説明

ガラス基板の研磨方法及び製造方法、並びに研磨装置

【課題】ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる、研磨装置の提供。
【解決手段】毎回同じ目標板厚値Aに従ってガラス基板の研磨処理を行う研磨手段として上定盤40を備える、研磨装置であって、上定盤40によって今回の研磨処理で研磨されているガラス基板の研磨中板厚値Tcを測定するために上定盤40のモーター駆動軸61に対する相対位置を計測する接触式変位センサ65と、上定盤40によって前回以前の研磨処理で研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値Tと目標板厚値Aとの仕上がり誤差に基づいて、接触式変位センサ65の計測結果に基づいて得られた研磨中板厚値Tcの板厚補正値Tpを算出する制御部90とを備え、上定盤40は、板厚補正値Tpが目標板厚値Aに到達するまでガラス基板を研磨する、ことを特徴とする、研磨装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の研磨加工を精度高く制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板の研磨加工を行う際、研磨加工中の研磨装置や被研磨体の状態を的確に捉え、得られた情報に基づきガラス基板の研磨加工を制御して、精度高く研磨加工を行うことが、従来から検討されている。
【0003】
その中でも、ガラス基板の研磨量を精度高く制御しながら研磨する方法は、ガラス基板製品に求められる、重要な品質特性である板厚に大きく影響を及ぼすことから、さまざまな方法が検討されている。
【0004】
例えば、磁気記録媒体用ガラス基板においては、近年の高記録密度化に伴い、磁気記録媒体に使用するガラス基板の加工精度に対する要求が高くなってきており、ガラス基板の板厚の寸法バラツキが小さいガラス基板が求められている。
【0005】
ガラス基板の研磨量を制御する従来方法として、接触式または非接触式変位センサを用いて上定盤の相対的な上下位置を特定して被加工物の板厚を制御する方法が知られている(例えば、特許文献1の第1乃至第3図,並びに特許文献2の図3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭64−4126号公報
【特許文献2】特開2004−345018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキがバッチ(ロット)間で大きいため、近年の加工精度に対する厳しい要求基準によっては、歩留まりが低下する場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる、ガラス基板の研磨方法及び製造方法、並びに研磨装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る研磨装置は、
毎回同じ目標板厚値に従ってガラス基板の研磨処理を行う研磨手段を備える、研磨装置であって、
前記研磨手段によって今回の研磨処理で研磨されているガラス基板の研磨中板厚値を測定する測定手段と、
前記研磨手段によって前回以前の研磨処理で研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値と前記目標板厚値との仕上がり誤差に基づいて、前記測定手段によって測定される研磨中板厚値の板厚補正値を算出する算出手段とを備え、
前記研磨手段は、前記板厚補正値が前記目標板厚値に到達するまでガラス基板を研磨する、ことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るガラス基板の研磨方法は、
毎回同じ目標板厚値に従ってガラス基板の研磨処理を研磨手段によって行う、ガラス基板の研磨方法であって、
前記研磨手段によって今回の研磨処理で研磨されているガラス基板の研磨中板厚値を測定手段によって測定し、
前記研磨手段によって前回以前の研磨処理で研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値と前記目標板厚値との仕上がり誤差に基づいて、前記測定手段によって測定される研磨中板厚値の板厚補正値を算出手段によって算出し、
前記板厚補正値が前記目標板厚値に到達するまで前記研磨手段によってガラス基板を研磨する、ことを特徴とするものである。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るガラス基板の製造方法は、
本発明に係るガラス基板の研磨方法によってガラス基板を研磨する研磨工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態である両面研磨装置11の模式的な縦断面図である。
【図2A】上定盤を上昇させた状態を模式的に示す縦断面図である。
【図2B】上定盤を降下させた状態を模式的に示す縦断面図である。
【図3】下定盤に載置されたキャリヤの取付状態を示す平面図である。
【図4】図3中A−A線に沿う断面を模式的に拡大して示す縦断面図である。
【図5】基台20に収容された駆動部の一部分を断面で示した、駆動部の構成図である。
【図6】制御部により制御される各機器を示す制御系のブロック図である。
【図7】接触式変位センサ65の取り付け状態を示した模式的な断面図である。
【図8】接触式変位センサ65の測定子65aの先端が接触するモーター駆動軸61の上端部を示した部分断面斜視図である。
【図9A】制御部90が実行する研磨工程の制御処理及び作業者が行なう作業の手順を説明するためのフローチャートである。
【図9B】図9Aの制御処理に続いて実行される制御処理及び作業者が行なう作業の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】前回のバッチでの仕上がり誤差(Tn−1−A)と温度変化量Δtと相関関係を示した図である。
【図11】磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下に記載される実施形態に限られない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である両面研磨装置11の模式的な縦断面図である。図1に示されるように、両面研磨装置11は、複数のガラス基板の上面及び下面を同時に研磨するように構成されており、基台20と、下定盤30と、上定盤40と、昇降機構50と、回転伝達機構60とを有する。基台20の上部には、下定盤30が回転可能に支持されており、基台20の内部には、後述する駆動部としての上定盤40等を回転駆動する駆動モーターが取り付けられている。
【0016】
下定盤30は、後述するようにキャリヤに保持された複数のガラス基板の下面を研磨する下側研磨パッドを有する。また、上定盤40は、下定盤30の上方に対向配置され複数のガラス基板の上面を研磨する上側研磨パッドを有する。
【0017】
昇降機構50は、基台20の上方に起立する門型のフレーム70により支持されており、キャリヤ交換時に上定盤40を昇降させる昇降用シリンダ装置52を有する。昇降用シリンダ装置52は、フレーム70の梁72の中央に垂下方向に伸縮動作するように取り付けられている。昇降用シリンダ装置52のピストンロッド54は、下方に延在している。
【0018】
ピストンロッド54の下側先端部には、吊下部材80の中央部が結合されている。吊下部材80は、上定盤40を吊下するように取り付けられている。吊下部材80は、上下方向に延在する複数の支柱80aと、支柱80aの下端部に固定された円環状取付部材80bと、支柱80aの上端部に固定された板状取付部材80cとを備える。円環状取付部材80bの下面に、上定盤40の上面が固定されている。したがって、昇降用シリンダ装置52のピストンロッド54が上方向または下方向に駆動されると、ピストンロッド54と吊下部材80を介して連結された上定盤40も同時に駆動されて上昇または降下する。
【0019】
両面研磨装置11は、上定盤40、昇降機構50、回転伝達機構60を制御する制御部90を有する。
【0020】
図2Aは上定盤を上昇させた状態を模式的に示す縦断面図である。上定盤40は、キャリヤ交換時またはパッド交換時に昇降用シリンダ装置52によって上昇して下定盤30の上方(Za方向)に移動する。この上昇状態では、下定盤30の上面に載置された研磨工程が終了した複数のガラス基板及びキャリヤ160(後述。図3参照)を取り出して次の研磨工程で使用するキャリヤ160及び未研磨のガラス基板を下定盤30の上面に装着できる。
【0021】
また、回転伝達機構60は、上定盤40の駆動モーターのモーター駆動軸61の上端に円筒形状に形成された結合部62を有する。
【0022】
図1に示されるように、回転伝達機構60は、上定盤40の中心孔を貫通する結合部62の上側側面に形成されたキー溝(凹部)62aに嵌合可能なキー(爪)81を有する。上定盤40の内周側に突出するキー81は、支軸82を揺動中心として、支軸82によって円環状取付部材80bに揺動可能に取り付けられている。
【0023】
上定盤40が降下した状態では、キー81はキー溝62aに嵌合し(図1,2B参照)、上定盤40が上昇した状態では、キー81はキー溝62aから離れる(図2A参照)。キー81とキー溝62aが嵌合した状態で、上定盤40の駆動モーターの駆動トルクが上定盤40に伝達され、上定盤40は結合部62とともに回転する。
【0024】
図2Bは上定盤を降下させた状態を模式的に示す縦断面図である。図2Bに示されるように、昇降用シリンダ装置52の下室に対する圧縮空気の供給圧力P1を低くすることにより(このとき、昇降用シリンダ装置52の上室は大気開放、P2は大気圧)、昇降用シリンダ装置52のピストンロッド54が上定盤40の自重により下方(Zb方向)に駆動されると、吊下部材80と共に上定盤40が降下する。
【0025】
尚、図2Bにおいて、上定盤40が自重により又は所定の圧力下で下定盤30に載置された複数のガラス基板の上面に当接した状態になっている。
【0026】
図3は下定盤に載置されたキャリヤを示す平面図である。図3に示されるように、下定盤30の上面31には、複数のキャリヤ160が載置される。キャリヤ160は、ガラス基板200よりも薄い樹脂材により円盤状に形成されており、ガラス基板200が収納される多数の収納孔161が同心円状に設けられている。多数の収納孔161は、夫々収納された各ガラス基板200の外周をガタツキなく保持する寸法に形成されている。尚、本実施例では、キャリヤ160が5個配された構成を一例として示すが、これに限らず、下定盤30とキャリヤ160との大きさ(直径)に応じて5個以上又は5個未満配置しても良い。
【0027】
また、下定盤30の上面31の回転中心孔には、サンギア32が下方から挿通され、下定盤30の上面31の外周の外側には、キャリヤ160のギア162と噛み合う位置に、インターナルギア33が設けられている。キャリヤ160は、外周に形成されたギア162がサンギア32及びインターナルギア33に噛合している。そのため、キャリヤ160は、下定盤30が基台20に設けられた駆動モーターによって回転駆動するのに伴ってインターナルギア33がサンギア32に対して周方向に相対回転(すなわち、インターナルギア33がサンギア32に対して周方向で反対方向に回転)すると共に、自転しながらサンギア32の周方向に公転する。また、サンギア32及びインターナルギア33も、それぞれを駆動するための駆動モーターによって自転する。これにより、各キャリヤ160の各収納孔161に収納された各ガラス基板200の研磨量の片寄りを防止して研磨後のガラス基板の板厚を均一化できる。
【0028】
図4は図3中A−A線に沿う断面を模式的に拡大して示す縦断面図である。図4に示されるように、研磨時は、下定盤30の上面31に保持された下側研磨パッド210が各ガラス基板200の下面に接しており、且つ昇降機構50により研磨位置に降下した上定盤40に保持された上側研磨パッド220が各ガラス基板200の上面に接している。そのため、両面研磨装置11においては、上定盤40及び下定盤30が相対回転(すなわち、上定盤40が下定盤30に対して周方向で反対方向に回転)することで、上定盤40と下定盤30との間でキャリヤ160に保持された各ガラス基板200の上面及び下面を同時に研磨することが可能になる。尚、各ガラス基板200に接する下側研磨パッド210、上側研磨パッド220の表面が研磨面となる。
【0029】
ここで、基台20に設けられた駆動部の構成について説明する。
【0030】
図5は、基台20に収容された駆動部の一部分を断面で示した、駆動部の構成図である。上定盤40、下定盤30、サンギア32及びインターナルギア33は、基台20の内側下面に設けられた台上に同一の軸線の周りに回転可能に支持されている。特に、上定盤40の回転駆動軸であるモーター駆動軸61の下端は、ベアリング21を介して、基台20内のギアボックス23に固定されたスタッド22に回転自在に支持されている。上定盤40の回転軸であるモーター駆動軸61、下定盤30、サンギア32及びインターナルギア33には、それぞれ、第1モーターM1、第2モーターM2、第3モーターM3及び第4モーターM4からの回転動力が駆動ギアを介して伝達される。上定盤40を回転駆動するモーター駆動軸61は、駆動ギア61aを介してモーターM1に連結され、下定盤30は、駆動ギア30aを介してモーターM2に連結され、サンギア32は、駆動ギア32aを介してモーターM3に連結され、インターナルギア33は、駆動ギア33aを介してモーターM4に連結される。これらの各駆動ギアは、潤滑油で満たされたギアボックス23に収容されている。図5では、駆動モーターとして、4つのモーターの場合が示されている。しかしながら、これらの駆動モーターを一つ又は二つ以上のモーターとしてもよい。一つ又は二つ以上のモーターから歯車装置を介して動力を分岐させて各ギアを駆動して、モーター駆動軸61、下定盤30、サンギア32及びインターナルギア33のそれぞれを回転させてもよい。
【0031】
上定盤40は、モーターM1の駆動力に対応した回転速度で回転し、下定盤30が、モーターM2の駆動力に対応した回転速度で回転する。下定盤30は、上定盤40に対して逆方向に回転する。また、サンギア32は、モーターM3の駆動力に対応した回転速度で回転し、インターナルギア33は、モーターM4の駆動力に対応した回転速度で回転する。
【0032】
また、上定盤40等を回転駆動する駆動モーターは、基台20の内部に配置されており、フレーム70(図1参照)には設けられていないので、装置全体の重心を低くして研磨動作時の振動を抑制すると共に、研磨動作時の安定性がより高められている。
【0033】
図6は、制御部90により制御される各機器を示す制御系のブロック図である。図6に示されるように、制御部90は、昇降用シリンダ装置52、基台20の内部に設けられたモーターM1〜M4、モニタやスピーカ等の報知手段310、作業者や他の制御部からの入力情報を受け付ける入力装置330、所定の基準位置に対する上定盤40の上下変位方向での相対位置を計測する接触式変位センサ65、ギアボックス23の温度を例えば熱電対によって検出する温度センサ66などと電気的に接続されており、各機器を制御するための制御信号を生成する。制御部90は、CPU等の演算処理装置を備え、演算処理装置により処理される所定のプログラムに従って、上記制御信号を生成する。
【0034】
制御部90は、接触式変位センサ65及び温度センサ66の検出値に応じた出力信号に従って、ガラス基板の研磨量(板厚)を算出する。また、制御部90は、接触式変位センサ65等からの出力信号に従って、上定盤40による、下定盤30に載置された複数のガラス基板の上面に対する圧力を増減させる加減圧動作と、上定盤40等を回転駆動するためのモーターM1〜M4の回転とを制御することによって、ガラス基板の研磨量(板厚)を調整する。
【0035】
入力装置330は、制御部90外部からの情報を受け付けて制御部90に伝達するインターフェイス装置である。入力装置330は、例えば、作業者が入力情報を入力するための操作部(例えば、タッチパネル、ボタン、レバー、キーボードなど)や、パソコンなどの外部のコンピュータとの接続を可能にする通信インターフェイス装置である。
【0036】
図7は、接触式変位センサ65の取り付け状態を示した模式的な断面図である。接触式変位センサ65は、上定盤40の上下変位方向の相対位置を計測することによって、ガラス基板の板厚を検出する装置である。接触式変位センサ65は、上定盤40又は上定盤40と一体に変位する部材に取り付けられている。図7は、ピストンロッド54に接続され上定盤40と一体に動く板状取付部材80cに取り付けられた例を示している。接触式変位センサ65は、測定子65aと、検出部65bと、コード65cとを備える。検出部65bは、板状取付部材80cに固定され、測定子65aを上下方向にストローク可能に支持する。検出部65bは、測定子65aのストローク量を検出し、その検出値に応じた出力信号を、コード65cを介して上述の制御部90に出力する。
【0037】
図8は、接触式変位センサ65の測定子65aの先端が接触するモーター駆動軸61の上端部を示した部分断面斜視図である。図8は、下定盤30の上面に接触している上定盤40の一部が切り取られた状態を示している。測定子65aの下側先端部は、上定盤40を回転駆動するモーター駆動軸61と共に回転する結合部62の上面に形成された超硬チップ64に接触する。測定子65aの下側先端部が超硬チップ64を介してモーター駆動軸61の上端部に接触するので、モーター駆動軸61が回転しても、測定子65aの下側先端部が磨耗することを抑えることができる。超硬チップ64は、モーター回転軸61と共に回転する構成でもよいが、モーター回転軸61の回転に対してフリーに支持される構成であれば、測定子65aの下側先端部の磨耗を更に抑制できる。
【0038】
モーター駆動軸61に回転駆動される上定盤40がガラス基板の研磨量に応じて下降すると、モーター駆動軸61の上端部に下側先端部が接触する測定部65aは、その下降量に応じて検出部65b内に押し込まれる。つまり、接触式変位センサ65は、上定盤40の上下方向の変位量を、ガラス基板の板厚変化量として検出できる。
【0039】
ここで、制御部90が実行する研磨工程の制御処理及び作業者が行う作業の手順について図9A、図9Bのフローチャートを参照して説明する。
【0040】
図9AのS11で制御部90は、両面研磨装置11の電源スイッチがオンに操作されたか否かをチェックしており、電源スイッチがオンなると、S15に進む。S15では、昇降用シリンダ装置52の下室への供給圧力P1を高くすることにより(このとき、昇降用シリンダ装置52の上室は大気開放、P2は大気圧)、ピストンロッド52を上方に駆動して吊下部材80と共に上定盤40を上昇させる(図2A参照)。これにより、上定盤40は、下定盤30の上方に離間する。
【0041】
次のS17では、作業者が下定盤30の上面にキャリヤ160をセットする。続いて、S19では、作業者がキャリヤ160の各収納孔161にガラス基板200をセットする。
【0042】
S21では、制御部90が昇降用シリンダ装置52の下室への供給圧力P1を低くすることにより(このとき、昇降用シリンダ装置52の上室は大気開放、P2は大気圧)、ピストンロッド52を上定盤40の自重で下方(Zb方向)に駆動させる(図2B参照)。これにより、吊下部材80と共に上定盤40がシリンダ52のストロークエンドまで降下し、上定盤40に連結されたキー81が結合部62のキー溝62aに嵌合すると(図1参照)、上定盤40の下面に配された上側研磨パッド220がキャリヤ160に保持された各ガラス基板200の上面に当接する。この上側研磨パッド220がガラス基板200に当接した状態では、上定盤40の質量によって又は所定の圧力によって、各ガラス基板200の上面に圧力が作用している。
【0043】
S23では、制御部90は、入力装置330から入力された入力値を、今回のバッチの研磨条件として設定する。入力値として、例えば、ガラス基板の枚数N、前回のバッチでの仕上がり板厚値T、目標板厚値Aが入力される。ガラス基板の枚数Nは、1バッチ(1研磨処理)のガラス基板の枚数(すなわち、一研磨装置の全キャリヤ160上に配置されて研磨されるガラス基板の枚数)に相当する。
【0044】
S25では、制御部90がクーラント液又はスラリーを上定盤40側から(例えば、上定盤40に空けた複数の孔から)供給する。さらに、S27に進み、モーターM1〜M4を起動させて、モーター駆動力を下定盤30及び上定盤40に伝達する。
【0045】
S29では、研磨開始直後に制御部90が加圧制御をすることにより、上定盤40の下面に装着された上側研磨パッド220は、キャリヤ160に保持された各ガラス基板200の上面に所定の圧力で押圧する。
【0046】
次のS31では、制御部90は、後述の方法で、ガラス基板の研磨中に実際に測定して得られた研磨中板厚値Tcを補正した値である板厚補正値Tpを算出する。S33で、制御部90は、研磨中に逐次算出される板厚補正値Tpが目標板厚値Aに到達したか否かを判断する。到達していなければ、S31を継続する。
【0047】
S33において、研磨の進行に伴い減少する板厚補正値Tpが目標板厚値Aに達したときは、図9BのS35に進み、ガラス基板の研磨を終了させるため、制御部90は減圧制御をする。減圧制御による加圧の解除により、ガラス基板の研磨は終了する。
【0048】
S33において板厚補正値Tpが目標板厚値Aに到達した時点で、加圧を解除することによってガラス基板の研磨を停止させてもよいし、加圧圧力を段階的に下げてからガラス基板の研磨を停止させてもよいし、モーターの回転を停止させることによってガラス基板の研磨を停止させてもよい。
【0049】
次のS37では、駆動モーターM1〜M4への通電を停止して回転トルクをゼロにする。続いて、S39では、クーラント液又はスラリー供給を停止する。
【0050】
次のS41では、研磨完了したことを報知手段310により音声ガイドまたはモニタ表示で報知する。
【0051】
続いて、S43に進み、昇降用シリンダ装置52の下室への供給圧力P1を高くすることにより(このとき、昇降用シリンダ装置52の上室は大気開放、P2は大気圧)、ピストンロッド54を上昇動作させて上定盤40を下定盤30の上方(Za方向)に移動する(図2A参照)。このような上定盤40の上昇動作により、研磨が完了した複数のガラス基板200及びキャリヤ160を取り出すことが可能になる。
【0052】
次のS45では、作業者が下定盤30からキャリヤ160を取り出す。続いて、S47では、作業者が下定盤30上から研磨完了したガラス基板200を全て取り出す。S53において、引き続き研磨を継続する場合は、前述したS15に戻り、S15以降の手順を繰り返す。
【0053】
次に、S31とS33での動作について詳細説明する。本発明の一実施形態である両面研磨装置11は、毎回同じ目標板厚値Aに従ってガラス基板の研磨処理を行う研磨手段L1として、上定盤40及び下定盤30を備えている。また、両面研磨装置11は、研磨手段L1によって今回のバッチで研磨されているガラス基板の研磨中板厚値Tcを現時点の板厚値として研磨中逐次測定する測定手段L2として、接触式変位センサ65及び制御部90を備えている。また、両面研磨装置11は、研磨手段L1によって前回以前のバッチで研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値Tと目標板厚値Aとの仕上がり誤差(T−A)に基づいて、測定手段L2による測定によって得られた研磨中板厚値Tcの補正値として板厚補正値Tpを研磨中逐次算出する算出手段L3として、制御部90を備えている。そして、研磨手段L1は、算出手段L3によって算出された板厚補正値Tpが目標板厚値Aに到達するまでガラス基板を研磨するものである。
【0054】
このような構成を有する両面研磨装置11によれば、板厚補正値Tpは前回以前のバッチでの仕上がり誤差(T−A)を加味した補正値であるので、測定手段L2による測定によって得られた研磨中板厚値Tcが目標板厚値Aに到達するまでガラス基板を研磨する場合に比べて(すなわち、仕上がり誤差(T−A)を加味しない場合に比べて)、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる。
【0055】
特に、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えるという点で、板厚補正値Tpは、少なくとも前回のバッチでの仕上がり誤差を加味した補正値であるのが好ましく、前回及び前回よりも前の一又は二以上の回のバッチでの仕上がり誤差を加味した補正値であるのがより好ましい。
【0056】
例えば、板厚補正値Tpは、測定手段L2によって測定される研磨中板厚値Tcに、仕上がり誤差(T−A)に基づいて今回のバッチの初期補正値として算出される第1の補正値Xを加算した値である。この場合、今回のバッチでの補正値Xが、研磨手段L1によって前回のバッチで研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値をTn−1,係数k1を0.5≦k1≦0.8,係数k2をk2=1−k1とするとき、漸化式
=k1×(Tn−1−A)+k2×Xn−1 ・・・(1)
に基づいて算出されると、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えるという点で、好適である。係数k1が0.6≦k1≦0.7を満たす値であれば、更に好適である。後述の実施例では、k1=2/3,k2=1/3とした。また、nは2以上の整数であって、nが今回のバッチを表すラベルとしたとき、n−1は前回のバッチを表すラベルであり、n−2は前々回のバッチを表すラベルである。
【0057】
なお、仕上がり板厚値Tは、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えるという点で、精密電子天秤等を用いて、研磨加工前後の質量変化量を実測することによって求めるとよい(質量法)。研磨加工前後の質量変化量を、ガラス基板の比重と両主平面の面積(主平面の面積×2)で除することにより、ガラス基板の片側主平面の研磨量を算出でき、研磨加工後の質量をガラス基板の比重と主平面の面積(主平面の面積)で除することにより、ガラス基板の仕上がり板厚値を算出できる。
【0058】
また、研磨中板厚値Tcは、目標板厚値Aに残研磨量ΔDpを加算した値として表すことができる。すなわち、
Tc=A+ΔDp ・・・(2)
という関係式が成り立つ。残研磨量ΔDpとは、今回のバッチにおいて現時点で研磨されるべき残りの板厚値を意味する。
【0059】
また、両面研磨装置11は、ガラス基板の板厚を検出する板厚検出手段L4として、接触式変位センサ65を備えている。したがって、研磨手段L1によって今回のバッチで研磨されているガラス基板の研磨中板厚を板厚検出手段L4が検出することにより得られる研磨中板厚検出値をDp、研磨手段L1によって前回のバッチでの研磨が終了した時点でのガラス基板の仕上がり板厚を板厚検出手段L4が検出することにより得られる仕上がり板厚検出値をDn−1とおくと、残研磨量ΔDpは、演算式
ΔDp=Dp−Dn−1 ・・・(3)
によって算出可能である。研磨中板厚検出値Dpは、今回のバッチの研磨が開始されてから所定時間毎(例えば、1秒毎)に検出される値であるため、残研磨量ΔDpも、その所定時間毎に算出され得る。
【0060】
つまり、測定手段L2は、演算式(3)に従って算出した残研磨量ΔDpを関係式(2)に代入することによって、研磨中板厚値Tcを逐次測定できる。そして、算出手段L3は、測定手段L2によって得られた研磨中板厚値Tcの今回のバッチでの補正値として板厚補正値Tpを算出する。
【0061】
例えば、板厚補正値Tpの算出例として、研磨中板厚値Tcを今回のバッチでの補正値Xによって補正した値を、板厚補正値Tpとして算出する方法が挙げられる。具体的には、算出手段L3は、演算式
Tp=Tc+X ・・・(4)
に基づいて、板厚補正値Tpを算出する。板厚補正値Tpは、今回のバッチの研磨が開始されてから所定時間毎(例えば、1秒毎)に算出される。
【0062】
研磨中板厚値Tcは、ガラス基板の研磨が進むにつれて残研磨量ΔDpと共に減少するので、演算式(4)に基づいて逐次算出される板厚補正値Tpは、目標板厚値Aに次第に近づくことになる。そして、板厚補正値Tpが目標板厚値Aに達した段階で、研磨手段L1によるガラス基板の研磨を終了させる。なお、今回のバッチでの研磨が終了した時点での研磨中板厚検出値Dpが、今回のバッチでの研磨が終了した時点での仕上がり板厚検出値Dに相当する。
【0063】
このように、演算式(4)に基づいて算出した板厚補正値Tpに従って、ガラス基板の研磨を制御することによって、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる。
【0064】
また、両面研磨装置11は、研磨手段L1の回転駆動軸に連結したギアを収容するギアボックスの温度を検出する温度検出手段L5として、図6に示した温度センサ66を備えている。温度センサ66は、図5に示したギアボックス23の温度を検出する。ギアボックス23の温度は、駆動ギア61a等が回転すると、上昇する。このギアボックス23の温度変化により、ギアボックス23自体が膨張又は収縮すると、ギアボックス23に固定されたスタッド22によって支持されるモーター駆動軸61が変位してしまう。このモーター駆動軸61の変位は、測定手段L2の測定誤差を生む要因のため、ガラス基板の加工精度に影響を与える。例えば、モーター駆動軸61が下方に変位すると、測定手段L2はガラス基板の板厚を研磨されていない側に誤って測定してしまうため、研磨手段L1は必要以上にガラス基板を研磨してしまう。
【0065】
そこで、上記の板厚補正値Tpが、研磨中板厚値Tcを、温度検出手段L5によって検出される温度に基づいて今回のバッチの研磨中補正値として算出される第2の補正値Ypによって補正される値であれば、ギアボックス23の温度変化に伴うモーター駆動軸61の変位量を逐次補正しながら研磨できるので、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる。
【0066】
例えば、第2の補正値Ypは、ギアボックス23の温度変化により測定手段L2によって得られる研磨中板厚値Tcが変化することから、ギアボックス23の温度変化量Δtに基づいて算出されるとよい。具体的には、温度変化量Δtは、前回のバッチの終了時点におけるギアボックス23の前回温度t1から、今回のバッチにおける現時点でのギアボックス23の研磨中温度t2を、差し引いた値であればよい。前回温度t1及び研磨中温度t2は、温度検出手段L5によって検出される。研磨中温度t2は、今回のバッチの研磨が開始されてから所定時間毎(例えば、1秒毎)に検出される値であるため、第2の補正値Ypも、その所定時間毎に算出され得る。
【0067】
図10は、前回のバッチでの仕上がり誤差(Tn−1−A)と温度変化量Δtと相関関係を示した図である。図10には、両面研磨装置11を実際に動作させることによって得られた複数のサンプルデータがプロットされている。図10に示されるように、前回のバッチでの仕上がり誤差(Tn−1−A)と温度変化量Δtとの間には直線的な相関関係がある。そこで、算出手段L3は、bを係数として、演算式
Yp=b×Δt ・・・(5)
に基づいて、第2の補正値Ypを算出する。係数bを求めるためには、仕上がり誤差(Tn−1−A)の実データと温度変化量Δtの実データとの関係を一次式で回帰分析することによって算出できる。係数bは、研磨装置間でバラツキがあるため、研磨装置毎に求められるとよい。
【0068】
したがって、算出手段L3は、逐次算出される研磨中板厚値Tcを、係数bの値が特定された演算式(5)に基づいて逐次算出される第2の補正値Ypによって補正した値を、板厚補正値Tpとして算出できる。
【0069】
具体的には、算出手段L3は、演算式
Tp=Tc+Yp ・・・(6)
に基づいて、板厚補正値Tpを算出する。板厚補正値Tpは、今回のバッチの研磨が開始されてから所定時間毎(例えば、1秒毎)に算出される。
【0070】
研磨中板厚値Tcは、ガラス基板の研磨が進むにつれて残研磨量ΔDpと共に減少するので、演算式(6)に基づいて逐次算出される板厚補正値Tpは、目標板厚値Aに次第に近づくことになる。そして、板厚補正値Tpが目標板厚値Aに達した段階で、研磨手段L1によるガラス基板の研磨を終了させる。なお、今回のバッチでの研磨が終了した時点での研磨中板厚検出値Dpが、今回のバッチでの研磨が終了した時点での仕上がり板厚検出値Dに相当する。
【0071】
このように、演算式(6)に基づいて算出した板厚補正値Tpに従って、ガラス基板の研磨を制御することによって、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる。
【0072】
また、算出手段L3は、演算式(4)と(6)を組み合わせた演算式
Tp=Tc+X+Yp ・・・(7)
に基づいて算出された板厚補正値Tpに従って、ガラス基板の研磨を制御することによって、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で更に抑えることができる。
【0073】
このように、上述の実施形態によれば、手間や高いコストを掛けることなく、精度高くガラス基板の研磨加工を制御することができ、品質安定性に優れるガラス基板を、生産性高く提供できる。
【0074】
なお、上述の実施形態は両面研磨装置であったが、本発明の実施形態は、片面研磨装置でもよいし、基板側面(端面)の研磨装置でもよい。また、本発明の実施形態は、研磨速度の速い研磨工程(例えば、遊離砥粒を用いた遊離砥粒ラッピング工程、固定砥粒工具を用いた固定砥粒ラッピング工程など)に、特に好適に使用される。
【0075】
本発明の実施形態のガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板でもよいし、フォトマスク用ガラス基板でもよい。また、液晶や有機EL等のディスプレイ用ガラス基板でもよいし、レンズ、光学フィルター、光ピックアップ素子などの光学部品用ガラス基板でもよい。また、半導体用の基板(シリコン基板、炭化ケイ素基板など)でもよい。
【0076】
本発明の実施形態のガラス基板は、アモルファスガラスでもよいし、結晶化ガラスでもよく、化学強化ガラスでもよい。また、本発明の実施形態のガラス基板のガラス素基板は、フロート法で造られたものでも良く、プレス成形法で造られたものでもよく、フュージョン法で造られたものでもよい。
【0077】
本発明の実施形態である両面研磨装置は、4個のモーターの回転による駆動力によってガラスを研磨する4ウェイ方式であるが、1個のモーターの回転による駆動力によってガラスを研磨する1ウェイ方式でもよいし、2個のモーターの回転による駆動力によってガラスを研磨する2ウェイ方式でもよいし、3個のモーターの回転による駆動力によってガラスを研磨する3ウェイ方式でもよい。また、4個以上のモーターの回転による駆動力によってガラスを研磨する研磨装置でもよい。
【0078】
2ウェイ方式の両面研磨装置は、上下定盤が回転することなく固定されていて、工作物はモーターの回転駆動によって回転するインターナルギアとサンギアの双方と噛み合うキャリヤ内に保持されて運動し、上下定盤に挟み付けられる研磨圧のもとで研磨される形式のものである。3ウェイ方式の両面研磨装置は、インターナルギアとサンギアに加えて下定盤もモーターの回転駆動によって回転する形式のものである。
【0079】
また、ガラス基板の研磨は、モーターの駆動により発生する駆動力によって行われるが、本発明に係る研磨装置は、モーターの回転動作によって研磨定盤を回転させてガラス基板を研磨するものでもよいし、モーターの駆動動作によって研磨定盤を往復運動させることによってガラス基板を研磨するものでもよい。
【実施例】
【0080】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。本実施例では、図1に示したキー構造の両面研磨装置11を用いている。
【0081】
図11は、磁気記録媒体用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程を示したフローチャートである。磁気記録用ガラス基板の製造工程は、P1からP9までの工程を含む。工程P9の終了段階で、第1の最終製品である磁気記録媒体用ガラス基板が製造される。そして、磁気記録媒体用ガラス基板に対して、磁気ディスク製造工程P10を経ることによって、第2の最終製品である磁気ディスクが製造される。
【0082】
(形状加工工程P1)
フロート法で成形されたシリケートガラス板を、外径65mm、内径20mm、板厚0.635mmの磁気ディスク用ガラス基板が得られるような、ドーナツ状円形ガラス板(中央部に円孔を有する円盤状ガラス板)に加工した。このドーナツ状円形ガラス板の内周側面と外周側面を、面取り幅0.15mm、面取り角度45°となるように面取り加工を行った。
【0083】
(ラッピング工程P2)
その後、ガラス板上下面のラッピングを、酸化アルミニウム砥粒を用いて行い、砥粒を洗浄除去した。図1の両面研磨装置11をラッピング工程P2で使用し、ラップ研磨を行った。
【0084】
【表1】

表1は、ラッピング工程P2の終了段階でのガラス基板の仕上がり板厚値の測定結果である。実施例1は、演算式(4)に基づいて算出した板厚補正値Tpに従って、ガラス基板の研磨を制御した場合を示す。実施例2は、演算式(7)に基づいて算出した板厚補正値Tpに従って、ガラス基板の研磨を制御した場合を示す。比較例は、本発明の補正がされていない研磨中板厚値Tcに従って、ガラス基板の研磨を制御した場合(従来方法)を示す。目標板厚値Aは、いずれも671μmである。
【0085】
比較例(従来方法)と実施例とを比較するため、仕上がり板厚値の測定は、精密電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ 型式FX−120i)を用い、研磨加工前後の質量変化量を測定することにより行った(質量法)。研磨加工後の質量を、ガラス基板の比重と主平面の面積で除することにより、仕上がり板厚値を算出した。
【0086】
表1に示されるように、目標板厚値671μmに対して研磨しすぎている板厚値(666μm以下の仕上がり板厚値)が測定されたバッチ数の総バッチ数に対する割合は、実施例1、2共に比較例よりも減少している(実施例1:3.2%、実施例2:2.0%、比較例:4.7%)。また、各バッチの平均仕上がり板厚値の標準偏差も、実施例1、2共に比較例よりも減少している(実施例1:2.48μm、実施例2:2.37μm、比較例:2.70μm)。このように、本発明を適用することにより、ガラス基板の板厚の仕上がり寸法バラツキをバッチ間で抑えることができる。
【0087】
(端面研磨工程P3)
内周側面と内周面取り部を研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を用いて研磨し、内周側面と内周面取り部のキズを除去し、鏡面となるように加工した。次に、内周端面研磨を行ったガラス基板を、外周側面と外周面取り部を研磨ブラシと酸化セリウム砥粒を用いて研磨し、外周側面と外周面取り部のキズを除去し、鏡面となるように加工した。内周端面研磨と外周端面研磨を行ったガラス基板は、アルカリ洗剤を用いたスクラブ洗浄と、アルカリ洗剤溶液への浸漬した状態での超音波洗浄により、砥粒を洗浄除去される。
【0088】
(1次研磨工程P4)
その後、研磨具として硬質ウレタンパッドと酸化セリウム砥粒を含有した研磨液(平均粒子径約1.4μmの酸化セリウムを主成分とした研磨液組成物)を用いて、両面研磨装置により上下主平面を研磨加工した。
【0089】
(2次研磨工程P5)
研磨加工を行ったガラス基板は、研磨具として軟質ウレタンパッドと上記の酸化セリウム砥粒よりも平均粒子径が小さい酸化セリウム砥粒を含有した研磨液(平均粒子径約0.5μmの酸化セリウムを主成分とする研磨液組成物)を用いて、両面研磨装置により上下主平面の研磨加工を行い、酸化セリウムを洗浄除去した。
【0090】
(3次研磨工程P7)
更に、仕上げ研磨の研磨具として軟質ウレタンパッドとコロイダルシリカを含有する研磨液(一次粒子の平均粒子径20〜30nmのコロイダルシリカを主成分とする研磨液組成物)を用いて、両面研磨装置により上下主平面を研磨加工した。
【0091】
(洗浄工程P9)
仕上げ研磨後のドーナツ状円形ガラス板を、アルカリ洗剤によるスクラブ洗浄、アルカリ洗剤溶液への浸漬した状態での超音波洗浄、純水へ浸漬した状態での超音波洗浄、を順次行い、IPA蒸気にて乾燥した。
【0092】
その結果、ラッピング工程P2で本発明を適用することにより、最終製品である磁気記録媒体用ガラス基板(成膜前の磁気ディスクガラス基板)の板厚バラツキも抑えられ、板厚が高精度に制御できているガラス基板を得ることができた。
【0093】
また、ガラス基板の両主平面を研磨加工する段階において、同一バッチ内の板厚バラツキが小さく抑えられているため、同一バッチ内のガラス基板の主平面を均一に研磨でき、ガラス基板主平面の特性(例えば、表面粗さ、表面うねりなど。)が向上したガラス基板製品を得ることができた。
【0094】
なお、本実施例は本発明をラッピング工程に適用した場合を示したが、1次研磨工程、2次研磨工程、3次研磨工程に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0095】
11 両面研磨装置
20 基台
21 ベアリング
22 スタッド
23 ギアボックス
30 下定盤
30a,32a,33a,61a 駆動ギア
31 上面
32 サンギア
33 インターナルギア
40 上定盤
50 昇降機構
52 昇降用シリンダ装置
54 ピストンロッド
60 回転伝達機構
61 モーター駆動軸
62 結合部
62a キー溝
64 超硬チップ
65 接触式変位センサ
65a 測定子
65b 検出部
65c コード
66 温度センサ
70 フレーム
72 梁
80 吊下部材
80a 支柱
80b 円環状取付部材
80c 板状取付部材
81 キー
82 支軸
90 制御部
160 キャリヤ
161 収納孔
162 ギア
200 ガラス基板
210 下側研磨パッド
220 上側研磨パッド
310 報知手段
330 入力装置
M1〜M4 モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毎回同じ目標板厚値に従ってガラス基板の研磨処理を行う研磨手段を備える、研磨装置であって、
前記研磨手段によって今回の研磨処理で研磨されているガラス基板の研磨中板厚値を測定する測定手段と、
前記研磨手段によって前回以前の研磨処理で研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値と前記目標板厚値との仕上がり誤差に基づいて、前記測定手段によって測定される研磨中板厚値の板厚補正値を算出する算出手段とを備え、
前記研磨手段は、前記板厚補正値が前記目標板厚値に到達するまでガラス基板を研磨する、ことを特徴とする、研磨装置。
【請求項2】
前記板厚補正値が、前記測定手段によって測定される研磨中板厚値を、前記仕上がり誤差に基づいて今回の研磨処理の補正値として算出される第1の補正値Xによって補正される値であって、
前記第1の補正値Xが、前記目標板厚値をA,前記研磨手段によって前回の研磨処理で研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値をTn−1,係数k1を0.5≦k1≦0.8,係数k2をk2=1−k1とするとき、漸化式
=k1×(Tn−1−A)+k2×Xn−1
に基づいて算出される、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
ガラス基板の板厚を検出する板厚検出手段を備え、
前記測定手段によって測定される研磨中板厚値が、前記目標板厚値に、前記研磨手段によって今回の研磨処理で研磨されているガラス基板の研磨中板厚を前記板厚検出手段が検出することにより得られる研磨中板厚検出値と前記研磨手段によって前回の研磨処理で研磨されたガラス基板の仕上がり板厚を前記板厚検出手段が検出することにより得られる仕上がり板厚検出値との差分値を加算した値である、請求項1又は2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記板厚検出手段が、前記研磨手段の上下変位方向での位置を計測することによって、ガラス基板の板厚を検出する、請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記板厚検出手段が、前記研磨手段の回転駆動軸を計測基準位置として、前記位置を計測する、請求項4に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記研磨手段の回転駆動軸に連結したギアを収容するギアボックスの温度を検出する温度検出手段を備え、
前記板厚補正値が、前記測定手段によって測定される研磨中板厚値を、前記温度検出手段によって検出される温度に基づいて算出される第2の補正値によって補正される値である、請求項1から5のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記第2の補正値が、前記ギアボックスの前回の研磨処理終了時点温度と前記温度検出手段によって今回の研磨処理で検出されている前記ギアボックスの研磨中温度との温度変化量に基づいて算出される、請求項6に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記第2の補正値が、前記仕上がり誤差と前記温度変化量との予め求められた相関関係に基づいて算出された、今回の研磨処理で実際に算出された温度変化量に対応する仕上がり誤差である、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記相関関係が、一次関数で特定される、請求項8に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記研磨手段が、ラッピング工程用研磨手段である、請求項1から9のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記ガラス基板が、磁気記録媒体用ガラス基板である、請求項1から10のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項12】
毎回同じ目標板厚値に従ってガラス基板の研磨処理を研磨手段によって行う、ガラス基板の研磨方法であって、
前記研磨手段によって今回の研磨処理で研磨されているガラス基板の研磨中板厚値を測定手段によって測定し、
前記研磨手段によって前回以前の研磨処理で研磨されたガラス基板の仕上がり板厚値と前記目標板厚値との仕上がり誤差に基づいて、前記測定手段によって測定される研磨中板厚値の板厚補正値を算出手段によって算出し、
前記板厚補正値が前記目標板厚値に到達するまで前記研磨手段によってガラス基板を研磨する、ことを特徴とする、ガラス基板の研磨方法。
【請求項13】
前記研磨手段が、ラッピング工程用研磨手段である、請求項12に記載のガラス基板の研磨方法。
【請求項14】
前記ガラス基板が、磁気記録媒体用ガラス基板である、請求項12又は13に記載のガラス基板の研磨方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載のガラス基板の研磨方法によってガラス基板を研磨する研磨工程を含む、ガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−81553(P2012−81553A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229712(P2010−229712)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】