説明

ターボチャージャ

【課題】ノズルベーンを備えたタービンとディフューザベーンを備えたコンプレッサとを兼備し、搭載性が良好で部品点数の増加を抑制できるターボチャージャを提供する。
【解決手段】ターボチャージャー1は、複数のノズルベーン9及び複数のディフューザベーン30のそれぞれを駆動する共通の駆動装置40を備えており、その駆動装置40は、単一のアクチュエータ41にて回転駆動される駆動リング42と、駆動リング42の回転運動を複数のノズルベーン9のそれぞれに伝達する第1伝達機構43と、駆動リング42の回転運動を複数のディフューザベーン30のそれぞれに伝達する第2伝達機構44と、を備えている。各伝達機構43、44は駆動リング42の内周及び外周に結合された第1及び第2駆動アーム52、56を有しており、各駆動アーム52、56の結合位置が駆動リングの回転軸線方向に関してオーバーラップしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気等を利用してタービンを回転させ、そのタービンの回転によりコンプレッサを駆動するターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの入口であるタービンホイールの外周に複数のノズルベーンを設け、各ノズルベーンの傾き角度を変更してタービンの入口面積を変化させることにより容量を変更可能にしたタービンを備えたターボチャージャが広く知られている。また、コンプレッサの出口であるコンプレッサホイールの外周に複数のディフューザベーンを設け、各ディフューザベーンの傾き角度を変更してサージングを防止できるように過給特性を変更可能にしたコンプレッサを備えたターボチャージャも広く知られている(例えば、特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2及び3が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−163691号公報
【特許文献2】特開平8−254127号公報
【特許文献3】特開2006−169985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズルベーンを備えたタービンと、ディフューザベーンを備えたコンプレッサとを兼備するターボチャージャを構成する場合、ノズルベーンの駆動と、ディフューザベーンの駆動とを行わなければならない。これらベーンの駆動を担当する駆動装置を別々に設けた場合には、ターボチャージャの体格が大きくなって搭載性を損ねたり、部品点数が増加する等の問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ノズルベーンを備えたタービンとディフューザベーンを備えたコンプレッサとを兼備し、搭載性が良好で部品点数の増加を抑制できるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のターボチャージャは、周方向に並べられて傾き角度を変更可能な複数のノズルベーンを有するタービンと、周方向に並べられて傾き角度を変更可能な複数のディフューザベーンを有するコンプレッサと、前記複数のノズルベーン及び前記複数のディフューザベーンのそれぞれを駆動する共通の駆動装置と、を備え、前記駆動装置は、前記タービンと前記コンプレッサとの間に配置され、単一のアクチュエータにて回転駆動される駆動リングと、前記駆動リングの回転運動を前記複数のノズルベーンのそれぞれに伝達する第1伝達機構と、前記駆動リングの回転運動を前記複数のディフューザベーンのそれぞれに伝達する第2伝達機構と、を備え、前記第1伝達機構は、一端部が前記駆動リングの内周側にリンク結合され、他端部が前記ノズルベーンと一体回転可能に結合された複数の第1駆動アームを有し、前記第2伝達機構は、一端部が前記駆動リングの外周側にリンク結合され、他端部が前記ディフューザベーンと一体回転可能に結合された複数の第2駆動アームを有し、前記第1駆動アーム及び前記第2駆動アームは、前記駆動リングに対する結合位置が前記駆動リングの回転軸線方向に関してオーバーラップした状態で前記駆動リングにリンク結合されているものである(請求項1)。
【0007】
このターボチャージャによれば、ノズルベーン及びディフューザベーンのそれぞれに対する駆動が共通の駆動装置にて行われ、しかもその駆動装置は単一のアクチュエータにて回転駆動される駆動リングの回転運動を、第1伝達機構を介してノズルベーンに、第2伝達機構を介してディフューザベーンにそれぞれ伝達するものである。従って、ノズルベーンの駆動装置と、ディフューザベーンの駆動装置とを別々に設ける場合と比べて大型化を防止できるため搭載性が良好になる。また、単一のアクチュエータにて駆動される駆動リングを共通化しているため部品点数の増加を抑制できる。更に、駆動リングの内周側に第1駆動アームがリンク結合されるとともに、駆動リングの外周側に第2駆動アームがリンク結合され、なおかつ駆動リングに対する第1駆動アームの結合位置と第2駆動アームの結合位置とが駆動リングの軸線方向に関してオーバーラップしているので、軸線方向に関する寸法増大が抑えられ搭載性がより向上する。
【0008】
本発明のターボチャージャの一態様においては、前記ディフューザベーンを支持する支持プレートと、前記駆動リングの内周に接触しつつ前記駆動リングを回転自在に支持するローラピンと、を更に備え、前記ローラピンは、一端が前記支持プレートに結合され他端が自由端となるように前記支持プレートに片持ち支持されてもよい(請求項2)。この態様によれば、駆動リングを回転自在に支持するローラピンが、タービン側よりも低温の部材である支持プレートに片持ち支持されているため熱膨張の影響を受け難くなる。これにより、ローラピンの熱膨張で駆動リングの内周面との間の隙間が無くなって駆動リングの動作不良が発生することを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明のターボチャージャによれば、共通の駆動装置が、単一のアクチュエータにて回転駆動される駆動リングの回転運動を、第1伝達機構を介してノズルベーンに、第2伝達機構を介してディフューザベーンにそれぞれ伝達するものであるから、ノズルベーンの駆動装置と、ディフューザベーンの駆動装置とを別々に設ける場合と比べて、大型化を防止できるとともに部品点数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一形態に係るターボチャージャの要部を示した正面図。
【図2】図1のII−II線に関する断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の一形態に係るターボチャージャの要部を示した正面図、図2は図1のII−II線に関する断面模式図である。これらの図に示すように、ターボチャージャ1は不図示の内燃機関からの排気によって駆動されるタービン2と、そのタービン2にて駆動されるコンプレッサ3とを備えている。
【0012】
タービン2は、複数のタービンブレード4aが周方向に設けられたタービンホイール4と、タービンホイール4が固定されたタービン軸5と、タービンホイール4を収納するとともに渦巻き状の入口通路6とタービン軸5の回転軸線Axの方向に開口する出口通路7とを形成するタービンハウジング8とを備えている。
【0013】
タービンハウジング8には、入口通路6に配置されてタービンホイール4の外周に沿って並べられた複数のノズルベーン9と、各ノズルベーン9を覆うノズルシュラウド10と、各ノズルベーン9を挟んでノズルシュラウド10の反対側に設けられて各ノズルベーン9を回転可能に支持する支持プレート11とがそれぞれ設けられている。ノズルシュラウド10とタービンハウジング8との間にはシールリング12が設けられていて、ノズルシュラウド10とタービンハウジング8との間のシール性が確保されている。
【0014】
各ノズルベーン9はその傾き角度を変更することにより、タービンホイール4に対する入口通路6の開口面積を最も狭い最小開度から最も広い最大開度までの間で連続的に変化させることができる。つまり、各ノズルベーン9によって流路面積を流れ方向に絞るノズルが形成され、各ノズルベーン9の傾き角度を変更することにより、そのノズルの開口面積を変化させることができる。これにより、タービン2は可変容量式のタービンとして機能する。
【0015】
コンプレッサ3は、複数のコンプレッサ翼15aが周方向に設けられ、タービン軸5に固定されたコンプレッサホイール(インペラ)15と、コンプレッサホイール15を収納するとともに回転軸線Axの方向に開口する入口通路16と渦巻き状の出口通路17とを形成するコンプレッサハウジング18とを備えている。コンプレッサハウジング18は、タービン軸5を回転自在に支持する軸受20、21が装着された軸受ハウジング22に結合された共通ハウジング25に対してリブ状の連結部材26を介して連結されている。軸受ハウジング22とタービン軸5との間には油漏れを防止するオイルシール28が設けられている。コンプレッサハウジング18には、コンプレッサホイール15の外周に沿って並べられた複数のディフューザベーン30と、各ディフューザベーン30を回転可能に支持する支持プレート31とがそれぞれ設けられている。
【0016】
各ディフューザベーン30はその傾き角度を変更することにより、コンプレッサホイール15から出口通路17に至る通路面積を最も狭い最小開度から最も広い最大開度までの間で変化させることができる。つまり、各ディフューザベーン30によって流路面積を流れ方向に拡大するディフューザが形成され、各ディフューザベーン30の傾き角度を変更することによりそのディフューザの開口面積を変化させることができる。これにより、コンプレッサ3はサージングを防止できるように過給特性を変更できる可変ジオメトリコンプレッサ(VGC)として機能する。
【0017】
各ノズルベーン9を支持する支持プレート11と各ディフューザベーン30を支持する支持プレート31とは、タービン2とコンプレッサ3との間に配置された結合プレート35に結合されており、その結合プレート35はシールリング36を介してタービン軸5の外周に装着されている。コンプレッサハウジング18は支持プレート31を介してタービンハウジング8に結合される。
【0018】
各ノズルベーン9及び各ディフューザベーン30駆動は共通の駆動装置40にて行われる。駆動装置40は単一のアクチュエータ41と、そのアクチュエータ41にて回転駆動される駆動リング42と、駆動リング42の回転運動を各ノズルベーン9に伝達する第1伝達機構43と、駆動リング42の回転運動を各ディフューザベーン30に伝達する第2伝達機構44とを備えている。アクチュエータ41は負圧を利用して直線運動を発生させるバキュームアクチュエータとして構成されている。駆動リング42はその内周面42aに接する複数のローラピン46(図1)を介してコンプレッサハウジング18に回転自在に支持されている。なお、各ローラピン46はコンプレッサハウジング18に装着された支持プレート31に片持ち支持されており、その反対側の自由端はタービン2側の支持プレート11との間に微小隙間を保持している。ローラピン46がタービン2側よりも低温の部材である支持プレート31に片持ち支持されているため熱膨張の影響を受け難くなる。これにより、ローラピン46の熱膨張で駆動リング42の内周面42aとの間の隙間が無くなって駆動リング42の動作不良が発生することを防止できる。
【0019】
アクチュエータ41と駆動リング42とは、一端が駆動リング42にリンク結合され他端がアクチュエータ42に結合されたロッド45にて連結されている。これにより、アクチュエータ41による図1の矢印Fで示した直線運動が回転運動に変換され、駆動リング42はアクチュエータ41にて回転軸線Axの回りに回転駆動される。
【0020】
第1伝達機構43は、各ノズルベーン9と一体回転する回転軸51と、その回転軸51から一方向(図2の上方)に延びる第1駆動アーム52とを備えている。第1駆動アーム52は、その端部52aが駆動リング42の内周面42aに形成された凹部53に回転可能に嵌り込んでいる。これにより、第1駆動アーム52は、端部52aが駆動リング42の内周側にリンク結合される。第1駆動アーム52は回転軸51から一方向に一体的に延びているため、端部52aの反対側の他端部52bが各ノズルベーン9に対して一体回転可能に結合されることになる。一方、第2伝達機構44は、各ディフューザベーン30と一体回転する回転軸55と、その回転軸55から一方向(図2の下方)に延びる第2駆動アーム56とを備えている。第2駆動アーム56は、その端部56aが駆動リング42の外周面42bに形成された凹部57に回転可能に嵌り込んでいる。これにより、第2駆動アーム56は、端部56aが駆動リング42の外周側にリンク結合される。第2駆動アーム56は回転軸55から一方向に一体的に延びているため、端部56aの反対側の他端部56bが各ディフューザベーン30に対して一体回転可能に結合されることになる。
【0021】
以上のターボチャージャ1によれば、駆動装置40により駆動リング42が図1の矢印F1方向に回転駆動されると、各ノズルベーン9及び各ディフューザベーン30のそれぞれの傾き角度を閉じ側に一斉に変化させることができる。反対に駆動リング42が図1の矢印F2方向に回転駆動されると、各ノズルベーン9及び各ディフューザベーン30のそれぞれの傾き角度を開き側に一斉に変化させることができる。各ノズルベーン9及び各ディフューザベーン30の傾き角度を閉じ側に一斉に変化させることにより、コンプレッサ3のサージングを回避することができる。各ノズルベーン9及び各ディフューザベーン30の傾き角度を開き側に一斉に変化させることにより、コンプレッサ3の流量が増加するので出力低下を招くことがない。
【0022】
また、ターボチャージャ1によれば、各ノズルベーン9及び各ディフューザベーン30のそれぞれに対する駆動が共通の駆動装置40にて行われ、しかもその駆動装置40は単一のアクチュエータ41にて回転駆動される駆動リング42の回転運動を、第1伝達機構43を介して各ノズルベーン9に、第2伝達機構44を介して各ディフューザベーン30にそれぞれ伝達するものである。従って、各ノズルベーン9の駆動装置と、各ディフューザベーン30の駆動装置とを別々に設ける場合と比べて大型化を防止できるため搭載性が良好になる。また、単一のアクチュエータ41にて駆動される駆動リング42を共通化しているため部品点数の増加を抑制できる。更に、駆動リング42に対する第1駆動アーム52及び第2駆動アーム56のそれぞれの結合位置は回転軸線Axの方向に関してオーバーラップしている。従って、これらをオフセットした場合に比べて回転軸線Axの方向に関する寸法を短縮できるから搭載性がより向上する。
【0023】
本発明は、上記形態に限定されず、種々の形態にて実施してよい。上記形態に係るアクチュエータ41は負圧を利用して直線運動を発生させるバキュームアクチュエータとして構成されているが、本発明に係るアクチュエータは、アクチュエータ41と同様の機能を持つ電動モータやソレノイドを利用したアクチュエータとして実施することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ターボチャージャ
2 タービン
3 コンプレッサ
9 ノズルベーン
30 ディフューザベーン
31 支持プレート
40 駆動装置
41 アクチュエータ
42 駆動リング
43 第1伝達機構
44 第2伝達機構
46 ローラピン
52 第1駆動アーム
52a 端部
52b 端部
56 第2駆動アーム
56a 端部
56b 端部
Ax 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並べられて傾き角度を変更可能な複数のノズルベーンを有するタービンと、周方向に並べられて傾き角度を変更可能な複数のディフューザベーンを有するコンプレッサと、前記複数のノズルベーン及び前記複数のディフューザベーンのそれぞれを駆動する共通の駆動装置と、を備え、
前記駆動装置は、前記タービンと前記コンプレッサとの間に配置され、単一のアクチュエータにて回転駆動される駆動リングと、前記駆動リングの回転運動を前記複数のノズルベーンのそれぞれに伝達する第1伝達機構と、前記駆動リングの回転運動を前記複数のディフューザベーンのそれぞれに伝達する第2伝達機構と、を備え、
前記第1伝達機構は、一端部が前記駆動リングの内周側にリンク結合され、他端部が前記ノズルベーンと一体回転可能に結合された複数の第1駆動アームを有し、
前記第2伝達機構は、一端部が前記駆動リングの外周側にリンク結合され、他端部が前記ディフューザベーンと一体回転可能に結合された複数の第2駆動アームを有し、
前記第1駆動アーム及び前記第2駆動アームは、前記駆動リングに対する結合位置が前記駆動リングの回転軸線方向に関してオーバーラップした状態で前記駆動リングにリンク結合されていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記ディフューザベーンを支持する支持プレートと、前記駆動リングの内周に接触しつつ前記駆動リングを回転自在に支持するローラピンと、を更に備え、
前記ローラピンは、一端が前記支持プレートに結合され他端が自由端となるように前記支持プレートに片持ち支持されている、請求項1に記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−196543(P2010−196543A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40683(P2009−40683)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】