説明

ナビゲーションシステムおよび車載装置

【課題】車載装置における記憶デバイスの記憶容量削減および有効活用を図ること。
【解決手段】メッシュ状に分割された地図データを車載装置からの要求に応じて車載装置へ送信するようにサーバ装置を構成する。また、サーバ装置に対して地図データを要求し、要求に応じてサーバ装置から受信した地図データを記憶し、記憶された地図データに対して有効期限を設定し、有効期限を超過した地図データを消去するように車載装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載される車載装置と、前記車載装置にネットワーク接続されるサーバ装置とで車両に関するナビゲーションを行うナビゲーションシステムおよび車載装置に関し、特に、車載装置における記憶デバイスの記憶容量削減および有効活用を図ることができるナビゲーションシステムおよび車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS(Global Positioning System)を利用して車両のナビゲーションを行う車載ナビゲーション装置が知られている。かかる車載ナビゲーション装置は、地図情報上に現在の車両位置や進行方向を重畳表示するとともに、目的地までの経路探索機能や、探索した経路を案内する経路案内機能を有することが一般的である。
【0003】
そして、近年では、地図情報の詳細化に伴う地図データや案内用音声データの増大に対応するために、大容量の記憶容量を有するHDD(Hard Disk Drive)を備えたいわゆるHDDナビが登場するに至っている。
【0004】
また、道路事情の変化や、道路近隣の施設の変化にいち早く対応するために、地図データを地図データ配信センタで一括管理しつつ、地図データを必要に応じて車載ナビゲーション装置へダウンロードする通信型のナビゲーションシステムも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−247833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術には、地図データのダウンロードを繰り返すと、車載装置の記憶デバイスの容量を圧迫してしまうという問題があった。このため、従来は、車載装置における記憶デバイスの容量を十分な容量なものにしておく必要があり、装置コストがかさむ結果となってしまっていた。
【0007】
また、従来は、ダウンロードしたにも関わらず使用されない地図データが存在した場合であっても、このような地図データを検出する手立てがなく、不要な地図データが記憶デバイス内に長期にわたって残存してしまっていた。このため、車載装置における記憶デバイスの容量を有効活用することができないという問題もあった。
【0008】
これらのことから、車載装置における記憶デバイスの容量を削減することができるとともに、記憶デバイスの容量を有効活用することができるナビゲーションシステムあるいは車載装置をいかにして実現するかが大きな課題となっていた。
【0009】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、車載装置における記憶デバイスの記憶容量削減および有効活用を図ることができるナビゲーションシステムおよび車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、車両に搭載される車載装置と、前記車載装置にネットワーク接続されるサーバ装置とで前記車両に関するナビゲーションを行うナビゲーションシステムであって、前記サーバ装置は、メッシュ状に分割された地図データを前記車載装置からの要求に応じて当該車載装置へ送信する地図データ送信手段を備え、前記車載装置は、前記サーバ装置に対して前記地図データを要求する要求手段と、前記地図データ要求手段による要求に応じて前記サーバ装置から受信した前記地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記地図データ記憶手段に記憶された前記地図データに対して有効期限を設定する有効期限設定手段と、前記有効期限を超過した前記地図データを前記地図データ記憶手段から消去する消去手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、車両に搭載される車載装置と、前記車載装置にネットワーク接続されるサーバ装置とで前記車両に関するナビゲーションを行うナビゲーションシステムであって、前記サーバ装置は、メッシュ状に分割されており有効期限が設定されている地図データを前記車載装置からの要求に応じて当該車載装置へ送信する地図データ送信手段を備え、前記車載装置は、前記サーバ装置に対して前記地図データを要求する地図データ要求手段と、前記地図データ要求手段による要求に応じて前記サーバ装置から受信した前記地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記有効期限を超過した前記地図データを前記地図データ記憶手段から消去する消去手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、車両に搭載される車載装置であって、上位装置に対してメッシュ状に分割された地図データを要求する地図データ要求手段と、前記地図データ要求手段による要求に応じて前記上位装置から受信した前記地図データを記憶する地図データ記憶手段と、前記地図データ記憶手段に記憶された前記地図データに対して有効期限を設定する有効期限設定手段と、前記有効期限を超過した前記地図データを前記地図データ記憶手段から消去する消去手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サーバ装置は、メッシュ状に分割された地図データを車載装置からの要求に応じて車載装置へ送信し、車載装置は、サーバ装置に対して地図データを要求し、要求に応じてサーバ装置から受信した地図データを記憶し、記憶された地図データに対して有効期限を設定し、有効期限を超過した地図データを消去することとしたので、車載装置における記憶デバイスの記憶容量削減および有効活用を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係るナビゲーション手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る車載装置およびサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、地図データ要求処理の処理内容を示す図である。
【図4】図4は、有効期限調整処理の処理内容を示す図である。
【図5】図5は、地図情報の一例を示す図である。
【図6】図6は、有効期限調整処理の変形例を示す図である。
【図7】図7は、車載装置が地図データを要求する際に実行する処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、車載装置が地図データの有効期限を調整する際に実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るナビゲーション手法を適用した車載装置およびナビゲーションシステムの実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係るナビゲーション手法の概要について図1を用いて説明した後に、本発明に係るナビゲーション手法を適用したナビゲーションシステムについての実施例を図2〜図8を用いて説明することとする。
【0016】
まず、実施例の詳細な説明に先立ち、本発明に係るナビゲーション手法の概要について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係るナビゲーション手法の概要を示す図である。なお、同図の(A)には、本発明に係るナビゲーション手法の概要を、同図の(B)には、本発明に係るナビゲーション手法の適用例を、それぞれ示している。また、同図の(A)には、ナビゲーションシステム1が、各車両に搭載された車載装置10と、各車載装置10と通信するサーバ装置20とを有する場合について示している。
【0017】
図1の(A)に示すように、本発明に係るナビゲーション手法では、サーバ装置10がメッシュ状に分割されたメッシュ地図100を車載装置20へ配布する。ここで、メッシュ地図100は、たとえば、2.5km四方のサイズである。すなわち、車載装置10は、出荷段階では、メッシュ地図100を有しておらず、必要に応じてサーバ装置20からメッシュ地図100をダウンロードする。
【0018】
具体的には、車載装置10は、自車両の位置、走行速度、走行方向といった自車両情報に基づき、サーバ装置20へ地図の配布を要求する(図1の(A−1)参照)。そして、サーバ装置20は、かかる要求に応じ、該当する地図(メッシュ地図100)を車載装置10へ配布する(図1の(A−2)参照)。
【0019】
ここで、車載装置10は、サーバ装置20からダウンロードしたメッシュ地図100に対して有効期限を設定する(図1の(A−3)参照)。さらに、車載装置10は、ダウンロードした各メッシュ地図100にそれぞれ対応する領域を自車両が通過したか否かに基づき、設定した有効期限の延長や短縮といった有効期限調整処理を適宜実行する(図1の(A−4)参照)。
【0020】
そして、車載装置10は、有効期限を超過したメッシュ地図100を消去していく(図1の(A−5)参照)。このように、本発明に係るナビゲーション手法では、サーバ装置20からダウンロードしたメッシュ地図100に対して車載装置10が有効期限を設定し、さらに、自車両の通過/不通過に応じて各メッシュ地図100の有効期限を調整することとした。
【0021】
したがって、本発明に係るナビゲーション手法によれば、メッシュ地図の消去時期を適切に設定することで、利用者の利便性を確保しながら、車載装置10における記憶デバイスの容量を削減することができる。また、利用されていないメッシュ地図100を検出して消去することができるので、車載装置10における記憶デバイスの有効活用を図ることができる。
【0022】
なお、メッシュ地図100に対する有効期限の設定については、サーバ装置20が行うこととしてもよい。すなわち、サーバ装置20側でメッシュ地図100に対して有効期限を設定し、有効期限が設定されたメッシュ地図100を車載装置10へ送信することとしてもよい。
【0023】
ここで、本発明に係るナビゲーション手法の適用例について、図1の(B)を用いて説明する。なお、図1の(B)に示したのは、車載装置10にダウンロードされるメッシュ地図100を、基準地図データと、追加地図データとに区分した場合の適用例である。
【0024】
具体的には、車載装置10にダウンロードされるメッシュ地図100のうち、利用者の自宅を中心メッシュとした、たとえば、3区画×3区画を基準地図データとする。ここで、この基準地図データは、図1の(A)で説明した有効期限調整処理や地図データ消去処理の対象とはならない「消去非対象のメッシュ地図100」である。また、かかる基準地図データは、車載装置10が利用者によって購入され、最初の操作が行われた場合などに、一括してサーバ装置20からダウンロードされるものとする。なお、基準地図データには、将来的な地図更新に対応するために所定の有効期限が設定されるものとする。
【0025】
一方、図1の(B)に破線で示した追加地図データは、基準地図データ以外のメッシュ地図100であり、図1の(A)で説明した有効期限調整処理や地図データ消去処理の対象となる「消去対象のメッシュ地図100」である。かかる追加地図データは、車載装置10を搭載した車両が基準地図データの周辺領域へ移動し、基準地図データの領域外へ出ることが予想される場合などに、走行速度や走行方向に応じ、適宜、サーバ装置20からダウンロードされる。
【0026】
このように、基準地図データと、追加地図データとを区分しておくことで、メッシュ地図100の消去に関連する処理負荷を低減することができる。また、消去非対象となる地図メッシュ100を自宅から所定範囲に設定しておくことで、車両の不通過によって自宅周辺の地図メッシュ100が消去されることを防止することができ、利用者の利便性を確保することができる。
【0027】
なお、本発明に係るナビゲーション手法は、利用者と地図データ提供事業者との契約プランに応じ、基準地図データの範囲を、自宅周辺30km四方や、自宅周辺50km四方というように、異なる範囲とする運用にも容易に適用することができる。また、本発明に係るナビゲーション手法によれば、車載装置10における記憶デバイスの容量を削減することができるので、車載装置10の低価格化を実現することが可能となる。
【0028】
以下では、図1を用いて説明したナビゲーション手法を適用したナビゲーションシステム1および車載装置10についての実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0029】
図2は、本実施例に係る車載装置10およびサーバ装置20の構成を示すブロック図である。まず、車載装置10の構成について説明する。車載装置10は、表示操作部11と、GPS(Global Positioning System)部12と、通信インタフェース13と、制御部14と、記憶部15とを備えている。また、制御部14は、要求部14aと、有効期限設定部14bと、有効期限調整部14cと、消去部14dとをさらに備えており、記憶部15は、地図情報15aを記憶する。
【0030】
表示操作部11は、タッチパネルディスプレイなどの入出力デバイスであり、利用者の操作を受け付ける処理を行うとともに、ナビ画面などを表示する処理を行う。たとえば、この表示操作部11は、基準地図データ(図1参照)のダウンロード操作を受け付けた場合には、かかる操作を受け付けた旨を制御部14の要求部14aへ通知する。
【0031】
GPS部12は、GPS衛星から受信した電波に基づいて車載装置10の位置、すなわち、自車位置を取得する処理を行うデバイスである。なお、このGPS部11は、取得した自車位置を制御部16の要求部14aへ渡す処理を併せて行う。
【0032】
なお、本実施例では、GPS部12によって取得された自車位置を用いて要求部14aがサーバ装置20へ地図データを要求する場合について説明するが、車両から走行速度を取得する車速取得部からの情報や、車両のピッチ方向、ロール方向あるいはヨー方向の運動状態を取得するジャイロ部からの情報を用いて要求部14aがサーバ装置20へ地図データを要求することとしてもよい。
【0033】
通信インタフェース13は、無線通信デバイスであり、車載装置10とサーバ装置20との間のデータ送受信を行う。また、制御部14は、車載装置10の全体制御を行う制御部である。
【0034】
要求部14aは、表示操作部11から受け取った地図データ要求指示、あるいは、GPS部12から受け取った位置情報に基づき、サーバ装置20へ地図データ(メッシュ地図100)の配布を要求する処理を行う処理部である。
【0035】
具体的には、この要求部14aは、表示操作部11から基準地図データ(図1参照)のダウンロード指示を受け付けた場合には、サーバ装置20に対して基準地図データの配布を要求する。また、要求部14aは、自車位置の時間遷移から予測した走行方向に基づき、自車位置が基準地図データの領域外へ出ることが予想された場合には、かかる走行方向の延長上に位置するメッシュ地図100の配布を要求する。
【0036】
ここで、要求部14aが行う地図データ要求処理の具体的な処理内容について、図3を用いて説明しておく。図3は、地図データ要求処理の処理内容を示す図である。なお、同図の(A)には、基本的な処理内容を、同図の(B)には、経路探索が行われた場合の処理内容を、同図の(C)には、経路の再探索(リルート)が行われた場合の処理内容を、それぞれ示している。
【0037】
なお、本実施例では、経路探索や経路の再探索(リルート)に関する機能をサーバ装置20が有しており、車載装置10から受け取った目的地や探索条件に応じて探索した探索結果を、車載装置10へ応答する場合について説明する。このように、車載装置20側に探索機能をもたせることで、車載装置10側の構成を簡略化することができる。したがって、従来の高機能な車載ナビ装置よりも装置コストを低減することが可能となる。
【0038】
図3の(A)に示すように、自車位置31がメッシュ地図100a上にあり、走行速度32が、未ダウンロードのメッシュ地図100bへ向かっていたとする。この場合、要求部14aは、未ダウンロードのメッシュ地図100bの配布をサーバ装置20へ要求する。
【0039】
なお、図3の(A)には、1つのメッシュ地図100を要求する場合を例示しているが、走行速度32方向の延長上に存在する複数のメッシュ地図100を要求することとしてもよい。また、走行速度32方向の延長線上に存在するメッシュ地図100の周辺に位置するメッシュ地図100(たとえば、図3の(A)におけるメッシュ地図100bの上下方向に位置するメッシュ地図100)を、要求することとしてもよい。
【0040】
次に、経路探索が行われた場合の地図データ要求処理について説明する。図3の(B)に示したように、目的地33までの経路34が探索されている場合、要求部14aは、経路34を含んだメッシュ地図100の配布を、順次、サーバ装置20へ要求する。たとえば、自車位置31がメッシュ地図100a上にある場合にはメッシュ地図100bが、自車位置31がメッシュ地図100b上にある場合にはメッシュ地図100cが、それぞれ要求対象となる。
【0041】
なお、目的地33までのメッシュ地図100(100b〜100e)の配布を一括して要求することとしてもよいし、経路34上のメッシュ地図100の配布を所定個数ずつまとめて要求することとしてもよい。
【0042】
次に、経路の再探索(リルート)が行われた場合の地図データ要求処理について説明する。なお、図3の(C)には、図3の(B)に示した経路34から自車位置32が外れ、目的地33までのあらたな経路35が再探索された場合について示している。
【0043】
図3の(C)に示したように、メッシュ地図100b上で、自車位置31が経路34から外れたとする。そして、自車位置31および走行方向32に基づき、目的地33までのあらたな経路35が探索されたとする。
【0044】
この場合、要求部14aは、メッシュ地図100gの配布を、サーバ装置20へ要求する。そして、自車位置31がメッシュ地図100g上に移動した場合には、メッシュ地図100hの配布を、サーバ装置20へ要求する。
【0045】
なお、図3の(C)に示した場合において、再探索前の経路33に応じてメッシュ地図100b〜100eが既に車載装置10へダウンロードされている場合には、これらのメッシュ地図100(メッシュ地図100b〜100e)を、後述する消去部14dによる消去対象とすることとしてもよい。また、この場合、目的地33を含むメッシュ地図100であるメッシュ地図100fについては、消去対象から除外することとしてもよい。
【0046】
図2の説明に戻り、車載装置10についての説明を続ける。有効期限設定部14bは、要求部14aからの要求に応じてサーバ装置20からメッシュ地図100を受信した場合に、受信したメッシュ地図100に対して有効期限を設定する処理を行う処理部である。なお、本実施例では、メッシュ地図100に対する有効期限の設定を、車載装置10が行う場合について説明するが、かかる有効期限の設定をサーバ装置20側で行うこととしてもよい。
【0047】
具体的には、この有効期限設定部14bは、通信インタフェース13経由で、サーバ装置20からメッシュ地図100を受け取ると、このメッシュ地図100と有効期限に関する有効期限情報とを関連付けて地図情報15aとして記憶部15へ記憶させる。
【0048】
有効期限調整部14cは、GPS部12から受け取った自車位置に基づき、地図情報15aに含まれる各メッシュ地図100上を自車両が通過したか否かを判定する。そして、この有効期限調整部14cは、かかる判定結果に基づき、有効期限を延長したり短縮したりといった有効期限調整処理を行う。
【0049】
ここで、有効期限調整部14cによって行われる有効期限調整処理の処理内容について、図4を用いて説明しておく。図4は、有効期限調整処理の処理内容を示す図である。なお、同図の(A)には、有効期限調整処理の概要を、同図の(B)には、有効期限の延長パターンその1を、同図の(C)には、有効期限の延長パターンその2を、それぞれ示している。
【0050】
なお、図4に示す「絶対有効期限」は、延長不可な有効期限であり、たとえば、有効期限設定部14bによって地図情報15aごとに設定される。また、図4に示す「現在の有効期限」や「延長した有効期限」は、たとえば、有効期限調整部14cによって地図情報15aごとに設定される。
【0051】
ここで、「絶対有効期限」よりも前に、有効期限が満了する場合もあるため、この意味では、有効期限(絶対有効期限)は短縮されるということができる。また、「現在の有効期限」は、延長される場合もあるため、この意味では、有効期限(現在の有効期限)は延長されるということができる。
【0052】
図4の(A)に示したように、有効期限調整部14cは、メッシュ地図100がダウンロードされると、所定期間の評価単位ごとに、有効期限を延長していく処理を行う。なお、絶対有効期限を越えて有効期限が延長されることはないものとする。
【0053】
具体的には、有効期限調整部14cは、図4の(B)に示したように、最初の評価単位41aの終了時に「現在の有効期限」を設定したうえで、この評価単位41a内に、自車両が、該当するメッシュ地図100上を通過したか否かを判定する。
【0054】
そして、評価単位41a内に自車両の通過があったと判定した場合には、次の評価単位41bの終了時へ有効期限を延長する(図4の(B)の「延長した有効期限」参照)。なお、評価単位41a内に自車両の通過がなかったと判定した場合には、有効期限の延長を行わない。すなわち、評価単位41aの終了時を有効期限満了とみなす。
【0055】
なお、本実施例では、絶対有効期限を上限としつつ、評価単位ごとに有効期限を延長する場合を例示しているが、絶対有効期限を最小の単位としたうえで、絶対有効期限内に自車両の通過があったと判定した場合に、次の絶対有効期限をあらたに設定することとしてもよい。
【0056】
また、図4の(B)には、自車両の通過があったと判定した場合に、評価単位ずつ有効期限を延長していく場合について示したが、自車両の通過がなかったと判定しても有効期限の延長を行いつつ、所定の条件を満たした場合に有効期限の延長を停止することとしてもよい。
【0057】
具体的には、図4の(C)に示した場合では、評価単位ごとの通過/不通過判定を、図4の(A)や(B)と同様に行っていくが、評価単位41bのように、自車両が不通過と判定された評価単位(以下、「不通過評価単位」と記載する)があっても、有効期限を次の評価単位の終了時へ延長する。
【0058】
そして、不通過評価単位の連続回数を所定の閾値と比較し、連続回数が所定の閾値以上である場合には(図4の(C−1)参照)、以降の延長を行わない(図4の(C−2)参照)。
【0059】
たとえば、所定の閾値が「3回」である場合について説明する。図4の(C)に示したように、評価単位41aは「通過」、評価単位41bは「不通過」、評価単位41cは「不通過」と、順次、判定されていったとする。
【0060】
この場合、「不通過」である評価単位41の連続回数は「2回」であるので、閾値の「3回」を下回っている。したがって、この場合には、評価単位41cの終了時点に設定されていた有効期限は、次の評価単位41dの終了時点へ延長される。なお、同図に示したように、評価単位41dや、評価単位41eが「通過」と判定されていけば、有効期限は、順次、延長されていくことになる。
【0061】
これに対し、所定の閾値が「2回」である場合には、評価単位41cの終了時点に設定されていた有効期限は延長されない。すなわち、評価単位41cの終了時点が最終的な有効期限とみなされる。そして、このことは、絶対有効期限が、短縮されたことと同意である。
【0062】
このように、「不通過評価単位」の連続性に着目して有効期限の延長/非延長を行うことで、有効期限調整をさらに柔軟に行うことができる。なお、所定の閾値を、メッシュ地図100ごと、あるいは、メッシュ地図100の所定のグループごとに異ならせることとしてもよい。
【0063】
図2の説明に戻り、車載装置10についての説明を続ける。消去部14dは、有効期限設定部14bによって地図情報15aに設定された有効期限、または、有効期限調整部14cによって調整された有効期限が満了した場合に、該当する地図情報15aを記憶部15から消去する処理を行う処理部である。
【0064】
記憶部15は、不揮発性メモリで構成される記憶デバイスであり、地図情報15aを記憶する。なお、有効期限を満了した地図情報15aは、消去部14dによって随時消去されていくので、記憶部15は、従来の車載ナビゲーション装置に比べて少ない記憶容量で足りる。
【0065】
地図情報15aは、サーバ装置20からダウンロードされた各メッシュ地図100と、有効期限情報とを関連付けた情報である。ここで、この地図情報15aの一例について図5を用いて説明しておく。図5は、地図情報15aの一例を示す図である。
【0066】
図5の(A)に示すように、地図情報15aは、各メッシュ地図100と、メッシュ地図100ごとの有効期限情報とを関連付けた情報である。ここで、有効期限情報は、たとえば、メッシュ地図100を識別する識別子である「地図ID」項目と、メッシュ地図100の動的な有効期限である「有効期限」項目と、メッシュ地図100の静的かつ絶対的な有効期限である「絶対有効期限」項目とを含んだ情報である。
【0067】
なお、図5の(A)に示した場合では、地図IDは「11111」、有効期限は「9月10日」、絶対有効期限は「10月10日」である。そして、図4で説明した「評価単位」が「10日」である場合に、有効期限調整部14cによって「有効期限」項目が延長されると、図5の(B)に示したように、有効期限は「9月20日」へと更新される。なお、有効期限が、絶対有効期限を超えて延長されることはないものとする。
【0068】
図2の説明に戻り、サーバ装置20の構成について説明する。図2に示したように、サーバ装置20は、通信インタフェース21と、制御部22と、記憶部23とを備えている。また、制御部22は、要求受付部22aと、地図送信部22bとをさらに備えており、記憶部23は、地図DB(データベース)23aを記憶する。
【0069】
なお、図2には示していないが、サーバ装置20は、経路探索や経路の再探索(リールート)に関する機能を有しており、車載装置10から受け取った目的地や探索条件に応じて探索した探索結果を、車載装置10へ応答するものとする。
【0070】
通信インタフェース21は、有線通信デバイスであり、図示しない送受信施設経由でサーバ装置20と車載装置10との間のデータ送受信を行う。また、制御部22は、サーバ装置20の全体制御を行う制御部である。
【0071】
要求受信部22aは、通信インタフェース21経由で、各車載装置10から地図データ要求を受け付けるとともに、受け付けた要求に該当するメッシュ地図100を送信するように、地図送信部22bへ指示する処理を行う処理部である。
【0072】
地図送信部22bは、要求受付部22aから送信を指示されたメッシュ地図100を、記憶部23の地図DB23aから抽出し、抽出したメッシュ地図100を、通信インタフェース21経由で該当する車載装置10へ送信する処理を行う処理部である。なお、地図送信部22bが、メッシュ地図100に対して有効期限を設定したうえで、有効期限が設定されたメッシュ地図100を車載装置10へ送信することとしてもよい。
【0073】
記憶部23は、ハードディスクドライブなどの記憶デバイスで構成される記憶部である。地図DB23aは、メッシュ地図100の集合であり、たとえば、日本全国を網羅している。なお、地図DB23aの各メッシュ地図100に、音声案内用の音声データを含めることとしてもよい。
【0074】
ところで、これまでは、自車両が通過したメッシュ地図100を、有効期限調整の対象とする場合について説明してきたが、自車両が通過していないメッシュ地図100を、有効期限調整の対象とすることとしてもよい。そこで、以下では、自車両が通過していないメッシュ地図100を有効期限延長の対象とする場合について、図6を用いて説明する。
【0075】
図6は、有効期限調整処理の変形例を示す図である。なお、同図の(A)には、地図データの回転処理について、同図の(B)には、有効期限延長の対象に加えるメッシュ地図100について、それぞれ示している。また、同図には、操作表示部11の表示領域201と、現在位置および走行方向を示すアイコン202とを併せて示している。
【0076】
図6の(A)に示すように、各メッシュ地図100における各辺のいずれかの向きと、車両の走行方向とが一致している状態から(同図の61参照)、車両の走行方向が変化すると、車両の走行方向が常に表示領域201の上方を向くように、地図データを回転させる処理が行われる(同図の62参照)。
【0077】
ここで、同図の61に示した場合には、表示領域201に表示させる地図データは、メッシュ地図101で足りる。しかし、地図データを回転させた場合、すなわち、同図の62に示した場合では、表示領域201には、メッシュ地図101に隣接する地図データを表示する必要がある。
【0078】
このため、図6の(B)に示したように、メッシュ地図101に隣接する8区画のメッシュ地図(同図の(B−1)〜(B−8)参照)を、メッシュ地図101と同様に、自車両が通過したメッシュ地図として取り扱うこととしてもよい。
【0079】
すなわち、メッシュ地図101に隣接する8区画のメッシュ地図(同図の(B−1)〜(B−8)参照)上を、実際には、自車両が通過しない場合であっても、これらのメッシュ地図(同図の(B−1)〜(B−8)参照)を自車両が通過したものとして、有効期限調整部14cによる有効期限延長処理の対象とすることとしてもよい。
【0080】
また、自車位置がメッシュ地図101の外縁から所定距離以内である場合にのみ、かかる外縁から所定距離以内である区画のメッシュ地図を有効期限延長処理の対象とすることとしてもよい。
【0081】
次に、車載装置10が実行する処理手順について、図7および図8を用いて説明する。図7は、車載装置10がサーバ装置20へ地図データを要求する際に実行する処理手順を示すフローチャートである。図7に示すように、要求部14aが、サーバ装置20に対して地図データを要求すると(ステップS101)、有効期限設定部14bは、かかる要求に対応する地図データを受信したか否かを判定する(ステップS102)。
【0082】
そして、ステップS101の要求に対応する地図データを受信した場合には(ステップS102,Yes)、消去部14dは、有効期限を超過した地図情報15aが記憶部15にあるか否かを判定する(ステップS103)。なお、ステップS102の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS102,No)、処理を終了する。
【0083】
そして、有効期限を超過した地図情報が記憶部15にあった場合には(ステップS103,Yes)、消去部14dは、該当する地図情報15aを消去する(ステップS104)。つづいて、有効期限設定部14bは、受信した地図データを地図情報15aとして記憶部15にキャッシュしたうえで(ステップS105)、有効期限を設定し(ステップS106)、処理を終了する。
【0084】
なお、ステップS103の判定条件を満たさなかった場合には(ステップS103,No)、ステップS104の処理手順を実行することなく、ステップS105の処理手順へと進む。
【0085】
なお、図7では、消去部14dが、地図データの受信時に、利用されていない地図データの消去を行う場合について説明した。しかしながら、消去部14dが作動するタイミングについては、他のタイミングとすることとしてもよい。たとえば、消去部14dを、所定の時間間隔で作動させることとしてもよい。また、記憶部15の残容量が所定の閾値以下となった場合に、消去部14dを作動させることとしてもよい。
【0086】
図8は、車載装置10が地図データの有効期限を調整する際に実行する処理手順を示すフローチャートである。有効期限調整部14cは、自車位置情報を取得し(ステップS201)、対応する地図情報15aを検索する(ステップS202)。つづいて、現在有効な評価単位(図4参照)内で通過実績があるか否かを判定する(ステップS203)。
【0087】
そして、現在有効な評価単位内で通過実績がない場合には(ステップS203,No)、地図情報15aにおける地図データの有効期限を延長し(ステップS204)、処理を終了する。一方、ステップS203の判定条件を満たした場合には(ステップS203,Yes)、有効期限を延長することなく、処理を終了する。
【0088】
上述してきたように、本実施例では、メッシュ状に分割された地図データを車載装置からの要求に応じて車載装置へ送信するようにサーバ装置を構成した。また、サーバ装置に対して地図データを要求し、要求に応じてサーバ装置から受信した地図データを記憶し、記憶された地図データに対して有効期限を設定し、有効期限を超過した地図データを消去するように車載装置を構成した。
【0089】
したがって、車載装置へダウンロードした地図データのうち、利用されていない地図データを適宜、消去することによって、車載装置における記憶デバイスの記憶容量削減および有効活用を図ることができる。
【0090】
なお、上述した実施例では、サーバ装置から車載装置へダウンロードされるメッシュ地図のサイズと、車載装置が記憶部から消去するメッシュ地図のサイズとが同一である場合について説明したが、消去するメッシュ地図のサイズを、ダウンロードされるメッシュ地図のサイズよりも小さくすることとしてもよい。
【0091】
たとえば、ダウンロードされたメッシュ地図を、n(nは2以上の整数)×n区画に区切ることでn×n個のサブメッシュ地図を生成するとともに、サブメッシュごとに有効期限を設定する。そして、自車両が通過したか否かに基づく有効期限調整処理をサブメッシュ地図ごとに行うことで、サブメッシュ地図を最小単位とした消去処理を行うことができる。このようにすることで、記憶部の記憶容量を、さらに有効に活用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明に係るナビゲーションシステムおよび車載装置は、車載装置における記憶デバイスの記憶容量削減および有効活用を図りたい場合に有用であり、特に、車載装置を広く普及させて各車両の走行状況を数多く収集し、収集した情報に基づいてリアルタイムな交通情報を精度良く提供したい場合に適している。
【符号の説明】
【0093】
1 ナビゲーションシステム
10 車載装置
11 表示操作部
12 GPS部
13 通信インタフェース
14 制御部
14a 要求部
14b 有効期限設定部
14c 有効期限調整部
14d 消去部
15 記憶部
15a 地図情報
20 サーバ装置
21 通信インタフェース
22 制御部
22a 要求受付部
22b 地図送信部
23 記憶部
23a 地図DB
100、101 メッシュ地図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置と、前記車載装置にネットワーク接続されるサーバ装置とで前記車両に関するナビゲーションを行うナビゲーションシステムであって、
前記サーバ装置は、
メッシュ状に分割された地図データを前記車載装置からの要求に応じて当該車載装置へ送信する地図データ送信手段
を備え、
前記車載装置は、
前記サーバ装置に対して前記地図データを要求する地図データ要求手段と、
前記地図データ要求手段による要求に応じて前記サーバ装置から受信した前記地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶された前記地図データに対して有効期限を設定する有効期限設定手段と、
前記有効期限を超過した前記地図データを前記地図データ記憶手段から消去する消去手段と
を備えたことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記車載装置は、
前記有効期限設定手段によって前記有効期限が設定された前記地図データに対応する領域を当該有効期限の満了前に前記車両が通過した場合には、当該有効期限を延長する有効期限延長手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記有効期限設定手段は、
所定の単位期間をあらわす評価単位の満了時に仮有効期限を設定し、
前記有効期限延長手段は、
前記地図データに対応する領域を前記評価単位の満了前に前記車両が通過した場合には、当該評価単位の満了時に設定されていた前記仮有効期限を次の評価単位の満了時へ延長し、前記評価単位の満了までに前記車両が通過しなかった場合には、当該評価単位の満了時に設定されていた前記仮有効期限を前記有効期限とみなすことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
前記車載装置は、
所定の基準位置を設定する基準位置設定手段
をさらに備え、
前記車載装置の前記有効期限設定手段は、
前記基準位置設定手段によって設定された基準位置から所定の範囲内に含まれる前記地図データに対しては無期限の前記有効期限を設定することを特徴とする請求項1、2または3に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
車両に搭載される車載装置と、前記車載装置にネットワーク接続されるサーバ装置とで前記車両に関するナビゲーションを行うナビゲーションシステムであって、
前記サーバ装置は、
メッシュ状に分割されており有効期限が設定されている地図データを前記車載装置からの要求に応じて当該車載装置へ送信する地図データ送信手段
を備え、
前記車載装置は、
前記サーバ装置に対して前記地図データを要求する地図データ要求手段と、
前記地図データ要求手段による要求に応じて前記サーバ装置から受信した前記地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記有効期限を超過した前記地図データを前記地図データ記憶手段から消去する消去手段と
を備えたことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項6】
車両に搭載される車載装置であって、
上位装置に対してメッシュ状に分割された地図データを要求する地図データ要求手段と、
前記地図データ要求手段による要求に応じて前記上位装置から受信した前記地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶された前記地図データに対して有効期限を設定する有効期限設定手段と、
前記有効期限を超過した前記地図データを前記地図データ記憶手段から消去する消去手段と
を備えたことを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−117740(P2011−117740A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272868(P2009−272868)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】