説明

キャリアプレート用金型

【課題】キャリアプレートの成型の際に保持孔のとば口を適切な形状に形成することができるキャリアプレート用金型を提供すること。
【解決手段】シリコーンゴムからなる弾性部材を充填させることによって、貫通通路1aよりも小径の保持孔が形成されたキャリアプレートを成型するキャリアプレート用金型30において、弾性壁における保持孔が形成された部位の平面部17a側の端面が、金属部のみに接触された状態として形成されるように構成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアプレート用金型に係り、特に、コンデンサや抵抗器等のセラミックチップ部品(以下、チップ部品と称する)の両端に、例えば、銀やパラジウム等のコーティングを施して接点を形成する際に同チップ部品を整列支持するために用いるキャリアプレートを成形するのに好適なキャリアプレート用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンデンサーや抵抗器等のチップ部品の両端に接点(電極)を形成するための手段として、同チップ部品を整列支持するためのキャリアプレートが用いられていた。
【0003】
このようなキャリアプレートを製造する際には、金属製のプレート体として、このプレート体を厚さ方向において貫通する多数の貫通通路が厚さ方向に直交する方向に並列するように形成されたプレート体を用意し、このプレート体における各貫通通路の内周面に、金型を用いて弾性部材からなる弾性壁を形成するようになっていた(例えば、特許文献1)。
【0004】
図5は、この種のキャリアプレートの1例を示している。このキャリアプレート10は、金属製の矩形のプレート体1を有しており、このプレート体1の外周には、プレート体1よりも肉厚の外側フレーム3が、プレート体1と一体的に形成されている。プレート体1には、このプレート体1をその厚さ方向に貫通する多数(複数)の貫通通路1aが、厚さ方向に直交する方向(図5における縦方向および横方向)に並列するように形成されている。また、プレート体1における外側フレーム3に囲まれた上下の平面部および各貫通通路1aの内周面には、弾性部材を素材とする弾性壁からなる電子部品支持体2が形成されている。この電子部品支持体2は、各貫通通路1aに対応する位置に、各貫通通路1aと同心かつ各貫通通路1aよりも小径とされた電子部品(チップ部品)を保持するための弾性の保持孔4を有しており、各保持孔4の上下の孔口は、とば口5として形成されている。さらに、外側フレーム3には、型合わせのための2個の位置決め孔6が穿設されている。
【0005】
なお、プレート体1を形成する金属としてはアルミニウムが多用されており、また、電子部品支持体2(弾性壁)を形成する弾性部材としては、シリコーンゴムが多用されていた。
【0006】
図6は、キャリアプレート10にチップ部品7を取付けた状態を示している。更に説明すると、チップ部品7は弾性壁によって形成されている各保持孔4のとば口5にそれぞれ挿入して保持されて、電極等の形成に供せられることとなる。
【0007】
通常、キャリアプレート10の成型用金型(以下、キャリアプレート用金型と称する)は、保持孔4を形成するための通孔形成ピンを立設するとともに、ゴムとの離型性の確保及び防錆のために金型表面にハードクロムメッキなどを施すことによって形成されている。
【0008】
そして、キャリアプレート10は、キャリアプレート用金型内にプレート体1をその貫通通路1aに通孔形成ピンが遊挿されるように配置した上で、金型内に液状シリコーンゴムを注入し、次いで、注入されたシリコーンゴムに対する加熱加硫を施した後に脱型することによって成型されるようになっていた(例えば、特許文献2の第2図、特許文献3、特許文献4の第8図)。
【0009】
【特許文献1】特公昭62−11488号公報
【特許文献2】特開昭63−76412号公報
【特許文献3】特開2004−17549号公報
【特許文献4】特開2006−344826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来のキャリアプレート10は、プレート体1及び電子部品支持体2の両者の表面に、ともに砥石を用いた研磨による仕上げ加工が施されることによって形成されることがあった。このようなキャリアプレート10においては、仕上げ加工時に電子部品支持体2の表面が砥石の接触によって厚さが収縮するように弾性変形し、その後砥石の離間により復元するという挙動を示すため、図6において拡大誇張して示すような段差8が発生していた。
【0011】
そして、このような段差8の発生は、チップ部品7に電極を適切に形成することに対する大きな障害となっていた。
【0012】
すなわち、図6に示すように、チップ部品7への外部電極塗布作業は、まずキャリアプレート10に、保持孔4の直径より僅かに大きな対角線寸法を有する正方形の断面からなるチップ部品7を位置決め装置(図示せず)を使用して保持孔4に一定深さだけ挿入することにより、後工程の外部電極塗布作業の準備段階としてのチップ部品7の挿入位置決め作業を行う。次に、チップ部品7が挿入位置決めされたキャリアプレート10を反転してチップ部品7の突出部が下側になるようにし、銀や銅などを含有したペースト状の電極液が貯留された電極液槽にチップ部品7の先端をディッピングしてその先端に電極液を塗布し、その後乾燥工程を経てチップ部品7の先端に電極を形成する。その後、チップ部品7を保持したキャリアプレート10をプレスコンバージョンにセットし、チップ部品7を押しピン(図示せず)で押してチップ部品7をキャリアプレート10の保持孔4の反対側に押し出し、その先端に電極液を塗布し、その後乾燥工程を経ることによりチップ部品7の両端に電極が形成される。
【0013】
ここで、このような作業の際のチップ部品7の位置決めは、キャリアプレート10の外側フレーム3を基準に設定されるようになっていたが、外側フレーム3と電子部品支持体2との段差8が形成されていると、電極塗布面積がずれることになり、電気抵抗値のばらつき要因となっていた。
【0014】
したがって、従来から、特に、1005サイズ(1.0×0.5×0.5mm)以下の小さいチップ部品7においては、外側フレーム3と電子部品支持体2との段差8が少ないキャリアプレート10の製造が要求されていた。
【0015】
このような要求に応える方法としては、キャリアプレート10の成型の際に、外側フレーム3および電子部品支持体2に対する研磨工程を経ずに型決めのみで対応するという方法があった。
【0016】
しかしながら、このような方法を採用する場合には、従来のキャリアプレート用金型の金型構造に起因した以下の不具合が生じてしまっていた。
【0017】
すなわち、従来、キャリアプレート用金型は、図7に示すように、入れ子や型板等からなる下型本体17A上に多数の通孔形成ピン13が立設された下型17を有しており、各通孔形成ピン13は、成型時の脱落防止のために、通常は図7に示すように接着剤20を介して下型本体17Aに固着されていた。なお、接着剤20としては、2−ヒドリキシエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとの混合物からなる嫌気性強力封着剤スリーボンド1373B(株式会社スリーボンド製商品名)などが挙げられる。
【0018】
このようなキャリアプレート用金型においては、型決めの際に、通孔形成ピン13の根元が保持孔4のとば口5に対面することによって、通孔形成ピン13の根元部分に固着された接着剤20が保持孔4のとば口5部分を形成するゴムと直に接触するようになっていた。
【0019】
この結果、キャリアプレート用金型における接着剤20の部分からのゴムの離型性が悪くなり、とば口5をゴムバリのない適切な形状(真円)に形成することができないことがあった。
【0020】
そして、このようにとば口5を適切な形状に形成することができない場合には、チップ部品7の挿入の際にとば口5が欠けたり、ゴムバリの断片が製品に混ざって不良になるなどの不具合が生じていた。
【0021】
そこで、本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、キャリアプレートの成型の際に保持孔のとば口を適切な形状に形成することができるキャリアプレート用金型を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、前述した目的を達成するために鋭意研究した結果、弾性壁における保持孔のとば口に相当する部位をキャリアプレート用金型における金属部のみに接触された状態として形成するようにすれば、とば口に発生するバリなどの不具合を回避することができることを見出して、本発明をなすに至った。
【0023】
そのため、本発明のキャリアプレート用金型は、金属製のプレート体であって、このプレート体をその厚さ方向に貫通する複数の貫通通路が前記厚さ方向に直交する方向に並列するように形成されたプレート体における前記複数の貫通通路に、前記プレート体に前記厚さ方向において臨む金型本体の平面部に立設された金属製の複数本の通孔形成ピンをそれぞれ遊挿させた上で、前記平面部および前記通孔形成ピンと前記プレート体および前記貫通通路との間の空隙内に、シリコーンゴムからなる弾性部材を充填させることによって、前記各貫通通路に対応する位置に当該各貫通通路よりも小径とされた電子部品の保持孔が形成された弾性壁を備えたキャリアプレートを成型するキャリアプレート用金型において、前記弾性壁における前記保持孔が形成された部位の前記平面部側の端面が、金属部のみに接触された状態として形成されるように構成されていることを特徴としている。
【0024】
このような構成によれば、通孔形成ピンを接着剤を介して金型本体に固着する構成であっても、弾性壁における保持孔のとば口に相当する部位をキャリアプレート用金型における金属部のみに接触された状態として形成することができるので、とば口を適切な形状に形成することができる。
【0025】
また、前記通孔形成ピンは、その長手方向における所定の範囲にわたって所定の径を有するように形成された第1の部位と、この第1の部位に前記長手方向における前記プレート体側において連設された前記第1の部位よりも小径の第2の部位とを有する段付き状に形成され、前記第1の部位は、そのプレート体側の端面が前記第2の部位における前記平面部側の端部を包囲するようにして前記平面部と同一面上に位置された状態として、前記金型本体に接着剤を介して固着され、前記第2の部位は、前記第1の部位における前記プレート体側の端部から前記プレート体側に突出されているとともに、前記貫通通路に遊挿されるように形成され、前記金属部は、前記第1の部位の前記プレート体側の端面とされていることが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、弾性壁における保持孔のとば口に相当する部位を、キャリアプレート用金型における金属部としての第1の部位のプレート体側の端面のみに接触された状態として形成することができるので、簡易な構成によって、とば口を適切な形状に形成することができる。
【0027】
さらに、前記通孔形成ピンは、その長手方向における前記プレート体側の所定の範囲にわたる部位が、前記平面部よりも前記プレート体側に突出されているとともに前記貫通通路に遊挿されるように形成され、かつ、当該所定の範囲にわたる部位に前記長手方向における前記平面部側において連設された部位が、前記金型本体に形成された貫通孔内に圧入され、前記金属部は、前記平面部における前記貫通孔の周縁部とされていてもよい。
【0028】
このような構成によれば、弾性壁における保持孔のとば口に相当する部位を、キャリアプレート用金型における金属部としての平面部における貫通孔の周縁部のみに接触された状態として形成することができるので、簡易な構成によって、とば口を適切な形状に形成することができる。
【0029】
さらにまた、前記通孔形成ピンは、その長手方向における所定の範囲にわたって所定の径を有するように形成された第1の部位と、この第1の部位に前記長手方向における前記プレート体側において連設された前記第1の部位よりも小径の第2の部位とを有する段付き状に形成され、前記第1の部位は、そのプレート体側の端面が前記第2の部位における前記平面部側の端部を包囲するようにして前記平面部と同一面上に位置された状態として、前記金型本体に形成された貫通孔内に圧入され、前記第2の部位は、前記第1の部位における前記プレート体側の端部から前記プレート体側に突出されているとともに、前記貫通通路に遊挿されるように形成され、前記金属部は、前記第1の部位の前記プレート体側の端面とされていてもよい。
【0030】
このような構成によれば、弾性壁における保持孔のとば口に相当する部位を、キャリアプレート用金型における金属部としての第1の部位のプレート体側の端面のみに接触された状態として形成することができるので、簡易な構成によって、とば口を適切な形状に形成することができる。
【発明の効果】
【0031】
このように本発明のキャリアプレート用金型は形成されているので、キャリアプレート成型の際に保持孔のとば口を適切な形状に形成することができ、ひいては、チップ部品に対して電極等を高精度に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係るキャリアプレート用金型の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、従来と基本的構成が同一もしくはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0033】
図1は、本実施形態におけるキャリアプレート用金型30を示したものである。本実施形態におけるキャリアプレート用金型30は、弾性部材としてのシリコーンゴムを用いたトランスファ(注入式)成型用の金型とされており、このキャリアプレート用金型30は、図1に示すように、大別して、上型14、中型16および下型17の3つの金型によって形成されている。
【0034】
ここで、上型14は、入れ子や型板からなる上型本体14Aを有しており、この上型本体14Aには、フィルムゲート11、ゴム注入口12、ゴムゲート15および4個のノック孔22がそれぞれ形成されている。
【0035】
また、中型16は、プレート体1を保持可能な枠状に形成されており、この中型16には、ゴムゲート15および4個のノック孔23が形成されている。
【0036】
さらに、下型17は、入れ子や型板からなる下型本体17Aを有しており、この下型本体17Aの上面は、キャリアプレート用金型30(金型本体)の平面部17aとされている。この平面部17aには、多数(複数)の通孔形成ピン24が立設されているとともに、ゴムゲート15および4本のノックピン18が形成されている。
【0037】
各通孔形成ピン24は、プレート体1の貫通通路1aと整列(並列)方向および整列(並列)ピッチが同一とされているとともに、その外周(外径)が、貫通通路1aの内周(内径)よりも小さく形成されている。
【0038】
そして、本実施形態においては、弾性壁における保持孔4のとば口5に相当する部位、すなわち、電子部品支持体2における保持孔4(図5参照)が形成された部位の平面部17a側の端面が、下型17の金属部のみに接触された状態として形成されるように下型17が構成されている。
【0039】
このような下型17の具体的構成を、図2から図4に例示する。
【0040】
図2に示す構成においては、通孔形成ピン24が、その長手方向における下端部側の所定の範囲にわたって所定の直径を有するように形成された第1の部位としての大径部24aと、この大径部24aに長手方向における上側(プレート体1側)において連設された大径部24aよりも小径の第2の部位としての小径部24bとを有している。これにより、通孔形成ピン24は、大径部24aと小径部24bとの直径の差による段付き状に形成されている。
【0041】
また、図2において、大径部24aの上端面(プレート体1側の端面)31は、小径部24bの下端部(平面部17a側の端部)を包囲するようにして平面部17aと同一面上に位置されている。
【0042】
さらに、図2において、大径部24aは、下型本体17Aに穴部17Bを介して埋没された状態として、下型本体17Aに接着剤20を介して固着されている。
【0043】
さらにまた、図2において、小径部24bは、大径部24aの上端部(プレート体1側の端部)から上側(プレート体1側)に突出するように形成されており、この小径部24bは、キャリアプレート10の成型の際に、プレート体1の貫通通路1aに遊挿されるようになっている。
【0044】
このような図2の構成においては、大径部24aの上端面31が、キャリアプレート用金型30の金属部としての役割を担うようになっている。すなわち、図2の構成においては、弾性壁における保持孔4のとば口5に相当する部位が、大径部24aの上端面31のみに接触された状態として形成されるようになっている。
【0045】
次に、図3に示す構成においても、通孔形成ピン24が、大径部24aと小径部24bとからなる段付き形状に形成されている。
【0046】
この図3の構成においては、小径部24bにおける長手方向の上端部側(プレート体1側)の所定の範囲にわたる部位が、平面部17aよりも上側(プレート体1側)に突出されており、この部位は、キャリアプレート10の成型の際に、プレート体1の貫通通路1aに遊挿されるようになっている。一方、小径部24bにおける平面部17aから突出された部位以外の部位、すなわち、平面部17aから突出された部位に長手方向における下側(平面部17a側)において連設された部位は、平面部17aとこれに厚さ方向において対向する裏面17cとを貫通する貫通孔17bに圧入されている。これにより、小径部24bは、平面部17aに密着された状態に保持されている。
【0047】
また、図3の構成において、大径部24aは、その上端面を、下型本体17Aにおける平坦面17aの裏面17cに保持されているとともに、その下端面を、下型本体17Aの下部に配設された抑え板21に保持されている。これによって、下型本体17Aからの通孔形成ピン24の脱落の防止が図られている。
【0048】
このような図3の構成においては、平面部17aにおける貫通孔17bの周縁部(すなわち、平面部17aにおける小径部24bとの密着部)が、キャリアプレート用金型30の金属部としての役割を担うようになっている。すなわち、図3の構成においては、弾性壁における保持孔4のとば口5に相当する部位が、平面部17aにおける貫通孔17bの周縁部のみに接触した状態として形成されるようになっている。
【0049】
次に、図4に示す構成においては、通孔形成ピン24が、大径部24aと、第1の部位としての中径部24cと、第2の部位としての小径部24bとからなる2段の段付き状に形成されている。
【0050】
この通孔形成ピン24は、中径部24cを貫通孔17b内に圧入させるようにして下型本体17Aに固着されている。さらに、この通孔形成ピン24は、中径部24cの上端面が、小径部24bの下端部を包囲するようにして平面部17aと同一面上に位置されている。さらに、この通孔形成ピン24は、大径部24aが、下型本体17Aにおける平面部17aの裏面17cと抑え板21との間に保持されている。
【0051】
このような図4の構成においては、中径部24cの上端面32が、キャリアプレート用金型30の金属部としての役割を担うようになっている。すなわち、図4の構成においては、弾性壁における保持孔4のとば口5に相当する部位が、中径部24cの上端面32のみに接触された状態として形成されるようになっている。
【0052】
そして、以上の各構成のキャリアプレート用金型30を用いてキャリアプレート10を成型するには、図1に示すように、下型17の上に、中型16内に保持されたプレート体1を、各通孔形成ピン24を各貫通通路1aに貫通させ、ノックピン18を中型16のノック孔23に貫通させた状態として設置するとともに、プレート体1の上に、上型14を、ノックピン18をノック孔22に貫通させた状態として重ねる。次いで、ゴム注入口12から、液状のシリコーンゴムをキャリアプレート用金型30内に注入すると、注入されたシリコーンゴムが、ゴムゲート15を通って、通孔形成ピン24と貫通通路1aとの間の空間、上型14の下面、プレート体1の上面および通孔形成ピン24(先端部)によって囲まれる空間、および、下型17の上面、プレート体1の下面および通孔形成ピン24(基端部)によって囲まれる空間に充填される。そして、充填されたシリコーンゴムを加硫・加熱して硬化した後に、成型品を脱型することによって、保持孔4を有する弾性構造体である電子部品支持体2が一体形成されたキャリアプレート10を得ることができる。
【0053】
このとき、本実施形態においては、弾性壁(電子部品支持体2)における保持孔4のとば口5に相当する部位がキャリアプレート用金型30の金属部のみに接触された状態として形成されるように構成されているので、とば口5をバリのない適切な形状に形成することができる。
【0054】
具体的には、図2の構成においては、弾性壁における保持孔4のとば口5に相当する部位を形成するゴムを、大径部24aの上端面31のみと接触させることができるので、とば口5をバリのない真円形状に形成することができる。
【0055】
また、図3の構成においては、弾性壁における保持孔4のとば口5に相当する部位を形成するゴムを、平面部17aにおける貫通孔17bの周縁部のみと接触させることができるので、図3の構成においても、とば口5をバリのない真円形状に形成することができる。
【0056】
さらに、図4の構成においては、弾性壁における保持孔4のとば口5に相当する部位を形成するゴムを、中径部24cの上端面32のみと接触させることができるので、図4の構成においても、とば口5をバリのない真円形状に形成することができる。
【実施例】
【0057】
つぎに、本発明の実施例を以下に説明する。
【0058】
(実施例1)
本実施例においては、図2に示した下型本体17Aに、小径部24bが0.82mm、大径部24aが1.5mmとされた7370本(縦67本×横110本)の段付き通孔形成ピン24を、商品名:スリーボンド1373B(スリーボンド社製)からなる接着剤20によって接着した下型17を有するキャリアプレート用金型30を用意した。次いで、多数の貫通通路1aが形成されたアルミニウム製の矩形のプレート体1を用意し、このプレート体1を中型16に保持した状態として上型14と下型17との間に挟み込んだ後に、キャリアプレート用金型30内に付加型シリコーンゴム(本実施例においては商品名:KE1950−50A/B(信越化学工業株式会社製))をトランスファー成型により注入し、120℃の温度下でキャリアプレート10を成型した。そして、脱型後、ゴム成型の終了したキャリアプレート10を中型16から取り出してとば口5を観察したところ、真円であり、バリ発生などの不具合がないことが確認された。
【0059】
(実施例2)
本実施例においては、図3に示した構成の下型17を有するキャリアプレート用金型30を用いて、実施例1と同様の手順にしたがってキャリアプレート10を成型した。本実施例においても、脱型後、中型16から取り出されたキャリアプレート10のとば口5を観察したところ、真円であり、バリ発生などの不具合がないことが確認された。
【0060】
(実施例3)
本実施例においては、図4に示した構成の下型17として、小径部24bが0.82mm、中径部24cが1.2mm、大径部24aが1.5mmとされた通孔形成ピン24が下型本体17Aに圧入された下型17を有するキャリアプレート用金型30を用いて、実施例1と同様の手順にしたがってキャリアプレート10を成型した。本実施例においても、脱型後、中型16から取り出されたキャリアプレート10のとば口5を観察したところ、真円であり、バリ発生などの不具合がないことが確認された。
【0061】
(比較例1)
本比較例においては、図7に示した構成の下型17として、直径が0.82mmの通孔形成ピン13を下型本体17Aに接着剤20を介して固着した下型17を有するキャリアプレート用金型を用いて、実施例1と同様の手順にしたがってキャリアプレート10を成型した。
【0062】
本比較例においては、脱型後、ゴム成型の終了したキャリアプレート10を中型16から取り出してとば口5を観察したところ、真円ではなく、とば口5の外周面がギザギザで実使用上問題含みであることが確認された。このような結果は、弾性壁が接着剤20に接触した状態として成型されることに起因するものと考えられる。
【0063】
以上の結果から、キャリアプレート10の成型に用いるキャリアプレート用金型としては、図2乃至図4に示した本実施形態における下型17を有するキャリアプレート用金型30を用いれば、とば口5の形状不良を回避できることが分かる。
【0064】
なお、前述した実施形態においては、図1から図4に示したように、下型本体17Aのみに通孔形成ピン24を立設したキャリアプレート用金型30を用いているが、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、例えば、通孔形成ピン24を下型本体17Aと上型本体14Aとの双方に分割(分配)して形成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るキャリアプレート用金型の実施形態を示す分解斜視図
【図2】本発明に係るキャリアプレート用金型の実施形態において、下型の具体的構成の一例を示す断面図
【図3】本発明に係るキャリアプレート用金型の実施形態において、図2とは異なる下型の具体的構成の一例を示す断面図
【図4】本発明に係るキャリアプレート用金型の実施形態において、図2および図3とは異なる下型の具体的構成の一例を示す断面図
【図5】キャリアプレートの一例を示す一部切断斜視図
【図6】従来のキャリアプレートの一例を示す断面図
【図7】従来のキャリアプレート用金型の一例を示す断面図
【符号の説明】
【0066】
1 プレート体
4 保持孔
5 とば口(孔口)
10 キャリアプレート
14 上型
16 中型
17 下型
20 接着剤
24 通孔形成ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のプレート体であって、このプレート体をその厚さ方向に貫通する複数の貫通通路が前記厚さ方向に直交する方向に並列するように形成されたプレート体における前記複数の貫通通路に、前記プレート体に前記厚さ方向において臨む金型本体の平面部に立設された金属製の複数本の通孔形成ピンをそれぞれ遊挿させた上で、前記平面部および前記通孔形成ピンと前記プレート体および前記貫通通路との間の空隙内に、シリコーンゴムからなる弾性部材を充填させることによって、前記各貫通通路に対応する位置に当該各貫通通路よりも小径とされた電子部品の保持孔が形成された弾性壁を備えたキャリアプレートを成型するキャリアプレート用金型において、
前記弾性壁における前記保持孔が形成された部位の前記平面部側の端面が、金属部のみに接触された状態として形成されるように構成されていることを特徴とするキャリアプレート用金型。
【請求項2】
前記通孔形成ピンは、その長手方向における所定の範囲にわたって所定の径を有するように形成された第1の部位と、この第1の部位に前記長手方向における前記プレート体側において連設された前記第1の部位よりも小径の第2の部位とを有する段付き状に形成され、
前記第1の部位は、そのプレート体側の端面が前記第2の部位における前記平面部側の端部を包囲するようにして前記平面部と同一面上に位置された状態として、前記金型本体に接着剤を介して固着され、
前記第2の部位は、前記第1の部位における前記プレート体側の端部から前記プレート体側に突出されているとともに、前記貫通通路に遊挿されるように形成され、
前記金属部は、前記第1の部位の前記プレート体側の端面とされていること
を特徴とする請求項1に記載のキャリアプレート用金型。
【請求項3】
前記通孔形成ピンは、その長手方向における前記プレート体側の所定の範囲にわたる部位が、前記平面部よりも前記プレート体側に突出されているとともに前記貫通通路に遊挿されるように形成され、かつ、当該所定の範囲にわたる部位に前記長手方向における前記平面部側において連設された部位が、前記金型本体に形成された貫通孔内に圧入され、
前記金属部は、前記平面部における前記貫通孔の周縁部とされていること
を特徴とする請求項1に記載のキャリアプレート用金型。
【請求項4】
前記通孔形成ピンは、その長手方向における所定の範囲にわたって所定の径を有するように形成された第1の部位と、この第1の部位に前記長手方向における前記プレート体側において連設された前記第1の部位よりも小径の第2の部位とを有する段付き状に形成され、
前記第1の部位は、そのプレート体側の端面が前記第2の部位における前記平面部側の端部を包囲するようにして前記平面部と同一面上に位置された状態として、前記金型本体に形成された貫通孔内に圧入され、
前記第2の部位は、前記第1の部位における前記プレート体側の端部から前記プレート体側に突出されているとともに、前記貫通通路に遊挿されるように形成され、
前記金属部は、前記第1の部位の前記プレート体側の端面とされていること
を特徴とする請求項1に記載のキャリアプレート用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−73165(P2009−73165A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59506(P2008−59506)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)
【Fターム(参考)】