説明

エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】 流動性が良好で、反りが小さく、耐半田クラック性に優れた、エリア実装型半導体封止用に適したエポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】 (A)結晶性エポキシ樹脂、(B)ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、(C)トリアリールホスホニオフェノラート、及び(D)全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%の無機充填剤を必須成分とすることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び基板の片面に半導体素子が搭載されこの半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが前記エポキシ樹脂組成物を用いて封止されてなることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものであり、特にプリント配線板や金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみが樹脂封止されたエリア実装型半導体装置に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、軽量化、高機能化の市場動向において、半導体の高集積化が年々進み、また半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。エリア実装型半導体装置としては、ボールグリッドアレイ(以下、BGAという)、あるいは更に小型化を追求したチップサイズパッケージ(以下、CSPという)が代表的であるが、これらは従来のクワッドフラットパッケージ(以下、QFPという)、スモールアウトラインパッケージ(以下、SOPという)に代表される表面実装型半導体装置では限界に近づいている多ピン化・高速化への要求に対応するために開発されたものである。エリア実装型半導体装置の構造としては、ビスマレイミド・トリアジン(以下、BTという)樹脂/銅箔回路基板に代表される硬質回路基板あるいはポリイミド樹脂フィルム/銅箔回路基板に代表されるフレキシブル回路基板の片面上に半導体素子を搭載し、その素子搭載面、即ち基板の片面のみが樹脂組成物等で成形・封止されている。また基板の素子搭載面の反対面には半田ボールを2次元的に並列して形成し、半導体装置を実装する回路基板との接合を行う特徴を有している。更に素子を搭載する基板としては、上記有機回路基板以外にもリードフレーム等の金属基板を用いる構造も考案されている。
【0003】
これらエリア実装型半導体装置の構造は基板の素子搭載面のみを樹脂組成物で封止し、半田ボール形成面側は封止しないという片面封止の形態をとっている。ごく希に、リードフレーム等の金属基板等では、半田ボール形成面でも数十μm程度の封止樹脂層が存在することもあるが、素子搭載面では数百μmから数mm程度の封止樹脂層が形成されるため、実質的に片面封止となっている。このため有機基板や金属基板と樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合あるいは樹脂組成物の成形・硬化時の硬化収縮による影響により、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。また、これらの半導体装置を実装する回路基板上に半田接合を行う場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿により半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で半導体装置にクラックが発生する。さらに、近年、環境問題から従来よりも高融点の無鉛半田の使用が増加しており、この半田の適用により実装温度を従来よりも約20℃高くする必要があり、実装後の半導体装置の信頼性が現状より著しく低下する問題が生じている。このようなことからエポキシ樹脂組成物のレベルアップによる半導体装置の信頼性の向上要求が加速的に強くなってきており、樹脂の低粘度化と無機充填剤の高充填化が進んでいる。
【0004】
また、成形時に低粘度で高流動性を維持するために、溶融粘度の低い樹脂の使用(例えば、特許文献1参照。)や、また無機充填材の配合量を高めるために無機充填剤をシランカップリング剤で表面処理する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしこれらは種々ある要求特性のいずれかのみを満足するものが多く、実装時の耐クラック性と低粘度化が両立できる手法は未だ見出されておらず、反りが小さく、耐クラック性に優れた樹脂を用いて、更に無機充填剤の配合量を高めて信頼性を満足させ、流動性と硬化性を損なわない更なる技術が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−130919号公報(第2〜5頁)
【特許文献2】特開平8−20673号公報(第2〜4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、流動性が良好で、反りが小さく、耐半田クラック性に優れ、特にエリア実装型半導体封止用に適したエポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
[1](A)結晶性エポキシ樹脂、(B)一般式(1)で表されるフェノール樹脂、(C)一般式(2)で表される硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を必須成分とし、(D)成分を全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【0008】
【化5】

(式中、R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜4の整数、bは0〜4の整数、cは0〜3の整数。nは平均値で、1〜10の正数。)
【0009】
【化6】

(式中、Xは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1〜3の整数。)
【0010】
[2] 第[1]項記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
[3] 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみの封止に用いるものであって、(A)結晶性エポキシ樹脂、(B)一般式(1)で表されるフェノール樹脂、(C)一般式(2)で表される硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を必須成分とし、(D)成分を全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%含むことを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【0011】
【化7】

(式中、R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜4の整数、bは0〜4の整数、cは0〜3の整数。nは平均値で、1〜10の正数。)
【0012】
【化8】

(式中、Xは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1〜3の整数。)
【0013】
[4] 基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが第[3]項記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とするエリア実装型半導体装置、
である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従うと、無機充填材の高充填化と高流動性との両立が可能となり、特にエリア実装型の半導体装置においては、低そりと耐半田特性等の高信頼性との両立が可能となるという、顕著な効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、(A)結晶性エポキシ樹脂、(B)一般式(1)で表されるフェノール樹脂、(C)一般式(2)で表される硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を必須成分とし、(D)成分を全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%含むことより、流動性が良好で、反りが小さく、更に耐半田クラック性に優れ、特にエリア実装型半導体封止用に適したエポキシ樹脂組成物が得られるものである。
【化9】

(式中、R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜4の整数、bは0〜4の整数、cは0〜3の整数。nは平均値で、1〜10の正数。)
【化10】

(式中、Xは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1〜3の整数。)
以下、各成分について詳細に説明する。
【0016】
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、常温時には固体で取扱い作業性に優れ、かつ成形時の溶融粘度が非常に低い結晶性エポキシ樹脂が必要である。溶融粘度が低いことにより、エポキシ樹脂組成物の高流動化を得ることができ、無機充填材を高充填化できるため、耐湿性の向上や低線膨張化が図れ、成形品としての特性向上が得られる。
本発明で用いられる結晶性エポキシ樹脂としては、ハイドロキノンのグリシジルエーテル化物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、一般式(3)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂、一般式(4)で示されるスチルベン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
【化11】

(式中、R3〜R10は水素又は炭素数4以下のアルキル基で互いに同一でも異なっても良い。)
【0018】
【化12】

(式中、R11〜R20は水素又は炭素数4以下のアルキル基で互いに同一でも異なっても良い。)
【0019】
一般式(3)のビフェニル型エポキシ樹脂の内では、作業性、実用性のバランスの取れた4,4’−ジグリシジルビフェニル、あるいは3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジグリシジルビフェニル及びこの両者の溶融混合物等が好ましい。
また、一般式(4)のスチルベン型エポキシ樹脂の内では、作業性、実用性のバランスの取れた5−ターシャリブチル−4,4’−ジグリシジル−2,3’,5’−トリメチルスチルベン、あるいは4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン及びこの両者の溶融混合物等が好ましい。
【0020】
本発明では、結晶性エポキシ樹脂を配合することによる特徴を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用することができる。併用する場合、結晶性エポキシ樹脂は全エポキシ樹脂中の少なくとも30重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。下限値未満であれば、結晶性エポキシ樹脂の特徴である流動性が損なわれる恐れがある。併用可能なエポキシ樹脂としては特に限定はしないが、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。併用するエポキシ樹脂は、成形時の溶融粘度が非常に低い結晶性エポキシ樹脂の特徴を損なわないよう、極力粘度の低いものを使用することが望ましい。
【0021】
本発明で用いられる一般式(1)で表されるフェノール樹脂は、フェノール性水酸基間に疎水性で剛直なビフェニレン骨格を有しており、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は低反りの特徴を有し、また吸湿率が低く、Tgを越えた高温域での弾性率が低く、半導体素子、有機基板、及び金属基板との密着性に優れる。また、難燃性にも優れ、架橋密度が低い割には耐熱性が高いという特徴を有している。
一般式(1)のR1、R2は水素又は炭素数4以下のアルキル基、aは0〜4の整数、bは0〜4の整数、cは0〜3の整数、nは平均値で0〜10の数であるが、これらの内では硬化性の点から式(5)の樹脂等が好ましい。nが上記上限値を越えると樹脂の粘度が増大し、成形時の樹脂組成物の流動性が劣り、より一層の低吸湿化、低そり化のための無機充填材の高充填化が不可能となるので好ましくない。
【0022】
【化13】

(式中、nは平均値で0〜10の正数。)
【0023】
本発明では、一般式(1)のフェノール樹脂を配合することによる特徴を損なわない範囲で、他のフェノール樹脂を併用することができる。併用する場合、一般式(1)のフェノール樹脂は全フェノール樹脂中の少なくとも20重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。上記下限値未満であれば、高温時の低弾性化や低吸湿化及び接着性が十分に得られず、また低反りの特徴も損なわれるおそれがあり、また耐燃性が低下する恐れがある。併用するフェノール樹脂は特に限定しないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。無機充填材の高充填化のためには、エポキシ樹脂と同様に、低粘度のものが好ましい。
本発明に用いられる全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の当量比としては、好ましくは0.5〜2であり、特に0.7〜1.5がより好ましい。上記範囲を外れると、耐湿性、硬化性などが低下する恐れがあるので好ましくない。
【0024】
本発明に用いられる硬化促進剤である一般式(2)に示す化合物は、例えば沃化フェノール類とトリ芳香族置換ホスフィンを有機溶媒に均一に混合し、ニッケル触媒によりヨードニウム塩として沈殿させ、このヨードニウム塩と塩基を有機溶剤に均一に混合し、必要により水を加え沈殿させることにより得られる。一般式(2)に示す化合物としては、好ましくはXが水素又はメチル基であり、かつYが水素又はヒドロキシル基であるものが好ましい。しかし、これらに限定されるものではなく、単独で用いても併用してもよい。本発明に用いる硬化促進剤の含有量は、全エポキシ樹脂組成物中に0.05〜0.3重量%が好ましく、下限値未満だと目的とする硬化性が得られず、上限値を越えると流動性が損なわれるおそれがあり好ましくない。本発明に用いられる硬化促進剤を使用すると、従来の硬化促進剤よりもICパッケージの反り量を低減することができる。
【化14】

(式中、Xは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1〜3の整数。)
【0025】
本発明に用いられる無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば溶融シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。特に溶融シリカが好ましい。溶融シリカは、破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、含有量を高め、且つエポキシ樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑えるためには、球状シリカを主に用いる方がより好ましい。更に球状シリカの含有量を高めるためには、球状シリカの粒度分布をより広くとるよう調整することが望ましい。全無機充填材の含有量は、成形性、信頼性のバランスから全エポキシ樹脂組成物中に85〜95重量%であることが必須であり、好ましくは87〜93重量%である。下限値未満だと、低吸湿性、低熱膨張性が得られず耐半田性が不十分となったり、反りが大きくなったりする恐れがあるので好ましくない。上限値を超えると流動性が低下し、成型時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内の金線変形等の不都合が生じたりする恐れがあるので好ましくない。
【0026】
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。更に、必要に応じて無機充填材をカップリング剤やエポキシ樹脂あるいはフェノール樹脂で予め処理して用いてもよく、処理の方法としては、溶媒を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や、直接無機充填材に添加し、混合機を用いて処理する方法等がある。
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、その他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、ニーダー等の押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。特に本発明のエポキシ樹脂組成物は、エリア実装型半導体装置用に最適である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
エポキシ樹脂1:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000K、融点105℃、エポキシ当量185) 4.8重量部
フェノール樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノ−ルアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS、軟化点65℃、水酸基当量203) 5.2重量部
【0028】
式(6)で示される硬化促進剤 0.1重量部
【化15】

【0029】
球状溶融シリカ(平均粒径30μm) 89.0重量部
γ−グリシジルプロピルトリメトキシシラン 0.3重量部
カルナバワックス 0.3重量部
カーボンブラック 0.3重量部
を、常温においてミキサーで混合し、70〜120℃で2本ロールにより混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0030】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
【0031】
金線変形率:トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間90秒で、352pBGA(基板は厚さ0.56mmのビスマレイミド・トリアジン樹脂/ガラスクロス基板、半導体装置のサイズは30mm×30mm、厚さ1.17mm、半導体素子のサイズ15mm×15mm、厚さ0.35mm)を成形し、175℃、2時間で後硬化した。室温まで冷却後、軟X線透視装置で観察し、金線の変形率を(流れ量)/(金線長)の比率で表した。単位は%。
【0032】
パッケージ反り量:金線変形率の評価で成形した352pBGAパッケージをパッケージのゲートから対角線方向に、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値をパッケージ反り量とした。単位はμm。
【0033】
耐半田クラック性:前記の352pBGAを成形し、175℃、2時間で後硬化してサンプルを得た。各10個のサンプルを別々に60℃、相対湿度60%の環境下で120時間と85℃、相対湿度60%の環境下で168時間処理し、その後IRリフロ−(260℃)で10秒間処理した。超音波探傷装置を用いて観察し、内部クラック及び各種界面剥離の有無を調べた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/10と表示する。
【0034】
実施例2〜12、比較例1〜9
表1及び表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1及び表2に示す。実施例1以外で用いた成分について、以下に示す。
エポキシ樹脂2:オルソクレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂(軟化点55℃、エポキシ当量196)
【0035】
エポキシ樹脂3:式(7)で示されるスチルベン型エポキシ樹脂(融点130℃、エポキシ当量210)
【化16】

【0036】
フェノール樹脂2:フェノ−ルノボラック樹脂(軟化点80℃、水酸基当量105)
フェノール樹脂3:フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製、XLC−LL、軟化点75℃、水酸基当量175)
トリフェニルホスフィン
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により得られる半導体封止用エポキシ樹脂は、流動性が良好なため金線変形に優れ、また、反り量が小さく、耐半田クラック性に優れている。そのため、プリント配線板や金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみを樹脂封止されたいわゆるエリア実装型半導体装置に対して、本発明により得られる半導体封止用エポキシ樹脂を適用することで、その信頼性を向上させることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)結晶性エポキシ樹脂、(B)一般式(1)で表されるフェノール樹脂、(C)一般式(2)で表される硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を必須成分とし、(D)成分を全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜4の整数、bは0〜4の整数、cは0〜3の整数。nは平均値で、1〜10の正数。)
【化2】

(式中、Xは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1〜3の整数。)
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみの封止に用いるものであって、(A)結晶性エポキシ樹脂、(B)一般式(1)で表されるフェノール樹脂、(C)一般式(2)で表される硬化促進剤、及び(D)無機充填剤を必須成分とし、(D)成分を全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%含むことを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(式中、R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜4の整数、bは0〜4の整数、cは0〜3の整数。nは平均値で、1〜10の正数。)
【化4】

(式中、Xは水素又は炭素数1〜3のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1〜3の整数。)
【請求項4】
基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された基板面側の実質的に片面のみが請求項3記載のエポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とするエリア実装型半導体装置。

【公開番号】特開2006−22239(P2006−22239A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202709(P2004−202709)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】