説明

エンジン制御装置

【課題】1型式のエンジン70に対するECU11の汎用性を向上させたエンジン制御装置を提供する。
【解決手段】本願発明のエンジン制御装置は、作業車両に搭載されるエンジン70と、前記エンジン70に燃料を噴射する燃料噴射装置117と、前記エンジン70の駆動状態を検出する検出手段14,16と、前記検出手段14,16の検出情報と前記エンジン70固有の出力特性データM1とに基づいて前記燃料噴射装置117の作動を制御するECU11とを備える。前記出力特性データM1を補正する補正手段21を備える。前記ECU11は、前記補正手段21による前記出力特性データM1の補正結果と前記検出手段14,16の検出情報とに基づき制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置117を作動させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えばトラクタのような車両に搭載されるエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のエンジンにおいては、コモンレール式燃料噴射装置を利用して、各気筒に対するインジェクタに高圧燃料を供給し、各インジェクタからの燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)を電子制御することによって、エンジンから排出される窒素酸化物(NOx)の低減や、エンジンの騒音振動の低減を図るという技術が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−9033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のエンジンを搭載したトラクタ等の車両では、ECUが例えばマップ形式や関数表形式等の出力特性データ、回転速度及びトルクに基づいてコモンレール式燃料噴射装置の作動を制御することにより、変速レバー等の操作量に応じた燃料噴射量にてエンジン出力を調節している。出力特性データとは、エンジンが搭載される車両に対応したものであり、通常、ECUに1種類又は限られた種類だけ記憶させている。このため、前記従来の構成では、エンジンの型式が同じであっても、例えばトラクタ用エンジンのECUを、バックホウ用エンジンのECUとして適用し難い(すなわち、ECUの汎用性が低い)という問題があった。なお、かかる問題は、コモンレール式の燃料噴射装置だけでなく、電子ガバナ式の場合も存在していた。
【0005】
そこで、本願発明は、上記の問題点を解消したエンジン制御装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、作業車両に搭載されるエンジンと、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの駆動状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出情報と前記エンジン固有の出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置の作動を制御するECUとを備えているエンジン制御装置であって、前記出力特性データを補正する補正手段を備えており、前記ECUは、前記補正手段による前記出力特性データの補正結果と前記検出手段の検出情報とに基づき制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記燃料噴射装置の作動を修正するための修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記修正特性データに関連付けられた識別手段の設定に対応して、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算するというものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記作業車両に装着可能な作業機の種類に応じた複数個の修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記作業車両に装着された前記作業機に応じて、前記データ格納手段から読み出す修正特性データを決定し、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算するというものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記出力特性データにおいて所定回転速度に対するトルクを制限するトルク制限率を格納しており、前記ECUは、前記トルク制限率に基づき前記出力特性データの補正結果を演算するというものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には複数個の修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記作業車両に設けられた選択スイッチ手段にて、前記データ格納手段から読み出す修正特性データを決定し、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算するというものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段は前記作業車両に設けられた手動操作手段であり、前記手動操作手段は、前記出力特性データにおいて所定回転速度に対するトルクを制限するトルク制限率を可変に設定するように構成されているというものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1〜6のうちいずれかに記載したエンジン制御装置において、前記ECUは、前記補正手段を検知しない場合に、前記検出手段の検出情報と前記出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されているというものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1〜7のうちいずれかに記載したエンジン制御装置において、前記ECUは、前記補正手段との配線をつないだ状態下で前記補正手段の応答がない場合に、フェイル状態と判断してその旨を報知する報知手段を作動させるように構成されているというものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項1〜6のうちいずれかに記載したエンジン制御装置において、前記ECUは、前記作業車両に作業機を装着しない場合に、前記検出手段の検出情報と前記出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されているというものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によると、作業車両に搭載されるエンジンと、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの駆動状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出情報と前記エンジン固有の出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置の作動を制御するECUとを備えているエンジン制御装置であって、前記出力特性データを補正する補正手段を備えており、前記ECUは、前記補正手段による前記出力特性データの補正結果と前記検出手段の検出情報とに基づき制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されているから、エンジン製造メーカは、前記エンジンの型式が同じであれば、前記ECUに記憶される出力特性データをいずれも同一(共通)のものにできる。また、前記エンジンを作業車両に搭載するエンジン購入メーカは、自社の仕様に適合する前記補正結果を前記補正手段から得られることになる。換言すると、前記補正手段によって、前記エンジンが搭載される車種毎や、前記作業車両に装着される作業機毎に、最適な燃料噴射制御を選択することが可能になる。従って、前記ECUの汎用性向上というエンジン製造メーカの利点と、前記ECUの作業車両に対する適合性確保というエンジン購入メーカの利点とを両立できるという効果を奏する。
【0016】
請求項2の発明によると、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記燃料噴射装置の作動を修正するための修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記修正特性データに関連付けられた識別手段の設定に対応して、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算するから、前記識別手段を設定しておけば、前記修正特性データを用いて前記出力特性データを補正し、その補正結果に基づいて前記エンジンのトルクを制限できることになる。従って、オペレータの手を煩わせることなく(習熟度等にも依らず)、エンジン購入メーカの仕様に合わせて補正された燃料噴射制御を実行できるという効果を奏する。
【0017】
請求項3の発明によると、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記作業車両に装着可能な作業機の種類に応じた複数個の修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記作業車両に装着された前記作業機に応じて、前記データ格納手段から読み出す修正特性データを決定し、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算するから、前記作業車両に前記作業機を装着しておけば、前記ECUは、前記作業機に適した(前記作業機用の)前記修正特性データを抽出できることになる。従って、オペレータの手を煩わせることなく的確に、前記作業機用の前記修正特性データを特定して選び出せる。つまり、燃料噴射制御に対する前記ECUの柔軟な設定を確保できるものでありながら、例えばオペレータの習熟度等に依らずに、前記作業機毎の最適な燃料噴射制御を的確に実行できるという効果を奏する。
【0018】
請求項4の発明によると、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記出力特性データにおいて所定回転速度に対するトルクを制限するトルク制限率を格納しており、前記ECUは、前記トルク制限率に基づき前記出力特性データの補正結果を演算するから、エンジン購入メーカの補正による前記修正特性データのドループ特性を、前記出力特性データのドループ特性の相似形状に維持できることになり、エンジン製造メーカにとっては、自社の設計思想に近い状態で前記エンジンを駆動させることができる。また、エンジン購入メーカにとっては、前記修正特性データを前記トルク制限率にするという簡単な設定で、自社の仕様に適合する燃料噴射制御を実行することが可能になり、手間のかかるソフトウェア設計(修正特性データ設計)等の負担を軽減できるという効果を奏する。
【0019】
請求項5の発明によると、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段としてのデータ格納手段には複数個の修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記作業車両に設けられた選択スイッチ手段にて、前記データ格納手段から読み出す修正特性データを決定し、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算するから、前記ECUは、前記選択スイッチ手段の操作によって、前記エンジンが搭載された作業車両に最適な修正特性データを選び出せることになる。従って、前記出力特性データの補正を、作業状況やオペレータの好み・要望に合わせて簡単に変更でき、状況に応じた適切な燃料噴射制御を実行できるという効果を奏する。
【0020】
請求項6の発明によると、請求項1に記載したエンジン制御装置において、前記補正手段は前記作業車両に設けられた手動操作手段であり、前記手動操作手段は、前記出力特性データにおいて所定回転速度に対するトルクを制限するトルク制限率を可変に設定するように構成されているから、前記ECUは、前記手動操作手段の操作によって、前記エンジンが搭載された作業車両に最適な修正特性データに変更・調節できることになる。従って、前記出力特性データの補正を、作業状況やオペレータの好み・要望に合わせて段階的又は連続的に変更でき、燃料噴射制御に対するきめ細かい対処が可能になるという効果を奏する。
【0021】
請求項7の発明によると、請求項1〜6のうちいずれかに記載したエンジン制御装置において、前記ECUは、前記補正手段を検知しない場合に、前記検出手段の検出情報と前記出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されているから、例えば前記補正手段の故障や誤動作等の障害が発生して前記補正手段を検知できなくなったとしても、前記出力特性データを用いたフェイルセーフ機能が働くことになる。従って、前記ECUが誤動作又は停止したり、前記エンジンが誤動作又は停止したりする事態を回避できるという効果を奏する。
【0022】
請求項8の発明によると、請求項1〜7のうちいずれかに記載したエンジン制御装置において、前記ECUは、前記補正手段との配線をつないだ状態下で前記補正手段の応答がない場合に、フェイル状態と判断してその旨を報知する報知手段を作動させるように構成されているから、例えば前記修正特性データを格納していない前記補正手段を、誤って前記ECUに接続した場合や、前記ECUと前記補正手段との間で断線が生じている場合において、その事実は前記報知手段の作動によって把握されることになる。従って、前記補正手段に前記修正特性データを格納し忘れたり、前記接続回線中の断線を見落としたりするおそれを回避できるという効果を奏する。
【0023】
ところで、作業機を装着していない作業車両は、農作業等の各種作業を実行せずに、路上走行といった通常の走行を実行する状態と想定されるから、作業特性に適合するような修正特性データを敢えて使う必要はなく、元々備えている出力特性データを用いて燃料噴射制御をすれば足りる。この点、請求項9の発明では、前記作業車両に作業機を装着しない場合に、前記検出手段の検出情報と前記出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置を作動させるべく、前記ECUを構成しているから、細かい設定操作等をしなくても、作業機の装着の有無(作業車両の使用状況)に応じた効率のよい燃料噴射制御を簡単に実行できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態を要約した概念説明図である。
【図2】エンジン出荷前後のECUの状態を示す概念説明図である。
【図3】ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。
【図4】出力特性マップの説明図である。
【図5】修正特性マップの説明図である。
【図6】燃料噴射制御のフローチャートである。
【図7】第2実施形態を要約した概念説明図である。
【図8】ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。
【図9】回転速度とトルクとの関係を示す説明図である。
【図10】第3実施形態を要約した概念説明図である。
【図11】回転速度とトルクとの関係を示す説明図である。
【図12】燃料噴射制御のフローチャートである。
【図13】別例における回転速度とトルクとの関係を示す説明図である。
【図14】エンジン駆動中に回転数制限値を変更する場合の説明図であり、(a)はドループ特性を変更しない場合、(b)はドループ特性も併せて変更する場合である。
【図15】第4実施形態を要約した概念説明図である。
【図16】ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。
【図17】第5実施形態を要約した概念説明図
【図18】ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。
【図19】ディーゼルエンジンの外観斜視図である。
【図20】トラクタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、車両としてのトラクタに搭載されるディーゼルエンジンに適用した場合の図面に基づいて説明する。
【0026】
(1).コモンレールシステム及びディーゼルエンジンの燃料系統構造
まず、図3及び図18を参照しながら、コモンレールシステム117(コモンレール式燃料噴射装置)及びディーゼルエンジン70の燃料系統構造について説明する。図3及び図18に示すように、ディーゼルエンジン70に設けられた4気筒分の各インジェクタ115に、コモンレールシステム117及び燃料供給ポンプ116を介して、燃料タンク118が接続されている。各インジェクタ115は電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を備えている。コモンレールシステム117は円筒状のコモンレール120を備えている。
【0027】
図3及び図18に示すように、燃料供給ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続される。燃料タンク118内の燃料が燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料供給ポンプ116に吸い込まれる。実施形態の燃料供給ポンプ116は吸気マニホールド73の近傍に配置されている。具体的には、シリンダブロック75の右側面側(吸気マニホールド73設置側)で且つ吸気マニホールド73の下方に設けられている。一方、燃料供給ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続される。また、コモンレール120には、4本の燃料噴射管126を介して4気筒分の各インジェクタ115がそれぞれ接続されている。
【0028】
上記の構成により、燃料タンク118の燃料が燃料供給ポンプ116によってコモンレール120に圧送され、高圧の燃料がコモンレール120に蓄えられる。各燃料噴射バルブ119がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール120内の高圧の燃料が各インジェクタ115からディーゼルエンジン70の各気筒に噴射される。すなわち、各燃料噴射バルブ119を電子制御することによって、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。従って、ディーゼルエンジン70からの窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、ディーゼルエンジン70の騒音振動を低減できる。
【0029】
なお、図3及び図18に示すように、燃料タンク118には、燃料戻り管129を介して燃料供給ポンプ116が接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向の端部に、コモンレール120内の燃料の圧力を制限する戻り管コネクタ130を介して、コモンレール戻り管131が接続されている。すなわち、燃料供給ポンプ116の余剰燃料とコモンレール120の余剰燃料とが、燃料戻り管129及びコモンレール戻り管131を介して、燃料タンク118に回収されることになる。
【0030】
(2).第1実施形態におけるコモンレールの燃料噴射制御
次に、図1〜図6を参照しながら、第1実施形態におけるコモンレール120の燃料噴射制御について説明する。図3に示す如く、ディーゼルエンジン70における各気筒の燃料噴射バルブ119を作動させるECU11を備えている。詳細は図示しないが、ECU11は、各種演算処理や制御を実行するCPUの他、制御プログラムやデータを記憶させるEEPROM、フラッシュメモリ、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるRAM、CANコントローラ及び入出力インターフェイス等を備えており、ディーゼルエンジン70又はその近傍に配置されている。
【0031】
ECU11の入力側には、少なくともコモンレール120内の燃料圧力を検出するレール圧センサ12と、燃料ポンプ116を回転又は停止させる電磁クラッチ13と、ディーゼルエンジン70の回転速度(クランク軸74のカムシャフト位置)を検出するエンジン速度センサ14と、インジェクタ115の燃料噴射回数(1行程の燃料噴射期間中の燃料噴射回数)を検出及び設定する噴射設定器15と、スロットルレバー又はアクセルペダル等のアクセル操作具(図示省略)の操作位置を検出するスロットル位置センサ16と、ターボ過給機100の圧力を検出するターボ昇圧センサ17と、吸気マニホールド73の吸気温度を検出する吸気温度センサ18と、ディーゼルエンジン70の冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ19とが接続されている。これらセンサ類12〜19がディーゼルエンジン70の駆動状態を検出する検出手段を構成している。
【0032】
ECU11の出力側には、少なくとも4気筒分の各燃料噴射バルブ119の電磁ソレノイドがそれぞれ接続されている。すなわち、コモンレール120に蓄えた高圧燃料が燃料噴射圧力、噴射時期及び噴射期間等を制御しながら、1行程中に複数回に分けて燃料噴射バルブ119から噴射されることによって、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えると共に、すすや二酸化炭素等の発生も低減した完全燃焼を実行し、燃費を向上させるように構成されている。また、ECU11の出力側には、警報ブザーや警報ランプといった報知手段27も接続されている。
【0033】
ECU11に設けられた記憶手段(フラッシュメモリやEEPROM)には、ディーゼルエンジン70の回転速度NとトルクT(負荷)との関係を示す出力特性データとしての出力特性マップM1(図4参照)が予め記憶されている。この種の出力特性マップM1は実験等にて求められる。なお、出力特性データとしては、実施形態のようなマップ形式に限らず、例えば関数表やセットデータ(データテーブル)等でも差し支えない。図4に示す出力特性マップM1では、回転速度Nを横軸に、トルクTを縦軸に採っている。出力特性マップM1において、上向き凸湾曲状に描かれた実線Tmx1が各回転速度Nに対する最大トルクを表した最大トルク線である。この場合、ディーゼルエンジン70の型式が同じであれば、ECU11に記憶される出力特性マップM1はいずれも同一(共通)のものになる。
【0034】
ECU11は基本的に、エンジン速度センサ14にて検出される回転速度Nとスロットル位置センサ16にて検出されるスロットル位置とからトルクTを求め、トルクTと出力特性マップM1とを用いて目標燃料噴射量Rを演算し、当該演算結果に基づいてコモンレールシステム117を作動させるという燃料噴射制御を実行するように構成されている。ここで、燃料噴射量は、各燃料噴射バルブ119の開弁期間を調節して、各インジェクタ115への噴射期間を変更することによって調節される。
【0035】
本願発明の各実施形態では、出力特性マップM1を補正する補正手段を備えており、ECU11は、補正手段による出力特性マップM1の補正結果と、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値とに基づき制限トルク値を演算し、制限トルク値に応じてコモンレールシステム117を作動させることが可能になっている。図1〜図5に示す第1実施形態では、補正手段の一例として、データ格納手段である作業機ECU21が採用されている。
【0036】
第1実施形態のECU11には、データ格納手段としての作業機ECU21がCAN通信バス23を介して電気的に接続されている(図2及び図3参照)。作業機ECU21は、作業車両に装着される作業機(耕耘機やプラウ、バケット等)の駆動を制御する機能を有している。作業機ECU21は、ECU11と同様に、CPU、EEPROM、フラッシュメモリ、RAM、CANコントローラ及び入出力インターフェイス等を備えており、作業機の任意の箇所に配置できる。もちろん、ECU11と共に、ディーゼルエンジン70又は作業車両の本体側に配置することも可能である。CAN通信バス23は、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)プロトコルによるデータ通信のための通信ラインである。この点からも明らかなように、ECU11と作業機ECU21とには、CAN通信環境が適用されている。CAN通信プロトコルによるデータ通信はLAN通信環境を発展させたものであり、CAN通信プロトコルは、共通のリターン(サブルーチンや割込ルーチンに移ったプログラムをメインルーチンに戻す命令)を有する差動の2ワイヤバスラインを用いて、分散リアルタイム制御及び多重化を保つシリアル通信プロトコルである。
【0037】
作業機ECU21の記憶手段(フラッシュメモリやEEPROM)には、コモンレールシステム117の作動を修正するための修正特性データとしての修正特性マップM2(図5参照)が予め記憶されている。修正特性マップM2は、ECU11の出力特性マップM1と同様に、ディーゼルエンジン70の回転速度NとトルクT(負荷)との関係を示すものである。図5に示す修正特性マップM2でも、回転速度Nを横軸に、トルクTを縦軸に採っている。修正特性マップM2において、上向き凸湾曲状に描かれた実線Tmx2が各回転速度Nに対する最大トルクを表した最大トルク線である。なお、修正特性データとしては、出力特性データと同様に、実施形態のようなマップ形式に限らず、例えば関数表やセットデータ(データテーブル)等でも差し支えない。
【0038】
修正特性マップM2(図5では実線で示す)においては、出力特性マップM1(図5では破線で示す)と比較して、所定回転速度Nに対するトルクTを制限するように設定されている。すなわち、同一回転速度Nでの最大トルクは出力特性マップM1から求めた場合より修正特性マップM2から求めた方が小さくなるように(Tmx1≦Tmx2)、修正特性マップM2と出力特性マップM1との関係が設定されている(出力特性マップM1側の最大トルク線Tmx1の内側(下側)に修正特性マップM2側の最大トルク線Tmx2が位置するように設定されている)。
【0039】
作業機ECU21に記憶される修正特性マップM2は、ディーゼルエンジン70の型式が同じであっても、ディーゼルエンジン70が搭載される車種毎や、作業車両に装着される作業機(耕耘機やプラウ、バケット等)毎に各別に設定できる。かかる修正特性マップM2の設定の一例としては、例えば負荷変動が大きい作業に対してエンストを抑制するため、広範囲の回転速度域にわたって高トルクを得るようにした出力特性や、負荷変動が小さい作業に対して作業能率を高めるため、負荷変動による回転変動を小さくするようにした出力特性、クラッチの接続作業に対して接続の衝撃を緩和するため、接続前に回転速度を低下させるようにした出力特性等が考えられる。
【0040】
第1実施形態において、作業機ECU21が接続されたECU11は、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値と、出力特性マップM1と、修正特性マップM2とに基づきトルクTを演算して目標燃料噴射量Rを求め、当該演算結果に基づいて(所定回転速度Nに対するトルクTを制限するように)コモンレールシステム117を作動させるように構成されている(図1及び図2参照)。ここで、例えば修正特性データとして例えば関数(数式)やセットデータを採用した場合は、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値と、出力特性データと、修正特性データとから、制限トルク値を求めて目標燃料噴射量Rを求め、当該演算結果に基づいて(所定回転速度Nに対するトルクTが制限されるように)コモンレールシステム117を作動させることになる。
【0041】
ECU11は、修正特性マップM2に関連付けられた識別手段25の設定によって、作業機ECU21から修正特性マップM2を読み込んで参照するか否か(出力特性マップM1の補正のために修正特性マップM2を用いるか否か)を決定するように構成されている。識別手段25としては、ECU11に設けられたジャンパピンの設定や、作業機ECU21からECU11に接続するカプラの端子設定にて、修正特性マップM2を用いるか否かを決定する構成等が考えられる。第1実施形態のECU11は、ECU11に作業機ECU21が接続され且つ応答がある場合に、両特性マップM1,M2を用いてトルク制限された目標燃料噴射量Rを演算し、接続されていないか又は応答がない場合には、出力特性マップM1を用いて目標燃料噴射量Rを演算するように設定されている。すなわち、ECU11に対する作業機ECU21の接続及び応答の有無が識別手段25として機能している。作業機ECU21が接続されていない状態とは「補正手段を検知しない場合」に相当し、例えば作業車両に作業機を装着していない場合や、ECU11に作業機ECU21を繋いでいない場合等が挙げられる。また、作業機ECU21の応答がない状態とは、例えば作業機ECU21に修正特性マップM2が格納されていない場合や、通信不能な場合等が考えられる。
【0042】
図1及び図2に示すように、実施形態のエンジン制御装置は、ECU11には出力特性マップM1を書き込んだ状態で、エンジン製造メーカから出荷される。エンジン購入メーカは、ディーゼルエンジン70を作業車両に搭載するに際して、ECU11に、CAN通信バス23を介して修正特性マップM2を格納した作業機ECU21を接続することになる。
【0043】
以下に、図6のフローチャートを参照しながら、第1実施形態における燃料噴射制御の一例を説明する。前述の通り、第1実施形態のECU11は、作業機ECU21を接続しているために、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値と、出力特性マップM1と、修正特性マップM2とに基づきトルクTを演算して目標燃料噴射量Rを求め、当該演算結果に基づいて(所定回転速度Nに対するトルクTを制限するように)コモンレールシステム117を作動させる。この場合、図6のフローチャートに示すように、ECU11は、作業機ECU21の接続の有無(作業機ECU2との配線があるか否か)を判別する(ステップS1)。作業機ECU21が接続されていなければ(S1:NO)、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値を所定タイミング(適宜時間毎)にて読み込み(ステップS2)、次いで、ECU11が、自身の有する出力特性マップM1を参照して、先ほど読み込まれた回転速度N及びスロットル位置からトルクTを求めて目標燃料噴射量Rを演算する(ステップS3)。そして、目標燃料噴射量Rに基づいてコモンレールシステム117を作動させる(ステップS4)。その後、電源印加用のキースイッチ(図示省略)が入り状態であればステップS1に戻って燃料噴射制御を続行する。
【0044】
ステップS1において、作業機ECU21が接続されていれば(S1:YES)、次いで、ECU11は、作業機ECU21の応答の有無を判別する(ステップS5)。作業機ECU21の応答がなければ(S5:NO)、ECU11はフェイル状態と判断して報知手段27を作動させ(ステップS6)、オペレータに燃料噴射制御がフェイル状態にある旨を報知して、注意を喚起する。そして、ステップS2に移行して、出力特性マップM1を用いた燃料噴射制御を実行する。
【0045】
ステップS5において、作業機ECU21の応答を検知すれば(S5:YES)、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値を所定のタイミング(適宜時間毎)にて読み込み(ステップS7)、次いで、ECU11が、出力特性マップM1と作業機ECU21内の修正特性マップM2とを参照して、先ほど読み込まれた回転速度N及びスロットル位置からトルクTを求めて、(トルク制限された)目標燃料噴射量Rを演算する(ステップS8)。そして、トルク制限された目標燃料噴射量Rに基づいてコモンレールシステム117を作動させる(ステップS9)。その後、電源印加用のキースイッチ(図示省略)が入り状態であればステップS1に戻って燃料噴射制御を続行する。
【0046】
上記の記載並びに図1〜図6から明らかなように、作業車両に搭載されるエンジン70と、前記エンジン70に燃料を噴射する燃料噴射装置117と、前記エンジン70の駆動状態を検出する検出手段14,16と、前記検出手段14,16の検出情報と前記エンジン70固有の出力特性データM1とに基づいて前記燃料噴射装置117の作動を制御するECU11とを備えているエンジン制御装置であって、前記出力特性データM1を補正する補正手段21を備えており、前記ECU11は、前記補正手段21による前記出力特性データM1の補正結果と前記検出手段14,16の検出情報とに基づき制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置117を作動させるように構成されているから、エンジン製造メーカは、前記エンジン70の型式が同じであれば、前記ECU11に記憶される出力特性データM1をいずれも同一(共通)のものにできる。また、前記エンジン70を作業車両に搭載するエンジン購入メーカは、自社の仕様に適合する前記補正結果を前記補正手段21から得られることになる。換言すると、前記補正手段21によって、前記エンジン70が搭載される車種毎や、前記作業車両に装着される作業機毎に、最適な燃料噴射制御を選択することが可能になる。従って、前記ECU11の汎用性向上というエンジン製造メーカの利点と、前記ECU11の作業車両に対する適合性確保というエンジン購入メーカの利点とを両立できるという効果を奏する。
【0047】
上記の記載並びに図1〜図6から明らかなように、前記補正手段としてのデータ格納手段21には、前記燃料噴射装置117の作動を修正するための修正特性データM2を格納しており、前記ECU11は、前記修正特性データM2に関連付けられた識別手段25の設定に対応して、前記修正特性データM2に基づき前記出力特性データM1の補正結果を演算するから、前記識別手段25を設定しておけば、前記修正特性データM2を用いて前記出力特性データM1を補正し、その補正結果に基づいて前記エンジン70のトルクを制限できることになる。従って、オペレータの手を煩わせることなく(習熟度等にも依らず)、エンジン購入メーカの仕様に合わせて補正された燃料噴射制御を実行できるという効果を奏する。
【0048】
上記の記載並びに図6から明らかなように、前記ECU11は、前記補正手段21を検知しない場合に、前記検出手段14,16の検出情報と前記出力特性データM1とに基づいて前記燃料噴射装置117を作動させるように構成されているから、例えば前記補正手段21の故障や誤動作等の障害が発生して前記補正手段21を検知できなくなったとしても、前記出力特性データM1を用いたフェイルセーフ機能が働くことになる。従って、前記ECU11が誤動作又は停止したり、前記エンジン70が誤動作又は停止したりする事態を回避できるという効果を奏する。
【0049】
上記の記載並びに図6から明らかなように、前記ECU11は、前記補正手段21との配線をつないだ状態下で前記補正手段21の応答がない場合に、フェイル状態と判断してその旨を報知する報知手段27を作動させるように構成されているから、例えば前記修正特性データM2が入っていない前記補正手段21を誤って前記ECU11に接続した場合や、前記ECU11と前記補正手段21との間で断線が生じた場合において、その事実は前記報知手段27の作動によって把握されることになる。従って、前記補正手段21に前記修正特性データM2を格納し忘れたり、配線中の断線を見落としたりするおそれを回避できるという効果を奏する。
【0050】
ところで、図6に示すステップS1の判断、すなわち、作業機ECU21の接続の有無の判断は、作業車両に作業機を装着しているか否かの判断と共通するものである。作業機を装着していない作業車両は、農作業等の各種作業を実行せずに、路上走行といった通常の走行を実行する状態と想定されるから、作業特性に適合するような修正特性マップM2を敢えて使う必要はなく、元々備えている出力特性マップM1を用いて燃料噴射制御をすれば足りる。そこで、図6のステップS1〜S4に示すように、ECU11は、作業車両に作業機を装着しない場合に、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値と、出力特性マップM1とに基づいてコモンレールシステム117を作動させるのである。従って、細かい設定操作等をしなくても、作業機の装着の有無(作業車両の使用状況)に応じた効率のよい燃料噴射制御を簡単に実行できることになる。
【0051】
(3).第2実施形態におけるコモンレールの燃料噴射制御
次に、図7〜図9を参照しながら、第2実施形態におけるコモンレール120の燃料噴射制御について説明する。ここで、第2実施形態以降の実施形態において、構成及び作用が第1実施形態と変わらないものには、第1実施形態と同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0052】
さて、コモンレールシステム117の作動を修正するための修正特性データは図5に示すような1種類に限るものではなく、ディーゼルエンジン70が搭載される車種毎や、作業車両に装着される作業機(耕耘機やプラウ、バケット等)毎に対応して複数種類記憶させていてもよい(図9参照)。第2実施形態では、データ格納手段としての作業機ECU21に、複数種類の修正特性マップM2,M3を記憶させている。この場合、各修正特性マップM2,M3の選択は、例えばECU11に設けられたジャンパピンや、作業車両のキャビン内に設けられた選択スイッチにて行ってもよい。また、作業車両側にある別ECU(この場合は作業機ECU21)からの制御信号にて、各特性マップM2,M3を選択する構成でもよい。
【0053】
第2実施形態では、作業車両に作業機を装着することによって、当該作業機に対応した修正特性マップM2,M3を選択するように構成されている(図7及び図8参照)。例えば、作業車両の後部に設けられた車両側ヒッチに、作業機毎の判別ボタンを配置し、作業機側ヒッチを車両側ヒッチに連結したときに、作業機に対応した判別ボタンが連結によってセットされるように構成すればよい。ここで、修正特性マップM2がロータリ耕耘機用のものであり、修正特性マップM3がプラウ用のものであると仮定すると、ロータリ耕耘機を装着した場合は、耕耘機用判別ボタンがセットされ、出力特性マップM1の補正のために、ECU11はロータリ耕耘機用の修正特性マップM2を参照する。プラウを装着した場合は、プラウ用判別ボタンがセットされ、出力特性マップM1の補正のために、ECU11はプラウ用の修正特性マップM3を参照することになる。
【0054】
第2実施形態のECU11は、作業車両に装着された作業機に応じて、作業機ECU21から読み出す修正特性マップM2又はM3を決定し、修正特性マップM2又はM3に基づき出力特性マップM1の補正結果を演算する。そして、出力特性マップM1の補正結果と、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値とに基づきトルクTを演算して目標燃料噴射量Rを求め、当該演算結果に基づいて(所定回転速度Nに対するトルクTを制限するように)コモンレールシステム117を作動させるのである。
【0055】
上記の記載並びに図7〜図9から明らかなように、前記補正手段としてのデータ格納手段21には、前記作業車両に装着可能な作業機の種類に応じた複数個の修正特性データM2,M3を格納しており、前記ECU11は、前記作業車両に装着された前記作業機に応じて、前記データ格納手段21から読み出す修正特性データM2又はM3を決定し、前記修正特性データM2又はM3に基づき前記出力特性データM1の補正結果を演算するから、前記作業車両に前記作業機を装着しておけば、前記ECU11は、前記作業機に適した(前記作業機用の)前記修正特性データM2又はM3を抽出できることになる。従って、オペレータの手を煩わせることなく的確に、前記作業機用の前記修正特性データM2又はM3を特定して選び出せる。つまり、燃料噴射制御に対する前記ECU11の柔軟な設定を確保できるものでありながら、例えばオペレータの習熟度等に依らずに、前記作業機毎の最適な燃料噴射制御を的確に実行できるという効果を奏する。
【0056】
(4).第3実施形態におけるコモンレールの燃料噴射制御
次に、図10〜図12を参照しながら、第3実施形態におけるコモンレール120の燃料噴射制御について説明する。前述した通り、修正特性データは、マップ形式M2,M3や関数表等に限らないことは言うまでもないが、例えば前述の修正特性マップM2,M3に代えて、作業機ECU21(データ格納手段)に記憶させたトルク制限率Drを修正特性データとして採用することも可能である(図10〜図12参照)。第3実施形態の場合、図12に示す制御フローは基本的に図6の場合と同様であるが、目標燃料噴射量Rを演算するに当たって、ECU11が作業機ECU21内のトルク制限率Drを参照して、回転速度N及びスロットル位置と、出力特性マップM1と、トルク制限率Drとに基づく演算を実行することになる。
【0057】
上記の記載並びに図10〜図12から明らかなように、前記補正手段としてのデータ格納手段21には、前記出力特性データM1において所定回転速度Nに対するトルクTを制限するトルク制限率Drを格納しており、前記ECU11は、前記トルク制限率Drに基づき前記出力特性データM1の補正結果を演算するから、エンジン購入メーカの補正による前記修正特性データのドループ特性を、前記出力特性データM1のドループ特性の相似形状に維持できることになり、エンジン製造メーカにとっては、自社の設計思想に近い状態で前記エンジン70を駆動させることができる。また、エンジン購入メーカにとっては、前記修正特性データを前記トルク制限率Drにするという簡単な設定で、自社の仕様に適合する燃料噴射制御を実行することが可能になり、手間のかかるソフトウェア設計(修正特性データ設計)等の負担を軽減できるという効果を奏する。
【0058】
更に、第3実施形態の別例として、作業機ECU21に記憶させた回転速度制限値Ltを修正特性データとして採用することも可能である(図13参照)。このような別例の場合は、目標燃料噴射量Rを演算するに当たって、ECU11が作業機ECU21内の回転速度制限値Ltを参照して、回転速度N及びスロットル位置と、出力特性マップM1と、回転速度制限値Ltとに基づく演算を実行することになる。図13では、実線Tmx4が回転速度設定値Ltを設定した場合の最大トルク線(ドループ特性)を示している。なお、回転速度制限値Ltだけでなく、ドループ特性を変更する確認信号も併せてECU11に送ることによって、図13に示すドループ特性Tmx5〜Tmx7のように変化させることも可能である。つまり、回転速度制限値Ltを基にしたドループ特性のバリエーションを簡単に設定でき、種々の燃料噴射制御の設定に対処し易くなるのである。
【0059】
なお、第3実施形態の別例においては、ディーゼルエンジン70始動の際に、作業機ECU21内に回転速度制限値Ltを格納しているとECU11が判断すれば、直ちに前記回転速度制限値Ltを用いて目標燃料噴射量Rを演算しコモンレールシステム117を作動させるように構成することが可能である。
【0060】
また、補正手段として可変抵抗器型の回転速度制限スイッチ(図示省略)を採用し、回転速度制限スイッチの摘み操作によって、回転速度制限値Ltを段階的又は連続的に変更して、修正特性マップ(補正結果)のドループ特性を変更・調節するように構成してもよい。
【0061】
例えばディーゼルエンジン70の駆動中にオペレータが回転速度制限スイッチを操作した場合において、図14(a)に示すように、操作後の回転速度制限値Lt2に基づくドループ特性Tmx9が、操作前の回転速度制限値Lt1に基づくドループ特性Tmx8と比べて、全体的に上側(外側)に移動するときは、直ちに前記回転速度制限値Lt2(ドループ特性Tmx9)を用いて目標燃料噴射量Rを演算しコモンレールシステム117を作動させるのが好ましい。
【0062】
一方、それ以外の場合、例えば図14(b)に示すように、操作後の回転速度制限値Lt4に基づくドループ特性Tmx11が、操作前の回転速度制限値Lt3に基づくドループ特性Tmx10と一部交差するときは、差分を演算して徐々に、前記回転速度制限値Lt4(ドループ特性Tmx11)に近付け、最終的に前記回転速度制限値Lt4にて演算させるのが好ましい。これは、回転速度制限スイッチの操作にてドループ特性の上限が低下する条件下(図14(b)の領域Ar参照)で、ドループ特性変更のためにディーゼルエンジン70が急停止してしまうおそれを防止するための措置である。
【0063】
(5).第4実施形態におけるコモンレールの燃料噴射制御
次に、図15及び図16を参照しながら、第4実施形態におけるコモンレール120の燃料噴射制御について説明する。第4実施形態では、第2実施形態と同様に、データ格納手段としての作業機ECU21に、図9に示す複数種類の修正特性マップM2,M3を記憶させている。この場合、作業車両のキャビン内に、選択スイッチ手段として、各修正特性マップM2,M3に関連付けられた操作ボタン28a,28bが設けられている(図15及び図16参照)。これら操作ボタン28a,28bの選択操作によって、作業機ECU21から読み出す修正特性マップM2又はM3が選び出される。各操作ボタン28a,28bは、一度押下するとロックされて、対応する修正特性マップM2,M3をECU11に選択させ、更にもう一度押下すると元の状態に復帰して、ECU11による前記選択を解除させるというプッシュスイッチになっている。各操作ボタン28a,28bはECU11の入力側に接続されている(図16参照)。
【0064】
第4実施形態のECU11は、選択スイッチ手段としての各操作ボタン28a,28bの選択操作によって、作業機ECU21から読み出す修正特性マップM2又はM3を決定し、修正特性マップM2又はM3に基づき出力特性マップM1の補正結果を演算する。そして、出力特性マップM1の補正結果と、エンジン速度センサ14及びスロットル位置センサ16の検出値とに基づきトルクTを演算して目標燃料噴射量Rを求め、当該演算結果に基づいて(所定回転速度Nに対するトルクTを制限するように)コモンレールシステム117を作動させるのである。
【0065】
上記の記載並びに図15及び図16から明らかなように、前記補正手段としてのデータ格納手段21には複数個の修正特性データM2,M3を格納しており、前記ECU11は、前記作業車両に設けられた選択スイッチ手段28a,28bにて、前記データ格納手段21から読み出す修正特性データM2,M3を決定し、前記修正特性データM2,M3に基づき前記出力特性データM1の補正結果を演算するから、前記ECU11は、前記選択スイッチ手段28a,28bの操作によって、前記エンジン70が搭載された作業車両に最適な修正特性データを選び出せることになる。従って、前記出力特性データM1の補正を、作業状況やオペレータの好み・要望に合わせて簡単に変更でき、状況に応じた適切な燃料噴射制御を実行できるという効果を奏する。
【0066】
(6).第5実施形態におけるコモンレールの燃料噴射制御
次に、図17及び図18を参照しながら、第5実施形態におけるコモンレール120の燃料噴射制御について説明する。第5実施形態では、第3実施形態と同様に、トルク制限率Drを修正特性データとして採用し、ECU11がトルク制限率Drに基づき出力特性データM1の補正結果を演算するように構成されている。但し、第5実施形態ではデータ格納手段を備えておらず、補正手段(手動操作手段)として、摘みの位置を連続的又は段階的に変更可能な可変抵抗器型のボリュームスイッチ29を、作業車両のキャビン内に設けている。この場合、ボリュームスイッチ29の摘み操作によって、トルク制限率Drの値が段階的又は連続的に変更され、出力特性マップM1のドループ特性の相似形状に維持した状態で、トルク制限率Drに比例して、修正特性マップ(補正結果)のドループ特性を変更・調節するように構成されている。第5実施形態のボリュームスイッチ29は、A/D変換器30を介してECU11の入力側に接続されている(図18参照)。目標燃料噴射量Rを演算するに当たって、ECU11は、ボリュームスイッチ29の摘み操作量に対応したトルク制限率Drを参照して、回転速度N及びスロットル位置と、出力特性マップM1と、トルク制限率Drとに基づく演算を実行することになる。
【0067】
上記の記載並びに図17及び図18から明らかなように、前記補正手段は、前記作業車両に設けられた手動操作手段29であり、前記手動操作手段29は、前記出力特性データM1において所定回転速度Nに対するトルクTを制限するトルク制限率Drを可変に設定するように構成されているから、前記ECU11は、前記手動操作手段29の操作によって、前記エンジン70が搭載された作業車両に最適な修正特性データに変更・調節できることになる。従って、前記出力特性データM1の補正を、作業状況やオペレータの好み・要望に合わせて段階的又は連続的に変更でき、燃料噴射制御に対するきめ細かい対処が可能になるという効果を奏する。
【0068】
(7).まとめ
上記の記載から明らかなように、本願発明によると、作業車両に搭載されるエンジン70と、前記エンジン70に燃料を噴射する燃料噴射装置117と、前記エンジン70の駆動状態を検出する検出手段14,16と、前記検出手段14,16の検出情報と前記エンジン70固有の出力特性データM1とに基づいて前記燃料噴射装置117の作動を制御するECU11とを備えているエンジン制御装置であって、前記出力特性データM1を補正する補正手段21,29を備えており、前記ECU11は、前記補正手段21,29による前記出力特性データM1の補正結果と前記検出手段14,16の検出情報とに基づき制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置117を作動させるように構成されているから、エンジン製造メーカは、前記エンジン70の型式が同じであれば、前記ECU11に記憶される出力特性データM1をいずれも同一(共通)のものにできる。また、前記エンジン70を作業車両に搭載するエンジン購入メーカは、自社の仕様に適合する前記補正結果を前記補正手段21,29から得られることになる。換言すると、前記補正手段21によって、前記エンジン70が搭載される車種毎や、前記作業車両に装着される作業機毎に、最適な燃料噴射制御を選択することが可能になる。従って、前記ECU11の汎用性向上というエンジン製造メーカの利点と、前記ECU11の作業車両に対する適合性確保というエンジン購入メーカの利点とを両立できるという効果を奏する。
【0069】
(8).ディーゼルエンジンの全体構造
次に、図19を参照して、ディーゼルエンジン70の全体構造について説明する。実施形態のディーゼルエンジン70は4気筒型のものであり、ディーゼルエンジン70におけるシリンダヘッド72の左側面に排気マニホールド(図示省略)が配置されている。シリンダヘッド72の右側面には吸気マニホールド73が配置されている。シリンダヘッド72は、クランク軸及びピストン(図示省略)が内蔵されたシリンダブロック75上に搭載されている。シリンダブロック75の前後両側面からクランク軸の前後先端部をそれぞれ突出させている。シリンダブロック75の前面側に冷却ファン76が設けられている。クランク軸74の前端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成されている。
【0070】
シリンダブロック75の後面にフライホイールハウジング78が固着されている。フライホイールハウジング78内にフライホイール(図示省略)が配置されている。フライホイールはクランク軸の後端側に軸支されていて、クランク軸と一体的に回転するように構成されている。作業車両の駆動部に、フライホイールを介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成されている。シリンダブロック75の下面にはオイルパン81が配置されている。シリンダブロック75の左右側面とフライホイールハウジング78の左右側面とには、機関脚取付部82がそれぞれ設けられている。各機関脚取付部82には、防振ゴムを有する機関脚体(図示省略)がボルト締結される。ディーゼルエンジン70は、各機関脚体を介して、トラクタ201のエンジン支持シャーシ84に防振支持される。
【0071】
吸気マニホールド73の入口側には、EGR装置91(排気ガス再循環装置)を構成するコレクタ92を介して、エアクリーナ(図示省略)が連結される。エアクリーナ88にて除塵・浄化された外気は、EGR装置91のコレクタ92を介して、吸気マニホールド73に送られ、そして、ディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。EGR装置91は、ディーゼルエンジン70の再循環排気ガス(排気マニホールド71からのEGRガス)と新気(エアクリーナからの外部空気)とを混合させて吸気マニホールド73に供給するコレクタ(EGR本体ケース)92と、排気マニホールド71にEGRクーラ94を介して接続する再循環排気ガス管95と、再循環排気ガス管95にコレクタ92を連通させるEGRバルブ96とを備えている。
【0072】
上記の構成により、エアクリーナからコレクタ92内に外部空気を供給する一方、排気マニホールド71からEGRバルブ96を介してコレクタ92内にEGRガス(排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部)を供給する。エアクリーナからの外部空気と、排気マニホールド71からのEGRガスとが、コレクタ92内で混合された後、コレクタ92内の混合ガスが吸気マニホールド73に供給される。すなわち、ディーゼルエンジン70から排気マニホールド71に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド73からディーゼルエンジン70に還流されることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が下がり、ディーゼルエンジン70からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減される。
【0073】
シリンダヘッド72の左側面には、ターボ過給機100が取り付けられている。ターボ過給機100は、タービンホイール(図示省略)を内蔵したタービンケース101と、ブロアホイール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース102とを備えている。タービンケース101の排気ガス取入れ管105に排気マニホールドが接続される。図示は省略するが、タービンケース101の排気ガス排出管103には、マフラー又はディーゼルパティキュレートフィルタ等を介してテールパイプが接続される。すなわち、ディーゼルエンジン70の各気筒から排気マニホールド71に排出された排気ガスは、ターボ過給機100等を経由して、テールパイプから外部に放出される。
【0074】
一方、コンプレッサケース102の給気取入れ側には、給気管104を介してエアクリーナの給気排出側が接続される。コンプレッサケース102の給気排出側には、過給管108を介して吸気マニホールド73が接続される。すなわち、エアクリーナによって除塵された外気は、コンプレッサケース102から過給管108を介してディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
【0075】
ディーゼルエンジン70に設けられた4気筒分の各インジェクタ115に、コモンレールシステム117及び燃料供給ポンプ116を介して、燃料タンク118(図3参照)が接続される。各インジェクタ115は電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を備えている。コモンレールシステム117は円筒状のコモンレール120を備えている。燃料供給ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続される。燃料供給ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続される。
【0076】
(9).トラクタの概略
次に、図20を参照しながら、ディーゼルエンジン70が搭載される作業車両としてのトラクタ201の概略について説明する。トラクタ201は、走行機体202を左右一対の前車輪203と同じく左右一対の後車輪204とで支持し、走行機体202の前部に搭載されたディーゼルエンジン70にて後車輪204及び前車輪203を駆動することにより、前後進走行するように構成される。
【0077】
走行機体202の前部に搭載されたディーゼルエンジン70はボンネット206にて覆われている。走行機体202の上面にはキャビン207が設置され、キャビン207の内部には、オペレータが着座する操縦座席208と、操縦座席208の前方に位置する操向手段としての丸ハンドル形状の操縦ハンドル209が設けられている。操縦座席208に着座したオペレータが操縦ハンドル209を回動操作することにより、その操作量に応じて左右前車輪203のかじ取り角(操向角度)が変わるように構成されている。キャビン207の底部には、オペレータが搭乗するためのステップ210が設けられている。キャビン207のフロントコラム内にECU11が配置されている。
【0078】
走行機体202は、前バンパ212及び前車軸ケース213を有するエンジンフレーム214と、エンジンフレーム214の後部にボルトの締結にて着脱可能に連結する左右の機体フレーム216とにより構成される。前車輪203は、エンジンフレーム214の外側面から外向きに突出するように装着された前車軸ケース213を介して取り付けられている。また、機体フレーム216の後部には、ディーゼルエンジン70からの出力を適宜変速して後車輪204(前車輪203)に伝達するためのミッションケース217が連結されている。後車輪204は、ミッションケース217に対して、当該ミッションケース217の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース(図示省略)を介して取り付けられている。
【0079】
ミッションケース217の後部上面には、耕耘機やプラウ等の作業機(図示省略)を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構220が着脱可能に取り付けられている。作業機は、ミッションケース217の後部にロワーリンク(図示省略)及びトップリンク222を介して昇降動可能に連結される。更に、ミッションケース217の後側面に、作業機を駆動するPTO軸223が設けられている。
【0080】
図示は省略するが、ディーゼルエンジン70の後面側からクランク軸及びフライホイール等を介して、ミッションケース217の前面側にディーゼルエンジン70の回転動力を伝達するように構成している。ディーゼルエンジン70の回転動力をミッションケース217に伝達し、次いで、ミッションケース217の油圧無段変速機や走行副変速ギヤ機構にてディーゼルエンジン70の回転動力を適宜変速して、差動ギヤ機構等を介してミッションケース217から後車輪204に駆動力を伝達するように構成している。また、走行副変速ギヤ機構にて適宜変速したディーゼルエンジン70の回転を、前車軸ケース213の差動ギヤ機構等を介してミッションケース217から前車輪203に伝達するように構成している。
【0081】
(10).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明はトラクタに搭載されるエンジンのエンジン制御装置に限らず、コンバインや田植機等の農作業機や、ホイルローダ等の特殊作業用車両に搭載されるエンジンのエンジン制御装置としても適用可能である。燃料噴射装置はコモンレール式のものに限らず、電子ガバナ式のものであってもよい。通信バスはCAN通信バスに限らず、LAN通信バスといった他の通信バスであってもよい。補正手段としてのデータ格納手段は、データ格納手段は、ECU11と別体のものであれば、フラッシュメモリやハードディスク等の外部記憶手段であってもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
M1 出力特性マップ(出力特性データ)
M2,M3 修正特性マップ(修正特性データ)
N 回転速度
T トルク
11 ECU
14 エンジン速度センサ(検出手段)
16 スロットル位置センサ(検出手段)
21 作業機ECU(データ格納手段)
23 CAN通信バス
25 識別手段
27 報知手段
28a,28b 操作ボタン(選択スイッチ手段)
29 手動操作手段(ボリュームスイッチ)
70 ディーゼルエンジン
115 インジェクタ
117 コモンレールシステム
120 コモンレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両に搭載されるエンジンと、前記エンジンに燃料を噴射する燃料噴射装置と、前記エンジンの駆動状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出情報と前記エンジン固有の出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置の作動を制御するECUとを備えているエンジン制御装置であって、
前記出力特性データを補正する補正手段を備えており、前記ECUは、前記補正手段による前記出力特性データの補正結果と前記検出手段の検出情報とに基づき制限トルク値を演算し、前記制限トルク値に応じて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されている、
エンジン制御装置。
【請求項2】
前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記燃料噴射装置の作動を修正するための修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記修正特性データに関連付けられた識別手段の設定に対応して、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算する、
請求項1に記載したエンジン制御装置。
【請求項3】
前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記作業車両に装着可能な作業機の種類に応じた複数個の修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記作業車両に装着された前記作業機に応じて、前記データ格納手段から読み出す修正特性データを決定し、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算する、
請求項1に記載したエンジン制御装置。
【請求項4】
前記補正手段としてのデータ格納手段には、前記出力特性データにおいて所定回転速度に対するトルクを制限するトルク制限率を格納しており、前記ECUは、前記トルク制限率に基づき前記出力特性データの補正結果を演算する、
請求項1に記載したエンジン制御装置。
【請求項5】
前記補正手段としてのデータ格納手段には複数個の修正特性データを格納しており、前記ECUは、前記作業車両に設けられた選択スイッチ手段にて、前記データ格納手段から読み出す修正特性データを決定し、前記修正特性データに基づき前記出力特性データの補正結果を演算する、
請求項1に記載したエンジン制御装置。
【請求項6】
前記補正手段は前記作業車両に設けられた手動操作手段であり、前記手動操作手段は、前記出力特性データにおいて所定回転速度に対するトルクを制限するトルク制限率を可変に設定するように構成されている、
請求項1に記載したエンジン制御装置。
【請求項7】
前記ECUは、前記補正手段を検知しない場合に、前記検出手段の検出情報と前記出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されている、
請求項1〜6のうちいずれかに記載したエンジン制御装置。
【請求項8】
前記ECUは、前記補正手段との配線をつないだ状態下で前記補正手段の応答がない場合に、フェイル状態と判断してその旨を報知する報知手段を作動させるように構成されている、
請求項1〜7のうちいずれかに記載したエンジン制御装置。
【請求項9】
前記ECUは、前記作業車両に作業機を装着しない場合に、前記検出手段の検出情報と前記出力特性データとに基づいて前記燃料噴射装置を作動させるように構成されている、
請求項1〜6のうちいずれかに記載したエンジン制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−64168(P2011−64168A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217084(P2009−217084)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】