説明

ソレノイドバルブ

【課題】内部に異物が入りこみ、弁体が当該異物をかみ込んだとしても、所望のポートを閉塞したり開放したりすることができるソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】 ソレノイドバルブは、内部に空洞部300が一方向に延びるように形成されると共に、排出孔303、出力孔304および入力孔305が周面に形成された筐体301と、空洞部300内を移動可能に設けられ、排出孔303を閉塞可能な周壁部434を含む第1弁体430と、第1弁体430に対して相対的に移動可能に設けられ、入力孔305を閉塞可能なランド部423を含む第2弁体420とを備え、第1弁体430には、貫通孔432が形成され、第2弁体420は、第1弁体430が排出孔303を閉塞した状態において、第2弁体420が第1弁体430体に対して相対移動することで、貫通孔432を閉塞した状態と、貫通孔432および空洞部300を連通させた状態とに切り替える閉塞部材425を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドバルブに関し、特に、車両に搭載されるソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両の油圧回路に搭載されるソレノイドバルブが各種提案されている。たとえば、特開平10−332028号公報に記載された3位置型電磁弁は、スリーブと、第1弁体と、第2弁体と、ケースと、第1及び第2コイルと、第1及び第2弾性部材と、固定鉄心とを備えている。そして、スリーブには、その長手方向に延在する断面円形の液室が形成されている。スリーブには、液室の長手方向中央部分と連通する第1ポートと、液室の左側部と連通する第2ポートが設けられている。さらに、スリーブの左側の端部には、液室と連通する第3ポートが設けられている。
【0003】
この3位置型電磁弁においては、第1および第2コイルに選択的に電流を供給することで、第1弁体および第2弁体を駆動させ、第1、第2および第3ポートを選択的に閉塞したり、開口したりしている。
【0004】
特開平8−121586号公報に記載された自動変速機の油圧制御装置は、オイルポンプから歯車変速装置の係合要素への油圧送給経路を切換えると共に油圧の大きさを調整するための油圧コントローラと、同コントローラを駆動制御する制御装置であるTCU(トランスミッションコントロールユニット:Transmission Control Unit)とを備え、所要の変速段を確立するための係合要素へ油圧を送給するようになっている。
【0005】
そして、油圧コントローラの構成部品であるスプール弁は、そのバルブボディ内に摺動自在に配された第1及び第2スプールと、両スプール間に配された付勢手段としてのスプリングとを有している。そして、バルブボディには第1〜第10ポートが形成されている。
【0006】
特開平5−280657号公報に記載された電磁油圧弁は、制御スプールと、パス孔を形成した第1スプールと、この第1スプールの軸端に嵌合され、パス孔より90°角度位置に切欠きが形成された第2スプールとから構成されている。
【0007】
そして、この電磁油圧弁においては、流入ポートから流出ポートへと流通させる通路の絞り開度を軸方向変位により制御する制御スプールによって変化させている。これにより、圧力および流量を調整している。
【特許文献1】特開平10−332028号公報
【特許文献2】特開平8−121586号公報
【特許文献3】特開平5−280657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開平10−332028号公報に記載された3位置型電磁弁において、たとえば、スリーブ内に異物が入り込み、第1弁体と第2弁体とのいずれかが当該異物を噛みこみ、動かなくなるときがある。この場合、各第1および第2弁体は、所望のポートを閉塞したり開口したりすることができなくなる。
【0009】
特開平8−121586号公報に記載されたスプール弁においても、内部に異物が入り込むことで、第1スプールと第2スプールとの少なくとも一方が、当該異物を噛み込み、動かなくなる場合がある。この場合には、所望のポートを閉塞または開放することができなくなる。
【0010】
特開平5−280657号公報に記載された電磁油圧弁においても、同様に、内部に異物が入り込むことで、制御スプール等が当該異物を噛み込み、良好に駆動しなくなるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、内部に異物が入りこみ、弁体が当該異物をかみ込んだとしても、所望のポートを閉塞したり開放したりすることができるソレノイドバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るソレノイドバルブは、内部に空洞部が一方向に延びるように形成されると共に、空洞部に達し、一方向に順次間隔を隔てて設けられた第1、第2および第3連通孔が周面に形成された、筒状の筐体部と、空洞部内に設けられると共に、該空洞部内を移動可能に設けられ、第1連通孔を閉塞可能な第1閉塞部を含む第1弁体と、空洞部内を移動可能に設けられると共に、第1弁体に対して相対的に移動可能に設けられ、第3連通孔を閉塞可能な第2閉塞部を含む第2弁体とを備える。そして、上記第1弁体には、該第1弁体が第1連通孔を閉塞した状態において、第1連通孔と空洞部とを連通する貫通孔が形成される。上記第2弁体は、第1弁体が第1連通孔を閉塞した状態において、第2弁体が第1弁体に対して相対移動することで、貫通孔を閉塞した状態と、貫通孔および空洞部を連通させた状態とに切り替える閉塞部材を有する。
【0013】
好ましくは、上記第1弁体には、一方向に延び、第2閉塞部に向けて開口する凹部が形成され、貫通孔は、凹部を規定する第1弁体の内側面に形成され、閉塞部材は、凹部内に受け入れられると共に、凹部内を摺動可能に設けられる。さらに、上記第2弁体は、閉塞部材と第2閉塞部とを接続すると共に、閉塞部材および第2閉塞部よりも細く形成された軸部を含み、閉塞部材は、貫通孔の開口部よりも凹部の底部側に向けて変位可能とされる。
【0014】
好ましくは、上記筐体の端部のうち、第2連通孔に対して第1連通孔側に位置する一方の端部に設けられると共に、電流が印加される環状のコイルと、筐体の他方の端部側に設けられ、第2弁体を筐体の一方の端部に向けて付勢可能な付勢部材とをさらに備える。そして、上記第1弁体には、一方の端部側から他方の端部側に向けて貫通する挿入孔が形成される。上記第2弁体は、第1弁体に対して一方の端部側に位置し、コイル内に挿入される挿入部と、挿入孔内に挿入され、閉塞部材および挿入部とを接続する接続部と、接続部に設けられ、第1弁体と係合可能なストッパとを含む。
【0015】
好ましくは、上記第3連通孔は、入力圧が入力される入力孔とされ、第2連通孔は、出力圧が出力される出力孔とされ、第1連通孔は、外部に連通する排出孔とされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るソレノイドバルブによれば、異物が内部に入り込み、弁体が当該異物を噛み込んだとしても、所望のポートを閉塞したり開放したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るソレノイドバルブが適用されたロックアップクラッチ制御装置について図1から図4を用いて説明する。
【0018】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0019】
図1は、ロックアップ制御部200を備えた車両の骨子を示す模式図である。この図1に示すように、車両は、内燃機関としてのエンジン112と、エンジン112のクランク軸113と、流体伝動装置としてのトルクコンバータ114と、トルクコンバータ114のロックアップクラッチを制御するロックアップ制御部200とを備えている。
【0020】
トルクコンバータ114は、エンジン112のクランク軸113に連結されたポンプ翼車114pと、タービン軸134を介して、図示されない前進段切替機構等に接続されたタービン翼車114tとを備えている。このトルクコンバータ114は、ポンプ翼車114pとタービン翼車114tとの間においては、オイル等の流体を介して、動力を伝達するようになっている。
【0021】
ポンプ翼車114pとタービン翼車114tとの間には、ロックアップクラッチ126が設けられており、トルクコンバータ114内には、係合側油室115と、解放側油室117とが規定されている。
【0022】
ロックアップ制御部200は、係合側油室115および解放側油室117への油圧供給を行っており、係合側油室115および解放側油室117への供給油圧を調整することで、ロックアップクラッチ126のON・OFFを切り替えている。
【0023】
ロックアップクラッチ126が完全係合することで、ポンプ翼車114pとタービン翼車114tとは、一体的に回転するようになっている。
【0024】
ロックアップ制御部200は、ロックアップコントロール弁250と、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUと、ロックアップソレノイドバルブSLと、調圧弁とを備えている。
【0025】
ロックアップコントロール弁250は、たとえば、バルブボディ内に規定された空洞部内に設けられたスプール弁子204と、空洞部内に設けられ、スプール弁子204と対抗するスプール弁子206と、スプール弁子204およびスプール弁子206間に設けられたスプリング202とを備えている。
【0026】
ロックアップコントロール弁250内には、油室208と、油室210と、油室212とが規定されている。
【0027】
油室208内にロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧が供給されることで、スプール弁子204およびスプール弁子206がON(係合)側に変位して、ロックアップクラッチ126が係合状態となる。
【0028】
油室210に、調圧弁からのライン圧が供給されることで、スプール弁子204およびスプール弁子206はOFF(解放)側に向けて変位する。
【0029】
油室212に、ロックアップソレノイドバルブSLから作動圧が供給されることで、スプール弁子204は、OFF(解放)側に向けて変位する。
【0030】
スプール弁子204が解放側に位置すると、入力ポート214に供給されたライン圧がが解放側ポート216からトルクコンバータ114の解放側油室117へ供給される。さらに、係合側油室115内のオイルが係合側ポート218から排出ポート220を経て外部に排出される。
【0031】
これにより、解放側油室117と、係合側油室115との間の差圧が小さくなる。ロックアップクラッチ126の係合圧は、解放側油室117内の内圧と、係合側油室115内の内圧との差圧によって規定されており、差圧が小さくなることで、ロックアップクラッチ126の係合圧も小さくなる。
【0032】
その一方で、スプール弁子204が係合位置に位置すると、入力ポート222に供給されたライン圧が係合側ポート218から係合側油室115に供給される。そして、解放側油室117のオイルが、解放側ポート216から排出ポート228を経て排出される。これにより、ロックアップクラッチ126の係合圧が上昇する。
【0033】
ロックアップ作動圧ソレノイドDSUおよびロックアップソレノイドバルブSLの駆動を制御することで、ロックアップクラッチ126のONおよびOFFを切り替えることができる。
【0034】
図2は、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの断面図である。この図2に示すように、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUは、内部に空洞部300が規定された筐体301と、空洞部300内に設けられた第1弁体430および第2弁体420とを備えている。
【0035】
筐体301は、一方の端部側に設けられ、内部にコイル302が埋設されたヘッド部310と、ヘッド部310に連設され、内部に空洞部300が規定された筒部320と、他方の端部側に設けられたキャップ311とを備えている。
【0036】
ヘッド部310は、有底円筒状に形成されており、内部には、挿入孔440が規定されている。
【0037】
空洞部300は、ヘッド部310側からキャップ311に向かう方向(一方向)に長尺に形成されている。空洞部300の断面形状は、円形状となっており、筐体301は、中空円筒状に形成されている。
【0038】
ここで、空洞部300は、各弁体を収容する収容部と、ヘッド部310内に規定された挿入孔440に接続された接続部とを含み、収容部の断面積よりも、接続部の断面積の方が大きくなっている。これにより、空洞部300内には、収容部と接続部との境界部に段差部312が形成されている。
【0039】
筒部320の周面には、ヘッド部310(一方の端部)側からキャップ311(他方の端部)側に向かう方向(一方向)に向けて、互いに間隔をあけて形成され、空洞部300に連通する複数の連通孔が形成されている。
【0040】
具体的には、ヘッド部310側からキャップ311に向けて順次、排出孔(第1連通孔)303と、出力孔(第1連通孔)304と、入力孔(第3連通孔)305と、フィードバック孔306と、排出孔307とが形成されている。
【0041】
入力孔305には、図示されない調圧弁から入力圧が供給されている。出力孔304は、ロックアップコントロール弁250の油室208に作動圧(出力圧)を出力している。
【0042】
排出孔303は、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの外部に連通しており、たとえば、オイルパン等に連通している。
【0043】
フィードバック孔306には、出力孔304から出力される作動圧が供給される。排出孔307は、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの外部に連通しており、たとえば、オイルパンに接続されている。
【0044】
第1弁体430の周面は、空洞部300の内周面に沿って延びるように形成されている。筐体301の長手方向に配列する第1弁体430の両端面のうち、キャップ311側の端面には、筐体301の長手方向に延びる凹部431が形成されており、他方の端部には、係合部433が設けられている。凹部431は、空洞部300内に向けて開口している。第1弁体430は、上記凹部431を規定する周壁部(第1閉塞部)434を備えている。
【0045】
そして、第1弁体430が空洞部300内を移動することで、周壁部434が排出孔303を閉塞したり解放したりする。周壁部434には、第1弁体430の外周面から凹部431の内周面にまで達する貫通孔432が形成されている。周壁部434が排出孔303を閉塞する際には、貫通孔432は、排出孔303の開口部上に位置する。なお、排出孔303の開口部は、凹部431の内側面および凹部431の底部のうち、凹部431の内側面に形成されている。
【0046】
係合部433は、筐体301の段差部312に係合可能とされており、係合部433が段差部312に係止されることで、キャップ311に向かう方向の第1弁体430の変位が止められる。
【0047】
第2弁体420は、キャップ311側の端部に形成されたランド部421と、ランド部421に対してヘッド部310側に間隔を隔てて設けられたランド部(第2閉塞部)423と、ランド部423に対してヘッド部310側に間隔を隔てて設けられた閉塞部材425と、ヘッド部310内に挿入される鉄心部(挿入部)428とを備えている。
【0048】
ランド部421とランド部423とは、ランド部421およびランド部423よりも小径に形成された軸部422によって接続されており、ランド部421とランド部423との間には環状の溝部が形成されている。なお、空洞部300の延在方向に対して垂直な方向のランド部421の断面積は、ランド部423の断面積よりも小さくなっている。
【0049】
ランド部421の周面は、空洞部300の内周面に沿って延びており、ランド部421は、フィードバック孔306と、排出孔307との連通状態を切断している。ランド部423の周面も、空洞部300の内周面に沿って延びており、第2弁体420が変位することで、ランド部423は、入力孔305を閉塞したり、解放したりする。
【0050】
閉塞部材425は、凹部431内に収められており、貫通孔432の開口部を閉塞すると共に、凹部431の開口部も閉塞している。なお、凹部431における空洞部300の長手方向の長さは、閉塞部材425の長さよりも長くなっている。そして、閉塞部材425は、第2弁体420が第1弁体430に対して相対的に移動することで、凹部431内を移動可能に設けられている。具体的には、閉塞部材425は、貫通孔432の開口部を閉塞した状態から、凹部431の底部側に変位することで、貫通孔432の開口部を解放する。これにより、閉塞部材425は、貫通孔432の開口部を閉塞したり、解放したり切り替えることができる。
【0051】
この閉塞部材425とランド部423とは、閉塞部材425およびランド部423よりも小径に形成された軸部424によって接続されている。空洞部300の延在方向と直交する方向における軸部424の断面積は、ランド部423および閉塞部材425の断面積よりも小さくなっている。
【0052】
このため、閉塞部材425および第1弁体430と、ランド部423との間には、環状に延びる溝部が形成されている。そして、ランド部423と第2弁体420との間に形成された溝部は、出力孔304に連通している。
【0053】
閉塞部材425と鉄心部428とは、軸部427によって接続されており、この軸部427は、第1弁体430に形成された貫通孔(挿入孔)435内に挿入されている。なお、貫通孔435は、第1弁体430のヘッド部310側の端面から凹部431の底部に達するように形成されている。
【0054】
軸部427には、第1弁体430をヘッド部310側から押圧するストッパ429が設けられている。ストッパ429は、係合部433および第1弁体430に対して、ヘッド部310側に位置している。このため、第2弁体420がキャップ311側に変位する際に、ストッパ429と係合部433とが係合して、第2弁体420と第1弁体430とが一体的に、キャップ311に向けて変位可能となっている。
【0055】
鉄心部428は、ヘッド部310内に形成された挿入孔440内に設けられており、鉄心部428は、挿入孔440内を移動可能に設けられている。
【0056】
ヘッド部310内には、挿入孔440の周囲を取り囲むように環状に巻回されたコイル302が設けられている。コイル302に電流が供給されると、コイル302からの電磁力によって、鉄心部428は、キャップ311に向けて付勢される。
【0057】
空洞部300内のうち、第2弁体420とキャップ311との間には、第2弁体420をヘッド部310に向けて付勢する弾性部材309が設けられている。
【0058】
このため、コイル302に電流が供給されなくなると、第2弁体420は、弾性部材309からの付勢力によって、ヘッド部310側に変位する。
【0059】
ここで、この図2に示す状態においては、コイル302に電流が供給されており、第2弁体420は、弾性部材309からの付勢力に抗して、キャップ311側に変位している。そして、ストッパ429が第1弁体430および係合部433をキャップ311に向けて押圧する一方で、係合部433が段差部312に係止されている。これにより、第1弁体430の位置が固定されている。この際、周壁部434は、排出孔303を閉塞するように位置しており、貫通孔432は、排出孔303の開口部上に位置している。
【0060】
さらに、ストッパ429が第1弁体430に係止されるので、第2弁体420の位置も固定されている。
【0061】
そして、ランド部423は、入力孔305の開口部の一部を解放しており、軸部424の周囲に形成された溝部を通って、入力孔305から出力孔304にオイルが流通している。
【0062】
ここで、閉塞部材425は、貫通孔432の開口部を閉塞するように位置しており、入力孔305から入り込んだオイルが、貫通孔432を通って、周壁部434から排出されることを抑制している。
【0063】
このように、この図2に示す状態においては、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUの作動圧がロックアップコントロール弁250に供給されることで、ロックアップクラッチ126が係合状態となっている。
【0064】
なお、コイル302に供給する電流量を調整することで、ランド部423の位置を調整し、入力孔305の開口面積を調整することができる。これにより、作動圧を調整することができる。
【0065】
図3は、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUからの作動圧が0〔KPa〕とされているときの状態を示す断面図である。
【0066】
ここで、図2に示す状態から図3に示す状態となるまでの間において、まず、コイル302への電流の供給が停止される。これにより、第2弁体420は、弾性部材309からの付勢力によって、ヘッド部310側に変位し、ランド部423が入力孔305の開口部を閉塞する。この際、出力孔304に接続された油管内の油圧と、ランド部423および第1弁体430間に充填されたオイルの油圧は、作動圧の圧力となっている。
【0067】
このため、第1弁体430の端面のうち、キャップ311側に位置する端面は、ランド部423および第1弁体430間に充填されたオイルの油圧によって押圧されている。この押圧力によって、第1弁体430は、ヘッド部310側に変位する。ここで、コイル302に供給する電流量を少しずつ減少させると、第2弁体420は、少しずつヘッド部310側に変位する一方で、第1弁体430は、油圧によってヘッド部310側に付勢されているため、係合部433はストッパ429に当接した状態が維持される。これにより、第2弁体420と第1弁体430とは、互いに一体となって、ヘッド部310側に変位する。この際、第2弁体420と第1弁体430とは互いに相対的に移動せず、閉塞部材425による貫通孔432の閉塞状態は維持される。
【0068】
第1弁体430がヘッド部310側に所定距離変位すると、排出孔303の開口部の一部が解放される。これにより、出力孔304内のオイルと、第1弁体430およびランド部423間に充填されたオイルが、排出孔303から外部に排出される。これにより、出力孔304から図1に示すロックアップコントロール弁250に供給される作動圧が0〔Kpa〕となる。これにより、ロックアップクラッチ126の係合状態が解除される。
【0069】
ここで、上記図2に示すように、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUから出力される作動圧が所定圧とされた状態から、図3に示すように、作動圧が0〔Kpa〕とされるまでの間において、第1弁体430と筐体301との間に異物が挟まりこみ、第1弁体430の変位が止まる場合がある。
【0070】
図4は、ロックアップ作動圧ソレノイドDSUをONの状態からOFFの状態にするまでの間に、第1弁体430の動きが止まったときにおける状態を示す断面図である。
【0071】
この図4において、コイル302に電流は供給されておらず、第2弁体420は、キャップ311からの付勢力によってヘッド部310側に変位している。その一方で、第1弁体430は停止しているため、第2弁体420は第1弁体430に対して相対的に移動することになる。
【0072】
このため、凹部431内の閉塞部材425は、凹部431内を変位し、ヘッド部310側に向けて移動する。これにより、閉塞部材425によって閉塞されていた貫通孔432の開口部は、少なくとも一部が解放される。これにより、出力孔304は、軸部424によって形成された環状の溝部と、貫通孔432とを介して、排出孔303に連通する。
【0073】
これにより、出力孔304に接続された油管内の圧力は、低下して、図1に示すロックアップコントロール弁250がOFF状態となる。これに伴い、ロックアップクラッチ126の係合状態が解除される。
【0074】
このため、たとえば、ロックアップ作動圧ソレノイドDSU内に、異物が入り込み、第1弁体430が動かなくなったとしても、ロックアップクラッチ126の係合状態を解除することができる。このため、車両が低速走行している際に、ロックアップクラッチ126の係合状態が維持されることを抑制することができ、エンストの発生を抑制することができる。
【0075】
特に、本実施の形態に係るロックアップ作動圧ソレノイドDSUにおいては、別途センサや油圧回路を設ける必要がなく、車両の搭載性もよい。
【0076】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
ソレノイドバルブに適用することができ、特に、車両に搭載されるソレノイドバルブに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】ロックアップ制御部を備えた車両の骨子を示す模式図である。
【図2】ロックアップ作動圧ソレノイドの断面図である。
【図3】ロックアップ作動圧ソレノイドからの作動圧が0〔KPa〕とされているときの状態を示す断面図である。
【図4】ロックアップ作動圧ソレノイドをONの状態からOFFの状態にするまでの間に、第1弁体の動きが止まったときにおける状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
112 エンジン、126 ロックアップクラッチ、200 ロックアップ制御部、202 スプリング、250 ロックアップコントロール弁、300 空洞部、301 筐体、302 コイル、303 排出孔、304 出力孔、305 入力孔、306 フィードバック孔、307 排出孔、309 弾性部材、310 ヘッド部、311 キャップ、312 段差部、320 筒部、420 弁体、421 ランド部、422 軸部、423 ランド部、424 軸部、425 閉塞部材、427 軸部、428 鉄心部、429 ストッパ、430 弁体、431 凹部、432 貫通孔、433 係合部、434 周壁部、435 貫通孔、DSU ロックアップ作動圧ソレノイド、SL ロックアップソレノイドバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞部が一方向に延びるように形成されると共に、前記空洞部に達し、前記一方向に順次間隔を隔てて設けられた第1、第2および第3連通孔が周面に形成された、筒状の筐体部と、
前記空洞部内に設けられると共に、該空洞部内を移動可能に設けられ、前記第1連通孔を閉塞可能な第1閉塞部を含む第1弁体と、
前記空洞部内を移動可能に設けられると共に、前記第1弁体に対して相対的に移動可能に設けられ、前記第3連通孔を閉塞可能な第2閉塞部を含む第2弁体と、
を備え、
前記第1弁体には、該第1弁体が前記第1連通孔を閉塞した状態において、前記第1連通孔と前記空洞部とを連通する貫通孔が形成され、
前記第2弁体は、前記第1弁体が前記第1連通孔を閉塞した状態において、前記第2弁体が前記第1弁体に対して相対移動することで、前記貫通孔を閉塞した状態と、前記貫通孔および前記空洞部を連通させた状態とに切り替える閉塞部材を有する、ソレノイドバルブ。
【請求項2】
前記第1弁体には、前記一方向に延び、前記第2閉塞部に向けて開口する凹部が形成され、前記貫通孔は、前記凹部を規定する前記第1弁体の内側面に形成され、前記閉塞部材は、前記凹部内に受け入れられると共に、前記凹部内を摺動可能に設けられ、
前記第2弁体は、前記閉塞部材と前記第2閉塞部とを接続すると共に、前記閉塞部材および前記第2閉塞部よりも細く形成された軸部を含み、
前記閉塞部材は、前記貫通孔の開口部よりも前記凹部の底部側に向けて変位可能とされた、請求項1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】
前記筐体の端部のうち、前記第2連通孔に対して前記第1連通孔側に位置する一方の端部に設けられると共に、電流が印加される環状のコイルと、
前記筐体の他方の端部側に設けられ、前記第2弁体を前記筐体の一方の端部に向けて付勢可能な付勢部材とをさらに備え、
前記第1弁体には、前記一方の端部側から前記他方の端部側に向けて貫通する挿入孔が形成され、
前記第2弁体は、前記第1弁体に対して前記一方の端部側に位置し、前記コイル内に挿入される挿入部と、前記挿入孔内に挿入され、前記閉塞部材および前記挿入部とを接続する接続部と、前記接続部に設けられ、前記第1弁体と係合可能なストッパとを含む、請求項1または請求項2に記載のソレノイドバルブ。
【請求項4】
前記第3連通孔は、入力圧が入力される入力孔とされ、前記第2連通孔は、出力圧が出力される出力孔とされ、前記第1連通孔は、外部に連通する排出孔とされた、請求項1から請求項3のいずれかに記載のソレノイドバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−275839(P2009−275839A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128333(P2008−128333)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】