説明

キャンバ制御装置

【課題】駆動素子に異常が発生しても各車輪にキャンバを付与することができるようにする。
【解決手段】ボディと、複数の車輪と、駆動部、及び駆動部に接続された複数の駆動素子を備えた駆動回路74、76と、所定の車輪に配設され、駆動部の駆動に伴って所定の車輪のキャンバ角を調整するためのキャンバ可変機構と、駆動回路74、76において所定の駆動素子に異常が発生したかどうかを判断する異常判定処理手段と、所定の駆動素子に異常が発生した場合に、所定の駆動素子の異常の発生状態に応じて他の所定の駆動素子をオンにして、駆動部を所定の駆動方向に駆動する駆動設定処理手段とを有する。所定の駆動素子に異常が発生したと判断されると、異常の発生状態に応じて他の所定の駆動素子がオンにされ、前記駆動部が駆動されるので、車輪にキャンバを付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンバ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両を高速で直進させて走行させるとき、すなわち、車両の直進走行時、車両を旋回させるとき、すなわち、車両の旋回時等に、所定の車輪、例えば、右後方及び左後方の車輪に負のキャンバ(ネガティブキャンバ)を付与することによって、直進走行時の安定性(以下「走行安定性」という。)及び旋回時の安定性(以下「旋回安定性」という。)を高くするようにした車両が提供されている。
【0003】
該車両においては、前記各車輪にアクチュエータが配設され、該各アクチュエータは、それぞれ、車両のボディの所定の箇所に配設されたブラケットに固定されたモータ、前記ブラケットに対して揺動自在に配設された可動プレート、前記モータを駆動することによって回転させられるクランク機構、該クランク機構の回転運動を可動プレートの揺動運動に変換し、可動プレートを揺動させるアーム等を備える。そして、前記各モータを駆動するための駆動回路を作動させることによって各モータを駆動すると、前記クランク機構を構成するクランクシャフトが回転させられ、該クランクシャフトの回転に伴って、前記アームによって可動プレートが揺動させられて、前記各車輪にキャンバが付与される。
【0004】
したがって、車両の直進走行時、旋回時等において、各車輪のタイヤに互いに対向する方向にキャンバスラストを発生させることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−106332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の車両においては、前記駆動回路を構成する駆動素子としてのFET(電界効果トランジスタ)に、端子が外れたり、過電圧が印加されて内部回路が溶断(遮断)されたりすることによるオープン故障、過電流が流れて内部回路が短絡することによるショート故障等の異常が発生すると、駆動回路を正常に作動させることができなくなり、車輪にキャンバを付与することができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、駆動素子に異常が発生しても各車輪にキャンバを付与することができるキャンバ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明のキャンバ制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、駆動部、及び該駆動部に接続された複数の駆動素子を備えた駆動回路と、前記各車輪のうちの所定の車輪に配設され、前記駆動部の駆動に伴って前記所定の車輪のキャンバ角を調整するためのキャンバ可変機構と、前記駆動回路において所定の駆動素子に異常が発生したかどうかを判断する異常判定処理手段と、該異常判定処理手段によって、前記所定の駆動素子に異常が発生したと判断される場合に、所定の駆動素子の異常の発生状態に応じて他の所定の駆動素子をオンにして、前記駆動部を所定の駆動方向に駆動する駆動設定処理手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャンバ制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、駆動部、及び該駆動部に接続された複数の駆動素子を備えた駆動回路と、前記各車輪のうちの所定の車輪に配設され、前記駆動部の駆動に伴って前記所定の車輪のキャンバ角を調整するためのキャンバ可変機構と、前記駆動回路において所定の駆動素子に異常が発生したかどうかを判断する異常判定処理手段と、該異常判定処理手段によって、前記所定の駆動素子に異常が発生したと判断される場合に、所定の駆動素子の異常の発生状態に応じて他の所定の駆動素子をオンにして、前記駆動部を所定の駆動方向に駆動する駆動設定処理手段とを有する。
【0010】
この場合、駆動回路において所定の駆動素子に異常が発生したかどうかが判断され、所定の駆動素子に異常が発生したと判断されると、異常の発生状態に応じて他の所定の駆動素子がオンにされ、前記駆動部が所定の駆動方向に駆動されるので、車輪にキャンバを付与することができる。
【0011】
したがって、駆動回路において所定の駆動素子に異常が発生しても、車両の走行安定性及び旋回安定性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における車両の概念図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの正面図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの要部を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるクランク角とキャンバ角との関係図である。
【図7】本発明の実施の形態における駆動回路のブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるモータの駆動方向と車輪へのキャンバの付与及び付与の解除との関係を説明するための図である。
【図9】本発明の実施の形態における駆動設定処理手段の動作を説明するための第1の図である。
【図10】本発明の実施の形態における駆動設定処理手段の動作を説明するための第2の図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第1の図である。
【図12】本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第2の図である。
【図13】本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第3の図である。
【図14】本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第4の図である。
【図15】本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第1の図である。
【図16】本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第2の図である。
【図17】本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第3の図である。
【図18】本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第4の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図2は本発明の実施の形態における車両の概念図である。
【0015】
図において、11は車両の本体であるボディ、12は駆動源としてのエンジン、WLF、WRF、WLB、WRBは、前記ボディ11に対して回転自在に配設された左前方、右前方、左後方及び右後方の車輪である。なお、車輪WLF、WRFによって駆動輪、かつ、前輪が、車輪WLB、WRBによって従動輪、かつ、後輪が構成される。また、車輪WLF、WRFによって左右の前輪が、車輪WLB、WRBによって左右の後輪が構成される。
【0016】
前記車両は前輪駆動方式の構造を有し、エンジン12と車輪WLF、WRFとが伝動軸としての図示されないドライブシャフトによって連結される。そして、エンジン12を駆動することによって発生させられた回転は、車輪WLF、WRFに伝達され、該車輪WLF、WRFが回転させられる。
【0017】
本実施の形態において、前記車両は、前輪駆動方式の構造を有するようになっているが、車輪WLB、WRBが駆動輪として機能する後輪駆動方式、車輪WLF、WRF、WLB、WRBが駆動輪として機能する四輪駆動方式等の構造を有するようにすることもできる。また、車輪WLF、WRF、WLB、WRBに駆動源としての走行用のホイールモータを配設し、該ホイールモータを駆動して車輪WLF、WRF、WLB、WRBを回転させることができる。
【0018】
また、13は操作者である運転者が車両の操舵を行うための操作部としての、かつ、操舵部材としてのステアリングホイール、14は運転者が車両を加速させるための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル、15は運転者が車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダルである。
【0019】
そして、31、32は、それぞれ、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に配設され、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したり、キャンバのキャンバ角を調整したりするためのキャンバ可変機構としてのアクチュエータである。なお、本実施の形態においては、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に各アクチュエータ31、32が配設されるようになっているが、ボディ11と各車輪WLF、WRFとの間にアクチュエータを配設したり、ボディ11と車輪WLF、WRF、WLB、WRBとの間にアクチュエータを配設したりすることができる。
【0020】
ところで、前記車輪WLF、WRF、WLB、WRBは、アルミニウム合金等によって形成された図示されないホイール、及び該ホイールの外周に嵌(かん)合させて配設されたタイヤ36を備える。そして、該タイヤ36として、後述される損失正接を小さくすることにより、タイヤ36のトレッドの変形によって発生する転がり抵抗が小さくされた低転がり抵抗タイヤが使用される。本実施の形態においては、転がり抵抗を小さくするためにタイヤ36の幅が通常のタイヤより小さくされるが、トレッドの溝のパターンであるトレッドパターンを、転がり抵抗が小さくなるような形状にしたり、少なくともトレッドの部分の材料を、転がり抵抗が小さいものにしたりすることができる。
【0021】
なお、前記損失正接は、トレッドが変形する際のエネルギーの吸収の度合いを表し、貯蔵剪(せん)断弾性率に対する損失剪断弾性率の比で表すことができる。損失正接が小さいほどトレッドによるエネルギーの吸収が少なくなるので、タイヤ36の路面を掴(つか)む力、すなわち、グリップ力が小さくなるが、タイヤ36に発生する転がり抵抗が小さくなり、タイヤ36に発生する摩耗が少なくなる。これに対して、損失正接が大きいほどトレッドによるエネルギーの吸収が多くなるので、グリップ力が大きくなるが、タイヤ36に発生する転がり抵抗が大きくなり、タイヤ36に発生する摩耗が多くなる。
【0022】
前記構成の車両においては、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるので、燃費を良くすることができる。
【0023】
次に、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したり、キャンバのキャンバ角を調整したりするためのキャンバシステムについて説明する。この場合、キャンバシステムにおいて、アクチュエータ31、32の構造は同じであるので、車輪WRB及びアクチュエータ32についてだけ説明する。
【0024】
図3は本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの斜視図、図4は本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの正面図、図5は本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの要部を示す平面図である。なお、図3及び5において矢印Aは車両の前方を表す。
【0025】
図において、WRBは車輪、21はホイール、30は懸架装置、32はアクチュエータ、36はタイヤ、38は車輪WRBを保持するためのハブ、39は制動要素としてのディスクブレーキ、43は、前記ハブ38及びディスクブレーキ39を回転自在に支持し、揺動させられる可動部材としての、かつ、揺動部材としての可動プレート(ハブ支持部材)である。前記車輪WRB、懸架装置30、アクチュエータ32等によってキャンバシステムが構成される。
【0026】
前記懸架装置30は、前記ボディ11に配設された第1、第2のサスペンションメンバ101、102、該第1、第2のサスペンションメンバ101、102間に取り付けられたユニット支持部材としてのブラケット103、第1の連結部材としてのアッパアーム104、第2の連結部材としての第1のロワアーム105、第3の連結部材としての第2のロワアーム106、付勢部材としてのスプリング107、ショックアブソーバ108、トレーリングアーム109等を備える。
【0027】
また、前記アクチュエータ32は、前記ブラケット103に固定されたキャンバ制御用のモータ41、前記ブラケット103に対して揺動自在に配設された前記可動プレート43、前記モータ41の回転を減速させるための減速機44、該減速機44と連結され、減速機44によって減速された回転を受けて回転させられるクランク機構45、該クランク機構45と可動プレート43とを連結し、クランク機構45の回転運動を可動プレート43の揺動運動に変換する運動方向変換部としての前記アッパアーム104、前記クランク機構45を構成するクランクシャフト45a(図5において、二つに分割して示される。)の回転角度、すなわち、クランク角を検出する角度センサ77等を備える。なお、前記アッパアーム104は懸架装置30及びアクチュエータ32を形成する共通の部材である。
【0028】
前記減速機44はプラネタリギヤ機構によって形成され、前記ブラケット103に取り付けられたケース44a、該ケース44aの内周面に取り付けられたリングギヤ44R、前記モータ41の出力軸41aに取り付けられた第1のサンギヤ44Sa、前記リングギヤ44R及び第1のサンギヤ44Saと噛(し)合させられ、第1のサンギヤ44Saの周囲を移動して回転させられる第1のピニオン44Pa、該第1のピニオン44Paを回転自在に支持する第1のピニオンシャフト44b、該第1のピニオンシャフト44bを支持し、前記第1のピニオン44Paが前記第1のサンギヤ44Saの周囲を移動するのに伴って回転させられるキャリヤ44CR、該キャリヤ44CRの回転中心に取り付けられた第2のサンギヤ44Sb、前記リングギヤ44R及び第2のサンギヤ44Sbと噛合させられ、第2のサンギヤ44Sbの周囲を移動して回転させられる第2のピニオン44Pb、該第2のピニオン44Pbを回転自在に支持する第2のピニオンシャフト44c、並びに該第2のピニオンシャフト44cを支持し、前記第2のピニオン44Pbが第2のサンギヤ44Sbの周囲を移動するのに伴って回転させられる出力部材44dを備える。
【0029】
したがって、前記モータ41を駆動すると、出力軸41aに出力された回転は減速させられてキャリヤ44CRに伝達され、キャリヤ44CRの回転が更に減速させられて出力部材44dに伝達される。
【0030】
また、前記クランク機構45は、モータ41の出力軸41aと同一軸上において前記出力部材44dに取り付けられ、前記ブラケット103によって回転自在に支持された前記クランクシャフト45a、及び該クランクシャフト45aに対して偏心させられ、クランクシャフト45aを中心に回転させられるクランクピン45bを備え、該クランクピン45bと前記アッパアーム104とが回転自在に連結される。
【0031】
したがって、モータ41を駆動すると、出力軸41aに出力された回転が減速機44において減速させられ、出力部材44dが回転させられるのに伴ってクランクシャフト45aが回転させられ、前記クランクピン45bと連結されたアッパアーム104が進退させられ、可動プレート43が揺動させられる。その結果、可動プレート43が傾けられた角度と等しいキャンバ角のキャンバが車輪WRBに付与される。なお、前記クランク機構45及びアッパアーム104によって、てこクランク機構が構成される。
【0032】
また、前記第1のロワアーム105は、水平方向における一方側、本実施の形態においては、ボディ11の中心側の端部の所定の部分に配設された図示されない連結軸によって、第1のサスペンションメンバ101に対して回転自在に連結され、水平方向における他方側、本実施の形態においては、ボディ11の車輪WRB側の端部の所定の部分に配設された連結軸sh1(キャンバ軸)によって、可動プレート43に対して回転自在に連結される。
【0033】
そして、前記可動プレート43は、鉛直方向における一方側、本実施の形態においては、下端の所定の部分において、前記連結軸sh1によって第1のロワアーム105に対して回転自在に連結され、鉛直方向における他方側、本実施の形態においては、上端の所定の部分に配設された連結軸sh2によって、アッパアーム104に対して回転自在に連結される。したがって、可動プレート43は、ボディ11及びブラケット103に対して揺動自在に支持される。
【0034】
また、スプリング107は、上端において第1のスプリング受け107aを介してボディ11に連結され、下端において図示されない第2のスプリング受けを介して第1のロワアーム105に連結される。
【0035】
そして、ショックアブソーバ108は、上端においてボディ11に、下端において第1のロワアーム105に連結される。
【0036】
さらに、第2のロワアーム106は、水平方向における一方側、本実施の形態においては、ボディ11の中心側の端部の所定の部分に配設された連結軸sh3によって、第1のサスペンションメンバ101に対して回転自在に連結され、水平方向における他方側、本実施の形態においては、ボディ11の車輪WRB側の端部の所定の部分に配設された連結軸sh4によって、可動プレート43に対して回転自在に連結される。なお、第2のロワアーム106は、アライメント時のトウ角を調整するトウコントロールリンクとして機能する。
【0037】
次に、前記構成の車両の制御装置について説明する。
【0038】
図1は本発明の実施の形態における車両の制御ブロック図、図6は本発明の実施の形態におけるクランク角とキャンバ角との関係図である。なお、図6において、横軸にクランク角Kを、縦軸にキャンバ角θを採ってある。
【0039】
図において、16はキャンバの付与及び付与の解除の制御を行い、コンピュータとして機能し、各種のデータに基づいて各種の演算及び処理を行う制御装置としての制御部、31、32はアクチュエータ、40はアクチュエータ31に配設されたキャンバ制御用のモータ(ML)、41はアクチュエータ32に配設されたキャンバ制御用のモータ(MR)、61は第1の記憶部としてのROM、62は第2の記憶部としてのRAMである。前記モータ40によって第1の駆動部が、前記モータ41によって第2の駆動部が構成される。前記モータ40、41はDCモータから成り、正方向及び逆方向に駆動可能にされ、モータ40、41を駆動することによって、車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりすることができる。
【0040】
また、63は車速を検出する車速検出部としての車速センサ、64はステアリングホイール13のステアリング角度を検出する操舵検出部としてのステアリングセンサ、65は車両のヨーレートを検出するヨーレート検出部としてのヨーレートセンサ、66は横加速度(横G)を検出する第1の加速度検出部としての横加速度センサ、67は前後加速度(前後G)を検出する第2の加速度検出部としての前後加速度センサ、71はアクセルペダル14の踏込量、すなわち、アクセルストロークを検出する加速操作量検出部としてのアクセルストロークセンサ、72はブレーキペダル15の踏込量、すなわち、ブレーキストロークを検出する制動操作量検出部としてのブレーキストロークセンサである。
【0041】
そして、74はモータ40を駆動するための駆動回路、75はアクチュエータ31におけるクランクシャフト45aのクランク角を検出する角度センサ、76はモータ41を駆動するための駆動回路、77は前記アクチュエータ32におけるクランクシャフト45aのクランク角を検出する角度センサである。なお、前記角度センサ75によって第1の角度検出部が、角度センサ77によって第2の角度検出部が構成される。前記角度センサ75、77は、ホール素子、マグネット、ヨーク、コア等から成る磁気式非接触型のセンサであり、クランク角に対応させて、直線的なセンサ出力(電圧)を出力する。本実施の形態においては、角度センサ75、77として磁気式非接触型のセンサが使用されるようになっているが、接触型のセンサを使用することができる。
【0042】
前記ボディ11、制御部16、アクチュエータ31、32、駆動回路74、76、車輪WLB、WRB等によってキャンバ制御装置が構成される。
【0043】
ところで、車輪WLB、WRBにキャンバを付与するに当たり、モータ40、41を駆動して、クランクシャフト45aを第1の位置としてのキャンバ付与開始位置から第2の位置としてのキャンバ付与終了位置まで回転させると、図6に示されるように、クランク角Kは0〔°〕から180〔°〕に向けて大きくなり、それに伴って、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバのキャンバ角θも大きくなる。該キャンバ角θの変化率δθは、クランク角Kが0〔°〕から中間位置である90〔°〕になるまでは、徐々に大きくされ、クランク角Kが90〔°〕から180〔°〕になるまでは、徐々に小さくされる。
【0044】
また、モータ40、41を反対方向に駆動して、クランクシャフト45aをキャンバ付与終了位置であるキャンバ解除開始位置からキャンバ付与開始位置であるキャンバ解除終了位置まで回転させると、クランク角Kは180〔°〕から0〔°〕に向けて小さくなり、それに伴って、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバのキャンバ角θも小さくなる。該キャンバ角θの変化率δθは、クランク角Kが180〔°〕から90〔°〕になるまでは、徐々に大きくされ、クランク角Kが90〔°〕から0〔°〕になるまでは、徐々に小さくされる。
【0045】
なお、クランク角K及びキャンバ角θは、互いに対応させて前記ROM61にあらかじめ角度マップとして記録され、前記制御部16の図示されないキャンバ角算出(検出)処理手段は、キャンバ角算出(検出)処理を行い、前記角度マップを参照して、クランク角Kに対応するキャンバ角θを読み出す(検出する。)。本実施の形態においては、クランク角Kが検出され、キャンバ角θが算出されるようになっているが、キャンバ角θをキャンバ角検出部としての図示されない所定のセンサによって直接検出することができる。
【0046】
前記構成の車両において、前記制御部16の図示されないキャンバ制御処理手段は、キャンバ制御処理を行い、運転者によるアクセルペダル14、ブレーキペダル15、ステアリングホイール13等の操作量、すなわち、アクセルストロークセンサ71によって検出されたアクセルストローク、ブレーキストロークセンサ72によって検出されたブレーキストローク、ステアリングセンサ64によって検出されたステアリング角度等の車両の操作状態を第1の判定指標として、車速センサ63によって検出された車速、横加速度センサ66によって検出された横加速度、前後加速度センサ67によって検出された前後加速度、ヨーレートセンサ65によって検出されたヨーレート等の車両の走行状態を第2の判定指標として読み込み、第1、第2の判定指標のうちの所定の判定指標が所定の条件を満たす場合に、キャンバ付与条件が成立したと判断し、車輪WLB、WRBに負の(ネガティブ)キャンバ角θのキャンバを付与し、車両の走行安定性及び旋回安定性を高くする。
【0047】
そして、前記第1、第2の判定指標のうちの所定の判定指標が他の所定の条件を満たす場合に、前記キャンバ制御処理手段はキャンバ解除条件が成立したと判断し、車輪WLB、WRBへのキャンバの付与を解除する。
【0048】
なお、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバのキャンバ角θは、車種又は車両ごとにあらかじめ設定された、定常状態におけるキャンバ角をαとすると、
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
にされる。
【0049】
このとき、車輪WLB、WRBにキャンバが付与されるのに伴って、車輪WLB、WRBのタイヤ36に互いに対向する方向にキャンバスラストが発生する。したがって、車両の復元力が大きくなるので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、車両の走行安定性を高くすることができる。
【0050】
また、車両を左方向に旋回させる場合は、車両に遠心力が発生するので、外周側の車輪WRB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WRBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが、内周側の車輪WLB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。そして、車両を右方向に旋回させる場合は、外周側の車輪WLB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WLBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪WRB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。したがって、車両に十分な求心力を発生させることができるので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、車両の旋回安定性を高くすることができる。
【0051】
次に、モータ40、41を駆動するための駆動回路74、76について説明する。なお、駆動回路74、76は構造が同じであるので、駆動回路76についてだけ説明する。
【0052】
図7は本発明の実施の形態における駆動回路のブロック図である。
【0053】
駆動回路76は、バッテリ80、第1〜第4の駆動素子としてのFET81〜84等を備える。そして、前記バッテリ80の正極側の端子に、互いに並列にFET81、82が、バッテリ80の負極側の端子に、互いに並列にFET83、84が接続される。また、FET81、83が結線Laによって互いに直列に、FET82、84が結線Lbによって互いに直列に接続され、FET81、83間の端子taとFET82、84間の端子tbとが結線Lcによって接続され、該結線Lc上にモータ41が配設される。そして、モータ41、及び該モータ41に接続された複数のFET81〜84によってHブリッジ型の駆動回路が構成される。
【0054】
本実施の形態においては、モータ41を駆動するために、第1〜第4の駆動素子としてFET81〜84が使用されるようになっているが、第1〜第4の駆動素子としてリレー、IGBT、パワートランジスタ等を使用することができる。
【0055】
前記キャンバ制御処理手段の駆動部駆動処理手段は、駆動部駆動処理を行い、駆動回路76においてモータ41を駆動し、車輪WRBにキャンバを付与する。
【0056】
すなわち、前記駆動部駆動処理手段が、駆動信号(PWM信号)をFET81〜84のうちのFET81、84のゲートに送り、FET81、84をオンにすると、バッテリ80からの電流inがFET81、モータ41及びFET84を流れ、前記モータ41が正方向に駆動される。また、前記駆動部駆動処理手段が、駆動信号をFET81〜84のうちのFET82、83のゲートに送り、FET82、83をオンにすると、バッテリ80からの電流ifがFET82、モータ41及びFET83を流れ、前記モータ41が逆方向に駆動される。
【0057】
次に、前記モータ40、41の駆動方向と、車輪WLB、WRBへのキャンバの付与及び付与の解除との関係について説明する。
【0058】
図8は本発明の実施の形態におけるモータの駆動方向と車輪へのキャンバの付与及び付与の解除との関係を説明するための図、図9は本発明の実施の形態における駆動設定処理手段の動作を説明するための第1の図、図10は本発明の実施の形態における駆動設定処理手段の動作を説明するための第2の図である。なお、図8〜10は車輪WLB、WRBを車両の後方から見た状態を表す。
【0059】
図において、WLB、WRBは車輪、40、41はモータである。
【0060】
FET81〜84が正常である(異常が発生していない)場合、図8に示されるように、駆動回路74においてモータ40を正方向aに駆動し、クランクシャフト45a(図5)をキャンバ付与開始位置からキャンバ付与終了位置まで正方向に回転させると、車輪WLBにキャンバが付与され、モータ40を逆方向bに駆動し、クランクシャフト45aをキャンバ解除開始位置からキャンバ解除終了位置まで逆方向に回転させると、車輪WLBへのキャンバの付与が解除される。
【0061】
また、駆動回路76においてモータ41を逆方向cに駆動し、クランクシャフト45aをキャンバ付与開始位置からキャンバ付与終了位置まで逆方向に回転させると、車輪WRBにキャンバが付与され、モータ41を正方向dに駆動し、クランクシャフト45aをキャンバ解除開始位置からキャンバ解除終了位置まで正方向に回転させると、車輪WRBへのキャンバの付与が解除される。
【0062】
この場合、車輪WLB、WRBにキャンバを付与するに当たり、モータ40が正方向aに、モータ41が逆方向cに駆動されるので、各クランクシャフト45aが互いに反対方向に回転させられ、各クランクピン45bも互いに反対方向に円運動させられることになる。したがって、アクチュエータ31、32の作動に伴ってボディ11に振動が発生するのを防止することができるので、車両の挙動を安定させることができる。
【0063】
ところで、前記駆動回路74、76のFET81〜84のうちの所定のFETにおいて、端子が外れたり、過電圧が印加されて内部回路が溶断(遮断)されたりすることによるオープン故障、過電流が流れて内部回路が短絡することによるショート故障等の異常が発生することがあるが、その場合、駆動回路を正常に作動させることができなくなると、モータを駆動することができなくなり、車輪にキャンバを付与することができなくなってしまう。その結果、車両の走行安定性及び旋回安定性を高くすることができなくなる。
【0064】
そこで、本実施の形態においては、FET81〜84のうちの所定のFETに異常が発生して、駆動回路が正常に作動しなくなっても、車輪WLB、WRBにキャンバを付与することができるように、駆動回路を反転(逆転)させて作動させ、モータ40、41を駆動するようにしている。
【0065】
そのために、FET81〜FET84が正常であるかどうかを、FET81〜84にオープン故障、ショート故障等の異常が発生していないかどうかによって判断することができるように、例えば、FET81〜84のドレイン側の端子とソース側の端子との間に、第1の駆動素子状態検出部としての図示されない電圧計が接続され、バッテリ80に隣接させて、第2の駆動素子状態検出部としての図示されない電流計が接続される。
【0066】
そして、前記キャンバ制御処理手段の異常判定処理手段は、異常判定処理を行い、FET81〜84のうちの所定のFETに異常が発生したかどうかを判断する。そのために、前記異常判定処理手段は、FET81〜84のゲートに電圧を印加することによってFET81〜84をオンにしたり、FET81〜84のゲートに電圧を印加しないことによってFET81〜84をオフにしたりするとともに、前記電圧計によって電圧が検出されるかどうか、及び電流計によって電流が検出されるかどうかを判断することによって、FET81〜84の状態、すなわち、FET81〜84に異常が発生したかどうかを判断する。
【0067】
すなわち、前記FET81〜84のうちの所定のFET、例えば、FET81、83をオンにし、他のFET、例えば、FET82、84をオフにしたとき、及びFET81、84をオンにし、FET82、83をオフにしたときのいずれにおいても、前記電流計によって電流が検出されない場合、前記異常判定処理手段は、FET81にオープン故障の異常が発生したと判断する。また、すべてのFET81〜84をオンにしたときに、所定のFET、例えば、FET81において電圧計によって電圧が検出されない場合、前記異常判定処理手段は、FET81にショート故障の異常が発生したと判断する。
【0068】
このようにして、前記異常判定処理手段は、駆動回路74、76のうちのいずれの駆動回路においてFET81〜84に異常が発生したか、FET81〜84のうちのいずれのFETに異常が発生したか、並びにオープン故障及びショート故障のうちのいずれの異常が発生したかの、異常の発生状態を判断する。
【0069】
続いて、前記キャンバ制御処理手段の駆動設定処理手段は、駆動設定処理を行い、所定のFETに異常が発生した駆動回路において、異常の発生状態に応じて他の所定のFETをオンにして、前記モータを所定の駆動方向(前記車輪WLB、WRBにキャンバを付与する際の駆動方向と同じ方向、又は反対方向)に駆動するとともに、モータの駆動方向を異常の発生状態に応じて変更し、反転させて、クランクシャフト45aをキャンバ付与開始位置からキャンバ付与終了位置まで反対方向に回転させる。
【0070】
例えば、駆動回路76において、FET81〜84が正常である場合、前述されたように、モータ41は逆方向cに駆動されるが、FET81〜84のうちの所定のFETに異常が発生したと判断された場合は、図9に示されるように、モータ41が正方向dに駆動される。
【0071】
このように、所定のFETに異常が発生すると、FETに異常が発生した駆動回路76において、異常の発生状態に応じてモータ41の駆動方向が設定されるので、車輪WRBにキャンバを付与することができる。
【0072】
ところで、図9に示されるように、モータ40、41が同じ方向、すなわち、正方向a、dに駆動されると、各クランクシャフト45aが同じ方向に回転させられ、クランクピン45bも同じ方向に円運動させられることになる。したがって、アクチュエータ31、32の作動に伴ってボディ11に振動が発生してしまう。
【0073】
そこで、前記駆動設定処理手段は、FETに異常が発生していない駆動回路のモータの駆動方向を、FETに異常が発生した駆動回路のモータの駆動方向と反対方向に設定する。
【0074】
すなわち、前記駆動設定処理手段は、車輪WLB、WRBに配設されたアクチュエータ31、32のうちの一方のアクチュエータにおいて、前記所定のFETに異常が発生したと判断される場合に、前記モータを駆動することによって前記一方のアクチュエータのクランク機構45を所定の回転方向に回転させ、前記アクチュエータ31、32のうちの他方のアクチュエータのクランク機構45の回転方向を、前記一方のアクチュエータのクランク機構45の回転方向に基づいて設定する。
【0075】
その場合、例えば、図10に示されるように、モータ40が逆方向bに、モータ41が正方向dに駆動される。したがって、各クランクシャフト45aが互いに反対方向に回転させられ、各クランクピン45bも互いに反対方向に円運動させられることになるので、アクチュエータ31、32の作動に伴ってボディ11に振動が発生するのを抑制することができる。その結果、車両の挙動を安定させることができる。
【0076】
次に、駆動回路76において、FET81〜84に異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作について説明する。
【0077】
図11は本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第1の図、図12は本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第2の図、図13は本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第3の図、図14は本発明の実施の形態におけるオープン故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第4の図、図15は本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第1の図、図16は本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第2の図、図17は本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第3の図、図18は本発明の実施の形態におけるショート故障の異常が発生した場合の駆動設定処理手段の動作を示す第4の図である。なお、各図において、×印によって異常が発生したFETが表される。
【0078】
図11は、FET81にオープン故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET81にオープン故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET81と共にオン・オフさせられない他の所定のFET、本実施の形態においては、FET82、83をオンにし、電流ifをモータ41に供給し、モータ41を逆方向cに駆動する。
【0079】
また、図12は、FET82にオープン故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET82にオープン故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET82と共にオン・オフさせられない他の所定のFET、本実施の形態においては、FET81、84をオンにし、電流inをモータ41に供給し、モータ41を正方向dに駆動する。
【0080】
そして、図13は、FET83にオープン故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET83にオープン故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET83と共にオン・オフさせられない他の所定のFET、本実施の形態においては、FET81、84をオンにし、電流inをモータ41に供給し、モータ41を正方向dに駆動する。
【0081】
また、図14は、FET84にオープン故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET84にオープン故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET84と共にオン・オフさせられない他のFET、本実施の形態においては、FET82、83をオンにし、電流ifをモータ41に供給し、モータ41を逆方向cに駆動する。
【0082】
そして、図15は、FET81にショート故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET81にショート故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET81と共にオン・オフさせられる他の所定のFET、本実施の形態においては、FET84をオンにし、電流inをモータ41に供給し、モータ41を正方向dに駆動する。
【0083】
また、図16は、FET82にショート故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET82にショート故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET82と共にオン・オフさせられる他の所定のFET、本実施の形態においては、FET83をオンにし、電流ifをモータ41に供給し、モータ41を逆方向cに駆動する。
【0084】
そして、図17は、FET83にショート故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET83にショート故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET83と共にオン・オフさせられる他の所定のFET、本実施の形態においては、FET82をオンにし、電流ifをモータ41に供給し、モータ41を逆方向cに駆動する。
【0085】
また、図18は、FET84にショート故障の異常が発生した例を表す。この場合、前記異常判定処理手段によって、駆動回路76のFET84にショート故障の異常が発生したと判断されると、前記駆動設定処理手段は、正常時に、異常が発生したFET84と共にオン・オフさせられる他の所定のFET、本実施の形態においては、FET81をオンにし、電流inをモータ41に供給し、モータ41を正方向dに駆動する。
【0086】
このように、本実施の形態においては、駆動回路74、76におけるFET81〜84のうちの所定のFETに異常が発生した場合に、オープン故障による異常及びショート故障による異常の別に応じて選択された他の所定のFETがオンされ、電流in、ifがモータ40、41に供給され、モータ40、41が所定の駆動方向に駆動されるので、車輪WLB、WRBにキャンバを付与することができる。
【0087】
したがって、駆動回路74、76において所定のFETに異常が発生しても、車両の走行安定性及び旋回安定性を高くすることができる。
【0088】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0089】
11 ボディ
16 制御部
31、32 アクチュエータ
40、41 モータ
74、76 駆動回路
81〜84 FET
WLF、WRF、WLB、WRB 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディと、
該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、
駆動部、及び該駆動部に接続された複数の駆動素子を備えた駆動回路と、
前記各車輪のうちの所定の車輪に配設され、前記駆動部の駆動に伴って前記所定の車輪のキャンバ角を調整するためのキャンバ可変機構と、
前記駆動回路において所定の駆動素子に異常が発生したかどうかを判断する異常判定処理手段と、
該異常判定処理手段によって、前記所定の駆動素子に異常が発生したと判断される場合に、所定の駆動素子の異常の発生状態に応じて他の所定の駆動素子をオンにして、前記駆動部を所定の駆動方向に駆動する駆動設定処理手段とを有することを特徴とするキャンバ制御装置。
【請求項2】
前記キャンバ可変機構は、前記駆動部の駆動に伴って回転させられるクランク機構、及び該クランク機構の回転運動を揺動運動に変換して揺動部材に伝達する運動方向変換部を備え、前記揺動部材の揺動に伴って、前記所定の車輪のキャンバ角を調整する請求項1に記載のキャンバ制御装置。
【請求項3】
前記駆動設定処理手段は、前記所定の駆動素子に発生した異常が、オープン故障の異常であるか、ショート故障の異常であるかに応じて、他の所定の駆動素子をオンにする請求項1又は2に記載のキャンバ制御装置。
【請求項4】
前記駆動設定処理手段は、前記所定の駆動素子に発生した異常がショート故障である場合に、正常時に、異常が発生した駆動素子と共にオン・オフさせられる他の所定の駆動素子をオンにする請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項5】
前記駆動設定処理手段は、前記所定の駆動素子に発生した異常がオープン故障である場合に、正常時に、異常が発生した駆動素子と共にオン・オフさせられない他の所定の駆動素子をオンにする請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項6】
前記キャンバ可変機構は所定の左右の車輪に配設され、
前記駆動設定処理手段は、左右の車輪に配設されたキャンバ可変機構のうちの一方のキャンバ可変機構において、前記所定の駆動素子に異常が発生したと判断される場合に、前記駆動部を駆動することによって前記一方のキャンバ可変機構のクランク機構を所定の回転方向に回転させ、前記キャンバ可変機構のうちの他方のキャンバ可変機構のクランク機構の回転方向を、前記一方のキャンバ可変機構のクランク機構の回転方向に基づいて設定する請求項2〜5のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−116440(P2012−116440A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270631(P2010−270631)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】