説明

ウエハ保管装置、ウエハ保管方法、ウエハ搬送装置、およびウエハ搬送方法

【課題】 ウエハカセットなどのウエハ保持容器を経て搬送するウエハへの前記ウエハ保持容器でのパーティクルの付着をなくし、配線ショート等のパターン形成不良の発生を防止する。
【解決手段】 複数のウエハ処理工程間でウエハ4を保管するウエハ保管装置20を、ウエハ4をウエハ表面4aが上下方向に沿う向きに保持するウエハカセット1と、ウエハカセット1内に上下方向の気流を流す気流取り入れ口23a,排気口24aなどからなる気流発生機構と、ウエハカセット1の上流部で前記気流に対してイオン化を行うイオン化機構22とを備えた構造とする。これにより、ウエハカセット1内の雰囲気中のパーティクルや、複数枚保持されたウエハ4の内の他のウエハ4に付着していたパーティクルが、重力作用によってウエハ表面4aに落下すること、および、ウエハ表面4aへ静電吸着することを防止可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどのウエハのためのウエハ保管装置、ウエハ保管方法、ウエハ搬送装置、およびウエハ搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置の製造工程では、シリコンのようなウエハにトランジスタ等の素子を集積形成するため、多数の微細加工工程が存在する。その中でも重要な地位を占めるのがリソグラフィー工程であり、この工程では、ウエハに対してコーターでレジストを塗布し、ステッパで露光し、デベロッパーでパターンを現像するという方法でレジストパターンを形成している。その際に、コーター、ステッパ、デベロッパーでの処理時間に差があるため、コーターとステッパとの間、及び、ステッパとデベロッパーとの間に、それぞれウエハカセットを設置しておき、処理待ちのウエハを一時待機させている。
【0003】
図8はウエハカセットの(a)上面図、(b)B−B’断面図、(c)C−C’側面図である。
ウエハカセット1は、上下方向に配置される一対の並行な壁部を持ったコの字形の本体2の対向面に、水平方向に延びる薄板状のウエハ支持部3が上下方向に沿って一定間隔をおいて、かつ一方の壁部のウエハ支持部3と他方の壁部のウエハ支持部3とが対向するように設けられていて、ウエハ4はその裏面4bの外周部分においてウエハ支持部3上に載置され本体2内に保持されている。本体2の中央部分はウエハ4およびそれを搬送する搬送アーム(図9参照)が出入り可能に空いている(特許文献1)。
【0004】
図9は、上記したウエハカセット1を含んだウエハ搬送装置をリソグラフィー装置に適用した状態を示す。すなわち、ウエハ搬送装置5は、第1の処理チャンバー(コーター)6と第2の処理チャンバー(ステッパ)7との間に設置されている。ウエハ搬送装置5は、ウエハカセット1の上流側と下流側とに搬送アーム8,9を備えている。
【0005】
この構成により、第1の処理チャンバー6で処理(時間t1)されたウエハ4は、搬送アーム8により、ウエハ表面4aが上を向いた状態で取り出され(時間t2)、同じ向きでウエハカセット1の近傍まで搬送された後、同じ向きでウエハカセット1に挿入され(時間t3)、第2の処理チャンバー7内に先に搬入されたウエハ4の処理が完了するまでウエハカセット1内で一時保管される(時間t4)。
【0006】
第2の処理チャンバー7内のウエハ4の処理が完了したら、ウエハカセット1内のウエハ4が、搬送アーム9によって、ウエハ表面4aが上を向いた状態で取り出され(時間t5)、同じ向きで第2の処理チャンバー7の近傍まで搬送された後、同じ向きで第2の処理チャンバー7に挿入され(時間t6)、この第2の処理チャンバー7内で処理される(時間t7)。
【0007】
この種のウエハ搬送装置5において、搬送アーム8,9は、上述のようにウエハ4をウエハ表面4aが上を向いた水平状態で搬送するため、ウエハ4上にパーティクルが落下しやすい。そして、落下したパーティクルによって、配線ショート等のパターン形成不良が発生しやすい。
【0008】
これを防止するために、図10に示すように、搬送アーム8(9)のウエハ保持部10に気流取り入れ口11を設け、この気流取り入れ口11からの気流をウエハ4の表面に沿う水平方向の層流Lとして、ウエハ4上のパーティクルを吹き落とすとともに、層流Lをエア・バリアとして機能させて、他のパーティクルの飛来、付着を防止することが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平08−264621号公報
【特許文献2】特開平07−230959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のウエハ搬送方法では、ウエハ搬送中におけるウエハ表面4aへのパーティクルの落下は、上述したようにウエハ表面4aに気流等を吹き付けることで防止可能であるが、ウエハカセット1への挿入後にウエハカセット1内のパーティクルが重力により落下し、ウエハ表面4aに付着することがある。
【0010】
ウエハカセット1内に挿入されたウエハ4は、上述したように表面4aが上向きの水平状態で保管されるため、ウエハカセット1の雰囲気中のパーティクルがウエハ表面4aに付着するだけでなく、複数枚並んで保管された上段のウエハ4の裏面4bのパーティクルが下段のウエハ4の表面4aに落下して付着するのである。このようなパーティクルの落下・付着は、ウエハ4の上向きの表面積が大きい程起こり易くなり、それによる不良が発生する確率も高くなる。
【0011】
一方、パーティクルサイズが小さくなると、パーティクル自体が正負いずれかに帯電していることが多く、また静電チャック等の使用でウエハ4自体も帯電していることがあるため、重力以外に静電気力によるパーティクル付着も大きな問題となる。この場合、上述したようにウエハ表面4aに気流を吹き付けてパーティクルを飛ばそうとしても、帯電したパーティクルの離脱は困難である。気流を強くすれば、レジスト等が破損してしまう恐れがあり、また帯電したパーティクルを離脱することができても、その周辺に再付着する可能性が高い。
【0012】
パーティクルの付着に起因する不良は、半導体プロセスの微細化が進むほど深刻な問題となる。従来プロセス品では不良につながらなかった大きさのパーティクルも、微細プロセス品では不良につながり易い。装置自体や製造ラインのパーティクル管理を厳しくすることが必要であるが、それだけでは十分に対応できていないのが現状である。
【0013】
ウエハ4へのパーティクルの落下・付着は、リソグラフィー工程に限らず、他の半導体プロセス工程、例えば、エッチング工程、膜堆積工程等においても大きな問題となる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、ウエハカセットなどのウエハ保持容器を経て搬送するウエハへのパーティクルの落下・付着や静電気的吸着を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のウエハ保管装置は、複数のウエハ処理工程間でウエハを保管するためのウエハ保管装置であって、前記ウエハをウエハ表面が上下方向に沿う向きに保持するウエハ保持容器と、前記ウエハ保持容器内に上下方向の気流を流す気流発生機構と、前記ウエハ保持容器の上流部で前記気流に対してイオン化を行うイオン化機構とを備えたことを特徴とする。
【0015】
これによれば、上記した向きに保持されたウエハは水平方向に占める面積がわずかであるため、ウエハ保持容器内の雰囲気に含まれたパーティクルや、複数枚保持されたウエハの内の他のウエハに付着していたパーティクルが、重力作用によってウエハ表面に落下・付着するのを防止することができる。更にイオン化された気流をウエハ表面と同じ向きに流すことで、ウエハ、ウエハ保持容器内の雰囲気、パーティクルを電気的に中和するか、あるいは所望の極性に帯電させることができ、ウエハ表面へのパーティクルの静電吸着を防止可能である。
【0016】
イオン化機構として、気流に対して正及び負の極性のイオン化を行うイオン発生装置を設けることができる。これにより、ウエハ、ウエハ保持容器内の雰囲気、パーティクルを電気的に中和し、帯電したパーティクルのウエハ表面への静電吸着を防止できる。
【0017】
また、ウエハ保持容器の下流部で気流のイオン化極性を測定し、測定結果をイオン化機構に出力するセンサーを設け、前記イオン化機構として、気流に対して前記センサーで測定された極性とは逆の極性にイオン化を行うイオン発生装置を設けることができる。これにより、ウエハ、ウエハ保持容器内の雰囲気、パーティクルの電気的中和を効率よく行い、帯電したパーティクルのウエハ表面への静電吸着を効果的に防止できる。
【0018】
また、イオン化機構として、気流に対して正あるいは負の極性のイオン化を行うイオン発生装置を設け、前記イオン発生装置による極性とは逆の極性に維持された電極を内蔵してウエハ保持容器内のパーティクルを捕獲する集塵装置を設けることができる。これにより、ウエハ、ウエハ保持容器内の雰囲気、パーティクルを、正あるいは負の特定の極性に帯電させ、帯電したパーティクルを前記集塵フィルタでクーロン力によって効果的に捕獲することができ、ウエハ表面へのパーティクルの吸着を防止できる。
【0019】
集塵装置は、ウエハ保持容器の下流部に設けるのが好ましい。ウエハの搬送の妨げになるのを回避するためである。
また集塵装置は、ウエハ保持容器内におけるウエハ保持位置の近傍に設けるのが好ましい。ウエハへのパーティクル付着を効率的に防止するためである。
【0020】
本発明のウエハ保管方法は、ウエハに対して複数の処理を施すプロセス工程において、任意のウエハ処理工程間で前記ウエハを上記したウエハ保管装置で保管することを特徴とする。
【0021】
本発明のウエハ搬送装置は、ウエハに対して複数の処理を施すプロセス工程において、処理時間差がある第1のウエハ処理工程と第2のウエハ処理工程との間でウエハを搬送するウエハ搬送装置であって、上記したウエハ保管装置と、第1のウエハ処理工程から前記ウエハ保管装置にウエハを搬送し、先行するウエハの第2のウエハ処理工程での処理が終了した後に前記ウエハ保管装置から第2のウエハ処理工程にウエハを搬送する、少なくとも1つの搬送手段とを有したことを特徴とする。
【0022】
搬送手段は、ウエハ吸着部を有し、ウエハ表面が上下方向に沿う向きに保持する第一の保持状態と、ウエハ表面が水平方向に沿う向きに保持する第二の保持状態とに、保持状態を切り替え可能に構成された搬送アームであってよい。
【0023】
本発明のウエハ搬送方法は、ウエハに対して複数の処理を施すプロセス工程において、処理時間差がある第1のウエハ処理工程と第2のウエハ処理工程との間でウエハを搬送する際に、第1のウエハ処理工程から上記したウエハ保管装置に搬送して、先行するウエハの第2のウエハ処理工程での処理が終了するまで一時保管し、処理終了後の第2のウエハ処理工程に搬送することを特徴とする。
【0024】
第1のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の塗布工程であり、第2のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の露光工程である時に好都合である。また、第1のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の露光工程であり、第2のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の現像工程である時に好都合である。厳しいパーティクル管理が要求されるフォトレジスト膜が塗布されたウエハに適用することで、効果が大である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のウエハ保管装置は、ウエハ保持容器内にウエハをウエハ表面が上下方向に沿う向きに保持し、このウエハ保持容器内に、ウエハ保持容器の上流部でイオン化させた気流をウエハ表面に沿う上下方向に流すようにしたため、ウエハ保持容器内のパーティクルが重力や静電気によってウエハ表面に落下・付着するのを防止することができ、パーティクルに起因する配線ショート等のパターン形成不良を防止できる。
【0026】
気流の強弱でパーティクルを離脱させるのではないため、ウエハ保持容器からパーティクルを排出できる最小限の気流強さでよく、レジストを塗布したウエハを保管する場合も気流によるレジストのダメージは小さい。
【0027】
したがって、このウエハ保管装置でウエハを一時的に保管すること、このウエハ保管装置を組み込んだウエハ搬送装置、このウエハ搬送装置を用いてウエハを搬送するウエハ搬送方法も好適に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態におけるウエハ保管装置の構成を示し、図2は同ウエハ保管装置を含んだウエハ搬送装置をリソグラフィー装置に適用した状態を示す。図中、先に図8〜図10を用いて説明した従来のものと同様の作用を有する部材に図8〜図10と同じ符号を付す。
【0029】
図1(a)はウエハ保管装置の正面図、図1(b)は同ウエハ保管装置の図1(a)におけるA−A’断面図である。
このウエハ保管装置20は、ウエハを保持する機構であるウエハカセット1、ウエハカセット内に気流を発生させる気流発生機構21、気流に対してイオン化を行うイオン化機構22を備えている。
【0030】
ウエハカセット1は、ウエハ4をその表面4aが上下方向(重力方向と同一方向、以下単に上下方向と言う)を向くように保持する構造である。
詳細には、ウエハカセット1は、四角筒状の本体2の一対の並行な側壁に周縁部を残して開口部2aが形成されるとともに、本体2の両端の開口部2bのそれぞれに、一方の開口部2aから他方の開口部2aへ向かう方向に延びる薄板状のウエハ支持部3が、各開口部2b内を所定間隔で仕切るように並列に、かつ一方の開口部2bのウエハ支持部3と他方の開口部2bのウエハ支持部3とが対向するように設けられている。
【0031】
それにより、図示したように本体2の軸心が上下方向を向くように配置された状態において、ウエハ4は外周部分においてウエハ支持部3間に支持され、ウエハ表面4a(および裏面4b)が上下方向に沿う向きで本体2内に保持される。本体2の中央部分は空いていて、ウエハ4およびそれを搬送する搬送アーム(図2に示す8´,9´)が開口部2aを通じて出入り可能である。
【0032】
気流発生機構21は、ウエハカセット1の本体2の上側の開口部2bを覆う凹状の上部蓋体23の中央部に形成された気流取り入れ口23aと、本体2の下側の開口部2bを覆う凹状の下部蓋体24の中央部に形成された排気口24aと、図示を省略した給気源などからなる。
【0033】
イオン化機構22は、ここでは交流式のイオン発生装置であり、上部蓋体23とウエハカセット1との間に配置されている。
この構成により、空気25を気流取り入れ口23aから供給し、排気口24aから排気することによって、ウエハカセット1内を上下方向に流れる気流を形成することができる。それにより、ウエハカセット1内にパーティクルが発生した場合もこの上下方向の気流によって強制的に排出することができ、ウエハカセット1内のウエハ4の表面4aあるいは裏面4bにパーティクルが付着していた場合も、気流の強さを適宜に調節することで除去できる。
【0034】
さらに、ウエハカセット1の上流側に配置されたイオン化機構22によって気流を正及び負にイオン化させることで、ウエハカセット1内の雰囲気、ウエハ4、パーティクルを電気的に中和させることができ、ウエハ表面4aにパーティクルが静電吸着するのを防止できる。この場合、気流の強さでパーティクルを吹き飛ばすのではなく、除電によってパーティクルをウエハ4から離脱させるので、離脱したパーティクルを排気口24aから排出できる程度に気流を弱めることができる。したがって、レジストを塗布したウエハ4を保管する場合も気流によるレジストへのダメージが小さい。
【0035】
なお、ウエハ支持部3は上述したようにウエハ4と搬送アーム8´(9´)とが挿入できる間隔で設けられるため、ウエハ支持部3間でウエハ4が若干傾き、ウエハ表面4aが完全に上下方向に沿う向きには保持されない可能性もある。場合によっては、ウエハ表面4aがやや斜め上向きとなる可能性もある。しかしウエハ支持部3間の間隔はウエハ径に比べて非常に小さく、ウエハ4が水平方向に占める面積は僅かであるため、このようなウエハ4の傾きがウエハ表面4aへのパーティクルの付着防止効果に及ぼす影響は小さい。
【0036】
なおここではイオン発生機構22として交流式のイオン発生装置を用いたが、同時に正及び負のイオンを発生できる直流式のイオン発生装置を用いてもよい。イオン発生方法としては、コロナ放電方式や光照射方式を用いることができる。
【0037】
気流発生機構21の内、排気口24aなどの気流排出手段は、排気の方法や排気のタイミングに関係なく、排気機能を満たしておればどのような機構であっても構わない。気流の強さは、少なくとも気流が排気口24aへ向かって流れることができればよく、その強弱を問わない。
【0038】
図2に示したリソグラフィー装置において、ウエハ搬送装置5は、コーターである第1の処理チャンバー6とステッパである第2の処理チャンバー7との間に設置されている。
このウエハ搬送装置5は、ウエハ保管装置20の上流側と下流側とに搬送アーム8´,9´を配置した構成である。
【0039】
搬送アーム8´は、上下方向の支持軸26に取り付けられていて、第1の処理チャンバー6に搬入搬出可能な位置とウエハ保管装置20に搬入搬出可能な位置とにわたって、支持軸26の軸心周りに回転して移動する。同様に、搬送アーム9´は、上下方向の支持軸26に取り付けられていて、第2の処理チャンバー7に搬入搬出可能な位置と、ウエハ保管装置20に搬入搬出可能な位置とにわたって、支持軸26の軸心周りに回転して移動する。各搬送アーム8´,9´は、ウエハ4の裏面4bの外周縁よりやや内側の領域を吸着する吸着部27などの吸着機構と、吸着部27を固着し、軸心周りに回転可能なアーム部28などの回転機構とを備えており、ウエハ4を任意の角度で保持可能である。
【0040】
この構成により、第1の処理チャンバー6で処理(時間t1)されたウエハ4は、搬送アーム8´によって、ウエハ表面4aが上を向いた水平状態で取り出され(時間t2)、ウエハ保管装置20の近傍まで搬送されるとともに、搬送アーム8´の回転機構にてウエハ表面4aが上下方向を向くように90度回転され、その後に同じ向きでウエハ保管装置20のウエハカセット1内に挿入され(時間t3)、第2の処理チャンバー7内に先に搬入されたウエハ4の処理が完了するまでこのウエハカセット1内に一時保管される(時間t4)。
【0041】
このようにして、ウエハ4が、ウエハ表面4aが上下方向を向く状態で保管され、かつ上述したように気流が上下方向に流れることから、パーティクルが落下してきてもウエハ表面4aには付着しにくく、そのまま下に落下して排出される。
【0042】
第2の処理チャンバー7内のウエハ4の処理が完了したら、ウエハカセット1内のウエハ4が、搬送アーム9´によって、ウエハ表面4aが上下方向を向いた状態で取り出され(時間t5)、第2の処理チャンバー7の近傍まで搬送されるとともに、搬送アーム9´の回転機構にてウエハ表面4aが上を向くように90度回転され、その後に同じ向きで第2の処理チャンバー7に挿入され(時間t6)、この第2の処理チャンバー7内で処理される(時間t7)。
【0043】
以上のようにして、複数の処理工程での処理時間の差を調整するためにウエハ4をウエハカセット1内に一時保管する必要があるプロセス工程において、ウエハカセット1内でウエハ表面4aが上下方向に沿う向きで保持することにより、つまりウエハ表面4aが上向くことを無くすことにより、重力作用で落下するパーティクルがウエハ表面4aに付着するのを防止することができる。またイオン化機構22を用いることにより、パーティクルがウエハ表面4aに静電吸着するのを防止することができる。
【0044】
なお、上記したウエハ搬送装置5では、搬送アーム8´,9´自体を回転させることでウエハ4の向きを変えるようにしたが、ウエハ4を所望の向きに配置できればどのような方法を用いてもよい。
【0045】
また、この第1実施形態では、リソグラフィー工程において異なる処理を順次に行う第1の処理チャンバー(コーター)6と第2の処理チャンバー(ステッパ)7との間でのウエハ搬送を例示したが、リソグラフィー工程以外の半導体プロセス工程、例えば、エッチング工程、膜堆積工程等におけるウエハ搬送にも適用可能である。また単一のウエハ処理装置におけるウエハ搬送にも適用可能である。搬送・保管対象のウエハ4は、シリコン等の半導体、ガラス等の絶縁物など、いずれであってもよい。
【0046】
ウエハ保管装置20として、以下の第2実施形態〜第4実施形態のものを用いてもよい。
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態におけるウエハ保管装置の構成を示し、図3(a)は同ウエハ保管装置の正面図、図3(b)は同ウエハ保管装置の図3(a)におけるA−A’断面図である。
【0047】
この第2実施形態のウエハ保管装置20が第1実施形態のものと相違するのは、イオン化機構22として直流式のイオン発生装置を設け、ウエハカセット1と下部蓋体24との間に、ウエハカセット1内の雰囲気のイオン化極性を測定するためのセンサー29を設けた点である。センサー29としては、たとえばエーベルト法やゲルディエン法等の原理を利用したセンサーを用いる。
【0048】
これにより、センサー29から該極性の情報を含んだ電気的信号が出力されて、イオン化機構22に入力され、このイオン化機構22が、気流に対して該極性と逆の極性のイオン化を行うように制御される。たとえば、センサー29においてウエハカセット1内の雰囲気のイオン化極性が正であると検出された場合、イオン化機構22は気流に対して負の極性のイオン化を行う。
【0049】
したがって、この第2実施形態のウエハ保管装置20によれば、イオン化された気流によって、ウエハカセット1内の雰囲気、ウエハ4、パーティクルの電気的中和を効率よく行うことができ、ウエハ表面4aにパーティクルが静電吸着するのを効果的に防止できる。強い気流を要さないので、レジストを塗布したウエハ4を保管する場合も気流によるレジストへのダメージが小さい。
【0050】
しかし、ウエハカセット1内で発生したパーティクルやウエハ表面4a及び裏面4bに付着したパーティクルを気流の強さによって強制的に剥離し排出できるのは、第1実施形態のものと同様である。
【0051】
なおこの第2実施形態では、イオン発生機構22として直流式のイオン発生装置を用いたが、正あるいは負の極性の一方の極性にイオン化できるものであればよく、パルス直流式のイオン発生装置を用いてもよい。イオン発生方法としては、コロナ放電方式や光照射方式を用いることができる。
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態におけるウエハ保管装置の構成を示し、図4(a)は同ウエハ保管装置の正面図、図4(b)は同ウエハ保管装置の図4(a)におけるA−A’断面図である。
【0052】
この第3実施形態のウエハ保管装置20が第1実施形態のものと相違するのは、イオン化機構22として直流式のイオン発生装置を設け、ウエハカセット1と下部蓋体24との間に、ウエハカセット1内のパーティクルを捕獲する集塵機構として集塵フィルタ30を設けた点である。
【0053】
集塵フィルタ30は、図5に平面図を示すように、メッシュ状の電極31の周りにフィルタ材料32が巻きつけられた構造である。電極31の極性は、イオン化機構22におけるイオン化の極性と逆の極性に維持される。たとえばイオン化機構22におけるイオン化の極性が正の場合には、電極31の極性は負に維持される。
【0054】
この第3実施形態のウエハ保管装置20によれば、イオン化機構22において気流に対して正あるいは負の極性のイオン化を行うことによって、ウエハカセット1内の雰囲気、ウエハ4、パーティクルを該極性に帯電させ、帯電したパーティクルを、該極性とは逆の極性に維持された電極31が内蔵された集塵フィルタ30でクーロン力により効率的に捕獲することができる。したがって、パーティクルがウエハ表面4aに静電吸着するのを防止することができる。集塵フィルタ30は、ウエハカセット1と下部蓋24体との間に設けられているため、搬送アーム8´(9´)によるウエハ4の搬送を妨げることはない。よって、強い気流を要さず、レジストを塗布したウエハ4を保管する場合も気流によるレジストへのダメージも小さい。
【0055】
しかし、ウエハカセット1内で発生したパーティクルやウエハ表面4a及び裏面4bに付着したパーティクルを気流の強さによって強制的に剥離し排出できるのは、第1実施形態のものと同様である。
【0056】
なおこの第3実施形態では、イオン化機構22として直流式のイオン発生装置を用いたが、正あるいは負の極性の一方の極性にイオン化できるものであればよく、パルス直流式のイオン発生装置を用いてもよい。イオン発生方法としては、コロナ放電方式や光照射方式を用いることができる。
【0057】
集塵フィルタ30は、図5に示した構成に限られるものではなく、気流を少ない抵抗で通す形状であればよい。電極31の形状も、蜂の巣状や、菱型状であってもよい。フィルタ材料32としては、ポリプロピレンやグラスファイバ等からなる繊維状構造を持ったディスプタイプやメンブレンタイプ、ポリテトラフロロエチレンや超高分子量ポリエチレン等からなるメンブレンタイプなどを用いることができる。
(第4実施形態)
図6は本発明の第4実施形態におけるウエハ保管装置の構成を示し、図6(a)は同ウエハ保管装置の正面図、図6(b)は同ウエハ保管装置の図6(a)におけるA−A’断面図である。
【0058】
この第4実施形態のウエハ保管装置20は、第3実施形態のものと同様に、イオン化機構22としての直流式のイオン発生装置と、ウエハカセット1内のパーティクルを捕獲する集塵機構としての集塵フィルタ30aとを備えている。
【0059】
ただし、集塵フィルタ30aは、対向するウエハ支持部3どうしを繋ぐように複数箇所に設けられている。また集塵フィルタ30aは、図7に平面図を示すように、メッシュ状の電極31aを覆うように、フィルタ材料32aが敷き詰められた構造である。電極31aの極性は、イオン化機構22におけるイオン化の極性と逆の極性に維持される。たとえば、イオン化機構22におけるイオン化の極性が正の場合には、電極32aの極性は負に維持される。
【0060】
この第4実施形態のウエハ保管装置20によれば、第3実施形態のものと同様に、イオン化機構22において気流に対して正あるいは負の極性のイオン化を行うことによって、ウエハカセット1内の雰囲気、ウエハ4、パーティクルを該極性に帯電させ、帯電したパーティクルを、該極性とは逆の極性に維持された電極31aが内蔵された集塵フィルタ30aでクーロン力により効率的に捕獲することができる。それにより、パーティクルがウエハ表面4aに静電吸着するのを防止することができる。
【0061】
さらに、この第4実施形態のウエハ保管装置20では、集塵フィルタ30がウエハ4どうしの間にウエハ4と接触しないように存在しているため、ウエハ表面4aと集塵フィルタ30aとの距離が非常に近くなり、ウエハ表面4aへのパーティクルの付着をより効率的に防止することができる。集塵フィルタ30aが搬送アーム8´(9´)によるウエハ4の搬送を妨げることもない。したがって、強い気流を要さず、レジストを塗布したウエハ4を保管する場合も気流によるレジストへのダメージは小さい。
【0062】
しかし、ウエハカセット1内で発生したパーティクルやウエハ表面4a及び裏面4bに付着したパーティクルを気流の強さによって強制的に剥離し排出できるのは、第3実施形態のものと同様である。
【0063】
なおこの第4実施形態では、イオン化機構22として直流式のイオン発生装置を用いたが、正あるいは負の極性の一方の極性にイオン化できるものであればよく、パルス直流式のイオン発生装置を用いてもよい。イオン発生方法としては、コロナ放電方式や光照射方式を用いることができる。
【0064】
集塵フィルタ30aは、図7に示した構成に限られるものではなく、気流を少ない抵抗で通す形状であるのがより望ましく、電極31aの形状も、蜂の巣状や、菱型状であってよい。フィルタ材料32aとしては、ポリプロピレンやグラスファイバ等からなる繊維状構造を持ったディスプタイプやメンブレンタイプ、ポリテトラフロロエチレンや超高分子量ポリエチレン等からなるメンブレンタイプなどを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のウエハ保管装置は、内部に保管したウエハの表面にパーティクルが重力や静電気で付着するのを防止できるので、配線ショート等のパターン形成不良の発生を防止することが可能であり、このウエハ保管装置を備えたウエハ搬送装置ともども、半導体装置の製造工程などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態におけるウエハ保管装置の構成図
【図2】図1のウエハ保管装置を備えた本発明のウエハ搬送装置の構成図
【図3】本発明の第2実施形態におけるウエハ保管装置の構成図
【図4】本発明の第3実施形態におけるウエハ保管装置の構成図
【図5】図4のウエハ保管装置に設けられた集塵フィルタの平面図
【図6】本発明の第4実施形態におけるウエハ保管装置の構成図
【図7】図6のウエハ保管装置に設けられた集塵フィルタの平面図
【図8】従来のウエハ保管装置の構成図
【図9】図8のウエハ保管装置を備えた従来のウエハ搬送装置の構成図
【図10】ウエハ搬送装置に設けられる従来よりある搬送アームの断面図
【符号の説明】
【0067】
1 ウエハカセット
3 ウエハ支持部
4 ウエハ
4b 裏面
4a 表面
5 ウエハ搬送装置
8´,9´ 搬送アーム
20 ウエハ保管装置
21 気流発生機構
23a 気流取り入れ口
24a 排気口
25 空気
29 センサー
30,30a 集塵フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウエハ処理工程間でウエハを保管するためのウエハ保管装置であって、前記ウエハをウエハ表面が上下方向に沿う向きに保持するウエハ保持容器と、前記ウエハ保持容器内に上下方向の気流を流す気流発生機構と、前記ウエハ保持容器の上流部で前記気流に対してイオン化を行うイオン化機構とを備えたウエハ保管装置。
【請求項2】
イオン化機構として、気流に対して正及び負の極性のイオン化を行うイオン発生装置を有した請求項1記載のウエハ保管装置。
【請求項3】
ウエハ保持容器の下流部で気流のイオン化極性を測定し、測定結果をイオン化機構に出力するセンサーを有し、前記イオン化機構として、気流に対して前記センサーで測定された極性とは逆の極性にイオン化を行うイオン発生装置を有した請求項1記載のウエハ保管装置。
【請求項4】
イオン化機構として、気流に対して正あるいは負の極性のイオン化を行うイオン発生装置を有し、前記イオン発生装置による極性とは逆の極性に維持された電極を内蔵してウエハ保持容器内のパーティクルを捕獲する集塵装置を有した請求項1記載のウエハ保管装置。
【請求項5】
集塵装置は、ウエハ保持容器の下流部に設けられた請求項4記載のウエハ保管装置。
【請求項6】
集塵装置は、ウエハ保持容器内におけるウエハ保持位置の近傍に設けられた請求項4記載のウエハ保管装置。
【請求項7】
ウエハに対して複数の処理を施すプロセス工程において、任意のウエハ処理工程間で前記ウエハを請求項1記載のウエハ保管装置で保管するウエハ保管方法。
【請求項8】
ウエハに対して複数の処理を施すプロセス工程において、処理時間差がある第1のウエハ処理工程と第2のウエハ処理工程との間でウエハを搬送する搬送装置であって、請求項1記載のウエハ保管装置と、第1のウエハ処理工程から前記ウエハ保管装置にウエハを搬送し、先行するウエハの第2のウエハ処理工程での処理が終了した後に前記ウエハ保管装置から第2のウエハ処理工程にウエハを搬送する、少なくとも1つの搬送手段とを有したウエハ搬送装置。
【請求項9】
搬送手段が、ウエハ吸着部を有した搬送アームであり、ウエハ表面が上下方向に沿う向きに保持する第一の保持状態と、ウエハ表面が水平方向に沿う向きに保持する第二の保持状態とに、保持状態を切り替え可能に構成された請求項8記載のウエハ搬送装置。
【請求項10】
ウエハに対して複数の処理を施すプロセス工程において、処理時間差がある第1のウエハ処理工程と第2のウエハ処理工程との間でウエハを搬送する際に、第1のウエハ処理工程から請求項1記載のウエハ保管装置に搬送して、先行するウエハの第2のウエハ処理工程での処理が終了するまで一時保管し、処理終了後の第2のウエハ処理工程に搬送するウエハ搬送方法。
【請求項11】
第1のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の塗布工程であり、第2のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の露光工程である請求項10記載のウエハ搬送方法。
【請求項12】
第1のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の露光工程であり、第2のウエハ処理工程がフォトレジスト膜の現像工程である請求項10記載のウエハ搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−32869(P2006−32869A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−213692(P2004−213692)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】