りによる不具合を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明のウェーハの搬送用パッドにより、上記BGテープの貼付け張力によるウェーハの反りを防止して、ウェーハの裏面研削装置からの搬出に際しウェーハの吸着不良や落下等の不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図を用いて本発明のウェーハの搬送パッドの実施形態について説明する。
図1は本発明のウェーハの搬送用パッドの一実施形態を示す模式図である。図2は図1のA部の拡大図であり、(a)はヒータを使用せずBGテープ貼付け張力によりウェーハエッジ部が反った状態を、(b)はヒータ加熱により反りが低減され、ウェーハエッジ部がパッドに正常に吸着された状態をそれぞれ示す。符号1は搬送パッド、符号2はヒータ、符号3は制御盤をそれぞれ示す。
【0012】
まず、本実施形態の搬送用パッドの構成について説明する。
ウェーハ搬送アーム6の下面に金属ブラケット5が設けられており、金属ブラケット5の下面に搬送用パッド1が設けられている。搬送用パッド1は円盤形状をしており、上部の円形基板1aと下部の円形基板1b及び1cとからなり、円形基板1aはセラミック製であって、内部にヒータ2を備えている。本実施形態ではヒータ2として、多孔質セラミック基板の内部にALN基板を配置したセラミックヒータを使用しているが、ヒータ2はこれに限られずパッド1のウェーハ7との接触面を均等に短時間で加熱昇温できるものであればよい。
【0013】
円形基板1aの下面に接して通常のセラミック製の円形基板1bが設けられており、円形基板1bのさらに下部の中心部には通気性を有する多孔質のセラミックの円形基板1cが同心円状に嵌めこまれている。多孔質セラミックは通気性がよいため、円形基板1cの外表面のうち真空吸着を行う面のみが外気に露出するように構成されている。
円形基板1cには温度測定用の熱伝対2aが埋め込まれており、出力調整器3に繋がれている。さらに、円形基板1cには真空吸引用の配管4が設けられ真空ポンプ(不図示)に繋がっている。
【0014】
なお、円形基板1a及び1bの材質としては上記セラミックに限られず、例えばアルミナでもよく、円形基板1cの材質としては例えば多孔質アルミナを採用することも可能である。
【0015】
本実施形態のパッド1ではヒータ2は円形基板1bに接する円形基板1aの内部に設けられているが、セラミックヒータを用いて円形基板1bの内部に直接埋め込む構成としてもよい。
【0016】
ウェーハ搬送アーム6にはヒータ2の加熱温度を制御する制御盤3が設けられている。
円形基板1cとして本実施形態では多孔質セラミックの基板を使用するが、円形基板1cの材質はこれに限られず、例えば多孔質のアルミナであってもよい。また、本実施形態では通常のセラミック製の円形基盤1bと多孔質セラミック製の円形基盤1cの2層構造としているが、上面および側面からエアを吸わないようにシールする構成として、多孔質のセラミックあるいは多孔質のアルミナのみで吸着パッドを構成してもよい。
【0017】
ヒータ2近傍の多孔質セラミック1c部分には熱伝対2aが設けられ、熱伝対2aにて測定された温度データは制御盤3に送られ、予め試験にて作成されたテーブルに基づいて、BGテープ8が所定時間に所定温度となるようにヒータ2の電流が制御される。
【0018】
次に、上記構成の搬送パッドの作用について説明する。
裏面研削が完了したウェーハ7のパターン面7aにはBGテープが貼付けられており、この貼付け張力により研削面を上、パターン面7aを下にした状態で上に凸となる状態に反っている。
【0019】
このウェーハ7を吸着して次工程に搬送する際、上記構成のパッド1をヒータ2により予め所定の温度まで加熱した状態としておき、この状態でパッド1をウェーハ7表面に当接させて真空吸着を行う。具体的には、円形基板1cをウェーハ7表面に当接させた後、真空吸着を行いながらさらに装置側で設定されたパラメータ時間だけBGテープ8の昇温を待ち、BGテープ8が所定の加熱温度に達し、かつ十分なウェーハ吸着圧力が確保された段階で搬送を開始する。
【0020】
なお、真空吸着は円形基板1cに配設された配管4に連結した真空ポンプ(不図示)により吸引されて、円形基板1cの内部が負圧になることで、当接するウェーハ7表面に吸引力が加わり、しっかりと円形基板1cに固定されることにより行われる。
【0021】
制御盤3のマシンパラメータとして搬送パッド温度が設けられており、ウェーハ7及びBGテープ8の材質、厚さに応じた設定加熱温度が入力される。これにより、各条件ごとに最適な加熱温度が得られるように制御される。
BGテープ8は約80℃に加熱することで常温の場合に較べて軟らかくなり、貼付け張力が減少するため、ウェーハ7の反りは大幅に軽減される。
【0022】
ヒータ2は上記BGテープ8の加熱用にのみ用いられるものであり、BGテープ8の材質はウェーハ7の種類により種々のものがある。紫外線硬化タイプのBGテープ8は、紫外線を当てることで硬化し、剥がれ易くなるという特徴がある。また、BGテープ8はウェーハ7に貼付けられた状態で−100〜100℃までの環境に曝される検査をする場合もあり、それらの条件に応じて様々のタイプのものが用いられる。
【0023】
上記構成のパッド1はこのような様々のタイプのBGテープ8に対して有効であり、貼付け張力によるウェーハ7の反りを軽減させることができる。
円形基板1aに設置されたヒータ2により、ウェーハ7のパターン面7aに貼られたBGテープ8が加熱されて軟化し貼付け面に加える張力が弱まり、この張力によるウェーハ7の反りも軽減されるためウェーハ7のエッジ部がパッド1の表面にしっかりと密着する。この結果、ウェーハ7の吸着不良や、搬送中の落下といった不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のウェーハの搬送用パッドの一実施形態を示す模式図である。
【図2】図1のA部の拡大図であり、(a)はヒータを使用せずBGテープ貼付け張力によりウェーハエッジ部が反った状態を、(b)はヒータ加熱により反りが低減され、ウェーハエッジ部がパッドに正常に吸着された状態をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0025】
1 搬送パッド
1a 円形基板(ヒータ内臓)
1b 円形基板(通常のセラミック)
1c 円形基板(多孔質セラミック)
2 ヒータ
2a 熱伝対
3 制御盤
4 配管
5 ブラケット
6 アーム
7 ウェーハ
7a パターン面
8 BGテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの裏面研削装置から前記ウェーハの搬送を行う搬送パッドであって、
真空吸着用の配管が設けられた基板と、
該基板に接して設けられ、前記基板を加熱するためのヒータと、
前記基板の温度制御用センサと、を備える
ことを特徴とするウェーハの搬送用パッド。
【請求項2】
前記基板の材質は多孔質のセラミックである、請求項1に記載のウェーハの搬送用パッド。
【請求項3】
前記ヒータにより前記基板が所定の温度に加熱されたことを前記温度制御用センサで検知確認して、前記基板により裏面研削後の半導体ウェーハを吸着して搬送することを特徴とする、請求項1または2に記載のウェーハの搬送用パッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−50265(P2010−50265A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212899(P2008−212899)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】