説明

スイッチング回路

【課題】 IC化を容易にでき、特性を安定化させることができるスイッチング回路を提供すること。
【解決手段】 制御信号生成する構成は、スイッチング素子M1の制御信号のターンオン時の作動閾値電圧近傍までの昇圧を、電源V2からの注入で早めるパルス発振器P2、トランジスタQ1、電源V2と、スイッチング素子M1の制御信号のターンオフ時の作動閾値電圧近傍までの降圧を、電流経路101と別の電流経路102,103で電流を流すことで早めるダイオードD2、トランジスタQ2、電源V3を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーMOSFETを用いてモータ等の負荷を駆動するスイッチング回路の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、パワーMOSFETゲートに直列に接続された第1の抵抗と、第1の抵抗に対して並列に接続された第1のコンデンサ及び第2の抵抗の直列回路と、FETのゲート・ソース間に接続された第1のダイオード及び第2のコンデンサを有し、第2のコンデンサの充電電流経路をゲートよりソース方向に制限するように構成している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−163838号公報(第2−6頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のスイッチング回路にあっては、コンデンサの容量に依存するため、IC化に向いておらず、製造ばらつき、動作環境、経年劣化等による容量変化により、スイッチング特性が左右されやすいものであった。
【0004】
この点について詳しく説明する。
従来のスイッチング回路では、電磁ノイズを増加させずに応答性を改善するために、異なる時定数でゲートを充放電できる2系統のゲート駆動回路を有し、ノイズに影響を及ぼす期間は低速で、ノイズに影響を及ぼさない期間は高速でゲートを駆動するような効果が得られる回路において、少なくとも一方がコンデンサを含んだ回路から構成されている。
しかし、従来における2系統の時定数設定は、構成に組み込まれたコンデンサ容量に依存している。そのため、IC化に向いておらず、製造ばらつき、動作環境、経年劣化等による容量変化により、スイッチング特性が左右されやすいものであった。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、IC化を容易にでき、特性を安定化させることができるスイッチング回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、制御信号生成手段から供給した制御信号によるスイッチング素子のオンオフ動作で、負荷を駆動するスイッチング回路において、前記制御信号生成手段は、前記スイッチング素子の制御信号のターンオン時の作動閾値電圧近傍までの昇圧を、電源からの注入で早める注入手段と、前記スイッチング素子の制御信号のターンオフ時の作動閾値電圧近傍までの降圧を、前記注入手段と別の電流経路へ電流を流すことで早める排出手段と、を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、IC化を容易にでき、特性を安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のスイッチング回路を実現する実施の形態を、請求項1,2,3に係る発明に対応する実施例1と、請求項1,4に係る発明に対応する実施例2とに基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
実施例1のスイッチング回路1は、電源V1,V2,V3、負荷L1、ダイオードD1,D2,D3、抵抗R1,R2,R3、トランジスタQ1,Q2、スイッチング素子M1、パルス発振器P1,P2を主要な構成にしている。
【0010】
電源V1は、負荷を駆動する電源を供給するパワー電源であり、マイナス端子をグランドへ接続し、プラス端子を負荷L1へ接続する。例として、15V直流電源を挙げておく。
負荷L1は、モータを等価化したインダクタンス負荷であり、PWM駆動されるため、一定電流とみなすことになり、定電流電源として等価化させる。なお、この負荷L1は、電源V1のプラス端子とグランドの間に介在するよう設けられ、電源V1のプラス側からグランドへ向かう方向への定電流電源となる。
【0011】
負荷L1の下流には、スイッチング素子M1を設ける。スイッチング素子M1はパワーMOSFETであり、ソース・ドレインが、負荷L1とグランドの間に介在するように設ける。そして、スイッチング素子は、ゲート端子への入力電圧により負荷L1の駆動電圧のオンオフを行うものである。
ダイオードD3は還流ダイオード(フリーホイールダイオード)であり、負荷L1と並列に設ける。つまり、電源V1と負荷L1との間に一端を接続し、負荷L1とスイッチング素子M1の間に一端を接続する。これにより、負荷L1から下流へ向かう電流を還流する還流路を形成する。
【0012】
パルス発振器P1は、スイッチング素子M1のゲート端子を駆動するためのPWMパルスを生成してプラス端子から抵抗R1へ出力する。また、パルス発振器P1はマイナス端子をグランドへ接続されているものとする。
抵抗R1は、パルス発振器P1からのPWM波形出力をスイッチング素子M1のゲート端子へ適した入力となるよう調整を行う。そして、抵抗R1からの出力は、トランジスタQ1側からの出力と合流してスイッチング素子M1のゲート端子へ入力する。例として、抵抗値500Ωの抵抗を挙げておく。
【0013】
パルス発振器P2は、トランジスタQ1のベース端子を駆動するためのPWMパルスを生成して、プラス端子から抵抗R2及び抵抗R3へ分流して出力する。また、パルス発振器P2はマイナス端子をグランドへ接続されているものとする。
そして、パルス発振器P2は、パルス発振器P1と同じ出力を同期して出力するものとする。
【0014】
抵抗R2は、パルス発振器P2からのPWM波形出力をトランジスタQ1のベース端子へ適した入力となるよう調整を行う。そして、抵抗R2からの出力はトランジスタQ1のベース端子へ出力する。例として、抵抗値1kΩの抵抗を挙げておく。
トランジスタQ1は、NPN型トランジスタであり、コレクタ接地型である。トランジスタQ1のコレクタ端子は、電源V2を介してグランドへ接地され、エミッタ端子はダイオードD1を介してスイッチング素子M1のゲート端子へ向かい、パルス発振器P1側と合流し、スイッチング素子M1のゲート端子へ接続する。
【0015】
ダイオードD1は、トランジスタQ1のエミッタ端子からスイッチング素子M1へ向かう方向のみに電流を整流する。
電源V2は、プラス端子をトランジスタQ1のコレクタへ接続し、マイナス端子をグランドへ接地した直流電源である。例として、4.2Vの直流電源を挙げておく。
【0016】
抵抗R3は、パルス発振器P2からのPWM波形出力をトランジスタQ2のベース端子へ適した入力となるよう調整を行う。そして、抵抗R3からの出力はトランジスタQ2のベース端子へ出力する。
トランジスタQ2は、PNP型トランジスタであり、コレクタ接地型である。トランジスタQ2のコレクタ端子は、電源V3を介してグランドへ接地され、エミッタ端子はダイオードD2を介して、スイッチング素子M1のゲート端子とダイオードD1との間に接続する。
【0017】
ダイオードD2は、スイッチング素子M1のゲート端子とダイオードD1との間からトランジスタQ2のエミッタ端子へ向かう方向のみに電流を整流する。
電源V3は、プラス端子をトランジスタQ1のコレクタへ接続し、マイナス端子をグランドへ接地した直流電源である。例として、3Vの直流電源を挙げておく。
【0018】
作用を説明する。
[高速化作用及びノイズ低減作用]
図2は実施例1のスイッチング回路におけるターンオン時及びターンオフ時の電流の流れを示す説明図である。図3は実施例1のスイッチング回路における電圧波形及び電流波形を示す図である。なお、図3において、図3(a)は、パルス発振器P2から抵抗R2,R3へ向かう途中の電圧波形を示し、図3(b)は、スイッチング素子M1のゲート端子への入力電圧波形を示す。さらに、図3(c)は、負荷L1及びダイオードD3とスイッチング素子M1の間の電圧波形を示し、図3(d)は、負荷L1及びダイオードD3とスイッチング素子M1の間の電流波形を示す。
【0019】
(ターンオン時)
まず、スイッチング素子M1のゲート端子へ入力されるPWM信号の立上り時、つまりターンオン時について説明する。
実施例1のスイッチング回路1では、スイッチング素子M1のゲート電圧は、パルス発振器P1からのPWM信号と、パルス発振器P2によりトランジスタQ1を駆動させて送られるPWM信号の重畳により決まることになる。
つまり、パルス発振器P1からのPWM信号は、抵抗R1により調整後、スイッチング素子M1のゲート端子へ入力する。
【0020】
また、パルス発振器P2からのPWM信号の立上りは、抵抗R2を通してトランジスタQ1のベースへ入力されるとともに、抵抗R3を介してトランジスタQ2へ入力される。
トランジスタQ1では、ベース入力が立上ることによって、ベース・エミッタ間が所定の電流値に達すると、エミッタ・コレクタ間がオンになり、電源V2から、トランジスタQ1、ダイオードD1を通して、スイッチング素子M1のゲート端子へ入力する電流経路101がオンとなる。
【0021】
なお、このターンオン時には、トランジスタQ2のエミッタ・コレクタ間はオフのままである。
この電流経路101によるゲート電圧入力分は、トランジスタQ1のエミッタ・コレクタ間の立上りで電圧が立上るため、非常に高速な立上りとなる(図3(b)の符号201の部分参照)。
【0022】
つまり、パルス発振器P2及びトランジスタQ1,Q2側のゲート電圧入力分の立上りの時定数は、抵抗R2,R3の抵抗値、トランジスタQ1,Q2のオン抵抗で決まり、コンデンサ容量成分を含まないため、極めて低インピーダンスで、時定数はコンデンサ容量を含むものに比べて非常に小さくなる。
これにより、スイッチング素子M1のゲート電圧は、パワーMOSFETであるスイッチング素子M1がソース・ドレイン間をオンにする閾値電圧Vth、例えば約4V程度まで、非常に高速に立上ることになる。
【0023】
なお、トランジスタQ1のオンによるダイオードD1からスイッチング素子M1への電流の一部がダイオードD2からトランジスタQ2のエミッタ・ベース電流となり、トランジスタQ2がオンとなっても、電源V3によりトランジスタQ2のコレクタを所定の電位にしているため、この電流経路ではターンオン時のVthまでの立ち上がりでは殆ど電流が流れないよう抑制されることになる。
なお、この高速化する部分では、電源V2の値の設定により、過度に高速化され過ぎないようにして、ノイズ低減効果の維持が行われる。
【0024】
(ターンオフ時)
次に、スイッチング素子M1のゲート端子へ入力されるPWM信号の立下り時、つまりターンオフ時について説明する。
パルス発振器P1,P2のPWM信号をターンオフした際には、ダイオードD2からトランジスタQ2へ向かい、PNP型のトランジスタQ2のエミッタ・ベース電流となり、抵抗R3へ向かう電流経路102となる。
さらに、PNP型のトランジスタQ2のエミッタ・ベース電流によりトランジスタQ2がオンになると、ダイオードD2からトランジスタQ2のエミッタ・コレクタを通り、電源V3を通してグランドへ向かう電流経路103も形成される。
電源V3は、トランジスタQ2のコレクタへ電圧をかける構成にしているので、トランジスタQ2のオンによる電圧降下の促進が過度にならないように抑制する。
【0025】
この電流経路102,103へターンオフ時に電流が流れることによって、ゲート端子におけるPWM信号は高速に立ち下がる電圧部分を有することになる(図3(b)の符号202の部分参照)。
さらに、図3(c),(d)に示すように、電源V2,V3による高速化の抑制により、スイッチング素子M1の負荷L1の駆動電圧信号及び電流信号の立上り、立下りはあまり変化しないため、ノイズレベルを高くしてしまうことがない。
【0026】
さらに、実施例1の作用効果を明らかにするために、PWM発振器から抵抗を介するのみでゲート入力するものを説明する。
図4はPWM発振器から抵抗を介するのみでゲート入力するスイッチング回路の回路構成を示す図である。図5はPWM発振器から抵抗を介するのみでゲート入力するスイッチング回路における電圧波形及び電流波形を示す図である。
【0027】
この回路構成では、直流電源V11の下流に負荷L11と還流ダイオードとして作用するダイオードD11を並列に設け、負荷L11の下流にスイッチング素子M11を設けている。そして、スイッチング素子M11のゲート端子には、パルス発振器P11のPWM信号を抵抗R11を介して入力する構成である。
なお、図5において、図5(a)は、パルス発振器P11から抵抗R11へ向かう途中の電圧波形を示し、図5(b)は、スイッチング素子M11のゲート端子への入力電圧波形を示す。さらに、図5(c)は、負荷L11及びダイオードD11とスイッチング素子M11の間の電圧波形を示し、図5(d)は、負荷L11及びダイオードD11とスイッチング素子M11の間の電流波形を示す。
【0028】
特に、図4のPWM発振器から抵抗を介するのみでゲート入力するものでは、図5(b)に示すように、実施例1におけるスイッチング素子M1のゲート電圧の立上り、立下りの高速化作用が見受けられないことになる。また、スイッチング素子M11の負荷L11を駆動する電圧波形、及び電流波形は、実施例1とあまり変わらないものとなっている(図3及び図5参照)。
【0029】
また、実施例1のスイッチング回路1では、スピードアップコンデンサを用いずに高速化を実現しているため、当然にコンデンサ容量に依存しない回路であり、IC化が容易で、製造ばらつき、動作環境、経年劣化によるコンデンサ容量変化にスイッチング特性が左右されることがない。
【0030】
なお、例えばモータである負荷L1とダイオードD3の作用について、説明を付け加えておくと、スイッチング素子M1のターンオフにより、負荷L1へのPWM駆動電圧がオフとなった際に、負荷L1のインダクタンス成分により、電流の流れを継続させようとする電流分を、スイッチング素子M1のドレインへ流すのではなく、ダイオードD1と負荷L1との間で還流するようにして、スイッチング素子M1を保護する。
【0031】
効果を説明する。
実施例1のスイッチング回路にあっては、以下に列挙する効果を有する。
(1)パルス発振器P1側から供給した制御信号によるスイッチング素子M1のオンオフ動作で、負荷L1を駆動するスイッチング回路1において、制御信号生成する構成は、スイッチング素子M1の制御信号のターンオン時の作動閾値電圧近傍までの昇圧を、電源V2からの注入で早めるパルス発振器P2、トランジスタQ1、電源V2と、スイッチング素子M1の制御信号のターンオフ時の作動閾値電圧近傍までの降圧を、電流経路101と別の電流経路102,103で電流を流すことで早めるダイオードD2、トランジスタQ2、電源V3を備えたため、IC化を容易にでき、特性を安定化させることができる。
【0032】
(2)制御信号生成する手段は、生成した制御パルス信号をスイッチング素子M1へ出力するパルス発振器P1を備え、注入する手段は、パルス発振器P1と並行にスイッチング素子M1へ出力するよう設けられ、パルス発振器P2で生成した制御パルス信号によるトランジスタQ1のオンで電源を接続し、スイッチング素子M1への制御パルス信号のターンオン時の電圧上昇を早める回路構成のものであり、排出する手段は、スイッチング素子M1への制御パルス信号の供給路に接続され、ターンオフ時に電流をトランジスタQ2へ排出する電流経路を形成して、スイッチング素子M1への制御パルス信号のターンオフの電圧降下を早める回路構成のものであるため、トランジスタQ1のオンにより接続した電源によりスイッチング素子M1への制御パルス信号のターンオン時の電圧上昇を早め、ターンオフ時に電流をトランジスタQ2へ排出する電流経路へ流すことにより電圧降下を早めるようにして、コンデンサを用いることなく、高速化を行い、且つノイズの抑制は維持するようにでき、IC化を容易にし、製造ばらつき、動作環境、経年劣化等による容量変化によって、スイッチング特性が左右されないようにできる。
【0033】
(3)注入手段は、トランジスタQ1のオンで接続する電源の電圧値を、スイッチング素子M1の制御信号のターンオン時の作動閾値電圧近傍の値にして、スイッチング素子M1への制御パルス信号のターンオン時の電圧上昇を早めることを制限し、排出手段は、ターンオフ時のトランジスタQ2へ排出する電流経路102でオンにするトランジスタQ2の接続先を、電流経路103での電流を抑制する電源V3とする構成にして、スイッチング素子M1への制御パルス信号のターンオフの電圧降下を早めることを制限したため、スイッチング素子M1のゲート入力信号のターンオン、ターンオフを高速化しつつ、過度の高速化にならないようにして、ノイズの低減降下を維持しつつ高速化できる。
【実施例2】
【0034】
実施例2のスイッチング回路は、抵抗とダイオード、電源によって、ゲートへの入力パルスの高速化を行う例である。
構成を説明する。
図6は実施例2のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
実施例2のスイッチング回路1は、電源V1,V4,V5、負荷L1、ダイオードD3,D4,D5,D6,D7、抵抗R4,R5,R6、スイッチング素子M1、パルス発振器P3を主要な構成にしている。
【0035】
電源V1、負荷L1、ダイオードD3、スイッチング素子M1については、構成が実施例1と同様であるため、同じ符号を付し説明を省略する。
【0036】
パルス発振器P3は、スイッチング素子M1のゲート端子を駆動するためのPWMパルスを生成してプラス端子から抵抗R1,R5,R6へ出力する。また、パルス発振器P3はマイナス端子をグランドへ接続されているものとする。
抵抗R4,R5は、パルス発振器P3からのPWM波形出力をスイッチング素子M1のゲート端子へ適した入力となるよう調整を行う。そして、抵抗R4からの出力は、抵抗R5からの出力と合流してスイッチング素子M1のゲート端子へ入力する。例として、抵抗R4を抵抗値500Ω、抵抗R5を抵抗値100Ωとするものを挙げておく。
【0037】
抵抗R6は、パルス発振器P3からのPWM波形出力をダイオードD5とダイオードD7の間へ送る。さらに詳細には、抵抗R6からダイオード側への電流の流れは、ダイオードD5,D7により通過できない回路構成となっている。例として、抵抗値100Ωの抵抗を挙げておく。
ダイオードD4は、抵抗R5からの出力を分流した一方に設けられ、抵抗R5からスイッチング素子M1のゲート端子へ向かう方向のみに電流を整流する。ダイオードD4からの出力は抵抗R4の出力と合流し、スイッチング素子M1のゲート端子に入力される。
【0038】
ダイオードD5は、ダイオードD4から抵抗R4の出力合流点までの間と抵抗R6からの出力との合流点の間に設けられ、ダイオードD4から抵抗R4の出力合流点までの間から、抵抗R6及びダイオードD7へ向かう方向のみに電流を整流する。
【0039】
ダイオードD6は、抵抗R5からの出力を分流した一方に設けられ、抵抗R5から電源V4へ向かう方向のみに電流を整流する。
ダイオードD7は、電源V5からダイオードD5及び抵抗R6へ向かう方向のみに電流を整流する。
電源V4は、プラス端子をダイオードD6のカソードへ接続し、マイナス端子をグランドへ接地した直流電源である。例として直流3.5Vの電源を挙げておく。
電源V5は、プラス端子をダイオードD7のアノードへ接続し、マイナス端子をグランドへ接地した直流電源である。例として直流4Vの電源を挙げておく。
【0040】
作用を説明する。
[高速化作用及びノイズ低減作用]
図7は実施例2のスイッチング回路におけるターンオン時及びターンオフ時の電流の流れを示す説明図である。図8は実施例2のスイッチング回路における電圧波形及び電流波形を示す図である。なお、図8において、図8(a)は、パルス発振器P2から抵抗R4〜R6へ向かう途中の電圧波形を示し、図8(b)は、スイッチング素子M1のゲート端子への入力電圧波形を示す。さらに、図8(c)は、負荷L1及びダイオードD3とスイッチング素子M1の間の電圧波形を示し、図8(d)は、負荷L1及びダイオードD3とスイッチング素子M1の間の電流波形を示す。
【0041】
(ターンオン時)
まず、スイッチング素子M1のゲート端子へ入力されるPWM信号の立上り時、つまりターンオン時について説明する。
実施例2のスイッチング回路1では、スイッチング素子M1のゲート電圧は、パルス発振器P3から抵抗R4を介して送られるPWM信号と、パルス発振器P3から抵抗R5、ダイオードD4を介して送られるPWM信号の重畳により決まることになる。
【0042】
また、このスイッチング素子M1のゲートへ向かう経路には、電源V5からダイオードD7、抵抗R6を通過する電圧信号が追加される。
これにより、電源V4の電圧値を超えるまで、抵抗R4と抵抗R5の抵抗値の比率により、パルス発振器P3からのPWM信号及び、電源V5からの電圧信号は、抵抗R5からダイオードD4を介した電流経路104が主経路となりターンオン時の高速化が成される(図8(b)の符号203の部分参照)。
このターンオン時の時定数は、抵抗R4,R5により決定されるため、設定が容易となる。
【0043】
(ターンオフ時)
次に、スイッチング素子M1のゲート端子へ入力されるPWM信号の立下り時、つまりターンオフ時について説明する。
実施例2では、パルス発振器P1,P2のPWM信号をターンオフした際には、スイッチング素子M1のゲート端子から、ダイオードD5経て、抵抗R6へ向かう電流経路105を電流が通ることにより、ゲート端子におけるPWM信号は高速に立ち下がる電圧部分を有することになる(図8(b)の符号204の部分参照)。
【0044】
実施例2では、ターンオン時及びターンオフ時に、電源V4の電圧値により、高速化が適度に抑制されることになる。これにより、図8(c),(d)に示すように、スイッチング素子M1の負荷L1の駆動電圧信号及び電流信号の立上り、立下りはあまり変化しないため、ノイズレベルを高くしてしまうことがない。
このように、実施例2のスイッチング回路1においても、コンデンサを用いずに、ターンオン、ターンオフを高速化し、ノイズ抑制性能を維持する。
【0045】
効果を説明する。実施例2のスイッチング回路にあっては、上記(1)に加えて、以下の効果を有する。
(4)制御信号を生成する手段は、パルス発振器P3で生成した制御パルス信号を、抵抗R4を介してスイッチング素子M1へ出力する信号ラインを備え、注入手段は、パルス発振器P3から抵抗R4を通る信号ラインと並行に設けられ、分流した電流経路104で制御パルス信号を所定電圧まで抵抗R5の抵抗値で流しやすくし、且つこの電流経路104で所定電圧まで電源V5で昇圧して、スイッチング素子M1への制御パルス信号のターンオン時の電圧上昇を早める回路構成のものであり、排出手段は、スイッチング素子M1への制御パルス信号の供給路に接続され、ターンオフ時に電流を電源V4へ排出する電流経路105を形成して、スイッチング素子への制御パルス信号のターンオフの電圧降下を早める回路構成のものであるため、所定電圧までを、抵抗R5を通る供給路により、制御パルス信号(PWM信号)と電源からの所定電圧信号を流すようにして、高速なゲート信号の立上り部分を設けるようにするとともに、ターンオフ時には、電流を電流経路105へ流すようにして、高速なゲート信号の立下り部分を設けるようにして、コンデンサを用いることなく、高速化を行い、且つノイズの抑制は維持するようにでき、IC化を容易にし、製造ばらつき、動作環境、経年劣化等による容量変化によって、スイッチング特性が左右されないようにできる。
【0046】
以上、本発明のスイッチング回路を実施例1、実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
なお、実施例1、実施例2において、各電源は、インピーダンス0で電流が内部を通過できる基準電圧として取り扱っている。電源内部へ充電方向の電流を流すことに問題がある場合は、対策した電源回路を有する構成としてもよい。
負荷の例としては、モータを挙げているが、例えば、LEDやランプなどの光源、ソレノイドなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
【図2】実施例1のスイッチング回路におけるターンオン時及びターンオフ時の電流の流れを示す説明図である。
【図3】実施例1のスイッチング回路における電圧波形及び電流波形を示す図である。
【図4】PWM発振器から抵抗を介するのみでゲート入力するスイッチング回路の回路構成を示す図である。
【図5】PWM発振器から抵抗を介するのみでゲート入力するスイッチング回路における電圧波形及び電流波形を示す図である。
【図6】実施例1のスイッチング回路の回路構成を示す図である。
【図7】実施例2のスイッチング回路におけるターンオン時及びターンオフ時の電流の流れを示す説明図である。
【図8】実施例2のスイッチング回路における電圧波形及び電流波形を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 スイッチング回路
101〜105 電流経路
201〜204 (グラフ上の高速化された部分を示す)符号
D1〜D7 ダイオード
L1 負荷
L11 負荷
M1 スイッチング素子
M11 スイッチング素子
P1〜P3 パルス発振器
P11 パルス発振器
Q1 トランジスタ
Q2 トランジスタ
R1〜R6 抵抗
R11 抵抗
V1〜V5 電源
V11 直流電源
Vth 閾値電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号生成手段から供給した制御信号によるスイッチング素子のオンオフ動作で、負荷を駆動するスイッチング回路において、
前記制御信号生成手段は、
前記スイッチング素子の制御信号のターンオン時の作動閾値電圧近傍までの昇圧を、電源からの注入で早める注入手段と、
前記スイッチング素子の制御信号のターンオフ時の作動閾値電圧近傍までの降圧を、前記注入手段と別の電流経路へ電流を流すことで早める排出手段と、
を備えた、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング回路において、
前記制御信号生成手段は、
生成した制御パルス信号を前記スイッチング素子へ出力する制御パルス信号出力手段を備え、
前記注入手段は、前記制御パルス信号出力手段と並行に前記スイッチング素子へ出力するよう設けられ、生成した制御パルス信号による第1トランジスタのオンで電源を接続し、スイッチング素子への制御パルス信号のターンオン時の電圧上昇を早める回路構成のものであり、
前記排出手段は、前記スイッチング素子への制御パルス信号の供給路に接続され、ターンオフ時に電流を第2トランジスタへ排出する電流経路を形成して、スイッチング素子への制御パルス信号のターンオフの電圧降下を早める回路構成のものである、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチング回路において、
前記注入手段は、第1トランジスタのオンで接続する電源の電圧値を、前記スイッチング素子の制御信号のターンオン時の作動閾値電圧近傍の値にして、スイッチング素子への制御パルス信号のターンオン時の電圧上昇を早めることを制限し、
前記排出手段は、ターンオフ時の第2トランジスタへ排出する電流経路でオンにする第2トランジスタの接続先を、前記電流経路での電流を抑制する電源とする構成にして、スイッチング素子への制御パルス信号のターンオフの電圧降下を早めることを制限した、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項4】
請求項1に記載のスイッチング回路において、
前記制御信号生成手段は、
生成した制御パルス信号を前記スイッチング素子へ出力する制御パルス信号出力手段を備え、
前記注入手段は、前記制御パルス信号出力手段と並行に設けられ、分流した経路で制御パルス信号を所定電圧まで流しやすくし、且つ前記分流経路で所定電圧まで第1電源で昇圧して、スイッチング素子への制御パルス信号のターンオン時の電圧上昇を早める回路構成のものであり、
前記排出手段は、前記スイッチング素子への制御パルス信号の供給路に接続され、ターンオフ時に電流を第2電源へ排出する電流経路を形成して、スイッチング素子への制御パルス信号のターンオフの電圧降下を早める回路構成のものである、
ことを特徴とするスイッチング回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−65300(P2009−65300A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229610(P2007−229610)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】