説明

ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム及びその製造方法

【課題】硬化したオルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層または酸化ケイ素層が接着性良く形成されており透明性、ガスバリアー性等が優れた硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ヒドロシリル化反応により架橋させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、有機官能基、重合性有機官能基が重合して生成した有機基、ヒドロシリル基またはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、該硬化オルガノポリシロキサン層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層または酸化ケイ素層が形成されている、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域で透明な硬化したオルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されておりガスバリアー性等が優れた硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等に、種々の高分子フィルムを基板とするフィルム型光学素子が用いられはじめている。さらに、これらディスプレイの薄型化、軽量化を進める上で、フィルム型光学素子の重要性は増している。ペーパー型ディスプレイが近年話題になっているが、高分子フィルムなくしては達成されない技術である。
【0003】
高分子フィルムは高分子材料の最も得意とする技術のひとつであり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性高分子フィルムを2軸延伸して透明化したフィルム、および、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の非晶性高分子のフィルムが主体である。これら高分子はいずれも熱可塑性高分子であり、分子量および分子量分布を調節することによって容易に自立性のフィルムを製造することができる。
【0004】
一方、架橋型高分子のフィルムは、ポリイミドフィルム以外に自立性のフィルムを市場で入手することは困難であり、多くの場合、然るべき基板上に形成されて実用に供されている。架橋型高分子は、低分子化合物或いは低分子量オリゴマーを架橋させて形成させるものであるから、架橋の際に生じる収縮、架橋によって発生する内部応力等のため、フィルムを形成することは困難であることが多い。しかし、架橋構造ゆえに、高温時に熱可塑性樹脂に見られるメルトフローが起きないため、ガラス転移温度以上でも極端な変形が起こらないという利点がある。
【0005】
架橋反応により硬化したオルガノポリシロキサン樹脂が耐熱性、光学的透明性に優れていることは周知であり、硬化したオルガノポリシロキサン樹脂の示す光学特性の一つに複屈折が小さいという特徴が挙げられる。小さい複屈折は、画像に関わる光学材料では重要な性質であり、光記録の読み取りエラーを低減する上でも重要な性質である。また、硬化したオルガノポリシロキサン樹脂フィルムは平坦性に優れるという特徴がある。
【0006】
近年、特に有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ用には、フィルム型光学素子が注目されているが、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ用のフィルム型光学素子は、水蒸気や酸素などに触れて性能が劣化しないように、フィルム基板に高度のガスバリアー性が求められている。
【0007】
例えば、特開平8−224825、US2003/0228475A1には、プラスチックフィルム上に酸化珪素を主成分とする薄膜を形成したガスバリアー性フィルムが開示されている。特許第3859518号(特開2003−206361)には、樹脂基材上に2種の窒化酸化珪素層を形成した透明水蒸気バリアフィルムが開示されている。特開2004−276564、US2003/0228475A1には、プラスチックフィルムなどの樹脂基材上に窒化酸化珪素層を形成したガスバリアー性積層材が開示されている。特開2006−123306には、プラスチックフィルム面に、ポリオルガノシルセスキオキサンを主成分とする樹脂層を積層し、該樹脂層上に、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、二酸化ケイ素のいずれかの無機化合物層を真空成膜法で形成してなるガスバリアー性積層体が開示されている。
【0008】
しかし、いずれも基材が熱可塑性樹脂フィルムであるため、耐熱性が劣り、複屈折が大きいという問題がある。そこで、本発明者らは、WO2005/111149A1に開示されているようなヒドロシリル化反応により硬化したオルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成してみたが、酸化窒化ケイ素(酸化窒化珪素膜)が均一に付着せず、水蒸気バリアー性などのガスバリアー性に劣ることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−224825号公報
【特許文献2】US2003/0228475A1
【特許文献3】特許第3859518号公報
【特許文献4】特開2004−276564号公報
【特許文献5】特開2006−123306号公報
【特許文献6】WO2005/111149A1
【0010】
そこで、本発明者らは、可視光領域で透明であり、耐熱性が優れた硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルム上に、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層(透明無機物膜)が均一に形成され、該透明無機物層(透明無機物膜)が該フィルムに良好に接着しているという、透明性と耐熱性とガスバリアー性が優れた硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムを開発すべく鋭意研究した結果、かかるガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムと、かかるガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムの製造方法を発明するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、可視光領域で透明であり、耐熱性が優れ、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層(透明無機物膜)が硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムに良好に接着することにより高いガスバリアー性を示す硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルム、および、かかるガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、
「[1] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[2] 有機官能基が酸素含有有機官能基であることを特徴とする、[1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[3] 酸素含有有機官能基がアクリル官能基、エポキシ官能基またはオキセタニル官能基であることを特徴とする、[2]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[3-1] アクリル官能基がアクリロキシ官能基であることを特徴とする、[3]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[4] アクリル官能基がアクリロキシアルキル基またはメタクリロキシアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であることを特徴とする、[3]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[5] 平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂が、
式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位および式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位、または、式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることを特徴とする、[1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[6] オルガノポリシロキサン樹脂が、平均シロキサン単位式(2) :[X(3-b)R1bSiO1/2]v[R2SiO3/2]w
(式中、X 、R1、R2、bは[5]に記載したとおりであり、0.8<w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3) :
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y[SiO4/2]z
(式中、X、R1、R2、bは[5]に記載したとおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で示されることを特徴とする、[5]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。」により達成される。
【0013】
また、この目的は、
「[7] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
有機官能基を有する硬化性オルガノシランもしくはその組成物または有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物をコーティングして硬化させることにより、有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
ついで、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、[1]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[8] 有機官能基を有する硬化性オルガノシランもしくはその組成物が縮合反応硬化性であり、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンが縮合反応硬化性であり、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、縮合反応硬化性またはヒドロシリル化反応硬化性であることを特徴とする、[7]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[9] 有機官能基が酸素含有有機官能基であることを特徴とする、[7]または[8]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[10] 酸素含有有機官能基が、アクリル官能基、エポキシ官能基またはオキセタニル官能基であることを特徴とする、[9]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[10-1] アクリル官能基がアクリロキシ官能基であることを特徴とする、[10]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[11] アクリル官能基がアクリロキシアルキル基またはメタクリロキシアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であることを特徴とする、[10]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[12] 酸化窒化ケイ素層の形成は、反応性イオンプレーティング法によることを特徴とする、[7]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。」により達成される。
【0014】
また、この目的は、
「[13] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[14] 重合性有機官能基が酸素含有重合性有機官能基であり、有機基が酸素含有有機基であることを特徴とする、[13]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[15] 酸素含有重合性有機官能基がアクリル官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基またはアルケニルエーテル官能基であり、酸素含有有機基がカルボニル基またはエーテル結合を有することを特徴とする、[14]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[15-1] アクリル官能基がアクリロキシ官能基またはアクリルアミド官能基であることを特徴とする、[15]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[16] アクリル官能基がアクリロキシアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリルアミドアルキル基またはメタクリアミドアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であり、アルケニルエーテル官能基がビニルオキシアルキル基であり、酸素含有有機基がカルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合またはエーテル結合を有することを特徴とする、[15]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[17] 平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂が、
式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位および式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位、または、式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることを特徴とする、[13]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[18] オルガノポリシロキサン樹脂が、平均シロキサン単位式(2) :[X(3-b)R1bSiO1/2]v[R2SiO3/2]w
(式中、X 、R1、 R2、bは[17]に記載したとおりであり、0.8<w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3) :
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y[SiO4/2]z
(式中、X 、R1、 R2、bは[17]に記載したとおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で示されることを特徴とする、[17]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。」により達成される。
【0015】
また、この目的は、
「[19] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンをコーティングし、
該重合性有機官能基同士の重合により該オルガノポリシロキサンを架橋させて硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
ついで、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、[13]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[20] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物をコーティングし、
該重合性有機官能基同士を重合するとともに該架橋基同士を反応させて該硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより、有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
ついで、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、[13]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[21] 重合性有機官能基が酸素含有重合性有機官能基であり、有機基が酸素含有有機基であることを特徴とする、[19]または[20]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[22] 酸素含有重合性有機官能基がアクリル官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基またはアルケニルエーテル官能基であり、酸素含有有機基がカルボニル基またはエーテル結合を有することを特徴とする、[21]記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[22-1] アクリル官能基がアクリロキシ官能基またはアクリルアミド官能基であることを特徴とする、[22]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[23] アクリル官能基がアクリロキシアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリルアミドアルキル基またはメタクリアミドアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であり、アルケニルエーテル官能基がビニルオキシアルキル基であり、酸素含有有機基がカルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合またはエーテル結合を有することを特徴とする、[22]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[24] 酸化窒化ケイ素層の形成は、反応性イオンプレーティング法によることを特徴とする、[19]または[20]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。」により達成される。
【0016】
また、この目的は、
「[25] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
ヒドロシリル基またはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[26] 平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂が、
式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位および式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位、または、式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることを特徴とする、[25]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
[27] オルガノポリシロキサン樹脂が、平均シロキサン単位式(2) :[X(3-b)R1bSiO1/2]v[R2SiO3/2]w
(式中、X 、R1、 R2、bは[26]に記載したとおりであり、0.8<w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3) :
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y[SiO4/2]z
(式中、X 、R1、 R2、bは[26]に記載したとおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で示されることを特徴とする、[26]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。」により達成される。
【0017】
また、この目的は、
「[28] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと(b)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と(c)ヒドロシリル化反応触媒からなり、成分(b)中のヒドロシリル基と成分(a)中のアルケニル基のモル比が1.05以上であるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物をコーティングし、
硬化させることによりヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、[25]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[29] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
縮合反応硬化性オルガノシラン、縮合反応硬化性オルガノシラン組成物、縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンまたは縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物をコーティングし、硬化させることによりシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、[25]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[30] 酸化窒化ケイ素層の形成は、反応性イオンプレーティング法によることを特徴とする、[28]または[29]に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
[31] (A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり、可視光領域で透明であるヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、
反応性イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。」により達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムは、可視光領域で透明である硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層(透明無機物膜)が、有機官能基、重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基、ヒドロシリル基またはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を介して形成されているので、透明無機物膜層が均一に形成され、該樹脂フィルムに良好に接着、密着しており、ガスバリアー性が優れている。本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムは、空気、水蒸気、窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、アルゴンガスなど種々のガスの遮断性に優れており、耐久性に優れている。
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムの製造方法によると、上記ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムを簡易に確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、その上に酸化窒化ケイ素層が形成されたガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施態様1〜実施態様3のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、有機官能基、重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基、ヒドロシリル基またはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、該硬化オルガノポリシロキサン層上に酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする。
【0021】
なお、成分(A)と成分(B)を成分(C)存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルムは、詳しくは独立フィルムである。ガラス板、金属板、セラミック板のような基板上にコーティングされたフィルムではなく、独立状態で存在するフィルムである。ガラス、金属、セラミックのようなガス遮断性材料上に硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム層が形成されている場合は、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することは無意味である。
【0022】
成分(A)は、成分(C)の作用により、その不飽和脂肪族炭化水素基が成分(B)中のケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)と付加反応して架橋し硬化する。
【0023】
平均シロキサン単位式(1)中のRは、炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合している。炭素原子数1〜10の一価の炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、1−プロぺニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、1−ヘキセニル基等の炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基、特にはアルケニル基が例示される。
【0024】
成分(A)において、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基は、1分子中に平均1.2個以上存在する。硬化性の点で、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基は、1分子中に平均1.5個以上存在することが好ましく、平均2.0個以上存在することがより好ましい。
成分(B)が1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物である場合は、成分(A)が成分(B)と付加反応して硬化するためには、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に3個以上有する分子を含まなければならない。
成分(A)が炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に2個有する場合は、
成分(A)が成分(B)と付加反応して硬化するためには、成分(B)は1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有する分子を含む必要がある。
成分(A)は、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に3個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂や、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂が主体である必要があるが、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に1個有するオルガノポリシロキサン樹脂を含有してもよい。
【0025】
平均シロキサン単位式(1)において、aは平均0.5<a<2の範囲の数である。aはオルガノポリシロキサン樹脂中のケイ素原子1個当たりのRの平均数を意味している。
平均シロキサン単位式(1)において、平均a=2であると、オルガノポリシロキサンはジオルガノポリシロキサンであり、直鎖状または環状であるので、aは平均2より小さい。aが平均2より小さくなるにしたがって、オルガノポリシロキサン樹脂分子の分岐度が大きくなるが、オルガノポリシロキサン樹脂と言えるためには、aは、平均1.7以下が好ましい。aは平均0.5以上であるが、平均1を下回ると無機性が大きくなるので、平均1.0以上が好ましい。
【0026】
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂は、硬化物の特性の点で、
式[X(3-b)R1bSiO1/2(式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0, 1または2である)で示されるシロキサン単位、および、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位から構成されていることが好ましい。また、式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0, 1または2である)で示されるシロキサン単位、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることが好ましい。
【0027】
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂は、硬化物の特性、特には耐熱性の点で、平均シロキサン単位式(2) :[X(3-b)R1bSiO1/2 ]v[R2SiO3/2]w (式中、X、R1、 R2、bは上記どおりであり、0.80≦w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3) :
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y[SiO4/2]z (式中、X 、R1、 R2、bは上記どおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で表されるものが好ましい。これらのオルガノポリシロキサン樹脂は2種以上を併用してもよい。
【0028】
Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、ビニル基、1−プロぺニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基が例示されるが、ヒドロシリル化反応性、製造容易性の観点からビニル基が好ましい。
【0029】
R1 とR2は、X以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、前述したRからXを除外したものである。
R1 とR2として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が例示されるが、オルガノポリシロキサン樹脂の耐熱性、製造容易性の観点からメチル基とフェニル基が好ましい。硬化オルガノポリシロキサン樹脂の熱特性の観点から、分子中の全一価炭化水素基の少なくとも50モル%はフェニル基であることが好ましい。
【0030】
平均シロキサン単位(2)および平均シロキサン単位式(3)中の[X(3-b)R1bSiO1/2 ]単位としてMe2ViSiO1/2, MePhViSiO1/2, MeVi2SiO1/2が例示され、R2SiO3/2単位としてMeSiO3/2, PhSiO3/2が例示される(ここで、Meはメチル基であり、Phはフェニル基であり、Viはビニル基であり、以下において同様である)。
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂は、さらにR2SiO2/2単位を含有することができ、R2SiO2/2単位としてMe2SiO2/2, MeVi SiO2/2, MePhSiO2/2が例示される。
【0031】
成分(B)である1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物は、成分(C)の作用により、成分(A)中のケイ素原子結合不飽和脂肪族炭化水素基、特にはアルケニル基と付加反応して架橋し硬化させる。
成分(B)は、シリル化炭化水素、オルガノシラン、オルガノシロキサンオリゴマー、オルガノポリシロキサン等のいずれであってもよい。これらはいずれも1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有するが、オルガノシロキサンオリゴマーやオルガノポリシロキサンは、1分子中に平均2個以上のケイ素結合水素原子を有することが好ましい。
【0032】
その分子構造について特に限定されないが、高強度の硬化物を生成するためには、全ケイ素原子結合基の5モル%以上が芳香族炭化水素基であることが好ましく、10モル%以上が芳香族炭化水素基であることがより好ましい。5モル%未満であると、硬化物の物性、熱特性が十分でないことがある。
【0033】
1価芳香族炭化水素基としてフェニル基、トリル基、キシリル基が例示されるが、フェニル基が好ましい。芳香族炭化水素基は2価芳香族炭化水素基、例えばフェニレン基であってもよい。1価芳香族炭化水素基以外の有機基としては、前記したアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0034】
成分(B)の具体例として、ジフェニルジハイドロジェンシラン、1,3-ビス(ジメチルハイドロジェンシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルハイドロジェンシリル)ベンゼン等のケイ素原子結合水素原子を2個有するオルガノシランやシリル化炭化水素;式(HMePhSi)2O、(HMe2SiO)2SiPh2、(HMePhSiO)2SiPh2、(HMe2SiO)2SiMePh、(HMe2SiO)(SiPh2)(OSiMe2H)、(HMe2SiO)3SiPhまたは(HMePhSiO)3SiPhで示されるオルガノシロキサンオリゴマー;(PhSiO3/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(PhSiO3/2),(Me2SiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(PhSiO3/2),(MeSiO3/2)および(MeHSiO1/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(PhSiO3/2)および(MeHSiO2/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂、(Me2HSiO1/2),(MePh2SiO1/2)および(SiO4/2)の各単位からなるオルガノポリシロキサン樹脂が挙げられる。
【0035】
さらには、(MePhSiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(Me2SiO2/2),(MePhSiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(MePhSiO2/2),(MeHSiO2/2)および(Me3SiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(MePhSiO2/2),(MeHSiO2/2)および(Me2HSiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(PhHSiO2/2)および(Me3SiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(MeHSiO2/2)および(MePh2SiO1/2)の各単位からなる直鎖状オルガノポリシロキサン、(PhHSiO2/2)単位のみからなる環状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0036】
これらの有機ケイ素化合物は2種以上を併用してもよい。これらの有機ケイ素化合物の製法は、公知あるいは周知であり、例えば、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノクロロシランのみの加水分解縮合反応、あるいは、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノクロロシランとケイ素原子結合水素原子を有しないオルガノクロロシランの共加水分解縮合反応により製造することができる。
【0037】
成分(C)であるヒドロシリル化反応触媒は、周期律表第8属の金属、その化合物、中でも白金および白金化合物が好ましい。これには微粒子状白金、塩化白金酸、白金ジオレフィン錯体、白金ジケトン錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金フォスフィン錯体が例示される。その配合量は、成分(A)と成分(B)の合計重量に対し、金属重量で好ましくは0.05ppm〜300ppmの範囲であり、より好ましくは0.1ppm〜50ppmの範囲である。この範囲未満では、架橋反応が十分進行しないことがあり、この範囲を越えるとむだであり、残存金属により光学特性が低下することがあるからである。
【0038】
上記成分(A)、成分(B)、成分(C)に加え、常温でのヒドロシリル化反応、架橋反応を抑制して可使時間を長くするために、ヒドロシリル化反応遅延剤を配合することが好ましい。具体例として、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;メチル(トリス(1,1−ジメチル−2−プロピニロキシ))シラン、ジメチル(ビス(1,1−ジメチル−2−プロピニロキシ))シラン等のアルキニルシラン;ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ビス(2−メトキシ−1−メチルエチル)マレエート等の不飽和ジカルボン酸エステル;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン等の有機アミン化合物;ジフェニルホスフィン、ジフェニルホスファイト、トリオクチルホスフィン、ジエチルフェニルホスホナイト、メチルジフェニルホスフィナイト等の有機ホスフィン化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。ヒドロシリル化反応遅延剤の配合量は、上記ヒドロシリル化反応触媒に対して重量比で1〜10000となる量が好ましい。
【0039】
上記の必須成分以外に、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムに所望の特性を付与するために、成分(A)、成分(B)および成分(C)からなる硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない限り、硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物に一般に配合されている各種の添加剤を含んでもよい。例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムに高い光学的透明性が要求されないときには、一般的なフィラーである補強性シリカフィラー(例えば、フュームドシリカ、コロイダルシリカ)、アルミナ等の無機微粒子を含有せしめて、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムの強度を向上させることができる。無機粒子の含有量は、目的、用途に応じて異なり、簡単な配合試験により決めることができる。
【0040】
なお、無機粒子を含有する場合であっても、当該粒子の粒径を調節することによって硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの透明性を保持することができる。粒子添加による不透明化は添加粒子による光散乱に起因するため、粒子を構成する材料の屈折率によっても異なるが、概ね入射光波長の1/5〜1/6以下の直径(可視光領域では80から60nmに相当する)の粒子であれば散乱を抑制して硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの透明性を維持することができる。光散乱の原因として粒子の二次凝集も大きな要因であり、二次凝集を抑制するために、表面処理を施した粒子を含有させてもよい。
【0041】
本発明の硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルム製造用の硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物は、フタロシアニン系色素、蛍光染料、蛍光顔料等の染料・顔料等も含有することができる。特に、本発明における硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムは、可視光領域に特定の吸収帯を有しないので、可視光を吸収して光励起によって所定の機能を発現する添加剤を含有せしめて機能化することが可能である。
【0042】
本発明における硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムは、前記硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物を基板上に塗布して未硬化フィルムを形成する工程;前記未硬化フィルムを架橋して硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムを得る工程;次いで、前記硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムを前記基板から剥離する工程により製造することができる。
【0043】
成分(A)、成分(B)、成分(C)を混合すると、常温でもヒドロシリル化反応が進行してゲル化し、さらには架橋して硬化することがあるので、上述したヒドロシリル化反応遅延剤を適宜含有せしめることが好ましい。成分(A)や成分(B)が常温で液状でない場合や、液状であっても高粘度である場合は、適切な有機溶媒に溶解させておくことが好ましい。そのような有機溶媒としては、架橋時の温度が約200℃に達することもありうることから、沸点が200℃以下であり、成分(A)や成分(B)を溶解し、ヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定されない。
【0044】
好適な有機溶媒として、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;THF等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが例示される。有機溶媒の使用量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)の合計量100重量部当たり、例えば1重量部〜300重量部の範囲であるが、この範囲に限定されるものではない。
【0045】
まず、成分(A)、成分(B)、成分(C)の混合物;成分(A)、成分(B)、成分(C)、ヒドロシリル化反応遅延剤の混合物、あるいはこれら混合物の有機溶媒溶液を、基板上にコーティングして未硬化フィルムを形成する。この場合、コーティング性の面から、当該混合物の粘度は1×103Pa・s以下が好ましく、1×102Pa・s以下がより好ましい。
【0046】
ここで使用する基板は、表面が平滑であり、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの剥離性がよければ特に限定されるものではない。成分(A)、成分(B)、成分(C)、ヒドロシリル化反応遅延剤、有機溶媒に対して安定であり、かつ、未硬化フィルムの架橋反応時の温度環境下に耐性を有するものが好ましい。好ましい基板材料として、ガラス、石英、セラミック、グラファイト等の無機材料;スチール、ステンレススチール、アルマイト、ジュラルミン等の金属材料;有機溶媒に不溶であり、有機溶媒の沸点でも安定な高分子材料、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレートが例示される。
【0047】
未硬化フィルムの架橋(硬化)は、室温放置、あるいは室温より高い温度に加熱することにより行う。未硬化フィルムが有機溶媒を含有しているときは、まず風乾するか、室温より少し高い温度に保つことにより、有機溶媒を揮発させておくことが好ましい。架橋(硬化)のための加熱温度は、例えば、40℃以上200℃以下である。加熱態様は必要に応じて適宜調整することが可能である。例えば、短時間の複数の加熱を繰り返してもよいし、長時間の連続的な単一条件の加熱を行ってもよい。
【0048】
基板上で架橋により生成した硬化オルガノポリシロキサン樹脂層は、基板から剥離することにより硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなる独立フィルムとなる。剥離手段は、当該技術分野で周知の剥離手段でよく、例えば、ドクターブレード、真空吸引等の機械的な剥離手段がある。硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムの厚みは、用途に応じて適宜変更すればよく、高分子フィルムとして典型的な5〜300μmの厚みのみならず、それ以上の厚みであってもよい。
【0049】
このようにして製造された硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルムは、独立フィルムである。
ガラス板、金属板、セラミック板のような基板上にコーティングされたフィルムではなく、独立した状態で存在する。なお、独立フィルムは、セルフサポーテイングフィルム(self-supporting film)、あるいはアンサポーテッドフィルム(unsupported film)とも称される。
【0050】
上記の硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムは、可視光領域に特定の光吸収帯を有さず、400nmにおいて85%以上の光透過率であり、また、500〜700nmの波長範囲で88%以上の光透過率を具備する。上記の硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムは、溶融状態で応力を印加して製造されるものではないので、高分子鎖の配向の問題が存在しない。したがって、複屈折は無視できる程度に小さい。
【0051】
上記の硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムは、成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基と成分(B)中のケイ素原子結合水素原子間のヒドロシリル化反応による架橋反応により得られるものである。このようなヒドロシリル化架橋反応では、架橋に伴い低分子量の副生物が発生しないので、通常の熱硬化性樹脂にみられる縮合型架橋反応に比べて、架橋に伴うフィルムの体積収縮は小さく抑えられる。このため、ヒドロシリル化架橋反応により得られる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しく独立フィルムでは、フィルム中の内部応力も小さい。したがって、内部応力に起因する歪の発生が抑止される。このことは、フィルムの光学的均一性の向上および強度の向上にも好ましく寄与する。
【0052】
また、上記の硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しく独立フィルムは、300℃まで加熱してもフィルム形状を維持し、且つ、重量変化もみられない。また、加熱後の機械的特性にも優れており、機械的特性は加熱前後でほとんど変化しない。したがって、上記の硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しく独立フィルムは、ポリカーボネート等の汎用エンジニアリングプラスチック並みの高耐熱性を有しているので、透明無機物層の形成時に高温に曝されることのあるガスバリアー性フィルムの基材として好適である。
【0053】
本発明の実施態様1のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする。
【0054】
有機官能基は硬化オルガノポリシロキサン層を構成しているオルガノポリシロキサン中のケイ素原子の一部もしくは全部に結合している。有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は少数のシラノール基、ヒドロシリル基および/またはケイ素原子結合加水分解性基を有していてもよい。これらの基は有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成するための有機官能基を有する硬化性オルガノシランもしくは硬化性オルガノポリシロキサンに由来する。
【0055】
有機官能基は、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、酸素含有有機官能基が好ましく、炭素,水素および酸素の各原子からなる有機官能基、炭素,水素,酸素および窒素の各原子からなる有機官能基がより好ましい。これら酸素含有有機官能基はカルボニル基、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、エーテル結合(C-O-C)などの極性結合を有するものがさらに好ましい。硬化オルガノポリシロキサン層がヒドロシリル化反応により形成される場合は、ヒドロシリル化反応を阻害しないものが好ましい。有機官能基の好ましい例として、アクリル官能基とエポキシ官能基とオキセタニル官能基が挙げられる。アクリル官能基の一種ということができるクロトニル官能基、シンナモイル官能基も挙げられる。なお、アクリル官能基はアクリロイル官能基とも称され、代表例は式CH2=CHCO−で示される。
【0056】
好ましいアクリル官能基として、アクリロキシ官能基およびアクリルアミド官能基が挙げられる。
アクリロキシ官能基の好ましい例として、3−アクリロキシプロピル基のようなアクリロキシアルキル基(CH2=CHCOOR−、式中Rはプロピレン基のようなアルキレン基)、3−メタクリロキシプロピル基のようなメタクリロキシアルキル基(CH2=C(CH3)COOR−、式中Rはプロピレン基のようなアルキレン基)が挙げられる。
アクリルアミド官能基の好ましい例として、3−N−メチル−N−アクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−アクリルアミドアルキル基(CH2=CHCON(R)−、式中Rはメチル基のようなアルキル基)及び3−N−メチル−N−メタクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−メタクリルアミドアルキル基(CH2=CHCON(R)−、式中Rはメチル基のようなアルキル基)が挙げられる。それらのアルキレン基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0057】
エポキシ官能基の好ましい具体例として、エポキシメチル基、2−エポキシエチル基、β−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基のようなグリシドキシアルキル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基のようなエポキシシクロヘキシルアルキル基が挙げられる。オキセタニル官能基の好ましい具体例として、2−オキセタニルブチル基、3−(2−オキセタニルブチルオキシ)プロピル基が挙げられる。
【0058】
上記のアクリル官能基は、紫外線、電子線、ガンマー線などの高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射により重合させることができるので、重合性有機官能基でもある。また、上記のアクリル官能基は、加熱により重合するので、重合性有機官能基でもある。
重合性を有する有機官能基として、その他にアルケニルエーテル官能基(例えば、ビニロキシアルキル基、アリロキシアルキル基、アリロキシフェニル基)がある。このアルケニル基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0059】
上記のエポキシ官能基は、光重合開始剤存在下で紫外線照射により開環重合させることができるので、重合性有機官能基でもある。
エポキシ官能基およびオキセタニル官能基は、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン、イミダゾール、有機ジカルボン酸、有機ジカルボン酸無水物などの触媒により開環重合するので、重合性有機官能基でもある。
【0060】
有機官能基として、その他に、水酸基を含む有機官能基、オキシアルキレン結合を有する有機官能基が挙げられる。
水酸基を含む有機官能基として、3−ヒドロキシプロピル基のようなヒドロキシアルキル基が例示される。オキシアルキレン結合を有する有機官能基として、アルコキシアルキル基、ヒドロキシ(エチレンオキシ)プロピル基、ヒドロキシポリ(エチレンオキシ)プロピル基のようなヒドロキシポリ(アルキレンオキシ)アルキル基が例示される。
【0061】
酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、アミノ基を含む有機官能基も使用可能であり、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)3−アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−シクロヘキシルアミノプロピル基、N−ベンジルアミノプロピル基が例示される。
【0062】
有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルム上に、有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体もしくはその組成物をコーティングし、硬化させることにより形成することができる。
有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体もしくはその組成物は、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン自体もしくはその組成物が好ましく、ケイ素原子結合縮合反応性基間の縮合反応(例えば、脱アルコール縮合反応)により硬化させることができる。
【0063】
また、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体もしくはその組成物をコーティングし、硬化させることにより形成することができる。
有機官能基を有する硬化性オルガノシロキサン自体もしくはその組成物は、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシロキサン自体もしくはその組成物が好ましく、ケイ素原子結合縮合反応性基間の縮合反応(例えば、ケイ素原子結合アルコキシ基間の脱アルコール縮合反応)により硬化させることができる。
有機官能基を有する硬化性オルガノシロキサン組成物は、有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノシロキサン組成物も好ましく、ケイ素原子結合アルケニル基とヒドロシリル基間の付加反応により硬化させることができる。
【0064】
有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンは、有機官能基を1分子中に1個以上有すればよいが、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、複数個有することが好ましい。有機官能基は、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンにC-Si結合で結合した全有機基の100モル%であってもよい。例えば、後述する合成例2では43.4モル%である。
【0065】
(1)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシランとして、1個の有機官能基と3個のケイ素原子結合加水分解性基を有する湿気硬化型のオルガノシランが例示される。
(2)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン組成物として、1個の有機官能基と3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと縮合反応触媒とからなる硬化性組成物;1個の有機官能基と2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと、3個または4個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと、縮合反応触媒とからなる硬化性組成物が例示される。
【0066】
(3)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンとして、1分子中に1個以上の有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有する湿気硬化型のオルガノポリシロキサンが例示される。
(4)有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、1分子中に1個以上の有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる硬化性組成物;1分子中に1個以上の有機官能基と1個もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる硬化性組成物が例示される。
【0067】
ここで、有機官能基を有する硬化性オルガノシラン、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン組成物、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物における有機官能基は、前述したとおりである。
【0068】
有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン及び有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンにおける縮合反応性基は、シラノール基およびケイ素原子結合加水分解性基である。ケイ素原子結合加水分解性基として、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシロキシ基、ケトキシム基、アルキルアミノ基が例示されるが、アルコキシ基が好ましく、加水分解により生成したアルコールの揮散性の点でメトキシ基とエトキシ基がより好ましい。
【0069】
ケイ素原子結合加水分解性基が湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、加熱するか、加水分解縮合反応触媒を併用することが必要である。加水分解縮合反応触媒として、テトラアルコキシチタン、アルコキシチタンキレート、テトラアルコキシジルコニウム、トリアルコキシアルミニウム、有機スズ化合物(例えば、ジアルキルスズジカルボン酸塩、テトラカルボン酸スズ塩)、有機アミンが例示される。
上記の有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン組成物、有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過性を損なわない限り補強性シリカ微粉末を含有してもよい。
【0070】
1分子中に1個の有機官能基と3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランは、式:YR4Si(OR5)3(式中、YR4は有機官能基であり、R4は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランが代表的である。ここで、有機官能基は、前述したとおりである。炭素原子数1〜6のアルキレン基として、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が例示される。R5として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示される。
【0071】
有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランの具体例として、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシランがある。
【0072】
1分子中に1個の有機官能基と1もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランは、式:YR4SiR6(OR5)2または式:YR4Si(R6)2(OR5)(式中、YR4は有機官能基であり、R4は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基またはフェニル基である)で示される有機官能基を有するオルガノジアルコキシシランまたはオルガノモノアルコキシシランが代表的である。
【0073】
その具体例として、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシランがある。
【0074】
1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランは、式:R7Si(OR5)3(式中、R7は炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基またはフェニル基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランが代表的である。
具体例として、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン)、フェニルトリアルコキシシラン(例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン)、ビニルトリアルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン)がある。
【0075】
1分子中に有機官能基を有せず4個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランとして、テトラアルコキシシラン(例えば、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン)が例示される。
【0076】
1分子中に1個以上の有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンとして、式:YR4Si(OR5)3(式中、YR4は有機官能基であり、R4は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物、式:YR4Si(OR5)3で示される有機官能基を有するオルガノトリアルコキシシランと両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度2〜50)の部分縮合反応物(ケイ素原子結合アルコキシ基を4個保有)が例示される。
【0077】
1分子中に1個以上の有機官能基と1もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンとして、式:YR4SiR6(OR5)2(式中、YR4は有機官能基であり、R4は炭素原子数1〜6のアルキレン基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、R6は炭素原子数1〜6のアルキル基またはフェニル基である)で示される有機官能基を有するオルガノジアルコキシシランと両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度2〜50)の部分縮合反応物(ケイ素原子結合アルコキシ基を2個保有)が例示される。
【0078】
1分子中に有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンとして、式:R7Si(OR5)3(式中、R7は炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基またはフェニル基であり、R5は炭素原子数1〜6のアルキル基である)で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物、式:R7Si(OR5)3で示される疎水性のオルガノトリアルコキシシランと両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度2〜50)の部分縮合反応物(ケイ素原子結合アルコキシ基を4個保有)が例示される。
【0079】
上記の有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティングし、常温放置または加熱により硬化させることができる。湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、段落[0069]で説明したように加熱するか、加水分解縮合反応触媒を併用することが必要である。
【0080】
有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、
(1)1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシラン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランの組合せを除く)と、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物、
(2)1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの組合せを除く)と、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物が例示される。
【0081】
さらに、
(3)1分子中に有機官能基を有せず、2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの組合せを除く)、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物、
【0082】
(4)1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(ただし、2個のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの組合せを除く)、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物が例示される。
【0083】
上記の有機官能基を有するオルガノポリシロキサン、有機官能基を有するオルガノシランにおける有機官能基は、前述したとおりである。
上記のオルガノポリシロキサン中のアルケニル基として、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示されるが、ビニル基が好ましい。
【0084】
1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、(3−グリシドキシプロピル)シロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー、3−メタクリロキシプロピルシロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー、3−メタクリロキシプロピルシルセスキオキサン−ビニルシルセスキオキサンコポリマー、3−グリシドキシプロピルシルセスキオキサン−ビニルシルセスキオキサンコポリマーがある。
【0085】
1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、メチルトリ(ジメチルビニルシロキシ)シラン;両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサンコポリマーがある。その他に、成分(A)の具体例と同様なものがある。
【0086】
1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランの具体例は、成分(B)の具体例の他に、ケイ素原子結合水素原子を2個有するアルキルシランやシリル化脂肪族炭化水素がある。
【0087】
1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンは、成分(B)の具体例の他に、式(HMe2Si)2O、(HMe2SiO)2SiMe2、(HMe2SiO)(SiMe2)2(OSiMe2H)、(HMe2SiO)3SiMeで示されるメチルハイドロジェンシロキサンオリゴマー、環状メチルハイドロジェンシロキサンオリゴマー(重合度4〜6);メチルトリ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン、テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シラン;
両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度2〜30)、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー(重合度2〜30)、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(重合度3〜30)が例示される。
【0088】
これらはいずれも1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有するが、オルガノシロキサンオリゴマーやオルガノポリシロキサンは、1分子中に平均2個以上のケイ素結合水素原子を有することが好ましい。
【0089】
1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマーがある。
これらはいずれも1分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を有するが、1分子中に平均2個以上のケイ素結合水素原子を有することが好ましい。
【0090】
前記ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物におけるケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルケニル基のモル比は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランもしくはオルガノポリシロキサンとが十分に架橋して硬化層を形成するのに十分なモル比であればよい。1:1より大が好ましいが、0.5〜1であってもよい。
【0091】
前記ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物におけるヒドロシリル化反応触媒は、成分(C)と同様なものが例示され、同様な量を使用することが好ましい。
【0092】
上記の有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、常温でもヒドロシリル化反応するので、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有することが好ましい。
ヒドロシリル化反応遅延剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)からなるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン樹脂組成物用のヒドロシリル化反応遅延剤と同様なものが例示され、同様な量を使用することが好ましい。
上記の有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過性を損なわない限り補強性シリカ微粉末を含有してもよい。
【0093】
有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティングし、常温放置または加熱して硬化させる。該組成物が、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有しており、熱硬化性である場合は、加熱して硬化させることが必要である。
【0094】
本発明の実施態様2のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする。
なお、重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基は、硬化オルガノポリシロキサン層を構成している異なるオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合している。
【0095】
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基は、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層から選択される透明無機物層の接着性、密着性の点で、酸素含有有機基が好ましく、炭素,水素および酸素の各原子からなる酸素含有有機基、炭素,水素,酸素および窒素の各原子からなる酸素含有有機基がより好ましい。これら酸素含有有機基はカルボニル基、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、エーテル結合(C-O-C)などの極性結合を有するものがより好ましい。
【0096】
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンの硬化性の点で、重合性有機官能基同士を連鎖重合に供する場合は、該オルガノポリシロキサンは1分子中に重合性有機官能基を2個以上有する分子を含まなければならず、逐次重合に供する場合は、該オルガノポリシロキサンは1分子中に重合性有機官能基を3個以上有する分子を含まなければならない。重合性有機官能基は、重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンにC-Si結合で結合した全有機基の100モル%であってもよい。例えば、後述する合成例3では33.3モル%である。
【0097】
これら重合性有機官能基は、架橋点となり、当該オルガノポリシロキサンは硬化可能となる。かかる重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基同士の重合により形成された硬化皮膜には、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層から選択される透明無機物層が接着、密着しやすい。透明無機物層の接着性、密着性の点で、重合性有機官能基は酸素含有重合性有機官能基が好ましく、炭素,水素および酸素の各原子からなる重合性酸素含有有機官能基、炭素,水素,酸素および窒素の各原子からなる重合性有機官能基がより好ましい。これら酸素含有重合性有機官能基はカルボニル基、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、エーテル結合(C-O-C)などの極性結合を有するものがさらに好ましい。
【0098】
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルム上に、重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンをコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させて硬化させることにより形成することができる。このようなオルガノポリシロキサン間で、これら重合性有機官能基同士が重合すると、重合して生成した有機基が架橋鎖となり、これらオルガノポリシロキサンは網目状(ネットワーク状)となり硬化する。
【0099】
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサン中の重合性有機官能基は、重合容易性の点で、前記したアクリル官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基およびアルケニルエーテル官能基が好ましい。アクリル官能基の一種ということができるクロトニル官能基、シンナモイル官能基も挙げられる。なお、アクリル官能基はアクリロイル官能基とも称され、代表例は式CH2=CHCO−で示される。
【0100】
好ましいアクリル官能基として、アクリロキシ官能基およびアクリルアミド官能基が挙げられる。
アクリロキシ官能基の好ましい例として、3−アクリロキシプロピル基のようなアクリロキシアルキル基(CH2=CHCOOR−、式中Rはプロピレン基のようなアルキレン基)、3−メタクリロキシプロピル基(CH2=C(CH3)COOR−、式中Rはプロピレン基のようなアルキレン基)のようなメタクリロキシアルキル基が挙げられる。
アクリルアミド官能基の好ましい例として、3−N−メチル−N−アクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−アクリルアミドアルキル基(CH2=CHCON(R)−、式中Rはメチル基のようなアルキル基)及び3−N−メチル−N−メタクリルアミドプロピル基のようなN−アルキル−N−メタクリルアミドアルキル基(CH2=CHCON(R)−、式中Rはメチル基のようなアルキル基)が挙げられる。それらのアルキレン基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0101】
エポキシ官能基の好ましい具体例として、エポキシメチル基、2−エポキシエチル基、β−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基のようなグリシドキシアルキル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基のようなエポキシシクロヘキシルアルキル基が挙げられる。オキセタニル官能基の好ましい具体例として、2−オキセタニルブチル基、3−(2−オキセタニルブチルオキシ)プロピル基が挙げられる。アルケニルエーテル官能基の好ましい具体例として、ビニロキシアルキル基、アリロキシアルキル基、アリロキシフェニル基が挙げられる。このアルケニル基は炭素原子数2〜6が好ましい。
【0102】
重合性有機官能基同士がアクリル官能基やアルケニルエーテル官能基(例えばビニロキシアルキル基)であると、紫外線、電子線、ガンマー線などの高エネルギー線ないし活性エネルギー線照射により重合させることができる。また、重合性有機官能基同士がアクリル官能基であると加熱により重合させることができる。加熱重合の場合にはラジカル重合開始剤を併用してもよい。重合性有機官能基がエポキシ官能基およびオキセタニル官能基であると、光重合開始剤存在下で紫外線照射により開環重合させることができる。また、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン、イミダゾール、有機ジカルボン酸、有機ジカルボン酸無水物などの触媒の併用により開環重合させることができる。
【0103】
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキサンコポリマー、3−メタクリロキシプロピルポリシルセスキオキサン、3−メタクリロキシプロピルシルセスキオキサン-フェニルシルセスキオキサンコポリマー、3−メタクリロキシプロピルシルセスキオキサン-メチルシルセスキオキサンコポリマー;両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、3−グリシドキシプロピルポリシルセスキオキサン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルポリシルセスキオキサン、3−グリシドキシプロピルシルセスキオキサン-フェニルシルセスキオキサンコポリマー、3−グリシドキシプロピルシルセスキオキサン-メチルシルセスキオキサンコポリマーがある。
【0104】
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しく独立フィルム上に、一分子中に1個以上の重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物をコーティングし、該重合性有機官能基同士を重合させるとともに該架橋性基同士を反応させて、該硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物を硬化させることにより形成することもできる。
【0105】
重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物の硬化機構は、縮合反応が好ましく、重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化機構は、縮合反応およびヒドロシリル化反応が好ましい。架橋性基として、縮合反応用にシラノール基とケイ素原子結合加水分解性基が例示され、ヒドロシリル化反応用にアルケニル基とヒドロシリル基が例示される。ケイ素原子結合加水分解性基として、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシロキシ基、ケトキシム基、アルキルアミノ基が例示されるが、アルコキシ基が好ましく、加水分解により生成したアルコールの揮散性の点でメトキシ基とエトキシ基がより好ましい。
【0106】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンとして、1分子中に1個以上の重合性有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有する湿気硬化型のオルガノポリシロキサンが例示される。
【0107】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基と架橋性基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、(1)1分子中に1個以上の重合性有機官能基と3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる硬化性組成物;
(2)1分子中に1個以上の重合性有機官能基と1個もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、重合性有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサンと、縮合反応触媒とからなる硬化性組成物が例示される。
【0108】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物として、
(1) 1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランと、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物、
(2) 1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒とからなる組成物が例示される。
【0109】
さらには、
(3) 1分子中に重合性有機官能基を有せず、2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒とからなる組成物、
(4) 1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応触媒からなる組成物が例示される。
【0110】
上記の(1)〜(4)のような組成物は、常温でもヒドロシリル化反応するので、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有することが好ましい。
ヒドロシリル化反応遅延剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)からなる組成物用のヒドロシリル化反応遅延剤と同様なものが例示され、同様な量を使用することが好ましい。
【0111】
前記組成物におけるケイ素原子結合水素原子とケイ素原子結合アルケニル基のモル比は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシランもしくはオルガノポリシロキサンとが十分に架橋して硬化層を形成するのに十分なモル比であればよい。1:1より大が好ましいが、0.5〜1であってもよい。
【0112】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基と2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマー、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサンコポリマーがある。
【0113】
1分子中に1個以上の有機官能基と2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンの具体例として、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−メタクリロキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3−グリシドキシプロピル)シロキサンコポリマー、両末端ジメチル(3−グリシドキシプロピル)シロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマーがある。
【0114】
1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシラン、1分子中に重合性有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、1分子中に重合性有機官能基を有せず、2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの具体例は、既に説明したものと同様である。
【0115】
上記の重合性有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び、上記の重合性有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化物の光透過性を損なわない限り補強性シリカ微粉末を含有してもよい。
【0116】
上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムに薄くコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させるとともに、硬化性オルガノポリシロキサン同士で架橋させることにより硬化させることができる。重合性有機官能基同士の重合は、前記したとおりである。硬化性オルガノポリシロキサン自体の架橋機構として縮合反応が例示される。
【0117】
1分子中に1個以上の重合性有機官能基を有する複数の硬化性オルガノポリシロキサン間で、これら重合性有機官能基同士が重合し、硬化性オルガノポリシロキサン同士で架橋すると、これら複数のオルガノポリシロキサンは網目状(ネットワーク状)となり硬化する。
【0118】
上記の重合性有機官能基を有する縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させるとともに、常温放置または加熱によりケイ素原子結合加水分解性基間の縮合反応により硬化させることができる。湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、前述したように加熱するか、加水分解縮合反応触媒を併用することが必要である。
【0119】
上記の重合性有機官能基を有するヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティングし、重合性有機官能基同士を重合させるとともに、常温放置または加熱によりヒドロシリル化反応させて硬化させることができる。ヒドロシリル化反応遅延剤を含有しており、熱硬化性である場合は、加熱して硬化させることが必要である。重合性有機官能基同士を重合させる条件は、段落[0058]〜[0059]で説明したとおりである。
【0120】
なお、上記の有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物が、常温で、高粘度の液状や、固形状であるときは、有機溶剤に溶解して薄層コーティング可能にすることが好ましい。ただし、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティング後、低温加熱や温風吹付けにより有機溶剤を揮散させてから、硬化させることが好ましい。
【0121】
そのための有機溶剤は、ケイ素原子結合水素原子の加水分解を引き起こさず、200℃以下の加熱により揮発しやすいものが好ましい。好適な有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;THF、ジオキサン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンが例示される。
【0122】
これら有機溶剤は、上記の有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、または、その組成物を溶解して薄層コーティング可能にする量を使用すればよい。
【0123】
上記の有機官能基を有する硬化性オルガノシラン自体、その組成物;上記の有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物;上記の重合性有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン自体、その組成物を、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム表面へコーティングする方法として、刷毛塗り、ブレードコーティング、ローラコーティング、スピンコーティング、噴霧、ディップコーティングが例示される。
【0124】
有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層の厚み、および、重合性有機官能基同士が重合して形成された有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層の厚みは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム表面の微細な凹凸の凸部をも覆うのに十分な厚みであればよく、薄いほど好ましい。いわゆるプライマー層としての厚みが好ましい。
【0125】
本発明の実施態様3のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10の不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、ヒドロシリル基またはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする。
【0126】
このヒドロシリル基は、硬化オルガノポリシロキサン層を形成しているオルガノポリシロキサン中の1部のケイ素原子に結合しており、シラノール基は、硬化オルガノポリシロキサン層を形成しているオルガノポリシロキサン中の1部のケイ素原子に結合している。
ヒドロシリル基とシラノール基の両方が、硬化オルガノポリシロキサン層を形成しているオルガノポリシロキサン中の1部のケイ素原子に結合していてもよい。ヒドロシリル基および/またはシラノール基の他に、ケイ素原子結合加水分解性基が、硬化オルガノポリシロキサン層を形成しているオルガノポリシロキサン中の1部のケイ素原子に結合していてもよい。
【0127】
ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、(a)1分子中に平均1.2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと(b)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)を有する有機ケイ素化合物と(c)ヒドロシリル化反応触媒からなり、成分(b)中のヒドロシリル基と成分(a)中のアルケニル基のモル比が1.0より大であるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物をコーティングし、硬化させることにより形成することができる。
アルケニル基は、1分子中に平均1.2以上存在する。硬化性の点で、アルケニル基は、1分子中に平均1.5個以上存在することが好ましく、平均2.0個以上存在することがより好ましい。
【0128】
成分(b)が1分子中に2個のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物である場合は、成分(a)が成分(b)と付加反応して硬化するためには、炭素原子数2〜10のアルケニル基を1分子中に3個以上有する分子を含まなければならない。
成分(a)がアルケニル基を1分子中に2個有する場合、成分(a)が成分(b)と付加反応して硬化するためには、成分(b)は1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有する分子を含む必要がある。
成分(a)は、アルケニル基を1分子中に3個以上有するオルガノポリシロキサン、あるいはアルケニル基を1分子中に2個以上有するオルガノポリシロキサンが主体である必要があるが、アルケニル基を1分子中に1個有するオルガノポリシロキサンを含有してもよい。
【0129】
成分(b)中のヒドロシリル基と成分(a)中のアルケニル基のモル比は、透明無機物層の接着性、密着性の点で、好ましくは1.05以上1.5以下であり、より好ましくは1.1以上1.5以下である。
もっとも、ケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)はヒドロシリル化反応以外の原因により消失する恐れがあるので、硬化後にケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)が残存していることを確認することが必要である。確認手段として赤外分光光度計によるヒドロシリル基の吸収ピークの検出がある。
【0130】
成分(a)は、成分(A)と同様なものが例示され、さらには前記した1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(段落[0085]参照)と同様なものが例示される。
成分(b)は、成分(B)と同様なものが例示され、さらには前記した1分子中に有機官能基を有せず2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(段落[0087]参照)と同様なものが例示される。成分(c)は、成分(C)と同様なものが例示される。
【0131】
成分(a)と成分(b)と成分(c)とからなるヒドロシリル化反応硬化組成物は、常温でもヒドロシリル化反応するので、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有することが好ましい。
ヒドロシリル化反応遅延剤は、成分(A)、成分(B)、成分(C)からなる組成物用のヒドロシリル化反応遅延剤と同様なものが例示され、同様な量を含有すればよい。
【0132】
成分(a)と成分(b)と成分(c)とからなるヒドロシリル化反応硬化オルガノポリシロキサン組成物、成分(a)と成分(b)と成分(c)とヒドロシリル化反応遅延剤とからなるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティングし、常温放置または加熱により硬化させることができる。
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム表面へコーティングする方法として、刷毛塗り、ブレードコーティング、ローラコーティング、スピンコーティング、噴霧、ディップコーティングが例示される。
【0133】
なお、上記のヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、常温で、高粘度の液状や、固形状であるときは、有機溶剤に溶解して薄層コーティング可能にすることが好ましい。ただし、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティング後、低温加熱や温風吹付けにより有機溶剤を揮散させてから、硬化させることが好ましい。
ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層の厚みは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム表面の微細な凹凸の凸部をも覆うのに十分であればよく、薄いほど好ましい。いわゆるプライマー層としての厚みが好ましい。
【0134】
シラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランをコーティングし、加水分解縮合反応触媒存在下または不在下で加水分解縮合することにより形成することができる。また、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランと1分子中に有機官能基を有せず1個もしくは2個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランの混合物をコーティングし、加水分解縮合反応触媒存在下または不在下で加水分解縮合することにより形成することができる。また、該オルガノシランの代わりに、1分子中に有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン自体またはその組成物を使用することによっても、形成することができる。これらオルガノシラン、オルガノポリシロキサンおよび加水分解縮合反応触媒は段落[0074]〜[0078]および段落[0069]で説明したものと同様である。
【0135】
1分子中に有機官能基を有せず3個のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノシランまたはその組成物、ならびに、1分子中に有機官能基を有せず3個以上のケイ素原子結合加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン自体またはその組成物は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティングし、常温放置または加熱により硬化させることができる。湿気により加水分解縮合しない場合や、加水分解縮合しにくい場合は、段落[0069]で説明したように加熱するか、加水分解縮合反応触媒を併用することが必要である。
【0136】
常温で、高粘度の液状や、固形状であるときは、有機溶剤に溶解して薄層コーティング可能にすることが好ましい。ただし、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムにコーティング後、低温加熱や温風吹付けにより有機溶剤を揮散させてから、硬化させることが好ましい。
【0137】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム表面へコーティングする方法として、刷毛塗り、ブレードコーティング、ローラコーティング、スピンコーティング、噴霧、ディップコーティングが例示される。
【0138】
シラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層の厚みは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム表面の微細な凹凸の凸部をも覆うのに十分であればよく、薄いほど好ましい。いわゆるプライマー層としての厚みが好ましい。透明無機物層の接着性、密着性の点で、シラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン中のシラノール基含有量は、全ケイ素原子基に対して0.5〜40モル%が好ましく、1〜30モル%がより好ましい。すなわち、シラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合水酸基とケイ素原子の平均モル比が、0.005〜0.40となる量が好ましく、0.01〜0.30となる量がより好ましい。
【0139】
有機官能基、重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基、ヒドロシリル基またはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層は、製造工程で付着した硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム表面の微小なごみ(異物)を覆い、窪みを埋めるので、その上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成すると、ボイドや、クラックの発生が抑制された良質な酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)及び酸化ケイ素層(酸化珪素膜)からなる群から選択される透明無機物層(透明無機物膜)を形成することができる。
【0140】
本発明の実施態様4のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり、可視光領域で透明であるヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、反応性イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することによって製造されるものである。
上記成分(A)〜成分(C)、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、実施態様1〜実施態様3のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムについて説明したとおりであり、成分(A)は請求項4、請求項5で規定するものが好ましい。
【0141】
ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比を1.05〜1.50として硬化させることにより形成することができる。もっとも、ケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)はヒドロシリル化反応以外の原因により消失する恐れがあるので、硬化後にケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基)が残存していることを確認することが必要である。確認手段として赤外分光光度計によるヒドロシリル基の吸収ピークの検出がある。
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムがヒドロシリル基を有するので、該フィルム表面に反応性イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成すると、良好な酸化窒化ケイ素層を形成可能となる。
【0142】
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムにおける硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムは、耐熱性を有し、吸水性に乏しい架橋物であるために、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素または酸化ケイ素の蒸着時、特には真空蒸着(真空成膜)時に低分子量成分が蒸発して成膜に障害をきたすということがない。そのため種々の真空蒸着(真空成膜)方法を施してその表面にガスバリアー性無機物層を形成するのに好適である。
【0143】
すなわち、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムの温度が300℃以下である条件下で酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素または酸化ケイ素を蒸着、好ましくは真空蒸着(真空成膜)することによって、400nm〜800nmの波長領域において特定の吸収帯を有さない硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルム上に酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素または酸化ケイ素の蒸着層を備える、ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムを製造することができる。この300℃以下という温度条件は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなるフィルム、詳しくは独立フィルムの変形や熱分解を抑制するために必要であり、より好適な温度は250℃以下である。
【0144】
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム、詳しくは独立フィルムでは、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、有機官能基、重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基、ヒドロシリル基もしくはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が積層され、その上に酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)または酸化ケイ層(酸化珪素膜)が形成されている。
また、ヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、反応性イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成されている。
そのため、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)および酸化ケイ層(酸化珪素膜)は均一であり、各層間はよく接着、密着しており容易に剥離しない。なお、酸化窒化ケイ素(酸化窒化珪素)、窒化ケイ素(窒化珪素)、酸化ケイ素(酸化珪素)ともに非晶質である。
【0145】
酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)、窒化ケイ素層(窒化珪素膜)および酸化ケイ層(酸化珪素膜)は、ともに光透過性が優れているので、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの光透過性を損なわないが、酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)が90%以上の光透過性を発揮するためには、酸素分率(O/(O+N))が、およそ40%〜80%であることが必要である。ここで、酸素量は、XPSで測定したSi2pの105eV近傍のSiOに由来するピーク強度とSi2pの103〜104eV近傍のSiOに由来するピークとの比から求めることができる。
酸化窒化ケイ素(SiO)におけるx及びyの値の好ましい範囲は、酸素分率(O/(O+N))が、およそ40%〜80%となる数である。
上記3層のうちでは高いバリアー性に透明性を併せ持つという点で酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)が最も優れている。
【0146】
酸化窒化ケイ素は、酸化珪素と窒化珪素の複合体であり、酸化珪素の含有量が多いと透明性が増し、窒化珪素の含有量が多いとガスバリアー性が増大する。なお、酸化窒化ケイ素、酸化窒化珪素は、窒化酸化ケイ素、窒化酸化珪素とも称され、単にSiONと称されることもある。
【0147】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成する方法は、蒸着法であり、そのうちでも反応性物理蒸着法が好ましい。そのうちでも、反応性イオンプレーティング法、ついで、反応性スパッタリング法が好ましい。これらの方法によると300℃以下といった比較的低い温度で蒸着できるので、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムが熱の影響を殆ど受けない。
【0148】
イオンプレーティング法は、チャンバー内の蒸着物質を入れた坩堝と基板の間にプラズマを作って蒸着物質をイオン化し、基板に負の電圧をかけて、高速に加速したイオン化蒸着物質を基板に激突させて蒸着物質の薄膜を形成するという方法である。イオンプレーティング法は、直流放電励起法と高周波励起法が代表的である。
【0149】
そのうちでも、反応性イオンプレーティング法は、チャンバー内に反応性ガスを導入しておき、イオン化した蒸着物質と反応性ガスとの化合物の薄膜を形成するという方法である。酸化窒化珪素膜を形成するには、(1)蒸着物質として酸化珪素または二酸化珪素を使用し、チャンバー内に窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アンモニアなどの窒素源となるガスを導入する方法、(2)蒸着物質として窒化珪素を使用し、チャンバー内に酸素ガスを導入する方法、(3)蒸着物質として珪素を使用し、チャンバー内に窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アンモニアなどの窒素源となるガスと酸素ガスを導入する方法などがある。反応性イオンプレーティング法は基板への密着性がよく緻密な酸化窒化珪素膜を形成できるという長所がある。
【0150】
反応性イオンプレーティング法の具体例として、特開2004−50821に記載されている方法がある。この方法では、成膜室下部にハースを具備し、成膜室側部にプラズマガンを具備し、成膜室上部に基板を配置したイオンプレーティング装置を使用する。ハースに挿入した酸化ケイ素ロッドをプラズマガンからのプラズマビームにより加熱して酸化ケイ素を蒸発させ、蒸発した酸化ケイ素をイオン化し、成膜室内に導入した窒素ガスと反応させて酸化窒化珪素とし、基板表面に付着させて酸化窒化珪素膜を形成している。実施例では、放電電流を120Aとし、キャリアーガスをArガスとし、反応ガスをNガスとし、成膜時圧力を3mTorr(0.4Pa)とし、基板温度は室温である。
【0151】
反応性スパッタリング法は、イオンガンやプラズマ放電で発生した不活性ガスイオンを電界で加速してターゲット(蒸着物質)に照射して表面の元素や化合物を弾き出し、反応性ガスと反応させつつ化合物を基板上に堆積させるという方法である。酸化窒化珪素膜を形成するには、(1)酸化珪素または二酸化珪素をターゲットとし、チャンバー内にアルゴンガスと窒素ガスを導入する方法、(2)窒化珪素(Si3N4)をターゲットとし、チャンバー内にアルゴンガスと酸素ガスを導入する方法、(3)珪素(Si)をターゲットとし、チャンバー内にアルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスを導入する方法などがある。装置として2極スパッタリング装置やマグネトロンスパッタリング装置を用い、放電方式は、直流法と高周波が代表的である。
反応性スパッタリング法は、元素組成のコントロール性がよく、緻密な酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成できる。
【0152】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素(酸化窒化珪素膜)を形成する別の方法として、化学気相蒸着法(CVD)があり、そのうちのプラズマCVD法、触媒CVD法および光CVD法が好ましい。反応させるガスは、モノシランガス(SiH)と、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、アンモニアガスなどの窒素源となるガスと、水素ガスが代表的である。
【0153】
プラズマCVD法で酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成するには、例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムが配備された真空容器内にモノシランガスとアンモニアガスと窒素ガスを導入し、内圧を0.1〜10Torr(13.3〜1330Pa)に保ち、高周波電解を加えるなどしてプラズマを発生させ、導入ガスがこのプラズマ内で励起されてできた成膜種を、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に堆積させる。
【0154】
触媒CVD法で酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成するには、例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムが配備された真空容器内にモノシランガスとアンモニアガスと水素ガスを導入し、タングステン線を約1700℃に加熱して導入したガスを分解・活性化し、約70℃に保持した硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成する。
【0155】
光CVD法で酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)を形成するには、例えば、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムが配備された真空容器内にモノシランガスとアンモニアガスと窒素ガスを導入し、内圧を1〜100Torr(133〜13300Pa)に保ち、ガスに紫外線またはレーザ光を照射して励起し、励起されてできた成膜種を、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に堆積させる。
【0156】
酸化窒化ケイ素(SiO)層(窒化酸化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの片面だけでなく両面に形成してもよい。また、複数回蒸着作業(成膜作業)をしてもよい。
【0157】
酸化窒化ケイ素(SiO)層(窒化酸化珪素膜)の厚さは、必要とするガスバリアー性や用途にもよるが、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10nm〜200nmの範囲がより好ましい。酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)が厚過ぎるとガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの柔軟性が損なわれ、酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)自体にクラックが入りやすくなる。また、薄すぎると傷発生源との接触により酸化窒化ケイ素層(窒化酸化珪素膜)が破壊しやすくなり、ガスバリアー性が低下しやすくなる。
【0158】
窒化ケイ素層(窒化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、真空蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、反応性物理蒸着法などのPVD法により形成でき、プラズマCVD法、熱CVD法等のCVD法でも形成することができる。
【0159】
RFマグネトロンスパッタリング法により窒化珪素(Si)層を形成する具体例として、特開2004-142351に記載されている方法がある。
スパッタリング装置として、例えばバッチ式スパッタリング装置(アネルバ(株)製、SPF−530H)を使用する。チャンバー内に基材フィルムを載置し、60%の焼結密度を有する窒化珪素をターゲット材としてチャンバー内に搭載し、このターゲットと基材フィルムとの距離(TS距離)を50mmに設定する。
次に、チャンバー内を、到達真空度2.5×10−4Paまで減圧し、チャンバー内にアルゴンガスを流量20sccmで導入し、チャンバー内圧力を0.25Paに保ち、RFマグネトロンスパッタリング法により、投入電力1.2kWで基材フィルム上に窒化ケイ素層(窒化珪素膜)を形成する。
【0160】
プラズマCVD法により窒化珪素(Si)層を形成する具体例として、特開2000-212747に記載されている方法がある。基材フィルムを平行平板型プラズマCVD装置(アネルバ(株)製PE401)のチャンバー内の下部電極(アース電極)上に装着し、チャンバー内を真空度0.1mTorr(0.0133Pa)まで減圧しておく。次に、原料ガスとして、ヘキサメチルジシラザンを加熱して気化し、チャンバー内に供給し、窒素ガスをチャンバー内に供給する。次に、200W、13.56MHzの電力を上部電極とアース電極の間に印加することによりプラズマを生成し、チャンバー内圧力を50mTorr(6.5Pa)に保って基材フィルム上に窒化ケイ素層(窒化珪素膜)を形成する。
【0161】
膜厚は5〜500nm、より好ましくは10〜300nmの範囲で適宜設定する。
窒化ケイ素層(窒化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの片面だけでなく両面に形成してもよい。また、複数回蒸着作業(成膜作業)をしてもよい。
【0162】
酸化ケイ素層(酸化珪素膜)は、真空蒸着法、スッパタリング法、イオンプレーティング法などのPVD法(物理蒸着法)、あるいはCVD法(化学蒸着法)により硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの片面または両面上に形成することができる。
真空蒸着法においては、蒸着材料としてSiO単独、SiとSiOの混合物、SiとSiOの混合物、あるいはSiOとSiOの混合物を用い、また、加熱方式として、抵抗加熱、高周波誘導加熱、あるいは電子ビーム加熱を用いる。
【0163】
スパッタリング法においては、ターゲット材料として、SiO単体、SiとSiOの混合物、SiとSiOの混合物、あるいはSiOとSiOの混合物を用い、また、スパッタリング方式として、直流放電、交流放電、高周波放電、イオンビーム法などを用いる。反応性スパッタリング法では反応性ガスとして、酸素ガスまたは水蒸気を用いる。
【0164】
酸化珪素膜における酸化珪素(SiO)は、Si,SiO,SiO等から成っており、これらの比率は作成条件で異なる。
酸化ケイ素(SiO)におけるxの値の好ましい範囲はx=0.1〜2であり、x=2の場合は二酸化ケイ素(SiO)である。
【0165】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上の酸化ケイ層(酸化珪素膜)の厚さは、ガスバリアー性の点から5〜800nmが好ましく、70〜500nmがより好ましい。酸化ケイ素層(酸化珪素膜)は、硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの片面だけでなく両面に形成してもよい。また、複数回蒸着作業(成膜作業)をしてもよい。
【実施例】
【0166】
本発明の実施例と比較例を掲げる。
合成例中、メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂の重量平均分子量と分子量分布は、ゲルパーミエーション(GPC)により測定した。GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC-8020ゲルパーミエーション(GPC)に屈折率検出器と東ソー株式会社製のTSKgel GMHXL-Lカラム2個を取り付けたものを使用した。試料は2重量%クロロホルム溶液にして溶出曲線の測定に供した。検量線は重量平均分子量既知の標準ポリスチレンを用いて作成した。重量平均分子量は標準ポリスチレン換算して求めた。
【0167】
メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂の29Si−NMRスペクトルと1H−NMRスペクトルは、Bruker ACP-300 Spectrometerにより測定した。
メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂の赤外吸収スペクトルは、Nicolet Nexus670分光光度計を使用して、透過モードで測定した。
【0168】
酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)の表面粗さは、AFM−DI5000 Atomic Force Microscope (略称AFM)を用いて25μmスキャンで観測した。
酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)の厚さは、その切断面をJEOL 2100F透過型電子顕微鏡(略称TEM)にて観察することにより測定した。
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの光透過性は、島津分光光度計3100PCを使用して測定した。
【0169】
硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム自体及び酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの水蒸気透過率は、Mocon Permatran−W3−31水蒸気透過測定装置を使用して、Mocon法により測定した。
【0170】
[合成例1]
室温下で、還流冷却管、滴下ロート、温度計、及び撹拌器を備えた四つ口フラスコに、水320mlを入れて撹拌しつつ、これにトルエン340ml、フェニルトリクロロシラン157g、ビニルジメチルクロロシラン20.0g、テトラエトキシシラン20.6gを滴下ロートから45分間かけてゆっくり滴下した。室温にてさらに30分間撹拌後、トルエン層を中性になるまで水で洗浄した。トルエン層を別の一つ口フラスコに移し、固形分濃度が50重量%になるまで、蒸留によりトルエンを除去した。その後、水酸化カリウム130mgを加え、共沸により水を除きながら16時間還流した。
【0171】
反応終了後、水酸化カリウムを少量のビニルジメチルクロロシランで中和後、トルエン層の中性を徹底するため水洗し、次いでトルエン層に乾燥剤を投入して乾燥した。乾燥剤を除去した後、トルエンを減圧下にて除去して、メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂108gを白色の固体として得た。このメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量は2300であり、数平均分子量は1800であった。このメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂について、29SiNMRスペクトルから求めた平均シロキサン単位式は、[ViMe2SiO1/2]0.15[PhSiO3/2]0.76[SiO4/2]0.09 (式中、Viはビニル基を意味し、Meを意味する。1分子中にビニル基は2.2個含まれている)であった。
【0172】
[実施例1]
合成例1のメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂の75重量%トルエン溶液と、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを、後者のケイ素原子結合水素原子対前者のビニル基のモル比が1.2になるよう混合し、充分に撹拌した。その後、白金−1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(白金含有量5重量%)を、上記ポリシロキサンと1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンの混合物の固形分重量に対して白金金属重量で2ppmを添加し、撹拌を継続してキャスト溶液を得た。
【0173】
このキャスト溶液をガラス基板上に流延し、室温で約1時間放置した後、100℃で約2時間加熱してトルエンを揮散させ、150℃で約3時間加熱して硬化させた。その後、室温になるまで放置して冷却し、ガラス基板より硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂を剥離することにより、硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなる独立フィルムを得た。
【0174】
このフィルムは透明であり、厚みは100μmであった。このフィルムの光透過率を測定したところ、400〜700nmでの光透過率は85%以上であった。偏光子を用いてこのフィルムの光透過率を測定したところ、偏光依存性は観測されなかった。また、このフィルムには複屈折が無いことが確認された。IRスペクトルにより、このフィルム表面には、ケイ素原子結合水素原子(ヒドロシリル基、SiH基)が、硬化前の過剰量に相当する量残留していることを確認した。幅1.27cm、長さ5.08cm、厚さ0.25cmの硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂フィルムについて、島津製作所製オートグラフを用いて曲げ強度を測定したところ、ヤング率は1.4GPa、曲げ強度は50MPaであった。
【0175】
このフィルム(幅10cm×長さ10cm×厚さ100μm)の片面上に、反応性イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。なお、成膜材料として酸化ケイ素ロッドを用い、反応性ガスとして窒素ガスを用い、放電電流120A、成膜時圧力5mTorr(0.67Pa)、サイクルタイム2回にて、厚さ100nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)の表面粗さRaは1.32〜1.77nmであった。この酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂フィルムは、400〜700nmでの光透過率が80%以上であり、水蒸気透過率が0.37〜0.56g/m・dayであった。
【0176】
[比較例1]
実施例1で得られた硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなる独立フィルムについて、水蒸気透過率を測定したところ、90〜100g/m・dayであった。
【0177】
[比較例2]
合成例1のメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂と実施例1で使用した1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを用い、後者のケイ素原子結合水素原子対前者のビニル基のモル比を1.0とした他は、実施例1と同様の条件で硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなる独立フィルムを得た。このフィルムは透明であり、厚みは100μmであった。このフィルムの光透過率を測定したところ、400〜700nmでの光透過率は85%以上であった。次に、偏光子を用いてこのフィルムの光透過率を測定したところ、偏光依存性は観測されなかった。また、このフィルムには複屈折が無いことが確認された。IRスペクトルにより、表面にヒドロシリル基(SiH基)が残留していないことを確認した。曲げ試験による物性は実施例1のフィルムと同等であった。
【0178】
このフィルム(幅10cm×長さ10cm×厚さ100μm)の片面上に、実施例1と同様の条件で反応性イオンプレーティング法により、厚さ100nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)の厚みは85nmであり、表面粗さRaは5.5nmであった。400〜700nmでの光透過率は80%以上であった。水蒸気透過率を測定したところ、5.4g/m・dayであった。
【0179】
[合成例2]
フラスコに、コロイダルシリカ水性分散液(日産化学株式会社製、商品名スノーテックス40)65.8gを投入し、室温で撹拌しながら、蒸留水5.0ml、メチルトリメトキシシラン29.2gおよび3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン38.8gの混合物、および、酢酸7.0gを投入した。その後、フラスコ内容物を加熱して55℃まで昇温し、フラスコ内の温度を50〜60℃に保ちながら30分間撹拌した。ついで、20℃まで冷却し、さらに30分間撹拌した。その後、イソプロピルアルコール54.3gを投入して希釈し、硬化触媒としてジラウリン酸ジブチル錫(固形分として6.0g)を徐々に添加した。得られた反応混合物から沈殿物を除去し、2〜3日間室温で放置して熟成した。この熟成した反応混合物をコーティング溶液とした。この熟成した反応混合物はメチル基と3−グリシドキシプロピル基がポリシロキサン中のケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサンからなるものである。
【0180】
[実施例2]
比較例2と同様の条件で、硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなる独立フィルムを得た。このフィルム(幅10cm×長さ10cm×厚さ100μm)の片面上に、合成例2で得たコーティング溶液を1500rpmで30秒間スピンコーティングし、100℃に30分間保持してトルエンを揮散させ、続いて150℃に120分間保持して硬化させた。得られた独立フィルムに、実施例1と同様の条件でイオンプレーティング法により、厚さ100nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)の厚みは85nmであり、表面粗さRaは0.71〜0.93nmであった。この酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、400〜700nmでの光透過率が80%以上であり、水蒸気透過率が0.25から0.26g/m・dayであった。
【0181】
[合成例3]
フラスコに、トルエン80g、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン49.7g、フェニルトリメトキシシラン79.3g、水酸化セシウムの50重量%水溶液1g、メタノール200g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール40mgを投入し、撹拌しながら1時間還流した。この間に250gの溶媒(メタノール)を蒸留により除くと同時に、同量のトルエンを加えた。メタノールと水がほぼ除かれた後、約1時間かけて105℃まで加熱した。室温に冷却後さらにトルエンを加えて約15重量%溶液にし、3gの酢酸を加えて30分間撹拌した。このトルエン溶液を水洗後、孔径1μmのメンブレンフィルターでろ過し、ろ液から、減圧下でトルエンを除去した。
【0182】
こうして得たポリ(フェニル−co−3−メタクリロキシプロピル)シルセスキオキサン40gをプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート60gに溶解した。この溶液に該シルセスキオキサンの3重量%のイルガキュア819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、光硬化開始剤)を加えてコーティング溶液とした。
【0183】
[実施例3]
比較例2と同様の条件で硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなる独立フィルムを得た。このフィルム(幅10cm×長さ10cm×厚さ100μm)の片面上に、合成例3で得たコーティング溶液を2500rpmで30秒間スピンコーティングした。コーティング面に、200WのHg−Xeランプを用いて15分間紫外線照射(照射量30mW/cm)して3−メタクリロキシ基同士を重合させた後、150℃で120分間保持して硬化させた。得られたコーティングフィルムの片面上に、実施例1と同様の条件でイオンプレーティング法により、厚さ100nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。肉眼観察したところ、剥離もなく均一な酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)であった。
【0184】
[実施例4]
合成例1のメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂と実施例1で使用した1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを用い、後者のケイ素原子結合水素原子対前者のビニル基のモル比を1.0とした他は、実施例1と同様の条件で硬化メチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂からなる独立フィルムを得た。
【0185】
このフィルム(10cm×10cm×100μm)の片面上に、平均単位式[ViMe2SiO1/2]0.25[PhSiO3/2]0.76で示されるメチルフェニルビニルポリシロキサン樹脂のトルエン溶液と、平均単位式[HMeSiO1/2]0.60[PhSiO3/2]0.40で示されるメチルフェニルハイドロジェンポリシロキサン樹脂と、実施例1で使用した白金系触媒からなり、ヒドロシリル基とビニル基のモル比が1.2であるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、実施例1のフィルム作成時と同様に、2500rpmで30秒間スピンコーティングし、150℃で120分保持して硬化させた。得られたコーティングフィルムの片面上に、実施例1と同様の条件で厚さ100nmの酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)を形成した。肉眼観察したところ、剥離もなく均一な酸化窒化ケイ素層(酸化窒化珪素膜)であった。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムは、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、液晶ディスプレイ等の透明電極用のフィルム基板、結晶シリコン太陽電池のバックシート、アモルファズシリコン太陽電池の基板などとして有用である。
本発明のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法は、簡易に精度よくガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムを製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0187】
1:硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム
2:有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層
3:酸化窒化ケイ素層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項2】
有機官能基が、酸素含有有機官能基であることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項3】
酸素含有有機官能基が、アクリル官能基、エポキシ官能基またはオキセタニル官能基であることを特徴とする、請求項2に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項4】
アクリル官能基がアクリロキシアルキル基またはメタクリロキシアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であることを特徴とする、請求項3に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項5】
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂が、
式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位および式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位、または、式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項6】
オルガノポリシロキサン樹脂が、平均シロキサン単位式(2) :[X(3-b)R1bSiO1/2]v[R2SiO3/2]w
(式中、X 、R1、R2、bは請求項5に記載したとおりであり、0.8<w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3) :
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y [SiO4/2]z
(式中、X、R1、R2、bは請求項5に記載したとおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で示されることを特徴とする、請求項5に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項7】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
有機官能基を有する硬化性オルガノシラン組成物もしくはその組成物または有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物をコーティングして硬化させることにより、有機官能基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
ついで、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、請求項1に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
有機官能基を有する硬化性オルガノシランもしくはその組成物が縮合反応硬化性であり、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサンが縮合反応硬化性であり、有機官能基を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物が、縮合反応硬化性またはヒドロシリル化反応硬化性であることを特徴とする、請求項7に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
有機官能基が、酸素含有有機官能基であることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
酸素含有有機官能基が、アクリル官能基、エポキシ官能基またはオキセタニル官能基であることを特徴とする、請求項9に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
アクリル官能基がアクリロキシアルキル基またはメタクリロキシアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であることを特徴とする、請求項10に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
酸化窒化ケイ素層の形成は、反応性イオンプレーティング法によることを特徴とする、請求項7に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項13】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
重合性有機官能基同士が重合して生成した有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項14】
重合性有機官能基が、酸素含有重合性有機官能基であり、有機基が酸素含有有機基であることを特徴とする、請求項13に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項15】
酸素含有重合性有機官能基が、アクリル官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基またはアルケニルエーテル官能基であり、酸素含有有機基がカルボニル基またはエーテル結合を有することを特徴とする、請求項14に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項16】
アクリル官能基がアクリロキシアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリルアミドアルキル基またはメタクリルアミドアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であり、酸素含有有機基がカルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合またはエーテル結合を有することを特徴とする、請求項15に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項17】
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂が、
式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位および式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位、または、式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることを特徴とする、請求項13に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項18】
オルガノポリシロキサン樹脂が、平均シロキサン単位式(2) :[X(3-b)R1bSiO1/2]v[R2SiO3/2]w
(式中、X 、R1、 R2、bは請求項17に記載したとおりであり、0.8<w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3) :
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y[SiO4/2]z
(式中、X 、R1、 R2、bは請求項17に記載したとおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で示されることを特徴とする、請求項17に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項19】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
重合性有機官能基を有するオルガノポリシロキサンをコーティングし、
該重合性有機官能基同士の重合により該オルガノポリシロキサンを架橋させて硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
ついで、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、請求項13に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項20】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
重合性有機官能基と架橋性基を有する硬化性オルガノポリシロキサンもしくはその組成物をコーティングし、
該重合性有機官能基同士を重合するとともに該架橋基同士を反応させて該硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより、有機基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
ついで、該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、請求項13に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項21】
重合性有機官能基が酸素含有重合性有機官能基であり、有機基が酸素含有有機基であることを特徴とする、請求項19または請求項20記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項22】
酸素含有重合性有機官能基がアクリル官能基、エポキシ官能基、オキセタニル官能基またはアルケニルエーテル官能基であり、酸素含有有機基がカルボニル基またはエーテル結合を有することを特徴とする、請求項21に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項23】
アクリル官能基がアクリロキシアルキル基、メタクリロキシアルキル基、アクリルアミドアルキル基またはメタクリルアミドアルキル基であり、エポキシ官能基がグリシドキシアルキル基またはエポキシシクロヘキシルアルキル基であり、酸素含有有機基がカルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合またはエーテル結合を有することを特徴とする、請求項22に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項24】
酸化窒化ケイ素層の形成は、反応性イオンプレーティング法によることを特徴とする、請求項19または請求項20に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項25】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
ヒドロシリル基またはシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層が形成され、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層が形成されていることを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項26】
平均シロキサン単位式(1)で表されるオルガノポリシロキサン樹脂が、
式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位および式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位、または、式[X(3-b)R1bSiO1/2](式中、Xは炭素原子数2〜10の一価不飽和脂肪族炭化水素基であり、R1はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、bは0,1または2である)で示されるシロキサン単位、式[R2SiO3/2](式中、R2はX以外の炭素原子数1〜10の一価炭化水素基である)で示されるシロキサン単位および式[SiO4/2]で示されるシロキサン単位から構成されていることを特徴とする、請求項25に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項27】
オルガノポリシロキサン樹脂が、平均シロキサン単位式(2) :[X(3-b)R1bSiO1/2]v[R2SiO3/2]w
(式中、X 、R1、 R2、bは請求項26に記載したとおりであり、0.8<w<1.0、v+w=1である)、または、平均シロキサン単位式(3) :
[X(3-b)R1bSiO1/2]x[R2SiO3/2]y[SiO4/2]z
(式中、X 、R1、 R2、bは請求項26に記載したとおりであり、0<x<0.4、0.5<y<1、0<z<0.4、x+y+z=1である)で示されることを特徴とする、請求項26に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム。
【請求項28】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
(a)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと(b)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と(c)ヒドロシリル化反応触媒からなり、成分(b)中のヒドロシリル基と成分(a)中のアルケニル基のモル比が1.05以上であるヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物をコーティングし、
硬化させることによりヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、請求項25に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項29】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなる硬化オルガノポリシロキサン樹脂からなり、可視光領域で透明であるフィルム上に、
縮合反応硬化性オルガノシラン、縮合反応硬化性オルガノシラン組成物、縮合反応硬化性オルガノポリシロキサンまたは縮合反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物をコーティングし、硬化させることによりシラノール基を有する硬化オルガノポリシロキサン層を形成し、
該硬化オルガノポリシロキサン層上に、蒸着法により酸化窒化ケイ素層、窒化ケイ素層及び酸化ケイ素層からなる群から選択される透明無機物層を形成することを特徴とする、請求項25に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項30】
酸化窒化ケイ素層の形成は、反応性イオンプレーティング法によることを特徴とする、請求項28または請求項29に記載のガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。
【請求項31】
(A)平均シロキサン単位式:RaSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは炭素原子数1〜10の一価炭化水素基であり、aは平均0.5<a<2の範囲の数である)で表され、炭素原子数2〜10である不飽和脂肪族炭化水素基を1分子中に平均1.2個以上有するオルガノポリシロキサン樹脂と
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有する有機ケイ素化合物
(ただし、成分(B)中のヒドロシリル基と成分(A)中の不飽和脂肪族炭化水素基のモル比が1.05〜1.50)を
(C)ヒドロシリル化反応触媒存在下で架橋反応させてなり、可視光領域で透明であるヒドロシリル基を有する硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルム上に、
反応性イオンプレーティング法により酸化窒化ケイ素層を形成することを特徴とする、
ガスバリアー性硬化オルガノポリシロキサン樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−36577(P2010−36577A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151398(P2009−151398)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【出願人】(500295461)ダウ コーニング コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】