説明

スイッチング素子の制御装置

【課題】実際に発生しているフライバックエネルギーを定量的に評価した上で保護動作を行うことができるスイッチング素子の制御装置を提供する。
【解決手段】NチャネルMOSFET2を介してコイル1に供給される電流をセンスMOSFET6及び検出用抵抗素子21により検出し、NチャネルMOSFET2をターンオフさせた際に発生し、ドレインに印加される逆起電圧をクランプ回路3によってクランプする。電流検出回路24は、クランプ回路3に発生するクランプ電圧によりNチャネルMOSFETがターンオンした際に、検出用抵抗素子21に流れる電流を複数の閾値と比較し、保護動作部26は、電流検出回路24の比較結果により、前記電流がNチャネルMOSFET2をターンオフさせた時点からの時間経過に対応する特定の閾値を超えていると判定されると、逆起電圧に基づくエネルギーを減少させるようにNチャネルMOSFET2の制御状態を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源とグランドとの間に誘導性負荷と共に直列に接続される、電圧駆動型の駆動用スイッチング素子を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コイルのようなL負荷を、直列に接続されたパワーMOSFETなどのスイッチング素子により駆動する装置については、フライバックダイオードを使用できない構成において、パワーMOSFETがオフした場合に発生する逆起電圧をクランプするクランプ回路を設け、フライバックエネルギーを吸収するように構成されているものがある。図9は、そのような負荷駆動装置の一例を示している。電源とグランドとの間には、コイル1とNチャネルMOSFET2との直列回路が接続されており、両者の共通接続点であるNチャネルMOSFET2のドレインとゲートとの間には、クランプ回路3が接続されている。
【0003】
クランプ回路3は、アノードが上記ドレインに接続されるダイオード4と、このダイオード4と逆方向に接続される複数個のツェナーダイオード5とで構成されている。また、NチャネルMOSFET2に対して並列に、電流検出用のNチャネルMOSFET(センスMOSFETと称す)6とNPNトランジスタ7aとの直列回路が接続されている。センスMOSFET6は、ゲートがNチャネルMOSFET2のゲートと共通に接続されており、NチャネルMOSFET2に流れる電流を所定比率で低下させた電流が流れるようになっている。
【0004】
NPNトランジスタ7aは、NPNトランジスタ7bとミラー対を構成しており、両者のベースはNPNトランジスタ7aのコレクタに接続されている。NPNトランジスタ7bのコレクタには、エミッタが制御電源線8に接続されたPNPトランジスタ9のコレクタが接続されている。PNPトランジスタ9のベースは定電流源10に接続されており、コレクタに定電流I1を流すように制御されている。
【0005】
また、制御電源線8にはPNPトランジスタ11のエミッタ及NPNトランジスタ12のコレクタが接続されており、PNPトランジスタ11のベースはNPNトランジスタ7bのコレクタに、PNPトランジスタ11のコレクタはNPNトランジスタ12のベースに接続されている。そして、NPNトランジスタ12のエミッタは、ドライブ回路13の入力端子に接続されている。ドライブ回路13は、図示しない制御部より出力される制御信号に応じてNチャネルMOSFET2及び6のゲートにゲート信号を出力する。
【0006】
上記の構成では、NチャネルMOSFET2がターンオフした場合に、クランプ回路3により逆起電圧をクランプしてNチャネルMOSFET2を保護している。このとき、クランプ電圧に応じてNチャネルMOSFET2がターンオンすることで電流を流し、この動作も併せてエネルギーの吸収を図っている。
【0007】
また、NチャネルMOSFET2がオンした際に流れる電流が一定比でセンスMOSFET6を介して流れ、その電流がNPNトランジスタ7a及び7bによりミラーされ、NPNトランジスタ7bのコレクタ電流I2として流れる。その電流I2が電流I1よりも少なければ、PNPトランジスタ11にベース電流は流れず、I2>I1,すなわち過電流が検出されると前記ベース電流I3が流れ、NPNトランジスタ12がオンしてドライブ回路13に電流を出力する。すると、ドライブ回路13は、NチャネルMOSFET2の駆動を停止して保護する。
【0008】
また、特許文献1には、以下のような構成が開示されている。上記と同様にNチャネルMOSFET74のドレイン−ゲート間にクランプ回路76を接続し、クランプ回路76を構成する1つのツェナーダイオード76cに、並列にNPNトランジスタ77を接続する。そして、NPNトランジスタ77を常にはオンさせてツェナーダイオード76cを短絡しておき、電流検出回路178により検出される電流が所定値を超えるとNPNトランジスタ77をオフして、NチャネルMOSFET74のゲート電位を低下させて電流を抑制する動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−232499号公報(図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のような従来構成は、流れる電流が瞬時的に閾値を超えたことをもって過電流保護動作を行っているだけであり、実際に発生しているフライバックエネルギーを定量的に評価はしていない。したがって、実際に発生しているエネルギー量としては保護が必要なレベルではないにもかかわらず、保護動作を行ってしまうケースも存在することが想定される。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、実際に発生しているフライバックエネルギーを定量的に評価した上で保護動作を行うことができるスイッチング素子の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載のスイッチング素子の制御装置によれば、駆動用スイッチング素子を介して流れる電流、すなわち誘導性負荷に供給される電流を検出用素子により検出し、駆動用スイッチング素子をターンオフさせた際に発生して駆動用スイッチング素子に印加される逆起電圧をクランプ回路によってクランプする。電流比較回路は、クランプ回路に発生するクランプ電圧によって駆動用スイッチング素子がターンオンした際に、検出用素子を介して流れる電流を複数の閾値と比較し、保護動作部は、電流比較回路の比較結果により、前記電流が、駆動用スイッチング素子をターンオフさせた時点からの時間経過に対応する特定の閾値を超えていると判定されると、逆起電圧に基づくエネルギーを減少させるように駆動用スイッチング素子の制御状態を変更する。
【0013】
すなわち、駆動用スイッチング素子をターンオフさせた際に発生した逆起電圧に基づくエネルギーの大きさは、上記電流の瞬時的な値を参照するのみでは正確に把握できない。そこで、本発明では、前記電流が、駆動用スイッチング素子をターンオフさせた時点からの経時変化を監視し、経過時間に応じて異なる閾値を超えたと判定すると、駆動用スイッチング素子の制御状態を変更する。したがって、逆起電圧に基づくエネルギー量をより正確に、定量的に評価した上で保護動作を適切に行うことができる。
【0014】
請求項2記載のスイッチング素子の制御装置によれば、検出用素子を、導通端子の一端が駆動用スイッチング素子の導通端子の一端と共に誘導性負荷に接続される検出用スイッチング素子と、この検出用スイッチング素子の導通端子の他端とグランドとの間に接続される抵抗素子とで構成する。このように構成すれば、駆動用スイッチング素子を介して誘導性負荷に通電される電流を、検出用スイッチング素子に小さい比率で分流させて検出できるので、検出を容易に行うことができる。
【0015】
請求項3記載のスイッチング素子の制御装置によれば、検出用素子を、駆動用スイッチング素子と直列に接続される抵抗素子で構成するので、この場合には、最小限の部品を追加するだけで電流を検出できる。
【0016】
請求項4記載のスイッチング素子の制御装置によれば、電流比較回路は、抵抗素子の端子電圧を、それぞれ異なる基準電圧と比較する複数のコンパレータで構成するので、電流の検出タイミングに応じた数のコンパレータを用意することで、電流の経時変化を監視できる。
【0017】
請求項5記載のスイッチング素子の制御装置によれば、検出用素子を、導通端子の一端が駆動用スイッチング素子の導通端子の一端と共に誘導性負荷に接続される検出用スイッチング素子と、この検出用スイッチング素子の導通端子の他端とグランドとの間に接続される制御側トランジスタとで構成する。そして、電流比較回路を、制御側トランジスタとミラー対を構成し、閾値としてそれぞれ異なる値の定電流が供給される複数のミラー側トランジスタと、それぞれ対応して設けられ、復数のミラー側トランジスタを介して流れる電流量がそれぞれに対応する定電流量を超えると、保護動作部に電流出力を行う電流出力部とで構成する。したがって、検出電流を、基準となる定電流と比較することができる。
【0018】
請求項6記載のスイッチング素子の制御装置によれば、検出用素子を、導通端子の一端が駆動用スイッチング素子の導通端子の一端と共に誘導性負荷に接続される検出用スイッチング素子と、この検出用スイッチング素子の導通端子の他端とグランドとの間に接続される制御側トランジスタとで構成する。そして、電流比較回路を、制御側トランジスタとミラー対を構成し、それぞれ等しい値の定電流が供給されると共に閾値として電流出力能力が異なる複数のミラー側トランジスタと、それぞれ対応して設けられ、復数のミラー側トランジスタを介して流れる電流量がそれぞれに対応する電流出力能力を超えると、保護動作部に電流出力を行う電流出力部とで構成する。したがって、請求項5と同様に、検出電流を、基準となる定電流と比較することができる。
【0019】
請求項7記載のスイッチング素子の制御装置によれば、保護動作部を、駆動用スイッチング素子をターンオフさせた時点から計時を開始し、計時結果に応じた計時信号を出力するタイマと、各計時信号と電流比較回路による比較結果とを論理合成することで、時間の経過に伴う電流値の低下が予め設定した変化軌跡を超えた状態になると、駆動用スイッチング素子の制御状態を変更させる信号を出力する論理回路部とで構成する。したがって、タイマの計時結果に応じて電流の経時変化を監視できる。
【0020】
請求項8記載のスイッチング素子の制御装置によれば、保護動作部は、駆動用スイッチング素子をフルオンさせる。すなわち、逆起電圧に基づくエネルギー量が有る程度の大きさを示した場合に駆動用スイッチング素子をフルオンさせれば、誘導性負荷に通電して上記エネルギーを消費させることができる。
【0021】
請求項9記載のスイッチング素子の制御装置によれば、保護動作部は、駆動用スイッチング素子の駆動を停止させるので、逆起電圧に基づくエネルギー量が有る程度の大きさを示す場合に駆動制御を停止して、回路素子を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施例であり、スイッチング素子制御装置の電気的構成を示す図
【図2】ON/OFF制御部がゲート信号レベルをハイからローに変化させた場合の各部の信号変化を示すタイミングチャート
【図3】保護動作部が保護動作を行う場合の図2相当図
【図4】第2実施例を示す図1相当図
【図5】第3実施例を示す図1相当図
【図6】図2相当図
【図7】第4実施例を示す図1相当図
【図8】第5実施例を示す図7相当図
【図9】従来技術を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施例)
以下、第1実施例について図1ないし図3を参照して説明する。尚、図9と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。センスMOSFET6(検出用素子,検出用スイッチング素子)のソースとグランドとの間には、検出用抵抗素子21(検出用素子)が接続されており、両者の共通接続点には、5つのコンパレータ22(1)〜22(5)の非反転入力端子が接続されている。これらのコンパレータ22(1)〜22(5)の反転入力端子には、それぞれ異なるレベルの基準電圧が与えられている。各基準電圧は、センスMOSFET6の電流比及び検出用抵抗素子21の抵抗値を考慮し、NチャネルMOSFET2(駆動用スイッチング素子)を介して通電される電流が1A,2A,3A,4A,5Aに相当する電圧に設定されている。そして、センスMOSFET6,検出用抵抗素子21及びコンパレータ22は電流検出回路23(電流比較回路)を構成している。
【0024】
各コンパレータ22(1)〜22(5)の出力端子は、それぞれ判定ロジック部24(論理回路部)の各入力端子に接続されている。また、判定ロジック部24には、カウンタ回路(タイマ)25により計時された計時信号0ms,1ms,2ms,3ms,4msが入力されている。尚、判定ロジック部24及びカウンタ回路25は、保護動作部26を構成している。判定ロジック部24は、ドライブ回路13に替わるON/OFF制御部27に対して保護動作信号を出力する。
【0025】
ON/OFF制御部27は、上記保護動作信号がインアクティブ(ロー)であればNチャネルMOSFET2に対してゲート信号を通常通り出力する。そして、保護動作信号がアクティブ(ハイ)となった場合は、フライバック電圧のエネルギー量が過剰であることを示すので、そのエネルギーから各回路素子等を保護するように、NチャネルMOSFET2に対するゲート信号の出力状態を変更する。
【0026】
ON/OFF制御部27からは、判定ロジック部24及びカウンタ回路25に対してON→OFF切替信号が与えられている。ON→OFF切替信号は、ON/OFF制御部27がNチャネルMOSFET2に出力するゲート信号の立下りタイミングを、ハイレベルからローレベルへの変化により示す信号である。カウンタ回路25は、ON→OFF切替信号のレベルがハイからローに変化すると、その時点を0msとして計時を開始し、そこから1ms,2ms,3ms,4msが経過する毎に対応する計時信号をアクティブにする。
【0027】
次に、本実施例の作用について図2及び図3を参照して説明する。図2は、ON/OFF制御部27が、NチャネルMOSFET2に出力するゲート信号をハイレベル(ON)からローレベル(OFF)に変化させた場合の各部の信号変化を示すタイミングチャートである。ゲート信号(入力信号)のレベルがハイからローに変化すると((a)参照)NチャネルMOSFET2がターンオフし、NチャネルMOSFET2のソースにフライバック電圧(逆起電圧)が印加される。すると、クランプ回路3を介してON/OFF制御部27の出力端子に電流が流れ、フライバック電圧がクランプされる((b)参照)。ここで、電源が車両のバッテリ(12V)であるとすると、クランプ電圧は例えば40V程度に設定される。
【0028】
この時、NチャネルMOSFET2及びセンスMOSFET6のゲートに印加される電圧と、NチャネルMOSFET2のソース電位(グランド)との電位差に応じて、NチャネルMOSFET2及びセンスMOSFET6はフルオンしない程度にターンオンするので、コイル1と検出用抵抗素子21とにそれぞれ電流が流れる。また、カウンタ回路25は、ゲート信号が立ち下がった時点で計時信号「0ms」をアクティブにして計時を開始する。
【0029】
図2(c),(d)に示すように、フライバック電圧が発生した瞬間に検出される電流値が5A程度であるとすると、電流検出回路23のコンパレータ22(1)〜22(5)は検出信号を全てアクティブにする。ここから、フライバック電圧が発生している期間が1ms,2ms,…と経過して行くと、センスMOSFET6及び検出用抵抗素子21を介して検出される電流値は漸減する。
【0030】
判定ロジック部24は、カウンタ回路25の出力信号による経過時間1ms〜4msの各時点について、電流検出回路23の信号出力状態に応じて、フライバック電圧により発生しているエネルギー(発熱量)の大きさが上限を超えたか否かを判定する。この期間にNチャネルMOSFET2を介して流れる電流による発熱量は、
(発熱量)=(電圧)×(電流2)×(時間)[J]
で表される。図2(d)に示すように、上記期間に流れる電流を、例えば1msでは4Aまで、2msでは3Aまで、3msでは2Aまで、1msでは1Aまでを上限として許容する。そして、各時点について上記の上限を1A以上、上回る電流が検出されると、判定ロジック部24は、ON/OFF制御部27に出力する保護動作信号をアクティブにするように内部のロジックが構成されている。
【0031】
上記の保護動作としては、例えば通常のNチャネルMOSFET2の制御状態にかかわらず、NチャネルMOSFET2をフルオンさせる。これにより、フライバック電圧に基づくエネルギーを電流として消費することで、その解消を図る。図3は、保護動作を行う場合の図2相当図である。図3では、2msを経過した直後に検出電流が3Aを超えたため、判定ロジック部24が保護動作信号をアクティブにして、NチャネルMOSFET2をフルオンさせている。
【0032】
以上のように本実施例によれば、NチャネルMOSFET2を介してコイル1(誘導性負荷)に供給される電流をセンスMOSFET6及び検出用抵抗素子21により検出し、NチャネルMOSFET2をターンオフさせた際に発生し、ドレインに印加されるフライバック電圧をクランプ回路3によってクランプする。電流検出回路24は、クランプ回路3に発生するクランプ電圧によりNチャネルMOSFETがターンオンした際に、検出用抵抗素子21に流れる電流を複数の閾値と比較し、保護動作部26は、電流検出回路24の比較結果により、前記電流が、NチャネルMOSFET2をターンオフさせた時点からの時間経過に対応する特定の閾値を超えていると判定されると、フライバック電圧に基づくエネルギーを減少させるようにNチャネルMOSFET2の制御状態を変更するようにした。したがって、フライバック電圧に基づくエネルギー量をより正確に、定量的に評価した上で、NチャネルMOSFET2及びコイル1等の保護動作を適切に行うことができる。
【0033】
また、電流検出を、センスMOSFET6と検出用抵抗素子21により行うようにしたので、NチャネルMOSFET2を介してコイル1に通電される電流を小さい比率で分流させて検出でき、検出を容易に行うことができる。そして、電流比較回路24を、検出用抵抗素子21の端子電圧を、それぞれ異なる基準電圧と比較する複数のコンパレータ22で構成したので、電流の検出タイミングに応じた数のコンパレータ22を用意することで、電流の経時変化を監視できる。
【0034】
加えて、保護動作部26は、NチャネルMOSFET2をターンオフさせた時点から計時を開始し、計時結果に応じた計時信号を出力するカウンタ回路25と、各計時信号と電流検出回路24による比較結果とを論理合成することで、時間の経過に伴う電流値の低下が予め設定した変化軌跡を超えた状態になると、駆動用スイッチング素子の制御状態を変更させる信号を出力する判定ロジック部24とで構成したので、タイマ回路25の計時結果に応じて電流の経時変化を監視できる。また、保護動作部26は、保護動作としてNチャネルMOSFET2をフルオンさせるので、コイル1に通電して上記エネルギーを消費させることができる。
【0035】
(第2実施例)
図4は第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第2実施例では、センスMOSFET6を削除しており、検出用抵抗素子31を、NチャネルMOSFET2のソースとグランドとの間に挿入して、電流検出回路32(電流比較回路)を構成している。このように構成すれば、検出用抵抗素子31には、第1実施例の場合よりも大きな電流が流れるが、第1実施例と同様に検出を行うことができる。
但し、この場合、検出用抵抗素子31の端子電圧の上昇により、NチャネルMOSFET2のゲート−ソース間電圧が変動するが、その変動によりNチャネルMOSFET2のオン状態に影響を及ぼさないように検出用抵抗素子31の抵抗値を設定する必要がある。
【0036】
以上のように第2実施例によれば、電流検出回路32を、NチャネルMOSFET2と直列に接続される検出用抵抗素子31により電流検出を行うように構成したので、最小限の部品を追加するだけで電流を検出できる。
【0037】
(第3実施例)
図5及び図6は第3実施例であり、第1実施例と異なる部分のみ説明する。第1及び第2実施例は、ローサイド駆動方式に適用した構成例であったが、第3実施例はハイサイド駆動方式に適用した構成例を示す。コイル1の一端はグランドに接続されており、電源とコイル1の他端との間にNチャネルMOSFET2が接続されている。センスMOSFET6のソースは、NチャネルMOSFET2のソースと共に電源に接続されている。また、NチャネルMOSFET2のゲート,ソース間には、ツェナーダイオード33が接続されている。そして、第1実施例の電流検出回路23にツェナーダイオード33を加えたものが電流検出回路34(電流比較回路)を構成している。
また、ON/OFF制御部27に替わるON/OFF制御部35は、NチャネルMOSFET2及びセンスMOSFET6をハイサイド駆動するため、ゲート駆動用電源を生成する昇圧回路(図示せず)を内蔵している。
【0038】
次に、第3実施例の作用について、図2相当図である図6を参照して説明する。ハイサイド駆動方式の場合、NチャネルMOSFET2がターンオフした場合に、そのソースに現れるフライバック電圧は、図6(b)に示すように負電圧となる。この時、NチャネルMOSFET2のゲート,ソース間電圧はツェナーダイオード33のツェナー電圧となるため、NチャネルMOSFET2及びセンスMOSFET6がターンオンして検出用抵抗素子に電流が流れる。そして、図6(c),(d)に示す判定ロジック部24の動作については、第1実施例と同様である。
以上のように構成される第3実施例によれば、ハイサイド駆動方式に適用した場合についても、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0039】
(第4実施例)
図7は、第4実施例であり、第1実施例と異なる部分について説明する。第4実施例は図7(a)に示すように、第1実施例の電流検出回路23を電流検出回路41(電流比較部)に置き換えて構成したものである。電流検出回路41は、センスMOSFET6を介して流れる電流を電圧変換することなく、直接基準電流と比較して検出を行う構成である。制御電源線42とグランドとの間には、定電流源43が接続されており、この定電流源43は、5つのPNPトランジスタT1〜T5がそれぞれ異なる値の定電流I1〜I5を流すように、各ベースにベース電流を供給する。
【0040】
PNPトランジスタT1〜T5は、実際には図7(b)に示すように、サイズが異なるトランジスタであり、PNPトランジスタT5を基準として、T4,T3,T2,T1は2倍,3倍,4倍,5倍の電流を供給するように構成されている。PNPトランジスタT1〜T5のエミッタは制御電源線42に接続されており、コレクタは、それぞれNPNトランジスタT6〜T10(ミラー側トランジスタ)のコレクタに接続されている。これらのNPNトランジスタT6〜T10のエミッタは、グランドに接続されている。
【0041】
NPNトランジスタ44(検出用素子,制御側トランジスタ)は、検出用抵抗素子21に置き換わって接続されており、そのベースは、自身のコレクタに接続されていると共にNPNトランジスタT6〜T10のベースに接続されている。すなわち、NPNトランジスタ44と、NPNトランジスタT6〜T10とはミラー対を構成しており、NPNトランジスタT6〜T10の特性は同一である。
【0042】
また、制御電源線42には、PNPトランジスタT11〜T15(電流出力部)のエミッタと、NPNトランジスタT16〜T20のコレクタ(電流出力部)とが接続されている。そして、PNPトランジスタT11〜T15のベースは、それぞれNPNトランジスタT6〜T10のコレクタに接続され、NPNトランジスタT16〜T20のベースは、それぞれPNPトランジスタT11〜T15のコレクタに接続されている。
【0043】
次に、第4実施例の作用について説明する。NPNトランジスタT5を介して流れる定電流I5は、NチャネルMOSFET2を介して流れる電流1Aに相当する電流値に設定されている。センスMOSFET6を介して流れる電流が上記電流1Aの相当値未満であれば、NPNトランジスタT10はオフしており、PNPトランジスタT15及びNPNトランジスタT20もオフしている。そして、センスMOSFET6を介して流れる電流が、上記電流1Aの相当値以上になると、NPNトランジスタT10がオンするので、PNPトランジスタT15及びNPNトランジスタT20もオンする。すると、判定ロジック部24IにNPNトランジスタT20からのエミッタ電流が供給され、判定ロジック部24Iは、その電流出力を例えば図示しない入力段の検出用抵抗に発生する電圧により検出する。
【0044】
また、NPNトランジスタT4を介して流れる定電流I4は、NチャネルMOSFET2を介して流れる電流(負荷電流)2Aに相当する電流値に設定されており、センスMOSFET6を介して流れる電流が上記電流2Aの相当値以上になると、NPNトランジスタT9及びT10が同時にオンするので、PNPトランジスタT15及びNPNトランジスタT20に加えて、PNPトランジスタT14及びNPNトランジスタT19もオンする。
【0045】
そして、NPNトランジスタT3,T2,T1を介して流れる定電流I3,I2,I1は、それぞれNチャネルMOSFET2を介して流れる電流3A,4A,5Aに相当する電流値に設定されている。したがって、センスMOSFET6を介して流れる電流が上記電流5Aの相当値以上になると、NPNトランジスタT10〜T6が同時にオンするので、PNPトランジスタT15〜T11及びNPNトランジスタT16〜T20が全てオンすることになる。したがって、判定ロジック部24Iは、入力段における電流検出部分を除いて、ロジック動作としては第1実施例と同様になる。
【0046】
以上のように第4実施例によれば、検出用素子を、センスMOSFET6とNPNトランジスタ44とで構成し、電流検出回路41を、NPNトランジスタ44とミラー対を構成し、閾値としてそれぞれ異なる値の定電流I1〜I5が供給されるNPNトランジスタT6〜T10と、それぞれ対応して設けられ、NPNトランジスタT6〜T10を介して流れる電流量がそれぞれに対応する定電流量I1〜I5を超えると、保護動作部26に電流出力を行うPNPトランジスタT11〜T15及びNPNトランジスタT16〜T20の対で構成する。したがって、検出電流を、基準となる定電流I1〜I5と比較することで、第1実施例と同様に電流検出を行うことができる。
【0047】
(第5実施例)
図8は第5実施例であり、第4実施例と異なる部分のみ説明する。第5実施例の電流検出回路41’は、第4実施例の電流検出回路41におけるPNPトランジスタT1〜T5をPNPトランジスタT1’〜T5’に置き換え、NPNトランジスタT6〜T10をNPNトランジスタT6’〜T10’に置き換えて構成されている。電流検出回路41’では、PNPトランジスタT1’〜T5’は何れも、第4実施例のPNPトランジスタT1に等しい定電流I1を供給するように構成されている。そして、NPNトランジスタT6’〜T10’は、図8(b)に示すようにサイズが異なるトランジスタで構成され、PNPトランジスタT6’を基準として、T7’,T8’,T9’,T10’は2倍,3倍,4倍,5倍の電流を出力する能力を有するように構成されている。
【0048】
第5実施例の作用については第4実施例と同様になる。センスMOSFET6,NPNトランジスタ44を介して流れる電流が負荷電流値1A相当以上になると、NPNトランジスタ10’がオンしてPNPトランジスタT15及びNPNトランジスタT20もオンする。NPNトランジスタ9’の電流出力能力はNPNトランジスタ10’の4/5に設定されており、NPNトランジスタ44を介して流れる電流が負荷電流値2A相当以上になると、NPNトランジスタ10’及び9’がオンする。以下、NPNトランジスタ8’,7’,6’の電流出力能力はNPNトランジスタ10’の3/5,2/5,1/5に設定されていることで、第4実施例と同様の動作となる。
【0049】
以上のように第5実施例によれば、電流検出回路41’を、それぞれ等しい値の定電流が供給されると共に閾値としての電流出力能力が異なる複数のNPNトランジスタT6’〜T10’と、それぞれ対応して設けられ、NPNトランジスタT6’〜T10’を介して流れる電流量がそれぞれに対応する電流出力能力を超えると、保護動作部26に電流出力を行うPNPトランジスタT11〜T15及びNPNトランジスタT16〜T20の対で構成する。したがって、第4実施例と同様に、検出電流を、それぞれ基準となる定電流と比較することができる。
【0050】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
例えば第1実施例において、保護動作部26が保護動作信号をアクティブにした場合に、ON/OFF制御部26は、以降のNチャネルMOSFET2の駆動を停止させるようにしても良い。この場合も、フライバック電圧に基づくエネルギー量が有る程度の大きさを示す場合に回路素子を保護することができる。
【0051】
NチャネルMOSFET2がターンオフしてからの経過時間と、各時間に対応して設定される閾値の具体数値は、個別の設計に応じて適宜変更すれば良い。クランプ電圧についても同様である。
駆動用スイッチング素子,検出用スイッチング素子はPチャネルMOSFETであっても良い。
【符号の説明】
【0052】
図面中、1はコイル(誘導性負荷)、2はNチャネルMOSFET(駆動用スイッチング素子)、6はセンスMOSFET(検出用素子,検出用スイッチング素子)、21は検出用抵抗素子(検出用素子)、22はコンパレータ、23は電流検出回路(電流比較回路)、24は判定ロジック部(論理回路部)、25はカウンタ回路(タイマ)、26は保護動作部、31は検出用抵抗素子、32,34,41,41’は電流検出回路(電流比較回路)、44はNPNトランジスタ(検出用素子,制御側トランジスタ)、T6〜T10はNPNトランジスタ(ミラー側トランジスタ)、T11〜T20はPNPトランジスタ(電流出力部)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源とグランドとの間に誘導性負荷と共に直列に接続される、電圧駆動型の駆動用スイッチング素子をスイッチング制御する制御装置において、
前記駆動用スイッチング素子を介して流れる電流を検出する検出用素子と、
前記駆動用スイッチング素子をターンオフさせた際に発生し、前記駆動用スイッチング素子に印加される逆起電圧をクランプするクランプ回路と、
このクランプ回路に発生するクランプ電圧により前記駆動用スイッチング素子がターンオンした際に、前記検出用素子を介して流れる電流を複数の閾値と比較する電流比較回路と、
この電流比較回路の比較結果により、前記電流が、前記駆動用スイッチング素子をターンオフさせた時点からの時間経過に対応する特定の閾値を超えていると判定されると、前記逆起電圧に基づくエネルギーを減少させるように前記駆動用スイッチング素子の制御状態を変更する保護動作部とを備えることを特徴とするスイッチング素子の制御装置。
【請求項2】
前記検出用素子は、導通端子の一端が前記駆動用スイッチング素子の導通端子の一端と共に前記誘導性負荷に接続される検出用スイッチング素子と、この検出用スイッチング素子の導通端子の他端とグランドとの間に接続される抵抗素子とで構成されることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の制御装置。
【請求項3】
前記検出用素子は、前記駆動用スイッチング素子と直列に接続される抵抗素子で構成されることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の制御装置。
【請求項4】
前記電流比較回路は、前記抵抗素子の端子電圧を、それぞれ異なる基準電圧と比較する複数のコンパレータで構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載のスイッチング素子の制御装置。
【請求項5】
前記検出用素子は、導通端子の一端が前記駆動用スイッチング素子の導通端子の一端と共に前記誘導性負荷に接続される検出用スイッチング素子と、この検出用スイッチング素子の導通端子の他端とグランドとの間に接続される制御側トランジスタとで構成され、
前記電流比較回路は、前記制御側トランジスタとミラー対を構成し、前記閾値としてそれぞれ異なる値の定電流が供給される複数のミラー側トランジスタと、
前記復数のミラー側トランジスタにそれぞれ対応して設けられ、前記復数のミラー側トランジスタを介して流れる電流量がそれぞれに対応する定電流量を超えると、前記保護動作部に電流出力を行う電流出力部とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の制御装置。
【請求項6】
前記検出用素子は、導通端子の一端が前記駆動用スイッチング素子の導通端子の一端と共に前記誘導性負荷に接続される検出用スイッチング素子と、この検出用スイッチング素子の導通端子の他端とグランドとの間に接続される制御側トランジスタとで構成され、
前記電流比較回路は、前記制御側トランジスタとミラー対を構成し、それぞれ等しい値の定電流が供給されると共に、前記閾値としてそれぞれ異なる電流出力能力を備える複数のミラー側トランジスタと、
前記復数のミラー側トランジスタにそれぞれ対応して設けられ、前記復数のミラー側トランジスタを介して流れる電流量が、それぞれに対応する電流出力能力を超えると、前記保護動作部に電流出力を行う電流出力部とで構成されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の制御装置。
【請求項7】
前記保護動作部は、前記駆動用スイッチング素子をターンオフさせた時点から計時を開始して、計時結果に応じた経時信号を出力するタイマと、前記計時信号と、前記電流比較回路による比較結果とを論理合成することで、時間の経過に伴う電流値の低下が予め設定した変化軌跡を超えた状態になると、前記駆動用スイッチング素子の制御状態を変更させる信号を出力する論理回路部とを備えることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載のスイッチング素子の制御装置。
【請求項8】
前記保護動作部は、前記駆動用スイッチング素子をフルオンさせることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載のスイッチング素子の制御装置。
【請求項9】
前記保護動作部は、前記駆動用スイッチング素子の駆動を停止させることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載のスイッチング素子の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−26769(P2013−26769A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158793(P2011−158793)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】