説明

データ処理装置

【課題】俯瞰地図の視点を決定する操作に際して誤動作が生じてしまうこと。
【解決手段】HDD12には、ディスプレイ32の表示領域の上部と下部との境界に対応する境界表示座標とタッチパネル25での接触座標とが符合した場合に、タッチパネル25での接触座標に応じて俯瞰地図の視点を決定する処理を許可する制御部としてをCPU14に実行させるためのプログラムが記憶されている。また、HDD12には、2軸で定義された2次元地図データなどが記憶されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイに対して地図を表示させるデータ処理装置に関するものであって、より詳しくは、ナビゲーション装置などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、ディスプレイに対して地図画像を鳥瞰図表示させている場合に、リモコンによるスクロール指示があると、ディスプレイに対して傾斜した地平線を表示させるナビゲーション用ECUを備えるカーナビゲーション装置が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
他方、タッチセンサによって入力された視点位置に応じて鳥瞰図を得るための視点位置を決定する地図表示装置が知られている(特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開2004−93156号公報(段落0020、図3)
【特許文献2】特開2003−22005号公報(段落0094、図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものにおいては、地平線の表示はリモコンでの操作に応じて変化するので、ユーザに対してリモコンでの操作を要求する点で煩わしさがある。他方、特許文献2に記載のものにおいては、鳥瞰図を得るための視点位置がタッチパネルでの操作に応じて決定されるので、特許文献1に記載のもののような煩わしさはない。しかし、タッチパネルでの操作が採用される場合、タッチパネルの操作領域は、視点位置を決定するための操作以外の操作にも割り当てられており、視点位置を決定するための操作が行われても、当該操作が正しく認識されない可能性があった。特に、車載用の装置では、タッチパネルは小型であり、操作が正しく認識されない可能性は高かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るデータ処理装置は、ディスプレイに対してその表示領域の下部で俯瞰地図を表示させるとともに表示領域の上部で他の画像を表示させるデータ処理装置であって、表示領域の上部と下部との境界に対応する境界表示座標とタッチパネルでの接触座標とが符合した場合に、タッチパネルでの接触座標に応じて俯瞰地図の視点を決定する処理を許可する制御部を備えるものである。本発明における字句の解釈は、次のとおりである。
【0006】
「ディスプレイ」とは、画像を表示する装置であって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイや映写幕などを含む概念である。
【0007】
「表示領域」とは、画像が表示される領域であって、縦の辺と横の辺とからなる矩形状のものを含む概念である。表示領域が矩形状である場合、「表示領域の下部」は、縦方向の下側であり、他方、「表示領域の上部」は、縦方向の上側である。
【0008】
「俯瞰地図」とは、2次元地図を見下ろしてなる地図であって、いわゆる鳥瞰図などを含む概念である。
【0009】
「他の画像」とは、俯瞰地図とは異なる画像であって、空の画像、星座の画像や山岳の画像などを含む概念である。
【0010】
「表示領域の上部と下部との境界」とは、表示領域を上部と下部とに区切る境界線である。「境界表示座標」には、通常、いわゆる地平線に相当する画像が表示される。
【0011】
「符合」とは、対比される2つの座標が一致することまたは対比される2つの座標の差が微差であることである。ディスプレイの座標系とタッチパネルの座標系とが完全に一致するとは限らないからである。
【0012】
「俯瞰地図の視点」とは、2次元地図を見下ろす際の基準となる点であって、平面座標系または空間座標系で定義される点である。
【0013】
「制御部」とは、ハードウエアまたはハードウエアとソフトウエアとの協働によって処理を実行するものである。
【0014】
「制御部」は、好ましくは、符合後の接触座標が表示領域の上下方向に変化する場合に、符合後の接触座標に応じて俯瞰地図の視点高度を決定するものである。ここで、「俯瞰地図の視点高度」とは、地表面から視点までの垂直距離である。
【0015】
「制御部」は、好ましくは、符合後の接触座標が表示領域の左右方向に変化する場合に、符合後の接触座標に応じて俯瞰地図の視点方位を決定するものである。ここで、「俯瞰地図の視点方位」とは、視点から地表面への垂線を法線とし視点を含む平面上で視点から視点を中心とする円上の点を指す方向である。例えば、東西南北などがある。
【0016】
「制御部」は、好ましくは、ディスプレイに対して接触座標の可変範囲を表示させるものである。ここで、「接触座標の可変範囲」とは、視点高度への制御を指示できる範囲であって、ゲージなどで表現されるものである。
【0017】
「制御部」は、好ましくは、タッチパネルでの接触座標と境界表示座標とが符合する前後で、境界表示座標での表示態様を異ならせるものである。ここで、「表示態様を異ならせる」の具体例として、いわゆる地平線を点滅させる処理や地平線を強調する処理などがある。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、表示領域の上部と下部との境界に対応する境界表示座標とタッチパネルでの接触座標とが符合した場合に、タッチパネルでの接触座標に応じて俯瞰地図の視点を制御する処理を許可することによって、俯瞰地図の視点を決定するための操作に際して誤動作を防止することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るデータ処理装置を実施するための最良の形態は、図1ないし図7で示される。
<装置構成について>本実施の形態に係るデータ処理装置1の構成は、図1で示される。データ処理装置1は、データの入出力を行うI/O11と、各種データやプログラムなどを記憶するHDD12と、BIOSなどの基本プログラムを記憶するROM13と、HDD12やROM13などに記憶されたプログラムを実行するCPU14(「制御部」に相当する)と、各種データを保持するRAM15と、音声データを処理する音声LSI16と、画像に対応する画像データを処理する描画LSI17と、画像データを保持するVRAM18とを備える。これらの部品は、バスで接続されている。
【0020】
I/O11には、I/O11には、GPSデータを受信するGPS受信機21、VICSデータを受信するVICS受信機22、速度データを出力する速度センサ23、ジャイロデータを出力するジャイロセンサ24および接触座標データを出力するタッチパネル25が接続されている。さらに、I/O11には、音声データに対応する音声を出力するスピーカ31および画像データに対応する画像を表示するディスプレイ32が接続されている。ここで、タッチパネル25およびディスプレイ32は、タッチパネル25での接触座標およびディスプレイ32での表示座標が一致するように重ねて設けられている。
【0021】
HDD12には、ディスプレイ32の表示領域の上部と下部との境界に対応する境界表示座標とタッチパネル25での接触座標とが符合した場合に、タッチパネル25での接触座標に応じて俯瞰地図の視点を決定する処理を許可する制御部としてをCPU14に実行させるためのプログラムが記憶されている。また、HDD12には、2軸で定義された2次元地図データなどが記憶されている。
<処理について>以上のように構成されたデータ処理装置1の処理は、図2ないし図7で示される。図2に示すように、CPU14は、HDD12に記憶されたプログラムをRAM15に展開し、タッチパネル25からの接触座標データを割り込みデータとして、次の処理を実行する。
【0022】
CPU14は、接触座標(図3(a)を参照)が境界表示座標(例えば、地平線が表示される座標である。以下も同じ)上にあるか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、RAM15が現在の接触座標に対応する接触座標データおよび現在の境界表示座標に対応する境界表示座標データを保持しており、両座標の差分が所定値(例えば、±5mm)の範囲内にあるか否かが判定される。ここで、境界表示座標データは、俯瞰図が表示されるごとにRAM15に保持されるものである。また、境界表示座標は、地図面M(x−y座標系)上の最遠方点P0と視点Sとを結ぶ直線が射影面Hに交わる点である(図4を参照)。本実施の形態では、最遠方点P0は固定されているので、境界表示座標の変化は、視点S(y−z座標系)の変化に連動する。以下では、接触座標は(Tx,Ty)であり、表示座標は(Tx´,Ty´)であるとする(但し、Tx=Tx´、Ty=Ty´である)。
【0023】
ステップS1で接触座標が境界表示座標上にあるとの判定がなされると(S1のYes)、CPU14は、ディスプレイ32に対してその境界表示座標上で表示態様を恒常表示から点滅表示にするための制御データを出力する(ステップS2)。描画LSI17は、VRAM18の境界表示座標に対応する領域に画像データを保持するタイミングを、画像データをVRAM18からディスプレイ32に転送するタイミングよりも少なくすることで、点滅表示を実行する。このとき、ディスプレイ32は、その境界座標座標で画像を点滅表示する(図3(b)を参照)。
【0024】
ステップS2で点滅表示が境界表示座標上でなされると、CPU14は、接触座標が変化したか否かを判定する(ステップS3)。具体的には、RAM15は、ステップS1での接触座標データおよびステップS1の後にタッチパネル25で出力された接触座標データを保持している。両接触座標の差分が所定値(例えば、5mm)を超えるか否かが判定される。ここで、ステップS1の後に出力された接触座標データは、「符合後の接触座標」を示すものである。
【0025】
ステップS3で接触座標が変化していないとの判定がなされると(S3のNo)、CPU14は、ステップS1からの経過時間Tが基準経過時間T1を超えたか否かを判定する(ステップS4)。このとき、経過時間Tが基準経過時間T1を超えたとの判定がなされれば(S4のYes)、CPU14は、本処理を終了する。他方、経過時間Tが基準経過時間T1を超えていないとの判定がなされれば(S4のNo)、CPU14は、ステップS3からの処理を実行する。
【0026】
ステップS3で接触座標が変化したとの判定がなされると(S3のYes)、CPU14は、俯瞰地図の視点を決定する(ステップS5)。具体的には、以下で示される演算が行われる。接触座標が表示領域の上下方向に変化した場合、視点高度Szは、俯角θに依存(例えば、比例)するので、「Sz=f(θ)」と定義される(図4を参照)。また、俯角θは、接触座標の上下方向の成分Tyに依存(例えば、比例)するので、「θ=g(Ty)」と定義される。したがって、「Sz=h(Ty)」が演算される。他方、接触座標が表示領域の左右方向に変化した場合、P0のy座標が固定されるので、視点方位Sxは、接触座標の左右方向成分Txに依存(例えば、比例)するので、「Sx=I(Tx)」と定義される。つまり、「Sz=h(Ty)」が演算される。
【0027】
ステップS5で視点が決定されると、CPU14は、ステップS5で決定された視点に従って俯瞰地図の座標を変換する(ステップS6)。具体的には、座標変換(特開2003−22005号公報を参照)でのパラメータとして、ステップS5で決定された視点高度Szや視点方位Sxなどが用いられる。
【0028】
ステップS6で座標変換が行われると、CPU14は、ディスプレイ32に対して変換後の俯瞰地図を表示させるための制御データを出力する(ステップS7)。描画LSI17は、変換後の俯瞰地図に対応する画像データをVRAM18に展開し、順次、VRAM18からディスプレイ32に対して画像データを転送する。
【0029】
例えば、接触座標が上下方向に変化した場合(図5(a)を参照)、境界表示座標は表示領域内で上下方向に移動し、俯瞰地図は、その境界表示座標(「符合後の境界表示座標」に相当する)と接触座標(「符合後の接触座標」に相当する)とが一致した状態で、ディスプレイ32に表示される(図5(b)を参照)。
【0030】
他方、接触座標が左右方向に変化した場合(図6(a)を参照)、俯瞰地図は、接触座標が変化した方向に境界表示座標の中点を移動させた状態でディスプレイ32に表示される(図6(b)を参照)。
【0031】
さらに、ディスプレイ32は、接触座標の可変範囲をゲージ状に表示している(図3などを参照)。接触座標がゲージの最上限に位置すると、ディスプレイ32は、2次元地図を真下に見下ろしたものを表示する。他方、接触座標がゲージの最下限に位置すると、ディスプレイ32は、建物画像などを立体的に表示する。
【0032】
本実施の形態では、接触座標が離散的に変化する場合(図7(a)を参照)、俯瞰地図の更新表示は、接触座標の変化が終了した時点で行われる(図7(b)を参照)。他方、接触座標が連続的に変化する場合(図7(c)を参照)、俯瞰地図の更新表示は、接触座標が変化している最中に定期的に行われる(図7(d)を参照)。
<本実施の形態における効果>本実施の形態によれば、境界表示座標と接触座標とが符合すると、タッチパネル25での接触座標に応じて俯瞰地図の視点を決定する処理が許可されるので、地平線などの境界画像が操作ボタンの代わりとなり、俯瞰地図の視点を決定するための操作に際して誤動作を防止することができる。
【0033】
本実施の形態によれば、接触座標と境界表示座標とが符合する前後で、境界表示座標での表示態様が異なるので、境界画像が選択されているか否かをユーザに認識させることができる。
【0034】
本実施の形態によれば、符合後の接触座標が表示領域の上下方向に変化する場合に、俯瞰地図の視点高度は符合後の接触座標に応じて決定されるので、新たな視点高度をユーザの操作感に合わせることができる。
【0035】
本実施の形態によれば、符合後の接触座標が表示領域の左右方向に変化する場合に、俯瞰地図の視点方位は符合後の接触座標に応じて決定されるので、新たな視点方位をユーザの操作感に合わせることができる。
【0036】
本実施の形態によれば、ディスプレイ32は接触座標の可変範囲を表示しているので、ユーザに対して操作限度を認識させることができる。
<変形例>以上の説明では、俯瞰地図の視点が演算によって決定されているが、接触座標と視点との対応が予めテーブルとしてHDD12などに記憶されていてもよい。この変形例によれば、視点決定に必要な時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明は、俯瞰地図の視点を決定するための操作に際して誤動作を防止することができるという効果を有し、ナビゲーション装置などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るデータ処理装置を実施するための最良の形態の構成を示すハードウエア構成図
【図2】本実施の形態におけるデータ処理装置での処理の流れを示すフロー図
【図3】(a)接触座標と境界表示座標とが符合する前における表示例を示す図(b)接触座標と境界表示座標とが符合した後における表示例を示す図
【図4】本実施の形態における各種パラメータの関係を示す図
【図5】(a)接触座標が上下方向に変化する様子を示す図(b)接触座標が上下方向に変化した後における表示例を示す図
【図6】(a)接触座標が左右方向に変化する様子を示す図(b)接触座標が左右方向に変化した後における表示例を示す図
【図7】(a)接触座標が離散的に変化する場合におけるタッチパネルでのオンオフを示す図(b)(a)の場合における描画タイミングを示す図(c)接触座標が連続的に変化する場合におけるタッチパネルでのオンオフを示す図(d)(c)の場合における描画タイミングを示す図
【符号の説明】
【0039】
1 データ処理装置
14 CPU(制御部)
25 タッチパネル
32 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイに対してその表示領域の下部で俯瞰地図を表示させるとともに表示領域の上部で他の画像を表示させるデータ処理装置であって、
表示領域の上部と下部との境界に対応する境界表示座標とタッチパネルでの接触座標とが符合した場合に、タッチパネルでの接触座標に応じて俯瞰地図の視点を決定する処理を許可する制御部を備えるデータ処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、符合後の接触座標が表示領域の上下方向に変化する場合に、符合後の接触座標に応じて俯瞰地図の視点高度を決定することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、符合後の接触座標が表示領域の左右方向に変化する場合に、符合後の接触座標に応じて俯瞰地図の視点方位を決定することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、ディスプレイに対して接触座標の可変範囲を表示させることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、タッチパネルでの接触座標と境界表示座標とが符合する前後で、境界表示座標での表示態様を異ならせることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−34101(P2007−34101A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219976(P2005−219976)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】