説明

エンジンの始動制御装置及び始動制御方法

【課題】2WDから4WDに切り換えるまでにかかる時間を短縮することが可能なエンジンの始動制御装置及び始動制御方法を提供する。
【解決手段】前輪を駆動するエンジン1の駆動状態を制御するエンジン制御手段50が、運転者の要求する駆動力に応じて、後輪を駆動するモータ8の駆動中にエンジン1を停止させ、さらに、モータ8の駆動中にエンジン1を停止させた状態で、前輪及び後輪のロックを抑制するように制動力を制御するABS制御手段28が作動すると、停止させたエンジン1をABS制御手段28の作動中に始動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動状態を二輪駆動状態に切り換えた時に停止させたエンジンの始動を制御するエンジンの始動制御装置及び始動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、制動時における車両の挙動に応じ、前後輪を駆動する四輪駆動状態と前後輪のうち一方を駆動する二輪駆動状態とを切り換える装置として、例えば、特許文献1に記載されているような駆動状態切換装置がある。なお、以降の説明では、四輪駆動状態を「4WD」と記載し、二輪駆動状態を「2WD」と記載する。
特許文献1に記載されている駆動状態切換装置は、車体の横方向加速度が設定値未満である場合、4WDにおける制動時に、公知のアンチロックブレーキシステム(以下、「ABS」)装置を作動させた状態で、車両の駆動状態を4WDから2WDに切り換える。車両の駆動状態を4WDから2WDに切り換える際には、前後輪のうち一方への駆動力供給を停止する。
【特許文献1】特開平6−328965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前後輪のうち一方をエンジンにより駆動し、前後輪のうち他方をモータにより駆動する構成の車両(以下、「ハイブリッド車両」と記載する)がある。
このハイブリッド車両に対し、特許文献1に記載の駆動状態切換装置のように、前後輪のうち一方への駆動力供給を停止して、車両の駆動状態を4WDから2WDに切り換える場合は、エンジンを停止させることが好適である。これは、良好な燃費を得るためには、モータよりもエンジンを停止させることが好適であるためである。
そして、制動状態から再加速による走行状態へ移行した後にスリップが発生した場合等、運転者の要求する駆動力(以下、「要求駆動力」と記載する)が増加した場合には、停止させたエンジンを始動させて、車両の駆動状態を2WDから4WDへ切り換える。
【0004】
しかしながら、上記のように、エンジンを停止させて車両の駆動状態を4WDから2WDへ切り換えた場合、停止させたエンジンが始動するまで、車両の駆動状態を2WDから4WDへ切り換えることができない。このため、要求駆動力を必要とした時点から、要求駆動力が出力可能となるまでの時間が長くなるという問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、停止させたエンジンを始動させて、車両の駆動状態を2WDから4WDに切り換えるまでにかかる時間を短縮することが可能な装置及び制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、運転者の要求する駆動力に応じて、車両の前輪及び後輪のうち一方を駆動するエンジンを、前輪及び後輪のうち他方を駆動するモータの駆動中に停止させる。そして、エンジンを停止させた状態で、前輪及び後輪のロックを抑制するように制動力を制御するABS制御手段が作動すると、停止させたエンジンをABS制御手段の作動中に始動させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エンジンが駆動する車輪への駆動力の供給を停止した状態から、エンジンが駆動する車輪へ駆動力を供給するまでにかかる時間を、短縮することが可能となる。これにより、車両の駆動状態を、エンジンを停止させて駆動輪を減少させた状態から、エンジンを始動させて駆動輪を増加させた状態とするまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1から図5を参照して、本実施形態のエンジンの始動制御装置(以下、「始動制御装置」と記載する)の構成を説明する。
図1は、本実施形態の始動制御装置を備える車両Cの上面図であり、車両Cの概略構成を示す図である。
図1中に示すように、始動制御装置を備える車両Cは、エンジン1と、前輪2と、発電機4と、インバータ6と、モータ8と、後輪10と、加速度検出手段12と、車両制御コントローラ14とを有する車両である。
【0008】
エンジン1は、内燃機関であり、前輪2を駆動させる駆動源を構成している。なお、図1中では、左右に配置した前輪2を、それぞれ、左右前輪2L、2Rと示している。
エンジン1の吸気管路(図示せず)には、例えば、メインスロットルバルブとサブスロットルバルブとを介装している。メインスロットルバルブは、運転者によるアクセルペダル16の操作量(踏込み量)に応じて、スロットル開度を調整制御する。
アクセルペダル16は、その操作量を含む情報信号を、車両制御コントローラ14へ出力する。
【0009】
エンジン1の駆動軸は、クラッチ18及び変速機20を介して、左右前輪2L、2Rに接続可能となっている。したがって、エンジン1は、エンジン1の駆動軸が左右前輪2L、2Rに接続された状態で、左右前輪2L、2Rを駆動させる駆動源を形成する。また、左右前輪2L、2Rは、エンジン1が駆動するエンジン駆動輪を形成する。
クラッチ18は、例えば、湿式多板クラッチによって形成してあり、エンジン1と左右前輪2L、2Rとの駆動力伝達経路に介装している。なお、本実施形態においては、締結手段としてのクラッチ18を湿式多板クラッチとしたが、これに限定されるものではなく、クラッチ18を、例えば、パウダークラッチやポンプ式クラッチによって形成してもよい。
【0010】
また、クラッチ18は、車両制御コントローラ14が出力するクラッチ制御指令に応じて、接続状態または解放状態となり、車両Cの駆動状態を、四輪駆動状態(4WD)または二輪駆動状態(2WD)に切り換える。
具体的には、クラッチ18を接続状態とすると、エンジン1の駆動軸が左右前輪2L、2Rに接続され、車両Cの駆動状態は、四輪駆動状態となる。この状態では、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rが駆動輪となる。
【0011】
一方、クラッチ18を解放状態とすると、エンジン1の駆動軸と左右前輪2L、2Rとの接続が解除され、車両Cの駆動状態は、二輪駆動状態となる。この状態では、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rのうち、左右後輪10L、10Rのみが駆動輪となる。
変速機20は、変速比を複数段階に変化可能なトランスミッション等を備えており、クラッチ18と左右前輪2L、2Rとの間に介装している。
【0012】
左右前輪2L、2Rには、それぞれ、前輪速センサ22L、22Rを設けている。
各前輪速センサ22L、22Rは、それぞれ、対応する左右前輪2L、2Rの回転速度を検出し、この検出した回転速度を含む情報信号を、車両制御コントローラ14に出力する。
また、左右前輪2L、2Rには、それぞれ、前輪ブレーキ装置24L、24Rを設けている。
各前輪ブレーキ装置24L、24Rは、それぞれ、対応する左右前輪2L、2Rに対し、図外の液圧源から、ブレーキペダル26の操作量(踏込み量)に応じて液圧を調整した制動液圧を伝達する。なお、液圧の調整は、車両制御コントローラ14が出力する情報信号に応じて行う。
【0013】
ここで、各前輪ブレーキ装置24L、24Rは、それぞれ、対応する左右前輪2L、2Rに対して伝達した制動液圧を含む情報信号を、車両制御コントローラ14に出力する。また、ブレーキペダル26は、その操作量を含む情報信号を、車両制御コントローラ14に出力する。
具体的に、通常の制動時には、ブレーキペダル26の操作量に応じて液圧を制動液圧に調整した作動油を、制動ピストン(図示せず)へ供給する。そして、この制動ピストンを左右前輪2L、2Rに押圧して摺接させることにより、左右前輪2L、2Rに制動力を付与する。
【0014】
一方、ABS制御を行なう制動時には、各前輪ブレーキ装置24L、24Rの制動液圧を保持、減圧あるいは増圧して、左右前輪2L、2Rのロックを抑制するように、左右前輪2L、2Rに付与する制動力を制御する。このABS制御は、例えば、各前輪ブレーキ装置24L、24Rへ個別に対応して設けた、図示しない流入電磁弁及び流出電磁弁と、各前輪ブレーキ装置24L、24Rへ共通に設けた、図示しない流入電磁弁及び流出電磁弁により行う。ここで、流入電磁弁は、励磁時に遮断する電磁弁である。また、流出電磁弁は、励磁時に連通する電磁弁である。
各流入電磁弁及び流出電磁弁の励磁および消磁は、後述するABS制御手段28により制御する。すなわち、ABS制御を行なう制動時は、ABS制御手段28の作動時となる。なお、ABS制御手段28の作動についての説明は、後述する。
【0015】
以下、制動時における、各流入電磁弁及び各流出電磁弁の状態を説明する。
通常の制動時には、各流入電磁弁及び各流出電磁弁は、消磁状態とする。
一方、ABS制御を行う際には、ロック傾向(ロックの発生する傾向)にある左右前輪2L、2Rに対応する流入電磁弁を遮断状態として、左右前輪2L、2Rがロック状態になることを回避すべく制動力の増大を抑制する。
そして、上記の制御を行った状態であっても、左右前輪2L、2Rがロック傾向にある場合には、左右前輪2L、2Rに対応する流出電磁弁を連通状態として、左右前輪2L、2Rの制動力を更に低下させ、左右前輪2L、2Rのロックを抑制する。
【0016】
以下、車両Cの説明に復帰する。
発電機4は、エンジン1からの駆動力を動力源として駆動し、電力を発電する構成となっている。具体的には、発電機4が有する回転軸が、エンジン1の回転軸と無端ベルト30を介して連結している。これにより、エンジン1の回転トルクの一部を、無端ベルト30を介して発電機4に伝達し、発電機4の回転軸を、エンジン1の回転数にプーリ比を乗じた回転数で回転させて、電力を発電する。
【0017】
また、発電機4は、車両制御コントローラ14が調整する界磁電流に応じて、エンジン1に対する負荷となり、その負荷トルクに応じた発電を行う。発電機4が発電する電力(発電電力)の大きさは、回転数と界磁電流との大きさにより決定する。なお、発電機4の回転数は、エンジン1の回転数から、プーリ比に基づき演算することが可能である。発電機4が発電した電力は、バッテリ32に供給して蓄電する。
【0018】
バッテリ32には、インバータ6を接続している。そして、発電機4が発電し、バッテリ32に蓄電した電力を、インバータ6へ供給可能となっている。
インバータ6は、発電機4が供給した直流の電力を、例えば、三相交流等の交流電力に変換してモータ8へ供給する。
モータ8は、例えば、界磁巻線型同期モータにより形成してあり、界磁コイルを有するロ一タ(図示せず)と、回転磁界を発生するための三相巻線(電機子コイル)が巻かれたステータ(図示せず)とを備えている。
【0019】
また、モータ8は、ロータが有する界磁コイルに電流を流すことで発生する磁界と、ステータに巻かれた電機子コイルから発生する磁界との相互作用により回転運動する。これにより、モータ8は、後輪10を駆動させる駆動源を構成している。なお、図1中では、左右に配置した後輪10を、それぞれ、左右後輪10L、10Rと示している。
また、モータ8は、ロータが外力により回転させられる場合には、これらの磁界の相互作用により、電機子コイルの両端に起電力を発生して、発電動作する。モータ8が発電した電力は、インバータ6を介してバッテリ32へ供給して蓄電可能となっている。
【0020】
モータ8の駆動軸は、減速機34及びデフ36を介して、左右後輪10L、10Rに接続している。
左右後輪10L、10Rには、それぞれ、後輪速センサ38L、38Rを設けている。
各後輪速センサ38L、38Rは、それぞれ、対応する左右後輪10L、10Rの回転速度を検出し、この検出した回転速度を含む情報信号を、車両制御コントローラ14に出力する。
また、左右後輪10L、10Rには、それぞれ、後輪ブレーキ装置40L、40Rを設けている。
【0021】
各後輪ブレーキ装置40L、40Rは、それぞれ、対応する左右後輪10L、10Rに対し、図外の液圧源から、ブレーキペダル26の操作量に応じて液圧を調整した制動液圧を伝達する。ここで、各後輪ブレーキ装置40L、40Rは、各前輪ブレーキ装置24L、24Rと同様、それぞれ、対応する左右後輪10L、10Rに対して伝達した制動液圧を含む情報信号を、車両制御コントローラ14に出力する。なお、各後輪ブレーキ装置40L、40Rの制動時における動作は、上述した各前輪ブレーキ装置24L、24Rの動作と同様であるため、その説明を省略する。
【0022】
加速度検出手段12は、車両Cの車両前後方向への加速度及び減速度を検出する前後方向加減速度センサ(図示せず)を備えている。
また、加速度検出手段12は、車両Cの車両前後方向への加速度及び減速度を検出し、この検出した車両前後方向への加速度及び減速度を含む情報信号を、車両制御コントローラ14に出力する。
車両制御コントローラ14は、例えば、マイクロコンピュータ等の演算処理装置により形成する。
【0023】
次に、図1を参照しつつ、図2から図4を用いて、車両制御コントローラ14の構成を説明する。
図2は、車両制御コントローラ14の構成を示すブロック図である。
図2中に示すように、車両制御コントローラ14は、ABS制御手段28と、モータ制御手段42と、バッテリ制御手段44と、4WDコントロ−ラ46とを備えている。これに加え、車両制御コントローラ14は、加速度比較手段48と、エンジン制御手段50と、クラッチ制御手段52とを備えている。
ABS制御手段28は、前輪速センサ22L、22R、後輪速センサ38L、38R、及びブレーキペダル26が出力した情報信号に基づいて作動し、上述したABS制御を行う。
【0024】
以下、図3を用いて、ABS制御手段28の詳細な構成について説明する。
図3は、ABS制御手段28の構成を示すブロック図である。
図3中に示すように、ABS制御手段28は、車速算出部54と、ロック検出部56と、要求制動力算出部58と、油圧制御部60とを備えている。
車速算出部54は、前輪速センサ22L、22R及び後輪速センサ38L、38Rが出力した情報信号に基づき、車両Cの速度(車速)を算出する。そして、この算出した車速を含む情報信号を、ロック検出部56へ出力する。
【0025】
ロック検出部56は、前輪速センサ22L、22R及び後輪速センサ38L、38Rが出力した情報信号と、車速算出部54が出力した情報信号に基づき、各車輪(左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10R)に対して、上述したロック傾向を検出する。そして、この検出結果を含む情報信号を、油圧制御部60、4WDコントロ−ラ46、エンジン制御手段50及びクラッチ制御手段52へ出力する。ロック検出部56が、4WDコントロ−ラ46、エンジン制御手段50及びクラッチ制御手段52へ出力する情報信号は、ABS制御手段28の作動状態を示す情報信号を形成する。ここで、「ABS制御手段28の作動状態」とは、ABS制御手段28が作動している状態及び停止している状態を示す。
【0026】
なお、各車輪に対するロック傾向の検出は、具体的には、車速と、各車輪の回転速度とを比較し、車速に対する回転速度が低い車輪を検出すると、この車輪がロック傾向にあると判定する。そして、ロック傾向にあると判定した車輪の位置(車両Cの前後左右)に基づき、各車輪のロック傾向を検出する。
要求制動力算出部58は、ブレーキペダル26が出力した情報信号に基づき、運転者によるブレーキペダル26の操作量を検出する。そして、この検出したブレーキペダル26の操作量に基づき、運転者の要求する制動力(要求制動力)を算出する。
【0027】
要求制動力を算出した要求制動力算出部58は、この算出結果を含む情報信号を、油圧制御部60へ出力する。
油圧制御部60は、ロック検出部56及び要求制動力算出部58が出力した情報信号に基づき、制動時においてロック傾向にある車輪に対して、上述したABS制御を行う。
具体的には、通常の制動時には、要求制動力算出部58が出力した情報信号に基づき、ブレーキペダル26の操作量に応じた作動油の液圧を演算する。そして、この演算した作動油の液圧を含む情報信号を、各前輪ブレーキ装置24L、24R及び各後輪ブレーキ装置40L、40Rへ出力する。
【0028】
一方、ABS制御を行なう制動時には、ロック検出部56及び要求制動力算出部58が出力した情報信号に基づき、ロック傾向にある車輪に対応するブレーキ装置に設けた流入電磁弁及び流出電磁弁に対し、励磁制御及び消磁制御を行う。これにより、上述したように、ロック傾向にある車輪がロック状態になることを回避すべく制動力の増大を抑制して、ロック傾向にある車輪のロックを抑制する。
以上により、ABS制御手段28は、制動時に車輪(左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10R)のロックを抑制するように作動する。
【0029】
以下、車両制御コントローラ14の構成の説明に復帰する。
モータ制御手段42は、モータ8、インバータ6及び4WDコントロ−ラ46との間で、相互に情報信号の入出力を行い、これらの情報信号に基づき、モータ8の駆動状態を制御する。これは、例えば、4WDコントロ−ラ46に入力されたアクセルペダル16の操作量に基づき、目標とする駆動力を出力するために、モータ8の駆動力を増加させる制御である。
バッテリ制御手段44は、バッテリ32及び4WDコントロ−ラ46との間で、相互に情報信号の入出力を行う。これらの情報信号は、例えば、バッテリ32の残容量に対する発電機4の制御や、バッテリ32の残容量に対するモータ8及びエンジン1の制御に用いる。
【0030】
4WDコントロ−ラ46は、モータ制御手段42、バッテリ制御手段44、ABS制御手段28及びエンジン制御手段50との間で相互に入出力する情報信号と、アクセルペダル16が出力した情報信号に基づき、車両Cの駆動状態を切り換える。
具体的には、上記の各情報信号に基づき、モータ制御手段42、エンジン制御手段50及びクラッチ制御手段52に対して、それぞれ、動作状態を制御する制御信号を出力する。
まず、車両Cの駆動状態を4WDから2WDへ切り換える制御の一例について説明する。
【0031】
車両Cの駆動状態を4WDから2WDへ切り換える際には、例えば、モータ制御手段42、バッテリ制御手段44及びアクセルペダル16が出力した情報信号に基づき、運転者による要求駆動力が、モータ8の駆動のみにより出力可能か否かを判定する。このとき、モータ8の諸元(発生トルクなど)とバッテリ32の残容量に基づき、要求駆動力が、モータ8の駆動のみにより出力可能か否かを判定する。
【0032】
そして、要求駆動力が、モータ8の駆動のみにより出力可能であると判定すると、ABS制御手段28が出力した情報信号に基づき、ABS制御が行われているか否かを判定する。
要求駆動力がモータ8の駆動のみにより出力可能であり、ABS制御が行われていないと判定すると、エンジン制御手段50及びクラッチ制御手段52へ、エンジン1を停止させる停止指令を含む情報信号を出力する。そして、モータ制御手段42へ、トルク指令値を含む情報信号を出力する。この情報信号が含むトルク指令値は、左右前輪2L、2Rの駆動力が、要求駆動力を満足するように算出する。
【0033】
一方、要求駆動力が、モータ8の駆動のみにより出力可能ではないと判定すると、エンジン制御手段50及びモータ制御手段42へ、トルク指令値を含む情報信号を出力する。この情報信号が含むトルク指令値は、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動トルク配分が、適切な比率となるように算出する。
加速度比較手段48は、加速度検出手段12が出力した情報信号と、予め記憶した基準加速度に基づき、車両Cの減速方向への加速度と、基準路面における車両Cの減速方向への加速度とを比較する。
【0034】
以下、図4を用いて、加速度比較手段48の詳細な構成について説明する。
図4は、加速度比較手段48の構成を示すブロック図である。
図4中に示すように、加速度比較手段48は、基準加速度記憶部62と、加速度演算手段64と、加速度比較部66とを備えている。
基準加速度記憶部62は、予め、車両Cの挙動に応じた、車両Cの基準路面における減速方向への加速度を記憶したマップを備えている。なお、本実施形態では、「基準路面」を乾燥状態の舗装路面とする。また、「車両Cの挙動」とは、制動時における車両Cの挙動である。
【0035】
加速度演算手段64は、加速度検出手段12が出力した情報信号と、基準加速度記憶部62が備えるマップに基づき、実際の走行時において、車両Cに対し基準路面において発生すると予測される減速方向への加速度を演算する。そして、この演算した、車両Cに対し基準路面において発生すると予測される減速方向への加速度を含む情報信号を、加速度比較部66へ出力する。
【0036】
具体的には、基準加速度記憶部62が備えるマップに、加速度検出手段12が出力した情報信号が含む、実際の走行時における車両Cの減速方向への加速度を適合させて、車両Cに対し基準路面において発生すると予測される減速方向への加速度を演算する。
加速度比較部66は、基準加速度記憶部62が備えるマップと、加速度演算手段64が出力した情報信号に基づき、実際の走行時における車両Cの減速方向への加速度と、車両Cに対し基準路面において発生すると予測される減速方向への加速度とを比較する。そして、この比較結果を含む情報信号を、エンジン制御手段50へ出力する。
【0037】
以下、車両制御コントローラ14の構成の説明に復帰する。
エンジン制御手段50は、エンジン1及び4WDコントロ−ラ46との間で、相互に情報信号の入出力を行い、これらの情報信号に基づいて、エンジン1の駆動状態を制御する。これに加え、加速度比較手段48が出力する情報信号に基づいて、エンジン1の駆動状態を制御する。
また、エンジン制御手段50は、エンジン1の駆動状態を示す情報信号を、4WDコントロ−ラ46へ出力する。ここで、「エンジン1の駆動状態を示す情報信号」とは、エンジン1が駆動している状態及び停止している状態を示す情報信号である。
【0038】
以下、エンジン制御手段50が行う制御について説明する。
エンジン制御手段50は、モータ8の駆動中に、運転者の要求する駆動力に応じてエンジン1を停止させる制御を行う。
その後、モータ8の駆動中にエンジン1を停止させた状態で、ABS制御手段28が作動すると、停止させたエンジン1を、ABS制御手段28の作動中に始動させる制御を行う。
この制御は、ABS制御手段28の作動中に加速度検出手段12の検出した減速方向への加速度が、ABS制御手段28の作動中に加速度演算手段64の演算した減速方向への加速度未満である場合に限定して行う。
【0039】
具体的には、4WDコントロ−ラ46から入力された情報信号が、エンジン1を停止させる停止指令を含む情報信号である場合、モータ8の駆動中に、エンジン1へ、駆動を停止する命令を含む情報信号を出力する。これは、上述したように、4WDコントロ−ラ46において、要求駆動力がモータ8の駆動のみにより出力可能であり、ABS制御が行われていないと判定した場合である。
【0040】
その後、モータ8の駆動中に、エンジン1へ駆動を停止する命令を含む情報信号を出力した状態で、エンジン1に、始動命令を含む情報信号を出力する。これは、ABS制御手段28から入力された情報信号が、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号である場合に限定して行う。ここで、エンジン1への、始動命令を含む情報信号の出力は、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号の入力を受けている間に行う。
【0041】
この制御は、加速度比較手段48から入力された情報信号は、実際の走行時における車両Cの減速方向への加速度が、実際の走行時における車両Cの基準路面における減速方向への加速度未満である場合に限定して行う。
そして、上記の限定条件を満足する場合のみ、エンジン1に、始動命令を含む情報信号を出力する。また、エンジン1への、始動命令を含む情報信号の出力は、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号の入力を受けている間に行う。
クラッチ制御手段52は、ABS制御手段28及び4WDコントロ−ラ46との間で、相互に情報信号の入出力を行い、これらの情報信号に基づいて、クラッチ18の状態を制御する。
【0042】
以下、クラッチ制御手段52が行う制御について説明する。
クラッチ制御手段52は、ABS制御手段28の作動中は、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを解放する制御を行う。
その後、作動中のABS制御手段28が停止すると、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続する制御を行う。
具体的には、クラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力した状態で、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力する。これは、ABS制御手段28から入力された情報信号が、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号である場合に限定する。ここで、クラッチ18への、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号の出力は、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号の入力を受けている間に行う。
【0043】
その後、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力した状態で、クラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力する。これは、ABS制御手段28から入力された情報信号が、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号から、ABS制御手段28が停止している状態を含む情報信号へ変化した場合に限定する。
【0044】
以下、始動制御装置が行う処理について、図1から図4を参照しつつ、図5を用いて、具体的に説明する。
図5は、始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
図5中に示すフローチャートは、エンジン1を停止させて、車両Cの駆動状態を4WDから2WDへと切り換えた状態において、車両Cが走行している状態からスタートする(START)。
【0045】
始動制御装置は、車両Cの駆動状態が2WDである状態において、車両Cの走行時に、例えば、所定のサンプリング時間毎に、ABS制御手段28の作動状態を検出する。これにより、ABS制御手段28が作動している停止しているかを判定(図5中に示す「ABS作動中?」)する(ステップS10)。
ステップS10において、始動制御装置は、ロック検出部56が出力する、ABS制御手段28の作動状態を示す情報信号(図3参照)に基づき、ABS制御手段28が作動している停止しているかを判定する。
【0046】
そして、ABS制御手段28が作動している(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置は、車両Cが実際に走行している路面の摩擦係数が、基準路面の摩擦係数よりも低いか否かを判定する(図5中に示す「低μ?」)する(ステップS12)。
一方、ステップS10において、ABS制御手段28が作動していない(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS10の処理へ復帰(RETURN)する。
【0047】
ステップS12において、始動制御装置は、加速度比較部66がエンジン制御手段50へ出力する情報信号に基づき、車両Cが実際に走行している路面の摩擦係数が、基準路面の摩擦係数よりも低いか否かを判定する(図4参照)。具体的には、実際の走行時における車両Cの減速方向への加速度(以下、「実走行減速度」と記載する)が、車両Cに対し基準路面において発生すると予測される減速方向への加速度(以下、「予測減速度」と記載する)未満であるか否かを判定する。
【0048】
そして、実走行減速度が予測減速度未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置は、エンジン1が停止しているか否かを判定する(図5中に示す「エンジン停止?」)する(ステップS14)。
一方、ステップS12において、実走行減速度が予測減速度未満ではない(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS10の処理へ復帰(RETURN)する。
【0049】
ステップS14において、始動制御装置は、エンジン制御手段50が4WDコントロ−ラ46へ出力する情報信号に基づき、エンジン1が停止しているか否かを判定する(図2参照)。具体的には、エンジン制御手段50が4WDコントロ−ラ46へ出力する、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が停止している状態を示す情報信号であるか否かを判定する。
そして、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が停止している状態を示す情報信号である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置の処理は、ステップS16へ移行する。
【0050】
一方、ステップS14において、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が駆動している状態を示す情報信号である(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS10の処理へ復帰(RETURN)する。
ステップS16において、始動制御装置は、停止させた状態にあるエンジン1を始動させる(図中に示す「エンジン始動」)。具体的には、エンジン制御手段50から、エンジン1に、始動命令を含む情報信号を出力する。これは、上述したように、ステップS10において、ABS制御手段28が作動していると判定するとともに、ステップS12において、実走行減速度が予測減速度未満であると判定した場合に限定する。これに加え、上述したように、ステップS14において、エンジン1が停止していると判定する判定した場合に限定する。
ステップS16において、停止させた状態にあるエンジン1を始動させると、始動制御装置の処理は、ステップS10の処理へ復帰(RETURN)する。
【0051】
(動作)
次に、図1から図5を参照しつつ、図6を用いて、始動制御装置を備えた車両の動作について説明する。
図6は、始動制御装置を備えた車両Cの動作を示すタイムチャートである。なお、図6中では、車両Cの駆動状態を、「車両駆動状態」と示し、エンジン1の駆動状態を、「エンジン駆動状態」と示している。また、アクセルペダル16の操作量を、「アクセル操作量」と示し、ブレーキペダル26の操作量を、「ブレーキ操作量」と示し、ABS制御手段28の作動状態を、「ABS作動状態」と示している。さらに、運転者の要求する駆動力を、「要求駆動力」と示し、エンジン1の回転数を、「エンジン回転数」と示し、左右前輪2L、2Rの駆動力を、「前輪駆動力」と示し、左右後輪10L、10Rの駆動力を、「後輪駆動力」と示している。
【0052】
図6のタイムチャートは、車両Cの走行時において、エンジン1を停止させるとともに、クラッチ18を解放状態とした状態からスタートする。
したがって、この時点(図中に示す「t0」)では、エンジン制御手段50が、モータ8の駆動中に、エンジン1へ、駆動を停止する命令を含む情報信号を出力して、エンジン1の駆動を停止させる。また、クラッチ制御手段52が、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力して、車両Cの駆動状態を、2WDとする。
【0053】
また、t0の時点では、4WDコントロ−ラ46が、モータ制御手段42へ、左右前輪2L、2Rの駆動力が要求駆動力を満足するように算出した、トルク指令値を含む情報信号を出力して、モータ8を駆動させる。すなわち、t0の時点における車両Cの駆動輪は、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rのうち、左右後輪10L、10Rのみである。
【0054】
モータ8の駆動中にエンジン1を停止させるとともに、クラッチ18を解放状態とした状態で、運転者の要求する駆動力が減少して、運転者によるアクセルペダル16の操作量が減少すると、モータ8の発生する駆動力が減少する。これにより、左右後輪10L、10Rの駆動力が減少する。
そして、運転者がアクセルペダル16の操作を停止し、運転者の要求する駆動力が「0」となると、左右後輪10L、10Rの駆動力は最低値となる。
【0055】
なお、この時点(図中に示す「t1」)とt0の時点との間では、ブレーキペダル26の操作は行われておらず、また、ABS制御手段28の作動も発生していない。また、エンジン1は停止しているため、エンジン1の回転数は最低値(0)であり、車両Cの駆動状態は2WDであるため、左右前輪2L、2Rの駆動力も最低値である。
したがって、t1の時点では、運転者によるアクセルペダル16及びブレーキペダル26の操作が行われていない状態で、車両Cは惰性により走行している。
【0056】
そして、車両Cが惰性により走行している状態から、運転者の要求する駆動力が更に減少すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作を行う。
なお、この時点(図中に示す「t2」)とt1の時点との間では、アクセルペダル16及びブレーキペダル26の操作は行われておらず、また、ABS制御手段28の作動も発生していない。また、エンジン1は停止しているため、エンジン1の回転数は最低値(0)であり、車両Cの駆動状態は2WDであるとともに、アクセル操作量も最低値であるため、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も最低値である。
【0057】
t2の時点から、運転者の要求する駆動力が更に減少すると、この要求駆動力の減少に伴い、ブレーキペダル26の操作量が増加する。
ブレーキペダル26の操作を継続している状態で、ロック検出部56が、各車輪に対してロック傾向を検出し、ロック傾向にある車輪を判定すると、ABS制御手段28が作動する。そして、ABS制御手段28は、ロック傾向にある車輪に対するABS制御を行う。これは、車両Cの制動時に、車両Cが走行している路面が、乾燥路面である基準路面よりも、摩擦係数の低い路面(低μ路面)と推定(図中に「低μ推定」示す範囲)するためである。
【0058】
また、ロック傾向にある車輪を検出したロック検出部56は、この検出結果を含む情報信号を、4WDコントロ−ラ46、エンジン制御手段50及びクラッチ制御手段52へ出力する。
ABS制御手段28が作動すると、この時点(図中に示す「t3」)において、ロック検出部56が出力する情報信号の入力を受けたエンジン制御手段50が、ABS制御手段28の作動中に、エンジン1へ、始動命令を含む情報信号を出力する。
【0059】
なお、t3の時点とt2の時点との間では、エンジン1が停止しているため、エンジン1の回転数は最低値(0)である。また、車両Cの駆動状態は2WDであるとともに、アクセル操作量も最低値であるため、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も最低値である。
ABS制御手段28の作動中に、エンジン制御手段50から始動命令を含む情報信号の入力を受けたエンジン1は、停止状態から始動する。ここで、エンジン制御手段50が、始動命令を含む情報信号をエンジン1へ出力したt3の時点と、停止状態のエンジン1が実際に始動する時点との間には、タイムラグが発生する。
【0060】
停止状態のエンジン1が実際に始動すると、この時点(図中に示す「t4」)から、エンジン1が駆動して、エンジン1の回転数が、最低値(0)からアイドリング回転数へ向けて増加する。
なお、t4の時点とt3の時点との間では、エンジン1が停止しているため、エンジン1の回転数は最低値(0)である。また、車両Cの駆動状態は2WDであるとともに、アクセル操作量が最低値であるため、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も最低値である。
【0061】
ABS制御手段28の作動中に停止状態のエンジン1が始動し、エンジン1が駆動している状態で、運転者の要求する駆動力が増加すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作量を減少させる。これは、例えば、車両Cが走行している路面が、低μ路面よりも摩擦係数の高い路面となり、車輪のロック傾向が減少した場合である。
ABS制御手段28の作動中に運転者がブレーキペダル26の操作量を減少させると、この時点(図中に示す「t5」)において、作動中のABS制御手段28は、ABS制御を停止する。
【0062】
また、ロック傾向の減少を検出したロック検出部56は、この検出結果を含む情報信号を、4WDコントロ−ラ46、エンジン制御手段50及びクラッチ制御手段52へ出力する。この情報信号は、ABS制御を停止した情報を含む。
なお、t5の時点とt4の時点との間では、エンジン1が始動しているが、アクセル操作量が最低値であるため、エンジン1の回転数はアイドリング回転数である。また、車両Cの駆動状態は2WDであるとともに、アクセル操作量も最低値であるため、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も最低値である。
【0063】
作動中のABS制御手段28がABS制御を停止したt5の時点において、クラッチ制御手段52は、解放状態のクラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力する。
解放状態のクラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力すると、解放状態のクラッチ18が接続状態となり、車両Cの駆動状態が2WDから4WDへと切り換わる。
【0064】
ここで、エンジン1は、解放状態のクラッチ18が接続状態となる前に、ABS制御手段28の作動中に始動しており、エンジン1の回転数は、解放状態のクラッチ18が接続状態となる前に、アイドリング回転数まで増加している。このため、解放状態のクラッチ18を接続状態とすると、車両Cの駆動状態は、短時間で2WDから4WDへと切り換わる。具体的には、クラッチ制御手段52が、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力した時点から、車両Cの駆動状態が2WDから4WDへと切り換わるまでに経過する時間は、クラッチ18が半クラッチ状態である時間程度の短い時間となる。
【0065】
したがって、エンジン1を停止させて、エンジンが駆動する左右前輪2L、2Rへの駆動力の供給を停止した状態から、エンジン1を始動させて、左右前輪2L、2Rへ駆動力を供給するまでにかかる時間を、短縮することが可能となる。
解放状態のクラッチ18が接続状態となり、車両Cの駆動状態が2WDから4WDへと切り換わった状態で、運転者の要求する駆動力がt5の時点から更に増加すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作量を減少させ、ブレーキペダル26の操作を停止する。そして、この時点(図中に示す「t6」)において、ブレーキペダル26の操作を停止した運転者は、アクセルペダル16の操作を開始する。
【0066】
なお、t6の時点とt5の時点との間では、エンジン1が始動しているが、アクセル操作量は最低値であるため、エンジン1の回転数はアイドリング回転数である。また、車両Cの駆動状態は2WDであるとともに、アクセル操作量が最低値であるため、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も最低値である。
ここで、上記のように車両Cの駆動状態は、2WDから4WDへと切り換わっている。このため、運転者の要求する駆動力に応じてアクセルペダル16の操作量を増加させ、エンジン1の回転数が増加するにつれて、左右前輪2L、2Rの駆動力が増加する。また、アクセルペダル16の操作量を増加させると、モータ8の駆動力も増加する。
【0067】
したがって、t6の時点以降では、運転者の要求する駆動力が増加し、アクセルペダル16の操作量が増加すると、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も増加する。
なお、上述したように、本実施形態の始動制御装置の動作で実施するエンジンの始動制御方法(始動制御方法)は、運転者の要求する駆動力に応じて、モータ8の駆動中にエンジン1を停止させる。これに加え、モータ8の駆動中にエンジン1を停止させた状態でABS制御手段28が作動すると、停止させたエンジン1を、ABS制御手段28の作動中に始動させる方法である。
【0068】
(第一実施形態の効果)
(1)本実施形態の始動制御装置では、エンジン制御手段が、運転者の要求する駆動力に応じて、モータの駆動中にエンジンを停止させる。さらに、モータの駆動中にエンジンを停止させた状態で、ABS制御手段が作動すると、停止させたエンジンをABS制御手段の作動中に始動させる。
このため、車両の駆動状態を、エンジンを停止させて、エンジンが駆動する左右前輪への駆動力の供給を停止した状態から、エンジンを始動させて、左右前輪へ駆動力を供給した状態とするまでにかかる時間を、短縮することが可能となる。
これにより、本実施形態のように、エンジンを停止させて駆動状態を4WDから2WDへ切り換えた車両に対し、エンジンを始動させて駆動状態を2WDから4WDに切り換えるまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
【0069】
その結果、制動状態が終了した後に、運転者が要求する駆動力が大きい場合であっても、エンジンの駆動力を短時間でエンジンが駆動する車輪に伝達することが可能となり、車両の操縦安定性を向上させることが可能となる。特に、ABS制御は、車両が低μ路面を走行している状態で行われる場合が多いため、ABS制御の終了後に、低μ路面に対する大きな駆動力が必要とされる状況では、駆動状態を2WDから4WDに切り換えるまでにかかる時間を短縮することが好適である。
【0070】
(2)本実施形態の始動制御装置では、エンジン制御手段が、モータの駆動中に停止させたエンジンを、ABS制御手段の作動中に始動させる。
このため、ABS制御手段の作動により、車両に振動が発生している間に、エンジンを始動させることが可能となる。
その結果、エンジンの始動により車両に発生する振動を、ABS制御手段の作動により車両に発生している振動に混在させることが可能となり、エンジンの始動により運転者に伝達される振動を低減させることが可能となる。
【0071】
(3)本実施形態の始動制御装置では、エンジン制御手段が、停止させたエンジンをABS制御手段の作動中に始動させる。これは、ABS制御手段の作動中に加速度検出手段の検出した減速方向への加速度が、ABS制御手段の作動中に加速度演算手段の演算した減速方向への加速度未満である場合に限定して行う。
このため、車両が実際に走行している路面が、乾燥路面である基準路面よりも摩擦係数が低く、車輪のロック及び車両のスリップが発生しやすい状況において、ABS制御の終了後に、短時間で大きな駆動力を出力することが可能となる。
その結果、制動状態が終了した後に、運転者が要求する駆動力が大きい場合であっても、車輪のロック及び車両のスリップの発生を抑制することが可能となり、車両の操縦安定性を向上させることが可能となる。
【0072】
(4)本実施形態の始動制御装置では、クラッチ制御手段が、ABS制御手段の作動中は、エンジンと左右前輪とを解放し、作動中のABS制御手段が停止すると、エンジンと左右前輪とを接続する。
このため、ABS制御手段の作動中は、エンジンと左右前輪との駆動力伝達経路が遮断されることとなり、ABS制御手段の作動中に始動させたエンジンの駆動力が、左右前輪に伝達されることを防止することが可能となる。
その結果、ABS制御の安定性が低下することを防止することが可能となるとともに、ABS制御手段の停止直後に、車両に対して大きな駆動力を付与することが可能となるため、車両の操縦安定性を向上させることが可能となる。
【0073】
(5)本実施形態の始動制御方法では、運転者の要求する駆動力に応じて、モータの駆動中にエンジンを停止させ、このエンジンを停止させた状態でABS制御手段が作動すると、停止させたエンジンを、ABS制御手段の作動中に始動させる。
このため、エンジンを停止させて駆動状態を4WDから2WDへ切り換えた車両に対し、エンジンを始動させて駆動状態を2WDから4WDに切り換えるまでにかかる時間を短縮することが可能となる。
その結果、制動状態が終了した後に、運転者が要求する駆動力が大きい場合であっても、エンジンの駆動力を短時間でエンジンが駆動する車輪に伝達することが可能となり、車両の操縦安定性を向上させることが可能となる。
(応用例)
(1)本実施形態の始動制御装置では、エンジン1が駆動するエンジン駆動輪を、左右前輪2L、2Rとしたが、これに限定するものではなく、エンジン1が駆動するエンジン駆動輪を、左右後輪10L、10Rとしてもよい。この場合、エンジン1が駆動するエンジン駆動輪を、左右後輪10L、10Rとした場合、モータ8が駆動する車輪は、左右前輪2L、2Rとする。すなわち、エンジン1が駆動するエンジン駆動輪は、前輪2及び後輪10のうち一方であればよい。また、モータ8が駆動する車輪は、前輪2及び後輪10のうち他方であればよい。
【0074】
(2)本実施形態の始動制御装置では、加速度検出手段12の構成を、車両Cの車両前後方向への加速度及び減速度を検出する前後方向加減速度センサを備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、加速度検出手段12の構成を、車両Cの車両前後方向への加速度及び減速度を、前輪速センサ22L、22R及び後輪速センサ38L、38Rにより検出する構成としてもよい。
(3)本実施形態の始動制御装置では、車両Cの駆動状態が2WDであり、モータ8の駆動力のみにより車両Cが走行している状態で、エンジン1を停止させたが、これに限定するものではない。すなわち、モータ8による回生制動を行っている状態等で、エンジン1を停止させてもよい。
【0075】
(4)本実施形態の始動制御装置では、作動中のABS制御手段28がABS制御を停止すると、解放状態のクラッチ18を接続状態としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、作動中のABS制御手段28がABS制御を停止するとともに、公知のVDC制御(走行安定制御)の開始要求が発生した状態で、解放状態のクラッチ18を接続状態としてもよい。
【0076】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図7から図9を参照して、本実施形態の始動制御装置の構成を説明する。
なお、本実施形態の始動制御装置の構成は、車両制御コントローラ14の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。このため、その他の構成に関する説明は、省略する。
図7は、車両制御コントローラ14の構成を示すブロック図である。
図7中に示すように、車両制御コントローラ14は、ABS制御手段28と、モータ制御手段42と、バッテリ制御手段44と、4WDコントロ−ラ46とを備えている。これに加え、車両制御コントローラ14は、加速度比較手段48と、制動力判定手段68と、エンジン制御手段50と、クラッチ制御手段52とを備えている。
【0077】
なお、車両制御コントローラ14の構成は、制動力判定手段68及びクラッチ制御手段52の構成を除き、上述した第一実施形態と同様であるため、制動力判定手段68及びクラッチ制御手段52以外の説明は省略する。
制動力判定手段68は、ブレーキペダル26が出力した情報信号と、予め記憶した所定の制動力に基づき、運転者の要求する要求制動力が、所定の制動力以下であるか否かを判定する。そして、その判定結果を含む情報信号を、クラッチ制御手段52へ出力する。
【0078】
以下、図8を用いて、制動力判定手段68の詳細な構成について説明する。
図8は、制動力判定手段68の構成を示すブロック図である。
図8中に示すように、制動力判定手段68は、要求制動力検出手段70と、所定制動力記憶部72と、制動力比較部74とを備えている。
要求制動力検出手段70は、ABS制御手段28が備える要求制動力算出部58と同様、運転者によるブレーキペダル26の操作量に基づき、要求制動力を算出する。そして、この算出結果を含む情報信号を、制動力比較部74へ出力する。
【0079】
所定制動力記憶部72は、予め設定した所定の制動力を記憶している。なお、本実施形態では、「所定の制動力」を、ブレーキペダル26の操作量が「0」、すなわち、ブレーキペダル26が踏み込まれていない状態の制動力とする。
なお、上述した所定の制動力は、ブレーキペダル26が踏み込まれていない状態の制動力に限定するものではなく、例えば、ブレーキペダル26の操作量が、ブレーキペダル26を完全に踏み込んだ状態の1/10程度の操作量である場合の制動力としてもよい。すなわち、所望の制動力に応じて、所定の制動力を設定してもよい。
【0080】
制動力比較部74は、要求制動力検出手段70が出力した情報信号と、所定制動力記憶部72が記憶している所定の制動力に基づき、要求制動力検出手段70の検出した要求制動力と、所定の制動力とを比較する。そして、この比較結果を含む情報信号を、クラッチ制御手段52へ出力する。
以上により、制動力判定手段68は、要求制動力検出手段70の検出した制動力が、所定の制動力以下であるか否かを判定する。
クラッチ制御手段52は、ABS制御手段28、4WDコントロ−ラ46及び制動力判定手段68との間で、相互に情報信号の入出力を行い、これらの情報信号に基づいて、クラッチ18の状態を制御する。
【0081】
以下、クラッチ制御手段52が行う制御について説明する。
クラッチ制御手段52は、ABS制御手段28の作動中は、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを解放する制御を行う。
その後、作動中のABS制御手段28が停止するとともに、制動力判定手段68が、要求制動力検出手段70の検出した制動力が所定の制動力以下であると判定すると、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続する制御を行う。
【0082】
具体的には、クラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力した状態で、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力する。これは、ABS制御手段28から入力された情報信号が、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号である場合に限定する。ここで、クラッチ18への、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号の出力は、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号の入力を受けている間に行う。
【0083】
その後、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力した状態で、クラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力する。これは、ABS制御手段28から入力された情報信号が、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号から、ABS制御手段28が停止している状態を含む情報信号へ変化した場合に限定する。これに加え、制動力判定手段68から入力された情報信号が、要求制動力検出手段70の検出した要求制動力が、所定の制動力以下である比較結果を含む場合に限定する。
【0084】
以下、始動制御装置が行う処理について、図1から図8を参照しつつ、図9を用いて、具体的に説明する。
図9は、始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
図9中に示すフローチャートは、エンジン1を停止させて、車両Cの駆動状態を4WDから2WDへと切り換えた状態において、車両Cが走行している状態からスタートする(START)。
始動制御装置は、車両Cの駆動状態が2WDである状態において、車両Cの走行時に、例えば、所定のサンプリング時間毎に、ABS制御手段28の作動状態を検出する。これにより、ABS制御手段28が作動している停止しているかを判定(図9中に示す「ABS作動中?」)する(ステップS20)。
【0085】
ステップS20において、始動制御装置は、ロック検出部56が出力する、ABS制御手段28の作動状態を示す情報信号(図3参照)に基づき、ABS制御手段28が作動している停止しているかを判定する。
そして、ABS制御手段28が作動している(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置は、車両Cが実際に走行している路面の摩擦係数が、基準路面の摩擦係数よりも低いか否かを判定する(図9中に示す「低μ?」)する(ステップS22)。
一方、ステップS20において、ABS制御手段28が作動していない(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置は、運転者の要求する制動力が所定の制動力以下であるか否かを判定する(図9中に示す「要求制動力小?」)する(ステップS24)。
【0086】
ステップS22において、始動制御装置は、加速度比較部66がエンジン制御手段50へ出力する情報信号に基づき、車両Cが実際に走行している路面の摩擦係数が、基準路面の摩擦係数よりも低いか否かを判定する(図4参照)。具体的には、実走行減速度が、予測減速度未満であるか否かを判定する。
そして、実走行減速度が予測減速度未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置は、エンジン1が停止しているか否かを判定する(図9中に示す「エンジン停止?」)する(ステップS26)。
【0087】
一方、ステップS22において、実走行減速度が予測減速度未満ではない(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS20の処理へ復帰(RETURN)する。
ステップS24において、始動制御装置は、制動力比較部74がクラッチ制御手段52へ出力する情報信号に基づき、運転者の要求する要求制動力が、所定の制動力以下であるか否かを判定する(図8参照)。具体的には、運転者によるブレーキペダル26の操作量により発生する制動力が、予め設定した所定の制動力以下であるか否かを判定する。
【0088】
そして、運転者によるブレーキペダル26の操作量により発生する制動力が、予め設定した所定の制動力以下である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置の処理は、ステップS26へ移行する。
一方、ステップS24において、運転者によるブレーキペダル26の操作量により発生する制動力が、予め設定した所定の制動力を超える(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS20の処理へ復帰(RETURN)する。
【0089】
ステップS26において、始動制御装置は、エンジン制御手段50が4WDコントロ−ラ46へ出力する情報信号に基づき、エンジン1が停止しているか否かを判定する(図2参照)。具体的には、エンジン制御手段50が4WDコントロ−ラ46へ出力する、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が停止している状態を示す情報信号であるか否かを判定する。
【0090】
そして、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が停止している状態を示す情報信号である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置の処理は、ステップS28へ移行する。
一方、ステップS26において、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が駆動している状態を示す情報信号である(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS20の処理へ復帰(RETURN)する。
【0091】
ステップS28において、始動制御装置は、停止させた状態にあるエンジン1を始動させる(図中に示す「エンジン始動」)。具体的には、エンジン制御手段50から、エンジン1に、始動命令を含む情報信号を出力する。これは、上述したように、ステップS20において、ABS制御手段28が作動していると判定するとともに、ステップS22において、実走行減速度が予測減速度未満であると判定した場合に限定する。これに加え、上述したように、ステップS24において、運転者によるブレーキペダル26の操作量により発生する制動力が、予め設定した所定の制動力以下であるか否かを判定した場合に限定する。さらに、ステップS26において、エンジン1が停止していると判定する判定した場合に限定する。
ステップS28において、停止させた状態にあるエンジン1を始動させると、始動制御装置の処理は、ステップS20の処理へ復帰(RETURN)する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0092】
(動作)
次に、図1から図5及び図7から図9を参照しつつ、図10を用いて、始動制御装置を備えた車両の動作について説明する。
図10は、始動制御装置を備えた車両Cの動作を示すタイムチャートである。なお、図10中では、車両Cの駆動状態、アクセルペダル16の操作量、運転者の要求する駆動力等を、図6と同様の記載により示している。
図10のタイムチャートは、車両Cの走行時において、エンジン1を停止させるとともに、クラッチ18を解放状態とした状態からスタートする。
【0093】
なお、図10中に示すt0の時点からt5の時点までの動作は、上述した第一実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
t0の時点では、エンジン制御手段50が、モータ8の駆動中に、エンジン1へ、駆動を停止する命令を含む情報信号を出力して、エンジン1の駆動を停止させる。また、クラッチ制御手段52が、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力して、車両Cの駆動状態を、2WDとする。
【0094】
そして、車両Cが惰性により走行している状態から、運転者の要求する駆動力が更に減少すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作を行っている状態で、ロック検出部56が、ロック傾向にある車輪を判定すると、ABS制御手段28が作動する。
ABS制御手段28が作動したt3の時点において、エンジン制御手段50が、ABS制御手段28の作動中に、エンジン1へ、始動命令を含む情報信号を出力すると、この情報信号の入力を受けたエンジン1は、停止状態から始動する。
【0095】
ABS制御手段28の作動中に停止状態のエンジン1が始動し、エンジン1が駆動している状態で、運転者の要求する駆動力が増加すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作量を減少させ、作動中のABS制御手段28は、ABS制御を停止する。
作動中のABS制御手段28がABS制御を停止した状態で、運転者の要求する駆動力がt5の時点から更に増加すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作量を減少させる。
【0096】
運転者がブレーキペダル26の操作量を減少させ、運転者の要求する制動力が所定の制動力以下となると、この時点(図中に示す「t6」)において、クラッチ制御手段52は、解放状態のクラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力する。
解放状態のクラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力すると、解放状態のクラッチ18が接続状態となり、車両Cの駆動状態が2WDから4WDへと切り換わる。
【0097】
運転者の要求する駆動力がt6の時点から更に増加すると、t6の時点でブレーキペダル26の操作量を減少させた運転者は、ブレーキペダル26の操作を停止し、アクセルペダル16の操作を開始する。
ここで、上記のように車両Cの駆動状態は、2WDから4WDへと切り換わっている。このため、運転者の要求する駆動力に応じてアクセルペダル16の操作量を増加させ、エンジン1の回転数が増加するにつれて、左右前輪2L、2Rの駆動力が増加する。また、アクセルペダル16の操作量を増加させると、モータ8の駆動力も増加する。
したがって、アクセルペダル16の操作を開始した時点(図中に示す「t7」)以降では、運転者の要求する駆動力が増加し、アクセルペダル16の操作量が増加すると、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も増加する。
【0098】
(第二実施形態の効果)
(1)本実施形態の始動制御装置では、クラッチ制御手段が、作動中のABS制御手段が停止するとともに、制動力判定手段が要求制動力検出手段の検出した制動力が、所定の制動力以下であると判定すると、エンジンと左右前輪とを接続する。
このため、作動中のABS制御手段が停止した状態で、運転者の要求する制動力が所定の制動力を超えている場合は、エンジンと左右前輪とを解放した状態を維持することが可能となる。
その結果、ABS制御手段が停止した後に、制動力の低下を防止することが可能となるとともに、制動状態の終了直後に、車両に対して大きな駆動力を付与することが可能となるため、車両の操縦安定性を向上させることが可能となる。
【0099】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図11から図13を参照して、本実施形態の始動制御装置の構成を説明する。
なお、本実施形態の始動制御装置の構成は、車両制御コントローラ14の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。このため、その他の構成に関する説明は、省略する。
【0100】
図11は、車両制御コントローラ14の構成を示すブロック図である。
図11中に示すように、車両制御コントローラ14は、ABS制御手段28と、モータ制御手段42と、バッテリ制御手段44と、4WDコントロ−ラ46とを備えている。これに加え、車両制御コントローラ14は、加速度比較手段48と、駆動力判定手段76と、エンジン制御手段50と、クラッチ制御手段52とを備えている。
【0101】
なお、車両制御コントローラ14の構成は、駆動力判定手段76及びクラッチ制御手段52の構成を除き、上述した第一実施形態と同様であるため、駆動力判定手段76及びクラッチ制御手段52以外の説明は省略する。
駆動力判定手段76は、アクセルペダル16が出力した情報信号と、予め記憶した所定の駆動力に基づき、運転者の要求する要求駆動力が、所定の駆動力以上であるか否かを判定する。そして、その判定結果を含む情報信号を、クラッチ制御手段52へ出力する。
【0102】
以下、図12を用いて、駆動力判定手段76の詳細な構成について説明する。
図12は、駆動力判定手段76の構成を示すブロック図である。
図12中に示すように、駆動力判定手段76は、要求駆動力検出手段78と、所定駆動力記憶部80と、駆動力比較部82とを備えている。
要求駆動力検出手段78は、運転者によるアクセルペダル16の操作量に基づき、要求駆動力を算出する。そして、この算出結果を含む情報信号を、駆動力比較部82へ出力する。
【0103】
所定駆動力記憶部80は、予め設定した所定の駆動力を記憶している。なお、本実施形態では、「所定の駆動力」を、アクセルペダル16の操作量が「0を超える」、すなわち、アクセルペダル16が踏み込まれている状態の駆動力とする。
なお、上述した所定の駆動力は、アクセルペダル16が踏み込まれている状態の駆動力に限定するものではなく、例えば、アクセルペダル16の操作量が、車両Cの速度が20km/hを超える程度の操作量である場合の駆動力としてもよい。すなわち、所望の車速に応じて、所定の駆動力を設定してもよい。
【0104】
駆動力比較部82は、要求駆動力検出手段78が出力した情報信号と、所定駆動力記憶部80が記憶している所定の駆動力に基づき、要求駆動力検出手段78の検出した要求駆動力と、所定の駆動力とを比較する。そして、この比較結果を含む情報信号を、クラッチ制御手段52へ出力する。
以上により、駆動力判定手段76は、要求駆動力検出手段78の検出した駆動力が、所定の駆動力以上であるか否かを判定する。
クラッチ制御手段52は、ABS制御手段28、4WDコントロ−ラ46及び駆動力判定手段76との間で、相互に情報信号の入出力を行い、これらの情報信号に基づいて、クラッチ18の状態を制御する。
【0105】
以下、クラッチ制御手段52が行う制御について説明する。
クラッチ制御手段52は、ABS制御手段28の作動中は、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを解放する制御を行う。
その後、作動中のABS制御手段28が停止するとともに、駆動力判定手段76が、要求駆動力検出手段78の検出した駆動力が所定の駆動力以上であると判定すると、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続する制御を行う。
【0106】
具体的には、クラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力した状態で、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力する。これは、ABS制御手段28から入力された情報信号が、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号である場合に限定する。ここで、クラッチ18への、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号の出力は、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号の入力を受けている間に行う。
【0107】
その後、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力した状態で、クラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力する。これは、ABS制御手段28から入力された情報信号が、ABS制御手段28が作動している状態を含む情報信号から、ABS制御手段28が停止している状態を含む情報信号へ変化した場合に限定する。これに加え、駆動力判定手段76から入力された情報信号が、要求駆動力検出手段78の検出した要求駆動力が、所定の駆動力以上である比較結果を含む場合に限定する。
【0108】
以下、始動制御装置が行う処理について、図1から図12を参照しつつ、図13を用いて、具体的に説明する。
図13は、始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
図13中に示すフローチャートは、エンジン1を停止させて、車両Cの駆動状態を4WDから2WDへと切り換えた状態において、車両Cが走行している状態からスタートする(START)。
【0109】
始動制御装置は、車両Cの駆動状態が2WDである状態において、車両Cの走行時に、例えば、所定のサンプリング時間毎に、ABS制御手段28の作動状態を検出する。これにより、ABS制御手段28が作動している停止しているかを判定(図13中に示す「ABS作動中?」)する(ステップS30)。
ステップS30において、始動制御装置は、ロック検出部56が出力する、ABS制御手段28の作動状態を示す情報信号(図3参照)に基づき、ABS制御手段28が作動している停止しているかを判定する。
【0110】
そして、ABS制御手段28が作動している(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置は、車両Cが実際に走行している路面の摩擦係数が、基準路面の摩擦係数よりも低いか否かを判定する(図13中に示す「低μ?」)する(ステップS32)。
一方、ステップS30において、ABS制御手段28が作動していない(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置は、運転者の要求する駆動力が所定の駆動力以上であるか否かを判定する(図13中に示す「要求駆動力大?」)する(ステップS34)。
【0111】
ステップS32において、始動制御装置は、加速度比較部66がエンジン制御手段50へ出力する情報信号に基づき、車両Cが実際に走行している路面の摩擦係数が、基準路面の摩擦係数よりも低いか否かを判定する(図4参照)。具体的には、実走行減速度が、予測減速度未満であるか否かを判定する。
そして、実走行減速度が予測減速度未満である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置は、エンジン1が停止しているか否かを判定する(図13中に示す「エンジン停止?」)する(ステップS36)。
【0112】
一方、ステップS32において、実走行減速度が予測減速度未満ではない(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS30の処理へ復帰(RETURN)する。
ステップS34において、始動制御装置は、始動制御装置は、駆動力比較部82がクラッチ制御手段52へ出力する情報信号に基づき、運転者の要求する要求駆動力が、所定の駆動力以上であるか否かを判定する(図12参照)。具体的には、運転者によるアクセルペダル16の操作量により発生する駆動力が、予め設定した所定の駆動力以上であるか否かを判定する。
【0113】
そして、運転者によるアクセルペダル16の操作量により発生する駆動力が、予め設定した所定の駆動力以上である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置の処理は、ステップS36へ移行する。
一方、ステップS34において、運転者によるアクセルペダル16の操作量により発生する駆動力が、予め設定した所定の駆動力以上である(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS30の処理へ復帰(RETURN)する。
【0114】
ステップS36において、始動制御装置は、エンジン制御手段50が4WDコントロ−ラ46へ出力する情報信号に基づき、エンジン1が停止しているか否かを判定する(図2参照)。具体的には、エンジン制御手段50が4WDコントロ−ラ46へ出力する、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が停止している状態を示す情報信号であるか否かを判定する。
【0115】
そして、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が停止している状態を示す情報信号である(図中に示す「Yes」)と判定すると、始動制御装置の処理は、ステップS38へ移行する。
一方、ステップS36において、エンジン1の駆動状態を示す情報信号が、エンジン1が駆動している状態を示す情報信号である(図中に示す「No」)と判定すると、始動制御装置が行う処理は、ステップS30の処理へ復帰(RETURN)する。
【0116】
ステップS38において、始動制御装置は、停止させた状態にあるエンジン1を始動させる(図中に示す「エンジン始動」)。具体的には、エンジン制御手段50から、エンジン1に、始動命令を含む情報信号を出力する。これは、上述したように、ステップS30において、ABS制御手段28が作動していると判定するとともに、ステップS32において、実走行減速度が予測減速度未満であると判定した場合に限定する。これに加え、上述したように、ステップS34において、運転者によるアクセルペダル16の操作量により発生する駆動力が、予め設定した所定の駆動力以上であると判定する場合に限定する。さらに、ステップS36において、エンジン1が停止していると判定する判定した場合に限定する。
ステップS38において、停止させた状態にあるエンジン1を始動させると、始動制御装置の処理は、ステップS30の処理へ復帰(RETURN)する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0117】
(動作)
次に、図1から図5及び図11から図13を参照しつつ、図14を用いて、始動制御装置を備えた車両の動作について説明する。
図14は、始動制御装置を備えた車両Cの動作を示すタイムチャートである。なお、図14中では、車両Cの駆動状態、アクセルペダル16の操作量、運転者の要求する駆動力等を、図6と同様の記載により示している。
図14のタイムチャートは、車両Cの走行時において、エンジン1を停止させるとともに、クラッチ18を解放状態とした状態からスタートする。
【0118】
なお、図14中に示すt0の時点からt5の時点までの動作は、上述した第一実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
t0の時点では、エンジン制御手段50が、モータ8の駆動中に、エンジン1へ、駆動を停止する命令を含む情報信号を出力して、エンジン1の駆動を停止させる。また、クラッチ制御手段52が、クラッチ18に、クラッチ18を解放状態とするクラッチ制御信号を出力して、車両Cの駆動状態を、2WDとする。
【0119】
そして、車両Cが惰性により走行している状態から、運転者の要求する駆動力が更に減少すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作を行っている状態で、ロック検出部56が、ロック傾向にある車輪を判定すると、ABS制御手段28が作動する。
ABS制御手段28が作動したt3の時点において、エンジン制御手段50が、ABS制御手段28の作動中に、エンジン1へ、始動命令を含む情報信号を出力すると、この情報信号の入力を受けたエンジン1は、停止状態から始動する。
【0120】
ABS制御手段28の作動中に停止状態のエンジン1が始動し、エンジン1が駆動している状態で、運転者の要求する駆動力が増加すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作量を減少させ、作動中のABS制御手段28は、ABS制御を停止する。
作動中のABS制御手段28がABS制御を停止した状態で、運転者の要求する駆動力がt5の時点から更に増加すると、運転者は、ブレーキペダル26の操作量を減少させ、ブレーキペダル26の操作を停止する。
【0121】
そして、運転者がブレーキペダル26の操作を停止した時点(図中に示す「t6」)から、運転者の要求する駆動力が更に増加すると、ブレーキペダル26の操作を停止した運転者は、アクセルペダル16の操作を開始する。
運転者がアクセルペダル16の操作量を増加させ、運転者の要求する駆動力が所定の駆動力以上となると、この時点(図中に示す「t7」)において、クラッチ制御手段52は、解放状態のクラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力する。
【0122】
解放状態のクラッチ18に、クラッチ18を接続状態とするクラッチ制御信号を出力すると、解放状態のクラッチ18が接続状態となり、車両Cの駆動状態が2WDから4WDへと切り換わる。
ここで、上記のように車両Cの駆動状態は、2WDから4WDへと切り換わっている。このため、運転者の要求する駆動力に応じてアクセルペダル16の操作量を増加させ、エンジン1の回転数が増加するにつれて、左右前輪2L、2Rの駆動力が増加する。また、アクセルペダル16の操作量を増加させると、モータ8の駆動力も増加する。
したがって、t7の時点以降では、運転者の要求する駆動力が増加し、アクセルペダル16の操作量が増加すると、左右前輪2L、2R及び左右後輪10L、10Rの駆動力も増加する。
【0123】
(第三実施形態の効果)
(1)本実施形態の始動制御装置では、クラッチ制御手段が、作動中のABS制御手段が停止するとともに、駆動力判定手段が要求駆動力検出手段の検出した駆動力が、所定の駆動力以上であると判定すると、エンジンと左右前輪とを接続する。
このため、作動中のABS制御手段が停止した状態で、運転者の要求する駆動力が所定の駆動力未満である場合は、エンジンと左右前輪とを解放した状態を維持することが可能となる。
【0124】
その結果、ABS制御手段が停止した後に、制動状態が継続している場合等、運転者の要求する駆動力が少ない状態では、ABS制御手段の作動中に始動させたエンジンの駆動力が、左右前輪に伝達されることを防止することが可能となる。また、ABS制御手段が停止し、且つ制動状態が終了した直後等、運転者の要求する駆動力が増加した場合には、車両に対して大きな駆動力を付与することが可能となる。
これにより、車両の操縦安定性を向上させることが可能となる。
【0125】
(応用例)
(1)本実施形態の始動制御装置では、クラッチ制御手段52が、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続する。これは、作動中のABS制御手段28が停止するとともに、駆動力判定手段76が、要求駆動力検出手段78の検出した駆動力が、所定の駆動力以上であると判定する場合に限定している。
しかしながら、クラッチ制御手段52が、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続する条件は、これに限定するものではない。
【0126】
すなわち、例えば、車両制御コントローラ14の構成を、制動力判定手段68と駆動力判定手段76を備えた構成する。そして、クラッチ制御手段52が行う、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続する制御を、作動中のABS制御手段28が停止するとともに、以下に示す二つの条件のうち一方を、走行状況や運転者の選択により設定してもよい。なお、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続する制御の選択は、例えば、運転席付近に配置した切り替え式のスイッチ等により行う。
【0127】
第一の条件は、制動力判定手段68が、要求制動力検出手段70の検出した制動力が、所定の制動力以下であると判定する場合である。
一方、第二の条件は、駆動力判定手段76が、要求駆動力検出手段78の検出した駆動力が、所定の駆動力以上であると判定する場合である。
このような構成とすることにより、例えば、積雪路等の低μ路面が続く走行状況では、要求駆動力が少ない場合であっても、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続することにより、操縦安定性を重視した制御を行うことが可能となる。
一方、例えば、乾燥路等の良好な路面が続く走行状況では、要求駆動力が少ない場合では、エンジン1と左右前輪2L、2Rとを接続せず、燃費を重視した制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】第一実施形態の始動制御装置を備える車両Cの上面図であり、車両Cの概略構成を示す図である。
【図2】第一実施形態の車両制御コントローラ14の構成を示すブロック図である。
【図3】ABS制御手段28の構成を示すブロック図である。
【図4】加速度比較手段48の構成を示すブロック図である。
【図5】第一実施形態の始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】第一実施形態の始動制御装置を備えた車両Cの動作を示すタイムチャートである。
【図7】第二実施形態の車両制御コントローラ14の構成を示すブロック図である。
【図8】制動力判定手段68の構成を示すブロック図である。
【図9】第二実施形態の始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図10】第二実施形態の始動制御装置を備えた車両Cの動作を示すタイムチャートである。
【図11】第三実施形態の車両制御コントローラ14の構成を示すブロック図である。
【図12】駆動力判定手段76の構成を示すブロック図である。
【図13】第三実施形態の始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図14】第三実施形態の始動制御装置を備えた車両Cの動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0129】
1 エンジン
2 前輪
8 モータ
10 後輪
12 加速度検出手段
14 車両制御コントローラ
16 アクセルペダル
18 クラッチ
22 前輪速センサ
24 前輪ブレーキ装置
26 ブレーキペダル
28 ABS制御手段
38 後輪速センサ
40 後輪ブレーキ装置
42 モータ制御手段
46 4WDコントロ−ラ
50 エンジン制御手段
52 クラッチ制御手段
54 車速算出部
56 ロック検出部
58 要求制動力算出部
60 油圧制御部
64 加速度演算手段
68 制動力判定手段
70 要求制動力検出手段
76 駆動力判定手段
78 要求駆動力検出手段
C 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前輪及び後輪のうち一方を駆動するエンジンと、前記前輪及び前記後輪のうち他方を駆動するモータと、前記前輪及び前記後輪のロックを抑制するように制動力を制御するABS制御手段と、を有する車両が備えるエンジンの始動制御装置であって、
前記エンジンの駆動状態を制御するエンジン制御手段を備え、
前記エンジン制御手段は、前記モータの駆動中に、運転者の要求する駆動力に応じて前記エンジンを停止させ、さらに、前記エンジンを停止させた状態で前記ABS制御手段が作動すると、停止させた前記エンジンを前記ABS制御手段の作動中に始動させることを特徴とするエンジンの始動制御装置。
【請求項2】
前記車両の減速方向への加速度を検出する加速度検出手段と、前記車両の基準路面における減速方向への加速度を演算する加速度演算手段と、を備え、
前記エンジン制御手段は、前記ABS制御手段の作動中に前記加速度検出手段の検出した減速方向への加速度が、前記ABS制御手段の作動中に前記加速度演算手段の演算した減速方向への加速度未満である場合に、停止させた前記エンジンを前記ABS制御手段の作動中に始動させることを特徴とする請求項1に記載したエンジンの始動制御装置。
【請求項3】
前記エンジンと当該エンジンが駆動するエンジン駆動輪との駆動力伝達経路に介装してエンジンと前記エンジン駆動輪とを接続または解放するクラッチを制御するクラッチ制御手段を備え、
前記クラッチ制御手段は、前記ABS制御手段の作動中は前記エンジンと前記エンジン駆動輪とを解放し、作動中の前記ABS制御手段が停止すると前記エンジンと前記エンジン駆動輪とを接続することを特徴とする請求項1または2に記載したエンジンの始動制御装置。
【請求項4】
前記運転者の要求する制動力を検出する要求制動力検出手段と、当該要求制動力検出手段の検出した制動力が所定の制動力以下であるか否かを判定する制動力判定手段と、を備え、
前記クラッチ制御手段は、作動中の前記ABS制御手段が停止するとともに、前記制動力判定手段が前記要求制動力検出手段の検出した制動力が所定の制動力以下であると判定すると、前記エンジンと前記エンジン駆動輪とを接続することを特徴とする請求項3に記載したエンジンの始動制御装置。
【請求項5】
前記運転者の要求する駆動力を検出する要求駆動力検出手段と、当該要求駆動力検出手段の検出した駆動力が所定の駆動力以上であるか否かを判定する駆動力判定手段と、を備え、
前記クラッチ制御手段は、作動中の前記ABS制御手段が停止するとともに、前記駆動力判定手段が前記要求駆動力検出手段の検出した駆動力が所定の駆動力以上であると判定すると、前記エンジンと前記エンジン駆動輪とを接続することを特徴とする請求項3または4に記載したエンジンの始動制御装置。
【請求項6】
車両の前輪及び後輪のうち一方を駆動するエンジンの駆動状態を、運転者の要求する駆動力及び前記前輪及び前記後輪のロックを抑制するように制動力を制御するABS制御手段の作動状態に応じて制御するエンジンの始動制御方法であって、
運転者の要求する駆動力に応じて前記エンジンを停止させ、
前記前輪及び前記後輪のうち他方を駆動するモータの駆動中に、前記エンジンを停止させた状態で前記ABS制御手段が作動すると、停止させた前記エンジンを前記ABS制御手段の作動中に始動させることを特徴とするエンジンの始動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−149682(P2010−149682A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329583(P2008−329583)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】