説明

データ処理装置

【課題】スクロール表示の態様とユーザの操作感とが合致していなかった。
【解決手段】HDD12には、タッチパネル24で接触解除前に出力された接触座標データに応じてスクロール表示の態様(スクロール初速度Vsおよびスクロール継続時間T)を異ならせる制御部としてCPU14を機能させるためのスクロール制御プログラムが記憶されている。このスクロール制御プログラムでは、スクロール初速度Vsは、接触座標の変化率Vtcを変数とする演算式「Vs=F(Vtc)」で定義されている。他方、スクロール継続時間Tは、接触座標の変化量Lを変数とする演算式「T=G(L)」で定義されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに対して画像を表示させるデータ処理装置に関するものであって、より詳しくは、ナビゲーション装置などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、スクロールスイッチの操作終了時点における道路地図のスクロール速度を初期値としてその初期値から減速してゼロとなるように変化するスクロール速度変化値を算出し、道路地図を滑らかにスクロールさせつつ、徐々にスクロールを停止させるナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−117830号公報(第7−8頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のものにおいて、スクロール速度の減少率およびスクロール停止までの時間は、操作終了時点でのスクロール速度に依存しているにすぎない。したがって、スクロール速度の逓減率およびスクロール停止までの時間とユーザの操作感とが合致していないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係るデータ処理装置は、タッチパネルと物体との接触が解除された後にディスプレイに対してスクロール表示を継続させるデータ処理装置であって、タッチパネルで接触解除前に出力された接触座標データに応じてスクロール表示の態様を異ならせる制御部を備えるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0005】
「接触が解除された」とは、接触座標データの出力が所定の時間にわたって停止した状態である。
【0006】
「接触座標データに応じて」とは、接触座標データを入力値の必須要素とすることであって、接触座標データ以外の入力値のみによって制御する場合を排除する趣旨である。
【0007】
「スクロール表示の態様」の例として、スクロール初速度、スクロール継続時間やスクロール方向などがある。
【0008】
「制御部」とは、ハードウエアまたはハードウエアとソフトウエアとの協働によって制御を実行するものである。
【0009】
本発明に係るデータ処理装置において、「制御部」は、好ましくは、接触座標の変化率に応じてスクロール初速度を異ならせるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0010】
「接触座標の変化率」とは、「接触座標データ」の下位概念であって、物体がタッチパネル上を移動する速度または速さである。
【0011】
「スクロール初速度」とは、ディスプレイが接触解除後にスクロール表示する速度(以下、スクロール速度という)の初期値である。
【0012】
「接触座標の変化率に応じてスクロール初速度を異ならせる」とは、演算式またはテーブルを用いて接触座標の変化率からスクロール初速度を求めることである。例えば、接触座標の変化率とスクロール初速度とを比例させることが考えられる。
【0013】
「制御部」は、スクロール速度をスクロール初速度に保つもの、スクロール速度をスクロール初速度からスクロール速度よりも小さな速度まで逓減させるもの、または、スクロール速度をスクロール初速度からゼロまで逓減させるものである。ここで、「逓減」とは、次第に減少することである。
【0014】
本発明に係るデータ処理装置において、「制御部」は、好ましくは、接触座標の変化量に応じてスクロール継続時間を異ならせるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0015】
「接触座標の変化量」とは、「接触座標データ」の下位概念であって、物体がタッチパネル上を移動する距離である。
【0016】
「スクロール継続時間」とは、ディスプレイが接触解除後にスクロール表示を継続する時間である。
【0017】
「接触座標の変化量に応じてスクロール継続時間を異ならせる」とは、演算式またはテーブルを用いて接触座標の変化量からスクロール継続時間を求めることである。例えば、接触座標の変化量とスクロール継続時間とを比例させることが考えられる。
【0018】
「制御部」は、好ましくは、接触座標の変化量が所定値以下であれば、スクロール継続時間をゼロとするものである。
【0019】
本発明に係るデータ処理装置において、「制御部」は、好ましくは、接触座標が描く接触軌跡とこの接触軌跡の始点に対応するディスプレイの表示座標で表示された画像が描く表示軌跡とを符合させるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0020】
「符合させる」とは、接触軌跡と表示軌跡とに重なりを持たせることであって、好ましくは、表示軌跡を接触軌跡に追従させることである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、タッチパネルで接触解除前に出力された接触座標データに応じてスクロール表示の態様を異ならせることによって、スクロール表示の態様とユーザの操作感とを合致させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るデータ処理装置を実施するための最良の形態であるナビゲーション装置について、図1ないし図7を参照しながら説明する。
<構成について>図1に示すように、ナビゲーション装置1は、データの入出力を行うI/O11と、各種データやプログラムなどを記憶するHDD12(「制御部」に相当する)と、BIOSなどの基本プログラムを格納するROM13と、HDD12に記憶されたプログラムおよびROM13に格納されたプログラムを実行するCPU14(「制御部」に相当する)と、各種データを保持するRAM15と、音声データを処理する音声プロセッサ16と、画像データを処理する画像プロセッサ17と、画像データを保持するVRAM18とを備え、これらをバス線で接続している。
【0023】
I/O11の入力側には、現在位置や時刻などに対応するGPSデータを受信するGPS受信機21と、移動体の進行方位に対応する方位データを出力する方位センサ22と、移動体の速度に対応する速度データを出力する速度センサ23と、接触座標に対応する接触座標データを出力するタッチパネル24とが接続されている。各種センサからのデータは、RAM15に保持される。
【0024】
I/O11の出力側には、音声データに対応する音声を出力するスピーカ31と、画像データに対応する画像を表示するディスプレイ32とが接続されている。ディスプレイ32は、その表示領域とタッチパネル24の接触検知領域とが重なるように設けられている。
【0025】
HDD12には、タッチパネル24で接触解除前に出力された接触座標データに応じてスクロール表示の態様を異ならせる制御部としてCPU14を機能させるためのスクロール制御プログラムが記憶されている。また、HDD12には、地図画像に対応する地図データが記憶されている。
<処理について>図2に示すように、CPU14は、HDD12に記憶されたスクロール制御プログラムをRAM15に展開し、以下の処理を実行する。
【0026】
CPU14は、RAM15に保持された接触座標データを用いてタッチパネル24に対する指の接触が解除されたか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、接触座標データが最後に保持された時刻からの経過時間が所定の時間(例えば、500ms)以上であれば、タッチパネル24に対する指の接触が解除されたとの判定がなされる。
【0027】
ステップS1でタッチパネル24に対する指の接触が解除されたとの判定がなされると(S1のYes)、CPU14は、RAM15に保持された接触座標データを用いて接触座標の変化率Vtcを演算する(ステップS2)。すなわち、指の移動速度が演算される。例えば、指がタッチパネル24上をその接触座標Psから接触座標Peまで移動した場合(図3(a)を参照)、接触座標Psでの時刻がtsであって、接触座標Peでの時刻がteであれば、接触座標の変化率Vtcは、「Vtc=(Pe−Ps)/(te−ts)」である(図3(b)を参照)。
【0028】
ステップS2で接触座標の変化率Vtcが演算されると、CPU14は、接触座標の変化率Vtcに対応する演算結果データを用いてスクロール初速度Vsを演算する(ステップS3)。具体的には、スクロール初速度Vsは、接触座標の変化率Vtcを変数とする演算式「Vs=F(Vtc)」で定義されている。本実施の形態では、演算式「Vs=F(Vtc)」は、直線の方程式(図4(a)を参照)または曲線の方程式(図4(b)を参照)である。
【0029】
ステップS3でスクロール初速度Vsが演算されると、CPU14は、RAM15に保持された接触座標データを用いて接触座標の変化量Lを演算する(ステップS4)。すなわち、指の移動量が演算される。例えば、指がタッチパネル24上をその接触座標Psから接触座標Peまで移動した場合(図3(a)を参照)、接触座標の変化量Lは、「L={(Xe−Xs)+(Ye−Ys)}1/2」である(図3(b)を参照)。
【0030】
ステップS4で接触座標の変化量Lが演算されると、CPU14は、接触座標の変化量Lに対応する演算結果データを用いてスクロール継続時間Tを演算する(ステップS5)。具体的には、スクロール継続時間Tは、接触座標の変化量Lを変数とする演算式「T=G(L)」で定義されている。本実施の形態では、演算式「T=G(L)」は、直線の方程式(図5(a)を参照)または曲線の方程式(図5(b)を参照)である。また、演算式「T=G(L)」は、「L≧L1」の範囲で定義される関数であるから、「0≦L≦L1」の範囲では、スクロール継続時間Tは、ゼロまたは微小時間に設定される。
【0031】
ステップS5でスクロール継続時間Tが演算されると、CPU14は、スクロール速度Vsで接触解除後のスクロールを開始するための制御データを出力する(ステップS6)。制御データが出力されると、画像プロセッサ17は、HDD12に記憶された地図データを画像データとしてVRAM18に展開し、スクロール速度Vsに対応する出力率でVRAM18に保持された画像データをディスプレイ32に転送する。つまり、ディスプレイ32は、スクロール速度Vsで地図をスクロール表示する。
【0032】
ステップS5において、スクロール速度Vsは、ステップS3で演算されたスクロール初速度Vsを初期値とする演算式で定義される(図6を参照)。例えば、演算式が「Vs=H(T)=Vs」であれば、スクロール速度Vsはスクロール初速度Vsに保たれる。また、演算式が「Vs=H(T)、但し、T→∞のとき、limH(T)=Vs(<Vs)」であれば、スクロール速度Vsは、スクロール初速度Vsからスクロール速度よりも小さな速度Vsまで逓減する。ここで、Vsは、ユーザがスクロール中の画像を視認可能な値に設定される。さらに、演算式が「Vs=H(T)但し、T→∞であれば、limH(T)=0」であれば、スクロール速度Vsは、スクロール初速度Vsからゼロまで逓減する。
【0033】
ステップS6で接触解除後のスクロールが開始されると、CPU14は、接触解除後のスクロールが開始されてからの経過時間がステップS5で演算された継続時間T以上であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0034】
ステップS5で経過時間が継続時間T以上であるとの判定がなされると(S7のYes)、CPU14は、接触解除後のスクロールを終了するための制御データを出力する。つまり、ディスプレイ32は、地図のスクロール表示を停止する。
【0035】
以上の処理において、ディスプレイ32が地図をスクロール表示するスクロール量Sは、「S∝∫VsdT」で定義される。したがって、スクロール速度Vsが等しく、スクロール継続時間Tが異なる2つの場合において、TがT1およびT2(T1>T2)であれば、T1に係るスクロール量S1は、T2に係るスクロール量S2よりも大きい。他方、スクロール継続時間Tが等しく、スクロール速度Vsが異なる2つの場合において、VsがVsおよびVs(Vs>Vs)であれば、Vsに係るスクロール量S3は、Vsに係るスクロール量S4よりも大きい。
<本実施の形態における効果>以上本実施の形態によれば、スクロール初速度Vsは指の移動速度に応じて異なるので、スクロール初速度Vsとユーザの操作感とを合致させることができる。より具体的には、ユーザに対して地球儀を回しているような操作感を与えることができる。
【0036】
本実施の形態によれば、スクロール初速度Vsは指の移動速度に比例するので、スクロール初速度Vsとユーザの操作感とをより合致させることができる。より具体的には、ユーザがスクロール先の地図をすぐに見たい場合、指の移動速度は相対的に大きくなる傾向にある。このとき、スクロール初速度Vsは相対的に大きな値になるので、スクロール先の地図をすぐに見たいというユーザの意思は満たされる。
【0037】
本実施の形態によれば、スクロール速度Vsはスクロール初速度Vsに保たれるので、スクロール表示をユーザの意図する速度で継続することができる。
【0038】
本実施の形態によれば、スクロール速度Vsがスクロール初速度Vsからスクロール速度よりも小さな速度Vsまで逓減するので、小さな速度Vsが視認可能な速度であれば、スクロール表示をユーザに見やすい状態で継続することができる。
【0039】
本実施の形態によれば、スクロール速度Vsがスクロール初速度Vsからゼロまで逓減するので、ユーザに対して新たな操作を要求することなくスクロール表示を停止することができる。
【0040】
本実施の形態によれば、スクロール継続時間Tは指の移動量に応じて異なるので、スクロール継続時間Tとユーザの操作感とを合致させることができる。より具体的には、ユーザに対して地球儀を回しているような操作感を与えることができる。
【0041】
本実施の形態によれば、スクロール継続時間Tは指の移動量に比例するので、スクロール継続時間Tとユーザの操作感とをより合致させることができる。より具体的には、ユーザが表示されていない地図(特に、遠くの場所(現状の表示から移動距離の遠い場所)の地図)を見たい場合、指の移動量は相対的に大きくなる傾向にある。このとき、スクロール継続時間Tは相対的に大きな値になるので、ユーザが表示されていない地図を見たいというユーザの意思は満たされる。
【0042】
本実施の形態によれば、指の移動量が所定値以下であれば、スクロール継続時間Tはゼロまたは微小な値に設定される。ユーザが地図を少しだけスクロールさせたい場合、指の移動量は所定値以下になる傾向にあるので、地図を少しだけスクロールさせたいというユーザの意思は満たされる。
<変形例>以上の説明では、指は、タッチパネル24をなぞりながら接触座標Psから接触座標Peまで移動するか否かを問わない。ベクトルの始点および終点として、それぞれ、接触座標Psおよび接触座標Peが定義されればよい。
【0043】
指がタッチパネル24をなぞりながら接触座標Psから接触座標Peまで移動し、接触座標が軌跡を描く場合、接触座標Psに対応するディスプレイ32の表示座標に表示されている画像(図7(a)を参照)が指の移動に追従しながら表示されてもよい(図7(b)を参照)。この変形例によれば、ユーザは接触軌跡の始点を見失わずにすむ。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明は、スクロール表示の態様とユーザの操作感とを合致させることができるという効果を有し、ナビゲーション装置などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るデータ処理装置を実施するための最良の形態であるナビゲーション装置の構成を示すハードウエア構成図
【図2】本実施の形態におけるスクロール制御処理の流れを示すフロー図
【図3】(a)指が接触座標Psから接触座標Peまでタッチパネル上を移動する様子を示す図(b)(a)の場合のおける接触座標Pと時刻との関係を示す図
【図4】(a)接触座標の変化率Vtcとスクロール初速度Vsとの関係が直線の方程式で定義される場合を示す図(b)接触座標の変化率Vtcとスクロール初速度Vsとの関係が曲線の方程式で定義される場合を示す図
【図5】(a)接触座標の変化量Lとスクロール継続時間Tとの関係が直線の方程式で定義される場合を示す図(b)接触座標の変化量Lとスクロール継続時間Tとの関係が曲線の方程式で定義される場合を示す図
【図6】スクロール継続時間Tとスクロール速度Vsとの関係を示す図
【図7】(a)スクロールの始点およびスクロールの方向を示す図(b)追従スクロールの表示例を示す図
【符号の説明】
【0046】
1 ナビゲーション装置(データ処理装置)
12 HDD(制御部)
14 CPU(制御部)
24 タッチパネル
32 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルと物体との接触が解除された後にディスプレイに対してスクロール表示を継続させるデータ処理装置であって、
タッチパネルで接触解除前に出力された接触座標データに応じてスクロール表示の態様を異ならせる制御部を備えるデータ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、接触座標の変化率に応じてスクロール初速度を異ならせることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、接触座標の変化率とスクロール初速度とを比例させることを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、スクロール速度をスクロール初速度に保つことを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、スクロール速度をスクロール初速度からスクロール速度よりも小さな速度まで逓減させることを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、スクロール速度をスクロール初速度からゼロまで逓減させることを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、接触座標の変化量に応じてスクロール継続時間を異ならせることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、接触座標の変化量とスクロール継続時間とを比例させることを特徴とする請求項7に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、接触座標の変化量が所定値以下であれば、スクロール継続時間をゼロとすることを特徴とする請求項7に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、接触座標が描く接触軌跡とこの接触軌跡の始点に対応するディスプレイの表示座標で表示された画像が描く表示軌跡とを符合させることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れかに記載のデータ処理装置を備えるナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−18040(P2007−18040A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195914(P2005−195914)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】