説明

ナビゲーションシステム及びナビゲーション方法

【課題】時空間地理情報を地図オブジェクト単位で部分的に更新するための更新情報を有効利用するナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】情報センタ10に、ナビゲーション装置20内のプローブ情報作成部21から送られてくるプローブ情報に基づいて更新情報を生成し、ナビゲーション装置20へ配信する更新情報作成部14を備える。ナビゲーション装置20に、更新情報を取得し、地図データベース26の主記憶領域MAREに記憶されている時空間地理情報を更新することが可能な情報であるか否か識別し、更新可能な情報のときには、主記憶領域MAREに記憶されている時空間地理情報を更新情報で修正させ、更新可能な情報でないときには、拡張記憶領域EXAREに更新情報を追加記憶させ、ナビゲーション処理部25が更新情報に基づいてナビゲーション処理を行う際に更新情報の存在を報知させる地図オブジェクト修正追加部24を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時空間地理情報を利用してナビゲーションを行うナビゲーションシステム及びナビゲーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実世界を時間的な推移のある立体的な空間と見なして論理モデル化し、そのモデル化した時空間地理情報を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析等を可能にする技術として、時空間地理情報システム(ST-GIS:Spatial Temporal Geographic Information System)が知られている。
【0003】
この時空間地理情報システムのうち、実用上の成功例として、例えばKIWI(キーウィ)と呼ばれるデータ記述形式で論理モデル化した時空間地理情報によってリレーショナルデータベース形式の地図データベースを構築し、その地図データベースを利用してナビゲーションを行うカーナビゲーションシステムが知られている。
【0004】
更に、カーナビゲーションシステムでは、日々変化する地物に関する情報を随時更新する必要があるため、地図データベースを備えた車載用ナビゲーション装置と所定の情報センタとの間でインターネット等の通信ネットワークを介して相互通信し、情報センタから配信されてくる時空間地理情報に基づいて地図データベースを更新することも行われている(特許文献1、2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−108834号公報
【特許文献2】特開2006−146645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のKIWIデータ記述形式では、図1(a)に模式的に示すように、地図オブジェクトである道路の道路データを、道路や背景の形状を表す形状情報と、推奨道路をルート探索する際に用いられる道路の接続関係を表す道路ネットワーク情報(接続情報、位相情報とも呼ばれる)と、場所検索や種々のサービス検索等を行う際に参照される属性情報とに分けて構成することで、汎用的なデータ構造(リレーショナルデータベース形式)の地図データベースを構築することができるようにしている。このため、各種の処理機能を有する複数のアプリケーションプログラム(1)〜(n)で道路データを共有して利用し、より発展したナビゲーションシステムを実現できるようになっている。
【0007】
ところが、形状情報と道路ネットワーク情報と属性情報との対応関係が崩れてしまうと、アプリケーションプログラムが本来の機能を発揮できなくなり不都合を生じる場合があることから、現状のKIWIデータ記述形式では、これらの情報を地図オブジェクト単位で部分的に更新すること許容していない。
【0008】
このため、実質的には地図オブジェクト単位で部分的に更新する場合であっても、情報センタ側で更新され新たに構築された時空間地理情報を車載用ナビゲーション装置が受信(ダウンロード)し、その最新バージョンの時空間地理情報で既存の地図データベースを全て書き換える必要が生じていた。
【0009】
具体的事例を述べると、例えば図1(b)に示すように、車載用ナビゲーション装置の既存の地図データベースに記憶されている道路(地図オブジェクト)Xに関する道路ネットワーク情報が、ノードA,B,C,D,E,Fとリンクab,bc,cd,de,efから成っており、リンクbcとcdの属性情報が「通行禁止」であったとする。その後、リンクbc,cdの属性情報が「悪路」に変更され、「悪路」の属性情報は既存の地図データベースには登録されていない新たな機能に対応する属性情報であったとする。
【0010】
かかる場合には、情報センタから車載用ナビゲーション装置側へ、リンクbc,cdを部分的に更新するために「悪路」の属性情報を更新情報として配信しても、新たな機能に対応する属性情報に基づいて更新することになるため、現状のKIWIデータ記述形式では形状情報と道路ネットワーク情報と属性情報との対応関係が崩れてしまい、リンクbc,cdを更新することができない。
【0011】
このように、車載用ナビゲーション装置では、地図オブジェクト単位で部分的に更新するため情報センタから配信されてきた更新情報を、有効利用することができず、そのため、情報センタから最新バージョンの時空間地理情報を配信してもらい、最新バージョンの時空間地理情報をダウンロードして既存の地図データベースを全て書き換える必要が生じていた。
【0012】
本発明は上記従来の問題に鑑みて成されたものであり、地図オブジェクト単位で部分的に更新するための更新情報を有効利用することを可能にするナビゲーションシステム及びナビゲーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、時空間地理情報を配信する情報センタと、移動体に搭載され、時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムであって、前記情報センタは、前記ナビゲーション装置から送信されてくるプローブ情報を取得し、該プローブ情報に基づいて、前記ナビゲーション装置の時空間地理情報を更新する更新情報を生成して、前記ナビゲーション装置へ配信する更新情報作成手段を備え、前記ナビゲーション装置は、前記移動体の移動軌跡を検出し、該移動軌跡を前記プローブ情報として前記情報センタへ送信するプローブ情報作成手段と、前記ナビゲーション装置の時空間地理情報を記憶する主記憶領域と、拡張記憶領域を有する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション処理手段と、前記配信されてくる更新情報を取得して、前記更新情報が前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新可能な情報であるか否か識別し、更新可能な情報のときには、前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を前記更新情報で修正させ、更新可能な情報でないときには、前記拡張領域に前記更新情報を追加記憶させ、前記ナビゲーション処理手段が前記更新情報に該当する前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行う際に前記更新情報の存在を報知させる地図オブジェクト修正追加手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、時空間地理情報を配信する情報センタと、移動体に搭載され、時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムにおけるナビゲーション方法であって、前記情報センタは、前記ナビゲーション装置から送信されてくるプローブ情報を取得し、該プローブ情報に基づいて、前記ナビゲーション装置の時空間地理情報を更新する更新情報を生成して、前記ナビゲーション装置へ配信する更新情報作成工程を備え、前記ナビゲーション装置は、前記移動体の移動軌跡を検出し、該移動軌跡を前記プローブ情報として前記情報センタへ送信するプローブ情報作成工程と、前記ナビゲーション装置に備えられた記憶手段の主記憶領域に記憶されている時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション処理工程と、前記配信されてくる更新情報を取得して、前記更新情報が前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新可能な情報であるか否か識別し、更新可能な情報のときには、前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を前記更新情報で修正させ、更新可能な情報でないときには、前記記憶手段に設けられている拡張領域に前記更新情報を追加記憶させ、前記ナビゲーション処理手段が前記更新情報に該当する前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行う際に前記更新情報の存在を報知させる地図オブジェクト修正追加工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、時空間地理情報を配信する情報センタと、移動体に搭載され、時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムにおいて、前記ナビゲーション装置が実行するコンピュータプログラムであって、前記ナビゲーション装置に備えられた記憶手段の主記憶領域に記憶されている時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション処理ステップと、前記移動体の移動軌跡を検出し、該移動軌跡を前記プローブ情報として前記情報センタへ送信するプローブ情報作成ステップと、前記情報センタから配信されてくる、前記プローブ情報基づいて前記ナビゲーション装置の主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新する更新情報を取得して、前記更新情報が前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新可能な情報であるか否か識別し、更新可能な情報のときには、前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を前記更新情報で修正させ、更新可能な情報でないときには、前記記憶手段に設けられている拡張領域に前記更新情報を追加記憶させ、前記ナビゲーション処理工程において前記更新情報に該当する前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理が行われる際に前記更新情報の存在を報知させる地図オブジェクト修正追加ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。図2は、本実施形態のナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
図2において、このナビゲーションシステムは、時空間地理情報を配信する情報センタ10と、自動車等の車両や携帯通信端末装置等の個々の移動体に搭載されたナビゲーション装置20とにより構成され、KIWIデータ記述形式で論理モデル化された時空間地理情報を利用するシステムとなっている。
【0017】
情報センタ10には情報サーバが設けられ、情報サーバは、個々の移動体に搭載されたナビゲーション装置20との間でインターネット等の通信ネットワーク30を介して無線通信する受信部11及び送信部12と、プローブ情報解析部13、更新情報作成部14、地図オブジェクト修正更新部15、地図データベース16、外部情報記憶部17とを備えて構成されている。
【0018】
ここで、地図データベース16は、ハードディスクドライブ(HDD)等の大容量記憶装置で形成され、KIWIデータ記述形式で論理モデル化された最新の時空間地理情報が記憶されている。また、時空間地理情報は定期的にバージョンアップされ、最新の時空間地理情報だけでなく旧バージョンの時空間地理情報も記憶されている。
【0019】
外部情報記憶部17は、地図データベース16と同様に大容量記憶装置で形成され、外部から提供され日々変化する地物に関する情報が記憶されるようになっている。例えば、公的専門機関等から提供される道路状況に関する情報(渋滞、工事中、事故、道路規制等の情報)や新設道路に関する情報、店舗等から提供されるサービス内容に関する情報(いわゆるPOI情報)等、外部提供される地物に関する情報(以下「外部提供情報」という)が収集されて外部情報記憶部17に記憶されるようになっている。
【0020】
地図オブジェクト修正更新部15は、外部情報記憶部17に記憶されている外部提供情報等を利用して、地図データベース16に記憶されている最新の時空間地理情報を定期的に更新してバージョンアップする他、詳細については後述するが、更新情報作成部14で作成される更新情報CH(i)に基づいて、最新の時空間地理情報に含まれている所定の地図オブジェクト(更新情報CH(i)に該当する道路データ)を修正する。
【0021】
なお、更新情報CH(i)に基づいて、該当する地図オブジェクトである道路データを改変等する処理を一般的には「更新」と言うが、以下の説明では、処理の違いを明確にするために「修正」「追加」の用語を用いて説明することとし、「修正」とは、該当する道路データの一部を更新情報CH(i)で変更すること、「追加」とは、該当する道路データを変更することなく更新情報CH(i)を追加することとする。
【0022】
プローブ情報解析部13は、個々の移動体に搭載されたナビゲーション装置20側から通信ネットワーク30を介して送信されてくるプローブ情報(移動体が実際に移動した移動軌跡、移動速度、時刻等の情報)PIを受信部11を介して収集し、その収集したプローブ情報PIを統計処理によって解析することで移動体の移動経路を推定し、その移動経路を表す経路データRTを作成する。つまり、個々の移動体に搭載されたナビゲーション装置20側から送信されてくるプローブ情報PIによって示される発生頻度の高い移動経路を統計処理によって推定することにより、実存する道路を移動体が移動した際の移動経路を表す経路データRTを作成する。なお、ナビゲーション装置20側から送信されてくるプローブ情報PIの生成方法については後述することとする。
【0023】
更新情報作成部14は、地図データベース16に記憶されている最新の時空間地理情報を参照して、経路データRTに対応する道路データ(KIWIデータ記述形式で論理モデル化されている道路の形状情報と道路ネットワーク情報と属性情報)を検索し、更に、外部情報記憶部17に記憶されている外部提供情報を参照して、経路データRTに関連している外部提供情報を検索する。そして、検索した経路データRTに対応する道路データの属性情報と、経路データRTに関連している外部提供情報とが同じ内容か否か判断し、同じ内容のときには更新情報CH(i)を作成せず、同じ内容ではないとき(異なるとき)には、経路データRTに関連している外部提供情報が既存の地図オブジェクトの属性を示すために最新の時空間地理情報に既に登録されている属性情報に属しているか否か調べて、次に述べる処理(1)又は処理(2)によって更新情報CH(i)を作成する。
【0024】
〔処理(1)〕
上述したように更新情報作成部14は、経路データRTに関連している外部提供情報が既存の地図オブジェクトの属性を示すために最新の時空間地理情報に既に登録されている属性情報に属しているか否か調べた結果、既に登録されている属性情報に属していれば、処理(1)を開始する。そして、外部提供情報を属性情報とすると共に、その属性情報が既に登録されている属性情報であることを識別するための固有の既登録属性識別子IDaと、検索した道路データの道路ネットワーク情報にリンクするための関連道路リンク識別子IDrとから成る更新情報CH(1)を作成する。
【0025】
例えば、図3(a)に例示するように、既に登録されている属性情報が、国道、県道、市道等の道路種別を表す項目と、一方通行、通行禁止等の道路規制を表す項目の情報であった場合に、経路データRTに対応する道路データの属性情報が「一方通行」、経路データRTに関連している外部提供情報が「通行禁止」であれば、道路データの属性情報と外部提供情報が異なることになる。ただし、「通行禁止」とする外部提供情報は、既に登録されている属性情報に属している(すなわち、登録されている道路規制を表す項目の一つである)ため、検索した道路データの属性情報(一方通行)を外部提供情報(通行禁止)で修正しても、時空間地理情報に不都合が生じない。そこで、図3(b)に例示するように、検索した道路データの属性情報(一方通行)を外部提供情報(通行禁止)で修正するために、属性情報を外部提供情報(通行禁止)とし、その属性情報(通行禁止)を識別するための既登録属性識別子IDaと、検索した道路データの道路ネットワーク情報にリンクするための関連道路リンク識別子IDrとから成る更新情報CH(1)を作成する。
【0026】
そして、更新情報作成部14は、更新情報CH(1)を送信部12から通信ネットワーク30を介して、個々の移動体に搭載されたナビゲーション装置20側へ配信すると共に、更に、更新情報CH(1)を地図オブジェクト修正更新部15へ転送して、その更新情報CH(1)に基づいて、地図データベース16に記憶されている最新の時空間地理情報のうち該当する道路データを修正させる。つまり、地図オブジェクト修正更新部15は、該当する地図オブジェクト(道路データ)の属性情報を「通行禁止」にして修正する。
【0027】
なお、図3(b)には、外部提供情報が「通行禁止」であった場合の更新情報CH(1)を例示しているが、外部提供情報が「国道」であった場合には、図3(c)に例示するように別の既登録属性識別子IDaを有する更新情報CH(1)が作成される。
【0028】
また、経路データRTに対応する道路データが別の道路データで、外部提供情報が「通行禁止」であった場合には、図3(d)に例示するように別の関連道路リンク識別子IDrを有する更新情報CH(1)が作成される。
【0029】
また、経路データRTに対応する道路データが別の道路データで、外部提供情報が「国道」であった場合には、図3(e)に例示するように別の既登録属性識別子IDaと別の関連道路リンク識別子IDrを有する更新情報CH(1)が作成される。
【0030】
このように、更新情報作成部14は、経路データRTに対応する道路データと外部提供情報に応じて、関連道路リンク識別子IDrと既登録属性識別子IDaを調整して、識別可能な更新情報CH(1)を作成する。
【0031】
〔処理(2)〕
上述したように更新情報作成部14は、経路データRTに関連している外部提供情報が既存の地図オブジェクトの属性を示すために最新の時空間地理情報に既に登録されている属性情報に属しているか否か調べた結果、既に登録されている属性情報に属していない場合には、処理(2)を開始し、外部提供情報を新たな機能に対応する属性情報に該当すると判断する。そして、外部提供情報を属性情報とすると共に、その属性情報が新たな機能に対応する属性情報であることを識別するための固有の未登録属性識別子IDbと、検索した道路データの道路ネットワーク情報にリンクするための関連道路リンク識別子IDrとから成る更新情報CH(2)を作成する。
【0032】
例えば、図3(a)に示したように、既に登録されている属性情報が、国道、県道、市道等の道路種別を表す項目と、一方通行、通行禁止等の道路規制を表す項目の情報であった場合に、経路データRTに対応する道路データの属性情報が「一方通行」、経路データRTに関連している外部提供情報が「走行しやすい道路」であれば、その道路データの属性情報と外部提供情報が異なることになり、更に、「走行しやすい道路」とする外部提供情報は、既に登録されている属性情報に属さない(すなわち、登録されている道路種別を表す項目にも道路規制を表す項目にも該当しない新たな機能を示す)ため、検索した道路データの属性情報(一方通行)を外部提供情報(走行しやすい道路)で修正すると、時空間地理情報に不都合を生じさせる。そこで、図3(f)に例示するように、属性情報を外部提供情報(走行しやすい道路)とし、その属性情報(走行しやすい道路)が新たな機能に対応する属性情報であることを識別するための固有の未登録属性識別子IDbと、検索した道路データの道路ネットワーク情報にリンクするための関連道路リンク識別子IDrとから成る更新情報CH(2)を作成する。
【0033】
そして、更新情報作成部14は、更新情報CH(2)を送信部12から通信ネットワーク30を介して、個々の移動体に搭載されたナビゲーション装置20側へ配信すると共に、更に、更新情報CH(2)を地図オブジェクト修正更新部15へ転送する。
【0034】
そして、地図オブジェクト修正更新部15は、更新情報CH(2)に基づいて地図データベース16に記憶されている該当する地図オブジェクトを更新しても最新の時空間地理情報に不具合が生じないことを確認した上で、更新情報CH(2)の未登録属性情報に基づいて該当する道路データの属性情報を修正する。また、不具合が生じる場合には、更新情報CH(2)に基づいて該当する地図オブジェクトの情報を更新しない。
【0035】
なお、図3(f)には、外部提供情報が「走行しやすい道路」であった場合の更新情報CH(2)を例示しているが、外部提供情報が新たな機能を示す「悪路」であった場合には、図3(g)に例示するように別の未登録属性識別子IDbを有する更新情報CH(2)が作成される。
【0036】
また、経路データRTに対応する道路データが別の道路データで、外部提供情報が新たな機能を示す「走行しやすい道路」であった場合には、図3(h)に例示するように別の関連道路リンク識別子IDrを有する更新情報CH(2)が作成される。
【0037】
また、経路データRTに対応する道路データが別の道路データで、外部提供情報が新たな機能を示す「悪路」であった場合には、図3(i)に例示するように別の未登録属性識別子IDbと別の関連道路リンク識別子IDrを有する更新情報CH(2)が作成される。
【0038】
このように、更新情報作成部14は、経路データRTに対応する道路データと、新たな機能を示す外部提供情報に応じて、関連道路リンク識別子IDrと未登録属性識別子IDbを調整して、識別可能な更新情報CH(2)を作成する。
【0039】
次に、個々の移動体に搭載されたナビゲーション装置20の構成を説明する。
【0040】
図2において、ナビゲーション装置20は、プローブ情報作成部21と、通信ネットワーク30を介して情報センタ10との間で無線通信する送信部22及び受信部23と、地図オブジェクト修正追加部24、ナビゲーション処理部25、地図データベース26、映像出力部27、音声出力部28、ユーザインタフェース29を備え、いわゆるコンピュータシステムで構成されている。
【0041】
ユーザインタフェース29は、リモートコントローラRM等をユーザーが操作すると、その操作入力に従ってナビゲーション装置20の動作を制御する。
映像出力部27は、グラフィックレンダー(Graphic Renderer)を備え、ナビゲーション装置20内で処理されたグラフィックデータを液晶ディスプレー等の表示装置DSPにて表示させる。
【0042】
音声出力部28は、音声LSI(音声集積回路装置)を備え、ナビゲーション装置20内で処理された合成音声信号等をスピーカSPで再生させる。
地図データベース26は、ハードディスクドライブ(HDD)やSDRAM、フラッシュROM等の情報書換えが可能な記憶装置で形成されており、主記憶領域MAREと拡張記憶領域EAREを有し、主記憶領域MAREにKIWIデータ記述形式で論理モデル化された時空間地理情報が記憶されている。なお、情報センタ10の地図データベース16に記憶されている最新の時空間地理情報を受信部23を介してダウンロードした場合には主記憶領域MAREに最新の時空間地理情報が記憶され、その最新の時空間地理情報を利用して後述のナビゲーション処理部25がルート探索等のナビゲーション処理を行う。ダウンロードしない場合には、旧バージョンの時空間地理情報が主記憶領域MAREに記憶されたままとなり、その旧バージョンの時空間地理情報を利用してナビゲーション処理部25がルート探索等のナビゲーション処理を行うこととなる。
【0043】
プローブ情報作成部21は、内蔵しているGPS(Global Positioning System)受信機や自律航法センサ等を用いて移動体の実際に移動した移動軌跡、移動速度、時刻等を逐次測定し、プローブ情報PIを作成する。そして、プローブ情報PIを送信部22から通信ネットワーク30を介して情報センタ10側へ送信し、前述したように、プローブ情報解析部13と更新情報作成部14において更新情報CH(i)を作成させる。
【0044】
地図オブジェクト修正追加部24は、情報センタ10から配信されてくる更新情報CH(i)を取得し、その更新情報CH(i)に基づいて、主記憶領域MAREに記憶されている時空間地理情報のうちの該当する地図オブジェクト(道路データ)を修正、または、更新情報CH(i)に含まれている属性情報を拡張記憶領域EAREに追記して記憶させる。
【0045】
すなわち、地図オブジェクト修正追加部24は、取得した更新情報CH(i)に既登録属性識別子IDaと未登録属性識別子IDbのいずれが含まれているか調べることで、更新情報CH(i)が更新情報CH(1)であるかCH(2)であるか識別する。既登録属性識別子IDaが含まれていれば更新情報CH(1)を取得したと判断し、その更新情報CH(1)に含まれている属性情報に基づいて主記憶領域MAREに記憶されている時空間地理情報のうちの該当する道路データの属性情報を修正する。未登録属性識別子IDbが含まれていれば更新情報CH(2)を取得したと判断し、その更新情報CH(2)に含まれている属性情報(新たな機能に対応する属性情報)を、該当する道路データに関連付けて拡張記憶領域EAREに追加し記憶させる。
【0046】
例えば、更新情報CH(1)に対応する道路データの属性情報が「一方通行」となっており、更新情報CH(1)の属性情報が「通行禁止」であれば、図3(a)に示したように、「一方通行」と「通行禁止」は既に登録されている属性情報に属していることから、更新情報CH(1)に含まれている属性情報(通行禁止)で、該当する道路データの属性情報(一方通行)を変更することにより「通行禁止」に修正する。つまり、道路データの属性情報を、既に登録されている属性情報のいずれかで修正しても、KIWIデータ形式で論理モデル化された時空間地理情報に不都合を生じさせることがないため、地図オブジェクト修正追加部24が更新情報CH(1)を取得した場合には、更新情報CH(1)に含まれている属性情報で、該当する道路データの属性情報を修正する。
【0047】
これに対し、例えば更新情報CH(2)に対応する道路データの属性情報が「一方通行」となっており、更新情報CH(2)の属性情報が「走行しやすい道路」であれば、図3(f)に示したように、「一方通行」は既に登録されている属性情報、「走行しやすい道路」は登録されている属性情報に属さず新たな機能に対応する属性情報であることから、更新情報CH(2)に含まれている属性情報(走行しやすい道路)に基づいて、該当する道路データの属性情報を「走行しやすい道路」に修正することとすると、KIWIデータ形式で論地モデル化された時空間地理情報に不都合を生じさせる場合を招来する。そこで、地図オブジェクト修正追加部24は、新たな機能に対応する属性情報を有する更新情報CH(2)を取得すると、該当する道路データを修正せず、更新情報CH(2)を拡張記憶領域EAREに追加し記憶させる。なお、更新情報CH(2)には、該当する道路データの道路ネットワーク情報にリンクするための関連道路リンク識別子IDrが含まれているため、更新情報CH(2)を拡張記憶領域EAREに追加し記憶させるだけで、該当する道路データと更新情報CH(2)との対応関係が維持される。
【0048】
このように、情報センタ10から配信されてきた更新情報CH(2)が新たな機能に対応する属性情報を有する場合、従来技術では利用することができないため廃棄等することとなっていたが、本実施形態では、更新情報CH(2)を拡張記憶領域EAREに追加記憶させるので、ナビゲーション処理を行う際に更新情報CH(2)に含まれている属性情報を利用できるようにしている。
【0049】
ナビゲーション処理部25は、内蔵されている各種のアプリケーションプログラムを実行し、地図データベース26の主記憶領域MAREに記憶されている時空間地理情報と拡張記憶領域EAREに記憶されている属性情報を利用して、地図表示、ルート探索、サービス情報に基づく案内等を行う。ここで、表示装置DSPの画面上に、地図を表示したり、ルート探索した推奨道路を表示したり、サービス情報に基づく案内情報を表示させる際、拡張記憶領域EAREに記憶されている属性情報(新たな機能に対応する属性情報)に対応する地図オブジェクト(道路データ)を道路表示する場合には、その道路を関連道路リンク識別子IDrに基づいて判定し、図4に例示するように、その道路を点滅表示させることで、新たな機能を示す属性に変更されている旨の報知をする。
【0050】
以上に説明した本実施形態のナビゲーションシステムによれば、次に述べる効果が発揮される。
まず、ナビゲーション装置20から送信したプローブ情報PIに基づいて情報センタ20が作成した更新情報CH(i)をナビゲーション装置20が受信し、その更新情報CH(i)に既登録属性識別子IDaが含まれていれば、地図オブジェクト修正追加部24が既登録の属性情報を有する更新情報CH(1)であると判断し、その既登録の属性情報に基づいて、地図データベース26に記憶されている道路データの属性情報を修正し、その更新情報CH(i)に未登録属性識別子IDbが含まれていれば、地図オブジェクト修正追加部24が新たな機能に対応する属性情報を有する更新情報CH(2)であると判断し、その更新情報CH(2)を拡張記憶領域EAREに追加する。そして、ナビゲーション処理部25が所定のナビゲーション処理を行い、拡張記憶領域EAREに追加されている新たな機能に対応する属性情報に関連する道路データに基づいて表示装置DSPに表示させる際、その道路データによる道路を点滅表示させ、ユーザに報知する。
【0051】
このため、従来技術では、新たな機能に対応する属性情報を有する更新情報に基づいて地図オブジェクト単位で道路データを更新することができず、新たな機能に対応する属性情報を有効利用できなかったが、本実施形態では、地図オブジェクト単位で道路の表示を点滅表示させるので、新たな機能に対応する属性情報を有効利用することができる。
【0052】
また、既登録属性識別子IDaが含まれている更新情報CH(1)に基づいて、地図データベース26に既に記憶されている道路データを修正しても、時空間地理情報に不都合を生じさせないことが保証されているので、更新情報CH(1)に基づいて修正した道路データを利用してナビゲーション処理部25がナビゲーション処理をする際に、その修正した道路データをチェックする等の必要がなく、ナビゲーション処理を迅速に行うことができる等の効果も得られる。
【0053】
なお、本実施形態では、拡張記憶領域EAREに追加されている新たな機能に対応する属性情報に関連する道路データに基づいて、その道路データによる道路を点滅表示させることとしているが、点滅表示に限らず、所定の色で道路を着色して表示してもよい。要は、新たな機能に対応する属性情報に関連する道路データに基づいて道路表示をする場合に、他の道路との識別が可能な方法で表示すればよい。
【0054】
また、新たな機能に対応する属性情報の違いに応じて、道路表示を変更するようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、情報センタ10に設けられている情報サーバが、ナビゲーション装置20で生成されるプローブ情報PIに基づいて移動体の移動経路を推定し、その移動経路に関連する外部提供情報に基づいて更新情報CH(i)に含める属性情報を作成しているが、プローブ情報PIを利用することなく、地図整備のために、変更された道路の情報を外部収集し、その変更された道路に関する外部提供情報に基づいて、更新情報CH(i)を作成してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、既存の道路データの属性情報を修正等するために、属性情報を有する更新情報CH(i)を作成しているが、形状情報又は道路ネットワーク情報を修正等しても時空間地理情報の多大な悪影響を及ぼさないことを条件に、形状情報又は道路ネットワーク情報を修正等するための更新情報CH(i)を作成し、ナビゲーション装置20内の地図データベース26に記憶されている道路データを修正、または、その更新情報CH(i)を拡張記憶領域EAREに追加し記憶させるようにしてもよい。
【0057】
また、ナビゲーション装置20と、情報サーバ10に設けられた情報サーバは、ハードウェア構成としてもよいし、コンピュータが実行するコンピュータプログラムによって同機能を発揮させる所謂ソフトウェア構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来のナビゲーションシステムにおける問題点を説明するための説明図である。
【図2】実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した情報センタに設けられている情報サーバの機能を説明するための説明図である。
【図4】図2に示したナビゲーション装置の機能を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0059】
10…情報センタ
14…更新情報作成部
20…ナビゲーション装置
21…プローブ情報作成部
24…地図オブジェクト修正追加部
26…地図データベース
MARE…主記憶領域
EARE…拡張記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時空間地理情報を配信する情報センタと、移動体に搭載され、時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムであって、
前記情報センタは、
前記ナビゲーション装置から送信されてくるプローブ情報を取得し、該プローブ情報に基づいて、前記ナビゲーション装置の時空間地理情報を更新する更新情報を生成して、前記ナビゲーション装置へ配信する更新情報作成手段を備え、
前記ナビゲーション装置は、
前記移動体の移動軌跡を検出し、該移動軌跡を前記プローブ情報として前記情報センタへ送信するプローブ情報作成手段と、
前記ナビゲーション装置の時空間地理情報を記憶する主記憶領域と、拡張記憶領域を有する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション処理手段と、
前記配信されてくる更新情報を取得して、前記更新情報が前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新可能な情報であるか否か識別し、更新可能な情報のときには、前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を前記更新情報で修正させ、更新可能な情報でないときには、前記拡張領域に前記更新情報を追加記憶させ、前記ナビゲーション処理手段が前記更新情報に該当する前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行う際に前記更新情報の存在を報知させる地図オブジェクト修正追加手段と、
を備えることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
前記更新情報作成手段は、前記更新情報に、前記更新情報が前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新可能な情報であるか否か識別する識別子を付加して配信し、
前記地図オブジェクト修正追加手段は、前記識別子に基づいて前記識別を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記更新情報は、地図オブジェクトに関する属性情報であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
更新情報作成手段は、前記属性情報が新規な機能を発揮する情報のときには、前記更新情報に新規な機能を発揮することを識別する固有の識別子を付して配信すること、
を特徴とする請求項3に記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記ナビゲーション処理手段は、前記固有の識別子毎に前記報知を行うこと、
を特徴とする請求項4に記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記ナビゲーション処理手段は、バージョンアップされたナビゲーション処理アプリケーションプログラムがインストールされると、前記拡張記憶領域に追加された更新情報を、主記憶領域に記憶された時空間地理情報として処理すること、
を特徴とする請求項1〜5に記載のナビゲーションシステム。
【請求項7】
時空間地理情報を配信する情報センタと、移動体に搭載され、時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムにおけるナビゲーション方法であって、
前記情報センタは、
前記ナビゲーション装置から送信されてくるプローブ情報を取得し、該プローブ情報に基づいて、前記ナビゲーション装置の時空間地理情報を更新する更新情報を生成して、前記ナビゲーション装置へ配信する更新情報作成工程を備え、
前記ナビゲーション装置は、
前記移動体の移動軌跡を検出し、該移動軌跡を前記プローブ情報として前記情報センタへ送信するプローブ情報作成工程と、
前記ナビゲーション装置に備えられた記憶手段の主記憶領域に記憶されている時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション処理工程と、
前記配信されてくる更新情報を取得して、前記更新情報が前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新可能な情報であるか否か識別し、更新可能な情報のときには、前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を前記更新情報で修正させ、更新可能な情報でないときには、前記記憶手段に設けられている拡張領域に前記更新情報を追加記憶させ、前記ナビゲーション処理手段が前記更新情報に該当する前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行う際に前記更新情報の存在を報知させる地図オブジェクト修正追加工程と、
を備えることを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項8】
時空間地理情報を配信する情報センタと、移動体に搭載され、時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション装置を備えたナビゲーションシステムにおいて、前記ナビゲーション装置が実行するコンピュータプログラムであって、
前記ナビゲーション装置に備えられた記憶手段の主記憶領域に記憶されている時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理を行うナビゲーション処理ステップと、
前記移動体の移動軌跡を検出し、該移動軌跡を前記プローブ情報として前記情報センタへ送信するプローブ情報作成ステップと、
前記情報センタから配信されてくる、前記プローブ情報基づいて前記ナビゲーション装置の主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新する更新情報を取得して、前記更新情報が前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を更新可能な情報であるか否か識別し、更新可能な情報のときには、前記主記憶領域に記憶されている時空間地理情報を前記更新情報で修正させ、更新可能な情報でないときには、前記記憶手段に設けられている拡張領域に前記更新情報を追加記憶させ、前記ナビゲーション処理工程において前記更新情報に該当する前記記憶手段に記憶された時空間地理情報に基づいてナビゲーション処理が行われる際に前記更新情報の存在を報知させる地図オブジェクト修正追加ステップと、
を備えることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−26082(P2009−26082A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188722(P2007−188722)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(595105515)インクリメント・ピー株式会社 (197)
【Fターム(参考)】