説明

チップ保持用テープ、チップ状ワークの保持方法、チップ保持用テープを用いた半導体装置の製造方法、及び、チップ保持用テープの製造方法

【課題】 チップ状ワークの貼り剥がしを容易とするチップ保持用テープを提供すること。
【解決手段】 基材上に粘着剤層が形成された構成を有しており、粘着剤層は、チップ状ワークを貼り付けるチップ状ワーク貼付領域と、マウントフレームを貼り付けるフレーム貼付領域とを有し、フレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付けて使用するチップ保持用テープであって、粘着剤層において、フレーム貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が、測定温度23±3℃、引張り速度300mm/分の条件下において、チップ状ワーク貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力の5倍以上であるチップ保持用テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ保持用テープ、チップ状ワークの保持方法、チップ保持用テープを用いた半導体装置の製造方法、及び、チップ保持用テープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造方法として、ダンシングフィルムに固定された半導体ウェハを複数個の半導体チップにダイシングする工程と、半導体チップをダンシングフィルムからピックアップする工程と、ピックアップした半導体チップを基板等の被着体にダイボンドする工程とを具備する製造方法が知られている。
【0003】
また、近年では、上記ダイシングフィルムの代わりに、ダイシングフィルム上にダイボンドフィルムが積層されたダイシング・ダイボンドフィルムが使用される場合もある。この場合、ダイシング工程では、ダイボンドフィルムとともに、半導体ウェハが切断され、ピックアップ工程では、ダイボンドフィルム付の半導体チップとしてピックアップされ、ダイボンド工程では、このダイボンドフィルムを介して半導体チップが被着体にダイボンドされる。
【0004】
一方、ピックアップした半導体チップを被着体にダイボンドせずに、一旦、保管する場合がある。チップ状ワークを保管する場合、従来、汎用されているダイシングフィルム等の粘着テープに半導体チップが貼り付けられて保持され、保管される。
【0005】
しかしながら、ダイボンドフィルム付の半導体チップを粘着テープに貼り付けて保持する場合、ダイボンドフィルムと粘着テープとの粘着性が強すぎて、保持したダイボンドフィルム付の半導体チップを再剥離できなかったり、長時間保持したときに経時的に接着力が上昇し、再剥離が困難になる場合があった。
【0006】
そこで、従来、外周部に粘着剤層が表出され、外周部の内側である央部に基材フィルムが表出されてなるダイソート用シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のダイソート用シートは、基材フィルムにダイボンドフィルム付の半導体チップを仮着しようとするものである。
【0007】
しかしながら、上記ダイソート用シートは、粘着力を有しない基材フィルムにダイボンドフィルム付の半導体チップを仮着しようとするものであるため、半導体チップに付されているダイボンドフィルムにある程度の粘着力を持たせる必要があり、ダイボンドフィルムを構成する材料の選択の余地を狭めることとなっていた。また、常温において粘着力の弱いダイボンドフィルムである場合には、仮着させるために、加温しなければならず、製造工程が複雑化するといった問題があった。
【0008】
また、上記の半導体装置の製造方法において、ダイシング・ダイボンドフィルムではなく、ダイシングフィルムを用いる場合、ピックアップされる半導体チップは、ダイボンドフィルムが付されておらず、粘着力を有さないため、上記ダイソート用シートを用いることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−100755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、チップ状ワークの貼り剥がしを容易とするチップ保持用テープ、当該チップ状ワークの保持方法、当該チップ保持用テープを用いた半導体装置の製造方法、及び、当該チップ保持用テープの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、チップ保持用テープについて検討した。その結果、マウントフレームを貼り付けるフレーム貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が、測定温度23±3℃、引張り速度300mm/分の条件下において、チップ状ワークを貼り付けるチップ状ワーク貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力の5倍以上とすることより好適にチップ状ワークを貼り剥がしできることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 基材上に粘着剤層が形成された構成を有しており、上記粘着剤層は、チップ状ワークを貼り付けるチップ状ワーク貼付領域と、マウントフレームを貼り付けるフレーム貼付領域とを有し、上記フレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付けて使用するチップ保持用テープであって、
上記粘着剤層において、上記フレーム貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が、測定温度23±3℃、引張り速度300mm/分の条件下において、上記チップ状ワーク貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力の5倍以上であることを特徴とするチップ保持用テープ。
【0013】
(1)の構成によれば、フレーム貼付領域での引き剥がし粘着力が、前記条件下において、チップ状ワーク貼付領域での引き剥がし粘着力の5倍以上であるため、粘着力の比較的強いフレーム貼付領域では、強固にマウントフレームを貼り付けることができるとともに、粘着力の比較的弱いチップ状ワーク貼付領域では、貼り剥がし可能にチップ状ワークを貼り付けることが可能となる。
特に、(1)の構成によれば、チップ状ワーク貼付領域は、ある程度の弱い粘着力を有しているため、粘着力を有する樹脂層(例えば、ダイボンドフィルム)が付されていないチップ状ワーク(例えば、半導体チップ)であっても、室温又は保管時の温度において粘着力をほとんど発揮しない樹脂層付きのチップ状ワークであっても、貼り付けることができる。
なお、本発明において、チップ状ワークとは、粘着力を有する樹脂層付きのチップ状ワークと、樹脂層なしのチップ状ワークとの両方を含む。
【0014】
(2) 上記(1)記載のチップ保持用テープであって、
上記チップ状ワーク貼付領域での粘着剤層のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が、測定温度23±3℃、引張り速度300mm/分の条件下において、0.01〜0.1N/20mmテープ幅であることが好ましい。
【0015】
(2)の構成によれば、チップ状ワーク貼付領域での粘着剤層の粘着力が、上記条件下において、0.01N/20mmテープ幅以上であるため、チップ状ワークが確実に貼り付き脱落することを防止することができる。また、0.1N/20mmテープ幅以下であるため、剥離の際に、加熱や放射線の照射等の操作をすることなく、引き剥がすことが可能となる。
【0016】
(3) 上記(1)又は(2)記載のチップ保持用テープであって、
上記チップ状ワーク貼付領域での粘着剤層のヤング率が3MPa以上であることが好ましい。
【0017】
(3)の構成によれば、チップ状ワーク貼付領域での粘着剤層のヤング率が3MPa以上であるため、チップ状ワークと粘着剤層との密着が強くなりすぎず、チップ状ワークを容易に剥離することができる。
【0018】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれか1のチップ保持用テープであって、
上記チップ保持用テープは、基材と、上記基材上に形成された放射線硬化型粘着剤層とを有しており、
上記チップ状ワーク貼付領域は、放射線照射による硬化により、粘着力が低下されて形成されたものであることが好ましい。
【0019】
(4)の構成によれば、チップ状ワーク貼付領域は、放射線照射による硬化により、粘着力が低下されて形成されたものであるため、架橋密度が高く、粘着剤層を構成するポリマーのミクロな動きが抑えられている。従って、長期間に渡ってチップ状ワークの表面に貼り付けても密着性の上昇が少なく、チップ状ワークを長期間(例えば、一ヶ月)貼り付けた状態とした後であっても、容易に剥離することができる。また、放射線照射量に応じてチップ状ワーク貼付領域の粘着力を設定できるため、所望の粘着力を得やすい。
【0020】
(5) 上記(1)〜(3)のいずれか1のチップ保持用テープであって、
上記粘着剤層は、表面に上記フレーム貼付領域を有する強粘着剤層と、表面に上記チップ状ワーク貼付領域を有する弱粘着剤層とが、基材上に両者が積層されていない形態で形成されたものであることが好ましい。
【0021】
(6) 上記(1)〜(3)のいずれか1のチップ保持用テープであって、
上記粘着剤層は、強粘着剤層と、上記強粘着剤層面の外周部を露出する態様で上記強粘着剤層上に積層された弱粘着剤層とを有し、
上記強粘着剤層の露出している部位は、上記フレーム貼付領域に相当し、
上記弱粘着剤層は、その表面が上記チップ状ワーク貼付領域に相当することが好ましい。
【0022】
(7) 上記(1)〜(3)のいずれか1のチップ保持用テープであって、
上記粘着剤層は、弱粘着剤層と、上記弱粘着剤層面の中央部を露出する態様で上記弱粘着剤層上に積層された強粘着剤層とを有し、
上記強粘着剤層は、その表面が上記フレーム貼付領域に相当し、
上記弱粘着剤層の露出している部位は、上記チップ状ワーク貼付領域に相当することが好ましい。
【0023】
また、本発明は、以下のようなものを提供する。
(8) ダイシングにより形成されたチップ状ワークの保持方法であって、
上記(1)〜(7)のいずれか1のチップ保持用テープのフレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付ける工程と、
チップ保持用テープのチップ状ワーク貼付領域に、ダイシングにより形成されたチップ状ワークを貼り付ける工程と
を具備することを特徴とするチップ状ワークの保持方法。
【0024】
(8)の構成によれば、チップ保持用テープのフレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付けて固定し、チップ保持用テープのチップ状ワーク貼付領域に、ダイシングにより形成されたチップ状ワークを貼り付けることにより、例えば、ダイシングにより形成されたチップ状ワークを、一旦、保管しておくことができる。なお、保管しておいたチップ状ワークは、必要に応じて、半導体装置の製造等に使用することかできる。
【0025】
また、本発明は、以下のようなものを提供する。
(9) 上記(1)〜(8)のいずれか1のチップ保持用テープを用いた半導体装置の製造方法であって、
ワークをダイシングする工程と、
ダイシングにより形成されたチップ状ワークを上記チップ保持用テープの上記チップ状ワーク貼付領域に貼り付ける工程と、
上記チップ保持用テープに貼り付けられた上記チップ状ワークを剥離する剥離工程と、
剥離した上記チップ状ワークを被着体に固定する工程と
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0026】
(9)の構成によれば、ダイシングにより形成されたチップ状ワークをチップ保持用テープのチップ状ワーク貼付領域に貼り付けて保持しておくことができる。そして、使用する段階で、チップ保持用テープからチップ状ワークを剥離し、被着体に固定する。従って、例えば、ピックアップ工程において、ピックアップされずに残った少量のチップ状ワークを、一旦、チップ保持用テープに寄せ集めて保持して保管しておき、その後、保管したチップ状ワークを半導体装置の製造に用いることが可能となる。その結果、チップ状ワークを保管する際に、省スペース化することが可能となる。
【0027】
(10) 上記(9)の半導体装置の製造方法であって、
上記剥離工程は、上記チップ状ワーク貼付領域の粘着力を低下させることなく、上記チップ状ワークを剥離する工程であることが好ましい。
【0028】
(10)の構成によれば、チップ状ワーク貼付領域の粘着力を低下させることなく、チップ状ワークを剥離するため、製造工程を簡略とすることができる。
【0029】
また、本発明は、以下のようなものを提供する。
(11) 上記(4)のチップ保持用テープの製造方法であって、
放射線硬化型粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、
上記放射線硬化型粘着剤層の一部に放射線を照射して硬化させ、硬化により粘着力が低下したチップ状ワーク貼付領域と、硬化せず、粘着力が低下していないフレーム貼付領域とを形成する放射線照射工程とを具備することを特徴とするチップ保持用テープの製造方法。
【0030】
(11)の構成によれば、放射線を照射して硬化させ、硬化により粘着力が低下したチップ状ワーク貼付領域と、硬化せず、粘着力が低下していないフレーム貼付領域とを形成するため、放射線照射量に応じてチップ状ワーク貼付領域の粘着力を設定でき、所望の粘着力を得やすい。また、放射線の照射により、粘着力に差を設けることかできるため、簡便にチップ保持用テープを製造することができる。
【0031】
(12) 上記(11)のチップ保持用テープの製造方法であって、
さらに、基材上に積層された放射線硬化型粘着剤層のフレーム貼付領域に対応する部位に、放射線遮光機能を有する放射線遮光層を形成する放射線遮光層形成工程を具備しており、
上記放射線照射工程は、上記基材面側から放射線を照射してチップ状ワーク貼付領域に対応する部位の放射線硬化型粘着剤層を硬化させ、硬化により粘着力が低下したチップ状ワーク貼付領域と、硬化せず、粘着力が低下していないフレーム貼付領域とを形成する工程であることが好ましい。
【0032】
(13) 上記(12)のチップ保持用テープの製造方法であって、
上記放射線遮光層形成工程は、上記放射線遮光層を、印刷法を利用して形成する工程であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図であり、(b)は、その平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0035】
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図であり、図1(b)は、その平面図である。図1(a)に示すにように、チップ保持用テープ10は、基材12の外周に沿って放射線遮光機能を有する印刷層20が形成されており、さらに、粘着剤層14が、印刷層20の形成されていない基材12、及び、印刷層20上に積層されて構成されている。
【0036】
基材12は、チップ保持用テープ10の強度母体となるものである。基材12の材質としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。
【0037】
基材12の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。基材12の材質は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材12には、帯電防止能を付与する為、前記の基材12上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材12は単層あるいは2種以上の複層でもよい。尚、基材12としては、粘着剤層が放射線硬化型粘着剤層である場合、X線、紫外線、電子線等の放射線を少なくとも一部透過するものを用いることが好適である。
【0038】
基材12の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0039】
粘着剤層14は、平面視外周沿いにフレーム貼付領域16を有しており、平面視中央部分にチップ状ワーク貼付領域18(以下、チップ貼付領域18ともいう)を有している。フレーム貼付領域16は、使用時にマウントフレームが貼り付けられる領域であり、チップ保持用テープ10をマウントフレームに固定するための領域である。チップ貼付領域18は、使用時に個片化されたダイボンドフィルム付の半導体チップ42、又は、ダイボンドフィルムが付されていない半導体チップ42が貼り付けられる領域である。第1実施形態では、印刷層20が形成されている部分に対応する領域がフレーム貼付領域16であり、印刷層20が形成されていない部分に対応する領域がチップ貼付領域18に相当する。
【0040】
粘着剤層14は、放射線硬化型粘着剤を含み構成されている。放射線硬化型粘着剤は、放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。図1(a)及び図1(b)に示す粘着剤層14では、チップ貼付領域18が放射線照射によりフレーム貼付領域16との間に粘着力の差が設けられている。第1実施形態では、基材12面側(図1(a)中、下側)からチップ保持用テープ10の全面に放射線を照射すると、チップ貼付領域18には放射線が到達し、粘着力が低下する。一方、フレーム貼付領域16には、印刷層20により放射線が遮光されるため、粘着力は低下しない。従って、基材12面側からチップ保持用テープ10の全面に放射線を照射することにより、フレーム貼付領域16とチップ貼付領域18との粘着力に差を設けることができる。硬化し、粘着力の低下したチップ貼付領域18にダイボンドフィルム付きのチップ状ワークが貼付けられる為、粘着剤層14のチップ貼付領域18とダイボンドフィルムとの界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、放射線を照射していないフレーム貼付領域16は十分な粘着力を有しており、マウントフレームにチップ保持用テープ10を強固に固定することができる。放射線としては、例えば、紫外線、電子線等が例示できる。
【0041】
粘着剤層14のフレーム貼付領域16でのシリコンミラーウェハに対する粘着力は、チップ貼付領域18でのシリコンミラーウェハに対する粘着力の5倍以上であり、好ましくは、10倍以上である。フレーム貼付領域16での引き剥がし粘着力が、チップ貼付領域18での引き剥がし粘着力の5倍以上であるため、粘着力の比較的強いフレーム貼付領域16では、強固にマウントフレームを貼り付けることができるとともに、粘着力の比較的弱いチップ貼付領域18では、貼り剥がし可能に半導体チップ42を貼り付けることが可能となる。
【0042】
粘着剤層14のフレーム貼付領域16での粘着力は、0.2〜20N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.3〜10N/20mmテープ幅であることがより好ましい。0.2N/20mmテープ幅以上とすることにより、マウントフレームに強固に固定することができるからである。また、20N/20mmテープ幅以下とすることにより、マウントフレームへの粘着剤の残留を防止することができるからである。
【0043】
粘着剤層14のチップ貼付領域18での粘着力は、0.01〜0.1N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.02〜0.08N/20mmテープ幅であることがより好ましい。粘着剤層14のフレーム貼付領域16及びチップ貼付領域18での粘着力は、JIS Z 0237に準じて測定した値であり、シリコンミラーウェハに貼り付けた後、測定温度23±3℃で、粘着剤層14の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角θを180°とし、引張り速度300mm/分として、粘着シート10を引き剥がした場合の値である。チップ貼付領域18での粘着力が、0.01N/20mmテープ幅以上であると、半導体チップ42が確実に貼り付き、脱落することを防止することができる。また、0.1N/20mmテープ幅以下であると、剥離の際に、加熱や放射線の照射等の操作をすることなく、引き剥がすことが可能となる。
【0044】
粘着剤層14のフレーム貼付領域16でのヤング率は、0.01〜2MPaであることが好ましく、0.05〜1MPaであることがより好ましい。
【0045】
粘着剤層14のチップ貼付領域18でのヤング率は、3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましい。また、チップ貼付領域18でのヤング率は、1000MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましい。チップ貼付領域18でのヤング率が3MPa以上であると、チップを容易に剥離することができるからである。また、チップ貼付領域18でのヤング率が1000MPa以下であると、チップを容易に固定できるからである。
なお、本発明において、ヤング率は、JIS K 7127に従って、長さ100mm、幅50mmの短冊状に切断した試験片を用い、測定時温度23±3℃、測定時湿度50±10%Rh、引張り速度50mm/分の条件下にて測定される値をいう。
【0046】
粘着剤層14のフレーム貼付領域16でのせん断接着力は、0.01〜10MPaであることが好ましく、0.1〜5MPaであることがより好ましい。0.01MPa以上であると、エキスパンド時にフレームからテープが剥がれにくく、10MPa以下であると、使用後に容易にテープをフレームから剥離できるからである。
【0047】
粘着剤層14のフレーム貼付領域16での定荷重剥離速度は、20mm/時間以下が好ましく、10mm/時間以下がより好ましい。テープの端がめくれて、フレームから脱落するのを防止できるからである。本発明において、定荷重剥離速度は、長さ100mmで幅20mmの短冊状に切断した、チップ保持用テープ10のフレーム貼付領域(印刷が施されている部分)が貼り付けられたSUS304BA板を、チップ保持用テープ10が下面となるように水平に保持した状態で、チップ保持用テープ10の一端に2gのおもりを90°方向(鉛直方向)に取り付けたときの剥離する速度をいう。
【0048】
前記放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。また、放射線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤も使用することができる。
【0049】
前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0050】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なかでも、アクリル酸−ヘキシルエステル、アクリル酸−ヘプチルエステル、アクリル酸−オクチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸−イソオクチルエステル、アクリル酸−ノニルエステル、アクリル酸−デシルエステル、アクリル酸−イソデシルエステル、アクリル酸−ウンデシルエステル、アクリル酸−ドデシルエステル等のアルキル基の炭素数が6〜12(特に6〜10)の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体成分として用いた疎水性側鎖の長いポリマーが好ましい。疎水性側鎖の長いポリマーを用いることにより、チップ貼付領域18のダイボンドフィルムへの相溶性を比較的小さくすることができ、圧着したチップ状ワークを、剥離し易くすることができるからである。尚、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0051】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。ただし、本発明において、前記アクリル系ポリマーは、極性基の少ないことが好ましいことから、これら共重合可能なモノマーは、使用しないか、全モノマー成分の3重量%以下とすることが好ましい。また、これらのモノマー成分のうち、本発明の粘着剤層14を構成するアクリル系ポリマーはモノマー成分としてアクリル酸を含まない方が好ましい。アクリル酸はダイボンドフィルムに物質拡散し、粘着剤層14と、粘着剤層14に貼り付けられるダイボンドフィルムとの境界面を消失させて剥離性を低下する場合があるからである。
【0052】
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋させる為、多官能性モノマー等も、必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0053】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは30万以上、更に好ましくは40万〜300万程度である。なお、上記数平均分子量はGPC(ゲル・バーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0054】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。外部架橋剤の添加量は、前記ベースポリマー100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.2〜10重量部がより好ましい。粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0055】
配合する前記放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部程度である。
【0056】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の放射線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子量成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0057】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0058】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計が容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0059】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0060】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。放射線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して100重量部の範囲内であり、好ましくは0〜50重量部の範囲である。本発明において、配合する前記放射線硬化性のモノマー成分、及び/又は、オリゴマー成分は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、0〜100重量部が好ましく、0〜80重量部がより好ましい。放射線硬化性のモノマー成分、及び/又は、オリゴマー成分を配合することにより、放射線による硬化を促進して、チップ貼付領域18の粘着力を比較的小さくすることができ、圧着したチップ状ワークを剥離し易くすることができるからである。
【0061】
前記放射線硬化型粘着剤には、放射線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させるのが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0062】
また放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0063】
粘着剤層14の厚さは特に限定されないが、チップ状ワークの固定保持の点から、1〜50μm程度が好ましく、より好ましくは2〜30μm、更に好ましくは5〜25μmである。
【0064】
印刷層20は、放射線遮光機能を有する材料を含み構成されている。本発明において、放射線遮光機能とは、可視光線のみならず、X線、紫外線、電子線等を含む放射線(特に、放射線硬化型粘着剤を硬化させるための光重合開始剤を活性化可能な放射線)の透過量を減少させる機能をいう。放射線遮光機能を有する材料としては、放射線(特に、放射線硬化型粘着剤層中の光重合開始剤を活性化可能な放射線)の透過を完全に遮るものがより好適であるが、放射線(特に、放射線硬化型粘着剤層中の光重合開始剤を活性化可能な放射線)の透過率を50%以下(特に10%以下)にすることができるものが好適である。従って、印刷層20により、基材12側から放射線を照射しても、粘着剤層14としての放射線硬化型粘着剤層におけるフレーム貼付領域での180度引き剥がし粘着力の低下を抑制又は防止することができ、粘着剤層14におけるチップ状ワーク貼付領域での180度引き剥がし粘着力と、フレーム貼付領域での180度引き剥がし粘着力との比をコントロールすることができる。なお、基材12側から放射線を照射した後の粘着剤層14のフレーム貼付領域での180度引き剥がし粘着力としては、剥離角度:180°、測定温度:23±3℃、引張り速度:300mm/分、被着体:シリコンミラーウェハの条件下において、放射線照射前の180度引き剥がし粘着力に対して50%以上(特に80%以上、中でも90%以上)の大きさを有しており、0.2〜20N/20mmの範囲にあることが好ましい。放射線遮光機能を有する材料としては、光重合開始剤の種類に応じて適宜選択することが好ましい。具体的には、放射線遮光機能を有する材料としては、特に限定されないが、例えば、CeO2、TiO2、ZnO、Fe23、V25、PbOなどの紫外線吸収性を有する無機物を含有するインキや、アルミ蒸着PETフィルム(アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム)などが挙げられる。印刷層20の厚さは特に限定されないが、通常50μm以下(例えば0.05〜50μm)、好ましくは0.05〜10μm、さらに好ましくは0.1〜2μm程度である。
【0065】
チップ保持用テープ10は、チップ貼付領域18が粘着力を有するため、ダイシングフィルムを用いて個片化された半導体チップ(ダイボンドフィルム等の樹脂層が裏面に形成されていない半導体チップ)を引き剥がし可能な状態で保持するために使用することができる。また、個片化する前のシリコンウエハ(例えば、裏面が研削されたシリコンウェハや、裏面研削後にポリッシュされたシリコンウェハなど)に対しても使用することができる。
【0066】
また、チップ保持用テープ10は、例えば、ダイシング・ダイボンドフィルムを用いて個片化されたダイボンドフィルム付の半導体チップを引き剥がし可能な状態で保持するために使用することもできる。そこで、次に、チップ保持用テープに貼り付けられるダイシング・ダイボンドフィルムについて説明することとする。
【0067】
(ダイシング・ダイボンドフィルム)
図2は、本発明の第1実施形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。図2に示すにように、ダイシング・ダイボンドフィルム30は、ダイシングフィルム32上にダイボンドフィルム34が積層された構成を有する。ダイシングフィルム32は基材36上に粘着剤層38を積層して構成されており、ダイボンドフィルム34は粘着剤層38上に設けられている。なお、ダイシング・ダイボンドフィルム30を構成するダイシングフィルム32については、従来公知のものを用いることができるため、ここでの詳細な説明は省略することとする。
【0068】
ダイボンドフィルム34を構成する接着剤組成物としては、例えば、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を併用したものが挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0069】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0070】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0071】
前記熱硬化性樹脂の配合割合としては、100〜250℃の条件下で加熱した際にダイボンドフィルム34が熱硬化型としての機能を発揮する程度であれば特に限定されないが、一般的に、5〜60重量%の範囲内であることが好ましく、10〜50重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0072】
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0073】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0074】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0075】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0076】
ダイボンドフィルム34を予めある程度架橋をさせておく場合には、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。
【0077】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0078】
また、ダイボンドフィルム34には、その用途に応じて無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鉛、錫、亜鉛、パラジウム、半田等の金属、又は合金類、その他カーボン等からなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0079】
尚、ダイボンドフィルム34には、前記無機充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0080】
ダイボンドフィルム34の厚さ(積層体の場合は、総厚)は特に限定されないが、例えば、5〜100μm程度、好ましくは5〜50μm程度である。
【0081】
(チップ保持用テープの作製)
第1実施形態に係るチップ保持用テープ10(図1(a)参照)は、例えば、次の通りにして作製される。
【0082】
先ず、基材12(図1(a)参照)は、従来公知の製膜方法により製膜することができる。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0083】
次に、基材12上に印刷層20を印刷法により形成する(放射線遮光層形成工程)。印刷法としては特に限定されず、例えば、凸版式印刷法、平版式印刷法、凹版印刷法、孔版印刷法が挙げられる。
【0084】
次に、基材12上に粘着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ(必要に応じて加熱架橋させて)、粘着剤層14を形成する(粘着剤層形成工程)。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度80〜150℃、乾燥時間0.5〜5分間の範囲内で行うことができる。また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて粘着剤層14を形成してもよい。その後、基材12上に粘着剤層14をセパレータと共に貼り合わせる。これにより、チップ保持用テープ10を製造することができる。
【0085】
次に、チップ保持用テープ10の全面に基材12面側から放射線を照射する(放射線照射工程)。そうすると、チップ貼付領域18には放射線が到達するため、硬化し粘着力が低下する。このとき、粘着剤層14の硬化は、放射線の照射を一定量とし、一定の粘着力(例えば、180度引き剥がし粘着力で、0.01〜0.1N/20mmテープ幅)を有する程度に行う。なお、上記放射線の照射条件としては、剥離角度:180°、測定温度:23±3℃、引張り速度:300mm/分、被着体:シリコンミラーウェハの条件下において、粘着剤層14のチップ状ワーク貼付領域での180度引き剥がし粘着力が、フレーム貼付領域での180度引き剥がし粘着力に対して20%以下(1/5以下)の大きさになるような照射条件であれば特に制限されず、例えば、波長10nm〜400nmの紫外線の照射強度が1mW/cm〜200mW/cm(好ましくは10mW/cm〜100mW/cm)の範囲内であり、前記紫外線の積算光量が100mJ/cm〜1000mJ/cm(好ましくは200mJ/cm〜800mJ/cm)の範囲内である照射条件であってもよい。具体的には、例えば、高圧水銀ランプによる光照射で、照射強度が1mW/cm〜200mW/cm(好ましくは10mW/cm〜100mW/cm)の範囲内であり、前記紫外線の積算光量が100mJ/cm〜1000mJ/cm(好ましくは200mJ/cm〜800mJ/cm)の範囲内である照射条件であってもよい。
【0086】
一方、フレーム貼付領域16には、前述のように、印刷層20により放射線が遮光されるため、粘着力はほとんど低下せずそのまま維持される。これにより、フレーム貼付領域16とチップ貼付領域18との間に粘着力の差が設けられたチップ保持用テープ10が作製される。
【0087】
(ダイシング・ダイボンドフィルムの作製)
ダイシング・ダイボンドフィルム30(図2参照)は、例えば、次の通りにして作製される。
先ず、ダイボンドフィルムの形成材料である接着剤組成物溶液を作製する。次に、接着剤組成物溶液を基材セパレータ上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜を所定条件下で乾燥させ、接着剤層34を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜5分間の範囲内で行われる。また、セパレータ上に粘着剤組成物溶液を塗布して塗布膜を形成した後、前記乾燥条件で塗布膜を乾燥させて接着剤層を形成してもよい。その後、基材セパレータ上に接着剤層をセパレータと共に貼り合わせる。
【0088】
続いて、接着剤層34からセパレータを剥離し、ダイシングフィルム32に貼り合わせる。このとき、接着剤層とダイシングフィルム32の粘着剤層38とが貼り合わせ面となる様にして両者を貼り合わせる。貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されず、例えば30〜50℃が好ましく、35〜45℃がより好ましい。また、線圧は特に限定されず、例えば0.1〜20kgf/cmが好ましく、1〜10kgf/cmがより好ましい。次に、接着剤層上の基材セパレータを剥離し、ダイシング・ダイボンドフィルム30が得られる。
【0089】
(半導体装置の製造)
次に、半導体装置の製造方法について説明する。
先ず、ダイシング・ダイボンドフィルム30上に半導体ウェハ40を圧着して固定する(図2参照)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。マウントの際の貼り付け温度は特に限定されず、例えば20〜80℃の範囲内であることが好ましい。
【0090】
次に、半導体ウェハ40のダイシングを行う。これにより、半導体ウェハ40を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ42を得る。ダイシングは、例えば半導体ウェハ40の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシング・ダイボンドフィルム30まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
【0091】
ダイシング・ダイボンドフィルム30に固定された半導体チップを剥離する為に、半導体チップ42のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ42をダイシング・ダイボンドフィルム30側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ42をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0092】
ピックアップ工程において、全ての半導体チップを使用しない場合もあり、その場合には、ダイシングフィルム32上に一部(例えば、少数)の半導体チップ42が残ったままとなる。
【0093】
ここで、チップ保持用テープ10(図1(b)参照)のフレーム貼付領域16にマウントフレームを予め貼り付けておく。そして、ダイシングフィルム32上に残った半導体チップ42を、チップ保持用テープ10に貼り付ける。貼り付けは、圧着により行うことができる。これにより、複数のダイシングフィルム32上に残った半導体チップ42を一旦、チップ保持用テープ10に寄せ集めて保持して保管しておき、その後、保管した半導体チップ42を半導体装置の製造に用いることが可能となる。その結果、半導体チップ42を保管する際に、省スペース化することが可能となる。なお、チップ保持用テープ10への貼り付けは、半導体チップ42を一時的に保持しておくために行われる。すなわち、チップ保持用テープ10に貼り付けられた半導体チップ42は、後に再び剥離されるため、上記貼り付けにおいては、ダイボンドフィルムを熱硬化させる等の後硬化工程は行わない。
【0094】
チップ保持用テープ10を用いて集められた半導体チップ42は、別途、半導体装置の製造に用いられることとなる。そこで、半導体チップ42を用いた半導体装置の製造方法について、図3を参照しながら説明することとする。
【0095】
図3は、本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面模式図である。まず、チップ保持用テープ10に貼り付けられている、ダイボンドフィルム36付きの半導体チップ42を、チップ貼付領域18の粘着力を低下させることなく剥離する。ここで、「粘着力を低下させることなく剥離する」とは、放射線硬化型の粘着剤層に放射線を照射して硬化させ、粘着力を低下させるといったような化学的変化を起こさせたり、後述する熱発泡性を有する粘着剤層に熱を加えて、粘着力を低下させるといったような物理的変化を起こさせることなく、チップ状ワーク(半導体チップ)を剥離することをいう。剥離は、通常のダイシングした半導体チップをダイボンディング工程でピックアップするのと同様に、ピックアップにて行うことができる。
【0096】
ピックアップした半導体チップ42は、図3に示すように、ダイボンドフィルム34を介して被着体44に接着固定される(ダイボンド)。被着体44としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体44は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。
【0097】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0098】
ダイボンドフィルム34は熱硬化型であるので、加熱硬化により、半導体チップ42を被着体44に接着固定し、耐熱強度を向上させる。尚、半導体チップ42が基板等に接着固定されたものは、リフロー工程に供することができる。
【0099】
尚、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ダイボンドフィルム34の加熱処理による熱硬化工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、更に半導体チップ42を封止樹脂で封止して、当該封止樹脂をアフターキュアしてもよい。
【0100】
前記のワイヤーボンディングは、被着体44の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ42上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー46で電気的に接続する工程である。ボンディングワイヤー46としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。本工程は、ダイボンドフィルム34の熱硬化を行うことなく実行することができる。
【0101】
前記封止工程は、封止樹脂48により半導体チップ42を封止する工程である。本工程は、被着体44に搭載された半導体チップ42やボンディングワイヤー46を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂48としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、ダイボンドフィルム34を介して半導体チップ42と被着体44とを固着させる。
【0102】
前記後硬化工程に於いては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂48を完全に硬化させる。封止工程に於いてダイボンドフィルム34が完全に熱硬化していない場合でも、本工程に於いて封止樹脂48と共にダイボンドフィルム34の完全な熱硬化が可能となる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。以上により、半導体装置50が製造される。
【0103】
上述した第1実施形態に係るチップ保持用テープ10では、印刷により印刷層20を形成する場合について説明したが、本発明において放射線遮光機能を有する層は、印刷に限定されず、塗布等によって形成してもよい。
【0104】
上述した第1実施形態に係るチップ保持用テープ10では、印刷層20が、基材12と粘着剤層14との間に形成されている場合について説明したが、本発明において紫外線遮光層(印刷層)は、基材の粘着層とは反対側の面に形成されていてもよい。
【0105】
第1実施形態に係るチップ保持用テープ10では、印刷層20を設け、チップ保持用テープ10の全面に放射線を照射してフレーム貼付領域16とチップ貼付領域18との間に粘着力の差を設ける場合について説明した。しかしながら、本発明においては、放射線遮光層(印刷層20)を設けることなく、チップ貼付領域18にのみに放射線を照射することとしてもよい。この場合、フレーム貼付領域への放射線照射を遮光するためのマスクをチップ保持用テープに重ねた上で放射線を照射することとしてもよい。
【0106】
第1実施形態に係るチップ保持用テープ10では、放射線照射により、フレーム貼付領域16とチップ貼付領域18との間に粘着力の差を設ける場合について説明したが、本発明においてはこの例に限定されず、異なる組成の粘着剤組成物溶液を塗布することにより、フレーム貼付領域16とチップ貼付領域18との間に粘着力の差を設けることとしてもよい。この場合、例えば、フレーム貼付領域16には、第1実施形態にて説明した粘着剤組成物溶液を用いればよく、チップ貼付領域18には、粘着力がフレーム貼付領域16での粘着力の1/5以下となるように配合を適宜調整して作製した粘着剤組成物溶液を用いればよい。なお、異なる組成の粘着剤組成物溶液で塗り分ける場合、放射線遮光層(印刷層20)を設ける必要はない。また、放射線硬化型粘着剤を用いる必要はなく、一般的な感圧性接着剤を用いればよい。
【0107】
第1実施形態に係るチップ保持用テープ10では、放射線照射により、フレーム貼付領域16とチップ貼付領域18との間に粘着力の差を設ける場合について説明したが、本発明においては、熱剥離型粘着剤を使用してもよい。熱剥離型粘着剤を使用しても、フレーム貼付領域とチップ状ワーク貼付領域との間に粘着力の差を設けることが可能であるからである。
【0108】
熱剥離型粘着剤としては、アクリルポリマー等に熱膨張性微粒子が配合された熱発泡型粘着剤が挙げられる。チップ状ワーク貼付領域を加熱することで粘着剤層が発泡もしくは膨張して粘着剤層表面を凹凸状に変化させる。その結果、チップ状ワーク貼付領域での粘着力が低減し、チップ状ワーク貼付領域とフレーム貼付領域との間に粘着力の差が形成される。
【0109】
前記熱膨張性微粒子については特に限定はなく、種々の無機系又は有機系の熱膨張性微小球を選択使用することができる。また、熱膨張性物質をマイクロカプセル化してなる膨張性微粒子も使用可能である。なお、熱剥離型粘着剤を用いる場合、放射線遮光層(印刷層20)は設ける必要はない。
【0110】
第1実施形態に係るチップ保持用テープ10では、フレーム貼付領域16とチップ貼付領域18とが連続している場合について説明したが、以下に示すように、フレーム貼付領域とチップ状ワーク貼付領域との間に隙間が設けられていてもよい。
【0111】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図である。図4に示すにように、チップ保持用テープ60は、基材62と、基材62上に積層された粘着剤層64とを有している。基材62としては、第1実施形態に係る基材12と同様の構成とすることができる。粘着剤層64は、平面視外周沿いに形成され、その表面がフレーム貼付領域66に相当する強粘着剤層64aと、平面視中央部分に形成され、その表面がチップ貼付領域68に相当する弱粘着剤層64bとから構成されている。また、フレーム貼付領域66とチップ貼付領域68と境界には、隙間67が設けられている。このように、本発明においては、チップ状ワーク貼付領域が著しく狭くならない範囲内であれば、チップ状ワーク貼付領域とフレーム貼付領域との間に隙間があってもよい。
【0112】
粘着剤層64の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、上述したように、フレーム貼付領域66とチップ貼付領域68とを異なる組成の粘着剤組成物溶液で塗り分ける方法を採用することができる。すなわち、基材上に強粘着剤層形成用(フレーム貼付領域66形成用)の粘着剤組成物溶液と、弱粘着剤層形成用(チップ貼付領域68形成用)の粘着剤組成物溶液とを用いて、強粘着剤層と、弱粘着剤層とを基材上に両者が積層されていない形態で形成する工程を含む具備するチップ保持用テープの製造方法、を採用することができる。この場合、放射線硬化型粘着剤を用いる必要はなく、一般的な感圧性粘着剤を用いればよい。また、チップ保持用テープ10(図1(a)参照)のように、紫外線遮光層(印刷層20)を設けるとともに、粘着剤層として放射線硬化型粘着剤を用い、放射線の照射により、フレーム貼付領域66とチップ貼付領域68との間に粘着力の差を設けることとしてもよい。放射線硬化型粘着剤を用いる場合、第1実施形態にて説明したものを用いることができる。
【0113】
フレーム貼付領域66でのシリコンミラーウェハに対する粘着力は、ワーク貼付領域68でのシリコンミラーウェハに対する粘着力の5倍以上であり、好ましくは、10倍以上である。フレーム貼付領域66での引き剥がし粘着力が、チップ貼付領域68での引き剥がし粘着力の5倍以上であるため、粘着力の比較的強いフレーム貼付領域66では、強固にマウントフレームを貼り付けることができるとともに、粘着力の比較的弱いチップ貼付領域68では、貼り剥がし可能に半導体チップ42を貼り付けることが可能となる。
【0114】
フレーム貼付領域66での粘着力は、0.2〜20N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.3〜10N/20mmテープ幅であることがより好ましい。0.2N/20mmテープ幅以上とすることにより、マウントフレームに強固に固定することができるからである。また、20N/20mmテープ幅以下とすることにより、マウントフレームへの粘着剤の残留を防止することができるからである。
【0115】
チップ貼付領域68での粘着力は、0.01〜0.1N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.02〜0.08N/20mmテープ幅であることがより好ましい。フレーム貼付領域66及びチップ貼付領域68での粘着力は、JIS Z0237に準じて測定した値であり、シリコンミラーウェハに貼り付けた後、測定温度23±3℃で、粘着剤層64(強粘着剤層64a、弱粘着剤層64b)の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角θを180°とし、引張り速度300mm/分として、チップ保持用テープ60を引き剥がした場合の値である。チップ貼付領域68での粘着力が、0.01N/20mmテープ幅以上であると、半導体チップ42が確実に貼り付き、脱落することを防止することができる。また、0.1N/20mmテープ幅以下であると、剥離の際に、加熱や放射線の照射等の操作をすることなく、引き剥がすことが可能となる。
【0116】
フレーム貼付領域66でのヤング率は、0.01〜2MPaであることが好ましく、0.05〜1MPaであることがより好ましい。
【0117】
チップ貼付領域68でのヤング率は、3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましい。また、チップ貼付領域68でのヤング率は、1000MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましい。チップ貼付領域68でのヤング率が3MPa以上であると、チップを容易に剥離することができるからである。また、チップ貼付領域68でのヤング率が1000MPa以下であると、チップを容易に固定することができるからである。
【0118】
本発明において、フレーム貼付領域とチップ状ワーク貼付領域とは、下記のように形成してもよい。
【0119】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図である。図5に示すにように、チップ保持用テープ70は、基材72と、基材72上に積層された強粘着剤層74と、強粘着剤層74上に積層された弱粘着剤層75とを有している。基材72としては、第1実施形態に係る基材12と同様の構成とすることができる。弱粘着剤層75は、平面視での面積が強粘着剤層74より小さく、強粘着剤層74の外周部が露出するように強粘着剤層74上に積層されている。強粘着剤層74の外周部が露出したフレーム貼付領域76は、マウントフレームが貼り付けられる領域であり、弱粘着剤層75の表面(チップ貼付領域78)は、個片化されたチップ状ワークが貼り付けられる領域である。
【0120】
チップ保持用テープ70の作製方法としては、特に限定されないが、基材上に強粘着剤層を形成する工程と、強粘着剤層面の外周部を露出する態様で強粘着剤層上に弱粘着剤層を形成する工程とを具備するチップ保持用テープの製造方法、を採用することができる。このような製造方法としては、例えば、基材72上に強粘着剤層74を塗布により形成するとともに、弱粘着剤層75を別個に作製しておき、これらを貼り合わせる方法や、基材72上に形成された強粘着剤層74に、粘着剤組成物溶液を塗布し、弱粘着剤層75を得る方法を挙げることができる。弱粘着剤層75を別個に作製する場合、その作製方法としては、粘着力が強粘着剤層74の粘着力の1/5以下となるように配合を適宜調整して作製した粘着剤組成物溶液を用いて作製することとしてもよく、放射線硬化型粘着剤を用い、粘着剤を形成した後に放射線を照射して所定の粘着力を有する弱粘着剤層75を作製することとしてもよい。放射線硬化型粘着剤を用いる場合、第1実施形態にて説明したものを用いることができる。
【0121】
強粘着剤層74でのシリコンミラーウェハに対する粘着力は、弱粘着剤層75でのシリコンミラーウェハに対する粘着力の5倍以上であり、好ましくは、10倍以上である。強粘着剤層74での引き剥がし粘着力が、弱粘着剤層75での引き剥がし粘着力の5倍以上であるため、粘着力の比較的強い強粘着剤層74では、強固にマウントフレームを貼り付けることができるとともに、粘着力の比較的弱い弱粘着剤層75では、貼り剥がし可能に半導体チップ42を貼り付けることが可能となる。
【0122】
強粘着剤層74の粘着力は、0.2〜20N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.3〜10N/20mmテープ幅であることがより好ましい。0.2N/20mmテープ幅以上とすることにより、マウントフレームに強固に固定することができるからである。また、20N/20mmテープ幅以下とすることにより、マウントフレームへの粘着剤の残留を防止することができるからである。
【0123】
弱粘着剤層75の粘着力は、0.01〜0.1N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.02〜0.08N/20mmテープ幅であることがより好ましい。強粘着剤層74及び弱粘着剤層75の粘着力は、JIS Z0237に準じて測定した値であり、シリコンミラーウェハに貼り付けた後、測定温度23±3℃で、強粘着剤層74又は弱粘着剤層75の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角θを180°とし、引張り速度300mm/分として、チップ保持用テープ70を引き剥がした場合の値である。弱粘着剤層75の粘着力が、0.01N/20mmテープ幅以上であると、半導体チップ42が確実に貼り付き、脱落することを防止することができる。また、0.1N/20mmテープ幅以下であると、剥離の際に、加熱や放射線の照射等の操作をすることなく、引き剥がすことが可能となる。
【0124】
強粘着剤層74のヤング率は、0.01〜2MPaであることが好ましく、0.05〜1MPaであることがより好ましい。
【0125】
弱粘着剤層75のヤング率は、3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましい。また、弱粘着剤層75でのヤング率は、1000MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましい。チップ状ワーク貼付領域でのヤング率が3MPa以上であると、チップを容易に剥離することができるからである。また、弱粘着剤層75のヤング率が1000MPa以下であると、チップを容易に固定することができるからである。
【0126】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態に係るチップ保持用テープを示す断面模式図である。図6に示すにように、チップ保持用テープ80は、基材82と、基材82上に積層された弱粘着剤層84と、弱粘着剤層84上に積層された強粘着剤層85とを有している。基材82としては、第1実施形態に係る基材12と同様の構成とすることができる。強粘着剤層85は、弱粘着剤層84の中央に位置するチップ貼付領域88が露出するように、中央部分がくり抜かれたドーナツ形状のフレーム貼付領域86を有している。
【0127】
チップ保持用テープ80の作製方法としては、特に限定されず、基材上に弱粘着剤層を形成する工程と、弱粘着剤層面の中央部を露出する態様で弱粘着剤層上に強粘着剤層を形成する工程とを具備するチップ保持用テープの製造方法、を採用することができ、例えば、第4実施形態に係るチップ保持用テープ70と同様の方法で作製することができる。
【0128】
強粘着剤層85のシリコンミラーウェハに対する粘着力は、弱粘着剤層84のシリコンミラーウェハに対する粘着力の5倍以上であり、好ましくは、10倍以上である。強粘着剤層85の引き剥がし粘着力が、弱粘着剤層84の引き剥がし粘着力の5倍以上であるため、粘着力の比較的強い強粘着剤層85では、強固にマウントフレームを貼り付けることができるとともに、粘着力の比較的弱い弱粘着剤層84では、貼り剥がし可能に半導体チップ42を貼り付けることが可能となる。
【0129】
強粘着剤層85の粘着力は、0.2〜20N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.3〜10N/20mmテープ幅であることがより好ましい。0.2N/20mmテープ幅以上とすることにより、マウントフレームに強固に固定することができるからである。また、20N/20mmテープ幅以下とすることにより、マウントフレームへののり残りを防止することができるからである。
【0130】
弱粘着剤層84の粘着力は、0.01〜0.1N/20mmテープ幅であることが好ましく、0.02〜0.08N/20mmテープ幅であることがより好ましい。強粘着剤層85及び弱粘着剤層84の粘着力は、JIS Z0237に準じて測定した値であり、シリコンミラーウェハに貼り付けた後、測定温度23±3℃で、強粘着剤層85又は弱粘着剤層84の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角θを180°とし、引張り速度300mm/分として、チップ保持用テープ80を引き剥がした場合の値である。弱粘着剤層84の粘着力が、0.01N/20mmテープ幅以上であると、半導体チップ42が確実に貼り付き、脱落することを防止することができる。また、0.1N/20mmテープ幅以下であると、剥離の際に、加熱や放射線の照射等の操作をすることなく、引き剥がすことが可能となる。
【0131】
強粘着剤層85のヤング率は、0.01〜2MPaであることが好ましく、0.05〜1MPaであることがより好ましい。
【0132】
弱粘着剤層84のヤング率は、3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましい。また、弱粘着剤層84でのヤング率は、1000MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましい。チップ状ワーク貼付領域でのヤング率が3MPa以上であると、チップを容易に剥離することができるからである。また、弱粘着剤層84のヤング率が1000MPa以下であると、チップを容易に固定ですることができるからである。
【0133】
上述した実施形態では、使用されなかった半導体チップを集めてチップ保持用テープに保持保管する場合について説明した。しかしながら、本発明において、チップ保持用テープの使用方法は、この例に限定されず、例えば、個片化されたチップ状ワークを、搬送するために使用することもできる。
【実施例】
【0134】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の要旨をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。
【0135】
(ダイボンドフィルムA)
エポキシ樹脂(a)として(JER(株)製、エピコート1001)20部、フェノール樹脂(b)として(三井化学(株)製、MEH7851)22部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(c)として(根上工業(株)製,パラクロンW−197CM)100部、フィラー(d)として球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)180部をメチルエチルケトンに溶解して濃度23.6重量%となるように調整した。この接着剤組成物の溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ40μmのダイボンドフィルムAを作製した。
【0136】
(ダイボンドフィルムB)
厚さを20μmとした以外はダイボンドフィルムAと同様にして、ダイボンドフィルムBを作製した。
【0137】
(ダイボンドフィルムC)
エポキシ樹脂(a)として(JER(株)製、エピコート1001)12部、フェノール樹脂(b)として(三井化学(株)製、MEH7851)13部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(c)として(根上工業(株)製,パラクロンW−197CM)100部、フィラー(d)として球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)200部をメチルエチルケトンに溶解して濃度23.6重量%となるように調整した。この接着剤組成物の溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ40μmのダイボンドフィルムCを作製した。
【0138】
(ダイボンドフィルムD)
エポキシ樹脂(a)として(JER(株)製、エピコート1004)144部、エポキシ樹脂(b)として(JER(株)製、エピコート827)130部、フェノール樹脂(c)として(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)293部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(d)として(根上工業(株)製,パラクロンW−197CM)100部、フィラー(e)として球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)200部をメチルエチルケトンに溶解して濃度23.6重量%となるように調整した。この接着剤組成物の溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させることにより、厚さ40μmのダイボンドフィルムDを作製した。
【0139】
(チップ保持用テープA)
冷却管、窒素導入管、温度計、及び、撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸−2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」ともいう。)86.4部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」ともいう。)13.6部、過酸化ベンゾイル0.2部、及び、トルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーAを得た。
【0140】
アクリル系ポリマーAに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」ともいう。)14.6部を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
【0141】
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)2部、及び、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤組成物溶液Aを得た。
【0142】
粘着剤組成物溶液Aを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥し、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、形成した粘着剤層上に、ポリオレフィンフィルムを貼り合せた。このポリオレフィンフィルムは、厚さ100μmであり、フレーム貼付領域に対応する部分に放射線を遮光する印刷層が予め形成されたものである。その後、50℃にて24時間加熱して架橋処理を行い、さらに日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるようにポリオレフィンフィルム側から紫外線を照射して、チップ保持用テープAを作製した。
【0143】
(チップ保持用テープB)
アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)8部、及び、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤溶液を調製した以外は、チップ保持用テープAと同様にして、チップ保持用テープBを作製した。
【0144】
(チップ保持用テープC)
アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)2部、及び、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)5部を加えて、粘着剤溶液を調製した以外は、チップ保持用テープAと同様にして、チップ保持用テープCを作製した。
【0145】
(チップ保持用テープD)
冷却管、窒素導入管、温度計、及び、撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル50.0部、アクリル酸エチル50.0部、HEA16.0部、過酸化ベンゾイル0.2部、及び、トルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、アクリル系ポリマーBを得た。
【0146】
アクリル系ポリマーBに20.0部のMOIを空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーB’を得た。
【0147】
次に、アクリル系ポリマーB’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン(株)製)1部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)3部、及び、UV硬化性オリゴマー(商品名「紫光UV−1700B」、日本合成化学工業(株)製)30部を加えて、粘着剤組成物溶液Bを調製した。
【0148】
粘着剤組成物溶液Bを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。次いで、形成した粘着剤層上に、ポリオレフィンフィルムを貼り合せた。このポリオレフィンフィルムは、厚さ100μmであり、フレーム貼付領域に対応する部分に放射線を遮光する印刷層が予め形成されたものである。その後、50℃にて24時間加熱して架橋処理を行い、チップ保持用テープDを作製した。
【0149】
(チップ保持用テープE)
粘着剤組成物溶液Aを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層を形成し、もう一枚のPET剥離ライナーのシリコーン処理面を貼り合わせて、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層Xを作製した。その後、この粘着剤層Xに、日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるように、紫外線を照射した。
【0150】
一方、粘着剤組成物溶液Bを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層Yを形成した。次いで、粘着剤層Y上に、遮光印刷が施されていない厚さ100μのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間加熱して架橋処理を行った。
【0151】
次いで、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層Xをチップ貼付領域に対応する大きさにカットした後、片方のPET剥離ライナーを剥がし、PET剥離ライナーを剥がした粘着剤層Yに粘着剤層同士が密着するように貼り合わせてチップ保持用テープEを作製した。
【0152】
(チップ保持用テープF)
粘着剤組成物溶液Bを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層を形成し、もう一枚のPET剥離ライナーのシリコーン処理面を貼り合わせて、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層X’を作製した。
【0153】
一方、粘着剤組成物溶液Aを、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層Y’を形成した。次いで、粘着剤層Y’上に、遮光印刷が施されていない厚さ100μmのポリオレフィンフィルムを貼り合せた。その後、50℃にて24時間加熱して架橋処理を行い、さらに日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるようにポリオレフィンフィルム側から紫外線を照射した。
【0154】
次いで、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層X’をチップ貼付領域となる部分が露出するようにくり抜いた後、片方のPET剥離ライナーを剥がし、PET剥離ライナーを剥がした粘着剤層Y’に粘着剤層同士が密着するように貼り合わせてチップ保持用テープFを作製した。
【0155】
チップ保持用テープA〜Cをそれぞれ実施例1〜3、チップ保持用テープEを実施例4、チップ保持用テープFを実施例5、チップ保持用テープDを比較例1とし、以下の評価を行った。
【0156】
<シリコンミラーウェハに対する粘着力の測定>
まず、シリコンミラーウェハを、トルエンを含ませたウェスにて拭いた後、メタノールを含ませたウェスで拭き、さらにトルエンを含ませたウェスで拭いた。次に、チップ保持用テープA〜Fのチップ貼付領域部分、及び、フレーム貼付領域部分を、それぞれ20mmテープ幅の短冊状に切断した後、剥離ライナーを剥がし、上記シリコンミラーウェハに貼り合わせた。その後、室温雰囲気下で30分静置した。
【0157】
30分静置後、JIS Z0237に準じて、チップ保持用テープA〜Fの引き剥がし粘着力を測定した。引き剥がし条件は、粘着剤層の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角θを180°、引張り速度300mm/分、室温(23℃)とした。結果を表1に示す。
【0158】
<粘着剤層のヤング率の測定>
粘着剤層のヤング率を測定するため、チップ保持用テープA〜Dの実施例中の各粘着剤組成物溶液を、PET剥離ライナーのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱乾燥して、厚さ10μmの粘着剤層を形成し、もう一枚のPET剥離ライナーのシリコーン処理面を貼り合わせて、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層(実施例1〜6の粘着剤層に相当)を作製した。次いで、フレーム貼付領域でのヤング率と、チップ貼付領域でのヤング率とを測定した。フレーム貼付領域でのヤング率は、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層を、それぞれ長さ100mm、幅50mmの短冊状に切断した後、片方のPET剥離ライナーを剥がし、粘着剤層のみを筒状に丸めた後、測定した。一方、チップ貼付領域でのヤング率は、PET剥離ライナーで挟まれた粘着剤層を作製した後、日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるように紫外線を照射し、その後はフレーム貼付領域でのヤング率と同様に測定した。測定は、引張試験機にて行い、測定時温度23±3℃、測定時湿度55±10%Rh、引張り速度50mm/分の条件下にて行った。結果を表1に示す。
【0159】
<せん断接着力の測定>
チップ保持用テープA〜Fの基材面側にPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを裏打ちした後、フレーム貼付領域部分を10mm幅に切断したサンプルをSUS304BA板に貼り付け、50mm/分にて水平方向に引っ張った。このときの最大応力をせん断接着力として測定した。なお、SUS304BA板への貼り付け部分は、10mm×10mmである。結果を表1に示す。
【0160】
<定荷重剥離速度の測定>
以下の(a)〜(c)の手順により測定した。
(a)チップ保持用テープA〜Fのフレーム貼付領域部分を20mm幅に切断し、SUS304BA板に2kgのローラーを1往復させて圧着した。
(b)チップ保持用テープA〜Fが貼り付けられたSUS304BA板を、チップ保持用テープA〜Fが下面となるように水平に保持した状態で、チップ保持用テープA〜Fの一端に2gのおもりを90°方向(鉛直方向)に取り付けた。
(c)測定開始時からの剥離長さを2時間おきに5点測定した。
(d)5点の測定値から直線近似をし、その直線の傾きを剥離速度とした。なお、直線近似には、最小二乗法を採用した。結果を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
(実施例6)
<ダイボンドフィルムに対する剥離力の測定>
チップ保持用テープAのチップ貼付領域にダイボンドフィルムA〜Dをそれぞれ貼り合わせた。次に、ダイボンドフィルム側の剥離ライナーを剥がし、ダイボンドフィルムに厚さ50μmのPETフィルムを10μm厚の粘着剤を介して裏打ちした。これを20mm幅にカットし、チップ保持用テープAと裏打ちされたダイボンドフィルムとを引っ張って剥離力を測定した。測定は、測定時温度23±3℃、測定時湿度55±10%Rh、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件下にて行った。結果を表2に示す。
【0163】
<ダイボンドフィルム付チップの作製>
まず、ダイシングフィルム(チップ保持用テープAをダイシングフィルムとして用いたもの。)にそれぞれダイボンドフィルムA〜Dを積層したダイシング・ダイボンドフィルムA〜Dを作製した。次に、厚さ50μmに研削したシリコンミラーウェハを、ダイシング・ダイボンドフィルムA〜Dにマウントし、ブレードダイシング加工により10mm角のチップにダイシングした。得られたチップをダイボンドフィルムから剥離することにより、ダイボンドフィルム付チップA〜Dを作製した。
【0164】
<チップ脱落(室温貼付)評価>
チップ保持用テープAの剥離ライナーを剥がし、マウントフレームに貼り付けて固定した。その後、作製したダイボンドフィルム付チップA〜Dを、ダイボンドフィルム側を貼り付ける向きでチップ保持用テープAのチップ貼付領域に貼り付け、室温にて30分放置した。貼付条件は、貼付時温度23℃、貼付時圧力0.2MPa、加圧時間0.1秒とした。
【0165】
室温にて、ダイボンドフィルム付チップA〜Dを貼り付けた状態でマウントフレームをひっくり返して軽く叩き、落下したチップの数により評価を行った。評価は、ダイボンドフィルム付チップA〜Dをそれぞれ5つ用い、1つも脱落しなかった場合には○、1〜4つが脱落した場合には△、5つすべてが脱落した場合には×とした。結果を表2に示す。
【0166】
<チップ脱落(0℃保持)評価>
チップ保持用テープAの剥離ライナーを剥がし、マウントフレームに貼り付けて固定した。その後、作製したダイボンドフィルム付チップA〜Dを、ダイボンドフィルム側を貼り付ける向きでチップ保持用テープAのチップ貼付領域に載せて貼り付け、0℃にて24時間冷却した。その後、0℃環境下にて、マウントフレームをひっくり返して軽く叩き、落下したチップの数により評価を行った。評価は、ダイボンドフィルム付チップA〜Dをそれぞれ5つ用い、1つも脱落しなかった場合には○、1〜4つが脱落した場合には△、5つすべてが脱落した場合には×とした。結果を表2に示す。
【0167】
<ピックアップ性評価>
チップ保持用テープAの剥離ライナーを剥がし、マウントフレームに貼り付けて固定した。その後、作製したダイボンドフィルム付チップA〜Dを、ダイボンドフィルム側を貼り付ける向きでチップ保持用テープAのチップ貼付領域に載せて貼り付け、室温にて30分放置した。作製したサンプルを用い、チップ保持用テープAから、ダイボンドフィルム付チップA〜Dのピックアップを行った。ピックアップ性評価は、サンプル作製直後のものと、室温にて1ヶ月放置した後のサンプルとを用いて行った。なお、ピックアップ条件は、以下のようにした。
【0168】
(ピックアップ条件)
ダイボンダー装置:株式会社新川社製 SPA−300
マウントフレーム:ディスコ社製 2−8−1
ウェハータイプ:Mirror Wafer(no pattern)
チップサイズ:10mmx10mm
チップ厚さ:50μm
ニードル数:9本
ニードル突き上げ速度:5mm/秒
コレット保持時間:1000m秒
エキスパンド:引き落とし量3mm
ニードル突き上げ高さ:300μm
【0169】
評価は、10チップをピックアップし、全てピックアップできた場合には○、1〜9チップピックアップできた場合には△、全てピックアップできなかった場合には×とした。結果を表2に示す。
【0170】
【表2】

【0171】
(実施例7)
実施例6のチップ保持用テープAをチップ保持用テープBに変更した以外は、上記実施例6と同様の試験を行った。結果を表3に示す。
【0172】
【表3】

【0173】
(実施例8)
実施例6のチップ保持用テープAをチップ保持用テープCに変更した以外は、上記実施例6と同様の試験を行った。結果を表4に示す。
【0174】
【表4】

【0175】
(実施例9)
実施例6のチップ保持用テープAをチップ保持用テープEに変更したこと以外は、上記実施例6と同様の試験を行った。結果を表5に示す。
【0176】
【表5】

【0177】
(実施例10)
実施例6のチップ保持用テープAをチップ保持用テープFに変更したこと以外は、上記実施例6と同様の試験を行った。結果を表6に示す。
【0178】
【表6】

【0179】
(実施例11)
<シリコンチップに対する剥離力の測定>
シリコンミラーウェハを#2000でバックグラインドし、厚さ500μmに研削した後、研削面を、トルエンを含ませたウェスにて拭いた後、メタノールを含ませたウェスで拭き、さらにトルエンを含ませたウェスで拭いた。次に、チップ保持用テープA〜Fのチップ貼付領域部分を、それぞれ20mmテープ幅の短冊状に切断した後、剥離ライナーを剥がし、上記ウェハの研削面に貼り合わせた。その後、室温雰囲気下で30分静置し、JIS Z0237に準じて、チップ保持用テープAの引き剥がし粘着力を測定した。引き剥がし条件は、粘着剤層の表面とシリコンミラーウェハの表面とのなす角θを180°、引張り速度300mm/分、室温(23℃)とした。結果を表7に示す。
【0180】
<シリコンチップの作製>
シリコンミラーウェハを#2000でバックグラインドし、厚さ100μmに研削した後、ダイシングフィルム(チップ保持用テープAをダイシングフィルムとして用いたもの。)にマウントし、ブレードダイシング加工により、10mm角のチップにダイシングした。得られたチップをダイボンドフィルムから剥離することにより、シリコンチップAを得た。
【0181】
<チップ脱落(室温貼付)評価>
チップ保持用テープAの剥離ライナーを剥がし、マウントフレームに貼り付けて固定した。その後、作製したシリコンチップAを、チップ保持用テープAのチップ貼付領域に貼り付け、室温にて30分放置した。貼付条件は、貼付時温度23℃、貼付時圧力0.2MPa、加圧時間0.1秒とした。
【0182】
室温にて、シリコンチップAを貼り付けた状態でマウントフレームをひっくり返して軽く叩き、落下したチップの数により評価を行った。評価は、シリコンチップAを5つ用い、1つも脱落しなかった場合には○、1〜4つが脱落した場合には△、5つすべてが脱落した場合には×とした。結果を表7に示す。
【0183】
<チップ脱落(0℃保持)評価>
チップ保持用テープAの剥離ライナーを剥がし、マウントフレームに貼り付けて固定した。その後、作製したシリコンチップAを、チップ保持用テープAのチップ貼付領域に載せて貼り付け、0℃にて24時間冷却した。その後、0℃環境下にて、マウントフレームをひっくり返して軽く叩き、落下したチップの数により評価を行った。評価は、シリコンチップAを5つ用い、1つも脱落しなかった場合には○、1〜4つが脱落した場合には△、5つすべてが脱落した場合には×とした。結果を表7に示す。
【0184】
<ピックアップ性評価>
チップ保持用テープAの剥離ライナーを剥がし、マウントフレームに貼り付けて固定した。その後、作製したシリコンチップAを、チップ保持用テープAのチップ貼付領域に載せて貼り付け、室温にて30分放置した。作製したサンプルを用い、チップ保持用テープAから、シリコンチップAのピックアップを行った。ピックアップ性評価は、サンプル作製直後のものと、室温にて1ヶ月放置した後のサンプルとを用いて行った。なお、ピックアップ条件は、以下のようにした。
【0185】
(ピックアップ条件)
ダイボンダー装置:株式会社新川社製 SPA−300
マウントフレーム:ディスコ社製 2−8−1
ウェハータイプ:Mirror Wafer(no pattern)
チップサイズ:10mmx10mm
チップ厚さ:100μm
ニードル数:9本
ニードル突き上げ速度:5mm/秒
コレット保持時間:1000m秒
エキスパンド:引き落とし量3mm
ニードル突き上げ高さ:300μm
【0186】
評価は、10チップをピックアップし、全てピックアップできた場合には○、1〜9チップピックアップできた場合には△、全てピックアップできなかった場合には×とした。結果を表7に示す。
【0187】
【表7】

【0188】
(実施例12)
実施例11のチップ保持用テープAをチップ保持用テープBに変更した以外は、上記実施例11と同様の試験を行った。結果を表8に示す。
【0189】
【表8】

【0190】
(実施例13)
実施例11のチップ保持用テープAをチップ保持用テープCに変更した以外は、上記実施例11と同様の試験を行った。結果を表9に示す。
【0191】
【表9】

【0192】
(実施例14)
実施例11のチップ保持用テープAをチップ保持用テープEに変更した以外は、上記実施例11と同様の試験を行った。結果を表10に示す。
【0193】
【表10】

【0194】
(実施例15)
実施例11のチップ保持用テープAをチップ保持用テープFに変更した以外は、上記実施例11と同様の試験を行った。結果を表11に示す。
【0195】
【表11】

【0196】
(比較例2)
<ダイボンドフィルムに対する剥離力の測定>
チップ保持用テープD(紫外線照射が行われていない)のチップ貼付領域にダイボンドフィルムA〜Dをそれぞれ貼り合わせた。次に、チップ保持用テープDに基材側から、照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるように紫外線を照射した。その後、ダイボンドフィルム側の剥離ライナーを剥がし、ダイボンドフィルムに厚さ50μmのPETフィルムを10μm厚の粘着剤を介して裏打ちした。これを20mm幅にカットし、チップ保持用テープと裏打ちされたダイボンドフィルムとを300mm/分の速さで上下に引っ張って剥離力を測定した。結果を表7に示す。
【0197】
<チップ脱落(室温貼付)評価>
チップ保持用テープD(紫外線照射が行われていない)の剥離ライナーを剥がし、フレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付けて固定した。次いで、ダイボンドフィルム付チップA〜Dを、チップ保持用テープDのチップ貼付領域に載せて貼り付け、室温にて30分放置した。その後、日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるようにポリオレフィンフィルム側から紫外線を照射した。このようにして作製したサンプルについて、実施例1と同様のチップ脱落(室温貼付)評価を行った。結果を表12に示す。
【0198】
<チップ脱落(0℃保持)評価>
チップ保持用テープD(紫外線照射が行われていない)の剥離ライナーを剥がし、フレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付けて固定した。次いで、ダイボンドフィルム付チップA〜Dを、チップ保持用テープDのチップ貼付領域に載せて貼り付け、0℃にて24時間冷却した。その後、日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるようにポリオレフィンフィルム側から紫外線を照射した。このようにして作製したサンプルについて、実施例1と同様のチップ脱落(0℃保持)評価を行った。結果を表12に示す。
【0199】
<ピックアップ性評価>
チップ保持用テープD(紫外線照射が行われていない)の剥離ライナーを剥がし、マウントフレームに貼り付けて固定した。その後、作製したダイボンドフィルム付チップA〜Dを、チップ保持用テープDのチップ貼付領域に載せて貼り付け、室温にて30分放置した。作製したサンプルを用い、チップ保持用テープDから、ダイボンドフィルム付チップA〜Dのピックアップを行った。ピックアップ性評価は、日東精機製の紫外線照射装置(商品名UM−810)にて照度20mW/cmで積算光量が400mJ/cmとなるようにポリオレフィンフィルム側から紫外線を照射した後に行った。また、ピックアップ性評価は、サンプル作製直後のものと、室温にて1ヶ月放置した後のサンプルとを用いて行った。また、なお、ピックアップ条件は、実施例1と同様とした。結果を表12に示す。
【0200】
【表12】

【0201】
(結果)
表2〜12の結果から分かる通り、実施例6〜15のように、フレーム貼付領域での180度引き剥がし粘着力が、チップ状ワーク貼付領域での180度引き剥がし粘着力よりも5倍以上の大きさを有しているチップ保持用テープを用いれば、チップ脱落が起こらずに保持することができ、且つ、良好なピックアップ性を有していた。一方、比較例1のように、ダイボンドフィルム付チップに、フレーム貼付領域での180度引き剥がし粘着力と、チップ状ワーク貼付領域での180度引き剥がし粘着力が同じ大きさのチップ保持用テープを貼り付けた後に、チップ状ワーク貼付領域での180度引き剥がし粘着力がフレーム貼付領域での180度引き剥がし粘着力の1/5以下の大きさとなるようにした場合、ピックアップ性に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0202】
10、60、70、80 チップ保持用テープ
12、62、72、82 基材
14、64 粘着剤層
16、66、76、86 フレーム貼付領域
18、68、78、88 チップ状ワーク貼付領域(チップ貼付領域)
20 印刷層
30 ダイシング・ダイボンドフィルム
32 ダイシングフィルム
34 ダイボンドフィルム
36 基材
38 粘着剤層
40 半導体ウェハ
42 半導体チップ
44 被着体
46 ボンディングワイヤー
48 封止樹脂
50 半導体装置
64a、74、85 強粘着剤層
64b、75、84 弱粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に粘着剤層が形成された構成を有しており、前記粘着剤層は、チップ状ワークを貼り付けるチップ状ワーク貼付領域と、マウントフレームを貼り付けるフレーム貼付領域とを有し、前記フレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付けて使用するチップ保持用テープであって、
前記粘着剤層において、前記フレーム貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が、測定温度23±3℃、引張り速度300mm/分の条件下において、前記チップ状ワーク貼付領域でのシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力の5倍以上であることを特徴とするチップ保持用テープ。
【請求項2】
前記チップ状ワーク貼付領域での粘着剤層のシリコンミラーウェハに対する180度引き剥がし粘着力が、測定温度23±3℃、引張り速度300mm/分の条件下において、0.01〜0.1N/20mmテープ幅であることを特徴とする請求項1に記載のチップ保持用テープ。
【請求項3】
前記チップ状ワーク貼付領域での粘着剤層のヤング率が3MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチップ保持用テープ。
【請求項4】
前記チップ保持用テープは、基材と、前記基材上に形成された放射線硬化型粘着剤層とを有しており、
前記チップ状ワーク貼付領域は、放射線照射による硬化により、粘着力が低下されて形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のチップ保持用テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層は、表面に前記フレーム貼付領域を有する強粘着剤層と、表面に前記チップ状ワーク貼付領域を有する弱粘着剤層とが、基材上に両者が積層されていない形態で形成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のチップ保持用テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層は、強粘着剤層と、前記強粘着剤層面の外周部を露出する態様で前記強粘着剤層上に積層された弱粘着剤層とを有し、
前記強粘着剤層の露出している部位は、前記フレーム貼付領域に相当し、
前記弱粘着剤層は、その表面が前記チップ状ワーク貼付領域に相当することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のチップ保持用テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層は、弱粘着剤層と、前記弱粘着剤層面の中央部を露出する態様で前記弱粘着剤層上に積層された強粘着剤層とを有し、
前記強粘着剤層は、その表面が前記フレーム貼付領域に相当し、
前記弱粘着剤層の露出している部位は、前記チップ状ワーク貼付領域に相当することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載のチップ保持用テープ。
【請求項8】
ダイシングにより形成されたチップ状ワークの保持方法であって、
請求項1〜7のいずれか1に記載のチップ保持用テープのフレーム貼付領域にマウントフレームを貼り付ける工程と、
チップ保持用テープのチップ状ワーク貼付領域に、ダイシングにより形成されたチップ状ワークを貼り付ける工程と
を具備することを特徴とするチップ状ワークの保持方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1に記載のチップ保持用テープを用いた半導体装置の製造方法であって、
ワークをダイシングする工程と、
ダイシングにより形成されたチップ状ワークを前記チップ保持用テープの前記チップ状ワーク貼付領域に貼り付ける工程と、
前記チップ保持用テープに貼り付けられた前記チップ状ワークを剥離する剥離工程と、
剥離した前記チップ状ワークを被着体に固定する工程と
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記剥離工程は、前記チップ状ワーク貼付領域の粘着力を低下させることなく、前記チップ状ワークを剥離する工程であることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項4に記載のチップ保持用テープの製造方法であって、
放射線硬化型粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、
前記放射線硬化型粘着剤層の一部に放射線を照射して硬化させ、硬化により粘着力が低下したチップ状ワーク貼付領域と、硬化せず、粘着力が低下していないフレーム貼付領域とを形成する放射線照射工程とを具備することを特徴とするチップ保持用テープの製造方法。
【請求項12】
さらに、基材上に積層された放射線硬化型粘着剤層のフレーム貼付領域に対応する部位に、放射線遮光機能を有する放射線遮光層を形成する放射線遮光層形成工程を具備しており、
前記放射線照射工程は、前記基材面側から放射線を照射してチップ状ワーク貼付領域に対応する部位の放射線硬化型粘着剤層を硬化させ、硬化により粘着力が低下したチップ状ワーク貼付領域と、硬化せず、粘着力が低下していないフレーム貼付領域とを形成する工程であることを特徴とする請求項11に記載のチップ保持用テープの製造方法。
【請求項13】
前記放射線遮光層形成工程は、前記放射線遮光層を、印刷法を利用して形成する工程であることを特徴とする請求項12に記載のチップ保持用テープの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−137057(P2011−137057A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296116(P2009−296116)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】