説明

ナビゲーション装置

【課題】進行方向前方の進路変更点付近を所定時に拡大表示するナビゲーション装置において、ストレスや車両操作遅れ等を生じさせることがないよう、乗員に進路変更点の拡大図を違和感なく適切なタイミングで提供することができるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】地図データ15aを記憶する記憶部15と、誘導経路の設定を行う経路演算手段23と、車両の現在地周辺の地図を表示画面に表示し、誘導経路C上の進路変更点手前の所定時期に進路変更点の拡大図を表示する表示部16と、を備えたナビゲーション装置10であって、誘導経路C上の進路変更点の情報を取得する進路変更点情報取得手段(経路演算手段23)と、進路変更点情報取得手段によって取得された進路変更点の情報に基づいて、この進路変更点の拡大図の表示を開始する時期を変更する表示時期変更手段(表示切換手段25)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に係り、特に通常の案内表示に加えて、所定時に経路上の誘導対象地点の拡大表示を行うナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両が誘導経路上の交差点等の進路変更点に接近した場合に、画面表示を通常の案内表示から進路変更点周辺の拡大表示に切換えたり、通常の案内表示と拡大表示の双方を同一画面の異なる領域にそれぞれ表示する分割表示に切換えたりするナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のナビゲーション装置では、自車両が誘導経路上の交差点から設定距離以上手前に位置するときには、画面全領域で通常の経路案内表示を行う。そして、このナビゲーション装置では、自車両が交差点から設定距離手前の位置に到達すると、画面を詳細画面表示に切換えるようになっている。
この詳細画面表示では、画面の表示領域が左側部,中央部,右側部に3分割され、画面左側部には通常の経路案内表示が表示され、画面中央部には道路形状の簡略表示が表示され、さらに画面右側部には交差点付近の拡大図が表示されるように構成されている。そして、この拡大表示は、交差点に近づくに連れて、その縮尺の倍率が次第に大きくなるように構成されている。
このナビゲーション装置では、このように通常の案内表示から詳細表示に画面を切換えることにより、画面左側部の通常案内表示及び画面中央部の簡略表示によって自車位置を確認できると共に、画面右側部の拡大表示によって交差点についての詳細な情報を得ることが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−64509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、進路変更点が単純な四叉路(十字路)である場合には、乗員は進路変更点の形状を容易に把握して右折又は左折の準備を行うことができる。しかしながら、例えば、交差点には、三叉路,五叉路,六叉路等や、ロータリー分岐も含まれ、乗員が交差点での進行路を把握し車両操作の準備をするための時間は、交差点の複雑さに応じて異なってくる。すなわち、進路変更点の形状が複雑である場合には、乗員がその進路変更点を把握等するのにより長い時間が必要となる。
【0006】
また、進路変更点が四叉路であっても、2本の道路が直交していない四叉路では、四叉路への進入路によって、曲がる角度が鈍角になったり、鋭角になったりする。この場合、曲折角度によって車両操作の難易度が変わるため、特に曲折角度が90度を越える場合には、進路変更点の形状を乗員が早く知りたいという場合が生じる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のナビゲーション装置では、画面が通常案内表示から詳細表示に自動的に切換わるのは、自車両と交差点との間の距離が設定距離になったときである。したがって、特許文献1のナビゲーション装置では、複雑な分岐形状の交差点に進入する際に、乗員が交差点形状を把握するのに時間を要して緊張状態を感じたり、車両操作の遅れが生じたりするおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、進行方向前方の進路変更点付近を所定時に拡大表示するナビゲーション装置において、ストレスや車両操作遅れ等を生じさせることがないよう、乗員に進路変更点の拡大図を違和感なく適切なタイミングで提供することができるナビゲーション装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、地図データを記憶する地図データ記憶手段と、地図データに基づいて、車両が進行方向を変更する地点である進路変更点を経由する誘導経路の設定を行う誘導経路設定手段と、地図データに基づいて車両の現在地周辺の地図を表示画面に表示し、誘導経路上の進路変更点手前の所定時期にその進路変更点の拡大図を表示画面に表示する表示手段と、を備えたナビゲーション装置であって、地図データから誘導経路上の進路変更点の情報を取得する進路変更点情報取得手段と、進路変更点情報取得手段によって取得された進路変更点の情報に基づいて、この進路変更点の拡大図の表示を開始する時期を変更する表示時期変更手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、車両が誘導経路上の進路変更点に差し掛かったとき、その進路変更点の情報に基づいて、進路変更点の拡大図の表示を開始する時期が変更されるので、進路変更点毎に適切なタイミングで違和感なく進路変更点の拡大図を乗員に提供することができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、表示時期変更手段は、進路変更点の情報に基づいて、進路変更点への進入路に応じて表示開始時期を変更する。このように構成された本発明によれば、同じ進路変更点であっても、進入路によって進路変更点での車両操作の難易度が異なってくるので、進入路に応じて表示開始時期を変更することにより、乗員に適切なタイミングで進路変更点の拡大図を提供することができる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、表示時期変更手段は、進路変更点の情報に基づいて、進路変更点における進入路から退出路への曲折角度が大きいほど表示開始時期を早めるように変更する。このように構成された本発明によれば、進路変更点での曲折角度が大きいほど、車両操作の難易度が高くなるので、進路変更点での曲折角度に応じて表示開始時期を変更することにより、乗員に適切なタイミングで進路変更点の拡大図を提供することができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、表示時期変更手段は、進路変更点の情報に基づいて、進路変更点の形状が、直交する十字路と比べて複雑であるほど表示開始時期を早めるように変更する。このように構成された本発明によれば、進路変更点の形状が複雑であるほど、車両操作の難易度が高くなるので、進路変更点の形状の複雑さに応じて表示開始時期を変更することにより、乗員に適切なタイミングで進路変更点の拡大図を提供することができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、走行路の道路種別情報を取得する道路種別情報取得手段をさらに備え、表示時期変更手段は、道路種別情報取得手段によって取得された道路種別情報に基づいて、表示開始時期を補正する。このように構成された本発明によれば、進路変更点までの道路種別を考慮して表示開始時期が補正されるので、走行中の道路種別に応じて、より適切なタイミングで進路変更点の拡大図を提供することができる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、表示手段は、誘導経路上の進路変更点の拡大図を表示画面に表示するときに、車両の現在地周辺の地図を表示する一般表示態様から、車両の現在地周辺の地図に代えて進路変更点の拡大図を表示する拡大表示態様に表示を切換える。
【0016】
また、本発明において好ましくは、表示手段は、表示する地図の縮尺を変更する縮尺変更手段を備えており、表示している地図の縮尺が所定値以上の場合には、拡大表示態様への切換えを行わない。このように構成された本発明によれば、表示切換え時において、地図表示が所定倍以上の縮尺で拡大表示されている場合には、さらに拡大表示を行う必要がないので、既に表示されている所定倍率以上の縮尺の拡大表示を優先する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のナビゲーション装置によれば、ストレスや車両操作遅れ等を生じさせることがないよう、進行方向前方の交差点付近の拡大表示を、乗員に違和感なく適切なタイミングで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。まず、図1乃至図8に基づいて、第1実施形態を説明する。図1はナビゲーション装置のブロック図、図2は制御回路の機能ブロック図、図3は広域表示データの表示画面、図4は道路種別データ、図5は進路変更点データ、図6は広域表示データ及び拡大表示データの表示画面、図8は切換え表示処理のフローチャートである。また、図7は本発明の改変例に係る拡大表示データの表示画面である。
【0019】
本実施形態のナビゲーション装置10は、制御回路11と、車速センサ12と、ジャイロセンサ13と、GPSセンサ14と、記憶部15と、表示部16と、入力部17とを備えている。
制御回路11は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、後述するように装置全体を制御する。
【0020】
車速センサ12は、自車両の移動に伴って得られる車速パルスを検出するセンサであり、制御回路11はこの車速パルスを処理することにより、自車両の平均速度を計算する。
ジャイロセンサ13は、自車両の進行方位を検出するセンサであり、制御回路11はこの検出信号を処理することにより、自車両の相対的な方位を検出する。
GPSセンサ14は、GPS衛星からのGPS信号をアンテナやレシーバ等で検出するセンサであり、制御回路11はこのGPS信号を処理することにより、地表における自車両の現在地の絶対的な位置座標や方位を計算する。
【0021】
記憶部15は、制御回路11が実行する各種の制御プログラム等を記憶するROMと、制御回路11の作業領域であるRAMと、地図データ15aや各種データを記憶するハードディスク等から構成されている。地図データ15aは、道路地図描画用データや各種の図形データから構成されている。記憶部15は、本発明の地図データ記憶手段に相当する。
なお、本実施形態では、ハードディスクに記憶された地図データ15a等を読み出すように構成されているが、これに限らず、DVD−ROM,CD−ROM等の記憶媒体から地図データ15a等を読み出すように構成してもよい。
【0022】
表示部16は、液晶モニタ等の表示装置であり、制御回路11の制御に基づいて、地図表示や各種情報を表示画面に表示して乗員に提供する。表示部16及び表示制御を行う制御回路11は、本発明の表示手段に相当する。
入力部17は、操作スイッチ,リモコン,タッチパネル等によって構成され、乗員はこれにより指示命令や各種情報を入力可能となっている。乗員は、入力部17により、表示部16での地図表示の縮尺変更の指示入力、誘導目的地の入力、後述する誘導経路の選択等を行うことができる。
【0023】
次に、図2に基づいて制御回路11の機能及び作用についてさらに説明する。
制御回路11は、車速演算手段21と、自車位置測位手段22と、経路演算手段23と、距離演算手段24と、表示切換手段25として機能するように構成されている。
【0024】
車速演算手段21は、車速センサ12からの信号に基づいて自車の所定期間での平均速度を逐次算出するように構成されている。
また、自車位置測位手段22は、車速センサ12,ジャイロセンサ13,GPSセンサ14からの信号に基づいて、GPS航法測位,自律航法測位等により自車の現在地(自車位置)を逐次計算し、自車位置を特定するように構成されている。自車位置測位手段22,車速センサ12,ジャイロセンサ13,GPSセンサ14は、現在地検知手段である。
【0025】
経路演算手段23は、記憶部15から地図データ等を読み出しながら、ダイクストラ法等の経路探索アルゴリズムを使って経路探索を行うように構成されている。経路演算手段23は、自車位置測位手段22により特定された自車位置又は指定された地点を経路探索開始点として、入力部17により指定された目的地までの誘導経路を、地図データ15aに基づいて計算することで、誘導経路を表す経路データを作成する。経路データには、経路上の道路及び誘導対象地点に関する各種情報が取り込まれる。経路演算手段23によって複数の経路が求められた場合は、乗員は入力部17により所望の経路を選択することができる。経路演算手段23は、本発明の誘導経路設定手段に相当する。
【0026】
経路データは、誘導経路のリンク情報やノード情報等からなり、記憶部15に一次記憶される。経路データの誘導経路は、目的地までの間に、通常、複数の誘導対象地点を経由するように構成されている。制御回路11は、誘導経路に従って車両が走行できるように、誘導対象地点の手前で、乗員に対して画面や音声等による進行方向指示の誘導を行い、車両を経路誘導する。制御回路11は、経路データと自車位置とにより、次に通過することになる誘導経路上の誘導対象地点を特定する。誘導対象地点は、例えば曲がるべき交差点を含む進路変更点,建造物等である。
【0027】
図3に示すように、制御回路11は、自車位置,経路データ及び地図データ15a等に基づいて画像データを生成し、この画像データにより地図上に自車位置及び誘導経路が表示された表示データaを表示部16に適宜な縮尺で表示する。また、制御回路11は、入力部17での入力操作により入力される入力信号に基づいて、表示データaの縮尺を変更して表示するように表示部16を制御する。制御回路11は、本発明の縮尺変更手段に相当する。
図3は、地図情報A上に自車両を表す略三角形状の自車位置標識B及び誘導経路Cが示された一般表示態様を示している。自車位置標識Bは、その位置により自車位置を示し、その頂部の向きにより自車両の進行方向を示している。
【0028】
誘導経路Cは、他の道路と区別可能なように、表示形態を変えて画面表示されている。本実施形態では、誘導経路Cは、他の道路と表示色を異ならせている。これにより、乗員は地図上の誘導経路Cを認識することができる。図3には、進路変更点X(X1,X2,X3,X4)を経由する誘導経路Cが示されている。本実施形態では、進路変更点は、経路上の交差点,Uターン地点,ロータリー分岐等を含み、車両が進行方向を変更する地点又は範囲を指している。図3に示す進路変更点X1,X2,X3,X4は、それぞれUターン地点,三叉路,四叉路,ロータリー分岐である。
制御回路11は、誘導経路C上の複数の誘導対象地点である進路変更点のうち、自車両の直前にある進路変更点を特定している。図3では、自車位置標識Bの前方に位置する進路変更点X3が特定される。
【0029】
また、記憶部15は、図4に示す道路種別パラメータと道路種別係数との対応関係を示す道路種別データを記憶している。経路演算手段23は、経路データに基づいて、図4に示すデータを用いて、自車位置から進路変更点Xまでの走行路における道路種別係数を取得する。例えば、経路データから得られた走行路の道路種別パラメータが「高速道」である場合は、道路種別係数を1.2とする。経路演算手段23は、本発明の道路種別情報取得手段に相当する。
【0030】
さらに、記憶部15は、図5に示す進路変更点パラメータと進路変更点係数との対応関係を示す進路変更点データを記憶している。経路演算手段23は、経路データに基づいて、図5に示すデータを用いて、進路変更点Xにおける進路変更係数を取得する。
図5に示す進路変更点データでは、進路変更点において進入路から退出路に車両が曲がる際の態様を5通りに分類している。
【0031】
分類は、概略、進入変更点の形状及び進入路から退出路への曲折角度の大きさに応じて行われている。
分類1は、三叉路以上の分岐点での右折角又は左折角が90度未満の場合、すなわち進入路から退出路への曲折角度が90度未満の場合である。分類2は、分岐点での右折角又は左折角が略90度の場合、すなわち進入路と退出路とが略直交する場合である。分類3は、Uターン路又は分岐点でUターンする場合である。分類4は、分岐点での右折角又は左折角が90度より大きい場合、すなわち進入路から退出路への曲折角度が90度より大きい場合である。分類5は、ロータリー分岐を通過する場合である。
【0032】
なお、同じ進行変更点であっても、進入路に応じて分類は異なる場合がある。すなわち、同じ進入路であっても、退出路が異なれば車両進路の変更度合が変わるので、したがって進入路と退出路との組合せによって分類が変わる場合がある。
本実施形態では、地図データ15aに、進路変更点の進入路と退出路の組合せ毎に上記分類が割り当てられて記憶されている。したがって、経路演算手段23は、経路データに各進路変更点の分類を取り込んで記憶する。そして、経路演算手段23は、経路データに取り込んだ分類と図5の進路変更点データを用いて、進路変更係数を取得する。
【0033】
本実施形態の進路変更点データでは、分類1では進路変更点係数が0.8に設定され、分類2では1.0に設定され、分類3,4,5では1.2に設定されている。すなわち、進入変更点の形状が直交する十字路と比べて複雑であるほど、又、進入路から退出路への曲折角度が大きいほど、進路変更点係数が大きく設定されている。
進入路から退出路への曲折角度が90度未満の進路変更点の場合、直交する十字路よりも車両操作が容易となるので、90度未満の曲折を行う進入変更点は、直交する十字路よりも形状が簡単であるとみなされる。一方、曲折角度が90度を越える進路変更点及びUターン路やロータリー分岐の場合、直交する十字路よりも車両操作が難しくなるので、90度を越える曲折を行う進入変更点及びUターン路やロータリー分岐は、直交する十字路よりも形状が複雑であるとみなされる。そして、本実施形態では、後述するように、進路変更点係数が大きいほど、拡大表示切換え処理が早期に行われるように構成されている。経路演算手段23は、本発明の進路変更点情報取得手段に相当する。
【0034】
距離演算手段24は、自車位置測位手段22により特定された自車位置と、経路演算手段23によって設定された経路データから進路変更点Xまでの到達距離を逐次計算するように構成されている。
【0035】
表示切換手段25は、車速演算手段21により計算された平均車速と、距離演算手段24により計算された到達距離と、経路演算手段23により取得された道路種別係数及び進路変更点係数に基づいて、以下に述べる進路変更点Xの拡大表示を表示部16に表示する表示切換え制御を行う。
本実施形態では、表示切換手段25は、自車両が進路変更点Xに到達すると予測される時間よりも拡大表示時間前に、進路変更点Xの拡大表示への表示切換え処理を行う。この拡大表示時間は、標準的には、所定切換時間(本例では30秒)である。しかしながら、表示切換手段25は、進路変更点Xの形状が直交十字路と比較して複雑である場合には、拡大表示時間を所定切換時間よりも長い時間に変更して、所定切換時間以前に拡大表示切換え処理を行うように構成されている。
【0036】
表示切換手段25は、拡大表示時間を以下の式(1)により逐次計算する。
拡大表示時間=切換時間×進行変更点係数×道路種別係数・・・式(1)
したがって、進行変更点係数及び道路種別係数が大きいほど、拡大表示時間は大きな値となり、より早期に拡大表示切換え処理が行われる。
なお、自車位置から進路変更点Xまでの経路で、道路種別が範囲によって異なる場合は、比例配分等により調整が行われる。
【0037】
また、表示切換手段25は、到達距離を平均車速で除すことにより(到達距離/平均車速)、自車位置から進路変更点Xに到達するのに要する到達予測時間を逐次計算する。
そして、到達予測時間と拡大表示時間とを比較し、到達予測時間が拡大表示時間以下(到達予測時間≦拡大表示時間)となったときに、表示切換手段25は、拡大表示切換え処理を行う。
なお、自車両が進路変更点Xを通過後に、制御回路11は、表示画面を切換え表示画面から元の表示画面に戻すように構成されている。
【0038】
式(1)では、所定の切換時間に進行変更点係数を乗じることにより、拡大表示時間を変更している。すなわち、進行変更点での進路変更の車両操作の困難さ又は進路変更点の複雑さ等を考慮して、進路変更操作が困難であるほど,又,進路変更点の形状が複雑であるほど、拡大表示時間を大きい値に変更し、表示切換え処理の開始を早めている。
また、式(1)では、さらに道路種別係数を乗じることにより、拡大表示時間を補正している。すなわち、走行路の道路種別が高速道側であるほど、拡大表示時間を大きな値に補正し、表示切換え処理の開始を早めている。
このように、本実施形態では、進行変更点及び道路種別に応じて、切換え表示処理を行うタイミングを調整している。表示切換手段25は、本発明の表示時期変更手段に相当する。
なお、図4及び図5のデータの係数は、適宜に設定することができる。
【0039】
次に、本実施形態における表示切換え処理の概要について説明する。
制御回路11は、自車両が誘導経路上で進路変更点Xの手前を走行中、所定条件を満たすまでは図3のように、表示部16の表示領域(表示画面)Pの略全範囲に、自車位置を含む広域地図を示す通常の表示データa(以下、「広域表示データa」という)を表示する。
【0040】
一方、制御回路11は、自車両が進路変更点Xの手前を走行中、所定条件が満たされると、図6のように表示領域Pに分割表示領域(分割画面)Qを出現させるように表示部16の切換え表示制御を行う。制御回路11は、表示領域Pに継続的に広域表示データaを表示し、分割表示領域Qに進路変更点Xの拡大図である表示データb(以下、「拡大表示データb」という)を表示する。
【0041】
本実施形態では、分割表示領域Qは、表示部16の表示領域Pの右半分に表示される。この分割表示領域Qに表示される拡大表示データbは、広域表示データaのうち進路変更点X付近を所定倍率の拡大縮尺で表示するものであり、分割表示領域Qの中央部に進路変更点Xが位置するように表示される。
【0042】
また、制御回路11は、距離演算手段24により算出された到達距離を示す到達距離表示cを分割表示領域Qに表示する。図6では、分割表示領域Qの左下部分に到達距離表示cが表示され、到達距離が「350m」であることを示している。なお、図6では、自車両を表す自車位置標識Bは、分割表示領域Qの枠外に位置しているため、分割表示領域Q内にはまだ表示されていない。
【0043】
また、広域表示データaは、表示領域Pのうち分割表示領域Q以外の領域に、表示切換え前と同様に表示されるが、自車位置標識Bが画面左側中央部に表示されるように、横方向にずれて表示される。したがって、表示切換え後は、広域表示データaの表示範囲が狭くなるため、図3における広域表示の約半分の地理範囲を表示する。
なお、所定条件が満たされ図6の分割表示に切換えられたとき、本実施形態では広域表示データaを図3の広域表示と同じ縮尺で表示するように構成しているが、これに限らず、広域表示データaを予め設定された縮尺で表示するように構成してもよい。ただし、この場合でも、広域表示データaは、拡大表示データbよりも広域を表示する縮尺で縮小表示するように構成される(すなわち、縮尺の倍率が小さい)。
【0044】
なお、本実施形態では、表示切換え処理を行う際に、すでに入力部17を介した乗員による操作等により、広域表示データaを表示する縮尺が、拡大表示データbを表示する倍率と同じ縮尺か、より詳細表示する大きな倍率の縮尺に設定されていた場合には、制御回路11は表示切換え処理を行わない。すなわち、制御回路11は、分割表示領域Qを出現させることなく、広域表示データaのみを継続して表示する。
【0045】
また、本実施形態では、表示切換え時、表示領域P中に、一般表示態様の広域表示データa上に重ねて分割表示領域Qを出現させるように構成しているが、これに限らず、図7に示すように広域表示データaに代えて、拡大表示データb及び到達距離表示cを表示領域Pに表示する拡大表示態様としてもよい。表示領域Pの画面サイズが小さい場合には、分割表示領域Qを出現させると画面表示が煩雑となり乗員にとって表示内容が視認しづらくなるため、図7のように拡大表示データb及び到達距離表示cを表示し、広域表示データaを表示しない拡大表示態様とするのが好適である。
【0046】
次に、図8に基づいて、制御回路11の表示切換え処理フローを説明する。
この処理フローは、制御回路11によって所定時間毎に繰り返し行われる。まず、制御回路11は、装置電源がONとなり、ナビゲーション処理が開始されているか否かを判定する(ステップS1)。まだナビゲーション処理を開始していない場合(ステップS1;No)、そのまま処理を終了し、所定時間後に再びステップS1を行う。一方、ナビゲーション処理を開始している場合(ステップS1;Yes)、制御回路11は、メモリに更新記憶された自車位置又は前回のシステムオフ時に記憶された自車位置に基づいて自車両周辺の広域表示データaを所定の広域縮尺倍率で表示する(ステップS2)。
【0047】
なお、ナビゲーション処理を開始直後の時点では、誘導経路のデータ入力及び演算が終了していないので、誘導経路は設定されておらず、広域表示データaには自車周辺の地図情報Aと自車位置標識Bが表示され、誘導経路Cは表示されない。一方、図8の表示切換え処理フローと異なる処理フローにおいて、誘導経路の演算が終了すると、誘導経路が設定され、誘導経路Cが追加的に表示される。すなわち、誘導経路Cが他の道路と異なる色で表示される。
【0048】
次いで、制御回路11は、表示領域Pに表示している広域表示データaの縮尺が、拡大表示データbを表示する所定倍率の縮尺率以上であるか否かを判定する(ステップS3)。広域表示データaの縮尺が所定倍率以上である場合(ステップS3;Yes)、制御回路11は、既に乗員により拡大表示の設定がなされており表示切換え処理は不要であると判断して、そのまま処理を終了する。一方、広域表示データaの縮尺が所定倍率に満たない場合(ステップS3;No)、制御回路11は、誘導経路が設定されているか否かを判定する(ステップS4)。
【0049】
まだ誘導経路が設定されていない場合(ステップS4;No)、制御回路11はそのまま処理を終了する。一方、誘導経路が既に設定されている場合(ステップS4;Yes)、制御回路11は、自車位置を測位・計算する(ステップS5)。そして、制御回路11は、自車位置及び経路データから進行方向前方で直近の進路変更点Xを特定し、自車位置から進路変更点Xまでの到達距離を経路データに基づいて算出する(ステップS6)。
【0050】
次いで、制御回路11は、経路データ及び図4に示した道路種別データに基づいて、進路変更点Xまでの経路の道路種別係数を取得する(ステップS7)。さらに、制御回路11は、経路データ及び図5に示した進路変更点データに基づいて、進路変更点Xの進路変更点係数を取得する(ステップS8)。
そして、制御回路11は、所定の切換時間(本例では30秒)に進路変更点係数及び道路種別係数を乗じて、拡大表示時間を算出する(ステップS9)。
さらに、制御回路11は、到達距離を平均車速で除して到達予測時間を算出する(ステップS10)。
【0051】
制御回路11は、算出した到達予測時間が拡大表示時間以下であるか否かを判定する(ステップS11)。到達予測時間が拡大表示時間より大きい場合(ステップS11;No)、制御回路11は、そのまま処理を終了する。一方、到達予測時間が拡大表示時間以下の場合(ステップS11;Yes)、制御回路11は、表示部16を図6に示す表示態様に切換え表示して、処理を終了する。そして、制御回路11は、自車両が進路変更点Xを通過したとき、図6の表示態様での切換え表示を終了し、図3の表示態様に表示を戻す。
【0052】
以上のように、本実施形態のナビゲーション装置10では、従来のように誘導経路上の進路変更点から固定的に設定された所定距離だけ手前に到達したときに、進路変更点の拡大表示に切換え処理するのではなく、自車位置から誘導対象地点に到達するのに要すると推定される到達予測時間が、拡大表示時間に達したときに拡大表示に切換え処理を行うように構成されている。そして、本実施形態では、この拡大表示時間が、進路変更点の形状の複雑さ及び車両操作の難さを考慮して、進路変更点の形状が複雑であるほど,又,進路変更点が曲がり難いほど、長めに変更されるように構成されている。また、この拡大表示時間は、進路変更点の形状が簡単であるほど,又,進路変更点が曲がり易いほど、短めに変更されるように構成されている。
【0053】
このように構成することにより、本実施形態のナビゲーション装置10では、進路変更点での進路や形状等の把握を行うのに時間が掛かったり、進路変更での車両操作が難しかったりするような進路変更点の場合には、通常よりも早期に進路変更点の拡大図を乗員に提供する。これにより、本実施形態のナビゲーション装置10では、進路変更点に応じた適切なタイミングで進路変更点の拡大表示データを表示部16に表示することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、自車位置から誘導対象地点までの道路種別に応じて、表示タイミングを変更するように構成しているので、交通状況に応じてより適切なタイミングで拡大表示データを乗員に提供することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、拡大表示時間を算出するのに、道路種別によって補正しているが、これに限らず、道路種別で補正しなくてもよい。この補正を行わない場合は、図4に示したデータにおいて対応する係数をすべて「1.0」にすればよい。
【0056】
次に、図9に基づいて本発明の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と表示切換え処理フローの一部のみが異なるものである。
第2実施形態では、進路変更点から所定の拡大表示距離だけ手前に到達したときに、表示切換え処理が行われるように構成されている。拡大表示距離は、標準的には、所定の切換距離(本例では350m)である。しかしながら、制御回路11(表示切換手段25)は、進路変更点及び道路種別に応じて、拡大表示距離を所定切換距離よりも長い距離に変更して、所定切換距離以遠で拡大表示切換え処理を行うように構成されている。
【0057】
図9に示す表示切換え処理フローでは、ステップS21乃至S28において、図8の処理フローのステップS1乃至S8と同じ処理を行う。
ステップS29で、制御回路11は、拡大表示距離を次の式(2)により算出する。
拡大表示距離=切換距離×進路変更点係数×道路種別係数・・・式(2)
したがって、進行変更点係数及び道路種別係数が大きいほど、拡大表示距離は大きな値となり、より早期に拡大表示切換え処理が行われる。
なお、自車位置から進路変更点Xまでの経路で、道路種別が範囲によって異なる場合は、比例配分等により調整が行われる。
【0058】
次いで、制御回路11は、到達距離と拡大表示距離とを比較する(ステップS30)。到達距離が拡大表示距離よりも大きい場合(ステップS30;No)、制御回路11は、自車両が進路変更点の拡大表示距離だけ手前にまだ到達していないので、そのまま処理を終了する。一方、到達距離が拡大表示距離以下となった場合(ステップS30;Yes)、制御回路11は、自車両が進路変更点の拡大表示距離だけ手前に到達しているので、拡大表示切換え処理を行い(ステップS31)、処理を終了する。
【0059】
本実施形態では、進路変更点までの距離に応じて拡大表示切換え処理を行っているが、進路変更点の形状が複雑であるほど、又,進路変更点が曲がり難いほど、拡大表示距離が長めに変更され、拡大表示切換え処理が早期に実施されるように構成されている。
このように構成することにより、本実施形態のナビゲーション装置10では、進路変更点での進路や形状等の把握を行うのに時間が掛かったり、進路変更の操作が難しかったりするような進路変更点の場合には、通常よりも早期に進路変更点の拡大図を乗員に提供する。これにより、本実施形態のナビゲーション装置10では、進路変更点に応じた適切なタイミングで進路変更点の拡大表示データを表示部16に表示することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、地図データ15aに、進路変更点での進入路と退出路の組合せ毎に分類が割り当てられて記憶され、経路演算手段23が経路データに各進路変更点の分類を取り込んで記憶していた。しかしながら、これに限らず、経路演算手段23が、進路変更点毎に進入路と退出路との角度を算出して、この角度から進路変更点係数を取得するように構成してもよい。この場合、進路変更点データは、進入路と退出路と間の角度範囲毎に、対応する進路変更点係数が割り当てられたものとすることができる。例えば、進入路と退出路と間の角度が75度未満の場合に進路変更点係数を0.8とし、75度以上105度未満の場合に進路変更点係数を1.0とし、105度以上の場合に進路変更点係数を1.2とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置の制御回路の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置が表示する広域表示データの表示画面である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置の道路種別データである。
【図5】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置の進路変更点データである。
【図6】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置が表示する広域表示データ及び拡大表示データの表示画面である。
【図7】本発明の改変例に係るナビゲーション装置が表示する拡大表示データの表示画面である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるナビゲーション装置の切換え表示処理のフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態におけるナビゲーション装置の切換え表示処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
10 ナビゲーション装置
11 制御回路
12 車速センサ
13 ジャイロセンサ
14 GPSセンサ
15 記憶部
15a 地図データ
16 表示部
17 入力部
21 車速演算手段
22 自車位置測位手段
23 経路演算手段
24 距離演算手段
25 表示切換手段
a 広域表示データ
b 拡大表示データ
c 到達距離表示
A 地図情報
B 自車位置標識
C 誘導経路
P 表示領域
Q 分割表示領域
X1,X2,X3,X4 進路変更点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記地図データに基づいて、車両が進行方向を変更する地点である進路変更点を経由する誘導経路の設定を行う誘導経路設定手段と、
前記地図データに基づいて車両の現在地周辺の地図を表示画面に表示し、誘導経路上の進路変更点手前の所定時期にその進路変更点の拡大図を前記表示画面に表示する表示手段と、を備えたナビゲーション装置であって、
前記地図データから誘導経路上の進路変更点の情報を取得する進路変更点情報取得手段と、
前記進路変更点情報取得手段によって取得された進路変更点の情報に基づいて、この進路変更点の拡大図の表示を開始する時期を変更する表示時期変更手段と、を備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記表示時期変更手段は、前記進路変更点の情報に基づいて、前記進路変更点への進入路に応じて前記表示開始時期を変更することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記表示時期変更手段は、前記進路変更点の情報に基づいて、前記進路変更点における進入路から退出路への曲折角度が大きいほど前記表示開始時期を早めるように変更することを特徴とする請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記表示時期変更手段は、前記進路変更点の情報に基づいて、前記進路変更点の形状が、直交する十字路と比べて複雑であるほど前記表示開始時期を早めるように変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
走行路の道路種別情報を取得する道路種別情報取得手段をさらに備え、
前記表示時期変更手段は、前記道路種別情報取得手段によって取得された道路種別情報に基づいて、前記表示開始時期を補正することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記表示手段は、誘導経路上の進路変更点の拡大図を前記表示画面に表示するときに、車両の現在地周辺の地図を表示する一般表示態様から、車両の現在地周辺の地図に代えて進路変更点の拡大図を表示する拡大表示態様に表示を切換えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記表示手段は、表示する地図の縮尺を変更する縮尺変更手段を備えており、表示している地図の縮尺が所定値以上の場合には、前記拡大表示態様への切換えを行わないことを特徴とする請求項6に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−150761(P2009−150761A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328477(P2007−328477)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】