説明

ソレノイドおよび電磁式ポンプ

【課題】 プランジャが摺動方向に対して傾かないようにして、長寿命化を図れるソレノイドを提供する。
【解決手段】 励磁コイル35と、励磁コイル35の内側に設けられる、内部にプランジャ挿入孔39が形成された円筒状のガイドパイプ37と、励磁コイル35を囲んで配置された固定ヨーク36と、ガイドパイプ37のプランジャ挿入孔39内で摺動可能に配置され、固定ヨーク36との間で空隙を空けて配置され、固定ヨーク36との間で磁気回路を形成するプランジャ38とを具備するソレノイド34において、ガイドパイプ37のプランジャ挿入孔39の中心軸線は、ガイドパイプ37の外周に対する中心軸線から偏位して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励磁コイルに励磁電流を流すことによりプランジャを往復駆動させるソレノイド、およびソレノイドがプランジャを往復駆動させてダイアフラムを動作させる電磁式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
容積型ポンプの一種であるダイアフラムポンプは、ダイアフラムを往復駆動させることによりダイアフラム室(ポンプ室)を容積変化させ、これに伴って流体の吸排を可能とする装置である。
そして、ダイアフラムを往復駆動させる駆動源としてソレノイドを用いた電磁式ポンプが一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来より知られている電磁式ポンプ10について図4および図5に示す。
ダイアフラム12は、ダイアフラム室13に配置されており、中心部にプランジャ14が固定されている。プランジャ14は、励磁コイル(図4および図5では省略している)の内側に配置されたガイドパイプ15に形成されたプランジャ挿入孔16内で摺動可能に設けられている。
【0004】
電磁式ポンプ10のダイアフラム室13には、流体をポンプ外部からダイアフラム室13内に吸入する吸入弁17と、流体をダイアフラム室13からポンプ外部へ吐出する吐出弁18とが設けられている。
ここで示している吸入弁17および吐出弁18はチェックボールであり、それぞれダイアフラム室13とポンプ外部を連通する吸入孔19内および吐出孔20内に配置され、それぞれ吸入孔19および吐出孔20を開閉するように動作する。
【0005】
吸入側のチェックボール17は、ばね21により吸入孔19とポンプ外部との間に形成された外側開口部22を閉塞するように付勢されており、プランジャ14が他方側に移動してダイアフラム室13の容積が増加すると、ばね21の付勢力に抗してダイアフラム室13側に移動し、吸入孔19を開く。
このとき、吐出側のチェックボール18は、ばね23により吐出孔20とダイアフラム室13との間に形成された内側開口部24を閉塞するように付勢されており、そのまま吐出孔20を閉塞している。
【0006】
プランジャ14が一方側に移動してダイアフラム室13の容積が減少すると、吸入側のチェックボール17は、ダイアフラム室13内の流体に押圧されてポンプ外部側に移動して吸入孔19を閉塞し、吐出側のチェックボール18は、ダイアフラム室13内の流体に押圧されてポンプ外部へ移動して吐出孔20を開く。
【0007】
【特許文献1】特開平5−87005号公報(図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の電磁式ポンプでは、吸入時においてはダイアフラム室13内が負圧となり、吸入弁17が開く。このため、ポンプ外部から流体が吸入孔19を通してダイアフラム室13に流れ込み、ダイアフラム12の吸入弁側12aに働く負圧は著しく軽減される。一方、吐出弁側12bに働く負圧は、吐出弁18が閉じているため軽減されない。この結果、ダイアフラム室13に発生した負圧は、ダイアフラム12の吐出弁側12bを吐出弁18から離さないように作用する。ダイアフラム12の吸入弁側12aと吐出弁側12bとの間で発生した負圧のアンバランスは、プランジャ14に対して回転力として作用し、プランジャ14の他端部が吐出弁側方向へ移動し(図4の矢印方向)、プランジャ14がガイドパイプ15内で摺動方向に対して傾いてしまう。
【0009】
また、吐出時においては吐出孔20からは流体が流出していくが、吸入側では吸入弁17が閉じられるため、ダイアフラム12の吸入弁側12aが正圧となり、ダイアフラム12の吸入弁側12aの吸入弁方向への移動が妨げられるように作用する。このように、ダイアフラム12は吸入弁側12aが常に吸入弁側へ近づけないような力を受けるために、プランジャ14の傾きは是正されない。
ここで、図4の線Aは本来のプランジャ14の中心軸線であり、線Bが傾いたプランジャ14の中心軸線を示している。
【0010】
このように、電磁式ポンプの駆動により、プランジャ14がガイドパイプ15内で傾いたままであると、プランジャ14とガイドパイプ15の他端側であって吐出弁側の部位(図4の位置C)と、プランジャ14とガイドパイプ15の一端側であって吸入弁側の部位(図4の位置D)においてプランジャ14とガイドパイプ15とが常に接触して荷重が集中してしまうという課題があった。
このように、プランジャとガイドパイプとが常に接触して荷重が集中してしまう部位があると、この部位が磨耗してしまい、ポンプの寿命を短くしてしまうおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、プランジャが摺動方向に対して傾かないようにして、長寿命化を図れるソレノイドおよび電磁式ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明にかかるソレノイドによれば、励磁コイルと、励磁コイルの内側に設けられる、内部にプランジャ挿入孔が形成された円筒状のガイドパイプと、励磁コイルを囲んで配置された固定ヨークと、ガイドパイプのプランジャ挿入孔内で摺動可能に配置され、前記固定ヨークとの間で空隙を空けて配置され、固定ヨークとの間で磁気回路を形成するプランジャとを具備するソレノイドにおいて、前記ガイドパイプのプランジャ挿入孔の中心軸線は、ガイドパイプの外周に対する中心軸線から偏位して形成されていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、プランジャは偏位した側における固定ヨークとの空隙が、偏位した側と反対側における固定ヨークとの間の空隙よりも狭くなる。したがって、プランジャと固定ヨークとの間のパーミアンスは偏位した側の方が反対側よりも大きいので、プランジャが常に偏位した側へ向かう力を受ける。なお、パーミアンスは磁気抵抗の逆数であり、パーミアンスが大きいほど磁気回路の磁束が多くなり、磁気エネルギーが増加する。このため、プランジャは、プランジャ挿入孔が偏位している側で大きな磁気エネルギーを受け、偏位した側へ向かう力を受けるのである。
【0013】
本発明にかかる電磁式ポンプによれば、励磁コイルと、励磁コイルの内側に設けられる、内部にプランジャ挿入孔が形成された円筒状のガイドパイプと、励磁コイルを囲んで配置された固定ヨークと、ガイドパイプのプランジャ挿入孔内で摺動可能に配置され、前記固定ヨークとの間で所定の空隙を空けて配置され、固定ヨークとの間で磁気回路を形成するプランジャと、プランジャが接続されたダイアフラムと、ダイアフラムの往復駆動によってダイアフラム室の流体を吐出する吐出弁と、ダイアフラムの往復駆動によってダイアフラム室へ流体を吸入する吸入弁とを具備する電磁式ポンプにおいて、吐出弁における流体の流通方向の軸線と、吸入弁における流体の流通方向の軸線とを結ぶ直線の間に、プランジャの中心軸線が配置され、吐出弁側または吸入弁側のうちのいずれか一方側における固定ヨークとプランジャとの間の磁気回路のパーミアンスが、他方側の固定ヨークとプランジャとの間の磁気回路のパーミアンスよりも大となるように設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、プランジャと固定ヨークとの間のパーミアンスが大きくなるように設定された一方側において、固定ヨークの対向面に接近させる吸引力がプランジャに働く。なお、パーミアンスは磁気抵抗の逆数であり、パーミアンスが大きいほど磁気回路の磁束が多くなり、磁気エネルギーが増加する。このように、プランジャが、磁気回路のパーミアンスが大きく設定された一方側へ向かう力を受けることにより、電磁式ポンプのプランジャの傾きを防止することができる。
【0014】
また、前記ガイドパイプのプランジャ挿入孔の中心軸線は、ガイドパイプの外周に対する中心軸線よりも吐出弁側または吸入弁側のうちのいずれか一方側に偏位して形成されていることを特徴としてもよい。
このような構成によれば、プランジャと固定ヨークとの間の空隙が、吐出弁側または吸入弁側のうちのいずれか一方側の方が他方側よりも小さくなる。すなわち、パーミアンスは、磁路の断面積に比例し、磁路に形成された空隙(ギャップ)の大きさに反比例するので、空隙が小さい一方側の方がパーミアンスが大きくなり、磁気エネルギーが増加する。このため、プランジャが一方側へ向かう力を受けることにより、プランジャの傾きを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかるソレノイドによれば、プランジャの摺動方向に対する傾きを防止することができるので、プランジャとガイドパイプの接触部分の磨耗を防止することができ、長寿命化を図ることができる。
本発明にかかる電磁式ポンプによれば、プランジャが吐出弁側または吸入弁側へ向かう力を受けるようにすることができるので、ポンプの駆動を原因とするプランジャの軸線方向に対する傾きを防止することができ、プランジャとガイドパイプの接触部分の磨耗を防止し、ポンプの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1に基づいて電磁式ポンプの全体構成について示す。
本実施形態の電磁式ポンプ30は、容積型ポンプの一種でダイアフラム32をダイアフラム室33内で往復駆動させてダイアフラム室33内の容積を変化させることによって、流体を吸排出する装置である。
【0017】
ダイアフラム32の駆動方式としては、ソレノイド34を用いている。
以下、ソレノイド34の構成について説明する。
ソレノイド34は、励磁コイル35と、固定ヨーク36と、プランジャ38を具備している。プランジャ38はガイドパイプ37に形成されたプランジャ挿入孔39内に収納保持されている。ガイドパイプ37は、非磁性体材料で構成されており、具体的には合成樹脂製である。
【0018】
固定ヨーク36は、磁性体材料から構成され、励磁コイル35の周囲を覆って形成される。励磁コイル35の両端部と固定ヨーク36との間には絶縁部材40が設けられている。
固定ヨーク36は、励磁コイル35の一方側に配置された上ヨーク36aと、他方側に配置され、上ヨーク36aと連結している下ヨーク36bとから構成されている。
なお、本実施形態では、下ヨーク36bの一部がコイルの側面を覆うように側壁部36cとして一方側へ延出しており、一方側で側壁部36cが上ヨーク36aと連結している。
【0019】
プランジャ38は、磁性体から構成された部材である。プランジャ38は、ガイドパイプ37内に収納される部位である小径部42と、小径部42の他方側の端部に設けられた大径部44とを有している。
小径部42の外径は、ガイドパイプ37の内径よりもわずかに小さく形成されており、ガイドパイプ37内でプランジャ38が良好に摺動するように設けられる。
大径部44の外径はガイドパイプ37の内径よりも大径に形成されており、大径部44はガイドパイプ37内には収納されず、ガイドパイプ37の外部に位置している。
【0020】
プランジャ38は、励磁コイル35が生じる磁気エネルギーによって吸引される方向に動作する。なお、プランジャ38の突出方向への移動はばね47によって行なわれる。
【0021】
上ヨーク36aの中心部には、プランジャ38の小径部42の一方側の端面42aと対向する第1の対向面51が形成されている。上ヨーク36aには、第1の対向面51を囲み、第1の対向面51に対して他方方向に垂直に立ち上げられた延出部の内壁面に、第2の対向面52が形成されている。第2の対向面52は、プランジャ38の小径部42の一方側の端面42a近傍の外周面42bと対向している。
上ヨーク36aにおいては、第1の対向面51と第2の対向面52とがプランジャ38との間で磁路を形成する。
【0022】
下ヨーク36bは、励磁コイル35の側面を覆う側壁部36cと励磁コイル35の他方の端部を覆う対向面部36dとから構成されている。対向面部36dは、大径部44の外周面44bに対向する第3の対向面53と、大径部44の一方側の端面44aに対向する第4の対向面54とを有している。
第3の対向面53は、第4の対向面54に対して他方方向に垂直に立ち上げられた延出部の内壁面に形成されている。
【0023】
第2の対向面52および第3の対向面53は、プランジャ38の小径部42の外周面42bおよび大径部44の外周面44bに対してそれぞれ接触しない程度のわずかな隙間を空けて配置される。
【0024】
なお、下ヨーク36bの対向面部36dには、防振ゴム55が取り付けられている。プランジャ38が一方側へ移動していくと、大径部44の一方側の端面44aが防振ゴム55に当接するので、大径部44が下ヨーク36bに当接することに起因する振動を防止することができる。
【0025】
ソレノイド34のプランジャ38の中心部には、ダイアフラム32の中心部32aと連結する支持棒56が設けられている。支持棒56は、ソレノイド34から一方側へ突出して設けられており、ダイアフラム32の中心部32aに固定されている。
【0026】
また、プランジャ38は、ばね47によって他方方向に付勢されている。ばね47は、プランジャ38の内部に形成されたばね収納部58において、支持棒56の周囲に配置され、ばね収納部58の他方側の端面と上ヨーク36aの第1の対向面51との間で圧縮されるようにして設けられている。
【0027】
プランジャ38は、励磁コイル35に励磁電流を流すことによって形成される磁気回路によって一方方向へ動作する方向に力が働く。励磁コイル35に流される励磁電流がオフとなった場合には、磁気回路による力は消滅し、プランジャ38はばね47の付勢力により他方方向へ動作する。
プランジャ38は、このように励磁コイル35へ流される励磁電流のオン−オフによって、往復運動する。
【0028】
次に、ポンプ側の構成について説明する。
ソレノイド34の一方側の端部には、ポンプカバー60が取り付けられて構成されており、ポンプカバー60内にダイアフラム32が設けられている。ダイアフラム32は、ソレノイド34によって往復駆動され、ダイアフラム室33内の容積を変化させ、流体を吸排出する。
【0029】
ダイアフラム32は、ソレノイド34の一方側端部である上ヨーク36aとポンプカバー60との間に固定され、ポンプカバー60の内壁面との間でダイアフラム室33を形成する。
【0030】
ポンプカバー60と上ヨーク36aの外周面には下ヨーク36bの側壁部36cが配置されている。側壁部36cの先端には爪部61が形成されており、爪部61がポンプカバー60の一方側の端面に沿って曲げられて、上ヨーク36aとポンプカバー60とを挟持している。
【0031】
ポンプカバー60には、ダイアフラム32の往復駆動によって動作する吸入弁と、吐出弁とが設けられている。吸入弁と吐出弁とは、ポンプカバー60から一方側に突出した2つの筒状部62,63の内部に設けられる。
ポンプカバー60の筒状部62,63のいずれか一方の内部は、ダイアフラム室33とポンプ外部とを連通する吸入孔64が形成されている。吸入孔64内には、吸入孔64のポンプ外部に接する部位となる外側開口部66の内側に当接して吸入孔64を閉塞するチェックボール68が配置されている。チェックボール68が吸入弁に該当する。
【0032】
チェックボール68にはばね69の一端が当接しており、ばね69の付勢力によって外側開口部66を閉塞するように付勢されている。ばね69の他端は、ばね69の他端を保持する止め輪70に当接している。止め輪70は、リング状に形成されており、吸入孔64のダイアフラム室33に連通する部位となる内側開口部71が形成されている。
【0033】
ポンプカバー60の筒状部62,63のいずれか他方の内部は、ダイアフラム室33とポンプ外部とを連通する吐出孔72が形成されている。吐出孔72内には、吐出孔72のダイアフラム室33に接する部位となる内側開口部73の外側に当接して吐出孔72を閉塞するチェックボール74が配置されている。チェックボール74が吐出弁に該当する。
【0034】
チェックボール74にはばね76の一端が当接しており、ばね76の付勢力によって内側開口部73を閉塞するように付勢されている。ばね76の他端は、ばね76の他端を保持する止め輪78に当接している。止め輪78は、リング状に形成されており、吐出孔72のポンプ外部に連通する部位となる外側開口部79が形成されている。
【0035】
図2に、ガイドパイプ37の断面および、プランジャ38と吸入弁68と吐出弁74との位置関係を図1のE方向(一方側)から見た場合について示す。
プランジャ38の中心軸線Vは、吸入弁68に対する流体の移動方向の軸線Xと、吐出弁74の流体の移動方向の軸線Yとを結ぶ直線上Gであって、軸線Xと軸線Yとの間に配置されている。
【0036】
そして、ガイドパイプ37は、プランジャ挿入孔39の中心軸線V(プランジャ38の中心軸線Vと一致する)が、ガイドパイプ37の外周の中心軸線Wに対して、吐出弁74側に偏るように形成されている。つまり、ガイドパイプ37は吐出弁74側の方が吸入弁68側よりも肉薄となるように形成される。
【0037】
図3に基づいて、断面方向から見た場合について上述した構成を更に説明する。
上ヨーク36aの第2の対向面52の内径をd1とする。プランジャ38の大径部44の外径をd3とすると、d1の中心線とd3の中心線は同一直線となる。
しかし、プランジャ挿入孔39は吐出弁74側に偏位しているので、プランジャ38の小径部42の外径をd2とすると、d1およびd3の中心線よりもd2の中心線は吐出弁74側にΔdだけ平行にずれている。
【0038】
このためプランジャ38は、吐出弁74側の方が吸入弁68側よりも、上ヨーク36aの第2の対向面52との間の空隙が狭く、且つ下ヨーク36bの第3の対向面53との間の空隙が狭くなるように配置される。
したがって、プランジャ38には吐出弁74側へ向かう力Fが働き、プランジャ38の傾きを防止することができる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、プランジャ38の他端側には大径部44を設け、下ヨーク36bには、大径部44の外周面44bとの間で磁路を形成するための第3の対向面53を設けた構成について説明した。
しかし、本発明はこのような構成に限定されることはなく、プランジャ38に大径部44を設けておかなくともよく、また大径部44を設けたとしても、下ヨーク36bに大径部44の外周面44bに対向する第3の対向面が設けられていないものであってもよい。
【0040】
なお、上述した実施形態の電磁式ポンプは、プランジャと固定ヨークとの間のパーミアンスにおいて、吐出弁側を吸入弁側よりも大きくするために、吐出弁側のプランジャと固定ヨークとの間の空隙を吸入弁側よりも狭くした構成を採用した。
しかし、電磁式ポンプのプランジャと固定ヨークとの間のパーミアンスにおいて、吐出弁側を吸入弁側よりも大きくする構成としてはこのようなものに限定されることはなく、プランジャまたは固定ヨークの対向面積を吐出弁側の方が吸入弁側よりも広くなるように構成してもよい。
【0041】
さらに、本発明は、プランジャ挿入孔39の偏位方向を吐出弁74側に向けてする場合に限定するものではなく、プランジャ挿入孔39を吸入弁68側に偏位させてプランジャ38を吸入弁68側に吸引させる力を生じさせることによっても、プランジャ38の傾きを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
このような電磁式ポンプは、プランジャの磨耗を防止して長寿命化を図れるので、一度設けた場合には交換しにくい分野に採用すると好適である。たとえば、燃料電池の空気や燃料を供給するためのポンプ、医療器具、ノートパソコンの冷却用等様々な用途に良好に用いることができる。
【0043】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明にかかる電磁式ポンプの断面図である。
【図2】ガイドパイプの断面および、プランジャと吸入弁と吐出弁との位置関係を図1のE方向から見た場合を示す説明図である。
【図3】プランジャの偏位の様子を示す電磁式ポンプの断面図である。
【図4】従来の電磁式ポンプの吸入時の様子を示す断面図である。
【図5】従来の電磁式ポンプの吐出時の様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
30 電磁式ポンプ
32 ダイアフラム
32a 中心部
33 ダイアフラム室
34 ソレノイド
35 励磁コイル
36 固定ヨーク
36a 上ヨーク
36b 下ヨーク
36c 側壁部
36d 対向面部
37 ガイドパイプ
38 プランジャ
39 プランジャ挿入孔
40 絶縁部材
42 小径部
42a 一方側の端面
42b 外周面
44 大径部
44a 一方側の端面
44b 外周面
47 ばね
51 第1の対向面
52 第2の対向面
53 第3の対向面
54 第4の対向面
55 防振ゴム
56 支持棒
58 ばね収納部
60 ポンプカバー
61 爪部
62,63 筒状部
64 吸入孔
66,79 外側開口部
68 チェックボール(吸入弁)
69,76 ばね
70,78 止め輪
71,73 内側開口部
72 吐出孔
74 チェックボール(吐出弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと、
励磁コイルの内側に設けられる、内部にプランジャ挿入孔が形成された円筒状のガイドパイプと、
励磁コイルを囲んで配置された固定ヨークと、
ガイドパイプのプランジャ挿入孔内で摺動可能に配置され、前記固定ヨークとの間で空隙を空けて配置され、固定ヨークとの間で磁気回路を形成するプランジャとを具備するソレノイドにおいて、
前記ガイドパイプのプランジャ挿入孔の中心軸線は、ガイドパイプの外周に対する中心軸線から偏位して形成されていることを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
励磁コイルと、
励磁コイルの内側に設けられる、内部にプランジャ挿入孔が形成された円筒状のガイドパイプと、
励磁コイルを囲んで配置された固定ヨークと、
ガイドパイプのプランジャ挿入孔内で摺動可能に配置され、前記固定ヨークとの間で所定の空隙を空けて配置され、固定ヨークとの間で磁気回路を形成するプランジャと、
プランジャが接続されたダイアフラムと、
ダイアフラムの往復駆動によってダイアフラム室の流体を吐出する吐出弁と、
ダイアフラムの往復駆動によってダイアフラム室へ流体を吸入する吸入弁とを具備する電磁式ポンプにおいて、
吐出弁における流体の流通方向の軸線と、吸入弁における流体の流通方向の軸線とを結ぶ直線の間に、プランジャの中心軸線が配置され、
吐出弁側または吸入弁側のうちのいずれか一方側における固定ヨークとプランジャとの間の磁気回路のパーミアンスが、他方側の固定ヨークとプランジャとの間の磁気回路のパーミアンスよりも大となるように設けられていることを特徴とする電磁式ポンプ。
【請求項3】
前記ガイドパイプのプランジャ挿入孔の中心軸線は、ガイドパイプの外周に対する中心軸線よりも吐出弁側または吸入弁側のうちのいずれか一方側に偏位して形成されていることを特徴とする請求項2記載の電磁式ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−278171(P2007−278171A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105292(P2006−105292)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】