説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びコンピュータプログラム

【課題】任意の時刻に出発地を出発したような場合にも、割引制度の恩恵を可及的に有利に享受し得るナビゲーション装置の提供を主たる目的とする。
【解決手段】通常の手法で探索された出発地から到着地までの経路が高速道路等の有料道路を経由するか否かを判断し、有料道路を経由する場合に、有料道路の経路を分割することにより(ステップS23)、本来は受けることができない割引制度を受けることを可能にし、また本来は1種類のみの割引制度を受けることが可能な場合に2種類の割引制度を併せて受けることを可能にする。従って、有料道路の通行料金を最も低額にすることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用のナビゲーション装置、即ち車載ナビゲーション装置に関し、より具体的には主として高速道路である有料道路の通行料金を割引制度を利用して低額に抑えるようにしたナビゲーション装置に関する。また本発明はそのようなナビゲーション装置により実行されるナビゲーション方法、更にはそのようなナビゲーション方法をコンピュータシステムで実行するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用のナビゲーション装置(車載ナビゲーション装置)は、通常は現在の推定位置を地図データとマップマッチングすることにより、道路上を走行しているように表示装置上に表示する。また、出発地(通常はナビゲーション装置自身が検出している)と目的地とを運転者が設定することにより、その間の最適経路を探索する機能をも有している。
【0003】
一方、近年、高速道路等の有料道路においてはその都度料金の授受を行なわずともよい自動料金収受システム(Electric Toll Collection System:ETCシステム) が普及している。このETCシステムの利用者に対しては種々の割引制度が実施されている。しかし、運転者はどのような割引制度が実施されているのかについて事前に調べることは煩雑である。また、ETCシステムでは実際の料金の授受が行なわれないため、運転者は割引制度の恩恵を受けられたのか否かが認識できない場合も多い。従って、上手に経路選択を行なった場合にはかなりの割引を受けられるにも拘わらず、実際には割引制度を充分に活用できない可能性がある。このことは、ETCシステムを利用しない場合にも適用される割引制度であっても同様である。
【0004】
このような事情からたとえば特許文献1には、有料道路の料金所で支払うべき通行料金を割引を考慮して予め算出し、所定のタイミングで運転者に報知するように構成された装置(具体的にはナビゲーション装置)が提案されている。また、特許文献2には、有料道路とその通行料金の割引時間帯との情報を予め記憶しておき、割引時間帯に車輌が有料道路を通過するように目的地への経路を誘導するナビゲーション装置が提案されている。
【特許文献1】特開2005−18247号公報
【特許文献2】特開2001−41760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述した特許文献1に開示されている発明では、実際に有料道路に進入する直前に、割引制度が適用されること、及びその程度(割引率、割引額等)が判明するのみである。また特許文献2に開示されている発明では、割引制度を利用するためには割引制度で定められている割引時間帯に合わせて車輌を走行させる必要があり、また場合によっては有料道路への出入りの時刻を調整するために待ち時間を必要とする。このような特許文献2に開示されている発明は車輌による運送を業とする運転者及び運送業者にとっては有用であるかもしれない。しかし、一般の自家用車の運転者は割引時間帯に合わせて走行することは稀であり、通常は運転者の都合によって任意の時刻に出発して目的地まで走行する場合が多い。従って、特許文献2に開示されている発明では、一般の自家用車の運転者はそれほどの恩恵を享受することはできない。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、任意の時刻に出発地を出発したような場合にも、割引制度の恩恵を可及的に有利に享受し得るナビゲーション装置の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るナビゲーション装置は端的には、通常の手法で探索された出発地から到着地までの経路が高速道路等の有料道路を経由する場合に、有料道路の経路を分割することにより通行料金の割引制度をより有利に享受できるように構成したものである。
【0008】
本発明のナビゲーション装置の第1の発明は、道路の位置を示す情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段と、車輌の位置を検出する位置検出手段と、目的地を設定する目的地設定手段と、前記目的地設定手段により目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備えたナビゲーション装置において、有料道路の通行料金、及び、走行距離及び/又は走行時間帯に応じた前記通行料金の割引制度に関する情報を記憶した通行料金記憶手段と、前記経路探索手段が探索した経路に有料道路が含まれるか否かを判断する手段とを備え、前記経路探索手段は、前記探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記通行料金記憶手段が記憶している割引制度に関する情報を参照することにより、有料道路の走行距離及び/又は走行時間帯に応じて通行料金が異なるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割した経路を探索するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のナビゲーション方法の第1の発明は、道路の位置を示す情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段と、車輌の位置を検出する位置検出手段とを備えたナビゲーション装置により、目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索するナビゲーション方法において、有料道路の通行料金、及び、走行距離及び/又は走行時間帯に応じた前記通行料金の割引制度に関する情報を読み込むステップと、目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索するステップと、探索された経路に有料道路が含まれるか否かを判断するステップと、探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記割引制度に関する情報を参照することにより、有料道路の走行距離及び/又は走行時間帯に応じて通行料金が異なるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割するステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
更に本発明のコンピュータプログラムの第1の発明は、道路の位置を示す情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段と、車輌の位置を検出する位置検出手段とに接続されたコンピュータに、目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、有料道路の通行料金、及び、走行距離及び/又は走行時間帯に応じた前記通行料金の割引制度に関する情報を読み込ませる手順と、目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索させる手順と、探索された経路に有料道路が含まれるか否かを判断させる手順と、探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記割引制度に関する情報を参照することにより、有料道路の走行距離及び/又は走行時間帯に応じて通行料金が異なるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割させる手順とを実行させることを特徴とする。
【0011】
このような本発明のナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムの第1の発明では、探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、通行料金記憶手段が記憶している割引制度に関する情報を参照することにより有料道路の走行距離及び/又は走行時間帯に応じて、有料道路の通行料金が異なるように有料道路の経路が分割される。
【0012】
また本発明のナビゲーション装置の第2の発明はナビゲーション装置の第1の発明において、前記経路探索手段は、有料道路の通行料金が最も低額になるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割した経路を探索するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明のナビゲーション方法の第2の発明はナビゲーション方法の第1の発明において、前記有料道路の経路を分割するステップは、有料道路の通行料金が最も低額になるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割することを特徴とする。
【0014】
また本発明のコンピュータプログラムの第2の発明はコンピュータプログラムの第1の発明において、前記有料道路の経路を分割させる手順は、有料道路の通行料金が最も低額になるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割させることを特徴とする。
【0015】
このような本発明のナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムの第2の発明ではそれぞれの第1の発明において、有料道路の通行料金が最も低額になるように有料道路の経路が分割される。
【0016】
また本発明のナビゲーション装置の第3の発明はナビゲーション装置の第1又は第2の発明において、時刻を検出する時刻検出手段と、道路の種別に応じた平均時速を記憶した平均時速記憶手段と、前記時刻検出手段が検出している時刻及び前記平均時速記憶手段が記憶している道路の種別に応じた平均時速を参照して、前記探索された経路に含まれる有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻を算出する手段とを更に備え、前記経路探索手段は、算出された有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻に基づいて、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割した経路を探索するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明のナビゲーション方法の第3の発明はナビゲーション方法の第1又は第2の発明において、前記ナビゲーション装置は、時刻を検出する時刻検出手段と、道路の種別に応じた平均時速を記憶した平均時速記憶手段とを備え、探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記時刻検出手段が検出している時刻及び前記平均時速記憶手段が記憶している道路の種別に応じた平均時速を参照して、前記探索された経路に含まれる有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻を算出するステップを更に含み、前記有料道路の経路を分割するステップは、算出された有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻に基づいて、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割することを特徴とする。
【0018】
また本発明のコンピュータプログラムの第3の発明はコンピュータプログラムの第1又は第2の発明において、前記コンピュータは、時刻を検出する時刻検出手段と、道路の種別に応じた平均時速を記憶した平均時速記憶手段とに更に接続されており、前記コンピュータに、探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記時刻検出手段が検出している時刻及び前記平均時速記憶手段が記憶している道路の種別に応じた平均時速を参照させて、前記探索された経路に含まれる有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻を算出させる手順を更に実行させ、前記コンピュータに、前記有料道路の経路を分割させる手順において、算出された有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻に基づいて、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割させることを特徴とする。
【0019】
このような本発明のナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムの第3の発明ではそれぞれの第1及び第2の発明において、時刻検出手段が検出している時刻と、平均時速記憶手段が記憶している道路の種別に応じた平均時速とを参照することにより、探索された経路に含まれる有料道路の課金基準となる位置への到着時刻が算出される。そして、算出された有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻に基づいて、有料道路の経路が分割される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムの第1の発明によれば、本来は受けることができない割引制度を受けることが可能になるように、また本来は1種類のみの割引制度を受けることが可能な場合に2種類の割引制度を併せて受けることが可能になるように、探索された経路に含まれる有料道路の経路が分割される。
【0021】
また本発明のナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムの第2の発明によれば、それぞれの第1の発明において、有料道路の料金が最も低額になるように、探索された経路に含まれる有料道路の経路が分割される。
【0022】
また本発明のナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムの第3の発明によれば、それぞれの第1又は第2の発明において、探索された経路に含まれる有料道路の課金基準となる位置への到着時刻の算出がより正確になるので、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法及びコンピュータプログラムの第1又は第2の発明の効果をより確実に発揮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。なお、本実施の形態の内の情報処理に関する部分は、典型的には、コンピュータをソフトウェア(本発明に係るコンピュータプログラム)で制御することによって実現される。この場合のソフトウェアは、コンピュータのハードウェアを物理的に活用することで本発明の作用効果を実現するものであり、また、従来技術との共通部分には従来技術も適用される。但し、この場合のハードウェアやソフトウェアの種類及び構成、ソフトウェアで処理する範囲等は各種の形態に変更可能である。従って以下の説明では、本実施の形態の各機能を実現する仮想的回路ブロックを用いる。
【0024】
図1は本発明に係るナビゲーション装置の構成例を示すブロック図であり、本発明に係るコンピュータプログラムの制御によって本発明に係るナビゲーション方法を実行する。本発明に係るナビゲーション装置(以下、本発明装置という)は、基本的には車輌(自動車)に搭載された車載ナビゲーション装置であるが、コンピュータプログラム及び必要な種々のデータを記録した記録媒体を据置型のパーソナルコンピュータに読み込ませることにより、経路の探索を行なわせることも可能である。
【0025】
本発明装置は、基本的には従来のこの種の装置と同様に構成されている。即ち、図1の機能ブロック図に示すように、絶対位置・方位・時刻検出部1、相対位置検出部2、車速検出部3、周辺回路を含む主制御部4、メモリ群5、大容量記憶装置10、FM多重受信及び処理部11、光・電波ビーコン受信及び処理部12、ユーザインタフェース部13、ETC車載器17等を備えている。なお、ユーザインタフェース部13には表示部14、音声出力部15及び入力部16が接続されている。
【0026】
絶対位置・方位・時刻検出部1は、本発明装置が搭載された車輌(自動車)の現在位置、即ち自車位置について、地表での絶対的な位置座標及び方位を計算するために、例えば、GPS衛星から送信されている電波をアンテナ又はレシーバで受信する。また、相対位置検出部2は、ジャイロ等を利用して自車の相対的な方位を検出する。車速検出部3は、自車の速度検出のために出力されている車速パルスを処理することにより自車の速度を計算する。
【0027】
なお、GPS衛星から送信されている電波には時刻に関する情報も含まれるので、時刻(現在時刻)を検出することも可能である。従って、本実施の形態では、現在時刻は絶対位置・方位・時刻検出部1が受信するGPS衛星の電波から検出するものとする。但し、現在時刻に関しては、ある程度正確であれば内蔵タイマを利用することも、種々のデジタル放送の電波に含まれる時刻情報を利用することも可能である。
【0028】
また、周辺回路を含む主制御部4は本発明装置全体を制御するが、詳細については後述する。メモリ群5は本発明装置の動作に必要な種々の情報を記憶した各種のメモリにて構成されている。たとえば、メインプログラム(本発明に係るコンピュータプログラム)が格納されており、起動時等に主制御部4からアクセスされるROM6、メインプログラムが必要に応じてロードされると共にワーキングエリアとしても利用されるDRAM7、メイン電源が遮断されたような場合にも種々の設定等の情報をバックアップしておくための不揮発性のSRAM8、表示部14用のVRAM9等を含んでいる。
【0029】
表示部14及び音声出力部15は、案内用地図(立体表示、ランドマーク表示等を含む)、メニュー表示(運転者に対する確認画面等をも含む)、目的地リスト、地名等を検索するための検索用五十音表、ETCシステムによる有料道路の利用金額、警告及び表示等の各種の情報を画像表示及び合成音声で出力する。
【0030】
入力部16は、操作パネル、リモコン、ジョイスティック等で構成されており、運転者が操作パネルの各種キー、リモコンの各種キー、ジョイスティック等を操作して入力した命令、数値等の情報を受け付ける。たとえば、表示部14に表示された地図上の所望の地点、ランドマーク、メニューボタン、施設名リスト、検索用五十音表等の操作入力、運転者が希望するETCシステムの利用上限額の入力等を行なうことができる。
【0031】
なお、表示部14を、画面に表示された地図上の任意の地点、メニューボタン等の項目を運転者が直接指で触れるのみにて入力部16と同様に命令、数値等を入力することが可能な入力部16と同様の機能を有するタッチパネルとして構成することも可能である。
【0032】
ユーザインタフェース部13は、I/O制御回路、ドライバ等を使用することによって、表示部14、音声出力部15及び入力部16と主制御部4との間の信号の送受を行なうことにより、表示部14に画像を表示し、音声出力部15から合成音声を発生させ、また入力部16が受け付けた命令、数値等を主制御部4へ入力する。
【0033】
大容量記憶装置10は、たとえばDVD、HD(ハードディスク)等の大容量の種々のデータ、特に地図データベース(DB)のデータを記憶し、主制御部4へ出力するために備えられている。地図データベースの内容は、地図データを中心としてたとえば道路のネットワーク構造を示す経路探索用データ、ガソリンスタンド等のランドマークを表わす表示用データ等を含む他、各有料道路の利用料金のデータ等も含まれている。
【0034】
また、大容量記憶装置10には平均速度情報も記憶されている。この平均時速情報にはたとえば、一般道の走行速度は平均20km/h、いわゆる高速道路の走行速度は平均80km/h、高速道路ではない自動車専用道路の走行速度は平均50km/h等の情報が含まれる。なお、高速道路ではない自動車専用道路には有料である場合と無料である場合とがあるが、いずれも最高制限速度は60km/hであるので、それらの走行速度は平均50km/hと仮定して記憶されている。
【0035】
但し、以上の数値は本発明装置を日本国内で使用することを前提としている。本発明装置を日本以外の国・地域で使用する場合には、それぞれの国・地域の法令、道路事情に合わせて適切な平均速度情報を大容量記憶装置10に記憶させればよい。
【0036】
ROM6には、たとえば起動時にDRAM7に読み出されるアプリケーションプログラムが格納されている。このアプリケーションプログラムは、メニューボタン、五十音表のパネル等の本発明装置の操作に必要な基本的なデータが含まれている。
【0037】
FM多重受信及び処理部11は、FM放送及びFM放送の電波に含まれるVICSの交通情報を受信するために備えられている。更に、光・電波ビーコン受信及び処理部12は、道路に設置されている放送設備の直近を車輌が通過した際に、光ビーコン又は電波ビーコンに含まれるVICSの交通情報を受信するために備えられている。なお、VICSの交通情報は、渋滞、事故、規制、工事、目的地までの旅行時間(走行時間)等の情報を含んでいる。
【0038】
ETC車載器17は、図示しない内蔵アンプを介して道路側のアンテナとの無線通信により、有料道路の出入口等に設定されている通行料金の課金基準となる位置(以下、単に出入口、又は料金所という)、たとえばETCシステム用のゲート等を通過する際に自動的に料金の収受処理を行なうために備えられている。なお、ETCシステムそのものについては公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
主制御部4には、目的地指定部30、経路探索部31、案内制御部32、現在位置計算部33、描画部34等の機能ブロックが存在する。但し、これらの機能ブロックはCPUが前述したコンピュータプログラムを実行することにより実現される仮想的な機能ブロックである。また、割引条件格納部35はたとえばHD等に、「深夜割引」、「通勤割引」、「早朝夜間割引」、「大都市近郊区間」等の情報が記憶されることにより実現される機能である。
【0040】
目的地指定部30はたとえば、表示部14に表示された地図画像上で指定した地点又は目的地リスト上で指定した目的地を表わす情報を保持しており、経路探索部31に与える。
【0041】
現在位置計算部33は、車輌の現在位置を計算するための機能ブロックである。具体的には、現在位置計算部33は、GPS航法測位と自律航法測位とを組み合わせて車輌の現在位置を計算する。なお、GPS航法測位は人工衛星から送信されている電波に基づいて絶対位置・方位・時刻検出部1から得られる情報を利用することによって現在位置を計算する。また、自律航法測位は、地磁気及び車輌の速度に基づいて、相対位置検出部2及び車速検出部3から得られる情報を利用して現在位置を検出する。
【0042】
経路探索部31は、車輌の現在位置から、目的地指定部30により指定されている目的地に至る間の最適な経路を、地図データベースのデータを参照して探索する。なお、経路探索部31が探索する最適な経路は基本的には、たとえば最短距離、最短時間等の条件に応じて探索される。案内制御部32は、経路探索部31が探索した経路を車輌が走行できるように、現在位置計算部33が計算している現在位置等に基づいて、合成音声、画面表示等で運転者に道案内を行なう。
【0043】
描画部34は、上述した地図データベースのデータ及び現在位置計算部33が計算した現在位置のデータに基づいて、地図上に現在位置を表示した画像をビットマップメモリ等に描画することにより表示部14に表示させると共に、経路探索部31が探索した経路をその上に重畳して表示する等の画像表示に関する処理を行なう。
【0044】
割引条件格納部35には、深夜割引情報36、通勤割引情報37、早朝夜間割引情報38、大都市近郊区間情報39等の種々の割引情報が予め格納されている。
【0045】
以下、一例として2005年9月現在の日本道路公団(以下、JHという)が実施しているETCシステムを利用する車輌に対する高速道路の利用料金の割引制度について説明する。但し、これはあくまでも本発明装置の動作説明のための割引制度の一例であり、JHによる割引制度自体も随時変更される可能性があり、またJH以外の事業体が管理している有料道路においても割引制度が実施されている場合もあり、更に日本以外の国・地域においてはそれぞれ独自の割引制度が存在する可能性がある。
【0046】
深夜割引は、午前0時から午前4時までの間にJHが管理する高速道路を走行した場合に適用され、割引率は30%である。
【0047】
通勤割引は、入口又は出口の料金所を午前6時から午前9時までの間、または午後5時から午後8時までの間に通過した場合に適用され、割引率は50%である。但しこの通勤割引には、1回(入口から出口まで)の走行距離が100km 以内であり、後述する大都市近郊区間は適用対象外であり、同日の午前と午後にそれぞれ1回のみ適用されるという条件が存在する。
【0048】
早朝夜間割引は、入口又は出口の料金所を午後10時から翌日の午前6時までの間に通過した場合に適用され、割引率は50%である。但しこの早朝夜間割引には、後述する大都市近郊区間内を少なくとも1区間走行し、1回の走行距離が100km 以内という条件が存在する。
【0049】
大都市近郊区間としては以下のような区間が指定されている。東京地区では、東北道の川口と加須との間、常磐道の三郷と矢田部との間、東関東道の湾岸市川と成田との間、新空港道の成田と新空港との間、関越道の練馬と東松山との間、東名高速の東京と厚木との間、東京外環道の大泉と三郷との間、中央道の高井戸と八王子との間等である。
【0050】
また、大阪地区では、名神高速の大津と西宮との間、中国道の中国吹田と西宮北との間、近畿道の吹田と松原との間、阪和道の松原と岸和田和泉との間、西名阪道の天理と松原との間、京滋バイパスの瀬田東と久御山淀との間等である。
【0051】
割引条件格納部35には以上のような情報が予め格納されており、経路探索部31による経路探索に際して参照される。
【0052】
図2は上記の各種割引制度の時間的関係を1日の時間軸中で示す模式図である。この模式図から明らかなように、たとえば午後の通勤割引と早朝夜間割引とは時間帯が接近しているので、高速道路から一般道へ一旦降りた後に再度高速道路へ進入すれば、両方の割引制度を利用することが可能であることが理解される。また、早朝夜間割引と午前の通勤割引とは時間帯が連続しているので、同様に両方の割引制度を利用することが可能であることが理解される。
【0053】
従って、JHが管理する高速道路を利用する際には、時間帯、走行距離、走行区間(大都市近郊区間であるか否か)等に応じて、高速道路から一般道へ一旦降りた後に再度高速道路へ進入すれば、換言すれば高速道路を分割して利用すれば、複数の割引制度を組み合わせて利用することが可能である。その場合の通行料金の総額が、高速道路を降りずにそのまま走行した場合の料金と比べて高額であるか、又は低額であるかはケースバイケースである。しかし、上手に複数の割引制度を組み合わせて利用することにより、高速道路の通行料金をより低額に抑えることも可能になる。
【0054】
次に、上述のような構成の本発明装置の動作について、主制御部4による制御手順を示す図3、図4及び図5のフローチャートを参照して説明する。なお、以下の説明はJHが管理する有料道路である高速道路のみを利用する場合を想定している。しかし、JH以外の事業者が管理する種々の有料道路をも利用する場合にも本発明が適用可能であることはいうまでもない。
【0055】
まず、運転者が目的地をたとえば表示部14に表示された地図画像上で指定するか、または目的地リストから選択して指定する等により入力する。入力された目的地に関する情報は目的地指定部30に記憶されると共に経路探索部31に与えられる(ステップS11)。経路探索部31は目的地に関する情報が与えられると、現在位置計算部33が計算しているその時点の現在位置を読み込んで最適な経路を仮経路として探索する(ステップS12)。但し、この際に探索される仮経路は運転者が予め設定している条件、たとえば最短距離、最短時間等のような条件、更には高速道路(以下、いわゆる高速道路と、高速道路ではない自動車専用道路を含めて高速道路という)を優先するか、全く利用しないか、または一般道を優先するか、等の運転者が設定可能な条件に従って探索される。なおこの最適な経路である仮経路の探索のための処理に関しては公知の技術を利用することが可能である。
【0056】
次に、経路探索部31は上述のようにして探索された仮経路に高速道路が含まれるか否かを判断する(ステップS13)。仮経路に高速道路が含まれていない場合(ステップS13でNO)、高速道路の割引制度そのものを利用することが出来ないので、経路探索部31はステップS12で探索した仮経路をそのまま確定経路として決定する(ステップS14)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。
【0057】
一方、ステップS12で探索された仮経路に高速道路が含まれている場合(ステップS13でYES)、経路探索部31は仮経路に含まれる高速道路の入口又は出口(前述したように、具体的には有料道路の出入口等に設定されている通行料金の課金基準となる位置)への到着予定時刻を計算する(ステップS15)。たとえば、経路探索部31は、大容量記憶装置10に記憶されている平均時速情報に基づいて、一般道を平均20km/hで、いわゆる高速道路を平均80km/hで、高速道路ではない自動車専用道路を平均50km/hでそれぞれ走行すると仮定し、絶対位置・方位・時刻検出部1が検出している現在時刻に基づいて、仮経路に含まれる高速道路(いわゆる高速道路と自動車専用道路とを含む)の入口及び出口への到着時刻を求める。なお、以下においては、仮経路に含まれる高速道路の区間を高速区間という。
【0058】
なお、高速道路ではない自動車専用道路には有料である場合と無料である場合とがあるが、いずれも最高制限速度は60km/hであるので、平均速度は50km/hと仮定する。但し、このような特定の地点への到着予定時刻を求める手法自体は公知である。また、この際、FM多重受信及び処理部11及び/又は光・電波ビーコン受信及び処理部12により得られる渋滞情報等を参照してもよいことはいうまでもない。
【0059】
仮経路に含まれる高速道路の入口又は出口への到着時刻が求まると、経路探索部31は入口、出口それぞれの到着予定時刻に基づいていずれかの割引制度が適用される可能性があるか否かを、割引条件格納部35に格納されている種々の割引制度に関する情報に基づいて判断する(ステップS16)。この判断結果がNOである場合、即ち仮経路に含まれる高速道路の入口又は出口のいずれの到着予定時刻も割引対象時間内ではなく、また深夜割引の対象となる時間帯に高速道路を走行しない場合は(ステップS16でNO)、割引制度の適用を全く受けられないことを意味している。従ってこの場合、経路探索部31はステップS12で探索した仮経路をそのまま確定経路として決定する(ステップS14)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれることは前述した仮経路に高速道路が含まれない場合と同様である。
【0060】
しかし、仮経路に含まれる高速道路の入口又は出口への到着時刻が割引制度が適用される時間内であるか、または深夜割引の対象となる時間帯に高速道路を走行する場合は何らかの割引制度が適用される可能性がある。但し、このステップS16での判断は、仮経路を車輌が走行した場合の時刻に関する情報のみに基づく判断であるので、実際に割引制度が適用されるか否かは以下のようにして判断される。
【0061】
ステップS16で何らかの割引制度が適用される可能性があると判断された場合(ステップS16でYES)、適用可能な割引制度がいずれの割引制度であるかを経路探索部31は割引条件格納部35に格納されている種々の割引制度に関する情報に基づいて判断する(ステップS17)。この結果、適用可能な割引制度が通勤割引であると判断された場合は(ステップS18でYES)、経路探索部31は、通勤割引が適用される可能性があるとして後述する図5に示すステップS41以降へ処理を進める。一方、適用可能な割引制度が通勤割引以外である場合は(ステップS18でNO)、経路探索部31は、通勤割引以外の割引制度が適用される可能性があるとして図4に示す以下のようなステップS21以降へ処理を進める。
【0062】
適用可能な割引制度が通勤割引以外の割引制度である場合(ステップS18でNO)、適用可能な割引制度は深夜割引又は早朝夜間割引である。従って、経路探索部31はステップS12で求めた仮経路に含まれる高速道路に大都市近郊区間が含まれるか否かをまず判断する(ステップS21)。仮経路に含まれる高速道路に大都市近郊区間が含まれない場合(ステップS21でNO)、前述した割引制度の条件から、深夜割引のみが適用される。従ってこの場合、経路探索部31は仮経路に含まれる高速道路には深夜割引のみが適用される可能性があると判断し、ステップS12で探索した仮経路をそのまま確定経路として決定する(ステップS14)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。但し、深夜割引制度の対象となる時間帯に高速道路を走行しないように仮経路が探索されている場合には、実際には深夜割引制度は適用されない。
【0063】
一方、仮経路に含まれる高速道路に大都市近郊区間が含まれる場合には前述した割引制度の条件から、走行距離が100km 以内であれば早朝夜間割引(大都市近郊区間内を少なくとも1区間走行し、且つ1回の走行距離が100km 以内)が適用される可能性がある。従ってこの場合(ステップS21でYES)、経路探索部31は仮経路の大都市近郊区間を含めた高速区間が100km 超であるか否かを判断する(ステップS22)。このステップS22での判断結果がNOである場合、即ち走行距離(仮経路に含まれる高速道路の入口と出口との間の距離)が100km を超えない場合は早朝夜間割引のみが適用される。この場合(ステップS22でNO)、経路探索部31は早朝夜間割引のみが適用される可能性があると判断し、ステップS12で探索した仮経路をそのまま確定経路として決定する(ステップS14)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。
【0064】
一方、ステップS22での判断結果がYESである場合、具体的には、ステップS12で求めた仮経路に含まれる高速道路の区間に大都市近郊区間が含まれ、且つ走行距離(仮経路に含まれる高速区間の距離)が100km を超える場合は、一旦一般道へ降りた後に再度高速道路を走行することにより、大都市近郊区間に対しては早朝夜間割引が、大都市近郊区間外に対しては深夜割引が適用される可能性がある。即ち、仮経路上に含まれる高速区間内の大都市近郊区間になるべく近い大都市近郊区間外において一旦高速道路を降りた後に再度高速道路を走行することにより、双方の割引制度が併せて適用される可能性があることになる。但しこの場合、本来は仮経路の高速区間を1回で利用するべきであるにも拘わらず2回に分けて利用することになる。高速道路の通行料金は単純な距離比例制ではなく、距離に比例した料金と高速道路の出入口の利用料金との総計であるので、本来は1回の利用で済むところを2回に分けて高速道路を利用した場合には、通行料金の総計が割引制度を利用したとしても割高になる可能性がある。従って、仮経路に含まれる高速区間をそのまま1回のみで利用する場合と、一旦一般道へ降りて再度高速道路へ進入するというように、高速区間を少なくとも2回に分割して利用する場合との料金を比較する必要が生じる。
【0065】
以上のような事情から、経路探索部31は、大都市近郊区間を含めて100km を超えない範囲で高速道路を1回利用するように、仮経路の高速区間を分割した代替経路を探索する(ステップS23)。この場合、前者には早朝夜間割引が、後者には深夜割引が適用される。このような代替経路は仮経路に含まれる高速道路の区間の途中の出入口で一旦高速道路外へ出て同一出入口から再度同一の高速道路へ進入するという方法を採れば、最低でも一つの代替経路を探索することが可能である。その他、二つの高速道路同士の合流点付近で二つの高速道路をショートカットしている一般道を利用する方法も有効である。また、いくつかの代替経路が可能である場合には、経路探索部31はそれらの複数の代替経路を全て探索するようにしてもよい。
【0066】
いずれにしろ、上述のようにして少なくとも一つの代替経路が探索されると、経路探索部31は代替経路を利用した場合の通行料金の総額を計算する(ステップS24)。但し、複数の代替経路が存在する場合は、それぞれの代替経路及び通行料金の総額が表示部14に表示され、運転者が任意の代替経路を選択することができるようにしてもよい。しかし、運転者が予め設定しておくことにより、通行料金の総計が最も低額になる代替経路がこの時点で自動的に選択されるようにしてもよい。なお、これらの通行料金は大容量記憶装置10に予め記憶されている。
【0067】
このようにして代替経路の通行料金が求まると、経路探索部31はステップS12で求めた仮経路を利用した場合(この場合は仮経路に含まれる高速区間を1回の利用で走行する)の通行料金(総高速区間料金)と代替経路(仮経路に含まれる高速区間を少なくとも2分割して利用する)の通行料金とを比較する(ステップS25)。この比較の結果、総高速区間料金が代替経路の通行料金よりも低額又は同額である場合(ステップS25でYES)、経路探索部31はステップS12で探索した仮経路をそのまま確定経路として決定する(ステップS14)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。
【0068】
一方、ステップS25での比較の結果、総高速区間料金が代替経路の通行料金よりも高額である場合(ステップS25でNO)、経路探索部31はステップS23で探索した代替経路を確定経路として決定する(ステップS26)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路ではなく、ステップS23で探索された代替経路(仮経路に含まれる高速区間の途中で少なくとも1回は高速道路外へ降りて再度高速道路へ進入する経路)が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。
【0069】
但し前述したように、複数の代替経路が存在する場合は、それぞれの代替経路及び通行料金の総額が表示部14に表示され、運転者が任意の代替経路を選択することができるようにしてもよい。この場合は、運転者が選択した代替経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。
【0070】
以上はステップS18において通勤割引は適用されないが他の割引制度が適用される可能性があると判断された場合の処理手順である。しかし、ステップS18において通勤割引が適用可能であると判断された場合は、通勤割引のみが適用されるのか否か、また実際に通勤割引が適用されるか否かを判断する必要がある。即ち、通勤割引は前述したように、大都市近郊区間は適用対象外であり、しかも1回の利用距離が100km 以下である場合にのみ適用され、更に同日の午前と午後とに各1回のみ利用である。このため、ステップS12で探索した仮経路がこれらの条件を満たしているか否かを判断する必要がある。この場合は、図5に示すステップS41へ処理が進められる。
【0071】
まず経路探索部31は、ステップS12で探索した仮経路に含まれる高速区間に大都市近郊区間が含まれるか否かを判断する(ステップS41)。ステップS12で探索した仮経路に含まれる高速区間に大都市近郊区間が含まれない場合(ステップS41でNO)、通勤割引が適用される可能性がある。この場合、更に仮経路に含まれる高速区間の距離が100km 以下である場合は(ステップS42でNO)、通勤割引のみが適用されることになる。従ってこの場合、経路探索部31はステップS12で探索した仮経路をそのまま確定経路として決定する(ステップS14)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。
【0072】
しかし、ステップS42において、ステップS12で探索された仮経路に含まれる高速区間の利用距離が100km 超である場合は(ステップS42でYES)、そのままでは通勤割引は適用されないが、高速区間を2分割することによりその内の一方の区間には通勤割引が適用される。この場合、経路探索部31は、100km を超えない範囲で高速道路を1回利用するように、仮経路の高速区間を分割した代替経路を探索する(ステップS43)。なお、通勤割引は同日の午前と午後とにそれぞれ1回ずつしか受けられない。従って、仮経路に含まれる高速区間の内の100km になるべく近い距離に対して通勤割引が適用されるように高速区間を分割すれば、残りの区間には割引制度は適用されないが、通行料金は最も低額になる。但し、夕方の時間帯の通勤割引を利用して高速道路に進入した後に早朝夜間割引が利用可能な時間帯になるような仮経路が探索されている場合には、仮経路に含まれる高速区間の全てを通勤割引と早朝夜間割引とに分けて利用する代替経路を探索すればよい。
【0073】
いずれにしろ、上述のようにして少なくとも一つの代替経路が探索されると、経路探索部31は前述したステップS24へ処理を進めて、代替経路を利用した場合の通行料金の総額を計算する。但し、複数の代替経路が存在する場合は、それぞれの代替経路及び通行料金の総額が表示部14に表示され、運転者が任意の代替経路を選択することができるようにしてもよい。しかし、運転者が予め設定しておくことにより、通行料金の総計が最も低額になる代替経路がこの時点で自動的に選択されるようにしてもよい。この後は経路探索部31は前述したステップS25以降の処理を行なう。
【0074】
また、先のステップS41において、ステップS12において探索された仮経路に含まれる高速区間に大都市近郊区間が含まれると判断された場合は(ステップS41でYES)、通勤割引が適用されない可能性がある。この場合、経路探索部31はステップS12で探索した仮経路に含まれる高速区間が大都市近郊区間を含めて100km 超であるか否かを判断する(ステップS45)。即ち、仮経路に含まれる高速区間が大都市近郊区間を含めて100km を超えない場合は(ステップS45でNO)、仮経路に対して部分的に、具体的には大都市近郊区間以外の区間に通勤割引が適用されるので、経路探索部31はステップS12で探索した仮経路をそのまま確定経路として決定する(ステップS14)。この場合、表示部14にはステップS12で探索された仮経路が確定経路として表示され、この経路に従って道案内が行なわれる。
【0075】
一方、仮経路に含まれる高速区間が大都市近郊区間を含めて100km を超える場合は(ステップS45でYES)、そのままでは通勤割引は適用されない。しかしこの場合、通勤割引と他の割引とが併せて適用される可能性がある。即ち、大都市近郊区間以外の部分に対しては通勤割引が適用されるので、経路探索部31はステップS12で探索した仮経路の内の大都市近郊区間外の部分で通勤割引が適用されるように代替経路を探索する。具体的には、経路探索部31は仮経路に含まれる高速区間の内の大都市近郊区間外で100km を超えない範囲で高速道路を1回利用するように、仮経路の高速区間を分割した代替経路を探索する(ステップS46)。これにより、仮経路に含まれる高速区間の内の大都市近郊区間外で100km を超えない区間に対しては通勤割引が適用される。但し、夕方の通勤割引を利用して高速道路に進入した後に早朝夜間割引が利用可能な時間帯になっていれば、仮経路に含まれる高速区間の全てを通勤割引と早朝夜間割引とに分けて利用する代替経路を探索すればよい。
【0076】
いずれにしろ、上述のようにして少なくとも一つの代替経路が探索されると、経路探索部31は前述したステップS24へ処理を進めて、代替経路を利用した場合の通行料金の総額を計算する。但し、複数の代替経路が存在する場合は、それぞれの代替経路及び通行料金の総額が表示部14に表示され、運転者が任意の代替経路を選択することができるようにしてもよい。しかし、運転者が予め設定しておくことにより、通行料金の総計が最も低額になる代替経路がこの時点で自動的に選択されるようにしてもよい。この後は経路探索部31は前述したステップS25以降の処理を行なう。
【0077】
以上のように本発明によれば、通常の手法で探索された出発地から到着地までの経路が高速道路等の有料道路を経由する場合に、有料道路の経路を分割することにより通行料金の割引制度をより有利に享受できるように構成したので、任意の時刻に出発地を出発したような場合にも、割引制度の恩恵を可及的に有利に享受し得る。
【0078】
なお、上述した実施の形態においては、出発地を任意の時刻に出発した場合に受けることが可能な割引制度を活用するようにしているが、高速道路の通行料金が最も低額になるように出発時刻を探索することも勿論可能である。但しこの場合には、高速道路へ進入する際、及び高速道路の走行中に(実際にはサービスエリア, パーキングエリア等で)ある程度の待ち時間が必要になる場合もあり得る。
【0079】
また、探索された経路に従って実際に車輌を走行させる際に、高速道路への出入りの時刻を調整する、具体的には適宜の場所(たとえば高速道路上のSA,PA等)で時間待ちをすることによって、より有利な割引を受けることが可能になる場合も当然のことながらあり得る。従って、たとえば仮経路のままでは割引制度を受けることが出来ないが、または1種類の割引制度しか受けることが出来ないが、たとえば若干の待ち時間のみで何らかの割引制度を更に受けることが可能である場合には、経路探索部31によりそのような待ち時間及び通行料金の割引額を計算させて表示部14に表示させるようにしてもよい。この場合、運転者は待ち時間と割引額とを勘案して自らの意思でどのように車輌を運転するかを決定すればよい。
【0080】
なお、ROM6に格納されているメインプログラム、即ち本発明に係るコンピュータプログラムを、大容量記憶装置10に記憶されている地図DB、平均時速情報、更には割引条件格納部35に記憶されている「深夜割引」、「通勤割引」、「早朝夜間割引」、「大都市近郊区間」等の情報と共に汎用のパーソナルコンピュータに記憶させることにより、パーソナルコンピュータを利用して出発地を出発する時刻を種々変更して複数の経路を探索させることが可能になる。この場合には、パーソナルコンピュータのユーザ(運転者)は高速道路の通行料金が最も低額になるような出発時刻を知ることが可能になる。
【0081】
また、上述の汎用のパーソナルコンピュータとして可搬型のたとえばノートタイプのパーソナルコンピュータを利用した場合には、車輌自体にナビゲーション装置が搭載されていない場合にも、パーソナルコンピュータで本発明に係るナビゲーション装置と同等の機能を実現させることも可能である。
【0082】
更に、上述した実施の形態ではETC車載器17を備えることを前提としているが、ETCシステムを利用しない場合にも利用可能な割引制度が存在する場合には、ETC車載器17を備えていないナビゲーション装置にも本発明を適用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】各種割引制度の時間的関係を1日の時間軸中で示す模式図である。
【図3】本発明のナビゲーション装置の動作を説明するための制御手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明のナビゲーション装置の動作を説明するための制御手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明のナビゲーション装置の動作を説明するための制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1 絶対位置・方位・時刻検出部
2 相対位置検出部
3 車速検出部
4 周辺回路を含む主制御部
5 メモリ群
6 ROM
10 大容量記憶装置
11 FM多重受信及び処理部
12 光・電波ビーコン受信及び処理部
16 入力部
30 目的地指定部
31 経路探索部
33 現在位置計算部
35 割引条件格納部
36 深夜割引情報
37 通勤割引情報
38 早朝夜間割引情報
39 大都市近郊区間情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の位置を示す情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段と、車輌の位置を検出する位置検出手段と、目的地を設定する目的地設定手段と、前記目的地設定手段により目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索する経路探索手段とを備えたナビゲーション装置において、
有料道路の通行料金、及び、走行距離及び/又は走行時間帯に応じた前記通行料金の割引制度に関する情報を記憶した通行料金記憶手段と、
前記経路探索手段が探索した経路に有料道路が含まれるか否かを判断する手段と
を備え、
前記経路探索手段は、前記探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記通行料金記憶手段が記憶している割引制度に関する情報を参照することにより、有料道路の走行距離及び/又は走行時間帯に応じて通行料金が異なるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割した経路を探索するようにしてあること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記経路探索手段は、有料道路の通行料金が最も低額になるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割した経路を探索するようにしてあることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
時刻を検出する時刻検出手段と、
道路の種別に応じた平均時速を記憶した平均時速記憶手段と、
前記時刻検出手段が検出している時刻及び前記平均時速記憶手段が記憶している道路の種別に応じた平均時速を参照して、前記探索された経路に含まれる有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻を算出する手段と
を更に備え、
前記経路探索手段は、算出された有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻に基づいて、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割した経路を探索するようにしてあること
を特徴とする請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
道路の位置を示す情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段と、車輌の位置を検出する位置検出手段とを備えたナビゲーション装置により、目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索するナビゲーション方法において、
有料道路の通行料金、及び、走行距離及び/又は走行時間帯に応じた前記通行料金の割引制度に関する情報を読み込むステップと、
目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索するステップと、
探索された経路に有料道路が含まれるか否かを判断するステップと、
探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記割引制度に関する情報を参照することにより、有料道路の走行距離及び/又は走行時間帯に応じて通行料金が異なるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割するステップと
を含むことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項5】
前記有料道路の経路を分割するステップは、有料道路の通行料金が最も低額になるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割することを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション方法。
【請求項6】
前記ナビゲーション装置は、時刻を検出する時刻検出手段と、道路の種別に応じた平均時速を記憶した平均時速記憶手段とを備え、
探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記時刻検出手段が検出している時刻及び前記平均時速記憶手段が記憶している道路の種別に応じた平均時速を参照して、前記探索された経路に含まれる有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻を算出するステップを更に含み、
前記有料道路の経路を分割するステップは、算出された有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻に基づいて、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割すること
を特徴とする請求項4又は5に記載のナビゲーション方法。
【請求項7】
道路の位置を示す情報を含む地図データを記憶した地図データ記憶手段と、車輌の位置を検出する位置検出手段とに接続されたコンピュータに、目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、
有料道路の通行料金、及び、走行距離及び/又は走行時間帯に応じた前記通行料金の割引制度に関する情報を読み込ませる手順と、
目的地が設定された場合に前記位置検出手段が検出している車輌の位置から設定された目的地までの経路を探索させる手順と、
探索された経路に有料道路が含まれるか否かを判断させる手順と、
探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記割引制度に関する情報を参照することにより、有料道路の走行距離及び/又は走行時間帯に応じて通行料金が異なるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割させる手順と
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
前記有料道路の経路を分割させる手順は、有料道路の通行料金が最も低額になるように、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割させることを特徴とする請求項7に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータは、時刻を検出する時刻検出手段と、道路の種別に応じた平均時速を記憶した平均時速記憶手段とに更に接続されており、
前記コンピュータに、探索された経路に有料道路が含まれると判断された場合に、前記時刻検出手段が検出している時刻及び前記平均時速記憶手段が記憶している道路の種別に応じた平均時速を参照させて、前記探索された経路に含まれる有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻を算出させる手順を更に実行させ、
前記コンピュータに、前記有料道路の経路を分割させる手順において、算出された有料道路の通行料金の課金基準となる位置への到着時刻に基づいて、前記探索された経路に含まれる有料道路の経路を分割させること
を特徴とする請求項7又は8に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−271381(P2007−271381A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95630(P2006−95630)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】