説明

ガラス板の製造方法

【課題】ガラス板の端面の研削加工を従来に比べて高速化する際に、端面の品質を維持したガラス板を安定して製造する。
【解決手段】ガラス板の製造方法は、成形されたガラス板を搬送しながら、研削ホイールを回転させることによりガラス板の端面を研削し、前記ガラス板の端面の研削の合計長さが所定長を超える毎に、前記研削ホイールの砥粒のドレッシングを行う。前記研削ホイールの砥粒は、成長ダイヤモンドからなる砥粒であり、前記砥粒の表面に金属コートが施され、前記研削ホイールは、前記砥粒を接合ずるボンド材として、銅を50質量%以上含む合金を用いる。ガラス板の搬送速度は、例えば10m/分以上であり、研削ホイールのドレッシングは、前記ガラス板の端面の研削の合計長さが500mを超える毎に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形されたガラス板の端面を研削する工程を含んだガラス板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フラットパネルディスプレイ等のガラス板を製造する際、成形されたガラス板を所定の大きさに切断する。ガラス板の切断では、機械的な切断とレーザによる溶断があり、一般的には機械的な切断が多く用いられている。機械的な切断によるガラス板の切断では、ガラス板に機械的に切れ目を入れて切断するため、切断された端面には、数μm〜100μm程度の深さのクラックが生成されている。このクラックは、ガラス板の機械的強度の劣化を招くため、このクラックは、研削により取り除くことが行われる。すなわち、ガラス板の機械的強度を上げ、ガラス板のカケ、ワレを防止し、後工程でのハンドリングをし易くするために、ガラス板の端面の面取りを伴う研削が行われる。
【0003】
図6は、製造工程中の1ラインにおけるガラス板の端面の加工処理の流れを示す図である。ガラス板の端面加工処理ライン10には、第1面取り機12、第2面取り機14、コーナーカット機16、および反転機18と、が設けられ、第1面取り機12、反転機18、第2面取り機14、および、コーナーカット機16が、搬送経路の上流側から順に配置されている。
【0004】
図6に示すように、ガラス板Gを搬送しながら、第1面取り機12において、矩形状のガラス板Gの短辺の端面について、搬送経路の両側に設けられた研削用ダイヤモンドホイール12aを用いて研削が行われる。この後、搬送経路の両側に設けられた研磨用ホイール12bを用いて研削されたガラスGの端面の研磨が行われる。研磨後、反転機18は、ガラス板Gの向きを90度回転させて、搬送経路に沿ってガラス板Gを第2面取り機14に搬送する。第2面取り機14において、矩形状のガラス板Gの長辺の端面に対して、搬送経路の両側に設けた研削用ダイヤモンドホイール14aを用いて研削を行い、この後、搬送経路の両側に設けられた研磨用ホイール14bを用いて研削されたガラス板Gの端面の研磨が行われる。この後、コーナーカット機16にガラス板Gは搬送され、コーナーカット用ダイヤモンドホイール16aを用いてガラス板Gのコーナーが研削、研磨される。この場合、ガラス板Gの搬送速度は、例えば5m/分とされて、ガラス板の連続生産が行われる。
これが、製造工程中の1ラインにおけるガラス板の端面の加工処理の流れである。
【0005】
また、厚さ3mm以下のガラス板の縁部を仕上げる方法が知られている(特許文献1)。当該方法は、ガラス板の縁部の全幅を35マイクロメートル以下だけ減小しながら該縁部の上と下を面取りして面取り面を形成し、該面取り面のそれぞれとそれに近接する前記ガラス板の主要面との間の角度を40度未満にする面取り工程と、前記各面取り面と前記ガラスシートの元の縁部との交差により形成される各縁部に丸みを付ける工程と、を含む。
【0006】
上記方法により、ガラス板の縁部の仕上げの際、縁部に沿った小片、浅割れ、及び内層面破砕を抑制することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−9689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記公知の方法や図6に示されるガラス板の端面の加工処理において、ガラス板の製造量を増やすために、ガラス板を搬送する搬送速度を上昇させる必要がある。あるいは、ガラス板の大型化が進み、ガラス板の搬送速度を上昇させる必要がある。ガラス板の搬送速度を上昇させた場合、端面の品質を保つために、研削用ダイヤモンドホイールをより高速に回転させる方法がある。しかし、研削用ダイヤモンドホイールを高速に回転させる条件が、面取り機の仕様によって制限を受けて、十分に回転速度を増大できない場合がある。この場合、研削用ダイヤモンドホイールの研削条件は厳しくなる。このため、加工処理されたガラス基板の端面にあるクラックを除去できないばかりか、機械的強度に必要な平滑な端面が形成されない他、研削の際に火花が発生し、その結果「黒ヤケ」と呼ばれる、ガラス板の端面のクラックが発生し、ガラス板のワレを引き起こす場合がある。さらに、ガラス板の端面と研削用ダイヤモンドホイールの砥面との間で滑りが生じて高温化することにより、ガラス板の端面に微小クラックが無数に発生した「白ヤケ」が発生ずる場合もある。
【0009】
そこで、本発明は、ガラス板の端面の研削加工を従来に比べて高速化する際に、端面の品質を維持したガラス板を安定して製造するガラス板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ガラス板の製造方法であって、
成形されたガラス板を搬送しながら、研削ホイールを回転させることによりガラス板の端面を研削する工程と、
前記ガラス板の端面の研削の合計長さが所定長を超える毎に、前記研削ホイールのドレッシングを行う工程と、を有する。
前記研削ホイールの砥粒は、成長ダイヤモンドであり、前記砥粒の表面に金属コートが施され、前記研削ホイールは、前記砥粒を接合ずるボンド材として、銅を50質量%以上含む合金を用いる。
【0011】
本発明のガラス板の製造方法では、例えば、
成形されたガラス板を10m/分以上で搬送しながら、研削ホイールを回転させることによりガラス板の端面を研削する工程と、
前記ガラス板の端面の研削の合計長さが少なくとも500mを超える毎に、前記研削ホイールのドレッシングを行う工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
上述のガラス板の製造方法によれば、ガラス板の端面の研削加工を従来に比べて高速化する際に、ドレッシングの間隔を長くすることができ、端面の品質を維持したガラス板を安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態で用いる研削用ダイヤモンドホイールの外形形状を示す図である。
【図2】(a),(b)は、図1に示す研削用ダイヤモンドホイールの断面図とその拡大図である。
【図3】(a)は、本実施形態の研削用ダイヤモンドホイールの砥粒として用いる成長ダイヤの外形の模式図であり、(b)は、粉砕(プロセス)ダイヤの外形の模式図である。
【図4】図1に示す研削用ダイヤモンドホイールのチタン被膜を説明する図である。
【図5】ダイヤモンド砥粒が摩滅、磨耗される例を示す図である。
【図6】ガラス板の製造工程中の1ラインにおけるガラス板の端面の加工処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のガラス板の製造方法について本実施形態に基づいて詳細に説明する。
本実施形態で製造されるガラス板は、特に限定されないが、例えば、携帯電子機器等の電子機器の表示画面に用いるカバーガラスや、フラットディスプレイパネル等の表示装置の基板等に用いられる。
ガラス板の組成は特に限定されないが、例えば、以下の組成比率のガラス板に適用され得る。
(a)SiO:50〜70質量%、
(b)B:5〜18質量%、
(c)Al:10〜25質量%、
(d)MgO:0〜10質量%、
(e)CaO:0〜20質量%、
(f)SrO:0〜20質量%、
(o)BaO:0〜10質量%、
(p)RO:5〜20質量%(ただしRはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種である)、
(q)R’O:0.20質量%を超え2.0質量%以下(ただしR’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)、
(r)酸化スズ、酸化鉄および酸化セリウムから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を合計で0.05〜1.5質量%。
【0015】
本実施形態では、成形されたガラスをダウンドロー法により成形した後、所定の長さに裁断したガラス板を10m/分以上の搬送速度で搬送しながら、成形されたガラス板の端面研削及び端面研磨を行う。
本実施形態においても図6に示される端面加工処理ライン10を用いてガラス板の端面の加工が行われる。
本実施形態では、ガラス板の搬送速度を従来に対して高くした状態で行う端面の加工処理の中で、加工処理時間に大きな影響を与える研削用ダイヤモンドホイール12a,14aを用いた研削処理が、従来と異なる。
【0016】
図1は、本実施形態で用いる研削用ダイヤモンドホイール12aの外観形状を示す図である。研削用ダイヤモンドホイール14aも、研削用ダイヤモンドホイール12aと同様の形状及び構成を有するので、研削用ダイヤモンドホイール14aの説明は省略する。以下、研削用ダイヤモンドホイール12aは、単にホイール12aという。
【0017】
ホイール12aは、円板形状を成し、ホイール外周12cを有する円板形状の中心は第1面取り機12の回転軸に接続され、ホイール12aは一定の回転速度で回転する。
図2(a)は、ホイール12aの砥面を拡大した図であり、図2(b)は、ホイール12aの砥面の断面拡大図である。
円板形状の側面には、図2(a)に示すように、外周面12cが設けられ、外周面12cは、台金12dに固定された砥粒層12eの面となっている。砥面12gは、ガラス板Gの厚さに応じた幅を有する溝12fに設けられている。
なお、ホイール12aの回転方向については、ガラス板Gと接触するホイール12aの外周面12cの方向が、ガラス板Gの搬送方向と同じになるように、設定されてもよいし、逆の方向に設定されてもよい。
【0018】
砥粒層12eは、台金12dに固定されている。砥粒層12eは、ダイヤモンド砥粒20と金属ボンド22とを有する。ダイヤモンド砥粒20は、金属ボンド22を母相として、一定の密度で分散して設けられている。
ここで、ダイヤモンド砥粒20は、成長ダイヤモンド(以下、成長ダイヤという)が用いられ、成長ダイヤの表面には、CVD(Chemical Vapor Deposition)等により蒸着されたチタン被膜が形成されている。
ダイヤモンド砥粒20は、JIS R6001で規定されるF500の粒度を有することが好ましい。また、ダイヤモンド砥粒20が砥粒層12eに占める体積含有率は15%を上限とする。ダイヤモンド砥粒20の上記体積含有率は10%以下であることが好ましい。
【0019】
このようにダイヤモンド砥粒20の体積含有率を、15%を上限とすることにより、ガラス板Gの搬送速度を上げても、ガラス板Gの切り屑等の除去領域が確保されて切り屑の除去が有効に行われるので、ホイールの砥面12gの目詰まりは発生せず、ダイヤモンド砥粒20の摩滅も発生しない。また、研削中にダイヤモンド砥粒20が摩擦熱により600℃の高温以上になり、硬度が低下し研削能力が低下することもない。さらにまた、研削中にダイヤモンド砥粒20が800℃以上の高温になることもなく、火花が発生することもない。
また、ダイヤモンド砥粒20の粒度を、F500(JIS R6001)とすることにより、ガラス板Gの研削後のチッピング不良(100μmより大きなチッピングの発生)を抑制することができ、研削後の端面の算術平均粗さRaを1.0μm以下にすることができる。
なお、チッピングとは、研削後の端面において、部分的に大きく凹むように欠けた部分をいう。
【0020】
ダイヤモンド砥粒20に用いる成長ダイヤは、従来用いられているプロセス(粉砕)ダイヤモンド(以下、粉砕ダイヤという)と製法及び特性の点で異なる。
成長ダイヤは、結晶成長したダイヤモンドであり、炭素の溶媒の存在下、炭素含有材料に静的超高圧と高温とを作用させることにより、あるいは、炭素の溶媒を用いず、静的超高圧と高温を作用させてグラファイトからダイヤモンドへ直接変換させることにより、作製される人工ダイヤモンドである。
一方、粉砕ダイヤは、大きな成長ダイヤを粉砕し、所定のふるいにより分級したものであり、粉砕ダイヤともいわれる。
【0021】
成長ダイヤは、ブロック形状を成し、多面体構造を有している。一方、粉砕ダイヤは、成長ダイヤを粉砕したものであるため、形状が不均一であり、鋭角あるいは鈍角の角部が不規則に存在する。図3(a)は、成長ダイヤの外形の模式図であり、図3(b)は、粉砕ダイヤの外形の模式図である。
成長ダイヤは、立方八面体形状等をなし、図3(a)に示す互いに直交する方向の成長ダイヤの長さL1,L2を定めたとき、アスペクト比L2/L1は、例えば0.87であり、0.8以上であることが好ましい。これに対して、粉砕ダイヤは、不規則な形状をなし、図3(b)に示す互いに直交する方向の粉砕ダイヤの長さL1,L2を定めたとき、アスペクト比L2/L1は例えば0.73である。このように、成長ダイヤは粉砕ダイヤと比較して均等形状を成している。
【0022】
また、成長ダイヤは、粉砕ダイヤに対して機械的強度が高い。例えば、TI値(Toughness Index)は成長ダイヤの場合、例えば67%であるのに対して、粉砕ダイヤの場合例えば48%であり、成長ダイヤは粉砕ダイヤに比べてTI値が10%以上高く、60%以上である。なお、TI値は、以下の方法で測定されたものである。すなわち、所定の重量の成長粉砕ダイヤおよび粉砕ダイヤを、別々の容器に入れて、容器を激しく振った後、成長ダイヤと粉砕ダイヤのサイズを調べ、最初に分級されたサイズを維持する、すなわち、粉砕されなかったダイヤの重量の比率をTI値として求める。
このように、本実施形態で用いる成長ダイヤは、強度と形状の点で、従来より用いられている粉砕ダイヤと異なる。したがって、成長ダイヤをダイヤモンド砥粒に用いることは、研削中に破砕され難い点で、粉砕ダイヤに比べて好ましい。
【0023】
また、ダイヤモンド砥粒20は、表面に厚さ1μm程度のチタン被膜をコーティング膜としてCVD法等により形成している。後述するように、ダイヤモンド砥粒20の自生発刃性を得るために金属ボンド22の摩耗を促進させるような柔らかな金属を用いるが、この結果、金属ボンド22によるダイヤモンド砥粒20の保持力が低下する。このため、この保持力の低下を抑制するために、チタン被膜をダイヤモンド砥粒20に形成する。図4に示すように、チタン被膜24は、凹凸の激しい薄膜であるため、金属ボンド22の保持力が弱いとしても、ダイヤモンド砥粒20の表面に形成されたチタン被膜24の物理的形状により、ダイヤモンド砥粒20は金属ボンド22に保持されやすくなる。
【0024】
金属ボンド22は、鉄、コバルト、銅、スズを含有した合金であり、銅を50質量%以上含む。銅の成分を50質量%以上含ませることにより、金属ボンド22の研削による摩耗速度は速くなるが、ダイヤモンド砥粒20を常に表面に露出させることができ、自生発刃性を得やすい。金属ボンド22の含有する銅が50質量%未満で、鉄が50質量%以上である場合、金属ボンド22の摩耗速度は低く、砥粒保持力が強いため、自生発刃が起こりにくい。これによって、ガラス板Gの端面には、摩滅した砥粒とボンドにより異常研削状態に陥り、微小クラックが無数発生した「白ヤケ」が形成され、この結果、ガラス板Gの機械的強度が低下する。
このため、金属ボンド22は、鉄、コバルト、銅、スズを含有した合金であり、銅を50質量%以上含むことが好ましい。
【0025】
上記のような金属ボンド22の組成を用いることにより、ドレッシングするための間隔(加工距離)を従来に比べて長くすることができ、また、「白ヤケ」も抑制される。ホイール12aは、金属ボンド22がガラス板Gの端面の研削によって適切に削られ、ダイヤモンド砥粒20も金属ボンド22の削られる速度に応じてバランスよく破砕されることで、研削を長時間連続して続けることができる。
しかし、研削長さが長くなると金属ボンド22の削れとダイヤモンド砥粒20の破砕のバランスを常に一定に保つことは難しく、ガラス板Gの端面が満足できるように研削できない場合がある。このために、タイヤモンド砥粒20の砥面12gからの突出量を適切にするために、砥面12gの金属ボンド22の部分を削るドレッシングが行われる。このとき、目詰まりの原因となる切り屑等が金属ボンド22の表面から除去される。
【0026】
ドレッシングは、以下に示す方法によって行われる。例えば、ホワイトアランダム(酸化アルミ、WA)やグリーンカーボランダム(炭化ケイ素、GC)等を用いたスティック状あるいはブロック状の砥粒を回転するホイール12aに当ててドレッシングが行われる。このとき、ドレッシングに用いる砥粒は、ホイール12aの粒径よりも粗いものが用いられ、場合によっては、ホイール12aの粒径よりも細かいものが用いられる。また、電解ドレッシングあるいは放電ドレッシングを行うこともできる。
【0027】
このようなホイール12aが図6に示す第1面取り機12に設けられる。第2面取り機14のホイール14aについても、ホイール12aと同様のものが用いられる。
【0028】
このような図6に示すガラス板の端面加工処理ライン10では、一定の厚さに成形されたガラス板Gが、図示されない搬送機構によって10m/分以上の一定速度で、第1面取り機12に搬送される。第1面取り機12では、搬送速度を落とすことなく、ガラス板Gが搬送され、ホイール12aによってガラス板Gの端面が研削される。このとき、ホイール12aは、ガラス板Gの搬送速度をv(m/秒)とし、ホイール12aの砥面12gの周上における回転速度をV(m/秒)としたとき、v/Vが3.0×10-3以上の条件であっても、本実施形態の効果を達成し得る。このような条件は、従来に比べてホイール12aおよびガラス板Gにとって厳しい研削条件であるが、従来に比べて高速に研削を行うことができるとともに、ガラス板Gの端面の不良を極めて少なくすることができる。例えば、ホイール12aの外径を250mmとし、ガラス板Gの搬送速度vを10(m/分)、すなわち、0.167(m/秒)としたとき、ホイール12aの回転速度Vは46(m/秒)以下に設定される。
さらに、第1面取り機12では、研磨用ホイール12bを用いて、研削されたガラス板Gの端面が研磨される。ホイール12aにおける研削では、例えば、算術平均粗さRaが1.0μm以下となり、研磨ホイール14aでは、研削された端面上の0.1〜0.8μmの表面凹凸が研磨される。
【0029】
この後、ガラス板Gは反転機18に搬送される。反転機18では、ガラス板Gの向きを90度回転させて、搬送経路に沿ってガラス板Gを第2面取り機14に搬送する。第2面取り機14では、第1面取り機12と同様に、ガラス板Gが10(m/分)以上の一定の速度で搬送される。第2面取り機14においても、ガラス板Gの長辺の端面を、搬送経路の両側に設けた研削用ダイヤモンドホイール14aを用いて研削を行い、この後、搬送経路の両側に設けられた研磨用ホイール14bを用いて研磨が行われる。この後、コーナーカット機16にガラス板Gは搬送され、コーナーカット用ダイヤモンドホイール16aを用いてガラス板Gのコーナーが研削される。
上記研削、研磨およびコーナーカットでは、加工時に研削、研磨における摩擦熱を冷却するための冷却水が図示されないノズルから十分に供給される。
【0030】
従来、例えばガラス板Gの搬送速度5(m/分)において、端面の研削する長さの合計が150mになる毎に、ドレッシングをしなければならなかったが、本実施形態では、搬送速度10(m/分)において、端面の研削する長さの合計が少なくとも500m以上毎に、ドレッシングをする。このような研削においても、後述するように、ホイール12aの研削性能を保持し、ガラス板Gの研削後の端面の品質は確保され得る。つまり、従来に比べて高速に研削を行うことができ、安定して処理を行うことができる。
【0031】
[実施例、比較例]
以下、本発明の効果を調べるために種々の条件を用いて、ガラス板の端面の研削を行った。
ホイール12aの外径は250mmとし、図6に示すガラス板の端面加工処理ライン10を用いて研削を行った。
実施例および比較例において用いるダイヤモンドの粒度はいずれもF500(JIS R6001)とした。粒度がF500のダイヤモンド砥粒は、いずれも、ガラス板の端面のチッピングの大きさを100μm以下とし、研削後の算術平均粗さRaを1.0μm以下にすることができる。
【0032】
下記表1には、実施例および比較例の各条件を示している。なお、金属ボンドの種類における「銅系」とは、銅を50質量%以上含み、その他の成分としてスズなどを含む合金である。金属ボンドの種類における「鉄系」とは、鉄を50質量%以上含み、その他の成分としてスズなど含む合金である。
また、研削における加工距離が500m以上とは、少なくとも500mの研削がドレッシング無しに可能であったことを意味する。加工距離が150mとは、150m毎にドレッシングをしなければ、安定した研削ができなかったことを意味する。「ヤケ」は「黒ヤケ」と「白ヤケ」の両方を意味する。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表からわかるように、ダイヤモンド砥粒20として成長ダイヤを用い、金属ボンド22として銅系金属を用い、チタン被膜24を成長ダイヤの表面に形成した実施例は、「ヤケ」発生率が許容範囲の0.3%以下を満足し、加工距離が500m以上であった。一方、比較例1〜6はいずれも「ヤケ」発生率が許容範囲の0.3%以下を満足し、かつ、加工距離が500m以上にはならなかった。
上記比較例1,2の比較によれば、砥粒の体積含有率を15%以下とすることにより、ガラス板Gの切り屑の除去が行われ、火花の発生は見られなくなるが、「ヤケ」の発生率が非常に高い。
一方、比較例2,3の比較によれば、金属ボンド22を鉄系から銅系にすることにより、加工距離が500m以上となり、「ヤケ」の発生率は、研削を中止しなくてもよい程度に低下し、「ヤケ」発生率が8.3%となっている。しかし、依然として「ヤケ」発生率は、許容範囲内である0.3%以下にはほど遠い。
比較例3,4の比較によれば、ダイヤモンド砥粒を粉砕ダイヤから成長ダイヤに変えることにより、「ヤケ」の発生率は低下し、「ヤケ」発生率が4.4%となっている。しかし、依然として「ヤケ」発生率は、許容範囲内である0.3%以下にはほど遠い。
【0035】
また、比較例4は、実施例に対して、チタン被膜の有無のみが異なる。チタン被膜を形成することにより、「ヤケ」発生率は0.3%以下になることがわかる。
また、比較例5は、実施例に対して、ダイヤモンド砥粒の種類のみが異なる。ダイヤモンド砥粒として成長ダイヤを用いることにより、「ヤケ」発生率は許容範囲の0.3%以下になることがわかる。
比較例6では、搬送速度が遅い他、加工距離も短い。
【0036】
以上のように、金属ボンド22を鉄系から銅系に変えることにより、加工距離が500m以上を確保することができる一方、「ヤケ」発生率を抑制するために、チタン被膜が表面に形成された成長ダイヤを用いることが、上記ガラス板の製造法において有効であることがわかる。また、実施例は、ガラス板Gの搬送速度が実施例の半分である比較例6に対して、ガラス板Gの端面の品質も満足しつつ、高速で連続的に製造できる点で有効である。
【0037】
以上、本発明のガラス板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0038】
10 端面加工処理ライン
12 第1面取り機
12a,14a 研削用ダイヤモンドホイール
12b,14b 研磨用ホイール
12c 外周面
12d 台金
12e 砥粒層
12f 溝
12g 砥面
14 第2面取り機
16 コーナーカット機
16a コーナーカット用ダイヤモンドホイール
18 反転機
20 ダイヤモンド砥粒
22 金属ボンド
24 チタン被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板の製造方法であって、
成形されたガラス板を搬送しながら、研削ホイールを回転させることによりガラス板の端面を研削する工程と、
前記ガラス板の端面の研削の合計長さが所定長を超える毎に、前記研削ホイールの砥粒のドレッシングを行う工程と、を有し、
前記研削ホイールの砥粒は、成長ダイヤモンドからなる砥粒であり、前記砥粒の表面に金属コートが施され、前記研削ホイールは、前記砥粒を接合ずるボンド材として、銅を50質量%以上含む合金を用いる、ことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記砥粒の粒度は、JIS R6001で規定されるF500である、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記研削ホイールにおける前記砥粒の体積含有率は15%以下である、請求項1または2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス板の搬送速度をv(m/秒)とし、前記研削ホイールの周上における回転速度をV(m/秒)としたとき、v/Vが3.0×10-3以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス板は、フラットディスプレイパネルの表示装置の基板、あるいは、電子機器の表示画面のカバーガラスに用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−71375(P2012−71375A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217103(P2010−217103)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(598055910)AvanStrate株式会社 (81)
【Fターム(参考)】