説明

ガスセンサ

【課題】 通電部の腐食または漏電を防止して信頼性が高く、寿命の長いガスセンサを提供する。
【解決手段】 被検出ガス内に設置され、被検出ガスを検出する検出部2と、検出部2を回路部20と電気的に接続するための通電部3とを有するガスセンサ1であって、通電部3は、保持板4を貫通したピン状に形成され、検出部2は、保持板4の一方の面4c側において通電部3に接続され、保持板4の他方の面4dは、保持板4の被取付面22aに対面し、他方の面4dと被取付面22aの間の部分と、一方の面4c側から突出した通電部3の突出部分とが、絶縁部材5a,5bで封止された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関し、特に通電部の腐食または漏電を防止するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスの特定成分や濃度の検出にガスセンサが使用され、その用途も防災用の他、例えば、固体高分子膜型燃料電池による発電システム等のプロセス制御の分野でも広く活用されている。
固体高分子膜型燃料電池は、固体高分子電解質膜を燃料極と酸素極とで両側から挟み込んで形成されたセルを多数積層して構成されたスタックからなり、燃料極には燃料として水素が供給され、酸素極には酸化剤として空気が供給されて、燃料極で触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過して酸素極まで移動して、酸素極で酸素と電気化学反応を起こして発電するようになっている。
【0003】
このような固体高分子膜燃料電池において、従来、例えば特開平6−223850号公報に開示された燃料電池の保護装置のように、燃料電池の酸素極側の排出系に水素ガスを検出するガスセンサを備え、このガスセンサによって、燃料極側の水素が固体高分子電解質膜を通じて酸素極側に漏洩したことを検知したときは、燃料の供給を遮断する保護装置が知られている。
【特許文献1】特開平6−223850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のような固体高分子膜型燃料電池等の燃料電池においては、固体高分子電解質膜のイオン導電性を保つために、燃料電池に供給される反応ガス(例えば、水素や空気)には加湿装置等によって水(加湿水)が混合されており、さらに、燃料電池の作動時には電気化学反応による反応生成水が生成されるため、燃料電池のオフガス、特に酸素極側のオフガスは高湿潤のガスとなっている。
このため、前記従来技術に係る燃料電池の保護装置においては、燃料電池から排出される高湿潤のオフガスによって、オフガスの流路内に配置されたガスセンサに結露が発生する場合があり、ガスセンサの感度の低下や故障等が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、通電部の腐食または漏電を防止して、安定した感度を継続して保持することにより、信頼性が高く、寿命の長いガスセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のガスセンサは、被検出ガス内に設置され、前記被検出ガスを検出する検出部と、前記検出部からの出力を処理する回路部と前記検出部とを電気的に接続するための通電部とを有し、前記通電部の前記被検出ガス内に位置する部分が絶縁部材で封止されたことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、通電部の被検出ガス内に位置する部分が絶縁部材で封止され、通電部が被検出ガスから遮断されているため、被検出ガスが高湿潤であっても、通電部の腐食等による感度の低下、および漏電等の発生を防止することができる。
【0008】
前記した通電部は、保持板を貫通したピン状に形成され、前記検出部は、前記保持板の一方の面側において前記通電部に接続され、前記保持板の他方の面は、前記保持板の被取付面に対面し、前記他方の面と前記被取付面の間の部分と、前記一方の面側から突出した前記通電部の突出部分とが、前記絶縁部材で封止されていることが望ましい。
【0009】
このような構成によれば、保持板を貫通してピン状に形成された通電部において、被検出ガスを検出する検出部が接続される前記保持板の一方の面側から突出した前記通電部の突出部分は、被検出ガスに直接的にさらされるため、この部分を封止することにより、通電部の腐食等を防止することができる。
さらに、保持板の他方の面と前記被取付面の間の部分をも封止することにより、保持板の取付面から通電部への被検出ガスの侵入を阻止して、通電部を被検出ガスから完全に遮断することができる。
【0010】
また、前記した絶縁部材は、エポキシ系樹脂を基材とすることが望ましい。このような構成により、特に、水素ガスおよび水素ガスの燃焼触媒に対して安定しているため、安定した感度を継続して保持することができる。エポキシ樹脂を採用したのは、例えば、シリコン系樹脂は、水素ガスの燃焼触媒と反応して触媒を劣化させるおそれがあるからである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、通電部の腐食または漏電を防止して、安定した感度を継続して保持することにより、信頼性が高く、寿命の長いガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は本発明の実施形態に係るガスセンサの取付状態を示す断面図であり、図2は本発明の実施形態に係るガスセンサの取付状態を示す側面図であり、図3は本発明の実施形態に係るガスセンサの通電部の封止構造を示す図1の部分拡大断面図であり、図4は本発明の実施形態に係るガスセンサの検出部を模式的に示す図1の部分拡大図である。
なお、本実施形態においては、本発明に係るガスセンサを、固体高分子膜型燃料電池による発電システムにおいて、上記燃料電池の酸素極側の排出系に設置して、水素ガスを検出する場合を例として説明するが、水素極側の排出系に設置する場合も同様であり、排出系に限られるものでもない。
また、以下の説明において、説明の便宜上、図1において、本図の下側を本ガスセンサの下側とし、本図の上側を本ガスセンサの上側という場合があり、各構成部品についても同様である。
【0013】
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係るガスセンサ、およびその取付状態について説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るガスセンサ1は、水素ガスの濃度を検出する検出部2と、この検出部2を保持する保持板4と、前記検出部2から出力される出力信号を回路部20に伝達する通電部3と、前記出力信号を増幅し水素ガスの濃度を算出する回路部20と、オフガスを導入するガス導入部30とを備えて構成されている。
そして、前記ガスセンサ1は、オフガス流通管11の上部に設けられた取付座11aに固着され、前記検出部2が前記オフガス流通管11内を流通するオフガスを臨む状態に設置されている。
なお、本実施形態においては、水素検出用のガスセンサとして、水素ガスの触媒燃焼熱による抵抗値の変化を計測して、水素ガスの濃度を検出するガス接触燃焼式のものを使用している。
【0014】
前記検出部2は、図1に示すように、前記ガス導入部30に形成されたガス検知室31内に配置されている。また、検出部2は、図4に示すように、検出素子2aと補償素子2bとを1対として構成されており、保持板4の下面側で通電部3と電気的に接続されている。
なお、各素子2a,2bは、抵抗となるコイルをアルミナで被覆したものであり、検出素子2aにはアルミナに白金が担持されており、水素に触媒作用して触媒燃焼反応が起こる。この触媒燃焼による燃焼熱を利用して、ガス接触燃焼式のガスセンサ1は、検出素子2aと補償素子2bとでブリッジ回路を構成し、前記燃焼熱による検出素子2a抵抗値の変化を補償素子2bと比較することによって水素ガスの濃度を計測している。
【0015】
前記通電部3は、図3および図4に示すように、ピン状に形成され、保持板4を貫通して、前記検出部2からの出力信号を処理する回路を備えた回路基板22と前記検出素子2aおよび補償素子2bとをそれぞれ電気的に接続している。この検出素子2aおよび補償素子2bは、一例として、それぞれ2本の接続端2a1,2a2,2b1,2b2を有している。したがって、通電部3は、各素子2a,2bについて2本、合計で4本のピン状の端子として構成されている。
なお、本実施形態においては、通電部3は、ピン状に形成されているが、必ずしも一体的に構成されている必要はなく、導線を束ねたコードとして形成されたものでもよく、ピンの断面形状や本数等にも関わらず、本発明を実施することができる。さらに、前記回路基板22および各素子2a,2bと通電部3との接続も半田付けや溶着等種々の手段がある。
【0016】
本実施形態に係るガスセンサ1は、図1に示すように、前記保持板4を備えて構成されている。この保持板4は、リング状に形成され、4本のピン状の通電部3が貫通して保持される貫通孔4aを備えている(図3、図4を参照)。
【0017】
本実施形態に係るガスセンサ1の通電部3は、図3および図4に示すように、通電部3のうち被検出ガス内に設置される部分が絶縁部材であるエポキシ樹脂5(5a,5b)で封止されるように構成されている。
具体的には、図3に示すように、保持板4の一方の面4c(下面、検出部2と接続する側)から下側に突出した通電部3の突出部分3aはエポキシ樹脂5aで封止し、保持板4の他方の面4d(上面)と保持板4の被取付面である回路基板22の下面22aとの間の部分はエポキシ樹脂5bでそれぞれ封止する構造としている。ここで、本実施形態において、エポキシ樹脂を採用したのは、例えば、シリコン系樹脂は、水素ガスの燃焼触媒と反応して触媒を劣化させるおそれがあるからである。
なお、検出部については、特に封止する構成としていないが、エポキシ樹脂等で封止してもよいし、絶縁被覆等で封止されていればそれでもよい。
【0018】
前記オフガス流通管11は、図1に示すように、回路部20が固着される取付座11aと、ガス導入部30が装着される貫通孔11b(図3参照)とを備えている。
オフガス流通管11は、パイプ状であって、このオフガス流通管11の上部には、外周面から内周面に向かって垂直に貫通孔11bが形成され、この貫通孔11bには、ガス導入部30を構成する筒状部32が内嵌されている。また、取付座11aは、オフガス流通管11の外周面の上部に設けられ、取付座11aの上面は、水平面に形成され、ケース21のフランジ部21aが固着される(図2を併せて参照)。
【0019】
ガスセンサ1の回路部20は、図1および図2に示すように、回路基板22が埋設されたケース21により構成されている。
前記回路部20のケース21は、平面視で矩形状をなし、オフガス流通管11に沿った長手方向の両端面には、オフガス流通管11に固着するためのフランジ部21aが形成され、このフランジ部21aには取付穴21bが設けられている。この取付穴21bに取付ねじ23を挿通して回路部20をオフガス流通管11の取付座11aに固着している。
【0020】
ガス導入部30は、図3に示すように、ケース21の下部に形成されている。このガス導入部30は、筒状部32と、周壁部33と、撥水フィルタ34と、シールリング35とを備えている。このガス導入部30の内側には、ガス検知室31が形成されており、このガス検知室31には、水素ガスを検知する検出部2と、保持板4に保持された通電部3とが配置されている。そして、ガス検知室31内に配置された通電部3は、回路基板22の所定の位置に導通されて、通電部3と回路基板22とが電気的に接続されるように構成されている。
【0021】
前記筒状部32は、図3に示すように、有底の円筒形状をなし、その底部には、オフガス流路10から被検出ガスを導入する導入口32aが形成されている。筒状部32は、その下面32bがオフガス流通管11の内周面11cから突出することなくちょうど内周面11cに接するようにオフガス流通管11に配置されている。また、筒状部32の外周面32cには、シールリング35が外嵌されている。
一方、筒状部32の内周面側には、円筒状に形成された周壁部33が装着され、この周壁部33で囲まれた空間が被検出ガスのガス検知室31を形成している。
また導入口32aには、周壁部33に内嵌された防水のための撥水フィルタ34が設けられており、水滴状の水が検知室31内に侵入するのを防止している。
【0022】
以上のように構成されたガスセンサ1の作用について、図1および図3を参照して説明する。
オフガス流通管11内をオフガス(被検出ガス)が流通すると、導入口32aから撥水フィルタ34を通過して、検出部2までオフガスが浸入する。
したがって、通電部3は、保持板4から下側および上側に突出した部分がオフガスにさらされることになる。燃料電池から排出されるこのオフガスには、多量の水および水蒸気が含まれており、前記撥水フィルタ34で大半は除去できるが、水蒸気化された水分は検知室31まで浸入し結露して、通電部3の腐食または漏電を惹き起こすおそれがある。
そこで、本実施形態においては、保持板4の一方の面4cから下側に突出した通電部3の突出部分3aをエポキシ樹脂5aで封止するとともに、保持板4の他方の面4dから上側に突出した部分にあっては、保持板4の他方の面4dと保持板4の被取付面(回路基板22の下面22a)の間の部分をエポキシ樹脂5bで封止して、通電部3とオフガスとの接触を阻止して、通電部3をオフガスから完全に遮断している。
このように、通電部3をオフガス(被検出ガス)から遮断すれば、燃料電池から排出されるオフガスのように多量の水および水蒸気が含まれている場合であっても、通電部3の腐食または漏電を防止して、安定した感度を継続して保持することができ、信頼性が高く、寿命の長いガスセンサを得ることができる。
【0023】
続いて、本発明の変形例について説明する。
図5は、本発明の変形例に係る保持板の上側の構成を説明するための斜視図である。図5に示すように、保持板4の上面には、保持板4を貫通するピン状の通電部3が突出している。そして、この通電部3の周囲を取り囲むようにして、絶縁部材としてのエポキシ樹脂5bがリング状に塗布されている。
一方、保持板の上側には、前記実施形態と同様に、保持板4の上面4dに対面して、保持板4の被取付面である回路基板22の下面22aが配置される。そして、保持板4の上面4dと回路基板22の下面22aとがエポキシ樹脂5bを介して密着して固定することで、通電部3を封止することができる。
このように、通電部3の周囲を取り囲むように絶縁部材5を配設しても、通電部3とオフガスとを遮断することができる。要するに、通電部3がオフガスから遮断されるように通電部3を封止する構造であればよい。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、ガスセンサの通電部をリング状に形成された保持板に貫通させて構成したが、これに限定されるものではなく、保持板を設けなくともよいし、保持板はリング状のものに限定されることもない。
また、本発明の実施形態では、水素ガス濃度を検出するガスセンサを示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、NOX,SOX、硫化水素、一酸化炭素などであってもよい。また、本実施形態では、検出部と回路部が近接(一体)となっているが、検出部と回路部が分離され、検出部と回路部とを絶縁ケーブルで接続する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るガスセンサの取付状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガスセンサの取付状態を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガスセンサの通電部の封止構造を示す図1の部分拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るガスセンサの検出部を模式的に示す図1の部分拡大図である。
【図5】本発明の変形例に係る保持板の上側の構成を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ガスセンサ
2 検出部
2a 検出素子
2b 補償素子
3 通電部
4 保持板
5 封止材
11 オフガス流通管
11a 取付座
11b 貫通孔
20 回路部
21 ケース
22 回路基板
22a 下面(保持板の被取付面)
23 取付ボルト
30 ガス導入部
31 ガス検知室
32 筒状部
33 周壁部
34 撥水フィルタ
35 シールリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出ガス内に設置され、前記被検出ガスを検出する検出部と、
前記検出部からの出力を処理する回路部と前記検出部とを電気的に接続するための通電部と、を有するガスセンサであって、
前記通電部の前記被検出ガス内に位置する部分が絶縁部材で封止されたことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記通電部は、保持板を貫通したピン状に形成され、
前記検出部は、前記保持板の一方の面側において前記通電部に接続され、
前記保持板の他方の面は、前記保持板の被取付面に対面し、
前記他方の面と前記被取付面の間の部分と、前記一方の面側から突出した前記通電部の突出部分とが、前記絶縁部材で封止されたことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記絶縁部材は、エポキシ系樹脂からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−153737(P2006−153737A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346822(P2004−346822)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】