説明

ドライアイ治療剤

【課題】ドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤を探索すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物またはその塩は、ドライアイモデルを用いた角膜障害治癒効力試験において優れた改善効果を発揮し、ドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤として有用である。Aは低級アルキレン基または低級アルケニレン基;環Xは、非芳香族環または含窒素芳香族複素環;R1は水素原子または低級アルキル基;R2はヒドロキシ基;R1とR2は縮合してラクトン環を形成してもよく;R3は水素原子または低級アルキル基;R4は置換基を有してもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ヒドロキシ基若しくはそのエステル、低級アルコキシ基、カルボキシ基若しくはそのアミド、または低級アルキルアミノ基若しくはそのアミド;mは0〜4の整数、mが2以上の場合には各R4は同一または異なっていてもよい。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタチン系化合物を有効成分とするドライアイ治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜は、直径約1cm、厚さ約1mmの透明な無血管の組織であり、また、結膜は、角膜縁より後方の眼球表面と眼瞼の裏面を覆っている粘膜である。角膜や結膜が障害をうけると、視機能に重大な影響を及ぼすことが知られている。ドライアイに伴う角結膜障害は、角膜上皮及び結膜上皮の正常な再構築に悪影響を与え、結果として、角膜実質及び角膜内皮の構造や機能まで害されることがある。近年、細胞生物学の発展に伴い、細胞の分裂・移動・接着・伸展・分化等に関与する因子が解明されており、これらの因子が角結膜障害の修復に重要な役割を担っていることが報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
一方、スタチン系化合物は、血中コレステロールの生合成を抑制することが知られ、高脂血症等の治療薬として広く使用されている。特許文献1には、アトルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、シンバスタチンなどのスタチン系化合物が免疫調節剤、免疫阻害剤及び抗炎症剤として有用であることが記載されており、また、特許文献2には、セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチンなどのスタチン系化合物が炎症性疾患や循環器系疾患などのTNF−α関連疾患の治療剤として有用であることが記載されている。
【0004】
しかしながら、スタチン系化合物について、ドライアイなどの角結膜疾患に対する薬理効果を検討した報告はない。
【特許文献1】特表2004−512278号公報
【特許文献2】特開2001−294526号公報
【非特許文献1】臨眼,46, 738-743 (1992)
【非特許文献2】眼科手術,5, 719-727 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタチン系化合物について、新たな医薬用途を探索することは興味深い課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、スタチン系化合物の新たな医薬用途を探索すべく鋭意研究を行ったところ、ラットドライアイモデルを用いた角膜障害治癒効力試験において、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート(シンバスタチン)、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸(プラバスタチン)、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル(2S)−2−メチルブタノエート(ロバスタチン)、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸(フルバスタチン)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸(セリバスタチン)、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸(アトルバスタチン)、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸(ピタバスタチン、イタバスタチン)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸(ロスバスタチン)またはその塩が優れた角膜障害改善効果を発揮することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]下記一般式(1)で表される化合物またはその塩を有効成分とするドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、
【化1】

【0008】
(式中、Aは、低級アルキレン基または低級アルケニレン基を示し;
環Xは、非芳香族環または含窒素芳香族複素環を示し;
1は、水素原子または低級アルキル基を示し;
2は、ヒドロキシ基を示し;
1とR2は、縮合してラクトン環を形成してもよく;
3は、水素原子または低級アルキル基を示し;
4は、置換基を有してもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ヒドロキシ基若しくはそのエステル、低級アルコキシ基、カルボキシ基若しくはそのアミド、または低級アルキルアミノ基若しくはそのアミドを示し;
mは、0〜4の整数を示し、mが2以上の場合には、各R4は同一または異なっていてもよい。)
[2]一般式(1)が、
【化2】

【0009】
である前[1]記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、
[3]一般式(1)〜(3)において、
環Xが、
【化3】

【0010】
を示し;
5及びR6は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基または低級アルキル基を示し;
7は、ヒドロキシ基またはそのエステルを示し;
8及びR11は、同一または異なって水素原子、低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し;
9及びR10は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基またはカルボキシ基若しくはそのアミドを示し;
12は、水素原子または低級アルキル基を示し;
13は、水素原子または低級アルキル基を示し;
14は、水素原子または置換基を有してもよい低級アルキル基を示し;
15は、置換基を有してもよいアリール基を示し;
16及びR18は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し;
17は、低級アルキルアミノ基またはそのアミドを示し;
19は、水素原子または低級アルキル基を示し;
20は、置換基を有してもよいアリール基を示し;
21は、置換基を有してもよいアリール基を示し;
22は、シクロアルキル基を示す前[1]または[2]記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、
[4]3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート、3,5−ジヒドロキシ−7−[1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸、3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル−2−メチルブタノエート、3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸、3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸、3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸、7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸、3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸である前[1]〜[3]のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、
[5]一般式(1)で表される化合物が、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル(2S)−2−メチルブタノエート、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸である前[1]〜[3]のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、
[6]一般式(1)で表される化合物の塩が、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸 モノナトリウム塩、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸 カルシウム塩(2:1)、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)である前[1]〜[3]のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、
[7]ドライアイに伴う疾患が、角膜潰瘍、点状表層角膜症、角膜上皮欠損または結膜上皮欠損である前[1]〜[6]のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、および
[8]剤型が、点眼剤または眼軟膏剤である前[1]〜[7]のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤、である。
【0011】
以下に、本明細書中で規定した各基、環、原子について詳しく説明する。
【0012】
「低級アルキレン基」とは、炭素原子数が1〜8個の直鎖または分枝のアルキレン基を示す。例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、メチルメチレン、エチルメチレン基等が挙げられる。
【0013】
「低級アルケニレン基」とは、炭素原子数が2〜8個の直鎖または分枝のアルケニレン基を示す。例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、メチルメチレン、プロピレン、2−メチルトリメチレン等に二重結合を1個または2個含んだ基が挙げられる。
【0014】
「非芳香族環」とは、炭素原子数6〜10個の、環内に1〜2個の二重結合を含んでいてもよい単環式または二環式の非芳香族炭化水素環を示す。例えば、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキセン、シクロヘキサ−1,3−ジエン、シクロヘキサ−1,4−ジエン、1,2,3,4,4a,5,6,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン環等が挙げられ、好ましくは、1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン環が挙げられる。
【0015】
「含窒素芳香族複素環」とは、1〜2個の窒素原子を有する炭素原子数4〜9個の単環式または二環式の芳香族複素環を示す。例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、シノリン、キナゾリン、キノキサリン、インドール、イソインドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール環が挙げられ、好ましくは、ピロール、ピリジン、キノリン、インドール環が挙げられる。
【0016】
「低級アルキル基」とは、炭素原子数1〜6個の直鎖または分枝のアルキル基を示す。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
「置換基を有してもよい低級アルキル基」の置換基としては、ヒドロキシ基及び低級アルコキシ基から選択される1または2個の基を示す。
【0018】
「シクロアルキル基」とは、炭素原子数3〜8個のシクロアルキルを示す。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0019】
「低級アルコキシ基」とは、炭素原子数1〜6個の直鎖または分枝のアルコキシを示す。例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ基等を示す。
【0020】
「アリール基」とは、炭素原子数6〜10個の単環式または二環式の芳香族炭化水素を示す。例えば、フェニル、ナフチル基等が挙げられ、
「置換基を有してもよいアリール基」の置換基としては、ハロゲン原子及びアルキル基から選択される1または2個の基を示す。
【0021】
「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を示す。
【0022】
「ヒドロキシ基のエステル」とは、ヒドロキシ基と脂肪族カルボン酸とからなるエステルを示す。ここで、脂肪族カルボン酸とは、炭素原子数1〜7個の直鎖または分枝のモノカルボン酸を示し、具体例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸等が挙げられる。
【0023】
特に、ヒドロキシ基と2−メチルブタン酸とからなるエステル、及び、ヒドロキシ基と2,2−ジメチルブタン酸とからなるエステルが好ましい。
【0024】
「カルボキシ基のアミド」とは、カルボキシ基とアンモニア、1級または2級アミン等とからなるアミドを示す。ここで、アミンは低級アルキルアミンでもアリールアミンでもよく、低級アルキルアミンの具体例として、メチルアミン、エチルアミン、エチルメチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジヘキシルアミン等が挙げられ、また、アリールアミンの具体例として、アニリン、ナフチルアミン等が挙げられる。
【0025】
「低級アルキルアミノ基」とは、アミノ基の水素原子が前記低級アルキル基で1または2置換されたモノまたはジアルキルアミノ基を示す。
【0026】
モノアルキルアミノ基の具体例として、メチルアミノ、エチルアミノ、エチルメチルアミノが挙げられ、ジアルキルアミノ基の具体例として、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジヘキシルアミノ等が挙げられる。
【0027】
「低級アルキルアミノ基のアミド」とは、低級アルキルアミノ基と脂肪族スルホン酸とからなるスルホン酸アミドを示す。ここで、脂肪族スルホン酸とは、炭素原子数1〜6個の直鎖または分枝のモノスルホン酸を示す。具体例として、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、2−ブタンスルホン酸等が挙げられる。
【0028】
「ラクトン環」とは、6員環のδ−ラクトン環を示す。
【0029】
本化合物における「塩」とは、医薬として許容される塩であれば、特に制限はなく、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸等の有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチル等との四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛等との金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
【0030】
また、本化合物及びその「塩」が結晶として存在する場合、その結晶の多形も本発明の範囲に含まれる。
【0031】
本化合物に幾何異性体または光学異性体が存在する場合は、それらの異性体も本発明の範囲に含まれる。
【0032】
また、本化合物は水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
【0033】
さらに、本化合物にプロトン互変異性が存在する場合には、それらの互変異性体も本発明に含まれる。
【0034】
本化合物は、例えば特表2004−512278号公報、特開2001−294526号公報、特公平2−46031号公報、特開平1−279866、特開2004−115500などの特許公報に記載された化合物で例示され、これらの化合物の医薬として許容される塩であってもよい。
【0035】
本化合物の好ましい具体例として、例えば、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート(シンバスタチン)、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸(プラバスタチン)、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル(2S)−2−メチルブタノエート(ロバスタチン)、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸(フルバスタチン)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸(セリバスタチン)、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸(アトルバスタチン)、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸(ピタバスタチン、イタバスタチン)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸(ロスバスタチン)、メバスタチン、コンパクチンおよびこれらの化合物の医薬として許容される塩が挙げられる。
【0036】
また、これらの化合物は、先の特許公報に基づき製造し、用いることができる。また、市販されているものを用いることもできる。
【0037】
本発明において、ドライアイに伴う疾患は、ドライアイに伴う疾患であれば特に制限はなく、例えば角膜潰瘍、点状表層角膜症、角膜上皮欠損、結膜上皮欠損などが挙げられる。
【0038】
本発明によるドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤は、経口でも、非経口でも投与することができる。
【0039】
投与剤型としては、点眼剤、眼軟膏剤、注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等が挙げられ、特に点眼剤が好ましい。これらは汎用されている技術を用いて製剤化することができる。例えば、点眼剤は、塩化ナトリウム、濃グリセリン等の等張化剤、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の緩衝化剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレ−ト、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等の安定化剤、塩化ベンザルコニウム、パラベン等の防腐剤等を必要に応じて用い、調製することができる。pHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、4〜8の範囲が好ましい。
【0040】
眼軟膏剤は、白色ワセリン、流動パラフィン等の汎用される基剤を用いて、調製することができる。また、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口剤は、乳糖、結晶セルロ−ス、デンプン、植物油等の増量剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロ−ス、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボキシメチルセルロ−ス カルシウム、低置換ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス等の崩壊剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロ−ス、マクロゴ−ル、シリコン樹脂等のコ−ティング剤、ゼラチン皮膜等の皮膜剤などを必要に応じて加えて、調製することができる。
【0041】
有効成分の投与量は症状、年令、剤型等によって適宜選択できるが、点眼剤では0.0001〜10%(w/v)、好ましくは0.001〜3%(w/v)のものを1日1〜数回点眼すればよい。また、経口剤では通常1日当り0.1〜5000mg、好ましくは1〜1000mgを1回または数回に分けて投与すればよい。
【発明の効果】
【0042】
後述するように、角膜障害の治癒効力試験を実施したところ、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸 モノナトリウム塩、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル(2S)−2−メチルブタノエート、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸 カルシウム塩(2:1)、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)などのスタチン系化合物は、ドライアイモデルにおいて優れた改善効果を発揮するので、ドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に、薬理試験の結果および製剤例を示すが、これらは本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
[薬理試験]
角膜障害の治癒効力試験
雄性SDラットを用い、Fujiharaらの方法(Invest. Ophthalmol. Vis. Sci 42(1):96−100 (2001))に準じ、ドライアイモデルを作製した。ドライアイモデル作製後、村上らの方法(あたらしい眼科 21(1):87-90(2004))に準じて角膜障害をスコア判定し、各スタチン系化合物点眼後の角膜障害の改善率を求めた。スタチン系化合物として、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート(以下「化合物A」とする)、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸 モノナトリウム塩(以下「化合物B」とする)、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル(2S)−2−メチルブタノエート(以下「化合物C」とする)、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩(以下「化合物D」とする)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7―[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩(以下「化合物E」とする)、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸 カルシウム塩(2:1)(以下「化合物F」とする)、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)(以下「化合物G」とする)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)(以下「化合物H」とする)を用いた。
【0045】
(実験方法)
雄性SDラットを用い、ネンブタ−ルを投与して全身麻酔を施した。ついで眼窩外涙腺を摘出し、2ヶ月かけて角膜障害を誘発させた。
【0046】
つぎに、被験化合物(化合物A〜H)を以下のように点眼(点眼量:5μL/回)した。
【0047】
化合物A点眼群:
化合物A(0.02%)の生理的リン酸緩衝液(PBS溶液)を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0048】
化合物B点眼群:
化合物B(0.002%)のPBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0049】
化合物C点眼群:
化合物C(0.02%)のPBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0050】
化合物D点眼群:
化合物D(0.02%)のPBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0051】
化合物E点眼群:
化合物E(0.02%)のPBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0052】
化合物F点眼群:
化合物F(0.02%)のPBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0053】
化合物G点眼群:
化合物G(0.002%)のPBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0054】
化合物H点眼群:
化合物H(0.02%)のPBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0055】
コントロール群では、PBS溶液を両眼に1日6回、14日間点眼した(一群4匹8眼)。
【0056】
点眼開始14日後、角膜の障害部分をフルオレセインにて染色した。角膜の上部、中間部および下部のそれぞれについて、フルオレセインによる染色の程度を下記の基準に従ってスコア判定し、上記各部におけるスコアの合計の平均値から角膜障害の改善率を算出した。
【0057】
さらに、正常眼についても上記各部におけるスコアの合計の平均値を求めた。(判定基準)
0:染色されていない。
【0058】
1:染色が疎であり、各点状の染色部分は離れている。
【0059】
2:染色が中程度であり、点状の染色部分の一部が隣接している。
【0060】
3:染色が密であり、各点状の染色部分は隣接している
(結果)
下記計算式により、コントロール群(PBS溶液)のスコア合計の平均値を基準(改善率:0%)にして、化合物A点眼群および化合物B点眼群の改善率、化合物C点眼群から化合物F点眼群の改善率、および、化合物G点眼群および化合物H点眼群の改善率をそれぞれ算出した。これらを表1〜3に示す。なお、スコアの平均値は各8眼の平均である。
【0061】
改善率(%)={(コントロール)−(本化合物)}/障害度×100
障害度=(コントロール)−(正常眼)
【表1】

【表2】

【表3】

【0062】
(考察)
上記のラットを用いた薬理試験の結果から明らかなように、化合物A〜Hは、いずれも角膜障害を顕著に改善した。
【0063】
[製剤例]
以下に化合物A〜Hを用いた代表的な製剤例を示す。
【0064】
処方例1(点眼剤)
100ml中
化合物A 100mg
塩化ナトリウム 900mg
滅菌精製水 適量
化合物Aの添加量を変えることにより、濃度が0.003%(w/v)、0.01%(w/v)、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.3%(w/v)、1%(w/v)、3%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【0065】
処方例2(点眼剤)
100ml中
化合物B 10mg
塩化ナトリウム 800mg
リン酸水素二ナトリウム 100mg
リン酸二水素ナトリウム 適量
滅菌精製水 適量
化合物Bの添加量を変えることにより、濃度が0.001%(w/v)、0.03%(w/v)、0.1%(w/v)、0.3%(w/v)、1.0%(w/v)、3.0%(w/v)の点眼剤を調製できる。
【0066】
処方例3(点眼剤)
100ml中
化合物C 100mg
塩化ナトリウム 900mg
滅菌精製水 適量
化合物Cの添加量を変えることにより、濃度が0.003%(w/v)、0.01%(w/v)、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.3%(w/v)、1%(w/v)、3%(w/v)の点眼剤を調製できる。また、化合物Cの代わりに、化合物D〜Hを用いることにより、各点眼剤を調製できる。
【0067】
処方例4(眼軟膏剤)
100g中
化合物B 0.3g
流動パラフィン 10.0g
白色ワセリン 適量
化合物Bの添加量を変えることにより、濃度が1%(w/w)、3%(w/w)の眼軟膏剤を調製できる。
【0068】
処方例5(眼軟膏剤)
100g中
化合物E 0.3g
流動パラフィン 10.0g
白色ワセリン 適量
化合物Eの添加量を変えることにより、濃度が1%(w/w)、3%(w/w)の眼軟膏剤を調製できる。また、化合物Eの代わりに、化合物C、化合物D、化合物F〜Hを用いることにより、各眼軟膏剤を調製できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物またはその塩を有効成分として含有するドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。
【化1】

(式中、Aは、低級アルキレン基または低級アルケニレン基を示し;
環Xは、非芳香族環または含窒素芳香族複素環を示し;
1は、水素原子または低級アルキル基を示し;
2は、ヒドロキシ基を示し;
1とR2は、縮合してラクトン環を形成してもよく;
3は、水素原子または低級アルキル基を示し;
4は、置換基を有してもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ヒドロキシ基若しくはそのエステル、低級アルコキシ基、カルボキシ基若しくはそのアミド、または低級アルキルアミノ基若しくはそのアミドを示し;
mは、0〜4の整数を示し、mが2以上の場合には、各R4は同一または異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)が、
【化2】

である請求項1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。
【請求項3】
一般式(1)〜(3)において、
環Xが、
【化3】

を示し;
5及びR6は、同一または異なって、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基または低級アルキル基を示し;
7は、ヒドロキシ基またはそのエステルを示し;
8及びR11は、同一または異なって水素原子、低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し;
9及びR10は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基またはカルボキシ基若しくはそのアミドを示し;
12は、水素原子または低級アルキル基を示し;
13は、水素原子または低級アルキル基を示し;
14は、水素原子または置換基を有してもよい低級アルキル基を示し;
15は、置換基を有してもよいアリール基を示し;
16及びR18は、同一または異なって、水素原子、低級アルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し;
17は、低級アルキルアミノ基またはそのアミドを示し;
19は、水素原子または低級アルキル基を示し;
20は、置換基を有してもよいアリール基を示し;
21は、置換基を有してもよいアリール基を示し;
22は、シクロアルキル基を示す請求項1または請求項2記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。
【請求項4】
一般式(1)で表される化合物が、3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート、3,5−ジヒドロキシ−7−[1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸、3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル−2−メチルブタノエート、3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸、3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸、3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸、7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸、3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸である請求項1〜3のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物が、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル2,2−ジメチルブタノエート、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸、(+)−(1S,3R,7S,8S,8aR)−3,7−ジメチル−1,2,3,7,8,8a−ヘキサヒドロ−8−[2−[(2R,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル]エチル]−1−ナフチル(2S)−2−メチルブタノエート、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸である請求項1〜3のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。
【請求項6】
一般式(1)で表される化合物の塩が、(+)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[ (1S,2S,6S,8S,8aR)−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(2S)−2−メチルブチリルオキシ]−1−ナフチル]ヘプタン酸 モノナトリウム塩、(±)−(3R*,5S*,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[3−(4−フルオロフェニル)−1−(1−メチルエチル)−1H−インドール−2−イル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2,6−ジイソプロピル−4−(4−フルオロフェニル)−5−(メトキシメチル)−3−ピリジル]−6−ヘプテン酸 モノナトリウム塩、(−)−(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−フェニルアミノカルボニル−1H−ピロール−1−イル]ヘプタン酸 カルシウム塩(2:1)、(+)−(3R,5S,6E)−7−[2−シクロプロピル−4−(4−フルオロフェニル)キノリン−3−イル]−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)、(+)−(3R,5S,6E)−3,5−ジヒドロキシ−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[N−メチル−(N−メチルスルフォニル)アミノ]ピリミジン−5−イル]−6−ヘプテン酸 カルシウム塩(2:1)である請求項1〜3のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。
【請求項7】
ドライアイに伴う疾患が、角膜潰瘍、点状表層角膜症、角膜上皮欠損または結膜上皮欠損である請求項1〜6のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。
【請求項8】
剤型が、点眼剤または眼軟膏剤である請求項1〜7のいずれか1記載のドライアイまたはドライアイに伴う疾患の治療剤。



【公開番号】特開2006−193515(P2006−193515A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359672(P2005−359672)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【Fターム(参考)】