説明

シリコーン樹脂組成物、これを用いるシリコーン樹脂および光半導体素子封止体

【課題】表面タック性に優れるシリコーン樹脂となることができ生産性に優れるシリコーン樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、(B)ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、(C)炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および有機カリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物とを含むシリコーン樹脂組成物、当該シリコーン樹脂組成物を硬化させることによって得られるシリコーン樹脂、ならびにLEDチップが当該シリコーン樹脂で封止されている光半導体素子封止体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂組成物、これを用いるシリコーン樹脂および光半導体素子封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED等の光半導体素子をシリコーンゴムで封止した場合、光半導体素子封止材の表面に埃や塵が付着しやすく、光半導体素子の品質の低下を招きやすいという問題があった。光半導体素子封止材の表面への埃や塵の付着は、シリコーンゴムが有するタックにあると考えられた。
このため、光半導体素子封止材の表面タックを軽減する方法として、光半導体素子封止材を柔らかい下層と硬い上層とを有する2層構造とすることが提案されている(例えば、特許文献1)。
2層構造の光半導体素子封止材の製造は、通常下層に柔らかい樹脂を硬化させて下層を形成する下層形成工程の後、下層の上に上層としてレジンライクの硬い樹脂を硬化させて上層を形成する上層形成工程を有する。
【0003】
【特許文献1】特開2007−103494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2層構造を有する光半導体素子封止材はその製造において、上層形成工程と下層形成工程との2工程が必要で、生産性が低いという問題があった。
そこで、本発明は、表面タック性に優れるシリコーン樹脂となることができ、生産性に優れるシリコーン樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本願発明者は、炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および有機カリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物が、シリコーン樹脂の表面にブリードアウトし、シリコーン樹脂の表面タックを低減するタック軽減成分として作用することを見出し、さらに、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有するポリシロキサンと、(B)ケイ素原子に結合した水素基を有するポリシロキサン架橋剤と、(C)炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および有機カリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物とを含むシリコーン樹脂組成物が、表面タック性に優れるシリコーン樹脂となることができ、生産工程を簡略化することが可能でこれによって生産性に優れることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0006】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(8)を提供する。
(1) (A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、
(B)ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、
(C)炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および有機カリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物とを含むシリコーン樹脂組成物。
(2) 前記アルケニル基が、ビニル基または(メタ)アクリロイル基である上記(1)に記載のシリコーン樹脂組成物。
(3) 前記有機金属化合物が、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウムおよびカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の、キレートまたは塩である上記(1)または(2)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
(4) 前記有機金属化合物が、前記ポリシロキサンと前記ポリシロキサン架橋剤との合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部使用される上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化をさせることによって得られるシリコーン樹脂。
(6) 前記硬化の後のJIS A硬度が70以下である上記(5)のシリコーン樹脂。
(7) LEDチップが上記(5)または(6)に記載のシリコーン樹脂で封止されている光半導体素子封止体。
(8) LEDチップに上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを加熱をして前記シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化物とするとともに、前記有機金属化合物を前記硬化物の表面にブリードアウトさせる硬化工程とを有する光半導体素子封止体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、表面タック性に優れるシリコーン樹脂となることができ、生産性に優れる。
本発明のシリコーン樹脂は、表面タック性に優れ、生産性に優れる。
本発明の光半導体素子封止体は、表面タック性に優れ、生産性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のシリコーン樹脂組成物は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、
(B)ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、
(C)炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および有機カリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物とを含むシリコーン樹脂組成物である。
【0009】
ポリシロキサンについて以下に説明する。
本発明のシリコーン樹脂組成物に含まれるポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有し、主鎖としてポリシロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されない。
【0010】
ポリシロキサンは、本発明のシリコーン樹脂組成物の主剤(ベースポリマー)である。
ポリシロキサンは、靭性、伸びに優れるという観点から、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するのが好ましく、より好ましくは2〜20個、さらに好ましくは2〜10個程度有する。
【0011】
アルケニル基はケイ素原子と有機基を介して結合することができる。有機基は特に制限されず、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
【0012】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基のような炭素数2〜8の不飽和炭化水素基;(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
なかでも、シリコーン樹脂の表面タック性をより低減することができ、硬化性に優れるという観点から、アルケニル基は、ビニル基または(メタ)アクリロイル基であるのが好ましく、ビニル基がより好ましい。
なお、本発明において(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基およびメタクリロイル基のうちのいずれか一方または両方であることを意味する。
【0013】
アルケニル基の結合位置としては、例えば、ポリシロキサンの分子鎖末端および分子鎖側鎖のうちのいずれか一方または両方が挙げられる。また、アルケニル基は、ポリシロキサンの分子鎖の片方の末端または両方の末端に結合することができる。
【0014】
ポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
なかでも、耐熱性に優れるという観点から、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0015】
ポリシロキサンは、その主鎖としては、例えば、オルガノポリシロキサンが挙げられる。具体的には、ポリジメチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンが挙げられる。
なかでも、耐熱性、耐光性に優れるという観点から、ポリジメチルシロキサンが好ましい。
なお、本発明において、耐光性とはLEDからの発光に対する耐久性(例えば、変色、焼けが生じにくいこと。)をいう。
【0016】
ポリシロキサンは分子構造について特に制限されない。例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等が挙げられる。直鎖状であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ポリシロキサンはその分子構造として、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、ポリシロキサンの分子末端は、シラノール基(ケイ素原子結合水酸基)、アルコキシシリル基で停止しているか、トリメチルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基で封鎖することができる。
【0017】
ポリシロキサンとしては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【化1】


式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立にアルケニル基であり、R4はそれぞれ独立にアルケニル基以外の一価の炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基であり、Rはそれぞれ独立に有機基であり、a+b+nは2以上であり、a、bは0〜3の整数であり、m、nは0以上の整数である。
【0018】
ポリシロキサンがアルケニル基として不飽和炭化水素基を有するポリシロキサンである場合、得られるシリコーン樹脂の表面タックをより低減することができる。
ポリシロキサンがアルケニル基として不飽和炭化水素基を有するポリシロキサンとしては、例えば、式:R13SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R122SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R12SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R13SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R122SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R122SiO1/2で示されるシロキサン単位と式:R12SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R12SiO2/2で示されるシロキサン単位と式:R1SiO3/2で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体が挙げられる。
【0019】
ここで、上記式中のR1はアルケニル基以外の一価炭化水素基である。
アルケニル基以外の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
また、上記式中のR2は不飽和炭化水素基である。不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基が挙げられる。
【0020】
ポリシロキサンがアルケニル基としてビニル基を有する場合、得られるシリコーン樹脂の表面タックをより低減することができる。
アルケニル基としてビニル基を有するポリシロキサンを以下「ビニル基含有ポリシロキサン」ということがある。
【0021】
ポリシロキサンがアルケニル基として(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンである場合、得られるシリコーン樹脂の表面タックをより低減することができる。
アルケニル基として(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサンを以下「(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサン」ということがある。
【0022】
(メタ)アクリロイル基含有ポリシロキサンとしては、例えば、平均組成式(I)で示されるものが挙げられる。
1a2bSiO(4-a-b)/2 (I)
【0023】
式中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基を示し、R2はCH2=CR3−CO−O−(CH2c−で表される(メタ)アクリロキシアルキル基(CH2=CR3−CO−O−(CH2c−中の、R3は水素原子またはメチル基であり、cは2〜6の整数であり、2、3または4であるのが好ましい。)を示し、aは0.8〜2.4であり、1〜1.8であるのが好ましく、bは0.1〜1.2であり、0.2〜1であるのが好ましく、0.4〜1であるのがより好ましく、a+bは2〜2.5であり、2〜2.2であるのが好ましい。
【0024】
式中、R1のアルキル基、アリール基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0025】
ポリシロキサンの分子量(重量平均分子量)は、得られるシリコーン樹脂の表面タックをより低減することができ、靭性、伸び、作業性に優れるという観点から、500〜100,000であるのが好ましく、1,000〜100,000であるのが好ましく、5,000〜50,000であるのがさらに好ましい。
なお、本願明細書において、重量平均分子量は、GCP(ゲル透過カラムクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算値である。
【0026】
ポリシロキサンの23℃における粘度は、得られるシリコーン樹脂の物理的特性が良好であり、シリコーン樹脂組成物の取扱作業性が良好であることから、5〜10,000mPa・sが好ましく、10〜1,000mPa・sであるのがより好ましい。
なお、本発明において粘度はE型粘度計によって23℃の条件下において測定されたものである。
【0027】
ポリシロキサンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリシロキサンはその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0028】
(B)ポリシロキサン架橋剤について以下に説明する。
本発明のシリコーン樹脂組成物に含まれるポリシロキサン架橋剤は、1分子中にケイ素原子に結合した水素基(即ち、SiH基)を少なくとも2個有し、主鎖としてポリシロキサン構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば特に制限されない。
【0029】
ポリシロキサン架橋剤は1分子中にケイ素原子に結合した水素基を、2〜300個程度を有するのが好ましく、より好ましくは3個以上(例えば3〜150個程度)を有する。
ポリシロキサン架橋剤の分子構造としては例えば、直鎖状、分岐状、環状、三次元網状構造が挙げられる。
【0030】
ケイ素原子に結合した水素基の結合位置としては、例えば、ポリシロキサンの分子鎖末端および分子鎖側鎖のうちのいずれか一方または両方が挙げられる。また、ケイ素原子に結合した水素基は、ポリシロキサンの分子鎖の片方の末端または両方の末端に結合することができる。
【0031】
ポリシロキサン架橋剤としては、例えば、下記平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
a3bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、a及びbは、0<a<2、0.8≦b≦2かつ0.8<a+b≦3となる数であり、好ましくは0.05≦a≦1、0.9≦b≦2かつ1.0≦a+b≦2.7となる数である。また、一分子中のケイ素原子の数は、2〜300個であり、3〜200個が好ましい。)
【0032】
式中、R3の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。
なかでも、耐熱性、耐光性に優れるという観点から、メチル基等の炭素原子数1〜3の低級アルキル基、フェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0033】
ポリシロキサン架橋剤としては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R32(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR33SiO1/2単位、R32SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、式中、R3は前記の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基と同じである。)などのほか、これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基で置換したものなどが挙げられる。
【0034】
また、下記式:
【化2】


(但し、式中R3は上述のR3の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基と同じであり、cは0又は1以上の整数であり、dは1以上の整数である。)
で表されるものが挙げられる。
ポリシロキサン架橋剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
ポリシロキサン架橋剤は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。具体的には、例えば、下記一般式:R3SiHCl2及びR32SiHCl(式中、R3は前記の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基と同じである。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを共加水分解し、或いは該クロロシランと下記一般式:R33SiCl及びR32SiCl2(式中、R3は前記の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基と同じである。)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを組み合わせて共加水分解して得ることができる。また、ポリシロキサン架橋剤として、共加水分解して得られたポリシロキサンを平衡化したものを使用することができる。
【0036】
ポリシロキサン架橋剤は、硬化後のゴム物性(靭性、伸び)に優れるという観点から、ポリシロキサン中のアルケニル基1モル当たり、ポリシロキサン架橋剤が有する、ケイ素原子に結合した水素原子が、0.1〜5モルとなる量で使用されるのが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5モル、さらに好ましくは1.0〜2.0モルとなる量で使用される。
SiH基量が0.1モル以上である場合、硬化が十分で、強度のあるゴム硬化物(シリコーン樹脂)が得られる。
SiH基量が5モル以下である場合、硬化物が脆くなることがなく等、強度のあるゴム硬化物が得られる。
本発明において、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン架橋剤(B)は、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン架橋剤(B)との混合物として使用することができる。
【0037】
有機金属化合物について以下に説明する。
本発明のシリコーン樹脂組成物に含まれる有機金属化合物は、炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および有機カリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明のシリコーン樹脂組成物に含まれる有機金属化合物は、シリコーン樹脂の表面にブリードアウトし、シリコーン樹脂の表面タックを低減する機能を有する。
【0038】
有機金属化合物は、有機基と金属とによって形成される化合物であれば特に制限されない。本発明において、有機金属化合物が有する金属は、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウムおよびカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種をいう。また、本発明において、有機金属化合物が有する金属としてのジルコニウムは、ジルコニルであるものとする。
【0039】
なかでも有機金属化合物が有する金属は、シリコーン樹脂の表面タック性により優れるという観点から、亜鉛、ジルコニウムが好ましい。
【0040】
有機金属化合物を形成するために使用される有機基としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有する炭化水素基が挙げられる。
有機ジルコニル化合物が有する有機基の炭素原子数は3以上である。
有機ジルコニル化合物以外の有機金属化合物が有する有機基の炭素原子数は3〜20であるのが好ましい。
炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基のようなアルキル基;フェニル基、p−メチルフェニル基のようなアリール基が挙げられる。
【0041】
有機基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基のようなアルコキシ基;フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基のようなアリールオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基、ブチロニルオキシ基、オクチロニルオキシ基、2−エチルヘキシロニルオキシ基、ステアロイルオキシ基のようなアシルオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチロニル基、オクチロニル基、2−エチルヘキシロニル基、ステアロイル基のようなアシル基が挙げられる。
有機基はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機金属化合物が有する有機基は、表面タック性により優れるという観点から、オクチロニルオキシ基、2−エチルヘキシロニルオキシ基、アセチルアセトネートが好ましい。
【0042】
有機金属化合物としては、例えば、塩、キレートが挙げられる。
有機金属化合物は、シリコーン樹脂の表面タック性により優れるという観点から、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウムおよびカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の、キレートまたは塩であるのが好ましい。
【0043】
有機金属化合物がキレートである場合、有機基としては、例えば、β−ジケトン型化合物、o−ヒドロキシケトン型化合物のような有機配位子が挙げられる。
β−ジケトン型化合物としては、例えば、下記式(1)〜式(3)が挙げられる。
3−CO−CH2−CO−R3 (1)
3−CO−CH2−CO−OR3 (2)
3O−CO−CH2−CO−OR3 (3)
式中、R3はメチル基のようなアルキル基またはハロゲン置換アルキル基を表わす。
【0044】
o−ヒドロキシケトン型化合物としては、例えば、下記式(4)が挙げられる。
【化3】


式中、それぞれのR4は独立に、アルキル基、ハロゲン化置換アルキル基、アルコキシ基を表す。
キレートが有する配位子としては、アセチルアセトナート、エチルアセチルアセトナートが好ましい態様として挙げられる。
【0045】
有機金属化合物が塩である場合、有機金属化合物の塩は、カルボン酸塩であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
カルボン酸は特に制限されない。例えば、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0046】
有機金属化合物としての有機ジルコニル化合物は、炭素原子数3以上の有機基とジルコニル[(ZrO)2+]とを有する化合物である。
有機ジルコニル化合物が有する有機基は、表面タック性により優れ、相溶性に優れるという観点から、炭素原子数3以上であり、5〜15であるのがより好ましい。
有機ジルコニル化合物が有する有機基としては、例えば、炭素原子数3以上のアシルオキシ基、β−ジケトン型化合物が挙げられる。具体的には例えば、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基、ブチロニルオキシ基、オクチロニルオキシ基、2−エチルヘキシロニルオキシ基、ナフテン酸に由来するアシルオキシ基のようなアシルオキシ基;アセチルアセトナートのようなβ−ジケトン型化合物が挙げられる。
【0047】
有機ジルコニル化合物としては、例えば、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニルのようなカルボン酸塩が挙げられる。
ビス(2−エチルヘキサン酸)ジルコニルは、ZrO[CH3CH2CH2CH2CH(CH2CH3)CO22で表される化合物である。
【0048】
有機金属化合物としての有機亜鉛化合物は、亜鉛と有機基とを有する化合物であれば特に制限されない。具体的には例えば、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛のような脂肪族カルボン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛のような脂環式カルボン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛のような芳香族カルボン酸亜鉛等のカルボン酸塩;Zn(II)アセチルアセトナート[Zn(acac)2]、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートZnのような亜鉛キレートが挙げられる。
【0049】
有機金属化合物としての有機マグネシウム化合物は、マグネシウムと有機基とを有する化合物であれば特に制限されない。具体的には例えば、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ナフテン酸マグネシウムのようなカルボン酸塩;マグネシウムアセチルアセトナートのようなキレートが挙げられる。
【0050】
有機金属化合物としての有機カリウム化合物は、カリウムと有機基とを有する化合物であれば特に制限されない。具体的には例えば、オクチル酸カリウムのようなカルボン酸塩;カリウムアセチルアセトナートのようなキレートが挙げられる。
【0051】
なかでも、シリコーン樹脂の表面タック性により優れるという観点から、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジルコニル、オクチル酸ジルコニル、オクチル酸亜鉛、Zn(II)アセチルアセトナート[Zn(acac)2]、オクチル酸カリウム、オクチル酸マグネシウムが好ましく、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジルコニル、Zn(II)アセチルアセトナート[Zn(acac)2]がより好ましい。
有機金属化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
有機金属化合物は、シリコーン樹脂の表面タック性により優れるという観点から、ポリシロキサンと前記ポリシロキサン架橋剤との合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部で使用されるのが好ましく、0.1〜10質量部で使用されるのがより好ましく、0.5〜5質量部であるのがさらに好ましく、1〜3質量部であるのが特に好ましい。
【0053】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、有機金属化合物として、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウムまたはカリウム以外の金属を有する有機金属化合物を含むことができる。
ジルコニウム、亜鉛、マグネシウムまたはカリウム以外の金属としては、例えば、ナトリウムのようなアルカリ金属;カルシウムのようなアルカリ土類金属;アルミニウム、鉄、スズ、チタン、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スカンジウム、イットリウムが挙げられる。ジルコニウム、亜鉛、マグネシウムまたはカリウム以外の金属を有する有機金属化合物が有する有機基は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物以外の有機ジルコニウム化合物を含むことができる。
【0054】
炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物以外の有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニルジアセテートのような炭素原子数2以下の有機基を有する有機ジルコニル化合物;ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムモノステアレート、ジルコニウムトリステアレートのようなジルコニウムカルボン酸塩;ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエステルアセトアセテートのようなジルコニウムキレートが挙げられる。
【0055】
本発明において、有機金属化合物は、シリコーン樹脂の表面にブリードアウトし、シリコーン樹脂の表面タックを低減するタック軽減成分として使用される。
また本発明において、有機金属化合物はポリシロキサンとポリシロキサン架橋剤とのヒドロシリル化反応には寄与しないと考えられる。
【0056】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、硬化性に優れるという観点から、さらに、ヒドロシリル化反応触媒(ポリシロキサン触媒)を含むのが好ましい。
本発明のシリコーン樹脂組成物に使用することができるヒドロシリル化反応触媒(ポリシロキサン触媒)は、ポリシロキサンが有するアルケニル基と、ポリシロキサン架橋剤が有する、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)との付加反応を促進するための触媒である。
【0057】
ヒドロシリル化反応触媒(ポリシロキサン触媒)は、特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどの白金族金属系触媒が挙げられる。
【0058】
ヒドロシリル化反応触媒(ポリシロキサン触媒)は、触媒量の範囲で使用することができる。通常、ポリシロキサン及びポリシロキサン架橋剤の合計量に対する白金族金属の質量換算で、0.1〜500ppmとすることができる。
ヒドロシリル化反応触媒(ポリシロキサン触媒)は、ポリシロキサン(A)との混合物として使用することができる。
【0059】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、ポリシロキサン、ポリシロキサン架橋剤および有機金属化合物ならびにヒドロシリル化反応触媒(ポリシロキサン触媒)以外に本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0060】
無機フィラーとしては、特に限定されず、光学特性を低下させない微粒子状のものが挙げられる。具体的には例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが挙げられる。
【0061】
無機蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y22S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体が挙げられる。
【0062】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、ポリシロキサンとポリシロキサン架橋剤と有機金属化合物と、必要に応じて使用することができるヒドロシリル化反応触媒、添加剤とを混合することによって製造することができる。
本発明のシリコーン樹脂組成物は、1液型または2液型とすることが可能である。
【0063】
本発明のシリコーン樹脂組成物を2液型とする場合、ポリシロキサン架橋剤およびヒドロシリル化反応触媒を含有する第1液と、ポリシロキサンおよび有機金属化合物を含有する第2液とに分けて製造することができる。添加剤は第1液および第2液のうちの一方または両方に加えることができる。
【0064】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、可使時間の長さが適切なものとなるという観点から、ポリシロキサン架橋剤以外の成分を含む液とポリシロキサン架橋剤とを混合してから23℃の条件下での24時間後の粘度が、5〜10,000mPa・sであるのが好ましく、5〜5,000mPa・sであるのがより好ましい。
なお、本発明において、本発明のシリコーン樹脂組成物を混合して23℃の条件下に置き、混合から24時間後の組成物について、その粘度の測定は、E型粘度計を用い、23℃、湿度55%の条件下で行われるものとする。
【0065】
本発明のシリコーン樹脂組成物の使用方法としては、例えば、基材(例えば、光半導体素子)に本発明の組成物を塗布し硬化させることが挙げられる。
本発明のシリコーン樹脂組成物を塗布、硬化する方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0066】
本発明のシリコーン樹脂組成物は加熱によって硬化することができる。
本発明のシリコーン樹脂組成物を加熱して硬化させる際の加熱温度は、通常100℃以上であり、シリコーン樹脂の表面タック性により優れるという観点から、120℃以上であるのが好ましく、120〜200℃であるのがより好ましく、120〜180℃であるのがさらに好ましい。
【0067】
加熱温度がこのような範囲の場合、有機金属化合物がシリコーン樹脂の表面によりブリードアウトしやすくなる。このため、有機金属化合物がシリコーン樹脂の表面に有機金属化合物の被膜をより形成しやすくなり、その結果、シリコーン樹脂の表面タックをより軽減することができると考えられる。
なお、上記のメカニズムは本願発明者の推察であり、仮にメカニズムが異なるものであっても本願発明の範囲内である。
【0068】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られるシリコーン樹脂は、その表面にタックがない、つまり表面タックフリーであるシリコーン樹脂となる。
【0069】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、その用途について特に制限されない。例えば、電子材料用の封止材組成物、建築用シーリング材組成物、自動車用シーリング材組成物、接着剤組成物が挙げられる。
電子材料としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材;光半導体素子;半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子;コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子が挙げられる。
【0070】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途において使用することができる。
【0071】
本発明のシリコーン樹脂組成物において、ポリシロキサンおよびポリシロキサン架橋剤にさらに有機金属化合物を含有させることによって、シリコーン樹脂の表面のタックを軽減することができ、かつシリコーン樹脂に十分なゴム弾性を付与することができる。
つまり、本発明のシリコーン樹脂組成物から得られるシリコーン樹脂は、表面タック性とゴム弾性のバランスに優れる。
【0072】
なお、本発明においてポリシロキサンおよびポリシロキサン架橋剤はシリコーン樹脂の表面タック性により優れるという観点からアルコキシシリル基やシラノール基を実質的に有さないのものとすることができる。
【0073】
次に、本発明のシリコーン樹脂について以下に説明する。
本発明のシリコーン樹脂は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化をさせることによって得られるものである。
【0074】
本発明のシリコーン樹脂に使用される組成物は、本発明のシリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。
本発明のシリコーン樹脂組成物を使用することによって、表面タック性に優れたシリコーン樹脂を得ることができる。
また、本発明のシリコーン樹脂を封止体として使用する場合、封止体の表面タック性に優れ、封止体の形成を1工程で行うことができ生産性に優れ、封止体を1層構造とすることができる。
【0075】
硬化について以下に説明する。
本発明において、シリコーン樹脂組成物は、加熱によって硬化させることができる。
【0076】
シリコーン樹脂組成物を加熱によって硬化させる場合、有機金属化合物をブリードアウトさせやすく、シリコーン樹脂の表面タック性により優れ、硬化性に優れ、硬化時間、可使時間を適切な長さとすることができ、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのを抑制でき、シリコーン樹脂のクラックを抑制でき、シリコーン樹脂の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、シリコーン樹脂組成物を、120〜180℃(好ましくは150℃)で20時間(好ましくは12時間)以内に硬化させる方法が好ましい。
【0077】
本発明のシリコーン樹脂は、表面タック性、ゴム弾性に優れる。本発明のシリコーン樹脂が有する表面タックの評価は、本願明細書の実施例に記載したとおりである。
【0078】
本発明のシリコーン樹脂は、JIS A硬度70以下を有するのが好ましい。このような範囲の場合、シリコーン樹脂は、その表面におけるタックがより軽減され、かつゴム弾性を有し機械的強度に優れるものとなる。
シリコーン樹脂は、その表面タックがより軽減され、かつゴム弾性に優れ、可撓性に優れるという観点から、JIS A硬度が、10〜50であるのが好ましく、10〜20であるのがより好ましい。
【0079】
なお、本発明において、JIS A硬度は、シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で12時間硬化させて、縦5cm×横5cm×厚さ2mmの大きさのサンプルを作製し、得られたサンプルのJIS A硬度をJIS K6253:2006の規定に準じて測定したものとする。
【0080】
本発明のシリコーン樹脂は、LEDチップの封止材として使用することができる。
LEDチップは、その発光色について特に制限されない。例えば、青色、赤色、黄色、緑色、白色が挙げられる。
LEDチップは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
次に、本発明の光半導体素子封止体について以下に説明する。
本発明の光半導体素子封止体は、LEDチップが本発明のシリコーン樹脂で封止されているものである。
【0082】
本発明の光半導体素子封止体に使用されるシリコーン樹脂は本発明のシリコーン樹脂であれば特に制限されない。
本発明の光半導体素子封止体において、シリコーン樹脂組成物として本発明のシリコーン樹脂組成物を使用することによって、得られる光半導体素子封止体は表面のタックが低減され、表面タック性に優れ、ゴム弾性、可撓性に優れ、封止体の形成を1工程で行うことができ生産性に優れ、封止体を1層構造とすることができる。
【0083】
また、本発明の光半導体素子封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。
例えば、シリコーン樹脂組成物にイットリウム・アルミニウム・ガーネットのような蛍光物質を含有させたもので青色LEDチップをコーティングし、白色LEDとすることができる。
また、赤色、緑色および青色のLEDチップを用いて発光色を白色とする場合、例えば、それぞれのLEDチップを本発明のシリコーン樹脂組成物で封止してこれら3色のLEDチップの封止体を使用すること、または3色のLEDチップをまとめて本発明のシリコーン樹脂組成物で封止し1個の光源とすることができる。
LEDチップの大きさ、形状は特に制限されない。
LEDチップの種類は、特に制限されず、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LED、白色LED、青色LEDが挙げられる。
【0084】
本発明の光半導体素子封止体に使用される光半導体素子としてはLEDのほかに、例えば、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。
本発明の光半導体素子封止体に使用される光半導体素子としては、例えば、光半導体素子がダイボンディングによってリードフレーム等の基板に接着され、チップボンディング、ワイヤボンディング、ワイヤレスボンディング等によって基板等と接続された状態のものを使用することができる。
本発明の光半導体素子封止体に使用される硬化物は、光半導体素子を封止していればよい。本発明の光半導体素子封止体としては、例えば、硬化物が直接光半導体素子を封止している場合、砲弾型とする場合、表面実装型とする場合、複数の光半導体素子封止体の間を充填している場合が挙げられる。
【0085】
本発明の光半導体素子封止体の製造方法としては、
LEDチップに本発明のシリコーン樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを加熱をして前記シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化物とするとともに、前記有機金属化合物を前記硬化物の表面にブリードアウトさせる硬化工程とを有するものが挙げられる。
【0086】
塗布工程において、LEDチップに本発明のシリコーン樹脂組成物を塗布し、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを得る。
塗布工程において使用される、LEDチップは上記と同義である。使用されるシリコーン樹脂組成物は本発明のシリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。
塗布の方法は特に制限されない。例えば、ポッティング法、トランスファー成形、インジェクション成形、スクリーン印刷法が挙げられる。
【0087】
次に、硬化工程において、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを加熱をして前記シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化物とするとともに、前記有機金属化合物を前記硬化物の表面にブリードアウトさせることによって、本発明の光半導体素子封止体を得ることができる。
有機金属化合物のブリードアウトについて、有機金属化合物がブリードアウトしやすく、有機金属化合物の被膜を上層に有し、シリコーン樹脂部分を下層として有する硬化物が得られるという観点から、有機金属化合物は、硬化物の上部の表面において少なくともブリードアウトとするのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
シリコーン樹脂組成物を加熱する温度は本発明のシリコーン樹脂におけるものと同義である。
【0088】
本発明の光半導体素子封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。なお本発明の光半導体素子封止体は添付の図面に限定されない。
図6は本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す上面図であり、図7は図6に示す光半導体素子封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
図6において、600は本発明の光半導体素子封止体であり、光半導体素子封止体600は、LEDチップ601と、LEDチップ601を封止するシリコーン樹脂603とを備える。本発明の組成物はシリコーン樹脂603に使用することができる。なお、図6においてリード、ワイヤ、基板609は省略されている。
図7において、LEDチップ601は基板609に例えば接着剤、はんだ(図示せず。)によってボンディングされている。基板としては例えばセラミックス、多層セラミックス、多層プリント、リードフレームが挙げられる。なお、図7においてワイヤは省略されている。
また、図7におけるTは、シリコーン樹脂603の厚さを示す。すなわち、Tは、LEDチップ601の表面上の任意の点605から、点605が属する面607に対して鉛直の方向にシリコーン樹脂603の厚さを測定したときの値である。
本発明の光半導体素子封止体は、透明性を確保し、密閉性に優れるという観点から、その厚さ(図7におけるT)が0.1mm以上であるのが好ましく、0.5〜1mmであるのがより好ましい。
【0089】
本発明の光半導体素子封止体の一例として白色LEDを使用する場合について添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
図3は、本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
なお、本発明の光半導体素子封止体は添付の図面に限定されない。
【0090】
図1において、白色LED200は、基板210の上にセラミックのパッケージ204を有する。
パッケージ204には、内部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ203とシリコーン樹脂202とが配置されている。シリコーン樹脂202は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させたものであり、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットを含有することができる。
青色LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。
青色LEDチップ203の各電極(図示せず。)とパッケージ204に設けられた外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
パッケージ204のキャビティー(図示せず。)において、斜線部206まで本発明のシリコーン樹脂組成物で充填してもよい。斜線部206まで本発明のシリコーン樹脂組成物で充填する場合シリコーン樹脂202は斜線部206を合わせたものとなる。
図1に示すように、シリコーン樹脂202は1層でLEDチップを封止することができる。
【0091】
図3において、白色LED300は、ランプ機能を有するシリコーン樹脂306の内部に基板310、青色LEDチップ303およびインナーリード305を有する。
基板310には、頭部に一段下がったキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティー内には、青色LEDチップ303とシリコーン樹脂302とが配置されている。シリコーン樹脂302は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させたものであり、蛍光物質としてセリウムを付活したイットリウム・アルミニウム・ガーネットを含有することができる。また、シリコーン樹脂306を本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて形成することができる。
青色LEDチップ303は、基板310上にマウント部材301で固定されている。
青色LEDチップ303の各電極(図示せず。)と基板310およびインナーリード305とはそれぞれ導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングさせている。
【0092】
なお、図1、図3においてLEDチップを青色LEDチップとして説明したが、キャビティー内に赤色、緑色および青色の3色のLEDチップを配置することができる。シリコーン樹脂202、302の部分を本発明のシリコーン樹脂組成物を用いて例えばポッティング法によって封止し、光半導体素子封止体とすることができる。
【0093】
本発明の光半導体素子封止体は、シリコーン樹脂として本発明のシリコーン樹脂(本発明のシリコーン樹脂の原料は本発明のシリコーン樹脂組成物である。)を使用する以外は、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
また、本発明の光半導体素子封止体を製造する際の加熱温度は、本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させる際の加熱温度と同様とするのが、光半導体素子封止体の表面タック性により優れるという観点から好ましい。
【0094】
本発明の光半導体素子封止体をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。
図4は、本発明の光半導体素子封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
図5は、図4に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
なお、本発明の光半導体素子封止体が使用されるLED表示器、LED表示装置は添付の図面に限定されない。
【0095】
図4において、LED表示器400は、白色LED401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、白色LED401を充填剤406で固定し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。本発明のシリコーン樹脂組成物は充填剤406として使用することができる。
【0096】
図5において、LED表示装置500は、白色LED封止体を用いるLED表示器501を具備する。LED表示器501は、駆動回路である点灯回路などと電気的に接続される。駆動回路からの出力パルスによって種々の画像が表示可能なディスプレイ等とすることができる。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させるRAM(Random、Access、Memory)504と、RAM504に記憶されるデータから個々の白色LEDを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路(CPU)503と、階調制御回路(CPU)503の出力信号でスイッチングされて、白色LEDを点灯させるドライバー502とを備える。階調制御回路(CPU)503は、RAM504に記憶されるデータから白色LEDの点灯時間を演算してパルス信号を出力する。なお、本発明の光半導体素子封止体はカラー表示できる、LED表示器やLED表示装置に使用することができる。
【0097】
本発明の光半導体素子封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクターが挙げられる。
【0098】
本発明の光半導体素子封止体、および本発明のシリコーン樹脂は、表面タック性に優れ、埃や塵が付着しにくく、光半導体素子の品質低下を抑制することができ、ゴム弾性、可撓性に優れ、表面タック性とゴム弾性のバランスに優れる。また、光半導体素子封止体の製造時またはLED(特に白色LED)としての使用時の発熱や光によってシリコーン樹脂の透過率が低下しにくく透明性に優れ、シリコーン樹脂が変色しにくく耐熱着色安定性に優れ、光半導体素子との密着性に優れる。また、本発明の光半導体素子封止体はシリコーン樹脂を1層とすることができ、従来は2工程必要であった封止体形成工程を1工程とすることができ生産性に優れる。
また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、表面タック性に優れ、表面タック性とゴム弾性のバランスに優れるシリコーン樹脂を実現することができ、電子材料を1工程で封止することができ生産性に優れ、硬化時間、可使時間の長さが適切で硬化温度が低く硬化性に優れ、熱硬化性に優れ、透明性、耐熱着色安定性、成形性に優れ、クラック、気泡が発生しにくく、機械的強度に優れるシリコーン樹脂となる。
従来、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、白金触媒と、ジルコニウム系化合物とを含有する組成物が、系内に接着成分としてのエポキシ基やアルコキシ基を有する場合において、ジルコニウム系化合物は接着促進剤として使用されていた。すなわち、組成物がエポキシ基を有する場合ジルコニウム系化合物はエポキシ基の開環促進剤として作用し、組成物がアルコキシ基を有する場合ジルコニウム系化合物はアルコキシ基と被着体としての基材との反応促進剤として作用する。
また、従来、有機金属化合物はアルコキシシリル基やシラノール基を有するオルガノポリシロキサンの縮合触媒として使用されていた。
これに対して、本願発明における有機金属化合物は、シリコーン樹脂の表面にブリードアウトして被膜を形成することによって、シリコーン樹脂の表面タックを低減するタック軽減成分として使用される。
【実施例】
【0099】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
以下に示すように表面タック性(指触、シラス吹付け)、JIS A硬度について評価した。結果を第1表に示す。
【0100】
(1)表面タック性(指触)
評価用のサンプルの表面を指で触れて表面タック性を確認した。
評価基準としては、サンプルの表面に、タックがなく指がサンプル表面で滑る場合を「○」とし、ややグリップ感がある(指がサンプル表面で滑らない)場合を「△」とし、ベタツキを感じる場合を「×」とした。
【0101】
(2)表面タック性(シラス吹きつけ)
サンプルを縦5cm、横5cmの大きさとし、サンプルの表面全体に、シラス677(粒径100μm)0.47gを振り掛け、その後、シラスの上から内径5mmのホースを用いて圧力0.15MPaのN2ガス(窒素ガス)を10秒間噴射させた。このとき、サンプルに対するエアーの噴射角度を45度とした。
【0102】
シラスをかける前のサンプルの重さと、N2ガス(窒素ガス)を噴射した後のサンプルの重さを測定して、サンプルに付着したシラスの除去率を算出した。
除去率(%)
=100−[(N2ガスを噴射した後のサンプルの重さ)−(シラスをかける前のサンプルの重さ)]/0.47×100
【0103】
シラスの除去率は、98〜100%であるのが好ましく、99〜100%であるのがより好ましい。
【0104】
(3)JIS A硬度
サンプルを縦5cm×横5cm×厚さ2mmの大きさとし、サンプルのJIS A硬度をJIS K6253:2006の規定に準じて測定した。
【0105】
2.サンプルの作製
(1)サンプルの作製
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図2は、実施例において本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用する型を模式的に表す断面図である。
図2において、型8は、ガラス3(ガラス3の大きさは、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)の上にPETフィルム5が配置され、PETフィルム5の上にシリコンモールドのスーペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)を配置されているものである。
型8を用いてスーペーサー1の内部にシリコーン樹脂組成物6を流し込み、次のとおりサンプルの硬化を行い、シリコーン樹脂組成物6を硬化させ、シリコーン樹脂を型8から外し、シリコーン樹脂6(厚さ2mm)が得られる。
【0106】
(2)サンプルの硬化
シリコーン樹脂組成物が充填された型8を電気オーブンに入れて、第1表に示す処理温度で12時間組成物を加熱して硬化させ、厚さ2mmのシリコーン樹脂を得た。
得られたシリコーン樹脂を評価用のサンプルとした。
【0107】
3.シリコーン樹脂組成物の調製
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合し組成物を調製した。
【0108】
【表1】

【0109】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・ポリシロキサンとポリシロキサン架橋剤との混合物:主剤であるポリシロキサンとしてのビニルポリシロキサンと、ポリシロキサン架橋剤としてのハイドロジェンポリシロキサンとの混合物(商品名KE106、信越化学工業社製)
・ポリシロキサン触媒:商品名CAT−RG(Pt触媒と両末端ビニルポリシロキサンとの混合物)、信越化学工業社製
・有機金属化合物1:Zn(acac)2、関東化学社製
・有機金属化合物2:オクチル酸亜鉛(オクトープZn、ホープ製薬社製)
・有機金属化合物3:ニッカオクチックスジルコニウム(ビス(2−エチルヘキサン酸)ジルコニル、Zr12%、日本化学産業社製)
・有機金属化合物4:オクチル酸マグネシウム(日本化学産業社製)
・有機金属化合物5:オクチル酸カリウム(日本化学産業社製)
なお、第1表中、有機金属化合物2はオクチル酸亜鉛の正味の量として記載した。
また、有機金属化合物3は、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジルコニルの正味の量として記載した。
【0110】
第1表に示す結果から明らかなように、有機金属化合物を含有しない比較例1は表面タック性に劣った。
これに対して、実施例1〜7は表面タック性に優れるシリコーン樹脂となった。
また実施例1〜7から得られるシリコーン樹脂は表面タック性と硬度(ゴム弾性)とのバランスに優れた。
実施例1〜4、6、7においてシリコーン樹脂組成物の処理温度を150℃とすることによって特に表面タック性に優れるシリコーン樹脂を得ることができた。
添付の図面である図2、図8を用いて本発明のシリコーン樹脂について以下に説明する。なお本発明のシリコーン樹脂は添付の図面に制限されない。
図8は、図2に示す型を用いて得られたシリコーン樹脂を型から外して得られた硬化物の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図8において、硬化物6は、本発明のシリコーン樹脂組成物(実施例1〜7のシリコーン樹脂組成物)を用いて得られたシリコーン樹脂である。
硬化物6は、シリコーン樹脂部分18とシリコーン樹脂部分18の表面に有機金属化合物の被膜14とを有する。
硬化物6は、硬化物6の表面10に粉を吹いたような状態はなく、全体が透明である。図8においてシリコーン樹脂部分18と被膜14との境界16を点線で示すが、硬化物6は透明であるため目視で境界16を確認することはできない。
しかしながら、硬化物6の表面10において、有機金属化合物がブリードアウトして被膜14を形成することによって表面10はタックフリーであり、実施例においては表面10において指がツルツルと滑る一方、硬化物6が型8と接していた裏面12にはタックが残っていた。
また、硬化物6を、表面10を内側にして180°折り曲げると表面10に細かく白いシワが無数によっているのが目視で確認することができた。一方硬化物6の裏面12を内側にして同様に折り曲げても裏面12にはシワがよることはなく全体に透明なままであった。
また、硬化物6は、表面10が裏面12と比較して特別に硬い状態ではなく全体的に柔軟性を有していた。
一方、比較例1は、硬化物の表面全体(図示せず。)がタックを有し、表面と裏面とにおけるタックは同程度であった。
このようなことから本発明のシリコーン樹脂組成物から得られる硬化物6は表面10に被膜14を有すると考えられる。また本発明のシリコーン樹脂組成物に含有される成分から、有機金属化合物(C)が、ポリシロキサン(A)とポリシロキサン架橋剤(B)とが反応して硬化したシリコーン樹脂部分18からブリードアウトして被膜14を形成していると本願発明者は推測している。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用する型を模式的に表す断面図である。
【図3】図3は、本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の光半導体素子封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
【図5】図5は、図4に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
【図6】図6は、本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す上面図である。
【図7】図7は、図6に示す光半導体素子封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【図8】図8は、図2に示す型を用いて得られたシリコーン樹脂を型から外して得られた硬化物の断面の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0112】
1 スーペーサー 3 ガラス
5 PETフィルム
6 シリコーン樹脂組成物(硬化後シリコーン樹脂6、硬化物6となる)
8 型
10 表面 12 裏面
14 被膜 16 境界
18 シリコーン樹脂部分
200、300 白色LED 201、301 マウント部材
202、302 シリコーン樹脂 203、303 青色LEDチップ
204 パッケージ 206 斜線部
306 シリコーン樹脂 207、307 導電性ワイヤー
209 外部電極 210、310 基板
305 インナーリード 400、501 LED表示器
401 白色LED 404 筐体
405 遮光部材 406 充填剤
500 LED表示装置 502 ドライバー
501 LED表示器 503 階調制御手段(CPU)
504 画像データ記憶手段(RAM) 600 本発明の光半導体素子封止体
601 LEDチップ 603 シリコーン樹脂
605 点 607 点605が属する面
609 基板 611 斜線部
T シリコーン樹脂603の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するポリシロキサンと、
(B)ケイ素原子に結合した水素基を少なくとも2個有するポリシロキサン架橋剤と、
(C)炭素原子数3以上の有機基を有する有機ジルコニル化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物および有機カリウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機金属化合物とを含むシリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルケニル基が、ビニル基または(メタ)アクリロイル基である請求項1に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機金属化合物が、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウムおよびカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の、キレートまたは塩である請求項1または2に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機金属化合物が、前記ポリシロキサンと前記ポリシロキサン架橋剤との合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部使用される請求項1〜3のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化をさせることによって得られるシリコーン樹脂。
【請求項6】
前記硬化の後のJIS A硬度が70以下である請求項5のシリコーン樹脂。
【請求項7】
LEDチップが請求項5または6に記載のシリコーン樹脂で封止されている光半導体素子封止体。
【請求項8】
LEDチップに請求項1〜4のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記シリコーン樹脂組成物が塗布されたLEDチップを加熱をして前記シリコーン樹脂組成物を硬化させて硬化物とするとともに、前記有機金属化合物を前記硬化物の表面にブリードアウトさせる硬化工程とを有する光半導体素子封止体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−43136(P2010−43136A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206059(P2008−206059)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】