説明

センサーデバイス、およびその製造方法

【課題】小型で信頼性の高いセンサーデバイス、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】センサーデバイス1は、第1の面10aに第1の電極11を有する半導体装置としてのICチップ10と、基部21、前記基部21から延伸された振動部を有し、第1の面10aと対向する第2の面20aに第2の電極としての引き出し電極29を有する振動片としての振動ジャイロ素子20と、を備えている。第1の面10aには、絶縁樹脂からなり第1の電極11と配線36を介して電気的に接続された第3の電極37の少なくとも一部を露出させる開口部32aを有する筒状支持部32が設けられ、第1の面10aおよび開口部32aにより形成された凹部に導電性接着剤98が埋設され、引き出し電極29に設けられたバンプ12が凹部内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーデバイス、および、センサーデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度や角速度などをセンシングするセンサーデバイスにおいては、振動片(センサー素子)と、その振動片を駆動する駆動回路などの回路素子とを備えた構成のセンサーデバイスが知られている。
例えば、特許文献1には、振動片としての振動ジャイロ素子(ジャイロ振動片)と、回路素子としての半導体装置とを備えたセンサーデバイスとしてのジャイロセンサーが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のジャイロセンサーの構成では、半導体装置が支持基板に固着され、支持基板に形成されたリード配線部と電気的に接続されている。また、センサー素子(振動ジャイロ素子)は、支持基板に固着されたリード線に接続されることによって、半導体装置と空隙を保ち該半導体装置と平面視で重なるように配置されている。このように、弾性を有するリード線によってセンサー素子を保持することにより、外部からセンサー素子に加わる衝撃をリード線の撓みによって緩和し、センサー素子に外力が加わることによる誤検出などの悪影響を抑制する構成となっている。
【0004】
近年、電子機器の小型・薄型化が進展しているのに伴い、電子機器に搭載されるセンサーデバイスにも小型・薄型化の要求が高まっているが、特許文献1に記載のジャイロセンサーでは、外部から加わる衝撃によりリード線が撓んだ場合に、半導体装置と、センサー素子とが互いに干渉しないように、両者間にリード線の撓み量を超える空隙を設ける必要がある。この結果、センサーデバイスの厚さが増加し、ジャイロセンサーの総厚が厚くする要因となってしまうという問題がある。
発明者は、センサーデバイスの薄型化を図るための半導体装置とセンサー素子との接合方法として、半導体装置の接続電極またはセンサー素子の接続電極のいずれか一方に突起電極としてのバンプを形成し、バンプと、そのバンプを形成した接続電極とは異なる他方の接続電極とを導電性接着剤(導電ペースト)により接合する実装方法(例えば、特許文献2を参照)が有効であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−292079号公報
【特許文献2】特許第3030271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の実装方法では、導電性接着剤を介してバンプと接続電極とを接合する際に、ペースト状の導電性接着剤が流れ出しやすいために、塗布量の制御が困難であったり、望まない箇所に流れ出して不具合を生じる虞があったりする問題があった。このため、導電性接着剤の量が不足して接合強度が低下したり、流れ出した導電性接着剤による短絡不良が発生したりする虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかるセンサーデバイスの製造方法は、第1の面に第1の電極を有する半導体装置上に、基部、前記基部から延伸された振動部を有し、前記第1の面と対向する第2の面に第2の電極を有する振動片が配置されたセンサーデバイスの製造方法であって、前記第1の面に、絶縁樹脂からなり前記第1の電極または前記第1の電極と配線を介して電気的に接続された第3の電極の少なくとも一部を露出させる開口部を有する筒状支持部を設ける工程と、前記第2の電極に突起電極を設ける工程と、前記第1の面および前記開口部により形成された凹部に導電性接着剤を入れる工程と、前記突起電極を前記凹部内に配置させて前記半導体装置上に前記振動片を載置する工程と、前記導電性接着剤を固化させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
上記構成のセンサーデバイスの製造方法によれば、半導体装置上に筒状支持部を介して振動片を載置することにより、振動片の振動部と半導体装置との間に隙間を空けた状態で半導体装置上に振動片が載置されたセンサーデバイスを製造することができる。
このとき、筒状支持部の開口部と第1の面とにより形成された凹部に導電性接着剤を入れるので、導電性接着剤の量の調整が容易になるとともに、導電性接着剤が周囲に流れ出すのを回避することができる。
また、導電性接着剤が入れられた凹部内に振動片の突起電極を配置させてから導電性接着剤を固化させるので、振動片の位置出しが容易であるとともに、突起電極の表面の広い範囲に導電性接着剤が接触することによって振動片を強固に固定することができる。
したがって、信頼性および耐衝撃性が高いセンサーデバイスを効率的に製造することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例にかかるセンサーデバイスの製造方法において、前記筒状支持部を設ける工程で、前記筒状支持部の前記振動片側となる面を前記第1の面と平行に形成し、前記半導体装置上に前記振動片を載置する工程で、前記振動片を前記筒状支持部で保持することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、容易に振動片を半導体装置の第1の面と平行に固定することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例にかかるセンサーデバイスの製造方法において、前記凹部に前記導電性接着剤を入れる工程で、前記導電性接着剤の量を前記凹部に収まる量に調整することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、導電性接着剤が周囲の望まない部分に流れ出すのを回避することができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例にかかるセンサーデバイスの製造方法において、前記筒状支持部を設ける工程で、前記開口部の形状を、前記振動片側から前記第1の面側に狭まる断面テーパー形状に形成することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、振動片を半導体装置上に載置する工程で、筒状支持部の内壁が振動片の突起電極のガイドとなって位置合わせが容易になり、固定する振動片の位置精度を向上させることができる。
【0016】
[適用例5]上記適用例にかかるセンサーデバイスの製造方法において、前記筒状支持部を設ける工程の前に、前記第1の面の前記筒状支持部を形成する領域を含む領域に絶縁樹脂層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、半導体装置と筒状支持部との間に設けられた絶縁樹脂層が有する弾性により、外部から加わる衝撃などが緩和されて振動片に伝達され難くなることから、振動片の安定した振動モードや周波数温度特性が保持され、感度の高いセンサーデバイスを製造することができる。
【0018】
[適用例6]本適用例にかかるセンサーデバイスは、第1の面に第1の電極を有する半導体装置と、基部、前記基部から延伸された振動部を有し、前記第1の面と対向する第2の面に第2の電極を有する振動片と、を備え、前記第1の面には、絶縁樹脂からなり前記第1の電極または前記第1の電極と配線を介して電気的に接続された第3の電極の少なくとも一部を露出させる開口部を有する筒状支持部が設けられ、前記第1の面および前記開口部により形成された凹部に導電性接着剤が埋設され、前記第2の電極に設けられた突起電極が前記凹部内に配置されたことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、半導体装置上に筒状支持部を介して振動片を載置することにより、振動片の振動部と半導体装置との間に隙間を空けた状態で半導体装置上に振動片が載置されたセンサーデバイスを提供することができる。
また、筒状支持部の開口部と第1の面とにより形成された凹部に振動片の突起電極を配置させ、その凹部内に導電性接着剤を入れて固化させた構成となっているので、導電性接着剤の量の調整が容易に行え、導電性接着剤が周囲に流れ出すのを回避できるとともに、振動片の位置出しが容易に行え、半導体装置上に振動片を強固に固定することができる。
したがって、信頼性および耐衝撃性が高いセンサーデバイスを提供することができる。
【0020】
[適用例7]上記適用例にかかるセンサーデバイスにおいて、前記筒状支持部の前記振動片側の面が前記第1の面と平行に形成され、前記振動片が前記筒状支持部で保持されたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、振動片を半導体装置の第1の面と平行に固定することができる。
【0022】
[適用例8]上記適用例にかかるセンサーデバイスにおいて、前記開口部の形状が、前記振動片側から前記第1の面側に狭まる断面テーパー形状を呈することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、筒状支持部の内壁が振動片の突起電極のガイドとなって位置合わせが容易となり、固定する振動片の位置精度を向上させることができる。
【0024】
[適用例9]上記適用例にかかるセンサーデバイスにおいて、前記第1の面と前記筒状支持部との間に絶縁樹脂層が形成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、半導体装置と筒状支持部との間に設けられている絶縁樹脂層によって外部から振動片に加わる衝撃などが吸収され緩和されるので、耐衝撃性が高く、振動モードや周波数温度特性がより安定した高感度のセンサーデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】センサーデバイスの一実施形態の概略構成を示す模式図であり、(a)は、振動片としての振動ジャイロ素子側(上側)から俯瞰した平面図、(b)は、(a)のA−A線断面図。
【図2】センサーデバイスの半導体装置としてのICチップと振動ジャイロ素子との接合部分を拡大して説明する模式図であり、(a)は、ICチップの筒状支持部形成領域を上側から俯瞰した平面図、(b)は、(a)の正断面図。
【図3】振動片としての振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図。
【図4】振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図。
【図5】センサーデバイスの製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0028】
図1は、センサーデバイスの一実施形態の概略構成を示す模式図であり、(a)は、振動片としての振動ジャイロ素子側(上側)から俯瞰した平面図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
また、図2は、センサーデバイスの半導体装置としてのICチップとの振動ジャイロ素子との接合部分を拡大して説明する模式図であり、(a)は、ICチップの筒状支持部形成領域を上側から俯瞰した平面図、(b)は、筒状支持部を介した接合部分の正断面図である。
【0029】
図1に示すように、センサーデバイス1は、半導体装置としてのICチップ10と、振動片としての振動ジャイロ素子(ジャイロ振動片)20と、を備えている。
ICチップ10の第1の面(能動面)10a側には、絶縁樹脂層としての応力緩和層15と、応力緩和層15上に設けられた複数の筒状支持部32とが設けられている。
振動ジャイロ素子20には突起電極としてのバンプ12が設けられている。
そして、振動ジャイロ素子20は、筒状支持部32の開口部32a内にバンプ12を配置させた態様で、ICチップ10の第1の面10a側に保持されている。
【0030】
まず、センサーデバイス1における振動片としての振動ジャイロ素子20について詳細に説明する。
振動ジャイロ素子20は、圧電材料である水晶を基材(主要部分を構成する材料)として形成されている。水晶は、電気軸と呼ばれるX軸、機械軸と呼ばれるY軸及び光学軸と呼ばれるZ軸を有している。
そして、振動ジャイロ素子20は、水晶結晶軸において直交するX軸及びY軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、平面と直交するZ軸方向に所定の厚みを有している。なお、所定の厚みは、発振周波数(共振周波数)、外形サイズ、加工性などにより適宜設定される。
【0031】
また、振動ジャイロ素子20を成す平板は、水晶からの切り出し角度の誤差を、X軸、Y軸及びZ軸の各々につき多少の範囲で許容できる。例えば、X軸を中心に0度から2度の範囲で回転して切り出したものを使用することができる。Y軸及びZ軸についても同様である。
振動ジャイロ素子20は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)により形成されている。なお、振動ジャイロ素子20は、1枚の水晶ウェハーから複数個取りすることが可能である。
【0032】
図1(a)に示すように、本実施形態の振動ジャイロ素子20は、ダブルT型と呼ばれる構成となっている。詳述すると、振動ジャイロ素子20は、中心部分に位置する基部21と、基部21からY軸に沿って延伸された振動部としての一対の検出用振動腕22a,22bと、検出用振動腕22a,22bと直交するように、基部21からX軸に沿って延伸された一対の連結腕23a,23bと、検出用振動腕22a,22bと平行になるように、各連結腕23a,23bの先端側からY軸に沿って延伸された振動部としての各一対の駆動用振動腕24a,24b,25a,25bと、を備えている。
【0033】
各検出用振動腕22a,22bの先端側には、他の部分より幅が大きい(X軸方向の長さが大きい)略矩形状の錘部26a,26bを有している。同様に、二対の駆動用振動腕24a,24b及び駆動用振動腕25a,25bそれぞれの先端側には、他の部分より幅が大きい略矩形状の錘部27a,27b及び錘部28a,28bを有している。これら錘部26a,26b,27a,27b,28a,28bによって、振動ジャイロ素子20は、小型化を図りながら角速度の検出感度を向上させることができる。
【0034】
また、振動ジャイロ素子20は、一対の固定部19a,19bを備えている。このうち一方の固定部19aは、一対の検出用振動腕22a,22bのうちの一方の検出用振動腕22aに対してY軸の正の方向に配置されている。また、他方の固定部19bは、一対の検出用振動腕22a,22bのうち他方の検出用振動腕22bに対してY軸の負の方向側に配置されている。各固定部19a,19bのX軸方向の長さは、各検出用振動腕22a,22bの錘部26a,26bのX軸方向の長さよりも大きく、例えば、一対の連結腕23a,23b及び基部21のX軸方向の長さの合計と同じ程度である。なお、図示の例では、各固定部19a,19bの平面形状は略矩形であるが、特に限定されるものではない。固定部19a,19bは、各検出用振動腕22a,22bと、各駆動用振動腕24a,24b,25a,25bとから離間して配置されている。各固定部19a,19bは、バンプ12を介してICチップ10に固定される部位となる。
【0035】
図1(a)に示すように、基部21から一方の固定部19aまでの間には、一対の梁9a,9cが設けられている。このうち一方の梁9aは、基部21から検出用振動腕22aと駆動用振動腕24aとの間を通って延出されて固定部19aに接続され、他方の梁9cは、基部21から検出用振動腕22aと駆動用振動腕25aとの間を通って延出されて固定部19aに接続されている。
同様に、基部21から他方の固定部19bまでの間には、一対の梁9b,9dが設けられている。このうち一方の梁9bは、基部21から検出用振動腕22bと駆動用振動腕24bとの間を通って延出されて固定部19bに接続され、他方の梁9dは、基部21から検出用振動腕22bと駆動用振動腕25bとの間を通って延出されて固定部19bに接続されている。各梁9a,9b,9c,9dは、図示するようなS字形状をそれぞれ有することができる。このように、細長く蛇行した形状を有する梁9a〜9dによって各固定部19a,19bと基部21が接続されることによって、振動ジャイロ素子20の要部がX軸方向及びY軸方向に弾性を得ることができる。
【0036】
基部21の中心は、振動ジャイロ素子20の重心位置としての重心Gであることができる。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交し、重心Gを通るものとする。振動ジャイロ素子20は、重心Gに関して点対称であることができる。即ち、振動ジャイロ素子20は、XZ平面に関して面対称であり、かつYZ平面に関して面対称であることができる。
【0037】
また、振動ジャイロ素子20は、検出用振動腕22a,22bに、図示しない検出電極が形成され、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bに、図示しない駆動電極が形成されている。
振動ジャイロ素子20は、検出用振動腕22a,22bで、角速度を検出する検出振動系を構成し、連結腕23a,23bと駆動用振動腕24a,24b,25a,25bとで、振動ジャイロ素子20を駆動する駆動振動系を構成している。
【0038】
振動ジャイロ素子20は、平面視において、ICチップ10と重なるようにICチップ10の第1の面10a側に配置されている。
なお、振動ジャイロ素子20は、基部21及び各振動腕の表裏面を主面とする。ここでは、ICチップ10の第1の面10aと対向する側の面を第2の面20aと呼ぶ。
【0039】
振動ジャイロ素子20の各固定部19a,19bそれぞれの第2の面20aには、上記各検出電極、各駆動電極から引き出された第2の電極としての引き出し電極29が形成されている。各引き出し電極29には、突起電極としてのバンプ12が設けられている。バンプ12は、例えば、金(Au)ワイヤーを用いて形成されたスタッドバンプを利用することができる。なお、バンプ12はスタッドバンプに限らず、導体からなり所定の厚みを有する突起状の電極であればよい。
【0040】
次に、半導体装置としてのICチップ10について図面に沿って説明する。
ICチップ10には、第1の面10a側にトランジスターやメモリー素子などの半導体素子を含んで構成される集積回路(図示せず)が形成されている。この集積回路には、振動ジャイロ素子20を駆動振動させるための駆動回路と、角速度が加わったときに振動ジャイロ素子20に生じる検出振動を検出する検出回路とが備えられている。
ICチップ10は、図1及び図2に示すように、第1の面10a側に設けられた複数の第1の電極(電極パッド)11と、第1の面10aとバンプ12との間に積層された絶縁膜14と、第1の面10a側に設けられた接続用端子13とを備えている。
【0041】
第1の電極11は、ICチップ10の集積回路に直接導通して形成されたものである。また、第1の面10a上には、パッシベーション膜となる絶縁膜14が形成されており、この絶縁膜14には、第1の電極11上に開口部14aが形成されている。これにより、各第1の電極11は、絶縁膜14の開口部14a内にて外側に露出した状態となっている。
なお、絶縁膜14は、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si34)などの無機絶縁材料によって形成することができる。
また、絶縁膜14は、例えばポリイミド樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、BCB(benzocyclobutene)及びPBO(polybenzoxazole)などの樹脂を用いて形成することもできる。
【0042】
ICチップ10の第1の面10aの絶縁膜14上において、少なくとも振動ジャイロ素子20の引き出し電極29と平面視で重なる領域には、弾性を有する絶縁性樹脂からなる絶縁樹脂層としての応力緩和層15が形成されている。
また、応力緩和層15上の、振動ジャイロ素子20の複数の引き出し電極29と対応する位置には、各第1の電極11に対応した第3の電極(再配置電極)37が配設されている。各第3の電極37は、対応する第1の電極11と配線36を介して電気的に接続されている。これらの配線36、および第3の電極37により、ICチップ10の集積回路の電極である第1の電極11を振動ジャイロ素子20の引き出し電極29に対応する位置に再配置するための再配置配線が構成されている。このような再配置配線は、ICチップ10の集積回路の微細設計によって位置の制約が大きい第1の電極11に対して、振動ジャイロ素子20との接続に供する第3の電極37の位置を任意にずらして配置し、ICチップ10上における振動ジャイロ素子20との接続位置の自由度を高めるための重要な構成要素である。
【0043】
各第3の電極37上には、弾性を有する絶縁性樹脂からなり中央に第3の電極37を露出させる開口部32aを有した筒状支持部32が形成されている。開口部32aは、振動ジャイロ素子20のバンプ12が入る大きさを有している。
図1および図2に示すように、筒状支持部32は、頂部側(振動ジャイロ素子20が載置される側)の面が、第1の面10aと略平行に形成されているとともに、開口部32aが頂部側から第1の面10a側に狭まる断面テーパー形状を呈して形成されている。
【0044】
図2(b)に示すように、第1の面10aおよび筒状支持部32の開口部32aにより形成された凹部には例えば銀(Ag)ペーストなどの導電性接着剤98が埋設され、その凹部内にバンプ12を配置させた態様で、ICチップ10上に振動ジャイロ素子20が接合されている。ここで、導電性接着剤98は、筒状支持部32の凹部内に収まる量で、且つ、バンプ12を介した振動ジャイロ素子20の接合強度を十分確保できる量に調整されている。
これにより、ICチップ10において、各第1の電極11から配線36によって第3の電極37に引き出された集積回路が、導電性接着剤98、バンプ12、および、引き出し電極29を介して振動ジャイロ素子20と電気的に接続されるとともに、十分な接合強度にて機械的に接続される。このとき、筒状支持部32が有する高さによって、振動ジャイロ素子20とICチップ10との間に隙間が設けられている。さらに、筒状支持部32の頂部側(振動ジャイロ素子20が載置される側)の面が、第1の面10aと略平行に形成されていることにより、振動ジャイロ素子20がICチップ10の第1の面10aと略平行に固定される。
【0045】
応力緩和層15、および、筒状支持部32は、例えばポリイミド等の弾性樹脂材料により形成することができる。応力緩和層15は、例えば、ICチップ10の絶縁膜14の表面に感光性のポリイミド材料をコーティングし、フォトリソグラフィーなどのパターニング処理を行う方法などにより形成することができる。また、筒状支持部32も、グレーマスクを用いたフォトリソグラフィーを行うことになどにより、高さ寸法などの形状を精度よく形成することができる。
なお、本実施形態の筒状支持部32は角錐台形状のものを例示したが、これに限らず、円錐台形状、円柱状、角柱状などとしてもよい。
また、応力緩和層15、および、筒状支持部32の材料は、上記したポリイミドに限定されず、弾性樹脂材料として既に公知となっているいずれかの材料を適用することができる。例えば、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、変性ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB;benzocyclobutene)、ポリベンゾオキサゾール(PBO;polybenzoxazole)等の樹脂を適用することができる。
【0046】
配線36、および第3の電極37は、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、窒化チタン(TiN)、ニッケル(Ni)、ニッケルバナジウム(NiV)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)などによって形成することができる。
なお、配線36、及び、第3の電極37は、上記材料による単層構造のみならず、複数種類の上記材料を組み合わせた積層構造としてもよく、また、複数種類の金属材料の合金、あるいは、導電性ペーストをパターニングして固化させたものなどを用いて構成してもよい。
【0047】
また、ICチップ10に形成された集積回路には、第1の電極11以外にも、図示しない他の電極が形成されている。この他の電極は、第1の電極11の場合と同様に配線が接続され、絶縁膜14の開口部内にて外部に露出する接続用端子13と接続されている。接続用端子13は、電気的、あるいは機械的な接続を成すためのパッド状のものである。
【0048】
第1の電極11や接続用端子13、あるいはその他の電極は、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、または、これらを含む合金などを用いて形成することができる。特に接続用端子13については、ワイヤーボンディングの際の接合性を高めるため、その表面にニッケル(Ni)、金(Au)のメッキを施しておくのが好ましい。このようにすることで、特にさびによる接触性、接合性の低下を防止することができる。
また、第1の電極11や接続用端子13、あるいはその他の電極は、ハンダメッキ、ハンダプリコートなどの最表面処理を施したものとしてもよい。
【0049】
上記構成のセンサーデバイス1によれば、筒状支持部32を利用することによって、従来の支持基板を利用してICチップ上に振動ジャイロ素子を支持する構成に比して、厚みの増大を抑えながらICチップ10と振動ジャイロ素子20とを隙間を設けて接合することができるとともに、筒状支持部32および応力緩和層15が有する弾性により、外部から加わる衝撃などの力が緩和されて振動ジャイロ素子20に伝達され難くなり、振動ジャイロ素子20の周波数温度特性などの特性劣化を抑制することができる。
また、筒状支持部32と第1の面10aとにより形成される凹部により、導電性接着剤98の塗布量の調整が容易になるので、周辺の望まない領域への導電性接着剤の流れ出しを回避しながら、十分な接合強度を確保することができる。
また、筒状支持部32の開口部32aが頂部側から第1の面10a側に狭まる断面テーパー形状を呈して形成されているので、バンプ12を介した振動ジャイロ素子20の位置合わせがしやすいという効果を奏する。
【0050】
(振動ジャイロ素子の動作)
ここで、センサーデバイス1の振動ジャイロ素子20の動作について説明する。
図3及び図4は、振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図である。図3は駆動振動状態を示し、図4(a)、図4(b)は、角速度が加わった状態における検出振動状態を示している。
なお、図3及び図4において、振動状態を簡易に表現するために、各振動腕は線で表してある。
【0051】
まず、振動ジャイロ素子20の駆動振動状態を説明する。
図3において、ICチップ10の集積回路(駆動回路)から駆動信号が印加されることにより、振動ジャイロ素子20は角速度が加わらない状態において、駆動用振動腕24a,24b,25a,25bが矢印Eで示す方向に屈曲振動を行う。この屈曲振動は、実線で示す振動姿態と2点鎖線で示す振動姿態とを所定の周波数で繰り返している。
【0052】
次に、この駆動振動を行っている状態で、振動ジャイロ素子20にZ軸回りの角速度ωが加わると、振動ジャイロ素子20は、図4に示すような振動を行う。
まず、図4(a)に示すように、駆動振動系を構成する駆動用振動腕24a,24b,25a,25b及び連結腕23a,23bには、矢印B方向のコリオリ力が働く。また同時に、検出用振動腕22a,22bは、矢印B方向のコリオリ力に呼応して、矢印C方向に変形する。
【0053】
その後、図4(b)に示すように、駆動用振動腕24a,24b,25a,25b及び連結腕23a,23bには、矢印B’方向に戻る力が働く。また同時に、検出用振動腕22a,22bは、矢印B’方向の力に呼応して、矢印C’方向に変形する。
振動ジャイロ素子20は、この一連の動作を交互に繰り返して新たな振動が励起される。
なお、矢印B,B’方向の振動は、重心Gに対して周方向の振動である。そして、振動ジャイロ素子20は、検出用振動腕22a,22bに形成された検出電極が、振動により発生した水晶の歪を検出することで角速度が求められる。
【0054】
(センサーデバイスの製造方法)
次に、センサーデバイスの製造方法について説明する。
図5は、センサーデバイス1の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図5には、振動ジャイロ素子20の製造工程がステップS1−1からステップS1−5まで、ICチップ10の製造工程がステップS2−1からステップS2−7まで、そして、センサーデバイス1の組立工程がステップS3−1からステップS3−3までにそれぞれ示されている。以下、前工程から順に説明する。
【0055】
本実施形態のセンサーデバイス1の製造においては、まず、水晶ウェハーから複数の振動ジャイロ素子20を製造する工程について説明する。
振動ジャイロ素子20の製造では、大判の水晶ウェハーに振動ジャイロ素子20を複数並べて形成した後に、ダイシング、あるいは折り取ることなどにより個片の振動ジャイロ素子20に切断して(個片化)、複数個の振動ジャイロ素子20を同時に得る方法をとることができる。
【0056】
〔振動ジャイロ素子製造〕
まず、ステップS1−1に示すように、結晶軸に対して所定のカット角で切り出され、所望の厚さおよび表面状態になるように研磨加工された大判の水晶ウェハーを準備する。そして、ステップS1−2に示すように、フォトリソグラフィーを用いたウェットエッチングにより、水晶ウェハーに複数の振動ジャイロ素子の外形を形成する。
【0057】
詳述すると、まず、水晶ウェハーの両主面全体に、エッチングマスクとなり得る、例えばクロムおよび金からなる耐蝕膜をスパッタなどにより形成してからフォトレジストを塗布して、そのフォトレジスト上に振動ジャイロ素子の外形パターニング用のマスクを配置して外形パターンを露光する。
そして、フォトレジストの露光により感光した部分を除去する現像を行ってからエッチング液に浸し、感光したフォトレジストを除去した部分の耐蝕膜をエッチングして、水晶ウェハー上に、耐蝕膜からなる振動ジャイロ素子の外形形成用のエッチングマスクを形成する。
次に、振動ジャイロ素子の外形形成用のエッチングマスクを形成した水晶ウェハーを、例えばフッ化水素溶液およびフッ化アンモニウム溶液からなるエッチング液に浸漬して、水晶基板の振動ジャイロ素子20の外形に対応した部分が貫通するまでエッチングする。
なお、振動ジャイロ素子の外形は、水晶ウェハーから完全に切り離されないようにミシン目状の折り取り部などによりつなげておくことによって、以降の工程を水晶基板(ウェハー)状態にて効率的に流動することができる。
次に、ステップS1−3に示すように、耐蝕膜からなる振動ジャイロ素子の外形形成用のエッチングマスクを剥離する。
【0058】
次に、ステップS1−3に示すように、スパッタリングや蒸着などにより、上記した駆動電極や検出電極あるいは引き出し電極29などの電極形成を行う。
電極形成は、振動ジャイロ素子20の外形が形成された水晶ウェハーの表面に、スパッタリングや蒸着により、例えば、クロム層を下地として形成し、その上に金層を積層させたり、フォトリソグラフィーにより積層させた金属を所望の電極パターン形状にパターニングしたりすることにより行うことができる。
【0059】
次に、ステップS1−4に示すように、水晶ウェハーに形成された複数の振動ジャイロ素子20の引き出し電極29上に突起電極としてのバンプ12を形成する。上記したように、本実施形態のバンプ12は金などのスタッドバンプで形成する。スタッドバンプによるバンプ12は、ワイヤーボンディングに用いる金などの金属ワイヤーの先端を、放電によりボール状にした後、そのボール状の先端を引き出し電極29に押し付けて温度や超音波などを印加することによって接合し、その後、ワイヤーを切断して先端部を引き出し電極29上に残すことにより形成することができる。スタッドバンプを利用したバンプ12は、ワイヤーボンダーを準備することにより比較的容易に形成することができる。
なお、スタッドバンプによるバンプ12の形成用金属材料は、金の他に、銅(Cu)やアルミニウム(Al)などを用いることができる。
また、スタッドバンプ以外のバンプ12として、ハンダボールなど他の導電性材料を用いたり、銀ペーストなどの導電性接着剤を塗布して固化させたものをバンプ12として用いたりすることもできる。
【0060】
次に、ステップS1−5に示すように、ダイシング、あるいは上記したミシン目を介して水晶ウェハーから折り取るなどの方法により、水晶ウェハーに形成された複数の振動ジャイロ素子20を個片化する。
【0061】
〔ICチップ製造〕
次に、半導体装置としてのICチップ10を製造する工程について説明する。
ICチップ10の製造では、上記振動ジャイロ素子20の製造と同様に、大判のシリコンウェハーにICチップを複数並べて形成し、後にダイシングすることにより複数個のICチップ10を同時に得る方法をとることができる。
【0062】
まず、ステップS2−1に示すように、シリコンウェハーを準備する。そして、ステップS2−2に示すように、通常の半導体製造プロセスを用いてシリコンウェハーに複数のICチップ10を同時形成するIC製造を行う。
【0063】
次に、ステップS2−3に示すように、スパッタリングや蒸着などにより、上記した第1の電極11や接続用端子13などの電極形成を行う。電極形成をした後で、第1の面10aに絶縁膜14を形成し、第1の電極11や接続用端子13の一部を露出させる開口部を形成する。
【0064】
次に、ステップS2−4に示すように、絶縁膜14上に絶縁樹脂層としての応力緩和層15を形成する。応力緩和層15は、絶縁膜14の表面に、例えば感光性のポリイミド材料をコーティングし、フォトリソグラフィーなどのパターニング処理を行う方法などにより形成することができる。
【0065】
次に、ステップS2−5に示すように、応力緩和層15上の引き出し電極29と対応する位置に設ける第3の電極37、および、第1の電極11から引き出されて第3の電極37に接続する配線36とによる再配置配線を形成する。
【0066】
次に、ステップS2−6に示すように、各第3の電極37上に筒状支持部32を形成する。筒状支持部32は、第3の電極37上に高粘度に調整した例えば感光性のポリイミド材料をコーティングし、グレーマスクを用いたフォトリソグラフィーを行うことになどにより、高さ寸法などの形状を精度よく形成することができる。
次に、ステップS2−7に示すように、S2−6まで行ったシリコンウェハーをダイシングすることにより、個片のICチップ10を複数得る。
【0067】
〔センサーデバイス組立〕
次に、センサーデバイス1の組立工程について説明する。
センサーデバイス組立工程では、まず、ステップS3−1に示すように、ICチップ10の筒状支持部32の開口部32aおよび第1の面10aにより形成される凹部に、ディスペンサーなどを用いて例えば銀ペーストなどのペースト状の導電性接着剤98を適量塗布する。ここで、適量とは、筒状支持部32の凹部内に収まる量で、且つ、バンプ12を介した振動ジャイロ素子20の接合強度を十分確保できる量のことをいう。
例えば、後述するステップS3−2の工程後、凹部内に位置するバンプ12の部分の体積V1と、ステップS3−1後、後述するステップS3−2前の導電性接着剤98が満たされていない凹部内の空間の体積V2とが、同じになるような量の導電性接着剤98をステップS3−1で設けてもよい。
これにより、導電性接着剤98が周囲の望まない部分に流れ出すのを回避することができるとともに、振動ジャイロ素子20の接合強度を十分に得ることができる。この工程では、本実施形態のセンサーデバイス1の大きな特徴である筒状支持部32を備えたことにより、導電性接着剤98の塗布量の調整がしやすい。
なお、ステップS3−1で設ける導電性接着剤98の量は、体積V2が体積V1よりも大きくなるような量としてもよい。
【0068】
次に、ステップS3−2に示すように、未硬化状態でペースト状の導電性接着剤98が筒状支持部32の凹部内にバンプ12を配置させた態様でICチップ10上に振動ジャイロ素子20を位置合わせし、載置する。
このとき、筒状支持部32の開口部32aが頂部側から第1の面10a側に狭まる断面テーパー形状を呈して形成されているので、バンプ12を介した振動ジャイロ素子20の位置合わせがしやすいという効果がある。
【0069】
次に、ステップS3−3に示すように、導電性接着剤98を、加熱、あるいは紫外線照射することなどによって硬化させ、振動ジャイロ素子20を筒状支持部32により支持した態様でICチップ10上に接合・固定する。これにより、ICチップ10上に振動ジャイロ素子が搭載されたセンサーデバイス1を得る。
以上説明した工程を経て、センサーデバイス1の一連の製造工程が終了する。
【0070】
上記のセンサーデバイス1の製造方法によれば、筒状支持部32および応力緩和層15を備えることにより、外部から加わる衝撃などの力が緩和されて振動ジャイロ素子20に伝達され難くなり、振動ジャイロ素子20の周波数温度特性などの特性劣化が抑制された薄型のセンサーデバイス1を製造することができる。
また、筒状支持部32と第1の面10aとにより形成される凹部により、導電性接着剤98の塗布量の調整が容易になることによって、周辺の望まない領域への導電性接着剤の流れ出しを回避しながら、十分な接合強度が確保された信頼性の高いセンサーデバイス1を製造することができる。
【0071】
以上、発明者によってなされた本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は上記した実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、振動片としての振動ジャイロ素子形成材料として水晶を用いた例を説明したが、水晶以外の圧電体材料を用いることができる。例えば、窒化アルミニウム(AlN)や、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、四ほう酸リチウム(Li247)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)などの酸化物基板や、ガラス基板上に窒化アルミニウムや五酸化タンタル(Ta25)などの圧電体材料を積層させて構成された積層圧電基板、あるいはジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zrx,Ti1−x)O3)などの圧電セラミックスを用いることができる。
また、圧電体材料以外の材料を用いて振動片を形成することができる。例えば、シリコン半導体材料などを用いて振動素子を形成することもできる。
また、振動素子の駆動振動の励振方式や検出振動の検出方式は、圧電効果によるものだけに限らない。静電気力(クーロン力)を用いた静電駆動型や、磁力を利用したローレンツ駆動型などの振動片においても、本発明の構成およびその効果を発揮させることができる。
【0073】
また、振動片としての振動ジャイロ素子の形状は、上記実施形態で説明した所謂WT型に限らない。音叉型やビーム型、あるいは、MEMSジャイロのように櫛歯電極で静電検出する振動片を用いたセンサーデバイスにおいても、本発明の筒状支持部を備えた半導体装置としてのICチップを備えた構成によれ、上述した実施形態に記載したものと同様な効果を得ることができる。
【0074】
また、上記各実施形態では、センサーデバイスに備わる振動片(センサー素子)として振動ジャイロ素子20を例に挙げたが、これに限定するものではなく、例えば、加速度に反応する加速度感知素子、圧力に反応する圧力感知素子、重さに反応する重量感知素子などでもよい。
【0075】
また、上記各実施形態では、半導体装置としてのICチップ10上に一層の応力緩和層15を設け、再配置配線を形成して第1の電極11を第3の電極37に再配置し、その第3の電極37上に振動ジャイロ素子20を支持する筒状支持部32を設けた構成を説明した。これに限らず、ICチップの第1の電極の配置と振動ジャイロ素子の引き出し電極の配置とが合う場合であれば、第1の電極上に筒状支持部32を設ける構成としてもよい。
また、応力緩和層を複数層設けて、その複数の応力緩和層の層間に再配置配線を形成することができる。この構成によれば、複数の応力緩和層を介して電極や配線の直上に配線を設けることができ、再配置配線の引き回しの設計の自由度をより高くすることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、ステップS2−7としてシリコンウェハーをダイシングした後にステップS3−1〜S3−3を行ったが、ステップS2−6後、シリコンウェハーをダイシングせずにステップS3−1〜S3−3の工程を行い、ステップS3−3後に複数のセンサーデバイス1が形成されたシリコンウェハーをダイシングすることにより、個片のセンサーデバイス1を複数得る構成としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…センサーデバイス、9a〜9d…梁、10…半導体装置としてのICチップ、10a…第1の面、11…第1の電極、12…突起電極としてのバンプ、13…接続用端子、14…絶縁膜、14a…開口部、15…絶縁樹脂層としての応力緩和層、19a,19b…固定部、20…振動片としての振動ジャイロ素子、20a…第2の面、21…基部、22a,22b…検出用振動腕、23a,23b…連結腕、24a,24b,25a,25b…駆動用振動腕、26a,26b,27a,27b,28a,28b…錘部、29…第2の電極としての引き出し電極、36…配線、98…導電性接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に第1の電極を有する半導体装置上に、基部、前記基部から延伸された振動部を有し、前記第1の面と対向する第2の面に第2の電極を有する振動片が配置されたセンサーデバイスの製造方法であって、
前記第1の面に、絶縁樹脂からなり前記第1の電極または前記第1の電極と配線を介して電気的に接続された第3の電極の少なくとも一部を露出させる開口部を有する筒状支持部を設ける工程と、
前記第2の電極に突起電極を設ける工程と、
前記第1の面および前記開口部により形成された凹部に導電性接着剤を入れる工程と、
前記突起電極を前記凹部内に配置させて前記半導体装置上に前記振動片を載置する工程と、
前記導電性接着剤を固化させる工程と、
を含むことを特徴とするセンサーデバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサーデバイスの製造方法において、
前記筒状支持部を設ける工程で、前記筒状支持部の前記振動片側となる面を前記第1の面と平行に形成し、
前記半導体装置上に前記振動片を載置する工程で、前記振動片を前記筒状支持部で保持することを特徴とするセンサーデバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセンサーデバイスの製造方法において、
前記凹部に前記導電性接着剤を入れる工程で、前記導電性接着剤の量を前記凹部に収まる量に調整することを特徴とするセンサーデバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサーデバイスの製造方法において、
前記筒状支持部を設ける工程で、前記開口部の形状を、前記振動片側から前記第1の面側に狭まる断面テーパー形状に形成することを特徴とするセンサーデバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサーデバイスの製造方法において、
前記筒状支持部を設ける工程の前に、前記第1の面の前記筒状支持部を形成する領域を含む領域に絶縁樹脂層を形成する工程を含むことを特徴とするセンサーデバイスの製造方法。
【請求項6】
第1の面に第1の電極を有する半導体装置と、
基部、前記基部から延伸された振動部を有し、前記第1の面と対向する第2の面に第2の電極を有する振動片と、を備え、
前記第1の面には、絶縁樹脂からなり前記第1の電極または前記第1の電極と配線を介して電気的に接続された第3の電極の少なくとも一部を露出させる開口部を有する筒状支持部が設けられ、
前記第1の面および前記開口部により形成された凹部に導電性接着剤が埋設され、
前記第2の電極に設けられた突起電極が前記凹部内に配置されたことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項7】
請求項6に記載のセンサーデバイスにおいて、前記筒状支持部の前記振動片側の面が前記第1の面と平行に形成され、
前記振動片が前記筒状支持部で保持されたことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項8】
請求項6または7に記載のセンサーデバイスにおいて、
前記開口部の形状が、前記振動片側から前記第1の面側に狭まる断面テーパー形状を呈することを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のセンサーデバイスにおいて、
前記第1の面と前記筒状支持部との間に絶縁樹脂層が形成されていることを特徴とするセンサーデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2981(P2013−2981A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134865(P2011−134865)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】