説明

シリコン酸化膜の形成方法

【課題】半導体基板の結晶欠陥の発生を抑えつつ、シリコン酸化膜の膜質を向上させることが可能なシリコン酸化膜の形成方法を提供する。
【解決手段】スピンコーティング法により、過水素化シラザン重合体溶液を半導体基板101の表面上に塗布し、塗布された過水素化シラザン重合体溶液中の溶媒を加熱処理で揮発させることにより、半導体基板表面上の過水素化シラザン重合体をポリシラザン膜に変化させ、酸素(O)を含む雰囲気中において、UVランプ1にUV光を発光させることにより、雰囲気中にオゾン(O)を発生させ、遮蔽板4によってポリシラザン膜をUVランプ1の熱で硬化させないようにした状態で、ポリシラザン膜の表面を発生したオゾンにより酸化し、ポリシラザン膜を水蒸気酸化することにより、ポリシラザン膜中の不純物を除去し、ポリシラザン膜をアニールすることにより、ポリシラザン膜をシリコン酸化膜に変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造工程におけるシリコン酸化膜の成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細化の進んだSTI(Shallow Trench Isolation)、PMD(Pre Metal Dielectric)等への絶縁膜埋め込み技術としては、複数の技術が挙げられる。例えば、スピンコーティング法で形成するSOG(Spin−on−Glass)膜、TEOS(Tetraethyl Orthosilicate)膜等の流動性のある膜で埋め込みを行う技術や、HDP(High Density Plasma)−CVD(Chemical Vapor Deposition)シリコン酸化膜と前述の流動性のある膜とを組み合わせて埋め込む技術等が、有望になると考えられる。
【0003】
そのひとつの手法として、過水素化シラザン重合体(ポリシラザン)溶液を半導体基板に形成されたSTI溝等に埋め込み、該半導体基板を拡散炉などにて水蒸気雰囲気で酸化することにより、該STI溝にシリコン酸化膜を形成する方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0004】
ここで、塗布されたポリシラザン膜には、原料に含まれる窒素(N)、およびジブチルエーテル等の有機溶媒に含まれる炭素(C)が膜中に不純物として残留してしまう。このため、膜質のよいシリコン酸化膜にするためには、酸化量を多くして、これらの不純物を除去する必要がある。
【0005】
ポリシラザン膜を良質なシリコン酸化膜への変換するために、例えば、水蒸気酸化により酸化したポリシラザン膜を緻密化するために、窒素などの不活性ガス雰囲気で、アニールを行う。
【0006】
しかし、このアニールの際、ポリシラザン膜に膜収縮が起こる。この膜収縮により、下地(半導体基板)に応力が加わり、半導体基板に結晶欠陥等を発生させる原因となる。
【特許文献1】特開2004−179614号公報
【特許文献2】特開2002−367980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、半導体基板の結晶欠陥の発生を抑えつつ、シリコン酸化膜の膜質を向上させることが可能なシリコン酸化膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るシリコン酸化膜の形成方法は、
スピンコーティング法により、シリコンを含む溶液を半導体基板の表面上に塗布する工程と、
塗布された前記溶液中の溶媒を加熱処理で揮発させることにより、前記半導体基板の表面上にシリコンを含む膜を形成する工程と、
前記膜を前記UVランプの熱で硬化させないようにした状態で、酸素(O)を含む雰囲気中において、UVランプにUV光を発光させることにより、前記雰囲気中にオゾン(O)を発生させ、発生した前記オゾンにより前記膜の表面を酸化する工程と、
前記膜を水蒸気酸化することにより、前記膜中の不純物を除去する工程と、
前記水蒸気酸化後、前記膜をアニールすることにより、前記膜をシリコン酸化膜に変化させる工程と、を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様に係るシリコン酸化膜の形成方法によれば、半導体基板の結晶欠陥の発生を抑えつつ、シリコン酸化膜の膜質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
既述の従来技術では、ポリシラザン膜を良質なシリコン酸化膜への変換するために、例えば、水蒸気酸化により酸化したポリシラザン膜を緻密化するために、窒素などの不活性ガス雰囲気で、アニールを行う。
【0011】
既述のように、このアニールの際、ポリシラザン膜に膜収縮が起こる。このため、下地に応力が加わり、半導体基板に結晶欠陥等を発生させる原因となる。
【0012】
ここで、例えば、UVランプのUV光の発光により発生するオゾン(O)により、塗布されたポリシラザン膜の表面を酸化することにより、後のアニール時においてポリシラザン膜の膜収縮を抑制することができる。
【0013】
しかし、UVランプのUV光の発光により生じる熱により、塗布されたポリシラザン膜が硬化する。
【0014】
そして、本発明者らは、このポリシラザン膜の硬化が生じた場合に、後の水蒸気酸化、アニールを施しても、ポリシラザン膜が十分酸化されず、所望の特性を有するシリコン酸化膜を形成することができないことを、発見した。
【0015】
そこで、本発明者らは、半導体基板の結晶欠陥の発生を抑えつつ、シリコン酸化膜の膜質を向上させるシリコン酸化膜の形成方法を提案する。
【0016】
以下、本発明を適用した実施例について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、一例として、シリコンを含む溶液として、ポリシラザン溶液を用いた場合について説明する。この場合、該溶液の溶媒を揮発して得られたポリシラザン膜(シリコンを含む膜)を酸化処理することにより、シリコン酸化膜が形成される。
【0017】
しかし、シリコンを含む溶液として、ポリシラン溶液またはヒドロシロキサン溶液等の溶液について適用してもよい。この場合、該溶液の溶媒を揮発して得られたシリコンを含む膜であるポリシラン膜またはヒドロシロキサン膜を酸化処理することにより、シリコン酸化膜が形成される。
【実施例1】
【0018】
本実施例では、特に、半導体基板上に形成されたSTI溝にシリコン酸化膜を埋め込む場合の一例について説明する。
【0019】
図1Aないし図1Dは、本発明の実施例1に係るシリコン酸化膜の形成方法の各工程における断面図である。また、図2は、UV光によりオゾンを発生させて半導体基板上のポリシラザン膜の表面を酸化させる装置の一例を示す図である。また、図3は、UV光によりオゾンを発生させて半導体基板上のポリシラザン膜の表面を酸化させる装置の他の例を示す図である。
【0020】
まず、半導体基板101上に、熱酸化法により熱酸化膜102を例えば、5nm程度形成する。そして、この熱酸化膜102上に、後のCMP(Chemical Mechanical Polishing)の研磨ストッパ膜となるシリコン窒化膜103を、例えば、150nm程度形成する。
【0021】
次に、半導体基板101の全面に、反応性イオンエッチングRIE(Reactive Ion Etching)のハードマスクとなるシリコン酸化膜等のマスク膜(図示せず)をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成する。更に、このマスク膜上にフォトレジスト膜(図示せず)を塗布する。
【0022】
次に、通常のリソグラフィ技術により、該フォトレジスト膜を加工する。そして、該フォトレジスト膜をマスクとしてRIEにより、該マスク膜を加工する。その後、該フォトレジスト膜を、アッシャー、及び硫酸過酸化水素水混合液のエッチングにより、除去する。
【0023】
次に、該マスク膜をハードマスクとして、RIEにより、シリコン窒化膜103、熱酸化膜102、半導体基板101を順次加工して、半導体基板101にエッチング深さ300nmの溝を形成する。
【0024】
次に、例えば、弗酸蒸気によって、該マスク膜を選択的に除去する。続いて、該溝内面を熱酸化して4nmの熱酸化膜104を形成する。
【0025】
これにより、半導体基板101にSTIとなるSTI溝105が形成される(図1A)。
【0026】
次に、STI溝105を形成した半導体基板101の全面に、ポリシラザン膜106を形成する(図1B)。このポリシラザン膜106の形成は、詳細には、以下のように行う。
【0027】
例えば、過水素化シラザン(パーハイドロシラザン)重合体[(SiHNH)]をキシレン、ジブチルエーテル等に分散して過水素化シラザン重合体溶液(ポリシラザン溶液)を生成する。スピンコーティング法により、この過水素化シラザン重合体溶液(シリコンを含む溶液)を、半導体基板101表面上に塗布する。
【0028】
ここで、上述のように、過水素化シラザン重合体溶液を塗布することより、過水素化シラザン重合体が、高アスペクト比の溝内部に、ボイド(未充填)やシーム(継ぎ目状の未充填)を生じることなく、埋め込まれる。
【0029】
そして、塗布された過水素化シラザン重合体溶液中の溶媒を加熱処理で揮発させることにより、半導体基板101の表面上の前記過水素化シラザン重合体からポリシラザン膜(シリコンを含む膜)を形成する。
【0030】
すなわち、例えば、塗膜を形成した半導体基板をホットプレート上で例えば150℃以上に加熱し、数分間ベークする。これにより、過水素化シラザン重合体溶液中の溶媒を揮発させる。
【0031】
以上により、半導体基板101上に、ポリシラザン膜106が形成される(図1B)。
【0032】
次に、図2に示す装置により、支持部3で支持された半導体基板101に形成されたポリシラザン膜106をUVランプ1の熱で硬化させないようにした状態にする。この状態で、酸素(O)を含む雰囲気中において、UVランプ1にUV光を発光させることにより、該雰囲気中にオゾン(O)を発生させる。そして、ポリシラザン膜106の表面を発生した該オゾンにより酸化する。
【0033】
本実施例では、図2に示すように、UVランプ1とポリシラザン膜106が形成された半導体基板101の表面との間に、UVランプ1がUV光を発光するときに発生する熱を遮蔽する遮蔽板4を配置する。これにより、UVランプ1の熱が遮蔽板4により遮蔽され、ポリシラザン膜106をUVランプ1の熱で硬化しないようになっている。なお、UVランプ1にはUV光の照射方向を決定するカバー2が備えられており、UV光の照射方向は、遮蔽板4に向かっている。
【0034】
また、図3に示すように、UVランプ1がUV光を発光する場合には、カバー2により、UVランプの照射方向を半導体基板101の基板面と平行にするようにしもよい。これにより、UVランプ1の熱がカバー2により遮蔽され、ポリシラザン膜106をUVランプ1の熱で硬化しないようにできる。
【0035】
なお、UVランプ1の熱によりポリシラザン膜106が硬化しないように、UVランプ1を、半導体基板101との間に所定の距離を隔てて、配置するようにしてもよい。
【0036】
また、酸素を含む該雰囲気は、少なくとも酸素(O)が含まれていればよく、例えば、大気や、この大気よりも酸素濃度が高い雰囲気等であってもよい。
【0037】
また、例えば、半導体基板101付近を減圧することにより、UVランプ1のUV光の発光により発生した該オゾンを、ポリシラザン膜106の表面近傍まで流動させるようにしもよい。これにより、より効率よくポリシラザン膜106の表面を酸化することができる。
【0038】
次に、例えば、拡散炉により、ポリシラザン膜106を水蒸気酸化することにより、ポリシラザン膜中の不純物を除去する。
【0039】
次に、膜の緻密化を目的として、ポリシラザン膜106をアニールする。このアニールの条件は、例えば、乾燥酸素中で、加熱温度900℃、30分である。これにより、ポリシラザン膜106をシリコン酸化膜106aに変化(改質)させる(図1C)。
【0040】
次に、CMP技術により、シリコン窒化膜103をストッパとして、シリコン酸化膜106aを研磨する。これにより、シリコン酸化膜106aを、STI溝105内部にのみ残存させる(図1D)。
【0041】
以降は、例えば、ホット燐酸中でシリコン窒化膜103を除去し、トランジスタ等の素子を形成する工程等が続くことになる。
【0042】
以上の工程により、半導体基板の結晶欠陥の発生を抑えつつ、STI溝に形成するシリコン酸化膜の膜質を向上させることができる。
【0043】
以上のように、本実施例に係るシリコン酸化膜の形成方法によれば、半導体基板の結晶欠陥の発生を抑えつつ、シリコン酸化膜の膜質を向上させることができる。
【0044】
なお、上記実施例1では、STI溝に埋めるシリコン酸化膜を形成する場合について説明した。しかし、本発明は、層間絶縁膜としてシリコン酸化膜を形成する場合についても適用してもよい。
【0045】
また、上記実施例1では、埋め込み膜として、ポリシラザン膜を単独で用いた例を示した。しかし、例えば、CVD法によりSTI溝に形成したシリコン酸化膜を形成し、その後、スピンコーティング法によりポリシラザン膜を形成するようにしても、同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
また、既述のように、本実施例では、シリコンを含む溶液として、ポリシラザン溶液を用いた場合について説明した。この場合、該溶液の溶媒を揮発して得られたポリシラザン膜(シリコンを含む膜)を酸化処理することにより、シリコン酸化膜が形成された。
【0047】
しかし、シリコンを含む溶液として、ポリシラン溶液またはヒドロシロキサン溶液等の溶液について適用してもよい。この場合も、該溶液の溶媒を揮発して得られたシリコンを含む膜であるポリシラン膜またはヒドロシロキサン膜を酸化処理する。これにより、シリコン酸化膜が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】本発明の実施例1に係るシリコン酸化膜の形成方法の工程における断面図である。
【図1B】本発明の実施例1に係るシリコン酸化膜の形成方法の、図1Aに続く工程における断面図である。
【図1C】本発明の実施例1に係るシリコン酸化膜の形成方法の、図1Bに続く工程における断面図である。
【図1D】本発明の実施例1に係るシリコン酸化膜の形成方法の、図1Cに続く工程における断面図である。
【図2】UV光によりオゾンを発生させて半導体基板上のポリシラザン膜の表面を酸化させる装置の一例を示す図である。
【図3】UV光によりオゾンを発生させて半導体基板上のポリシラザン膜の表面を酸化させる装置の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 UVランプ
2 カバー
3 支持部
4 遮蔽板
101 半導体基板
102 熱酸化膜
103 シリコン窒化膜
104 熱酸化膜
105 STI溝
106 ポリシラザン膜
106a シリコン酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンコーティング法により、シリコンを含む溶液を半導体基板の表面上に塗布する工程と、
塗布された前記溶液中の溶媒を加熱処理で揮発させることにより、前記半導体基板の表面上にシリコンを含む膜を形成する工程と、
前記膜を前記UVランプの熱で硬化させないようにした状態で、酸素(O)を含む雰囲気中において、UVランプにUV光を発光させることにより、前記雰囲気中にオゾン(O)を発生させ、発生した前記オゾンにより前記膜の表面を酸化する工程と、
前記膜を水蒸気酸化することにより、前記膜中の不純物を除去する工程と、
前記水蒸気酸化後、前記膜をアニールすることにより、前記膜をシリコン酸化膜に変化させる工程と、を備える
ことを特徴とするシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項2】
前記UVランプと前記膜が形成された前記半導体基板の表面との間に、前記UVランプがUV光を発光するときに発生する熱を遮蔽する遮蔽板を配置する
ことを特徴とする請求項1に記載のシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項3】
前記UVランプのUV光の発光により発生した前記オゾンを、前記膜の表面近傍まで流動させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項4】
前記酸素を含む雰囲気は、大気であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のシリコン酸化膜の形成方法。
【請求項5】
前記UVランプにはUV光の照射方向を決定するカバーが備えられ、前記UVランプがUV光を発光する場合には、前記カバーにより、前記UVランプの照射方向を前記半導体基板の基板面と平行にすることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のシリコン酸化膜の形成方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−171231(P2010−171231A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12736(P2009−12736)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】