説明

ウエハ又は板状物の洗浄剤組成物

【課題】洗浄性に優れ、被洗浄物の持込による洗浄液の劣化が少なく、さらに引火点がなく、人体や環境への影響が少ないウエハ又は板状物の洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(a)〜(e)を含有することを特徴とするウエハ又は板状物の洗浄剤組成物である。
(a)下記一般式(1)で示されるアルキルポリグルコシド 5〜40重量%
R−O−(G)n−H ……(1)
(式中Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Gは炭素数5〜6の還元糖を示し、nは1〜5である。)
(b)金属イオン封鎖剤(キレート剤) 1〜20重量%
(c)アルカリ剤 1〜30重量%
(d)エーテル型非イオン界面活性剤 1〜30重量%
(e)水 残部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ又は板状物の洗浄剤組成物に関し、詳しくはシリコン、ガラス等のウエハ又は板状物をインゴット又は柱状物からスライス(切削)して製造する工程で必要とされる洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、太陽光発電装置等で用いられるシリコンウエハは、インゴットと呼ばれる珪素の単結晶の塊を砥粒の配合された油性もしくは水性の切削液にて切削・研磨され製造される。上記切削工程後、シリコン表面上に切削液中の砥粒や油性成分等が残り、次工程での障害となるため、砥粒や油性成分等を除去する洗浄工程を必要とされている。
【0003】
上記シリコンウエハ製造工程ではシリコンインゴットをワイヤーソー方式と呼ばれる方法で切断している。本方式では、インゴットをスライスベースと呼ばれる固定台に接着剤を用いて固定し、180μm程度のワイヤーに平均粒径20μm程度の炭化珪素等の微粒子(砥粒)を高粘度の切削液によって絡ませて、それをインゴットにこすりつけることによって切断するものである。切断したインゴットの切りしろは約200μmと非常に狭く、またその隙間には切削液、砥粒、切削粉が詰まった状態であるため、極めて洗浄の困難な状態となっている。
【0004】
本洗浄には無機アルカリ剤とエーテル型非イオン界面活性剤を含有した水系洗浄剤が使用されてきたが、一般に用いられるエーテル型非イオン界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等)は、無機性のアルカリ性溶液中では曇点低下のために可溶化量が低下し、安定な均一溶液を調整することが難しいことから、非イオン界面活性剤を少量しか配合できなかった。したがって、本洗浄剤の場合、初期の洗浄力はあるが、洗浄液への切削液の混入による洗浄力の低下が早いといった問題があった。
【0005】
例えば、下記特許文献1では炭化水素系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、非イオン界面活性剤、水を含有した洗浄剤組成物が、特許文献2では特定のグリコールエーテル系溶剤、界面活性剤、水を含有した洗浄剤組成物が提案されている。
【特許文献1】特開平9−223679号公報
【特許文献2】特開2000−77380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の炭化水素系溶剤を含有した洗浄剤は、水分が蒸発すると引火性を持つことや、すすぎ後水はじきによりシミ状の残存物が残るという問題点がある。また、特許文献2に記載のグリコールエーテル系溶剤を含有している洗浄剤は、使用時に水とともにグリコールエーテル系溶剤が揮発するため、洗浄剤の濃度管理が難しい、作業者や環境への負荷が懸念される等の問題がある。また、上記洗浄剤はアルカリを含有していないという点から、十分な洗浄力が得られないという問題もある。
【0007】
本発明は、以上のような欠点を解決すべくなされたものであり、洗浄性に優れ、被洗浄物の持込による洗浄液の劣化が少なく、さらに引火点がなく、人体や環境への影響が少ないウエハ又は板状物の洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定のアルキルポリグルコシド、金属イオン封鎖剤、アルカリ剤、エーテル型非イオン界面活性剤、水を特定の比率で組み合わせることによって、アルカリ溶液中でエーテル型非イオン界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等)を効果的に溶解させ、幅広い温度変化に対して安定かつ高濃縮な洗浄剤組成物を作製するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(a)〜(e)を含有することを特徴とするウエハ又は板状物の洗浄剤組成物である。
(a)下記一般式(1)で示されるアルキルポリグルコシド 5〜40重量%
R−O−(G)n−H ……(1)
(式中Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Gは炭素数5〜6の還元糖を示し、nは1〜5である。)
(b)金属イオン封鎖剤(キレート剤) 1〜20重量%
(c)アルカリ剤 1〜30重量%
(d)エーテル型非イオン界面活性剤 1〜30重量%
(e)水 残部
【0010】
本発明においては、前記(a)成分のアルキルポリグルコシドにおける糖残基Gの平均重合度(一般式(1)中のn)が1.8未満であり、かつ一般式(1)中のRの炭素数が12以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記(b)成分の金属イオン封鎖剤(キレート剤)に、L−グルタミン酸二酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、及びグルコン酸塩から選ばれる少なくとも1種類を好適に使用することができる。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄対象物の素材がシリコン、水晶、石英、ガラス、又はセラミックのいずれかであり、更に洗浄対象物に砥粒及び/または潤滑成分が付着している場合に好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のウエハ又は板状物の洗浄剤組成物は、ウエハ又は板状物製造工程での洗浄工程において、本洗浄剤組成物は十分な洗浄性が得られ、かつ被洗浄物の洗浄槽への持込による液の劣化を遅延させる、つまりランニングコストの低減に寄与できる。
【0014】
また、本洗浄剤組成物は引火点がなく、かつ特定の金属イオン封鎖剤を用いることにより、人体や環境への影響が少ないといった特徴を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の洗浄剤組成物に含有する(a)成分のアルキルポリグルコシドは、下記一般式(1)で示される。
【0016】
R−O−(G)n−H ……(1)
式中Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Gは炭素数5〜6の還元糖を示し、nは1〜5である。
【0017】
該アルキルポリグルコシドの疎水基に相当するアルキル基Rは、炭素数1〜22の直鎖または分岐の飽和炭化水素であり、炭素数3〜14のアルキル基であることが好ましい。さらに発泡性、洗浄性、アルカリ液中での可溶化能及び安定性のバランスを考慮すると炭素数4〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
【0018】
この中で、発泡性が低く、幅広い洗浄方式に対応できるという特徴を持つのが炭素数3〜6のアルキル基を分子構造中に持つアルキルグルコシドであり、洗浄剤組成物の表面張力を低下させる能力が高く洗浄性の向上に寄与することが可能なのは炭素数7〜14であるアルキル基を分子構造中に持つアルキルグルコシドである。
【0019】
また、親水基であるサッカライド部分(一般式(1)中G)は炭素数5〜6の還元糖を基本単位とする。この還元糖としては、特にグルコース、ガラクトース、フラクトースが好ましい。
【0020】
また、該アルキルポリグルコシドの重合度(DP:一般式(1)のn)は1〜5であり、その中でもアルカリ液中での可溶化能と起泡力のバランスの観点よりDPが1.2〜1.8のものが80%以上含有されることが好ましい。なお、DPはプロトンNMR法により測定出来る。
【0021】
上記アルキルグルコシド型非イオン界面活性剤の具体例としては、プロピルグルコシド、ブチルグルコシド、ヘキシルグルコシド、オクチルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド等が挙げられる。
【0022】
上記アルキルグルコシドの合成法としては、既知のKoening−Knorr法や高級アルコールとグルコース、ガラクトース、マルトース等の還元糖から合成する方法(米国特許3,839,318号、同3,598,865号)などが挙げられる。
【0023】
また、これらのアルキルグルコシド型非イオン界面活性剤は、単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記(a)成分は、洗浄剤組成物中に5〜40重量%で含有され使用される。(a)成分の含有量が5重量%未満では洗浄性、製品安定性が得られず、40重量%を超えてると製品安定性が低下する傾向を示す。
【0025】
本発明で用いられる(b)成分の金属イオン封鎖剤(キレート剤)としては、L−グルタミン酸二酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、グルコン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸塩、ヒドロキシエチレンジアミンテトラアミン六酢酸塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩、トリエチレンテトラミン六酢酸塩、ジエンコル酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩等が挙げられる。また、これらは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等がある。人体や環境への影響が少なく、配合した場合の洗浄性の向上という面では、L−グルタミン酸二酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、グルコン酸塩が好ましい。
【0026】
また、これらの金属イオン封鎖剤は、単独で用いても複数組み合わせてもよい。
【0027】
上記(b)成分は、洗浄剤組成物中に1〜20重量%で含有され使用される。(b)成分の含有量が1重量%未満では洗浄液の劣化が大きくなり、20重量%を超えると製品安定性が低下する傾向を示す。
【0028】
本発明で用いられる(c)成分のアルカリ剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウムのような無機アルカリやモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムハイドロオキサイド(通称コリン)、モノイソパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アミノエチルピペラジン、アミノエチルエタノールアミン等の有機アルカリが挙げられる。
【0029】
これらのアルカリ剤は単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記(c)成分は、洗浄剤組成物中に1〜30重量%で含有され使用される。(c)成分の含有量が1重量%未満では洗浄性が不十分であり、30重量%を超えると製品安定性が悪化する。
【0031】
本発明で用いられる(d)成分のエーテル型非イオン界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0032】
切削液中の砥粒や油性成分の除去性、浸透性の向上という観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチレン化フェニルエーテルが好ましい。
【0033】
また、これらのポリオキシアルキレンエーテル型非イオン界面活性剤は単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記(d)成分は、洗浄剤組成物中に1〜30重量%で含有され使用される。(d)成分の含有量が1重量%未満では洗浄効果が得られず、30重量%を超えると製品安定性が悪化する。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(a)〜(d)成分と残部水により構成される。(a)〜(d)成分は上記の含有量範囲において配合し混合され使用される。(a)〜(d)成分の合計量は特に制限されないが、好ましくは洗浄剤組成物中に30〜70重量%含まれることが適当である。含有量が30重量%未満であると洗浄性が不十分となり、70重量%を越えると製品安定性が低下する傾向を示す。
【0036】
本発明に使用される水としては、市水、井水、純水(イオン交換樹脂などによって脱塩処理を行った水)、超純水(無機イオンのみではなく、有機物、生菌、微粒子、溶存気体等を除去した水)、近年提案されている各種機能水等が挙げられるが、電子制御部に悪影響を与える金属イオン分の含有量が少ないという点から、純水や超純水等が好ましい。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物は、更に必要に応じて公知の消泡剤、防腐剤、防錆剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0038】
消泡剤としては、シリコーン系、高級アルコール系、ポリグリコール系、鉱物油系等種々の公知のものを使用することが出来る。
【0039】
また、必要に応じて公知の陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤を添加してもよい。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄剤組成物が濃縮した状態で使用者に供給され、使用時に希釈して用いられる濃縮タイプも含む。
【0041】
洗浄工程においては、洗浄方法として特に限定されるものではないが、例えば、浸漬法、超音波洗浄法、浸漬揺動法、スプレー法、手拭き法等各種の洗浄方法を単独又は組み合わせて行うことが可能である。
【0042】
洗浄対象物としては、シリコン、ガリウム、砒素、ガリウム・燐等の半導体・結晶材料、水晶、石英、ガラス、圧電材料等の電子部品関連材料、フェライト、サマリウム・コバルト等の磁性材料、磁気ヘッド等の磁気材料、セラミックス等が挙げられる。
【0043】
上記構成による本発明の洗浄剤組成物は、特定のアルキルポリグルコシド、金属イオン封鎖剤、アルカリ剤、エーテル型非イオン界面活性剤、水を特定の比率で組み合わせることによって、アルカリ溶液中でエーテル型非イオン界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等)を効果的に溶解させ、幅広い温度変化に対して安定且つ高濃縮な洗浄剤組成物を作製することが可能である。本洗浄剤組成物を用いた砥粒及び/または潤滑成分を除去する工程においては、従来の洗浄剤より洗浄性が向上し、かつ被洗浄物の洗浄槽への持込による液の劣化を遅延させる、つまりランニングコストの低減に寄与できる
また、本洗浄剤組成物は引火点がなく、かつ特定の金属イオン封鎖剤を用いることにより、人体や環境への影響が少ない。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
[実施例]
表1(実施例1〜11)、表2(比較例1〜13)に示す洗浄剤組成物をそれぞれ調製し、下記の試験(a)〜(c)を行った。結果を表3に示した。
【0046】
洗浄剤組成物の調製に使用した配合成分は以下の通りである。
[アルキルポリグルコシド]
・オクチルポリグルコシド:DP=1.5
・ブチルポリグルコシド:DP=1.5
・テトラコシルポリグルコシド:DP=1.5
・ブチルポリグルコシド:DP=5.5
[金属イオン封鎖剤]
・L−グルタミン酸二酢酸ナトリウム塩
・メチルグリシン二酢酸ナトリウム塩
・グルコン酸ナトリウム塩
[非イオン界面活性剤]
・ポリオキシエチレンデシルエーテル:第一工業製薬(株)製「ノイゲンSD−70」
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルエーテル:第一工業製薬(株)製「ノイゲンXL−70」
・ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル:第一工業製薬(株)製「ノイゲンEA−157」
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル:第一工業製薬(株)製「ノイゲンEA−130T」
【0047】
(a)製品安定性
表1、2に記載されている各種洗浄剤組成物を原液にて、40℃の恒温槽で放置し経時的に液の分離、濁り、沈殿を調べた。評価の基準は次の通りである。
○:30日以上安定、△:1〜30日で分離、白濁、沈殿を確認、×:調整直後から1日に分離、白濁、沈殿を確認した。なお、製品安定性が、△もしくは×であった洗浄剤組成物に関しては、以下(b)、(c)の試験を実施していない。
【0048】
(b)新液洗浄性
シリコンウエハ(8インチ)2枚に、砥粒及び油性洗浄対象物のモデルとして、ワイヤーソーオイル:PS−LW−1(パレス化学株式会社製)と緑色炭化珪素研磨材:GC♯600(株式会社フジミインコーポレーテッド製)を重量比50:50で混合したものを、200μm間隔でセットしテストピースとした。表1、2に記載されている洗浄剤組成物を5%に希釈し、60℃に調温した。本液に上記テストピースを浸漬させ、28kHz、600Wにて10分間超音波を印加した。その後、イオン交換水を用い40℃、10分間の浸漬超音波洗浄し、更にイオン交換水を用い25℃、10分間浸漬超音波洗浄した。上記処理後、2枚のウエハを開け、それぞれウエハの砥粒及び油性洗浄対象物の除去面積率(%)を目視にて判定し、その平均値を新液洗浄性(%)とした。
【0049】
(c)劣化液洗浄性
試験(b)と同条件にてテストピースを作製した。表1、2に記載されている洗浄剤組成物を5%に希釈し、それぞれの洗浄剤希釈液に対し、上記砥粒及び油性洗浄対象物モデル液を5部添加し、劣化洗浄液とした。本劣化洗浄液に対し、試験(b)と同条件にて洗浄を行い、ウエハ上の洗浄対象物の除去面積率(%)を目視にて判定し、その平均値を劣化液洗浄性(%)とした。
【0050】
また、各実施例について引火点を測定したが、全ての洗浄剤組成物に対して、引火点は存在しなかった。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のウエハ又は板状物の洗浄剤組成物は、シリコン、ガリウム、砒素、ガリウム・燐等の半導体・結晶材料、水晶、石英、ガラス、圧電材料等の電子部品関連材料、フェライト、サマリウム・コバルト等の磁性材料、磁気ヘッド等の磁気材料、セラミックス等の製造工程における洗浄剤として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(e)を含有することを特徴とするウエハ又は板状物の洗浄剤組成物。
(a)下記一般式(1)で示されるアルキルポリグルコシド 5〜40重量%
R−O−(G)n−H ……(1)
(式中Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐のアルキル基であり、Gは炭素数5〜6の還元糖を示し、nは1〜5である。)
(b)金属イオン封鎖剤(キレート剤) 1〜20重量%
(c)アルカリ剤 1〜30重量%
(d)エーテル型非イオン界面活性剤 1〜30重量%
(e)水 残部
【請求項2】
前記(a)成分のアルキルポリグルコシドにおける糖残基Gの平均重合度(一般式(1)中のn)が1.8未満であり、かつ一般式(1)中のRの炭素数が12以下であることを特徴とする請求項1に記載のウエハ又は板状物の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(b)成分の金属イオン封鎖剤(キレート剤)が、L−グルタミン酸二酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、及びグルコン酸塩から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする請求項1又は2に記載のウエハ又は板状物の洗浄剤組成物。
【請求項4】
洗浄対象物の素材がシリコン、水晶、石英、ガラス、又はセラミックのいずれかであり、更に洗浄対象物に砥粒及び/または潤滑成分が付着していること特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のウエハ又は板状物の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−40828(P2009−40828A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205188(P2007−205188)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】