説明

シール剤、液晶素子及び色素増感太陽電池

【課題】樹脂基板を用いた液晶素子又は色素増感太陽電池の封止に用いた場合、高い接着性を有するため、液晶や電解液を封止することができるシール剤を提供する。
【解決手段】樹脂基板を用いた液晶素子又はや色素増感太陽電池の封止に用いるシール剤であって、重合性単量体、熱可塑性ポリエステル樹脂及び光重合開始剤を含有し、前記重合性単量体100重量部に対して熱可塑性ポリエステル樹脂20〜300重量部を含有し、前記重合性単量体100重量%に占める、親水性官能基を有する重合性単量体の含有量が20〜100重量%であるシール剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板を用いた液晶素子又は色素増感太陽電池の封止に用いた場合、高い接着性を有するため、液晶や電解液を封止することができるシール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子は、種々のディスプレイ用の液晶表示素子や、液晶(ホスト)中に2色性色素(ゲスト)を分散させたゲストホスト型の液晶調光素子(例えば、特許文献1)等として広く普及している。従来の液晶素子は、ガラス基板を用いていることが一般的であった。しかし近年、軽量化が求められるモバイル機器等への液晶素子の搭載が増えるに従って、樹脂基板を用いた液晶素子が提案されている。また、近年、樹脂基板を用いた色素増感太陽電池についても多くの報告がなされている。樹脂基板を用いた液晶素子や色素増感太陽電池は、曲げることが可能であることから、曲面への適用も期待されている。
【0003】
液晶素子や色素増感太陽電池は、シール剤により2枚の基板を貼り合わせ、液晶や電解液を封止することにより製造される。上記シール剤は、熱又は光硬化性のエポキシ樹脂を含むシール剤が一般的であった。液晶素子や色素増感太陽電池の樹脂基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂シートの表面に錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の透明電極が形成された樹脂基板や、該透明電極上に更にイミド樹脂等の配向膜が形成された樹脂基板である。樹脂基板を用いた液晶素子や色素増感太陽電池の製造においては、シール剤は、これらの樹脂基板の透明電極面、配向膜面に対する高い接着性が要求される。しかし、従来のエポキシ樹脂を含むシール剤は、樹脂基板の透明電極面、配向膜面に対する接着性が不充分であった。
【0004】
特許文献2には、樹脂基板を用いた液晶表示素子用のシール剤として、エポキシ樹脂を用いたシール剤が記載されている。特許文献2には、樹脂基板の透明電極層の表面をエッチング処理した透明電極面に対するシール剤の接着性について記載はあるものの、配向膜に対する接着性については、なんら検討されていない。
特許文献3には、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリウレタン系エラストマー、光開始剤及び熱可塑性ポリエステル樹脂を含む、樹脂基板用の接着剤が記載されている。しかしながら、特許文献3には、PETに対するシール剤の接着性の記載はあるものの、透明電極や、配向膜に対する接着性については、なんら検討されていない。
【0005】
特許文献4には、シール剤として紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いた色素増感太陽電池が記載されている。しかしながら、特許文献4においてはガラス基板を用いており、ガラス基板に代えて樹脂基板を用いた場合には、剥離が生じやすく、電解液を封止できないことがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−291113号公報
【特許文献2】特開平11−153800号公報
【特許文献3】国際公開第2005/090509号パンフレット
【特許文献4】特開2000−30767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、樹脂基板を用いた液晶素子又は色素増感太陽電池の封止に用いた場合、高い接着性を有するため、液晶や電解液を封止することができるシール剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂基板を用いた液晶素子又は色素増感太陽電池の封止に用いるシール剤であって、重合性単量体、熱可塑性ポリエステル樹脂及び光重合開始剤を含有し、上記重合性単量体100重量部に対して熱可塑性ポリエステル樹脂20〜300重量部を含有し、上記重合性単量体100重量%に占める、親水性官能基を有する重合性単量体の含有量が20〜100重量%であるシール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明のシール剤は、重合性単量体、熱可塑性ポリエステル樹脂及び光重合開始剤を含有する。
上記重合性単量体は、上記光重合開始剤とともに、本発明のシール剤に光硬化性を付与する役割を有する。
上記重合性単量体は、親水性官能基を有する重合性単量体を含有する。親水性官能基を有する重合性単量体を用いることにより、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂シートの表面に錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の透明電極が形成された樹脂基板の透明電極面や、該透明電極上に更にイミド樹脂等の配向膜が形成された樹脂基板の配向膜面に対する接着力が向上する。これは、親水性官能基と、透明電極面の酸化物との相互作用や、親水性官能基と、配向膜を構成するイミド樹脂等のエステル基、エーテル基又は水酸基等との相互作用が働くためであると考えられる。
【0010】
上記親水性官能基を有する重合性単量体は特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、グリセリンモノアリルエーテル等の水酸基を有するビニル単量体や、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸等のアクリル酸及びそれらのα−アルキル誘導体又はβ−アルキル誘導体や、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸や、上記不飽和ジカルボン酸のモノ2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル誘導体等のカルボキシル基を有するビニル単量体や、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホニル基を有するビニル単量体や、ビニルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のホスホニル基を有するビニル単量体や、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基を有するビニル単量体や、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートの末端アルキルエーテル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のエーテル基を有するビニル単量体や、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基及びエーテル基を有するビニル単量体や、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のアミド基を有するビニル単量体等が挙げられる。これらの親水性官能基を有する重合性単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、上記親水性官能基として水酸基を有するものが好適であり、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好適である。
【0011】
上記重合性単量体における上記親水性官能基を有する重合性単量体の占める割合の下限は20重量%である。上記親水性官能基を有する重合性単量体の占める割合が20重量%未満であると、樹脂基板の透明電極面、配向膜面に対する接着性が低くなる。上記親水性官能基を有する重合性単量体の占める割合の好ましい下限は30重量%である。上記親水性官能基を有する重合性単量体の占める割合の上限は特に限定されず、上記重合性単量体の全量が上記親水性官能基を有する重合性単量体であってもよい。上記親水性官能基を有する重合性単量体の占める割合の好ましい上限は70重量%である。
【0012】
上記親水性官能基を有する重合性単量体以外の重合性単量体は特に限定されず、単官能単量体又は多官能単量体が挙げられる。単官能単量体として、例えば、スチレン誘導体、ビニルエステル類、不飽和ニトリル類、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。
上記スチレン誘導体として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
上記ビニルエステル類として、例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
上記不飽和ニトリル類として、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリル酸エステル誘導体として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら単官能単量体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記多官能単量体として、例えば、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート及びその異性体、トリアリルイソシアヌレート及びその誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等の2,2−ビス[4−(メタクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシポリプロポキシ)フェニル]プロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら多官能単量体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記熱可塑性ポリエステル樹脂は、本発明のシール剤の樹脂基板の透明電極面、配向膜面に対する接着力を向上させる役割を有する。
上記熱可塑性ポリエステル樹脂は、例えば、ジオールとカルボン酸の縮合重合体として定義され、共重合されるモノマーの種類によって様々の種類の熱可塑性ポリエステル樹脂が市販されている。上記熱可塑性ポリエステル樹脂の市販品として、例えば、東洋紡績社製「バイロン」、「バイロナール」、ユニチカ社製「エリーテル」、DIC社製「スピノドール」、武田薬品工業社製「タケラック」、クラレ社製「クラボール」等が挙げられる。これらの熱可塑性ポリエステル樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明のシール剤を色素増感太陽電池の封止に用いる場合には、電解液に侵されない耐電解液性や、ヨウ素によって着色されない耐着色性も要求される。
本発明のシール剤を色素増感太陽電池の封止に用いる場合、上記熱可塑性ポリエステル樹脂は、重合性官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましい。重合性官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることにより耐電解液性や耐着色性が著しく向上する。これは、熱可塑性ポリエステル樹脂の重合性官能基を起点にして、親水性官能基を有する重合性単量体又は親水性官能基以外を有する重合性単量体を重合させることにより、電解液による膨潤を防ぐことができるためであると考えられる。
【0016】
上記重合性官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂は、例えば、カルボキシル基や水酸基等の官能基Aを有している熱可塑性ポリエステル樹脂と、上記官能基Aと反応する官能基B及び重合性官能基を有する重合性単量体とを反応させることにより得られる。
前記カルボキシル基と反応する官能基Bとして、イソシアネート基等が挙げられる。
上記イソシアネート基を有する重合性単量体は特に限定されず、例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記水酸基と反応する官能基Bとして、イソシアネート基、エポキシ基等が挙げられる。
上記エポキシ基を有する重合性単量体は特に限定されず、例えば、9,10−エポキシオクタデカン酸無水物アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)メチル(メタ)アクリレート、(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレート、4−(グリシジルオキシ)ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
上記熱可塑性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が60℃以下であることが好ましい。上記熱可塑性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が60℃を超えると、液晶素子や色素増感太陽電池に応力をかけて曲げようとすると、硬化したシール剤が剥離することがある。
上記熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、3000〜10万であることが好ましい。上記熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が3000未満であると、樹脂基板の透明電極面、配向膜面に対する高い接着力が得られないことがある。上記熱可塑性ポリエステル樹脂の重量平均分子量が10万を超えると、液晶素子や色素増感太陽電池に応力をかけて曲げようとすると、硬化したシール剤が剥離することがある。
【0018】
本発明のシール剤における上記熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量は、上記重合性単量体100重量部に対する下限は20重量部、上限は300重量部である。上記熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が20重量部未満であると、樹脂基板の透明電極面、配向膜面に対する高い接着力が得られないことがある。上記熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量が300重量部を超えると、シール剤の粘度が高くなり、所望の膜厚になるように塗工できないことがある。上記熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量の好ましい下限は30重量部である。
なお、本発明のシール剤を色素増感太陽電池の封止に用いる場合には、上記熱可塑性ポリエステル樹脂の含有量は100重量部以上であることが好ましい。上記熱可塑性ポリエステル樹脂を100重量部以上配合した場合には、耐電解液性や耐着色性が向上する。
【0019】
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、ホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
上記ベンゾイン化合物として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾイイソブチルエーテル等が挙げられる。
上記アセトフェノン化合物として、アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
上記アントラキノン化合物として、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等が挙げられる。
上記チオキサントン化合物として、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。
上記ケタール化合物として、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン化合物として、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
上記ホスフィンオキサイド化合物として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明のシール剤における上記光重合開始剤の含有量は、上記重合性単量体100重量部に対する好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光重合開始剤の含有量が0.5重量部未満であると、光を照射しても充分に硬化しないことがある。上記光重合開始剤を、10重量部を超えて配合しても、それ以上光硬化性は向上しないうえに、液晶や電解液の汚染の原因となることがある。
【0021】
本発明のシール剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で、チキソ性付与剤、分散剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤又は酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0022】
本発明のシール剤を製造する方法は、例えば、上記重合性単量体、熱可塑性ポリエステル樹脂、光重合開始剤及び必要に応じて配合する添加剤を、遊星式撹拌機等の撹拌機を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0023】
本発明のシール剤は、樹脂基板を用いた液晶素子や色素増感太陽電池の封止に用いられる。
上記樹脂基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂シートの表面に錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の透明電極が形成された樹脂基板や、該透明電極上に更にイミド樹脂等の配向膜が形成された樹脂基板が挙げられる。
本発明のシール剤は、このような樹脂基板の透明電極面、配向膜面に対する接着力に優れる。また、本発明のシール剤は、可撓性にも優れる。従って、本発明のシール剤を用いて液晶が封止された液晶素子や、本発明のシール剤を用いて電解液が封止された色素増感太陽電池は、液晶や電解液を封止する信頼性が高い。更に、応力をかけて曲げても硬化したシール剤の剥離が発生し難いことから、曲面への適用も容易である。
【0024】
2枚の基板間に液晶が封止された液晶素子であって、上記基板は、基材の表面に透明電極と配向膜とがこの順に形成された基板であって、該配向膜面が対向するように配置されており、少なくとも一方の基板は樹脂基板であり、上記液晶は、本発明のシール剤を用いて封止されている液晶素子もまた、本発明の1つである。
上記液晶素子において対向する基板の一方が表面に透明電極と配向膜とが形成されたガラス基板であった場合でも、本発明のシール剤は接着性に優れる。上記液晶素子において対向する2枚の基板が樹脂基板である場合、特に接着性に優れ、硬化したシール剤が剥離し難い。
2枚の基板間に電解液が封止された色素増感太陽電池であって、上記基板は、基材の表面に透明電極が形成された基板であって、該透明電極面が対向するように配置されており、少なくとも一方の基板は樹脂基板であり、上記電解液は、本発明のシール剤を用いて封止されている色素増感太陽電池もまた、本発明の1つである。
上記色素増感太陽電池は2枚の基板のうち一方がガラス基板であってもよい。上記色素増感太陽電池において対向する2枚の基板が樹脂基板である場合、接着性に優れる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、樹脂基板を用いた液晶素子又は色素増感太陽電池の封止に用いた場合、高い接着性を有するため、液晶や電解液を封止することができるシール剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されない。
【0027】
(実施例1)
アクリル酸2−ヒドロキシエチル100重量部と熱可塑性ポリエステル樹脂(東洋紡績社製「バイロン500」、ガラス転移温度4℃)30重量部とを遊星式攪拌機(シンキー社製)を用いて混合した。次いで、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製「IRUGACURE651」)1重量部を混合し、シール剤を得た。
【0028】
(実施例2〜14、20、21)
表1に示した配合とした以外は、実施例1と同様の方法によりシール剤を得た。
なお、バイロン560及びバイロン670は、共に東洋紡績社製の市販品であり、それらのガラス転移温度は7℃である。
【0029】
(実施例15)
(1)重合性官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂の調整
セパラブルフラスコに熱可塑性ポリエステル樹脂(東洋紡績社製「バイロン670」、ガラス転移温度7℃)100重量部とトルエン200重量部とを入れ、60℃にて混合した。次いで、2−イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工社製「カレンズAOI」)5重量部とトルエン20重量部との混合液を加え、60℃にて5時間攪拌した。得られた溶液をエバポレーターにて濃縮して、真空オーブンにて乾燥して、重合性官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂を得た。
【0030】
(2)シール剤の製造
アクリル酸2−ヒドロキシエチル100重量部と、得られた重合性官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂30重量部とを遊星式攪拌機(シンキー社製)を用いて混合した。次いで、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製「IRUGACURE651」)1重量部を混合し、シール剤を得た。
【0031】
(実施例16〜19)
表1に示した配合とした以外は、実施例15と同様の方法によりシール剤を得た。
なお、実施例15〜19にて得られたシール剤は、重合性官能基を有する熱可塑性ポリエステル樹脂を含有しているため、耐電解液性及び耐着色性に優れるものとなった。
【0032】
(比較例1〜6)
表2に示した配合とした以外は、実施例1又は実施例15と同様の方法によりシール剤を得た。
【0033】
(評価)
実施例及び比較例で得られたシール剤について、以下の方法により評価を行った。
結果を表1、2に示した。
【0034】
(1)接着性評価
厚さ100μmのPETフィルムの表面に、アプリケーター(テスター産業社製)を用いてシール剤を塗工した後、厚さ100μmのPETフィルムを重ねてラミネートした。次いで、紫外線照射機を用いて6000mJ/cmの紫外線を照射して、シール剤を硬化させて評価サンプルを得た。硬化後のシール剤の厚さは50μmであった。
得られた評価サンプルを幅25mm×長さ50mmの大きさに切断し、剥離試験機(テンシロン)を用い、JIS K6854−3に準拠した方法で、剥離速度10mm/minの条件にてT形剥離試験を行った。
なお、比較例2では、所定の厚さになるようシール剤を塗工することができなかった。
【0035】
更に、被着体として、ITOを蒸着した厚さ100μmのPETフィルム(表面抵抗100Ω/cm)、及び、ITOを蒸着した厚さ100μmのPETフィルムのITO面にイミド樹脂の配向膜を形成したフィルムを準備した。この各々の被着体について、上記と同様の方法により、ITO面及び配向膜面が対向するようにしてシール剤で貼り合わせて評価サンプルを作製し、T形剥離試験を行った。
【0036】
(2)液晶表示性能評価
垂直配向モード型液晶(MERCK社製「ZLI−2806」)100重量部に対して、2色性色素(紀和化学工業社製「DISPERSE BLUE 14」)1重量部とスペーサ(積水化学工業社製「ミクロパールSP」)0.1重量部とを添加し、超音波法により分散させて、液晶層用組成物を得た。
【0037】
ITOを蒸着した厚さ100μmのPETフィルムのITO面にイミド樹脂の配向膜を形成した樹脂基板の配向膜上に、線幅1mmで50mm角の枠状になるようにシール剤をディスペンサーにて塗工した。次いで、シール剤の枠内に液晶層用組成物を塗布した。配向膜同士が対向するように他方の樹脂基板を重ねて、ラミネートした後、紫外線照射機を用いて6000mJ/cmの紫外線を照射して、シール剤を硬化させて液晶素子を得た。
【0038】
得られた液晶素子に3Vの交流電圧を掛けた。液晶表示性能について目視にて観察して、ムラが全く見られなかった場合を「○」、一部ムラが見られた場合を「×」として評価した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、樹脂基板を用いた液晶素子又は色素増感太陽電池の封止に用いた場合、高い接着性を有するため、液晶や電解液を封止することができるシール剤を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板を用いた液晶素子又は色素増感太陽電池の封止に用いるシール剤であって、
重合性単量体、熱可塑性ポリエステル樹脂及び光重合開始剤を含有し、
前記重合性単量体100重量部に対して熱可塑性ポリエステル樹脂20〜300重量部を含有し、
前記重合性単量体100重量%に占める、親水性官能基を有する重合性単量体の含有量が20〜100重量%である
ことを特徴とするシール剤。
【請求項2】
親水性官能基を有する重合性単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1記載のシール剤。
【請求項3】
熱可塑性ポリエステル樹脂は、重合性官能基を有することを特徴とする請求項1又は2記載のシール剤。
【請求項4】
熱可塑性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が60℃以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のシール剤。
【請求項5】
2枚の基板間に液晶が封止された液晶素子であって、
前記基板は、基材の表面に透明電極と配向膜とがこの順に形成された基板であって、該配向膜面が対向するように配置されており、
少なくとも一方の基板は樹脂基板であり、
前記液晶は、請求項1又は2記載のシール剤を用いて封止されている
ことを特徴とする液晶素子。
【請求項6】
2枚の基板間に電解液が封止された色素増感太陽電池であって、
前記基板は、基材の表面に透明電極が形成された基板であって、該透明電極面が対向するように配置されており、
少なくとも一方の基板は樹脂基板であり、
前記電解液は、請求項1又は2記載のシール剤を用いて封止されている
ことを特徴とする色素増感太陽電池。

【公開番号】特開2011−26512(P2011−26512A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175615(P2009−175615)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】