説明

ガス流量検定システム及びガス流量検定ユニット

【課題】圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定でき、測定用タンク内の圧力降下率を一定に維持する。
【解決手段】プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁22と第2ライン遮断弁23と流量制御機器24とを経由しプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスライン2と、共用ガス供給源からのガスを第2ライン遮断弁23と流量制御機器24とを経由し排出すべく、分岐接続された共用ガスライン1とを有し、共用ガスライン1には、共用遮断弁12と測定用タンク13と第1圧力センサ141と圧力調整弁15とを備え、第1ライン遮断弁22及び共用遮断弁12を弁閉したとき、測定用タンク13内におけるガスの圧力降下を第1圧力センサ141により測定し流量制御機器24の流量検定を行うガス流量検定システムにおいて、圧力調整弁15は、該圧力調整弁15の二次側圧力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置におけるプロセスガス等のガス供給システムに使用する流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量を検定するガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス中の成膜装置や乾式エッチング装置等においては、例えばシラン等の特殊ガスや、塩素ガス等の腐食性ガス、及び水素ガスやホスフィン等の可燃性ガス等を使用する。これらのガス流量は、プロセスの良否に直接影響するので、その流量を厳格に管理しなければならない。特に、近年の半導体基板の積層化、微細化に伴い、プロセスガス供給系における信頼性向上の要求が、従来以上に高まっている。
そこで、例えば、特許文献1及び特許文献2に、半導体製造プロセスにおける供給ガスの流量制御技術が開示されている。
特許文献1の技術は、フローモードと非フローモードを交互に作動させ、バッチ的にマスフローコントローラを流れるガス流量を指定流量に調節するため、マスフローコントローラの上流側に遮断弁と基準キャパシティ(測定用タンクに相当)と圧力センサと圧力調整弁と遮断弁とを直列配置したフローラインを設け、基準キャパシティの圧力低下から実流量を決定してマスフローコントローラの設定値を調節する技術である。
【0003】
また、特許文献2の技術は、プロセスガスの流量を正確に算出するため、マスフローコントローラの上流側に遮断弁と蓄熱部を備える既知体積部(測定用タンクに相当)と圧力センサと可変式圧力調整弁とを直列配置し、既知体積部の圧力低下から実流量を算出して指定流量と差異がある場合に可変式圧力調整弁を校正する技術である。そして、既知体積部内の圧力低下を時間関数として測定するとき、ガス温度を一定に維持するために蓄熱部から熱伝導を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−529218号公報
【特許文献2】特表2008−504613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術には、次のような問題があった。
特許文献1、2の技術では、マスフローコントローラの一次側圧力変動が大きいと、マスフローコントローラの流量とタンクから流出する流量とが共に変動する。また、マスフローコントローラの一次側圧力変動が小さいと、マスフローコントローラの流量は変動しないが、タンクから流出する流量が変動する。そのため、マスフローコントローラの一次側圧力を一定にするため、マスフローコントローラの一次側に圧力調整弁を配置している。圧力調整弁を配置することによって、マスフローコントローラの流量変動を抑える効果は有している。
【0006】
ところが、マスフローコントローラの一次側圧力に相当する圧力調整弁とマスフローコントローラ間の圧力は、圧力調整弁とマスフローコントローラ間の容積(「圧力調整弁二次側容積」とも言う。以下同じ)の影響を受けて変動することを、本発明者は発見した。図9は、本発明者の実験結果のグラフである。図9(a)(b)に示すように、ガス流量を50sccmとして、圧力調整弁二次側容積が20ccのときと、150ccのときとで、圧力調整弁とマスフローコントローラ間の圧力(「圧力調整弁二次側圧力」とも言う。以下同じ)を比較すると、圧力調整弁二次側容積が20ccのときより、150ccのときの方が、圧力調整弁二次側圧力が高くなっている。
したがって、例えば、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁とマスフローコントローラ間の配管長さが変更されると、圧力調整弁二次側容積が変化するので、マスフローコントローラの一次側圧力の圧力変動に影響し、結果としてガス流量検定精度が低下する問題があった。
【0007】
また、ガス供給源から供給されるガス流量が変動しても、圧力調整弁二次側圧力は変動することを、本発明者は発見した。図9(b)(c)に示すように、圧力調整弁二次側容積を150ccとして、ガス流量が50sccmのときと、10sccmのときとで、圧力調整弁二次側圧力を比較すると、ガス流量が50sccmのときより、10sccmのときの方が、圧力調整弁二次側圧力が低下している。
したがって、例えば、半導体製造装置の稼働状況が変動してガス供給源から供給されるガス流量が変動しても、マスフローコントローラの一次側圧力の圧力変動に影響し、結果としてガス流量検定精度が低下する問題があった。
【0008】
また、特許文献1、2の技術では、上流側の遮断弁と、基準キャパシティ又は既知体積部(いずれも「測定用タンク」に相当)と、圧力センサと、圧力調整弁とを流路によって直列的に接続している。上流側の遮断弁を弁閉してから、測定用タンクに蓄積されたプロセスガスが流路に流出するとき、遮断弁の弁閉直後は、断熱膨張の影響を受け、流路の途中で圧力センサが測定するガス圧の圧力降下率が、圧力降下開始当初では一定にならない(図4の従来例を参照)。したがって、圧力降下率が略一定になるまでガス流量検定ができず、待ち時間が生じるという問題があった。
この点、特許文献2の技術では、既知体積部(「測定用タンク」に相当)の内外周に蓄熱部を備え、蓄熱部から熱伝導を行うことによって、断熱膨張の影響を回避する工夫がなされている。
しかしながら、既知体積部の内外周に蓄熱部を備えれば、蓄熱部の分、装置全体が大きくなり、装置コストも増加するので好ましくない。また、蓄熱部を既知体積部の内周に設けると、蓄熱部にプロセスガスが残留し、新しいプロセスガスに交換したとき、蓄熱部に残留した旧いガスと混合する不具合がある。また、腐食性の高いガスを使用する場合には、蓄熱部自体の腐食の問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できるガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットを提供することにある。また、別の目的は、測定用タンク内の圧力降下率を一定に維持して、効率的なガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のガス流量検定システムは、次のような構成を有している。
(1)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインと、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、前記プロセスガスラインに分岐接続された共用ガスラインとを有し、
前記共用ガスラインには、共用遮断弁と測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定システムにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御することを特徴とする。
【0011】
(2)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインと、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、前記プロセスガスラインに分岐接続された共用ガスラインとを有し、
前記各プロセスガスラインの第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁との間には、測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、かつ、前記共用ガスラインには、共用遮断弁を備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定システムにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御することを特徴とする。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載するガス流量検定システムにおいて、
前記圧力調整弁又はその下流側に、前記圧力調整弁の二次側圧力を計測する第2圧力センサを備え、
前記圧力調整弁は、前記第1圧力センサからの第1圧力信号と前記第2圧力センサからの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部を有することを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載するガス流量検定システムにおいて、
前記測定用タンクは、前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを上端に載置するマニホールド内に設け、
前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを接続する各流路が前記測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されていることを特徴とする。
(5)(4)に記載するガス流量検定システムにおいて、
前記マニホールドの下端には、前記測定用タンク下端を封止する蓋部材を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のガス流量検定ユニットは、次のような構成を有している。
(6)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、分岐接続された共用ガスラインを有し、
前記共用ガスラインには、共用遮断弁と測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定ユニットにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0014】
(7)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、分岐接続された共用ガスラインを有し、
前記各プロセスガスラインの第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁との間には、測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、かつ、前記共用ガスラインには、共用遮断弁を備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定ユニットにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0015】
(8)(6)又は(7)に記載するガス流量検定ユニットにおいて、
前記圧力調整弁又はその下流側に、前記圧力調整弁の二次側圧力を計測する第2圧力センサを備え、
前記制御手段は、前記第1圧力センサからの第1圧力信号と前記第2圧力センサからの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部を有することを特徴とする。
(9)(6)乃至(8)のいずれか1つに記載するガス流量検定ユニットにおいて、
前記測定用タンクは、前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを上端に載置するマニホールド内に設け、
前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを接続する各流路が前記測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されていることを特徴とする。
(10)(9)に記載するガス流量検定ユニットにおいて、
前記マニホールドの下端には、前記測定用タンク下端を封止する蓋部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
次に、本発明に係るガス流量検定システムの作用及び効果について説明する。
(1)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインと、共用ガス供給源からのガスを第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由して排出すべく、プロセスガスラインに分岐接続された共用ガスラインとを有し、共用ガスラインには、共用遮断弁と測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、第1ライン遮断弁及び共用遮断弁を弁閉したとき、測定用タンク内におけるガスの圧力降下を第1圧力センサによって測定することで流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定システムにおいて、圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御することを特徴とするので、圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できる。
【0017】
具体的には、圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御するので、例えば、共用ガス供給源のガス圧の変動や、測定用タンク内圧力降下(圧力調整弁一次側圧力変動)、圧力調整弁二次側容積の変化、共用ガス供給源から供給されるガス流量の変動等が生じても、圧力調整弁の二次側圧力の変動を確実に低減できる。そして、圧力調整弁の二次側圧力は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の一次側圧力でもあるので、流量制御機器の一次側圧力が安定化する。そのため、流量制御機器から排出されるガス流量と測定用タンクからの流出量が安定する。その結果、測定用タンクの圧力低下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量との間の誤差を低減することができ、ガス流量検定システムの測定精度が向上する。
【0018】
例えば、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁と流量制御機器間の配管長さが変更されると、圧力調整弁二次側容積が変化する。圧力調整弁二次側容積が変化すると、圧力調整弁の二次側圧力も変化しやすいが、圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御しているので、一定に維持することができる。したがって、流量制御機器の一次側圧力を一定に維持できるので、流量制御機器から排出されるガス流量も一定に維持することができる。よって、ガス流量検定時に、測定用タンクの圧力降下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量とが一致して、ガス流量の流量検定精度が向上する。
よって、(1)の発明によれば、圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できるガス流量検定システムを提供することができる。
【0019】
(2)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインと、共用ガス供給源からのガスを第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由して排出すべく、プロセスガスラインに分岐接続された共用ガスラインとを有し、各プロセスガスラインの第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁との間には、測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、かつ、共用ガスラインには、共用遮断弁を備え、第1ライン遮断弁及び共用遮断弁を弁閉したとき、測定用タンク内におけるガスの圧力降下を第1圧力センサによって測定することで流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定システムにおいて、圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御することを特徴とするので、各プロセスガスラインにおける圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できる。
【0020】
具体的には、各プロセスガスラインに備える圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御するので、例えば、各プロセスガス供給源のガス圧の変動や、測定用タンク内圧力降下、圧力調整弁二次側容積の変化、各プロセスガス供給源から供給されるガス流量の変動等が生じても、圧力調整弁の二次側圧力の変動を確実に低減できる。そして、圧力調整弁の二次側圧力は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の一次側圧力でもあるので、流量制御機器の一次側圧力が安定化する。そのため、各プロセスガスラインにおける流量制御機器から排出されるガス流量と測定用タンクからの流出量が安定する。その結果、各プロセスガスラインにおいて、測定用タンクの圧力低下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量との間の誤差を低減することができ、ガス流量検定システムの測定精度が向上する。
【0021】
例えば、あるプロセスガスラインにおいて、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁と流量制御機器間の配管長さが変更されると、そのプロセスガスラインの圧力調整弁二次側容積が変化する。圧力調整弁二次側容積が変化すると、圧力調整弁の二次側圧力も変化しやすいが、圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御しているので、一定に維持することができる。したがって、流量制御機器の一次側圧力を一定に維持できるので、流量制御機器から排出されるガス流量も一定に維持することができる。よって、各プロセスガスラインにおけるガス流量検定時に、測定用タンクの圧力降下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量とが一致して、ガス流量の流量検定精度が向上する。
よって、(2)の発明によれば、各プロセスガスラインにおける圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できるガス流量検定システムを提供することができる。
【0022】
(3)(1)又は(2)に記載するガス流量検定システムにおいて、圧力調整弁又はその下流側に、圧力調整弁の二次側圧力を計測する第2圧力センサを備え、圧力調整弁は、第1圧力センサからの第1圧力信号と第2圧力センサからの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部を有することを特徴とするので、圧力調整弁の一次側圧力が変動しても、圧力調整弁の二次側圧力を一定に維持することができる。
具体的には、圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御するので、圧力調整弁の一次側圧力が変動しても、圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減できる
が、圧力調整弁の一次側圧力と二次側圧力とを直接測定して、両者の圧力差に基づく圧力制御を行うので、圧力調整弁の二次側圧力を、より一層安定して維持することができる。
【0023】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載するガス流量検定システムにおいて、測定用タンクは、第1圧力センサと圧力調整弁とを上端に載置するマニホールド内に設け、第1圧力センサと圧力調整弁とを接続する各流路が測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されていることを特徴とするので、第1圧力センサが測定用タンク内のガス圧を正確に測定することができるとともに、待ち時間が少ない効率的なガス流量の検定ができる。
具体的には、第1圧力センサと圧力調整弁とを接続する各流路が測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されているので、ガス流量検定時に測定用タンク内のガスは、第1圧力センサの流路を経由することなく、圧力調整弁の一次側流路に流出させることができる。そのため、第1圧力センサは、測定用タンク内のガスが圧力調整弁の一次側流路に流出するときに生じる気流の乱れに伴う圧力変動の影響を受けることなく、測定用タンク内に残留するガス圧を正確に測定することができる。
また、測定用タンク内のガス圧は、徐々に低下していくが、ガスは、第1圧力センサの流路を経由しないで圧力調整弁の一次側流路に流出するので、第1圧力センサの計測位置においては、ガスの断熱膨張の影響を受けにくい。そのため、第1圧力センサが計測する測定用タンク内の圧力降下率を一定に維持することができる。したがって、ガス流量検定を開始した直後から、測定用タンク内の圧力降下率を一定にできるので、待ち時間を取る必要がなく、効率的なガス流量の検定ができる。
【0024】
(5)(4)に記載するガス流量検定システムにおいて、マニホールドの下端には、測定用タンク下端を封止する蓋部材を設けたことを特徴とするので、蓋部材の厚みを変更することによって、タンク容積を簡単に変えることができる。そのため、タンク容積をガスの流量に応じて変更できるので、最適な圧力降下率にすることができる。また、蓋部材を薄くしたり、熱伝導性の良い材料にすれば、測定タンク内のガスへの熱伝達を迅速に行い、測定用タンク内のガス温度を一定に維持できる。
よって、ガスの流量に応じて測定用タンク内の圧力降下率を最適な状態に維持して、より一層効率的なガス流量の検定ができる。
【0025】
また、本発明に係るガス流量検定ユニットの作用及び効果について説明する。
(6)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに、共用ガス供給源からのガスを第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由して排出すべく、分岐接続された共用ガスラインを有し、共用ガスラインには、共用遮断弁と測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、第1ライン遮断弁及び共用遮断弁を弁閉したとき、測定用タンク内におけるガスの圧力降下を第1圧力センサによって測定することで流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定ユニットにおいて、圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御する制御手段を備えることを特徴とするので、圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できる。
【0026】
具体的には、圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御する制御手段を備えるので、例えば、共用ガス供給源のガス圧の変動や、圧力調整弁二次側容積の変化、共用ガス供給源から供給されるガス流量の変動等が生じても、圧力調整弁の二次側圧力の変動を確実に低減できる。そして、圧力調整弁の二次側圧力は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の一次側圧力でもあるので、流量制御機器の一次側圧力が安定化する。そのため、流量制御機器から排出されるガス流量と測定用タンクからの流出量が安定する。その結果、測定用タンクの圧力低下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量との間の誤差を低減することができ、ガス流量検定ユニットの測定精度が向上する。
【0027】
例えば、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁と流量制御機器間の配管長さが変更されると、圧力調整弁二次側容積が変化する。圧力調整弁二次側容積が変化すると、圧力調整弁の二次側圧力も変化しやすいが、圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御しているので、一定に維持することができる。したがって、圧力調整弁の二次側圧力に相当する流量制御機器の一次側圧力を一定に維持できるので、流量制御機器から排出されるガス流量も一定に維持することができる。よって、ガス流量検定時に、測定用タンクの圧力降下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量とが一致して、ガス流量の流量検定精度が向上する。
よって、(6)の発明によれば、圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できるガス流量検定ユニットを提供することができる。
【0028】
(7)プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに、共用ガス供給源からのガスを第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由して排出すべく、分岐接続された共用ガスラインを有し、各プロセスガスラインの第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁との間には、測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、かつ、共用ガスラインには、共用遮断弁を備え、第1ライン遮断弁及び共用遮断弁を弁閉したとき、測定用タンク内におけるガスの圧力降下を第1圧力センサによって測定することで流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定ユニットにおいて、圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御する制御手段を備えることを特徴とするので、各プロセスガスラインにおける圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できる。
【0029】
具体的には、各プロセスガスラインに備える圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御するので、例えば、各プロセスガス供給源のガス圧の変動や、測定用タンク内圧力降下、圧力調整弁二次側容積の変化、各プロセスガス供給源から供給されるガス流量の変動等が生じても、圧力調整弁の二次側圧力の変動を確実に低減できる。そして、圧力調整弁の二次側圧力は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の一次側圧力でもあるので、流量制御機器の一次側圧力が安定化する。そのため、各プロセスガスラインにおける流量制御機器から排出されるガス流量と測定用タンクからの流出量が安定する。その結果、各プロセスガスラインにおいて、測定用タンクの圧力低下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量との間の誤差を低減することができ、ガス流量検定ユニットの測定精度が向上する。
【0030】
例えば、あるプロセスガスラインにおいて、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁と流量制御機器間の配管長さが変更されると、そのプロセスガスラインの圧力調整弁二次側容積が変化する。圧力調整弁二次側容積が変化すると、圧力調整弁の二次側圧力も変化しやすいが、圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御しているので、一定に維持することができる。したがって、圧力調整弁の二次側圧力に相当する流量制御機器の一次側圧力を一定に維持できるので、流量制御機器から排出されるガス流量も一定に維持することができる。よって、各プロセスガスラインにおけるガス流量検定時に、測定用タンクの圧力降下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器から排出されるガス流量とが一致して、ガス流量の流量検定精度が向上する。
よって、(7)の発明によれば、各プロセスガスラインにおける圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器から排出するガス流量を高精度に検定できるガス流量検定ユニットを提供することができる。
【0031】
(8)(6)又は(7)に記載するガス流量検定ユニットにおいて、圧力調整弁又はその下流側に、圧力調整弁の二次側圧力を計測する第2圧力センサを備え、制御手段は、第1圧力センサからの第1圧力信号と第2圧力センサからの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部を有することを特徴とするので、圧力調整弁の一次側圧力が変動しても、圧力調整弁の二次側圧力を一定に維持することができる。
具体的には、圧力調整弁の制御手段は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御するので、ガス供給源のガス圧が変動しても、圧力調整弁の二次側圧力の変動を低減できるが、さらに、圧力調整弁の一次側圧力と二次側圧力とを直接測定して、制御部にて両者の圧力差に基づく圧力制御を行うので、圧力調整弁の二次側圧力を、より一層安定して維持することができる。
【0032】
(9)(6)乃至(8)のいずれか1つに記載するガス流量検定ユニットにおいて、測定用タンクは、第1圧力センサと圧力調整弁とを上端に載置するマニホールド内に設け、第1圧力センサと圧力調整弁とを接続する各流路が測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されていることを特徴とするので、第1圧力センサが測定用タンク内のガス圧を正確に測定することができるとともに、待ち時間が少ない効率的なガス流量の検定ができる。
具体的には、第1圧力センサと圧力調整弁とを接続する各流路が測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されているので、ガス流量検定時に測定用タンク内のガスは、第1圧力センサの流路を経由することなく、圧力調整弁の一次側流路に流出させることができる。そのため、第1圧力センサは、測定用タンク内のガスが圧力調整弁の一次側流路に流出するときに生じる気流の乱れに伴う圧力変動の影響を受けることなく、測定用タンク内に残留するガス圧を正確に測定することができる。
また、測定用タンク内のガス圧は、徐々に低下していくが、ガスは、第1圧力センサの流路を経由しないで圧力調整弁の一次側流路に流出するので、第1圧力センサの計測位置においては、ガスの断熱膨張の影響を受けにくい。そのため、第1圧力センサが計測する測定用タンク内の圧力降下率を一定に維持することができる。したがって、ガス流量検定を開始した直後から、測定用タンク内の圧力降下率を一定にできるので、待ち時間を取る必要がなく、効率的なガス流量の検定ができる。
【0033】
(10)(9)に記載するガス流量検定ユニットにおいて、マニホールドの下端には、測定用タンク下端を封止する蓋部材を設けたことを特徴とするので、蓋部材の厚みを変更することによって、タンク容積を簡単に変えることができる。そのため、タンク容積をガスの流量に応じて変更できるので、最適な圧力降下率にすることができる。また、蓋部材を薄くしたり、熱伝導性の良い材料にすれば、測定タンク内のガスへの熱伝達を迅速に行い、測定用タンク内のガス温度を一定に維持できる。
よって、ガスの流量に応じて測定用タンク内の圧力降下率を最適な状態に維持して、より一層効率的なガス流量の検定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの第1の実施形態を構成するガス回路図(主要部)である。
【図2】図1に示すガス回路における共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)を構成する部品の構造図である。
【図3】ガス流量検定時における圧力線図である。
【図4】本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットと従来例における測定用タンク内の圧力降下率を示す図である。
【図5】本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットにおける繰り返し再現性を示す図である。
【図6】本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの第2の実施形態を構成するガス回路図(主要部)である。
【図7】本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの第3の実施形態を構成するガス回路図(主要部)である。
【図8】図1に示すガス流量検定システムにバイパスラインを設けたガス回路図(主要部)である。
【図9】従来のガス流量検定システムにおける圧力調整弁の一次側圧力と二次側圧力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、はじめに第1の実施形態のガス回路と該ガス回路における共用ガスラインを構成する部品の構造を説明した上で、その動作及び作用効果を説明する。その後、第2及び第3の実施形態における相違点を説明し、その動作及び作用効果を説明する。
【0036】
(第1の実施形態)
<ガス回路の構成>
はじめに、第1の実施形態におけるガス回路構成について説明する。図1に、本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの第1の実施形態を構成するガス回路図(主要部)を示す。
図1に示すように、ガス流量検定システム100は、共用ガスライン1とプロセスガスライン2とを備えている。共用ガスライン1は、ガス流量検定ユニットに相当する。
共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)1は、共用ガス供給源からのガスを半導体製造プロセス中の成膜装置や乾式エッチング装置等のプロセスチャンバに供給するため、後述する流量制御機器(マスフローコントローラ等)を含むプロセスガスライン2の上流側に設けられるガスラインである。共用ガスには、例えば、窒素ガスが使用される。供給されるガスのガス圧は、0.4〜0.5MPa程度である。
【0037】
図1に示すように、共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)1には、共用ガス入力ポート11と、共用遮断弁12と、測定用タンク13と、第1圧力センサ141と、圧力調整弁15と、共用ガス出力ポート33とが順次接続されている。共用ガス入力ポート11は、図示しない共用ガス供給源からのガスを入力する端子である。共用遮断弁12は、共用ガス入力ポート11からのガスを下流側に供給又は停止するエアオペレイトバルブである。測定用タンク13は、ガスを一定量貯留する容器である。測定用タンク13の容積は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量によって最適な容積を選定するが、例えば、50〜60cc程度である。ガス流量検定時には、測定用タンク13の容器内に貯留したガスが流出してガス圧が降下する。第1圧力センサ141は、測定用タンク13の容器内に貯留したガスの圧力降下を計測する圧力計である。圧力計は、高圧のガスに対応し得るひずみゲージ式圧力計を用いている。圧力調整弁15は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)に供給するガスのガス圧を一定に維持するための制御弁である。圧力調整弁15は、二次側圧力の変動を低減するために、二次側圧力をフィードバック制御している。フィードバック制御する方式には、圧力調整弁15の圧力制御室に帰還流路を設けて機械的にフィードバックする方式と、二次側圧力信号を電気的にフィードバックする方式とがあるが、第1の実施形態では、機械的にフィードバックする方式を採用している。圧力調整弁15の設定圧は、共用ガス供給源から供給されるガスのガス圧より低く設定する。共用ガス供給源から供給されるガスのガス圧が、0.4〜0.5MPa程度であるので、圧力調整弁15の設定圧は、0.2MPa程度である。共用ガス出力ポート33は、圧力調整弁15からのガスを後述するプロセスガスライン2に出力する端子である。
【0038】
図1に示すように、プロセスガスライン2は、図示しない半導体製造プロセス中の成膜装置や乾式エッチング装置等のプロセスチャンバ毎にプロセスガスを供給するため、並列に配置される複数のガスラインA、B、Cで構成されている。プロセスガスライン2の各ガスラインA、B、Cは、共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)1から分岐接続されている。具体的には、各ガスラインA、B、Cは、共用ガス出力ポート33と分岐配管34を介した後に分岐接続されている。各分岐接続部には、逆止弁31A、31B、31Cと連結遮断弁32A、32B、32Cとが配設されている。各ガスラインA、B、Cには、上流側からプロセスガス入力ポート21A、21B、21Cと、第1ライン遮断弁22A、22B、22Cと、第2ライン遮断弁23A、23B、23Cと、流量制御機器24A、24B、24Cとが接続されている。各分岐接続部は、第1ライン遮断弁22A、22B、22Cと第2ライン遮断弁23A、23B、23Cとの間に連結している。
【0039】
逆止弁31A、31B、31Cは、各ガスラインA、B、Cからプロセスガスを逆流させないための弁である。連結遮断弁32A、32B、32Cは、共用ガスライン1からのガスを各ガスラインA、B、Cに供給又は遮断するエアオペレイトバルブである。プロセスガス入力ポート21A、21B、21Cは、図示しないプロセスガス供給源からのガスを入力する端子である。プロセスガスには、例えば、シラン等の特殊ガスや、塩素ガス等の腐食性ガス、及び水素ガスやホスフィン等の可燃性ガス等が使用される。供給されるプロセスガスのガス圧は、0.4〜0.5MPa程度である。第1ライン遮断弁22A、22B、22C及び第2ライン遮断弁23A、23B、23Cは、流量制御機器24A、24B、24Cに流れるプロセスガスを供給又は停止するエアオペレイトバルブである。流量制御機器24A、24B、24Cは、例えば、マスフローコントローラであって、マスフローメータとコントロールバルブを組み合わせてフィードバック制御を行い、流量制御を可能にしたものである。したがって、所定の値に設定したガス流量を、安定して排出することができる。流量制御機器24A、24B、24Cから排出するガスは、供給配管25A、25B、25Cを介してそれぞれのプロセスチャンバに供給される。
なお、分岐配管34には、排出弁35と排出端子36が接続され、不要なガスを外部に排出できる。
【0040】
<共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)を構成する部品構造>
次に、第1の実施形態における共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)1を構成する部品構造について説明する。図2に、図1に示すガス回路における共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)を構成する部品の構造図を示す。
図2に示すように、図面左から順に、共用遮断弁12と、第1圧力センサ141と、温度計18と、圧力調整弁15とが、マニホールド17の上端に載置されている。マニホールド17は、略矩形状をなして内部に測定用タンク13が穿設されている。測定用タンク13は、矩形断面に形成されている。矩形断面上端の内壁には、共用遮断弁12の二次側流路125に連通する流路172と、第1圧力センサ141に連通する流路173、174と、圧力調整弁15の一次側流路153に連通する流路175とが、それぞれ別々に離間して面直に穿設されている。第1圧力センサ141と圧力調整弁15との間にあって、測定用タンク13の矩形断面上端の内壁から、温度計18のセンサ部181が、下方に突出している。マニホールド17の下端には、測定用タンク13を封止する板状の蓋部材132が固着されている。マニホールド17の図面左端には、下端に設けた共用ガス入力ポート11と共用遮断弁12の一次側流路123とを連通する流路171が形成されている。マニホールド17の図面右端には、下端に設けた出力ポート33と圧力調整弁15の二次側流路159とを連通する流路176が形成されている。
【0041】
共用遮断弁12は、駆動部121と本体部122とを備え、エアー操作による駆動部がダイアフラム124を上下させて、共用ガスを供給、停止する。
第1圧力センサ141は、図示しないセンサ部に連通する流路173、174から、直接に測定用タンク13内の共用ガスのガス圧を計測している。
温度計18は、測定用タンク内の共用ガスの温度を測定する。センサ部181が、測定用タンク13の矩形断面上端の内壁から下方に突出しているので、測定用タンク内の共用ガスの温度を、より正確に測定することができる。測定用タンク内の共用ガスの温度を測定することによって、ガス流量検定時の共用ガスの温度変化を確認し、流量の算出に反映させることができる。
圧力調整弁15は、調整機構部151とボディ部150とを備え、圧力調整弁15の設定圧力は、調整機構部151の図示しない調整機構によって調整される。調整機構は、図示しない調整スプリングの付勢力を調整してダイアフラム154を上下させる。ダイアフラム154は、圧力制御室155の上端に覆設されている。圧力制御室155には、下方からポペット弁体156の突出部が突出して、ダイアフラム154と当接、離間している。ポペット弁体156は、一次側流路153と連通する弁室158に収容され、圧縮スプリング157によって上方に付勢されている。圧力制御室155の下端には、二次側流路159と連通する帰還流路152が穿設されている。したがって、圧力制御室155には、帰還流路152を経由して圧力調整弁15の二次側圧力をフィードバックしている。
【0042】
<動作説明>
次に、第1の実施形態におけるガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの動作を、図1、図2及び図3に基づいて説明する。図3に、ガス流量検定時における測定用タンク内の圧力線図を示す。
図1に示すガス回路において、共用ガス供給源から、例えば0.5MPaの窒素ガスを共用ガス入力ポート11に供給する。圧力調整弁15の二次側圧力を、例えば0.2MPaに設定する。その後、共用遮断弁12を弁開するとともに、流量検定を行う対象である、例えばガスラインAの第2ライン遮断弁23A及びガスラインAへの分岐接続部の連結遮断弁32Aを弁開する。このとき、ガスラインAの第1ライン遮断弁22A及び他のガスラインB、Cの第1ライン遮断弁22B、22C、第2ライン遮断弁23B、23C、連結遮断弁32B、32Cは弁閉している。また、排出弁35も弁閉している。
共用ガスは、共用遮断弁12を通過して、圧力調整弁15にてガス圧力が0.5MPaから0.2MPaに減圧される。したがって、流量制御機器24Aの一次側圧力も0.2MPaとなり、流量制御機器24Aで設定された流量がガスラインAに流れ、供給配管25Aを経由して所定のプロセスチャンバに供給される。
流量制御機器24Aから排出される共用ガスの流量が一定に安定したら、共用遮断弁12を弁閉する。共用遮断弁12を弁閉すると、共用ガス供給源からのガスの供給が遮断されるので、測定用タンク13内に貯留されたガスが、共用ガスライン1に放出され、分岐接続部を経由してガスラインAに流れ、流量制御機器24Aからプロセスチャンバに向かって排出される。
【0043】
図3に示すように、測定用タンク13内のガス圧は、共用遮断弁12の弁閉時から降下する。ガス圧の単位時間当たりの圧力降下率が一定に安定した段階(測定開始点)で、第1圧力センサ141がガス圧を計測する。その後、一定の時間が経過した時点(測定終了点)で、第1圧力センサ141が、再度ガス圧を計測する。この場合、測定終了点での測定用タンク13内のガス圧が、圧力調整弁15の二次側圧力より高いことを必要とする。測定用タンク13内のガス圧が、圧力調整弁15の二次側圧力より低下すると、測定用タンク13内のガス圧と共に圧力調整弁15の二次側圧力も一緒に低下してしまうからである。
【0044】
次に、測定用タンク13内の測定開始点のガス圧と、測定終了点のガス圧との差ΔPと、測定開始点から測定終了点までの時間Δtとを求める。ΔP/Δtは、ガス流量に比例するので、比例係数を乗算して、流量制御機器24Aからプロセスチャンバに向かって排出されるガス流量を算出する。算出したガス流量と、流量制御機器24Aで設定されたガス流量とを比較して、差異が基準値以内であれば流量検定結果は合格となる。この流量検定は、数回繰り返して、再現性を確認してもよい。
【0045】
図5に、本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットにおける繰り返し再現性を示す。図5に示すように、ガス流量を10sccm、100sccm、1000sccmの3段階に変化させて、複数回繰り返してガス流量検定を行い、算出したガス流量のバラつきを測定した。バラつきの小さい方が、再現性が良いことになる。ガス流量が少ない時(例えば、10sccm)の方が、バラつきが大きいが、本発明のガス流量検定システムでは、従来例に比較して、バラつきは半分以下となっている。
なお、算出したガス流量と、流量制御機器24Aで設定されたガス流量とを比較して、差異が基準値以上であれば、流量制御機器24Aの設定値を校正するか、若しくは、流量制御機器24Aの故障として交換してもよい。また、他のガスラインB、Cについても、同様にガス流量検定を行うことができる。
【0046】
図3に示すように、圧力調整弁15の二次側圧力は、一定に維持されている必要がある。しかし、前述したように、例えば、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁15と流量制御機器24A等間の配管長さが変更されると、圧力調整弁二次側容積が変化する。圧力調整弁二次側容積が変化すると、圧力調整弁15の二次側圧力も変化する。なお、圧力調整弁15の二次側圧力は、測定用タンク13の圧力降下によっても変化する。
そのため、第1の実施形態では、圧力調整弁15の二次側圧力をフィードバック制御することによって、一定に維持している。
そのフィードバック制御方法を、図2に基づいて説明する。例えば、圧力調整弁15の二次側圧力が設定圧力より低い場合には、圧力制御室155の圧力が設定圧力より低くなり、ダイアフラム154が下方に変形されてポペット弁体156を押し下げる。これにより、弁室158における弁開度が開くので、弁室158から圧力制御室155に流入するガスが増加して、圧力制御室155の圧力が上昇する。圧力制御室155の圧力が上昇することによって、帰還流路152を介して圧力調整弁15の二次側圧力が上昇する。
このように、圧力調整弁15の二次側圧力をフィードバック制御することによって、圧力調整弁15の二次側圧力が常に一定に維持される。その結果、再現性が高く、誤差の少ない流量検定を可能としている。
【0047】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態のガス流量検定システム100及びガス流量検定ユニット1によれば、圧力調整弁15の二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器24A、24B、24Cから供給するガス流量を高精度に検定できる。
具体的には、圧力調整弁15は、該圧力調整弁15の二次側圧力をフィードバック制御するので、例えば、共用ガス供給源のガス圧の変動や、圧力調整弁二次側容積の変化、共用ガス供給源から供給されるガス流量の変動等が生じても、圧力調整弁15の二次側圧力の変動を確実に低減できる。そして、圧力調整弁15の二次側圧力は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)24A、24B、24Cの一次側圧力でもあるので、流量制御機器24A、24B、24Cの一次側圧力が安定化する。そのため、流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量と測定用タンク13からの流出量が安定する。その結果、測定用タンク13の圧力低下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量との間の誤差を低減することができ、ガス流量検定システム100及びガス流量検定ユニット1の測定精度が向上する。
【0048】
例えば、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁15と流量制御機器24A、24B、24C間の配管長さが変更されると、圧力調整弁二次側容積が変化する。圧力調整弁二次側容積が変化すると、圧力調整弁15の二次側圧力も変化しやすいが、圧力調整弁15の二次側圧力をフィードバック制御しているので、一定に維持することができる。したがって、流量制御機器24A、24B、24Cの一次側圧力を一定に維持できるので、流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量も一定に維持することができる。よって、ガス流量検定時に、測定用タンク13の圧力低下から算出するガス流量と、現実
に流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量とが一致して、ガス流量の流量検定精度が向上する。
【0049】
また、本実施形態によれば、測定用タンク13は、共用遮断弁12と、第1圧力センサ141と、圧力調整弁15とを上端に載置するマニホールド17内に設け、第1圧力センサ141と、圧力調整弁15とを接続する各流路173、174、175が測定用タンク13の内壁131にそれぞれ別々に連通されていることを特徴とするので、第1圧力センサ141が測定用タンク13内のガス圧を正確に測定することができるとともに、待ち時間が少ない効率的なガス流量の検定ができる。
具体的には、第1圧力センサ141と、圧力調整弁15とを接続する各流路173、174、175が測定用タンク13の内壁131にそれぞれ別々の箇所で離間して連通されているので、ガス流量検定時に測定用タンク13内のプロセスガスは、第1圧力センサ141の流路173、174を経由することなく、流路175を介して圧力調整弁15の一次側流路153に流出させることができる。そのため、第1圧力センサ141は、測定用タンク13内のガスが流路175及び圧力調整弁15の一次側流路153に流出するときに生じる気流の乱れに伴う圧力変動の影響を受けることがない。その結果、測定用タンク13内に残留するガス圧を正確に測定することができる。
【0050】
また、測定用タンク内のガス圧は、徐々に低下していくが、ガスは、第1圧力センサ141の流路173、174を経由しないで圧力調整弁15の一次側流路153に流出するので、第1圧力センサ141の計測位置においては、ガスの断熱膨張の影響を受けにくい。そのため、第1圧力センサ141が計測する測定用タンク13内の圧力降下率を一定に維持することができる。したがって、ガス流量検定を開始した直後から、測定用タンク13内の圧力降下率を一定にできるので、待ち時間を取る必要がなく、効率的なガス流量の検定ができる(図4参照)。
【0051】
また、本実施形態によれば、マニホールド17の下端には、測定用タンク13下端を封止する蓋部材132を設けたことを特徴とするので、蓋部材132の厚みを変更することによって、タンク容積を簡単に変えることができる。そのため、タンク容積をガスの流量に応じて変更できるので、最適な圧力降下率にすることができる。また、蓋部材132を薄くしたり、熱伝導性の良い材料にすれば、測定用タンク13内のガスへの熱伝達を迅速に行い、測定用タンク13内のガス温度を一定に維持することができる。
よって、ガスの流量に応じて、測定用タンク13内の圧力降下率を最適な状態に維持して、より一層効率的なガス流量の検定ができる。
【0052】
(第2の実施形態)
<ガス回路の構成>
次に、第2の実施形態におけるガス回路構成について説明する。図6に、本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの第2の実施形態を構成するガス回路図(主要部)を示す。
図6に示すように、本実施形態の特徴は、プロセスガスライン20における各ガスラインA、B、Cの第1ライン遮断弁22A、22B、22Cと第2ライン遮断弁23A、23B、23Cとの間に、測定用タンク13A、13B、13Cと第1圧力センサ141A、141B、141Cと圧力調整弁15A、15B、15Cとを備え、かつ、共用ガスライン10には、共用遮断弁12を備えることである。その他の回路構成は、第1の実施形態と同様である。そのため、第1の実施形態と同様の箇所には、同様の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0053】
図6に示すように、ガス流量検定システム101は、共用ガスライン10とプロセスガスライン20とを備えている。
共用ガスライン10には、共用ガス入力ポート11と共用遮断弁12とが順次接続されている。
プロセスガスライン20における各ガスラインA、B、Cには、それぞれ第1ライン遮断弁22A、22B、22Cと第2ライン遮断弁23A、23B、23Cとの間には、測定用タンク13A、13B、13Cと第1圧力センサ141A、141B、141Cと圧力調整弁15A、15B、15Cとが順次接続されている。
ガス流量検定ユニットは、第1ライン遮断弁22A、22B、22Cと測定用タンク13A、13B、13Cと第1圧力センサ141A、141B、141Cと圧力調整弁15A、15B、15Cとが順次接続されたガス回路が相当する。したがって、ガス流量検定ユニットは、各ガスラインA、B、C毎に配設されている。
【0054】
ガス流量検定ユニットが各ガスラインA、B、C毎に設けられるので、各ガスラインA、B、Cに供給されるプロセスガスによってガス流量検定を行う。そのため、各プロセスガスの種類、ガス圧、ガス流量等に応じて、測定用タンク13A、13B、13C、第1圧力センサ141A、141B、141Cや圧力調整弁15A、15B、15Cの仕様を各ガスライン毎に変更してもよい。
共用ガスライン10からのガス(例えば、窒素ガス)は、ガス流量検定には関与しない。したがって、共用遮断弁12は、常時、弁閉されていて、例えば、定期点検の場合等のように各ガスラインA、B、Cにパージガスを流すときに弁開する。
【0055】
<動作説明>
次に、第2の実施形態におけるガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの動作を、図6に基づいて説明する。
図6に示すガス回路において、プロセスガス供給源から、例えば0.5MPaのプロセスガスをプロセスガス入力ポート21A、21B、21Cに供給する。圧力調整弁15A、15B、15Cの二次側圧力を、例えば0.2MPaに設定する。その後、ガス流量検定を行う対象である、例えばガスラインAの第1ライン遮断弁22A及び第2遮断弁23Aを弁開する。このとき、共用ガスライン10の共用遮断弁12、連結遮断弁32A及び他のガスラインB、Cの第1ライン遮断弁22B、22C、第2ライン遮断弁23B、23C、連結遮断弁32B、32Cは弁閉している。また、排出弁35も弁閉している。
ガスラインAのプロセスガスは、第1ライン遮断弁22Aを通過して、圧力調整弁15Aにてガス圧力が0.5MPaから0.2MPaに減圧される。したがって、流量制御機器24Aの一次側圧力も0.2MPaとなり、流量制御機器24Aで設定された流量がガスラインAに流れ、供給配管25Aを経由して所定のプロセスチャンバに供給される。
流量制御機器24Aから排出されるプロセスガスの流量が一定に安定したら、第1ライン遮断弁22Aを弁閉する。第1ライン遮断弁22Aを弁閉すると、プロセスガス供給源からのガスの供給が遮断されるので、測定用タンク13A内に貯留されたガスが、ガスラインAに放出され流量制御機器24Aからプロセスチャンバに向かって排出される。
【0056】
第1の実施形態の場合と同様に、測定用タンク13A内のガス圧は、第1ライン遮断弁22Aの弁閉時から降下する。ガス圧の単位時間当たりの圧力降下率が一定に安定した段階(測定開始点)で、第1圧力センサ141Aがガス圧を計測する。その後、一定の時間が経過した時点(測定終了点)で、第1圧力センサ141Aが、再度ガス圧を計測する。この場合、測定終了点での測定用タンク13A内のガス圧が、圧力調整弁15Aの二次側圧力より高いことを必要とする。測定用タンク13A内のガス圧が、圧力調整弁15Aの二次側圧力より低下すると、測定用タンク13A内のガス圧と共に圧力調整弁15Aの二次側圧力も一緒に低下してしまうからである。
【0057】
次に、第1の実施形態の場合と同様に、測定用タンク13A内の測定開始点のガス圧と、測定終了点のガス圧との差ΔPと、測定開始点から測定終了点までの時間Δtとを求
める。ΔP/Δtは、ガス流量に比例するので、比例係数を乗算して、流量制御機器24Aからプロセスチャンバに向かって排出されるガス流量を算出する。算出したガス流量と、流量制御機器24Aで設定されたガス流量とを比較して、差異が基準値以内であれば流量検定結果は合格となる。この流量検定は、数回繰り返して、再現性を確認してもよい。
なお、ガス流量検定は、他のガスラインB、Cでも同様に行うことができる。
【0058】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、第2の実施形態のガス流量検定システム101及びガス流量検定ユニットによれば、各ガスラインA、B、Cにおける圧力調整弁15A、15B、15Cの二次側圧力の変動を低減して、流量制御機器24A、24B、24Cから排出するガス流量を高精度に検定できる。
具体的には、各ガスラインA、B、Cに備える圧力調整弁15A、15B、15Cは、該圧力調整弁15A、15B、15Cの二次側圧力をフィードバック制御するので、例えば、各プロセスガス供給源のガス圧の変動や、圧力調整弁二次側容積の変化、各プロセスガス供給源から供給されるガス流量の変動等が生じても、圧力調整弁15A、15B、15Cの二次側圧力の変動を確実に低減できる。そして、圧力調整弁15A、15B、15Cの二次側圧力は、流量制御機器(マスフローコントローラ等)24A、24B、24Cの一次側圧力でもあるので、流量制御機器24A、24B、24Cの一次側圧力が安定化する。そのため、各ガスラインA、B、Cにおける流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量と測定用タンク13A、13B、13Cからの流出量が安定する。その結果、各ガスラインA、B、Cにおいて、測定用タンク13A、13B、13Cの圧力低下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量との間の誤差を低減することができ、ガス流量検定システムの測定精度が向上する。
【0059】
例えば、あるプロセスガスラインにおいて、半導体製造装置の改造等で圧力調整弁と流量制御機器間の配管長さが変更されると、そのプロセスガスラインの圧力調整弁二次側容積が変化する。圧力調整弁二次側容積が変化すると、圧力調整弁15A、15B、15Cの二次側圧力も変化しやすいが、圧力調整弁15A、15B、15Cの二次側圧力をフィードバック制御しているので、一定に維持することができる。したがって、流量制御機器24A、24B、24Cの一次側圧力を一定に維持できるので、流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量も一定に維持することができる。よって、各プロセスガスラインにおけるガス流量検定時に、測定用タンク13A、13B、13Cの圧力降下から算出するガス流量と、現実に流量制御機器24A、24B、24Cから排出されるガス流量とが一致して、ガス流量の流量検定精度が向上する。
【0060】
また、本実施形態によれば、ガス流量検定ユニットを構成する、第1ライン遮断弁22A、22B、22Cと測定用タンク13A、13B、13Cと第1圧力センサ141A、141B、141Cと圧力調整弁15A、15B、15Cとが順次接続されたガス回路が各ガスラインA、B、C毎に配設されているので、各ガスラインA、B、Cにプロセスガスを供給しながら、ガス流量検定を行うことができる。
例えば、ガスラインAにおいて、第1ライン遮断弁22Aを遮断すると、測定用タンク13A内のガス圧は、第1ライン遮断弁22Aの弁閉時から降下する。ガス圧の単位時間当たりの圧力降下率が一定に安定した段階(測定開始点)で、第1圧力センサ141Aがガス圧を計測する。その後、一定の時間が経過した時点(測定終了点)で、第1圧力センサ141Aが、再度ガス圧を計測する。この場合、測定終了点での測定用タンク13A内のガス圧が、圧力調整弁15Aの二次側圧力より高いので、流量制御機器24Aからは所定の流量が維持されている。また、測定終了後直ちに、第1ライン遮断弁22Aを開放することによって、測定用タンク13A内のガス圧が、圧力調整弁15Aの二次側圧力より高い状態で、プロセスガス供給源からのガスが供給される。したがって、流量制御機器24Aの流量変動が生じない。その結果、ガスラインAにプロセスガスを供給しながら、ガス流量検定を行うことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、測定用タンク13A、13B、13Cと第1圧力センサ141A、141B、141Cと圧力調整弁15A、15B、15Cとを各ガスラインA、B、C毎に備えているので、各ガスラインA、B、Cと共用ガスライン10との分岐接続部に設けられる逆止弁31A、31B、31Cの誤動作の影響を受けることはない。
【0062】
(第3の実施形態)
<ガス回路の構成>
次に、第3の実施形態におけるガス回路構成について説明する。図7に、本発明に係るガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットの第3の実施形態を構成するガス回路図(主要部)を示す。
図7に示すように、本実施形態の特徴は、圧力調整弁16又はその下流側に、圧力調整弁16の二次側圧力を計測する第2圧力センサ142を備え、圧力調整弁16は、第1圧力センサ141からの第1圧力信号と第2圧力センサ142からの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部19を有することである。その他の回路構成は、第1の実施形態と同様である。そのため、第1の実施形態と同様の箇所には、同様の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0063】
図7に示すように、ガス流量検定システム102は、共用ガスライン3とプロセスガスライン2とを備えている。共用ガスライン3は、ガス流量検定ユニットに相当する。
共用ガスライン(ガス流量検定ユニット)3には、共用ガス入力ポート11と、共用遮断弁12と、測定用タンク13と、第1圧力センサ141と、圧力調整弁16と、第2圧力センサ142と、出力ポート33とが順次接続されている。また、圧力調整弁16は、第1圧力センサ141からの第1圧力信号と第2圧力センサ142からの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部19を備えている。また、圧力調整弁16は、図示しない圧力制御室の圧力を制御する図示しないパイロット弁を有し、該パイロット弁を駆動する駆動部161を備えている。そして、制御部19からの電気信号によって、駆動部161のアクチュエータを操作し、パイロット弁を上下させる。パイロット弁を上下させることによって、圧力調整弁16の二次側圧力をフィードバック制御させている。
【0064】
なお、制御部19には、図示しない圧力信号入力装置を接続することができ、第1圧力センサ141からの第1圧力信号及び第2圧力センサ142からの第2圧力信号に替えて、外部から圧力信号を入力することができる。外部から圧力信号を入力することによって、プロセスガスライン2の各ガスラインA、B、Cへの分岐接続部に設ける逆止弁31A、31B、31Cの誤動作回避のために、逆止弁封止を行うことができる。その具体的方法は、後述する。
【0065】
<動作説明>
次に、第3の実施形態の特徴である制御部19からの電気信号による圧力調整弁16の二次側圧力のフィードバック制御について説明する。
制御部19には、第1圧力センサ141からの第1圧力信号と第2圧力センサ142からの第2圧力信号とが入力されている。例えば、圧力調整弁16の二次側圧力が低下すると、第2圧力センサ142からの第2圧力信号が低下する。第2圧力信号が低下すると、第1圧力信号と第2圧力信号との圧力信号差が拡大する。そのため、制御部19は、圧力調整弁16の図示しないパイロット弁を操作させるための電気信号を駆動部161に出力する。駆動部161は、制御部19からの電気信号によって、駆動部161のアクチュエータが作動し、パイロット弁を下降させる。パイロット弁が下降すると、第1の実施形態の圧力調整弁15と同様に、ダイアフラムが下方に変形されてポペット弁体を押し下げる。これにより、弁室との弁開度が開くので、弁室から圧力制御室に流入するプロセスガスが増加して、圧力制御室の圧力が上昇する。圧力制御室の圧力が上昇することによって、帰還流路を介して圧力調整弁16の二次側圧力が上昇する。
第3の実施形態では、圧力信号に基づき、電気信号によって直接パイロット弁を上下させて圧力制御室のダイアフラムを操作する点が、第1の実施形態と相違する。これによって、より迅速かつ精度良く圧力調整弁16の二次側圧力のフィードバック制御が可能となる。
【0066】
さらに、制御部19の制御機能を活用することによって、プロセスガスライン2の各ガスラインA、B、Cへの分岐接続部に設ける逆止弁31A、31B、31Cについて、以下に説明する逆止弁封止を行うことができる。
本来、逆止弁は、ガスの逆流を防止するため、上流側のガスを下流側に流すときにのみ、弁が開く構造となっている。しかし、ガス流量検定時に逆止弁が完全に閉じていないことがある。逆止弁が完全に閉じていないと、ガスが逆流して容積変動が起きる。このような逆流は、毎回生じるわけではないが、ガス流量検定時に逆流が起きると、正確な流量検定ができず問題になる。
【0067】
この対策として、共用ガス供給源11からプロセスガスライン2を結ぶバイパスライン4を設けることを考えることもできる(例えば、図8を参照)。図8に、図1に示すガス流量検定システムにバイパスラインを設けたガス回路図(主要部)103を示す。
このバイパスライン4を用いた逆止弁の誤動作回避の方法を、簡単に説明する。
まず、図8に示すように、ガス流量検定を行う前にバイパスライン4の遮断弁41を弁開してガス供給源のガス圧(例えば、0.5MPa)を逆止弁31A、31B、31Cに作用させる。その後に、バイパスライン4のバイパス遮断弁41を弁閉し、ガス排出ラインの排出弁35を弁開して、逆止弁31A、31B、31Cの一次側に溜まったガスを排出する。これによって、逆止弁31A、31B、31Cの二次側圧力を共用ガス供給源のガス圧(例えば、0.5MPa)に維持したまま、逆止弁31A、31B、31Cの一次側圧力を圧力調整弁15の二次側圧力(例えば、0.2MPa)に減圧できる。逆止弁31A、31B、31Cの一次側圧力を減圧することによって、逆止弁31A、31B、31Cを確実に封止させることができる。これによって、逆止弁31A、31B、31Cの誤動作を回避できる。
しかしながら、上述のバイパスライン4はプロセスガスの供給に直接寄与するものではなく、本来、避けたいものである。
【0068】
本実施形態によれば、制御部19の制御機能を活用することによって、プロセスガスライン2の各ガスラインA、B、Cへの分岐接続部に設ける逆止弁31A、31B、31Cについて、逆止弁封止を行うことができるので、その動作方法を説明する。
制御部19には、外部から圧力信号を入力する図示しない圧力信号入力装置を接続する。圧力信号入力装置にて、制御部19の第2圧力信号を、例えば、0.5MPaに設定し、0.5MPaのガス圧を各ガスラインA、B、Cの逆止弁31A、31B、31Cに作用させる。その後に、ガス排出ラインの遮断弁35を弁開して、逆止弁31A、31B、31Cの上流側に溜まったガスを排出する。その上で、圧力信号入力装置にて、制御部19の第2圧力信号を、例えば、0.2MPaに設定し、0.2MPaのガス圧を逆止弁31A、31B、31Cに作用させる。これによって、逆止弁31A、31B、31Cの下流側圧力を0.5MPaに維持したまま、逆止弁31A、31B、31Cの上流側圧力を0.2MPaに減圧する。逆止弁31A、31B、31Cの上流側圧力を減圧することによって、逆止弁31A、31B、31Cを確実に封止させることができる。これによって、逆止弁31A、31B、31Cの誤動作を確実に回避できる。
【0069】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態のガス流量検定システム102及びガス流量検定ユニット3によれば、圧力調整弁16又はその下流側に、圧力調整弁16の二次側圧力を計測する第2圧力センサ142を備え、圧力調整弁16は、第1圧力センサ141からの第1圧力信号と第2圧力センサ142からの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部19を有することを特徴とするので、圧力調整弁16の一次側圧力が変動しても、圧力調整弁16の二次側圧力を一定に維持することができる。
【0070】
具体的には、圧力調整弁16は、該圧力調整弁16の二次側圧力をフィードバック制御するので、共用ガス供給源のガス圧が変動しても、圧力調整弁16の二次側圧力の変動を低減できるが、圧力調整弁16の一次側圧力と二次側圧力とを直接測定して、両者の圧力差に基づく圧力制御を行うので、圧力調整弁16の二次側圧力を、より一層安定して維持することができる。
また、制御部19の圧力制御機能を活用すると、プロセスガスライン2の各ガスラインA、B、Cへの分岐接続部に設ける逆止弁31A、31B、31Cの誤動作回避のために、バイパスラインを設ける必要がない。そのため、ガス流量検定システム102及びガス流量検定ユニット3の回路構成を簡素化できる効果を奏することもできる。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上述した第1の実施形態では、測定用タンク13をマニホールド17内に設け、タンク断面を矩形状としたが、必ずしも矩形状に限らない。例えば、凹凸を有する多角形の断面とすることもできる。凹凸を有する多角形の断面とすることによって、タンク内のガス接触面積を増大させて、プロセスガスとの熱交換を迅速に行い、ガス流量検定に使用できる圧力降下範囲を拡大させることができるからである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば半導体製造装置におけるプロセスガス等のガス供給システムに使用する流量制御機器(マスフローコントローラ等)の流量を検定するガス流量検定システム及びガス流量検定ユニットとして利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1、3、10 共用ガスライン、ガス流量検定ユニット
2、20 プロセスガスライン
4 バイパスライン
11 共用ガス入力ポート
12 共用遮断弁
13、13A、13B、13C 測定用タンク
15、15A、15B、15C 圧力調整弁
16 圧力調整弁
17 マニホールド
18 温度計
19 制御部
21A、21B、21C プロセスガス入力ポート
22A、22B、22C 第1ライン遮断弁
23A、23B、23C 第2ライン遮断弁
24A、24B、24C 流量制御機器
25A、25B、25C 供給配管
31A、31B、31C 逆止弁
32A、32B、32C 連結遮断弁
33 共用ガス出力ポート
34 分岐配管
35 排出弁
41 バイパス遮断弁
100、101、102 ガス流量検定システム
141 第1圧力センサ
142 第2圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインと、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、前記プロセスガスラインに分岐接続された共用ガスラインとを有し、
前記共用ガスラインには、共用遮断弁と測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定システムにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御することを特徴とするガス流量検定システム。
【請求項2】
プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインと、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、前記プロセスガスラインに分岐接続された共用ガスラインとを有し、
前記各プロセスガスラインの第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁との間には、測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、かつ、前記共用ガスラインには、共用遮断弁を備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定システムにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御することを特徴とするガス流量検定システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するガス流量検定システムにおいて、
前記圧力調整弁又はその下流側に、前記圧力調整弁の二次側圧力を計測する第2圧力センサを備え、
前記圧力調整弁は、前記第1圧力センサからの第1圧力信号と前記第2圧力センサからの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部を有することを特徴とするガス流量検定システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載するガス流量検定システムにおいて、
前記測定用タンクは、前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを上端に載置するマニホールド内に設け、
前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを接続する各流路が前記測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されていることを特徴とするガス流量検定システム。
【請求項5】
請求項4に記載するガス流量検定システムにおいて、
前記マニホールドの下端には、前記測定用タンク下端を封止する蓋部材を設けたことを特徴とするガス流量検定システム。
【請求項6】
プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、分岐接続された共用ガスラインを有し、
前記共用ガスラインには、共用遮断弁と測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定ユニットにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御する制御手段を備えることを特徴とするガス流量検定ユニット。
【請求項7】
プロセスガス供給源からのガスを第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁と流量制御機器とを経由してプロセスチャンバに供給する複数のプロセスガスラインに、共用ガス供給源からのガスを前記第2ライン遮断弁と前記流量制御機器とを経由して排出すべく、分岐接続された共用ガスラインを有し、
前記各プロセスガスラインの第1ライン遮断弁と第2ライン遮断弁との間には、測定用タンクと第1圧力センサと圧力調整弁とを備え、かつ、前記共用ガスラインには、共用遮断弁を備え、
前記第1ライン遮断弁及び前記共用遮断弁を弁閉したとき、前記測定用タンク内におけるガスの圧力降下を前記第1圧力センサによって測定することで前記流量制御機器の流量検定を行うガス流量検定ユニットにおいて、
前記圧力調整弁は、該圧力調整弁の二次側圧力をフィードバック制御する制御手段を備えることを特徴とするガス流量検定ユニット。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載するガス流量検定ユニットにおいて、
前記圧力調整弁又はその下流側に、前記圧力調整弁の二次側圧力を計測する第2圧力センサを備え、
前記制御手段は、前記第1圧力センサからの第1圧力信号と前記第2圧力センサからの第2圧力信号との圧力信号差に基づいて圧力制御する制御部を有することを特徴とするガス流量検定ユニット。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載するガス流量検定ユニットにおいて、
前記測定用タンクは、前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを上端に載置するマニホールド内に設け、
前記第1圧力センサと前記圧力調整弁とを接続する各流路が前記測定用タンクの内壁にそれぞれ連通されていることを特徴とするガス流量検定ユニット。
【請求項10】
請求項9に記載するガス流量検定ユニットにおいて、
前記マニホールドの下端には、前記測定用タンク下端を封止する蓋部材を設けたことを特徴とするガス流量検定ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−37614(P2013−37614A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174867(P2011−174867)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】