説明

ジョイント、ならびにこのジョイントを形成するシステムおよび方法

【課題】運搬用車両などの製品のジョイントの形成に関し、自動乗物の少なくとも1つの管状のフレーム部材を、この乗物の少なくとも1つの他の部材に相互連結するジョイントの形成に関する。
【解決手段】運搬用乗物(例えば自動車両)などの製品用のジョイントが形成される。ジョイントは、通常、構造接着剤(発泡剤などである)によって第1部材と第2部材とに付着されたコネクタを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本願は、2006年5月9日に出願された米国特許仮出願第60/746,810号に対する利益を主張する2007年4月30日に出願された米国特許出願第11/742,025号に対する利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、運搬用車両などの製品のジョイントの形成に関し、より詳細には、本発明は、自動乗物の少なくとも1つの管状のフレーム部材を、この乗物の少なくとも1つの他の部材に相互連結するジョイントの形成に関する。
【背景技術】
【0003】
製品の製造、特に運搬用乗物(自動乗物など)の製造における最近のトレンドにより、このような物品の形成に使用可能な、新しく革新的なジョイントの必要が生じている。一例として、ハイドロフォーミング、ロール成形などの成形技術を使用して、製品(自動車両など)の構造部材または他の部材(例えばピラー、フレーム部材など)を形成することがますます望ましくなっており、これらの成形技術は、コストがより安く、時間がかからないほか、より望ましい材料の使用が可能である。これらの技術では、所望の形状、輪郭(contour)および/または構成を有する部材(特に管状構造)を効果的に形成することができるものの、これらの技術は、これらの部材を、同じかまたは異なる技術によって形成された他の部材に連結するジョイントを形成する能力が限られてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
別の例として、製品(自動乗物など)の構造部材または他の部材(例えばピラー、フレーム部材など)を、新しい組み立て技術を使用して組み立てることがますます望まれている。しかし、場合によっては、このような組み立て技術により部品許容誤差が大きくなる可能性があり、この誤差を、その部材を他の部材に連結するジョイントによって吸収することが必要となる。
【0005】
このように、本発明は、ジョイント、ならびにジョイントを形成するシステムおよび方法を提供し、このジョイント、システムおよび/または方法は、製造の新しいトレンドから生じた上述した問題の1つ以上またはほかの問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ジョイント、およびジョイントを形成する方法を対象としている。
【0007】
前記方法によれば、それぞれ先端部を有する第1部材と第2部材とが提供される。前記第1部材、前記第2部材またはこの両者は、それぞれの部材によって画定される管状構造をハイドロフォーミングすることによって提供されうる。また、前記方法に従ってコネクタも提供される。前記コネクタは、通常、前記基端部から離れて延びる第1部分と、前記基端部から離れて延びる第2部分とを有する。また、前記コネクタは、通常、前記第1部分と前記第2部分に配された活性化可能材料も有する。前記第1部分と前記第2部分とは、通常、前記第1部材および前記第2部材のそれぞれの先端部に配置される。ハイドロフォーミングされたチューブを使用する実施形態では、前記第1部分は通常、前記第1部材の前記先端部で前記第1の管状構造の前記トンネル内に配置され、前記第2部分は通常、前記第2部材の前記先端部の近くで前記第2の管状構造の前記トンネル内に配置されている。前記活性化可能材料は通常、活性化され、前記コネクタの前記第1部分と前記第1部材の前記先端部とに付着され、かつ前記コネクタの前記第2部分と前記第2部材の前記先端部とに付着された構造接着発泡剤が形成される。ここでも、管状構造を使用する場合、前記活性化可能材料は、前記第1の管状構造の内面と前記第2の内面とを付着させることができる。好ましい実施形態では、前記ジョイントの形成時、前記第1部材は前記第2部材に直接接触しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の各種特徴および態様は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、図面などを読むことで明らかになる。
【0009】
本発明は、製品用のジョイントを提供する。また、本発明は、ジョイントの形成用のシステムおよび方法も提供する。特定の状況では、1つの製品が、本発明に従って形成された複数の(例えば少なくとも2、3、4、5、6つの)ジョイントを有することが考察される。本発明のジョイントは航空機、船舶、建物、家具等のさまざまな製品に適用できると考察されるものの、このジョイントは、特に自動車両に有用である。
【0010】
本発明に従って形成されたジョイントは、通常、以下の2つ以上を有する。
1)先端部を有する第1部材
2)先端部を有する第2部材
3)第1部材の先端部の近くにある第1部分と、第2部材の先端部の近くにある第2部分とを有するコネクタ
4)第1部材の先端部をコネクタの第1部分に接着し、第2部材の先端部をコネクタの第2部分に接着している構造接着材料
【0011】
一般に、第1部材は第2部材と直接接触していないことが好ましいが、このことは、特段の断りのない限り必須ではない。
【0012】
本発明のコネクタは、通常、基端部と、この基端部から離れて延びる1、2、3、4つ以上の結合部を有する。コネクタが複数の部品から形成されることが考察されるが、コネクタが一種類の材料から形成されるモノリシック構造であることが一般に好ましい。
【0013】
一実施形態では、コネクタは、内部が中実であり、連続的である。このようなコネクタの例が、図1A,1Bに示されている。しかし、代替例として、コネクタが、性質上、骨組みのみを有していてもよい。骨組みのコネクタは、通常、1、2、3以上の方向に延びる複数のリブを有する。好ましい一実施形態では、コネクタは、1つまたは複数の第1リブを有し、これが1つまたは複数の第2リブと交差しうる。このようなコネクタの例が、図2A,2Bに示されている。
【0014】
コネクタは、さまざまな材料から形成することができ、1種類の材料からも複数の材料からも形成することができる。例えば、コネクタは、ポリマー材料、金属(例えばアルミニウム、スチール、マグネシウム、金属合金)、これらの組合せなどから形成することができる。例示的なポリマー材料(例えば熱可塑性、ゴム、エラストマ、熱硬化性等)には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、成形コンパウンド(例えばシート成形コンパウンドまたはバルク成形コンパウンド)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、これらの組合せ等が挙げられるが、ここに挙げたものに限定されない。知られているように、コネクタを形成および成形するための技術は、通常、コネクタの材料によって決まる。この技術の例としては、成形、スタンピング、ハイドロフォーミング等が挙げられるが、ここに挙げたものに限定されない。このため、コネクタは、金属スタンピング、金属鋳造(例えば金属、アルミニウム、アルミニウムフォーム、マグネシウムまたはマグネシウムフォーム鋳造)、チクソモールディングされた構造であってもよい。コネクタは、成形された(例えば注入成形、圧縮成形またはブロー成形された)プラスチック構造であってもよい。
【0015】
本発明によるジョイントは、2つの部材、3つの部材、4つの部材、またはこれ以上を連結することができる。更に、この部材は、さまざまな構成を有することができる。通常、本発明の各部材は、コネクタの一部の近くにある先端部を有し、この部材は長尺状であり、コネクタから離れて外側に延びている。しかし、部材は、通常、金属材料から形成されるが、部材がプラスチック(例えば熱硬化性または熱可塑性材料)等のポリマー材料、または複合積層体から形成されてもよいと考察される。例示的な金属材料としては、スチール、チタン、アルミニウム、鉄、金属合金、これらの組合せ等が挙げられるが、ここに挙げたものに限定されない。
【0016】
本発明は、一般に、中空部材を連結するために望ましい。本明細書で使用するように、中空部材とは、開口部を有するか、または画定しているものを指す。本発明は、特に管状部材を連結するために望ましい。本明細書で使用するように、管状部材とは、開口部、より詳細にはトンネルを画定しており、これを実質的または完全に取り囲んでいるものを指す。自動車の用途では、管状部材または他の形状の部材は、ハイドロ成形された管、プレス成形された管、ロール形成された管、スタンピング、チクソモールド、押出加工(例えばアルミニウム押出加工)、鋳造、成形された(例えば注入成形、圧縮成形またはブロー成形された)部材でありえる。このため、本発明は、ジョイントを形成する方法を考察し、この方法は、部材を、事前にまたは同時に形成および/または成形する工程を有し、その際、ハイドロフォーミング、鋳造、ロール成形、スタンピング、チクソモールディング、射出成形、圧縮成形またはブロー成形の技術の1つまたは任意の組合せを使用する。
【0017】
接着材料は、活性化されて膨張し、その後、硬化して、隣接する面(例えば接着面)間に強力な結合を形成する、膨張可能または発泡可能な材料であってもよい。膨張可能材料の場合、接着材料は元の非膨張時の体積に対して、好ましくは500%以下、より好ましくは100%以下、更に好ましくは50%以下の体積膨張をする。当然、本発明の範囲内で、膨張の程度がこれを越えてもよいことが考察される。また、接着材料が非膨張可能材料であってもよく、熱的に活性化されても、されなくてもよい。
【0018】
一実施形態では、接着材料は、発泡性を有する高圧縮強度の熱活性化補強材から形成される。この材料は、ほぼ指触乾燥状態であるか粘着性を有してもよく、所望のパターン、配置または厚さの任意の形状で、部材の表面に配置されうるが、好ましくは厚さが実質的に均一である。1つの例示的な膨張可能材料は、米国ミシガン州ロメオ所在のL&L Productsから入手可能なL−5204構造発泡材である。好ましくは、接着材料の強度(例えば引張強度)は、少なくとも約5MPa、より好ましくは少なくとも約12MPa、更に好ましくは少なくとも約20MPaである。ただし、強度はこれよりも低くてもよい。
【0019】
ほかの熱活性化材料を接着材料に使用可能であるが、好ましい熱活性化材料は、膨脹可能なプラスチックであり、好ましくは発泡可能なものである。特に好ましい材料は、エポキシベースの構造発泡材である。例えば、構造発泡材は、アルファオレフィンを有しうるエチレンのコポリマーまたはターポリマーを含むエポキシベースの材料でありえるが、ここに挙げたものに限定されない。このポリマーは、コポリマーまたはターポリマーとして、2種または3種の異なるモノマー(すなわち高い化学反応性を有し、類似の分子と結合可能な小分子)から構成される。
【0020】
多くのエポキシベースの構造発泡材が、当業界で公知であり、構造発泡接着材料の作製に使用することができる。代表的な構造発泡材は、エポキシ樹脂またはエチレンベースのポリマーなどのポリマー基材を含み、適切な成分(通常は膨張および硬化剤)と配合された場合、熱を加えたり、特定の環境条件が生じると、確実かつ予測可能(predicable)に膨張して硬化する。熱活性化材料に対する化学的見地から、構造発泡材は、通常、初期には、硬化前は流動可能な熱可塑性材料として処理される。材料は硬化すると架橋して、それ以上流動できなくなる。接着材料に好ましい構造発泡材調合の例に、L5206、L5207、L5208、L5209、L−5220、L−7102、L−7220、XP321、およびXP721などの名称で米国ミシガン州ロメオ所在のL&L Productsから市販されているエポキシベースの材料がある。
【0021】
本発明の一実施態様では、接着材料は、少なくとも1つのシェル/コア耐衝撃性改良剤等の強化剤を含んでいてもよい。本明細書で使用するように、「コア/シェル耐衝撃性改良剤」との用語は、その実質部分(例えば、30重量%超、50重量%超、70重量%以上)が第1のポリマー材料(すなわち第1の材料またはコア材料)を含み、これが、第2のポリマー材料(すなわち第2の材料またはシェル材料)によって実質的に完全にカプセル化されている耐衝撃性改良剤を指す。本明細書で用いられる第1のポリマー材料と第2のポリマー材料は、結合および/または反応させた(例えば、順次重合させた)1、2、3種類以上のポリマーを含んでも、あるいは、別個または同じコア/シェル系の一部であってもよい。このような材料の例は、2006年10月9日に出願された、権利者共通の米国特許出願第60/828,704号に記載されており、これは、あらゆる目的のために参照によりここに援用する。
【0022】
従来の技術材料に対する好ましい接着材料の1つの利点として、好ましい材料を何通りもの方法で処理可能な点がある。好ましい材料は、射出成形、押出圧縮成形で処理するか、またはミニアプリケータによって処理できる。このため、従来技術で用いられていた材料のほとんどの機能を上回る部品設計を形成および作製することが可能である。好ましい一実施形態では、(未硬化状態の)構造発泡材は、ほぼ乾燥しているか、または比較的指触乾燥の状態にある。更に、接着材料は、部品の組み立ての前または後に、部材および/またはコネクタの接着面に塗布されうる。
【0023】
接着材料を作製するための好ましい材料について開示したが、材料が他の材料からも形成されてもよい。このような材料は、熱的に活性化されるか、あるいは環境条件(例えば水分、圧力、時間等)によって別の方法で活性化され、選択した用途に対して適切な条件下で、予測可能であり確実な方法で硬化する。このような材料の1つが、1999年3月8日に出願された本願の譲受人による米国特許第6,131,897号明細書に開示されているエポキシベースの樹脂であり、同特許の教示を参照によりここに援用する。ほかの可能な材料は、ポリオレフィン材料、少なくとも1種のモノマー型のアルファオレフィンとのコポリマーおよびターポリマー、フェノール/ホルムアルデヒド材料、フェノキシ材料、ガラス転移温度の高いポリウレタン材料などを含むが、ここに挙げたものに限定されない。また、米国特許第5,766,719号明細書、第5,755,486号明細書、第5,575,526号明細書、および第5,932,680号明細書も参照のこと(参照により援用する)。一般に、構造発泡材の望ましい特性には、剛性が比較的高いこと、高強度、ガラス転移温度が高いこと(通常>70℃)、耐食性特性が良好なことがある。このように、上記材料は、一般に、自動車メーカーが用いている材料系の妨げになることはない。
【0024】
接着材料が熱により活性化される熱膨張材料である用途では、材料の選択および配合に関し考慮すべき重要な事項に、材料が反応、膨張、活性化、流動、場合によっては硬化を起こす温度がある。例えば、多くの用途では、材料が室温や、製造ラインの環境における周囲温度で反応してしまうのは望ましくない。より一般的には、材料が高温か高いレベルのエネルギーを付与された状態(塗装の準備工程など)で自動車部品と共に処理されると、自動車組立工場で使用されるような温度などの高い処理温度で、材料が反応性を示すようになる。自動車組立工場で使用される温度は約148.89℃〜204.44℃(約300°F〜400°F)であるが、車体工場および塗装工場での用途では、一般に約93.33℃(約200°F)かこれよりわずかにより高い温度である。上記の範囲以外の温度で膨張させるために、必要に応じて、発泡剤用活性剤を組成物に混合してもよい。
【0025】
一般に、適切な材料の膨脹範囲は、約0〜1000%超である。材料の膨張の程度は、1500%以上にまで高めることができる。通常、膨張の程度が低い製品から強度が得られる。
【0026】
接着材料として使用可能なほかの材料は、ポリオレフィン材料、少なくとも1種のモノマー型のアルファオレフィンとのコポリマーおよびターポリマー、フェノール/ホルムアルデヒド材料、フェノキシ材料、ポリウレタンなどを含むが、ここに挙げたものに限定されない。また、米国特許第5,266,133号明細書、第5,766,719号明細書、第5,755,486号明細書、第5,575,526号明細書、第5,932,680号明細書、および国際公開第WO00/27920号パンフレット(国際特許出願第PCT/US99/24795号)も参照のこと(これら文献の全てを明示的に参照により援用する)。
【0027】
別の実施形態では、材料はカプセル化または一部カプセル化された形状で提供され、接着剤のシェル内に膨脹可能な発泡可能材料がカプセル化または一部カプセル化されているペレットを含みうる。このような系の例は、権利者共通の同時係属中の米国特許出願第09/524,298号(「膨脹可能な事前成形プラグ(Exmandable Pre−Formed Plug)」)に開示されており、その内容を参照によりここに援用する。
【0028】
更に、前述したように、事前に形成されたパターンを使用することもできる。その際、例えば、(平坦な面または輪郭のある面を有する)シートを押出し、次に選択した構造、パネルまたはビームに従った所定の構成に従ってダイカットして、そこに適用する。
【0029】
当業者は、上記ジョイントが、従来の遮音バッフルまたは車両構造補強システムの部品と組み合わせてか、あるいはその構成要素として使用できることを認めるであろう。これは、例えば、権利者共通の同時係属中の米国特許出願第09/524,61号または第09/502,686号(参照により援用する)に開示されている。
【0030】
また、本発明による接着材料は、望ましい特性を多く示しうる。本発明による接着材料は、高い延性を示す一方、比較的高い強度係数(strength moduli)を示しうる。接着材料、特に、本明細書に開示されているような成分の特定の組合せと量(例えば、特定量の付加物、耐衝撃性改良剤またはこの両方の組合せ)が、各種の望ましい特性を示しうる。これらの特性は、従来の二重重ね剪断試験法を使用して、はっきりと示される。このような方法はASTM規格の方法D3528−96(タイプA構成)に記載されており、使用試験パラメータは、試験被着体の厚さ:0.060インチ、アセトンで事前洗浄された1インチ×4インチのEG−60金属、各接着ボンドのライン:3mm、試験重なり寸法:1インチ×0.5インチ、試験速度:0.5インチ/分である。このような試験法は、望ましい特性を得るために使用することができ、このような特性には、破壊歪み(strain-to-break)をピーク時歪み(strain-at-peak)応力で割った比率(ここでは延性率と呼ぶ)、破壊時の歪みを面積計算用の端値として使用した、応力ひずみ曲線の下の面積として計算される破壊エネルギー(energy-to-beak)などがある。
【0031】
一例として、本発明の特定の接着材料は、活性化後に、約2.0超、より一般的には約2.5超、おそらく約2.8を超える延性率を示した。別の例として、本発明の特定の接着材料は、上述した試験法に従って求めた場合、活性化後に、約550Nmm超、より一般的には約700Nmm超、おそらく約750Nmmを超える破壊エネルギーの値を示した。
【0032】
更に別の例として、本発明に従って形成された特定の接着材料は、ASTM D638タイプIVの試験法によって求めた場合、活性化後に、約15MPa超、より一般的には約200MPa超、おそらく約350MPaを超える引張り係数(tensile modulus)を示した。更に、接着材料は、特に固体で提供される場合には、通常、破損(例えばチッピングなど)を受けにくくなる。
【0033】
図3は、本発明に従って形成された1つの例示的なジョイント10を示す。見て取れるように、ジョイント10は、第1部材14を第2部材16に相互連結するコネクタ12を有する。コネクタ12はほぼ円筒状の部材であり、第1部材14と第2部材16の両方は管状部材であるとして図示されている。
【0034】
図示した実施形態では、コネクタ12は、基端部20と、中間の第1部分22および第2部分24を有する。第1部分22と第2部分24は、基端部20から逆方向に離れて、それぞれ管状部材14,16によって画定される開口部(例えばトンネル)に延びて図示されている。熱活性化可能接着材料26は、活性化されると、コネクタ12を管状部材14,16に接着するために、第1部分22と第2部分24に配置される。好ましい一実施形態では、接着材料26が、活性化後に、接着材料26と部分22,24を超えて、音または質量(例えば空気または他の物体)が管状部材14,16に侵入したり、これらが管状部材14,16から出るのを実質的に阻害または阻止することができるように、接着材料26は、活性化の前または後は、部分22,24の周りに実質的または完全に連続して延びている。
【0035】
図4乃至6も、本発明の例示的なジョイント34,36,38を示している。各ジョイント34,36,38は、基端部46から離れて延びる複数のコネクタ部分44を有するコネクタ42を有し、部分44の各々は、コネクタ42を部材52に結合するための熱活性化可能接着材料50を有する。これらの部分44の各々は、図3の部分22,24に関して記載した特徴の1つ、複数または全てを有していてもよい。
【0036】
図4のジョイント34は、3つの部分44を有する三方軸ジョイントであり、3つの部分44は、基端部46から離れて異なる3方向に延びており、その1、2つまたは3つの全ては、3つの部材52を連結するために、互いに角、鈍角または鋭角をなしている。また、図6のジョイント36も、3つの部材52を連結するために、基端部46から離れて延びている3つの部分44を有する。図示した部分44,46は、T字形状を形成する。図5のジョイントは、4つの部材52を連結するために、基端部46から4方向に外側に延びている4つの部分44を有する。このように、本発明のコネクタは、基端部から外側に延びている少なくとも2、3、4つ以上の部分を有しうる。
【0037】
コネクタの各部は、基端部から離れて異方向に延びてもよく、その方向はそれぞれ、他の1、2、3、4つ以上の方向に対して、通常、ある角度をなしている。この角度は、一般的には約180°未満、より一般的には約170°未満、更に一般的には約140°未満、おそらく約120°未満であり、一般的には約8°超、更に一般的には約30°を超える。
【0038】
図3乃至6のそれぞれにおいて、図示したジョイントのコネクタは、これらが連結している部材間の実質的に唯一の構造相互連結要素として機能しうる。これらが連結している部材は、互いにほぼ直接接触していないか、あるいは直接接触していなくてもよい。更に、部材は、これら部材を相互に直接連結する溶接部を使用しないか、あるいは、間接的に連結する(部材の2つ以上に溶接された相互連結部片によってなど)溶接部を使用せずに相互連結されうる。これらの特徴は、特に自動車両等の製品にとって望ましいことがある。コネクタが連結している部材を、接触箇所で何らかの構造接続機構を使用せずに、相互に接触させることができることも考察される。このため、これらのコネクタで連結された部材は、通常は別の異なるものである。当然、特段の断りのない限り、部材は、例えば、1つ以上の追加の異なる接続部材、または部材の1つ以上の一体化された部分によって相互に連結されうる。
【0039】
上で示唆したように、本発明のジョイントは特に自動車両に有用である。このジョイントは、異種金属の部材を連結するために使用することができる。本明細書で使用するように、「金属」との用語の使用は、金属の量が少なくとも50%、75%、90%または実質的にほぼ純粋な金属であれば、非金属材料を含む材料を含む。このため、ジョイントの部材の1つが第1の金属(例えばアルミニウム)から形成され、第2部分が、第1の金属とは異なり、場合によっては第1の金属と相性の悪い第2の金属から形成されてもよい。本明細書で使用するように、相性の悪い金属の一例に、ある金属によって、別の金属の電気化学的腐食が生じる金属同士がある。このため、一実施形態では、ジョイントの第1部材が、少なくとも0.25V、より一般的には0.4V、更に一般的には1.1V、おそらく1.8V以上の電気電位または電極電位を有する第1の金属から形成され、これは、ジョイントの第2部材および/または第3部材の第2の金属の電気電位より低いことが考察される。本願の12ページに、水素電極に対する電位を決定できるように電位表が含まれており、更に本発明の部材に可能な金属の電位を示している。
【0040】
特に、接着材料が、このような許容誤差を吸収するために膨脹可能であるため、ジョイントは、部材のサイズに関して許容誤差の大きい部材を連結することもできる。本発明のジョイントは、車両のNVHを改善するため、堅いフレーム構造またはホワイトボディ(body in white:BIW)を車両に提供することができることも考察される。
【0041】
本発明のジョイントは、自動車両の多くの異なる部材を連結するために使用することができる。車両設計に応じて相互に連結されうる部材の例は、ホワイトボディ部材、レール、ロッカー、車両横断部材(cross-vehicle members)、ピラー、ルーフレール、屋根はり(roof bow)、ヘッダ、ドアビームパドル、ミラーブラケット、上下のフロントボディヒンジピラーがあるが、これらに限定されない。
【0042】
図7を参照すると、本発明によるいくつかのジョイントが示されており、これらのジョイントは本明細書に記載した属性のいずれか、特に図3乃至6のジョイントに関して記載した属性を有しうる。更に、図7に示すように、本発明に従って連結できる部材は数多くある。ジョイント60は、上部前方レール62を車両横断ビーム64に相互連結している。ジョイント66は、上部前方レール62をAピラー68とヒンジピラー70に相互連結している。ジョイント74は、ヒンジピラー70を下部フレームレール76に相互連結している。ジョイント80は、Aピラー68をルーフレール82に相互連結している。ジョイント88は、ルーフレール82、または場合によってはこのルーフレールを有する2つの部材90を、Bピラー92に相互連結している。ジョイント96は、フレームレール76、または場合によってはこのフレームレール76を有する2つの部材100を、Bピラー92に相互連結している。ジョイント104は、ルーフレール82,90をCピラー110に相互連結している。ジョイント112は、Cピラー110を、後部上部レール116および/または後部ピラー部118に相互連結している。ジョイント122は、下部Cピラー、ホイールハウス、フロア、クロスメンバ、および上部Cピラーを、任意の組合せで相互連結している。最後に、ジョイント130は、下部フレームレール76,100、1つ以上のクロスメンバ、ホイールハウス、フロア、および下部Cピラーを、任意の組合せで相互連結している。
【0043】
多くの場合、接着材料の接着の前に、連結対象の部材にコネクタを少なくとも一時的に取り付ける接続機構を有するコネクタを提供することが望ましい。これは、接着材料が、塗布、eコート処理または乾燥オーブン中で活性化し、コネクタと部材に接着するように構成されている場合に、特に当てはまる。このために、さまざまな接続機構を使用して、溶接、接着、インターロック、圧縮ばめ(compression fit)、締まりばめ(interference fit)などによって、コネクタを、連結対象の部材に取り付ける。
【0044】
コネクタを部材に取り付けるために、機械式の接続機構またはファスナを使用することができる。機械式インターロックは、コネクタに取り付けられる(例えば、インサート成形される)か、またはコネクタと同じ材料から一体的に成型されうる。図8は、金属クリップにインサート成形された形のインターロックファスナ140を示す。図9は、部材とコネクタにある開口部に挿入するのに適した双頭プッシュピンとして示されるプッシュピンの形の、インターロックファスナ142を示す。図10は、部材の開口部を通って延びているボルト148に取り付けようとしている、コネクタ146のインサート成形されたナット144を示す。
【0045】
接続機構のための他の選択肢としてはエンドタブ(weld tabs)、ポップリベット、閉じ込め装置(entrapment device)、インサート成形された溶接ボタン、打ち付けプラグ(bang plug)が挙げられるが、これらに限定されない。コネクタがスタンドオフ(standoff)、回転防止装置、ポークヨーク(poke yokes)などを有してもよいことも考察される。
【0046】
コネクタと部材を、所望の関係で互いに対して配置したら、接着材料が、コネクタとこれが連結する部材の間に、比較的強力な結合を形成するように、構造接着材料が、好ましくは活性化され、発泡、膨張、濡れ、接着、架橋または熱硬化するか、これらの複数を起こす。
【0047】
図3乃至7の自動車両と、自動車両用のジョイントの使用とを参照すると、構造接着材料50は、活性化して膨張(発泡するなど)し、部材52の、その部材52の全長にわたって延びる開口部を画定している内面に接触してこれを濡らし、更に、コネクタ42の表面に接触してこれを濡らす。このようにして、順に、構造接着材料は、架橋および/または熱硬化して、材料50に接着し、これにより、部材52をコネクタ24に構造的に連結する。
【0048】
このような付着および接着は、自動車両、特にホワイトボディの加工および/または組み立て中に、e−コートオーブン中で行うことができるために有利である。更に有利なことに、コネクタと接着材料は、e−コートを車両に塗布した後にこのようなジョイントを形成することができ、これにより、部材および/またはコネクタをe−コートで確実に被覆することができるようになる。
【0049】
本発明のコネクタまたはその一部は、管状またはその他の形状に成形された部材の空洞の中に置かれ、この部材の内面に接着するものとして一般的に示した。しかし、コネクタが、管状部材または他の部材の外面に接着するように構成されてもよいことが考察される。例えば、コネクタの1つ以上の接続部分が、1つ以上の管状部材または他の形状の部材の端を受け容れるのに適した空洞を画定しており、この空洞を画定している1つ以上の内面に配置された活性化可能材料を活性化して膨張、発泡および/または部材の1つ以上の外面に接着させることができる。
【0050】
特段の断りのない限り、ここに記載した各種構造の寸法および外形は本発明を限定することを意図したものではなく、ほかの寸法または外形も可能である。1つの一体化された構造により、複数の構造構成要素が提供されうる。別の実施形態では、1つの一体化された構造が、独立した複数の構成要素に分けられうる。更に、本発明の特徴を、図示した実施形態のうちの1つのみにより記載した場合もあるが、任意の用途のために、このような特徴を別の実施形態のほかの特徴の1つ以上と組み合わせることができる。また、ここに記載した独自の構造の製造およびその操作も、本発明に係る方法を構成していることが、上記から理解されよう。
【0051】
本発明の好ましい実施形態を開示した。しかし、当業者は、本発明の教示に特定の変更例を取り入れることができることを理解するであろう。このため、本発明の真の範囲および内容を決定するには、添付の特許請求の範囲を検討すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】本発明の一態様に従って形成された例示的なコネクタの斜視図。
【図1B】本発明の一態様に従って形成された例示的なコネクタの斜視図。
【図2A】本発明の一態様に従って形成された例示的なコネクタの斜視図。
【図2B】本発明の一態様に従って形成された例示的なコネクタの斜視図。
【図3】本発明の一態様に従って形成された例示的なジョイントの斜視図。
【図4】本発明の一態様に従って形成された例示的なジョイントの斜視図。
【図5】本発明の一態様に従って形成された例示的なジョイントの斜視図。
【図6】本発明の一態様に従って形成された例示的なジョイントの斜視図。
【図7】本発明の一態様による例示的なジョイントを複数有する例示的な自動車両の斜視図。
【図8】本発明の一態様に従って形成された例示的なジョイントの斜視図。
【図9】本発明の一態様に従って形成された例示的なジョイントの斜視図。
【図10】本発明の一態様に従って形成された例示的なジョイントの斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動乗物のジョイントの形成方法であって、
前記自動乗物の、先端部を有する第1部材を提供する工程と、
前記自動乗物の、先端部を有する第2部材を提供する工程と、
基端部と、前記基端部から離れて延びる第1部分と、前記基端部から離れて延びる第2部分と、前記第1部分および前記第2部分に配された活性化可能材料とを有するコネクタを提供する工程と、
前記第1部分を前記第1部材の前記先端部の近くに、前記第2部分を前記第2部材の前記先端部の近くに配置する工程と、
前記コネクタの前記第1部分と前記第1部材の前記先端部とに付着され、かつ前記コネクタの前記第2部分と前記第2部材の前記先端部とに付着された構造接着発泡剤を形成するために、前記活性化可能材料を活性化する工程と、を有する方法。
【請求項2】
前記第1部材は前記第2部材と直接接触していない請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1部材および前記第2部材は前記自動乗物のフレームの一部である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1部材と前記第2部材の少なくとも1つはBピラーである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1部分を配置する前記工程は、機械式ファスナによって前記第1部材の前記先端部に前記第1部分を固着する工程を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1部材を提供する前記工程は、前記第1部材によって画定される第1の管状構造をハイドロフォーミングする工程を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コネクタはプラスチック材料から形成される請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コネクタは複数の交差するリブを画定している請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記コネクタの前記第1部分は、前記基端部から第1の方向に離れて延び、前記第2部分は、前記基端部から第2の方向に離れて延びており、前記第1の方向と前記第2の方向のなす角度は170°未満である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コネクタは、前記基端部から離れて延びる第3部分を有し、前記第3部分にも活性化可能材料が配されており、前記活性化可能材料を活性化する前記工程は、前記コネクタの前記第3部分を前記自動乗物の第3部材に付着させる工程を有する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1部材と前記第2部材とはそれぞれ第1の管状構造と第2の管状構造とを画定している請求項1乃至10いずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の管状構造はその全長にわたって延びるトンネルを有しており、少なくとも1つのハイドロフォーミングされた輪郭を有する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2部材は、前記第2部材によって画定される第2の管状構造をハイドロフォーミングすることによって提供され、前記第2の管状構造は、その全長にわたって延びるトンネルを有しており、少なくとも1つのハイドロフォーミングされた輪郭を有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1部分を配置し、前記第2部分を配置する工程は、前記第1部材の前記先端部で前記第1の管状構造の前記トンネル内に前記第1部分を配置し、前記第2部材の前記先端部の近くで前記第2の管状構造の前記トンネル内に前記第2部分を配置する工程を有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記活性化可能材料が活性化され、前記第1部材の前記先端部で、前記コネクタの前記第1部分と前記第1の管状構造の内面とに付着され、かつ前記第2部材の前記先端部で、前記コネクタの前記第2部分と前記第1の管状構造の内面とに付着される構造接着発泡剤が形成され、前記第1の管状構造の前記内面は前記第1の管状構造の前記トンネルを少なくとも部分的に画定しており、前記第2の管状構造の前記内面は前記第2の管状構造の前記トンネルを少なくとも部分的に画定している請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コネクタは第1の複数のリブを有し、前記第1の複数のリブは横に延び、第2の複数のリブと交差しており、前記膨張可能材料は熱硬化可能であり、活性化され、e−コートまたは塗布オーブンで用いられる温度で膨張して熱硬化する請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−333208(P2007−333208A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−124048(P2007−124048)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(507150873)ゼファロス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】