説明

サスペンション装置

【課題】最上動したアッパアーム等の車輪支持部が不要に干渉されることないうえ、上方からの荷重を受けたフードが充分に変形でき、しかも、車両設計の自由度を向上できるサスペンション装置を得る。
【解決手段】本サスペンション装置10では、スプリングサポート56の上壁部58に円孔72を形成している。円孔72は基部34を中心にアッパアーム32の先端側が上方へ回動した際の回動軌跡上に形成されており、上方へ回動したアッパーム32の先端側は円孔72を通過して上壁部58の上方へ突出し、上壁部58にアッパーム32の先端側が接することを回避できる。これにより、上壁部58の設定位置を低く設定でき、ひいては、フード62の設定位置を低く設定できたり、フード62の形状をより自由に設計できたり等、車両20の設計の自由度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたサスペンション装置では、ショックアブソーバを構成するコイルばねの上端が、ホイールハウジングに固定された上部ばね座に支持されている。この上部ばね座や上部ばね座が固定されるホイールハウジングの上壁部は、上下にフード(ボンネットフード)と対向する構成である。このため、上部ばね座やホイールハウジングの上壁部とフードとは上下方向に一定寸法以上離間させて、上部ばね座やホイールハウジングの上壁部とフードとの間に空間を形成しておき、上方からの荷重を受けたフードが充分に変形できるようにしておかなくてはならない。
【特許文献1】特開平8−58331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、この特許文献1に開示されたサスペンション装置では、車輪の上下動に伴い、ゴムブッシュジョイントに支持された基端部を軸にアッパアームの先端が上下に揺動する。アッパームの先端が上方へ揺動した際には、当然、上部ばね座又はホイールハウジングの上壁部に接近する。したがって、アッパアームの先端が最も上方へ揺動した際にも、上部ばね座やホイールハウジングの上壁部がアッパアームの先端に当接しないように、上部ばね座やホイールハウジングの上壁部の位置を設定しなくてはならない。
【0004】
このように、上部ばね座やホイールハウジングの上壁部とフードとの間に空間と、最も上方へ揺動したアッパアームの先端との双方を考慮しなくてはならないことで、フードの形状、ひいては、車両の形状の設計の自由度が狭まってしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、最上動したアッパアーム等の車輪支持部が不要に干渉されることないうえ、上方からの荷重を受けたフードが充分に変形でき、しかも、車両設計の自由度を向上できるサスペンション装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るサスペンション装置は、車両の車輪に直接又は間接的に連結されて、前記車輪を上下動可能に支持すると共に、前記車輪の上下動に伴い上下動する車輪支持部と、前記車両の上部パネル部材との間に前記車両の上下方向に沿った所定の寸法以上の空間を有した状態で前記上部パネル部材と前記車輪支持部との間に設けられて、前記車両を構成する車体に直接又は間接的に取り付けられると共に、上動した前記車輪支持部が通過して前記空間に入り込み可能な通過孔が形成された上壁部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載のサスペンション装置では、車輪を支持する車輪支持部が車輪の上動に伴い上動すると上壁部に形成された通過孔を通過して上壁部と車両の上部パネル部材との間の空間内に入り込む。このため、車輪支持部が上壁部に当接して、車輪支持部の上動が妨げられることがない。
【0008】
一方、この上壁部と上部パネル部材とは車両の上下方向に所定の寸法以上離間しており、上壁部と上部パネル部材との間には上記の空間が形成される。このため、上方からの外力で上部パネル部材が変形しようとした際には、上壁部が不要に上部パネル部材に干渉することなく、充分に上部パネル部材を変形させることができる。
【0009】
ここで、上記のように、上動した車輪支持部が上壁部に形成された通過孔を通過することで上動した車輪支持部に上壁部が当接することを防止するため、上壁部の位置を充分に車両下方に設定でき、これに伴い、上部パネル部材の位置も低く設定できる。これにより、本発明を適用することで、車両の設計の自由度を向上できる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係るサスペンション装置は、請求項1に記載の本発明において、前記車輪の上下動に伴い弾性変形して前記車輪の上下動に起因した振動の前記車体への伝達を軽減する振動緩和手段を備えると共に、前記振動緩和手段と前記上部パネル部材との間に設けられて上側から前記振動緩和手段を支持する支持体を含めて前記上壁部を構成した、ことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載のサスペンション装置では、車輪の上下動に伴い振動緩和手段が弾性変形することで車輪の上下動に起因した振動が車体への伝達されることを軽減できる。
【0012】
ここで、この振動緩和手段の上部を支持するための支持体は上壁部を構成しており、上記のように、この上壁部の位置を低く設定できることで、振動緩和手段の上部の支持位置、ひいては、振動緩和手段の設置位置を低く設定できる。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係るサスペンション装置は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記通過孔を封止すると共に、上方又は下方から付与された力により弾性変形可能な封止部材を備えることを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載のサスペンション装置では、上動した車輪支持部が通過する通過孔は封止部材により封止される。このため、通過孔から水や異物が入り込むことを防止又は効果的に抑制できる。
【0015】
さらに、封止部材は上方又は下方からの力で弾性変形が可能である。このため、車輪支持部の上動や上方からの力による上部パネル部材の変形が封止部材に大きく妨げられることはない。
【0016】
請求項4に記載の本発明に係るサスペンション装置は、請求項3に記載の本発明において、上方から付与された力により弾性変形可能で、前記車両の下方へ向けて開口した凹形状に形成され、上動して前記通過孔を通過した前記車輪支持部を収容可能な収容部を前記封止部材に形成したことを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載のサスペンション装置では、封止部材には下方へ向けて開口した凹形状の収容部が形成されており、上動して通過孔を通過した車輪支持部がこの収容部に収容される。このため、車輪支持部の上動が封止部材に妨げられることがない。しかも、この収容部は上方から付与された力で弾性変形するため、上方からの力で上部パネル部材が下方へ変形した際には、この変形した上部パネル部材に押圧されて収容部が適宜に変形する。このため、この収容部が上部パネル部材の変形を大きく妨げることがない。
【0018】
請求項5に記載の本発明に係るサスペンション装置は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の本発明において、前記上壁部に形成され、前記上壁部に入力される外力に対する剛性を前記上壁部に付与する補強部を備えることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載のサスペンション装置では、上壁部には補強部が形成され、この補強部により上壁部に入力される外力に対する剛性が上壁部に付与される。これにより、通過孔を形成することによる上壁部の剛性低下を防止又は効果的に抑制できる。
【0020】
請求項6に記載の本発明に係るサスペンション装置は、請求項3又は請求項4に記載の本発明において、前記通過孔の縁部に沿って前記上壁部を部分的に変形させることで前記上壁部に形成され、前記封止部材が装着されると共に、前記上壁部に入力される外力に対する剛性を前記上壁部に付与する封止部材取付部を備えることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載のサスペンション装置では、通過孔の縁部に沿って封止部材取付部が形成され、この封止部材取付部に封止部材が取り付けられる。ここで、封止部材取付部は上壁部を部分的に変形させることで形成され、この部分的な変形により上壁部に入力される外力に対する剛性が向上している。これにより、通過孔を形成することによる上壁部の剛性低下を防止又は効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1に記載のサスペンション装置は、上動した車輪支持部が上壁部に当接して車輪支持部の上動が妨げられることがないうえ、上方からの外力が付与された上部パネル部材の変形を上壁部が不要に妨げることなく、しかも、上壁部及び上部パネル部材の各位置を充分に車両下方に設定でき、車両の設計の自由度を向上できる。
【0023】
請求項2に記載のサスペンション装置は、振動緩和手段の上部の支持位置、ひいては、振動緩和手段の設置位置を低く設定できる等、車両の設計の自由度を向上できる。
【0024】
請求項3に記載のサスペンション装置は、車輪支持部の上動や上方からの力による上部パネル部材の変形を大きく妨げることなく、通過孔を介した水や異物の落下を防止又は効果的に抑制できる。
【0025】
請求項4に記載のサスペンション装置は、車輪支持部の上動を妨げたり、上方からの力による上部パネル部材の変形を大きく妨げたりすることなく、通過孔を介した水や異物の落下を防止又は効果的に抑制できる。
【0026】
請求項5に記載のサスペンション装置は、補強部が上壁部に入力される外力に対する剛性を上壁部に付与するため、通過孔を形成することによる上壁部の剛性低下を防止又は効果的に抑制できる。
【0027】
請求項6に記載のサスペンション装置は、封止部材を取り付けるために上壁部に形成された封止部材取付部が上壁部に入力される外力に対する剛性を上壁部に付与するため、通過孔を形成することによる上壁部の剛性低下を防止又は効果的に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<本実施の形態の構成>
図1には本発明の一実施の形態に係るサスペンション装置10の構成が断面図により示されている。
【0029】
この図に示されるように、サスペンション装置10はロアアーム12を備えている。ロアアーム12は基部14を備えている。基部14にはブッシュ16が設けられており、図示しないサスペンションメンバに対して車両20の前後方向を軸方向とする軸周りに回動可能にサスペンションメンバに軸支されている。このサスペンションメンバは、車両20の左右両側で車体の骨格を構成するサイドメンバを繋ぐように設けられており、ロアアーム12はサスペンションメンバを介して車体の骨格部材に支持される。このロアアーム12の先端側は車輪24を回転自在に軸支するナックル26の下端部又はナックル26の下端部近傍でボールジョイント28を介してナックル26に連結されている。
【0030】
一方、本サスペンション装置10は車輪支持部としてのアッパアーム32を備えている。アッパアーム32は基部34を備えている。基部34にはブッシュ36が設けられており、上記のサスペンションメンバ(又は車両20のボデー)に対して車両20の前後方向を軸方向とする軸周りに回動可能にサスペンションメンバ(又は車両20のボデー)に軸支されている。このアッパアーム32の先端側は上記のナックル26の上端部にボールジョイント28を介して連結されている。このため、車輪24が上下動すると、ロアアーム12が基部14を中心として車両20の前後方向を軸方向とする軸周りに上下に回動すると共に、アッパアーム32が基部34を中心として車両20の前後方向を軸方向とする軸周りに上下に回動する。
【0031】
また、本サスペンション装置10は振動緩和手段を構成するショックアブソーバ42を備えている。ショックアブソーバ42は車両20の上下方向に対して左右方向に傾斜した所定方向が軸方向とされた略筒形状のショックアブソーバ本体44を備えている。このショックアブソーバ本体44には軸部材46が設けられている。軸部材46は軸方向(長手方向)がショックアブソーバ本体44の軸方向(長手方向)と略同方向とされた棒状部材で、その軸方向中間部よりも上側がショックアブソーバ本体44に収容されている。軸部材46の下端はロアアーム12に設けられた連結部48に連結されており、概ね車両20の前後方向を軸方向とする軸周りにロアアーム12に対して回動可能とされている。
【0032】
また、ショックアブソーバ本体44の外周部には座金50が形成されている。この座金50よりも上側にはショックアブソーバ42と共に振動緩和手段を構成するサスペンションスプリング52が設けられており、このサスペンションスプリング52の下端が座金50に接している。サスペンションスプリング52は圧縮コイルスプリングとされており、このサスペンションスプリング52の内側にショックアブソーバ本体44の座金50よりも上側の部分が入り込んでいる。
【0033】
サスペンションスプリング52の上端側には座金54が設けられており、サスペンションスプリング52の上端が座金54に圧接している。この座金54は溶接等の固着手段やボルト等の締結手段により支持体としてのスプリングサポート56の上壁部58に一体的に固定されている。このスプリングサポート56からは連続してスプリングサポート56の側壁部60が形成されている。側壁部60は溶接等の固着手段やボルト等の締結手段により車両20のボデーや車両20の車体の骨格に一体的に固定されている。上壁部58よりも下方で且つ側壁部60よりも車両20の左右方向外側はタイヤ(車輪24)の収容部64とされており、上壁部58よりも上方に位置する車両20のフード62(上部パネル部材)よりも下側で且つ側壁部60よりも車両20の左右方向内側はエンジンルーム66とされている。
【0034】
一方、スプリングサポート56の上壁部58には通過孔としての円孔72が形成されている。円孔72は、基部34を中心にアッパアーム32の先端側が上方へ回動した際の回動軌跡上に形成されており、図1で仮想線(二点鎖線)にて示されるように、上方へ回動したアッパアーム32の先端側が円孔72を通過してフード62と上壁部58との間の空間部74に入り込める(すなわち、アッパアーム32の先端側は円孔72を通過することで上壁部58の上側へ突出できる)。
【0035】
図1、更に詳細には図2乃至図4に示されるように、この円孔72の縁部に沿って上壁部58には補強部又は封止部材取付部としての環状のビード部76が形成されている。ビード部76はプレス成形等で上壁部58の一部(すなわち、円孔72の縁部に沿った部分)を、上壁部58の厚さ方向一方(すなわち、概ね車両20の上方)へ向けて開口した断面凹形状に塑性変形させることで形成されている。また、図1、図2、及び図4に示されるように、上壁部58の上側には封止部材としてのゴムキャップ78が設けられている。
【0036】
ゴムキャップ78は全体的に柔軟なゴム材又は柔軟なゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により形成されている。ゴムキャップ78は収容部80を備えている。収容部80は外周形状及び内周形状が全体的に略半球形状で、上壁部58の厚さ方向他方の側(概ね車両20の下方側)へ向けて開口した断面凹形状に形成されている。収容部80の内周形状は、図1に示されるように、円孔72を通過して上壁部58の上側へ突出したアッパアーム32の先端側を収容できる形状とされており、好ましくは、車両20の上方へ最大限回動したアッパアーム32の先端側が収容部80の内側に収容された状態で収容部80の内周部にアッパアーム32が接しない形状(大きさ)とされている。
【0037】
収容部80の開口縁近傍では収容部80の外周部からリング状のフランジ部82が延出されている。フランジ部82はその厚さ方向及び上壁部58の厚さ方向に沿って上記のビード部76と対向して配置される。図4に示されるように、上記のビード部76には固着手段の一態様である接着剤84が充填されており、接着剤84がビード部76(すなわち、上壁部58)とフランジ部82の双方に固着することでゴムキャップ78が上壁部58に取り付けられる構成になっている。
【0038】
<本実施の形態の作用、効果>
次に本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0039】
例えば、車両20の走行中に路面の凹凸により車輪24が上下動すると、車輪24の上下動に追従してロアアーム12の先端側が基部14を中心に上下動すると共に、アッパアーム32の先端側が基部34を中心に上下動する。ロアアーム12が上下動すると、ショックアブソーバ42の軸部材46が上下動し、ショックアブソーバ本体44及びサスペンションスプリング52を介してスプリングサポート56、ひいては、車両20のボデーに軸部材46の上下動、すなわち、振動を伝達する。しかしながら、この振動は、サスペンションスプリング52の弾性と、ショックアブソーバ本体44の振動減衰機能により軽減されて車両20のボデーに伝わる。
【0040】
一方で、上記のように、車輪24の上動に伴いアッパアーム32の先端側が基部34を中心に上動すると、アッパアーム32の先端側はスプリングサポート56の上壁部58に接近する。ここで、上記のように上壁部58における基部34を中心としたアッパアーム32の先端側の回動軌跡上には円孔72が形成されているため、アッパアーム32の先端側が上方へ一定ストローク以上回動しても、アッパアーム32の先端側は上壁部58に接することなく、円孔72を通過してゴムキャップ78の収容部80内(すなわち、上壁部58よりも上側で、更に言えば、上壁部58とフード62との間)に入り込む。
【0041】
このように、本実施の形態では、上方へ回動したアッパアーム32の先端側が円孔72を通過することで上壁部58への当接を回避できるため、上壁部58の設定位置を車両20の下方側に低く設定でき、これに伴い、ショックアブソーバ42やサスペンションスプリング52の設置位置を低く設定できる。さらに、上壁部58とフード62との間の空間部74には、車両20の上下方向に一定以上の間隔を設けなくてはならないが、このように、上壁部58の設定位置を低く設定できることで、フード62の設定位置を低く設定できたり、フード62の形状をより自由に設計できたり等、車両20の設計の自由度が向上する。
【0042】
さらに、上記の効果は円孔72を上壁部58に形成するだけで得ることができ、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載の本発明の観点からすれば、円孔72を上壁部58に形成するだけでもよいが、本実施の形態では、この円孔72がゴムキャップ78により閉止されている。このため、上壁部58よりも上方から上壁部58の下側へ水や油、更には他の異物が落下することがなく、このような水や油、更には他の異物がショックアブソーバ42やサスペンションスプリング52等に付着することを防止できる
また、このように円孔72はゴムキャップ78により閉止されているが、上記のように、円孔72を通過したアッパアーム32の先端側はゴムキャップ78の収容部80内に収容される構成であるため、アッパアーム32が収容部80に不要に大きく干渉されることはなく、しかも、最適な設定では円孔72を通過したアッパアーム32の先端側が収容部80に接することがない。これにより、アッパアーム32の上下動がゴムキャップ78に妨げられることがなく、円滑にアッパアーム32が上下動できる。
【0043】
さらに、収容部80を有するゴムキャップ78は柔軟なゴム材又は柔軟なゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により形成されている。このため、上方からの外力が収容部80に作用すると収容部80は容易に弾性変形する。したがって、上方からの外力で変形するフード62が下方の収容部80を押圧すれば、フード62の変形に応じて収容部80は容易に変形し、収容部80がフード62の変形を妨げることがない。このため、フード62が変形することによる外力のエネルギー吸収効果を充分に発揮できる。
【0044】
一方、本実施の形態では、接着剤84が充填されるビード部76は、上壁部58の厚さ方向一方(すなわち、概ね車両20の上方)へ向けて開口した断面凹形状で、しかも、円孔72の縁に沿った環状に形成されている。このように塑性変形させられたビード部76を上壁部58に形成することで、上壁部58に対して付与される外力に対する剛性が増す。これにより、円孔72を形成することで低下した上壁部58の剛性を補うことができる。しかも、ビード部76には接着剤84の充填部位としての機能も有するため、コスト高を招くことなく上壁部58の剛性を補うことができる。
【0045】
また、円孔72がその一形態とされる通過孔は上方へ回動したアッパアーム32の先端側が通過できれば、その形状が円形に限定されることはないが、通過孔を円孔72とすることで、円孔72を形成することによる特定方向からの外力に対する上壁部58の剛性低下を招かない。しかも、この円形の円孔72の縁に沿ってビード部76を円孔72に対して同軸の円環状に形成することで、多方向からの外力に対する上壁部58の剛性向上を図ることができる。
【0046】
なお、本実施の形態では、封止部材に収容部80を有するゴムキャップ78を適用したが、封止部材の構成がこのようなゴムキャップ78に限定されるものではない。例えば、極めて柔軟で上方へ回動するアッパアーム32からの押圧力で極めて容易に変形可能なシート部材を封止部材とし、このシート部材で円孔72を閉止する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態に係るサスペンション装置の構成の概略を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るサスペンション装置の要部の構成の概略を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るサスペンション装置を構成するスプリングサポートの要部を拡大した断面図である。
【図4】封止部材の装着状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 サスペンション装置
20 車両
24 車輪
32 アッパアーム(車輪支持部)
42 ショックアブソーバ(振動緩和手段)
52 サスペンションスプリング(振動緩和手段)
56 スプリングサポート(支持体)
58 上壁部
62 フード(上部パネル部材)
72 円孔(通過孔)
76 ビード部(補強部、封止部材取付部)
78 ゴムキャップ(封止部材)
80 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に直接又は間接的に連結されて、前記車輪を上下動可能に支持すると共に、前記車輪の上下動に伴い上下動する車輪支持部と、
前記車両の上部パネル部材との間に前記車両の上下方向に沿った所定の寸法以上の空間を有した状態で前記上部パネル部材と前記車輪支持部との間に設けられて、前記車両を構成する車体に直接又は間接的に取り付けられると共に、上動した前記車輪支持部が通過して前記空間に入り込み可能な通過孔が形成された上壁部と、
を備えるサスペンション装置。
【請求項2】
前記車輪の上下動に伴い弾性変形して前記車輪の上下動に起因した振動の前記車体への伝達を軽減する振動緩和手段を備えると共に、
前記振動緩和手段と前記上部パネル部材との間に設けられて上側から前記振動緩和手段を支持する支持体を含めて前記上壁部を構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
前記通過孔を封止すると共に、上方又は下方から付与された力により弾性変形可能な封止部材を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサスペンション装置。
【請求項4】
上方から付与された力により弾性変形可能で、前記車両の下方へ向けて開口した凹形状に形成され、上動して前記通過孔を通過した前記車輪支持部を収容可能な収容部を前記封止部材に形成したことを特徴とする請求項3に記載のサスペンション装置。
【請求項5】
前記上壁部に形成され、前記上壁部に入力される外力に対する剛性を前記上壁部に付与する補強部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のサスペンション装置。
【請求項6】
前記通過孔の縁部に沿って前記上壁部を部分的に変形させることで前記上壁部に形成され、前記封止部材が装着されると共に、前記上壁部に入力される外力に対する剛性を前記上壁部に付与する封止部材取付部を備えることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−174186(P2008−174186A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11554(P2007−11554)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】