説明

サスペンション装置

【課題】劣化の抑制と、信頼性および車両における乗り心地の向上を可能とするサスペンション装置を提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるサスペンション装置Sは、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構TとモータMとを備えたアクチュエータAと、流体圧ダンパDと、流体圧ダンパD或いはアクチュエータAの一方に設けた外筒3と、アクチュエータA或いは流体圧ダンパDの他方と上記外筒3との間に介装したベアリング4とを備え、当該ベアリング4は、アクチュエータA或いは流体圧ダンパDの他方と外筒3との間に転動自在に介装した複数のボール4aと当該ボール4aを転動自在に保持するケージ4bとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに生じる電磁力で上記車体と車軸との相対移動を抑制するサスペンション装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種サスペンション装置としては、車体すなわち車両のバネ上部材を弾性支持する懸架バネと、車軸すなわちバネ下部材に連結されるボール螺子ナットに回転自在に螺合した螺子軸と螺子軸の一端に連結されるとともに一対のバネに介装されてバネ上部材に弾性支持されるモータとを備えたアクチュエータと、バネ上部材に固定されアクチュエータの上下方向の振動を減衰する油圧ダンパとで構成され、アクチュエータの推力で車体と車軸との相対移動をアクティブ制御するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このサスペンション装置の場合、減衰力発生源であるモータのトルクを直線方向に作用させるべき減衰力に変換する螺子軸とボール螺子ナットとで構成される運動変換機構を備えており、回転系の慣性質量が大きく、回転系のフリクションも相俟ってモータおよび運動変換機構が高周波振動入力時には伸縮動作しづらくなるので、上記した油圧ダンパおよび一対のバネで該高周波振動を吸収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−197931号公報(段落番号0023,図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このサスペンション装置にあっては、モータの直線運動をガイドするためモータを覆う外筒とモータとの間の二箇所に環状の軸受を介装しているため、油圧ダンパとモータを挟持するバネで高周波振動を吸収しようとしても、上記軸受の存在によって油圧ダンパが動きづらくなって、振動吸収を妨げてしまい、バネ上部材へ振動を伝達して車両における乗り心地が悪くなってしまう虞がある。
【0006】
さらに、このサスペンション装置にあっては、車両走行中にジオメトリの変化などによって横方向から力が入力される場合もあり、螺子軸とボール螺子ナットとの螺合部位にて当該力を受ける構造となっており、当該力が螺子軸の溝や溝を走行するボール螺子ナットのボールに負荷されるため、サスペンション装置の根幹を成す部材である螺子軸とボール螺子ナットの劣化を促進してしまう可能性がある。
【0007】
加えて、上記軸受がモータの上下動を妨げるので、アクチュエータに大きな加速度が作用しやすくなり、さらに、高周波振動入力時にはアクチュエータの各部が直接その高周波振動によって振動せしめられてしまう結果となり、高周波振動は加速度が大きいこともあって、緩衝器の信頼性の点で問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、劣化の抑制と、信頼性および車両における乗り心地の向上を可能とするサスペンション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段におけるサスペンション装置は、車体と車軸の一方に連結される部材と、車体と車軸の他方に連結されて前記部材の外周に配置される外筒と、前記部材と前記外筒との間にベアリングを介装してなり、当該ベアリングが前記部材と外筒の少なくとも一つに転動自在に接触するボールと、当該ボールを転動自在に保持するボールケースとを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、上記した目的を達成するため、本発明の他の課題解決手段におけるサスペンション装置は、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と該運動変換機構における回転運動を呈する回転部材に連結されるモータとを備えたアクチュエータと、ロッドとロッドが出入りするダンパ本体とを有する流体圧ダンパとを備え、運動変換機構における直線運動を呈する直動部材に流体圧ダンパのロッドとダンパ本体の一方を連結してなり、流体圧ダンパ或いはアクチュエータの一方に外筒を設け、アクチュエータ或いは流体圧ダンパの他方と上記外筒との間にベアリングを介装し、当該ベアリングは、アクチュエータ或いは流体圧ダンパの他方と外筒の少なくとも一つに転動自在に接触した複数のボールと当該ボールを転動自在に保持するボールケースとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のサスペンション装置によれば、ベアリングが車体と車軸の一方に連結される部材と、車体と車軸の他方に連結されて前記部材の外周に配置される外筒と、サスペンション装置の伸縮に対して、ベアリングが抵抗となる摩擦力を殆ど発生せず滑らかで円滑な伸縮作動が保証され、また、横力が運動変換機構に作用しないので、運動変換機構が保護されて劣化が抑制され円滑な運動変換が長期間に亘って維持される。
【0012】
より具体的には、ベアリングがアクチュエータ或いは流体圧ダンパの一方に設けた外筒と、アクチュエータ或いは流体圧ダンパの他方と上記外筒との間に介装されるので、アクチュエータと流体圧ダンパの双方の伸縮に対して、ベアリングが抵抗となる摩擦力を殆ど発生せず滑らかで円滑な伸縮作動が保証され、また、横力が運動変換機構に作用しないので、運動変換機構が保護されて劣化が抑制され円滑な運動変換が長期間に亘って維持される。
【0013】
また、ベアリングは横力を受けるものの流体圧ダンパの伸縮に影響を与えず、流体圧ダンパの円滑な伸縮が保証されるので、このサスペンション装置にあっては、入力される高周波振動を確実に吸収でき、車体への振動絶縁性を向上でき、車両における乗り心地を向上できる。
【0014】
さらに、高周波振動の入力に対してベアリングが流体圧ダンパの伸縮を妨げないので、アクチュエータに直接衝撃的な力が作用することが抑制されてモータおよび運動変換機構を保護することができ、サスペンション装置の主要部品であるアクチュエータの信頼性が向上し、従来サスペンション装置の不具合を解消してサスペンション装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施の形態におけるサスペンション装置の縦断面図である。
【図2】一実施の形態におけるサスペンション装置のベアリングの斜視図である。
【図3】一実施の形態の一変形例におけるサスペンション装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態におけるサスペンション装置Sは、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構Tと該運動変換機構Tにおける回転運動を呈する回転部材としてのボール螺子ナット1に連結されるモータMとを備えた直動型のアクチュエータAと、ロッド5とロッド5が出入りするダンパ本体6とを有する流体圧ダンパDと、ダンパ本体6に設けられてアクチュエータAの外周に配置される外筒3と、当該外筒3とアクチュエータAとの間に介装されたベアリング4とを備え、運動変換機構Tにおける直線運動を呈する直動部材としての螺子軸2を流体圧ダンパDのロッド5に連結して構成されている。
【0017】
また、このサスペンション装置Sは、この実施の形態の場合、アクチュエータAに連結される環状のエアチャンバ7と、流体圧ダンパDの外周に設けたエアピストンとして機能する外筒3と、エアチャンバ7と外筒3とに架け渡される筒状のダイヤフラム8とで画成されるエア室Gによって懸架ばねとして機能するエアばねASを外周側に備えている。
【0018】
そして、このサスペンション装置Sは、アクチュエータAをマウント10にて車両の車体へ連結し、流体圧ダンパDの下端となるダンパ本体6を車両の車軸へ連結することで、車両の車体と車軸との間に介装されるようになっている。すなわち、このサスペンション装置Sにあっては、基本的には、図示しない車両の車体と車軸との間に介装するにあたり、アクチュエータAを車体へ流体圧ダンパDを車軸へと連結するようにして介装されるようになっている。すなわち、この場合、車体に連結される部材をアクチュエータAとしており、外筒3がダンパ本体6を介して車軸に連結されている。なお、後述するようにアクチュエータAがモータMを備えている場合には、アクチュエータAを車体側に連結することでモータMへの高周波振動の入力を低減することができる利点があるが、アクチュエータAを車軸側へ外筒3を車体側へ連結することも可能である。
【0019】
アクチュエータAは、詳しくは、モータMと、モータMの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構Tとを備えて構成されている。運動変換機構Tは、この場合、モータMのロータRに連結されるボール螺子ナット1とボール螺子ナット1に螺合する螺子軸2とを備えて構成されており、回転部材をボール螺子ナット1とし、直動部材を螺子軸2として、ボール螺子ナット1の回転運動を螺子軸2の直線運動に変換することが可能であり、また、螺子軸2の直線運動をボール螺子ナット1の回転運動に変換することも可能とされている。
【0020】
また、ボール螺子ナット1は、筒状のホルダ11の内周に回転自在に保持されており、モータMも当該ホルダ11内に挿入されて固定されている。さらに、このホルダ11内には、螺子軸2がボール螺子ナット1とともに回転してしまうことを避けるため、ボールスプラインナット12が収容固定されており、螺子軸2の外周にはボール螺子ナット1のボールが走行する螺旋状の螺子溝の他にボールスプラインナット12のボールが走行する軸方向に沿う縦溝を備えている。
【0021】
したがって、螺子軸2は、ホルダ11を介してモータMに回転不能に連結されるボールスプラインナット12によって回り止めされて、図1中上下方向への移動のみが許容され、モータMでボール螺子ナット1を回転駆動することで螺子軸2を図1中上下方向へ駆動させることができ、アクチュエータAは直動型のリニアアクチュエータとして機能することができるようになっている。このようにアクチュエータAは、この実施の形態にあっては、モータM、ホルダ11、運動変換機構Tとしてのボール螺子ナット1および螺子軸2、ボールスプラインナット12とで構成されている。
【0022】
なお、螺子軸2を回転部材としてモータMのロータRに接続してこれを回転駆動できるようにし、ボール螺子ナット1を直動部材として図1中上下方向へ駆動するようにしてもよく、また、運動変換機構Tは、この場合、螺子軸2とボール螺子ナット1とで構成される送り螺子機構とされているが、ラックアンドピニオン、ウォームギア等の機構で構成されるようにしてもよい。
【0023】
つづいて、流体圧ダンパDは、ダンパ本体6に対してロッド5が出入りする伸縮作動を呈すると所定の減衰力を発揮するようになっており、主としてサスペンション装置Sに入力される高周波振動を吸収する目的で設けられている。
【0024】
なお、流体圧ダンパDは、周知であるので詳しく図示はしないが、ダンパ本体6がロッド5の先端に設けたピストンが摺動自在に挿入される筒状のシリンダを備えており、上記のシリンダ内にピストンで区画された二つの圧力室に作動流体を充填して構成されている。また、流体が液体である場合であって流体圧ダンパDが片ロッド型に設定される場合には、ダンパ本体6にシリンダ内に出入りするロッド5の体積分の容積変化を補償するリザーバ或いは気室を備える。なお、流体圧ダンパDにおける作動流体は、作動油や水、水溶液といった液体の他、気体とされてもよい。
【0025】
そして、上記流体圧ダンパDは、慣性モーメントが大きく高周波振動の入力に対して伸縮しにくく振動を伝達しやすくなるアクチュエータAに直列して連結されることで、比較的加速度が大きい振動等の高周波振動の入力に対して、この振動エネルギを吸収するようになっている。なお、流体圧ダンパDの外周に装着されるコイルばね13,14は、流体圧ダンパDのダンパ本体6内に摺動自在に挿入されてロッド5に連結される図示しないピストンの位置を所定の中立位置へ復帰させ、流体圧ダンパDが最伸長あるいは最収縮したままとなって高周波振動を吸収できなくなって車両における乗り心地を悪化させてしまう事態を防止する目的で設けられている。
【0026】
このように構成されたサスペンション装置Sは、上述したように、モータMが発生するトルクでボール螺子ナット1を回転駆動することによって螺子軸2を図1中上下方向へ直線運動させることが可能であって、外力の入力に対して、モータMに積極的にトルクを発生させることによって螺子軸2に推力を与えることで螺子軸2の直線運動を抑制することもできる。また、螺子軸2が外力によって強制的に直線運動させられるとボール螺子ナット1に連結されるモータMのロータRが回転運動を呈し、モータMは誘導起電力に起因するロータRの回転運動を抑制するトルクを発生し、螺子軸2の直線運動を抑制するように機能する。すなわち、モータMは外力によって強制的に駆動される場合にはジェネレータとして機能して外力に抗する積極的にトルクを発生して螺子軸2の直線運動を抑制することができる。
【0027】
したがって、このサスペンション装置Sにあっては、単に、螺子軸2の直線運動を抑制する減衰力を発生するばかりではなく、アクチュエータとしても機能することから、このサスペンション装置Sが車両の車体と車軸との間に介装されて使用されると、車両の車体の姿勢制御も同時に行うことができ、これにより、アクティブサスペンションとして機能することができる。
【0028】
なお、この実施の形態の場合、運動変換機構Tが回転運動と直線運動を可逆的に変換するようになっているが、アクチュエータAがアクチュエータとしてのみ機能すればよい場合には、回転運動を直線運動に変換するが直線運動を回転運動に変換しない非可逆的な運動変換を行うものであってもよく、また、この場合、モータMも外力にてジェネレータとして機能することを要せず、単に、サスペンション装置Sがアクティブサスペンションとして機能する上では、このように構成されてもよい。
【0029】
また、上記したところでは、流体圧ダンパDのロッド5を螺子軸2に連結するようにしているが、ダンパ本体6を螺子軸2に連結してもよく、さらに、直動部材がボール螺子ナット1である場合にはボール螺子ナット1を流体圧ダンパDにおけるロッド5或いはダンパ本体6に連結するようにすればよい。
【0030】
そして、流体圧ダンパDの上記した直動部材に連結されていないほうの部材であるダンパ本体6の外周には、アクチュエータAの外殻を成すホルダ11に環状隙間を空けて対向する外筒3が設けてある。詳しくは、外筒3は、図1中下端をダンパ本体6の側部に連結されており、上端にはフランジ状のストッパ9を備えている。なお、このストッパ9は、アクチュエータAの外周に設けられた環状のクッション15と衝合することでサスペンション装置Sの最収縮長さを規制している。
【0031】
また、ホルダ11の外周には、環状のエアチャンバ7が連結されている。エアチャンバ7は、外筒3の外径より大径に設定される筒部7aと、筒部7aの上端をホルダ11へ連結する環状の頂部7bとを備えて構成され、エアチャンバ7の筒部7aと外筒3との間には環状隙間が形成されている。そして、エアチャンバ7の筒部7aの下端と、外筒3の中間外周との間には筒状で可撓性を備えたダイヤフラム8が架け渡されており、アクチュエータAと流体圧ダンパDの外周にエアばねASにおけるエア室Gが形成されている。このエア室G内には、気体を給排することができるようになっており、エア室G内の気圧を調節することで車両の車高とバネ定数を調整でき、エアばねASは懸架バネとして機能するようになっている。
【0032】
なお、この実施の形態の場合、懸架バネをエアばねASとしているので、外筒3をエアピストンとして利用しているが、懸架バネをコイルばねとする場合には、当然であるが外筒3をエアピストンとして機能させる必要は無く、エアチャンバ7およびダイヤフラム8を廃止し、たとえば、アクチュエータAの外周或いはマウントにコイルばねの上端を支持するばね受を設けるとともに、外筒3にコイルばねの下端を支持するばね受を設けるようにすればよい。
【0033】
ここで、本実施の形態のサスペンション装置Sにあっては、ボール螺子ナット1と螺子軸2に外方から入力される横力が作用しないように、外筒3とアクチュエータAの外周となるホルダ11の外周との間には、ベアリング4が介装してある。
【0034】
具体的には、ホルダ11と外筒3には、一定の環状隙間を形成しつつ対向するベアリング走行面3a,11aを備えており、当該ベアリング走行面3a,11a間にベアリング4が介装されている。すなわち、このサスペンション装置Sにあっては、車体と車軸の一方に連結される部材としてのホルダ11と、車体と車軸の他方に連結される外筒3との間にベアリング4を介装している。
【0035】
このベアリング4は、詳しくは、図1および図2に示すように、アクチュエータAの外周となるホルダ11の外周と外筒3との間に両者に接触しつつ転動自在に介装される複数のボール4aと、当該ボール4aを転動自在に保持するボールケースとしてのケージ4bとを備えたボールゲージ型に設定されている。また、この実施の形態の場合、具体的には、ボール4aは、ベアリング4のケージ4bに軸方向に並べられて列をなし、当該ボール列が周方向に16列設けられている。なお、ボール4aの設置数、配置はこれに限定されるものではない。
【0036】
そして、外筒3とアクチュエータAの図1中上下方向となる軸方向の相対移動に対しては、アクチュエータAの外周と外筒3との間でボール4aが転動して殆ど抵抗なくこれを許容し、サスペンション装置Sに入力される横力に対してはこれをベアリング4で受けるので、ボール螺子ナット1、螺子軸2およびボールスプラインナット12に横力が作用することが防止されている。
【0037】
また、外筒3に対してアクチュエータAが軸方向へストロークする範囲内では、常に、ベアリング4の軸方向長さの全てで外筒3とアクチュエータAに対向するようになっている。
【0038】
なお、ボール4aが転動することでケージ4bが上下方向へ移動することになるが、ホルダ11と外筒3のベアリング4の走行面3a,11aにおける軸方向の長さは、サスペンション装置Sが最大限伸縮作動を行っても、ケージ4bがアクチュエータAの外殻を成すホルダ11の外周と外筒3との間に脱落せずに介装された状態に維持されるように設定される。
【0039】
すなわち、サスペンション装置Sにあっては、上記構造のベアリング4が流体圧ダンパDに設けた外筒3とアクチュエータAの外周との間に介装されるので、アクチュエータAと流体圧ダンパDの双方の伸縮に対して、ベアリング4が抵抗となる摩擦力を殆ど発生せず滑らかで円滑な伸縮作動が保証され、また、横力が運動変換機構Tに作用しないので、運動変換機構Tが保護されて劣化が抑制され円滑な運動変換が長期間に亘って維持される。
【0040】
また、ベアリング4は横力を受けるものの流体圧ダンパDの伸縮に影響を与えず、流体圧ダンパDの円滑な伸縮が保証されるので、このサスペンション装置Sにあっては、入力される高周波振動を確実に吸収でき、車体への振動絶縁性を向上でき、車両における乗り心地を向上できる。
【0041】
さらに、高周波振動の入力に対してベアリング4が流体圧ダンパDの伸縮を妨げないので、アクチュエータAに直接衝撃的な力が作用することが抑制されてモータMおよび運動変換機構Tを保護することができ、サスペンション装置Sの主要部品であるアクチュエータAの信頼性が向上し、従来サスペンション装置の不具合を解消してサスペンション装置Sの信頼性を向上させることができる。
【0042】
また、この実施の形態のサスペンション装置Sでは、ベアリング4を介装するためだけに外筒3が設置されているのではなく、外筒3がエアばねASを構成するエアピストンを兼ねているので、ベアリング4の設置にあたり部品点数が増加することがなく、また、サスペンション装置Sの全体としての重量増加も小さく抑えることができる。
【0043】
なお、上述したところでは、流体圧ダンパDのダンパ本体6にアクチュエータAの外周に対向する外筒3を設けて、当該アクチュエータAと外筒3との間にボールケージ型に設定されるベアリング4を介装するようにしているが、アクチュエータAにダンパ本体6の外周に対向する外筒を設けて、ダンパ本体6と外筒との間にボールケージ型のベアリングを介装してもよいし、アクチュエータAに外筒を設けて、流体圧ダンパDのロッド5に外筒に対向する筒体等を設けて外筒と筒体との間にボールケージ型のベアリングを介装してもよい。
【0044】
また、本実施の形態にあっては、アクチュエータAのケースとして機能するホルダ11にベアリング4を接触させ走行させる構成とされているが、モータMのケースがアクチュエータAのケースの全部または一部を兼ねるような場合には、モータMのケースにベアリング4を走行させるようにしてもよい。
【0045】
さらに、ボールスプラインのように、ホルダ11と外筒3のベアリング4の走行面3a,11aに軸方向に沿う溝を設け、ベアリング4のボール4aに当該溝を走行させるようにしてもよい。また、上記したところでは、ベアリング4におけるボール4aは、ボールケースとしてのケージ4bに保持されてその場で転動するようになっているが、自身の転動によってボール4aが循環するようになっていてもよい。
【0046】
また、上記したようにベアリング4が、外筒3とこれに対向する部材、本実施の形態の場合、外筒3とアクチュエータAの外周の両者に介装され、当該両者に転動自在に接触するボール4aと、ボール4aを転動自在に保持するケージ4bとでなるボールケージ型のベアリングとされているので、ボール4aを循環させる必要が無く薄肉であるので、外筒3とこれに対向する部材との間に介装されても、サスペンション装置の大径化を最小限に留めることができる利点がある。これに対して、外筒3とこれに対向する部材、本実施の形態の場合、外筒3とアクチュエータAの外周のいずれか一つにボールが転動自在に接触して、自身の転動によってボールケース内を循環する構造のベアリングを採用することも可能である。この場合には、外筒3とこれに対向する部材のうちボールが接触しない方にボールケースを固定するようにすればよい。このような構造のベアリングを用いる場合にあっても、ボールスプラインのように、外筒3とこれに対向する部材のうちボールが接触する方にボールが走行する溝を設けてボールの走行をガイドするようにしてもよい。
【0047】
また、上記したように、ボール4aがケージ4bに保持されてその場で転動するベアリング4の場合、図3に示すように、ベアリング4の軸方向の両端へ向かうほどボール4aの直径が小さくなるようにしておく、つまり、両端側に配置されるボール4aほど直径が小さくなるようにしておくことで、クラウニング処理と同等の効果を得ることができ、アクチュエータAと流体圧ダンパDの双方のより一層滑らかな伸縮を実現できる。さらに、横力の入力によってサスペンション装置Sに過大なモーメントが作用した際に、両端側へ向かうほどボール4aの直径が小さくなっているので、一部のボール4aに過大圧力が作用せずに各ボール4aへの負荷を均等化でき、アクチュエータAの外殻であり車体と車軸の一方に連結される部材であるホルダ11、外筒3およびボール4aに過大圧力が作用することを抑制できるとともに、モーメント作用時においてアクチュエータAに対する外筒3の首振りが許容される範囲内で外筒3がアクチュエータAに対して傾いたままでもサスペンション装置Sの伸縮に抵抗を与えることもない。
【0048】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、車両のサスペンション装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 回転部材としてのボール螺子ナット
2 直動部材としての螺子軸
3 外筒
3a 外筒におけるベアリング走行面
4 ベアリング
4a ベアリングにおけるボール
4b ベアリングにおけるケージ
5 流体圧ダンパにおけるロッド
6 流体圧ダンパにおけるダンパ本体
7 エアチャンバ
7a エアチャンバにおける筒部
7b エアチャンバにおける頂部
8 ダイヤフラム
9 ストッパ
10 マウント
11 ホルダ
11a ホルダにおけるベアリング走行面
12 ボールスプラインナット
13,14 コイルばね
15 クッション
A アクチュエータ
AS エアばね
D 流体圧ダンパ
G エア室
M モータ
R ロータ
S サスペンション装置
T 運動変換機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車軸の一方に連結される部材と、車体と車軸の他方に連結されて前記部材の外周に配置される外筒と、前記部材と前記外筒との間にベアリングを介装してなり、当該ベアリングが前記部材と外筒の少なくとも一つに転動自在に接触するボールと、当該ボールを転動自在に保持するボールケースとを備えたことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
上記ベアリングが前記部材と外筒との間に転動自在に介装した複数のボールと当該ボールを転動自在に保持するボールケースとを備えたことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と該運動変換機構における回転運動を呈する回転部材に連結されるモータとを備えたアクチュエータと、ロッドとロッドが出入りするダンパ本体とを有する流体圧ダンパとを備え、運動変換機構における直線運動を呈する直動部材に流体圧ダンパのロッドとダンパ本体の一方を連結してなるサスペンション装置において、流体圧ダンパ或いはアクチュエータの一方に外筒を設け、アクチュエータ或いは流体圧ダンパの他方と上記外筒との間にベアリングを介装し、当該ベアリングがアクチュエータ或いは流体圧ダンパの他方と外筒の少なくとも一つに転動自在に接触するボールと、当該ボールを転動自在に保持するボールケースとを備えたことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項4】
上記ベアリングは、アクチュエータ或いは流体圧ダンパの他方と外筒との間に転動自在に介装した複数のボールと当該ボールを転動自在に保持するボールケースとを備えたことを特徴とする請求項3に記載のサスペンション装置。
【請求項5】
アクチュエータの外周に設けたエアチャンバと、外筒と、エアチャンバと外筒との間に架け渡されるダイヤフラムとでエアばねを形成するエア室を区画したことを特徴とする請求項4に記載のサスペンション装置。
【請求項6】
外筒がエアばねのエアピストンを兼ねることを特徴とする請求項5に記載のサスペンション装置。
【請求項7】
前記ベアリングにおけるボールの直径がベアリングの軸方向の両端側へ配置されるボールほど小さくなるように設定されてなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のサスペンション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−33161(P2011−33161A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182083(P2009−182083)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】